JP2004331732A - 熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチ及びその製造方法、該マスターバッチを用いた熱硬化性粉体塗料及びその製造方法、並びに該熱硬化性粉体塗料を塗装して得られた塗装物品 - Google Patents
熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチ及びその製造方法、該マスターバッチを用いた熱硬化性粉体塗料及びその製造方法、並びに該熱硬化性粉体塗料を塗装して得られた塗装物品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】平滑性、光沢、鮮映性等の外観が優れ、調色しやすく、塗膜の色相が均一な熱硬化性粉体塗料を提供すること
【解決手段】顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤(顔料及び硬化剤を除く)から選択された1種類以上の原料を熱硬化性樹脂と混練して得られた熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを使用して熱硬化性粉体塗料を製造する。
【選択図】図1
【解決手段】顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤(顔料及び硬化剤を除く)から選択された1種類以上の原料を熱硬化性樹脂と混練して得られた熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを使用して熱硬化性粉体塗料を製造する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性粉体塗料及びその製造方法に関し、特に、熱硬化性マスターバッチを用いた熱硬化性粉体塗料の製造方法に関する。また、本発明は、調色精度が優れ、且つ、調色が容易な熱硬化性粉体塗料の製造方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性粉体塗料とは、塗料中に有機溶剤や水等の溶媒を含まない一方で、熱硬化性樹脂、顔料、硬化剤、その他の添加剤を塗膜形成成分として含む粉体状の塗料の一種である。粉体塗料は、通常の液状塗料と同様に、美装用又は保護用の工業用塗料として使用されている。
【0003】
熱硬化性粉体塗料の製造方法には大きく分けて湿式法と乾式法の2種類がある。湿式法は各種原料を有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させた状態で混合を行い、その後、溶媒を濾過又は噴霧乾燥等の方法で除去して粉体塗料を得る手法である。乾式法は熱硬化性粉体塗料の製造に一般的に使用されている手法であり、原料である熱硬化性樹脂、顔料、硬化剤、その他の添加剤を溶媒の非存在下で混合(ドライブレンド)し、次いでこれらの原料を所定の温度条件下で混練した後、冷却して粉砕する。粉砕物は、次いで分級され、秤量して袋詰めされて粉体塗料の製品となる。
【0004】
乾式法による熱硬化性粉体塗料の製造中の混練工程は、熱硬化性樹脂をその融点付近まで加熱して流動性を得た上で、これに剪断力を与えて、顔料等の原料を樹脂中に分散させるのが目的である。しかし、混練中に過度に熱硬化性樹脂を加熱すると、熱硬化性樹脂が架橋して分子量が増加することにより、得られる粉体塗料にブツが生じたり、物性が悪化し、結果的に粉体塗料から得られる塗膜の外観や平滑性が悪化する。したがって、乾式法による熱硬化性粉体塗料の製造中の混練工程では、できるだけ温度を上げずに且つ短時間で混練機を通過させる必要がある。なお、熱硬化性粉体塗料の製造に用いる混練機は分散効率がよく、また、万が一熱硬化性樹脂が架橋しても、架橋した樹脂成分を完全に且つ速やかに排出できる、いわゆるセルフクリーニング性の良い専用機が用いられている。
【0005】
しかし、比較的低温で且つ短時間の混練工程を含む乾式法で製造された熱硬化性粉体塗料は、顔料を十分に解砕することができないために、低温であっても長時間かけて顔料を分散させることのできる湿式法で製造された熱硬化性粉体塗料に比べて、顔料の分散が十分でない。このため、乾式法で製造された熱硬化性粉体塗料の塗装面は湿式法で得られた熱硬化性粉体塗料の塗装面と比較して結果的に鮮映性が劣り、やや曇ったものとなる傾向がある。なお、加熱による架橋性がなく、強力な混練機を用いて、高温で長時間混練を継続可能な熱可塑性樹脂からなる熱可塑性粉体塗料と比較しても、乾式法で得られた熱硬化性粉体塗料中の顔料のぬれ(wetting)と分散性は十分でない。このように、熱硬化性粉体塗料の製造は、ベース樹脂である熱硬化性樹脂の加熱架橋性により、原料、特に顔料、の分散に困難を伴う。
【0006】
また、熱硬化性粉体塗料は、更に粉体塗料特有の調色の困難性という問題点をも有している。
【0007】
例えば、通常の液状塗料の調色では、同じタイプで色が異なる液状塗料を撹拌して混合すると、容易に相互に溶け合って、均一な色の液状塗料が得られる。したがって、塗装時に比較的自由な調色を行うことができる。しかし、粉体塗料の調色では、色が異なる粉体塗料を塗装時に混合しても相互に溶け合わないので、この混合物を塗装すると、均一な色とならず、それぞれの色の斑点が生じる。したがって、塗装時に調色を行うことは困難である。
【0008】
このため、熱硬化性粉体塗料を用いて所定の色の塗装を得るには、数種類の着色顔料と熱硬化性樹脂、硬化剤、その他の添加剤を混合し、混練、粉砕、分級と続く一連の製造工程を経て得られた粉体塗料を実際に塗装して色を判定する必要がある。しかし、通常、所定の色に調色するためには、この一連の工程を何回も繰り返して色合わせしなければならない。したがって、熱硬化性粉体塗料の調色は極めて効率が悪く時間を要する。このように、調色の困難性は熱硬化性粉体塗料の大きな欠点であり、溶媒を使用しないこと等から環境にやさしい塗料と評価され、様々な用途が期待される熱硬化性粉体塗料の発展を阻害する要因となっている。
【0009】
そこで、これらの長い製造工程を経ず、着色した粉体塗料同士を混合して調色するドライブレンド方式が特許第2909204号公報、特開平11−70360号公報、特開2000−303029号公報、特開2001−302981号公報に提案されている。
【0010】
特許第2909204号は粒子の最大寸法が20μm以下の小さい粒径の色の異なる粉体塗料をドライブレンドする粉体塗料の調色方法を開示している。通常の粉体塗料の粒径は30μm程度であり、ドライブレンド方式で調色した混合粉体塗料で得られた塗膜は、色相の異なる斑点となる。しかし、この調色方法では、使用する粉体塗料の粒子径が肉眼で判別不可能な程度に十分小さいのでドライブレンド方式でも見かけ上均一に調色できると説明されている。しかし得られた塗膜は実際には均一な色相ではない。しかも、粒子径が20μm以下と小さいので、粉体塗料が凝集して粉体自体の流動性が悪い。したがって、例えば、塗装ガンから均一に粉体塗料を吐出させることができないので、市販の静電塗装装置で塗装を行うことは極めて困難である。
【0011】
特開平11−70360号公報、特開2000−303029号公報、特開2001−302981号公報には二種類以上の顔料を含む着色粉体塗料を塗装現場でドライブレンドして塗装、焼付し、粉体塗料が溶融した時点で色の異なる粉体塗料同士が融着・混和して顔料粒子が混ざりあい、調色効果が得られる方法を開示している。しかし、一般に、粉体塗料は焼付時の溶融粘度が高いので顔料が十分に融合して混色することは難しい。また、調色しようとする色の明度が異なると斑点が目立つので、濃色、中間色、淡色ごとにそれぞれ明度の異なる着色粉体塗料を必要とする。したがって、結果的に、莫大な数の色合わせ用着色粉体塗料をストックする必要があり、貯蔵場所と経済上の負担が大きいなどの難点がある。
【0012】
すなわち、これらの調色に関する先行技術では、たしかに、乾式法による複雑で長時間と多くの労力を要する熱硬化性体塗料の製造工程を経ることなく、色の異なる二種類以上の熱硬化性粉体塗料をドライブレンドして塗装時に調色しているが、通常の液状塗料の調色のレベルに相当する均一な色が得られなかったり、多くの種類の着色粉体塗料を準備しなければならないという問題点が依然として存在している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題点を解決することを目的とするものであり、具体的には、平滑性、光沢、鮮映性などの塗膜外観が良好で、且つ、調色精度が良く、塗膜が均一な色調をもつ熱硬化性粉体塗料を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、(1)熱硬化性樹脂、並びに、(2)顔料、硬化剤及び熱硬化性粉体塗料用添加剤(顔料及び硬化剤を除く)からなる群から選択された1種類以上の原料を含む、熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを用いて熱硬化性粉体塗料を製造することによって解決される。
【0015】
前記原料マスターバッチは、(2)顔料、硬化剤、及び、熱硬化性粉体塗料用添加剤(顔料及び硬化剤を除く)からなる群から選択された1種類以上の原料を、溶媒の非存在下で(1)熱硬化性樹脂と共に混練後、粉砕又は造粒する工程を経て製造することができる。前記混練は前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で行われてもよい。
【0016】
本発明の熱硬化性粉体塗料は、具体的には、上記熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを、溶媒の非存在下、熱硬化性樹脂の硬化温度未満で混練する混練工程、並びに、前記混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程を経て製造することができる。さらに、明度、彩度、及び、色相の少なくとも1つが異なる2種類以上の熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを使用する場合は、溶媒の非存在下、前記マスターバッチを熱硬化性樹脂の硬化温度未満で混練する混練工程、並びに、前記混練工程で得られた混合混練物を粉砕する粉砕工程を経て、所望の色の熱硬化性粉体塗料を製造することができる。
【0017】
前記混練工程では、熱硬化性樹脂及び/又は硬化剤を更に添加することが可能である。また、本発明の熱硬化性粉体塗料の製造方法は、前記粉砕工程で得られた粉砕物を分級する分級工程を更に含んでもよい。
【0018】
上記の製造方法により得られた熱硬化性粉体塗料は、例えば、土木建築資材、電気・電子機器、車両、道路資材、水道・ガス資材、金属製品、家庭用品、各種機械・工具、計器、医療機器、農業用資材、船舶、スポーツ・レジャー用品等の各種物品の塗装に好適に使用される。
【0019】
【作用】
熱硬化性粉体塗料は、熱硬化性樹脂、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤から構成されており、通常は、これらの原料を一度に混合し、更に加熱下で混練して熱硬化性粉体塗料を製造している。この場合、熱硬化性樹脂の架橋を回避するために、比較的短時間でこれらの原料を混練する必要があるので、熱硬化性粉体塗料中の上記原料、特に顔料のぬれが悪く分散が不十分となるおそれがある。しかし、本発明では、この混練工程を実質的に2回に分離するので、熱硬化性樹脂の架橋を回避しつつも、顔料等の原料が熱硬化性樹脂でぬれることにより、熱硬化性粉体塗料中に当該原料を良好に分散させることが可能である。
【0020】
具体的には、本発明では、最初の混練工程によって顔料等を予め高度に分散したマスターバッチを製造し、各種のマスターバッチを2回目の混練工程によって相互に溶解させるという2段階のステップを経て熱硬化性粉体塗料を製造する。マスターバッチの製造段階では、硬化剤を必ずしも配合する必要がないので、硬化剤を含まない原料のマスターバッチの製造では、当該原料を時間をかけてベース樹脂である熱硬化性樹脂に分散させることができる。
【0021】
これまで、熱可塑性樹脂をベースとしたマスターバッチは知られているが、熱可塑性樹脂とは性質が全く異なる熱硬化性樹脂をベースとしたマスターバッチを熱硬化性粉体塗料の分野で使用することは全く行われていない。本発明は、熱硬化性粉体塗料の製造にマスターバッチを使用する初めてのタイプの技術である。
【0022】
本発明の各種のマスターバッチでは、熱硬化性粉体塗料の原料がベースとなる熱硬化性樹脂中に予め十分に分散しているので、これらのマスターバッチを、溶媒の非存在下で、必要に応じて混合し、2回目の混練によって均一化することによって、原料が高度に均一に分散された熱硬化性粉体塗料が製造される。流展剤を添加すると表面張力が低下してぬれが促進されるので好ましい。なお、熱硬化性樹脂中への原料のぬれと分散はマスターバッチ製造段階である程度達成されているので、上記の2回目の混練は極めて容易に行うことが可能である。したがって、特に、本発明のマスターバッチを購入して熱硬化性粉体塗料を製造するユーザーは、熱硬化性粉体塗料の製造を容易に行うことができる。
【0023】
また、例えば、異なる顔料を使用する等して、明度、彩度、及び、色相の少なくとも1つが異なる2種類以上の本発明のマスターバッチを予め製造しておくことによって、熱硬化性粉体塗料の色を容易に調整することが可能である。すなわち、本発明のマスターバッチ中には顔料が予め十分に分散しているので、必要に応じて複数色のマスターバッチを所定量混合して2回目の混練を行うことによって、異なる色の顔料が容易に均一に分散し、その結果、均一な色調の熱硬化性粉体塗料を得ることができる。
【0024】
特に、色の異なる本発明のマスターバッチを従来の顔料と同様に扱うことにより、CCM(コンピュータ・カラー・マッチング)を用いて精度のよい調色が可能になる。通常の熱硬化性粉体塗料の製造方法では顔料の分散度が低いので、通常、製品の調色合格基準は色差ΔE=1以内と定められている。しかし、顔料が良好に分散している本発明の顔料マスターバッチを使用して調色すると色差ΔE=0.5以内にすることが可能である。CCMを使用すると調色精度が良いので試作回数が少なくて済み、短時間で調色を行うことができるので様々な色の熱硬化性粉体塗料を短時間で製造することができる。
【0025】
さらに、従来の熱硬化性粉体塗料のドライブレンドによる調色では数十色の顔料を必要とするが、本発明のマスターバッチを用いて様々な色の熱硬化性粉体塗料を製造するにあたっては、必要な色はマスターバッチを混練して得ることができるので、原色のマスターバッチがあれば十分である。例えば酸化チタン、カーボンブラック、シアニンブルー、べんがら、鉄黄を基本とし、その他は、必要な色の数だけ、その色に応じた顔料を含むマスターバッチがあればよい。これにより、不要な顔料の在庫を削減することも可能である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について順次説明する。
【0027】
本発明では、まず熱硬化性粉体塗料の原料(熱硬化性樹脂、並びに、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤)のマスターバッチ(以下、「原料マスターバッチ」という)を製造し、これを用いて熱硬化性粉体塗料を製造する。
【0028】
本発明の熱硬化性粉体塗料用の原料マスターバッチは、熱硬化性粉体塗料用成分から構成されるが、具体的には、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤(顔料及び硬化剤を除く。以下同じ)の中から選択される1種類以上、好ましくは1種類又は2種類、の原料を熱硬化性樹脂中に含むものである。したがって、原料マスターバッチは、(1)熱硬化性樹脂+顔料、(2)熱硬化性樹脂+硬化剤、(3)熱硬化性樹脂+添加剤、(4)熱硬化性樹脂+顔料+硬化剤、(5)熱硬化性樹脂+硬化剤+添加剤、(6)熱硬化性樹脂+顔料+添加剤、(7)熱硬化性樹脂+顔料+硬化剤+添加剤の何れの組み合わせから構成されていてもよい。
【0029】
なお、本発明の熱硬化性粉体塗料用の原料マスターバッチは、顔料、硬化剤及び添加剤のいずれかのカテゴリーの中から選択された2種類以上の原料を含むものであってもよい。例えば、本発明の原料マスターバッチは2種類の異なる顔料を含むことができる。また、原料マスターバッチは、顔料、硬化剤及び添加剤のいずれかのカテゴリー中から選択された2種類以上の原料と、他のカテゴリー中から選択された1種類以上の原料とを同時に含むものであってもよい。例えば、本発明の原料マスターバッチは、2種類以上の顔料と1種類の添加剤を含むことができる。
【0030】
原料マスターバッチは、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤からなる群から選択された1種類以上の原料と、熱硬化性樹脂とを、インターナルミキサー(バンバリミキサー)、双腕型捏和機(ニーダーキミサー、加圧ニーダー)、ロールミキサー等の混練機、或いは、1軸又は2軸型エクストルーダー等の押出機を用いて混練することにより、製造可能である。
【0031】
原料マスターバッチの製造段階では、熱硬化性樹脂中に、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤を十分に分散することが好ましい。したがって、前記混練工程前に熱硬化性樹脂とその他の原料を予め混合し、得られた混合物を上記の混練工程に付することが好ましい。混合工程は、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等の混合機により熱硬化性樹脂とその他の原料を混合することによって実施可能である。しかし、必要に応じて混合工程を省略することも可能である。なお、混合工程と混練工程を分離することなく、混合機と混練機の2つの機能を備えた混合混練機を用いて原料を連続的に混合混練してもよい。
【0032】
上記の混合及び/又は混練は溶媒の非存在下で行われる。ここでの溶媒とは、室温で液状であり、揮発性を有するものを意味するが、その種類は特に限定されるものではない。具体的な溶媒としては、例えば、水、アルコール、炭化水素、ハロゲン系炭化水素、揮発性シリコーン等を挙げることができる。本発明の原料マスターバッチの製造では溶媒を使用しないので、溶媒が揮発して周囲の環境を汚染することがない。
【0033】
上記の混練工程では数十〜数百の1次粒子がコアギュレート(凝集)している顔料等の2次粒子が解砕されて熱硬化性樹脂中に分散される。顔料等の凝集力に打ち勝つ為には、顔料等のぬれを促進すると共に、大きな剪断力を発生することの可能な混練機を使用することが好ましい。
【0034】
上記の混練工程は、任意の温度及び時間条件で行うことが可能である。しかし、硬化剤を含む原料マスターバッチを製造する場合は、熱硬化性樹脂の架橋を回避するために、熱硬化性樹脂の硬化温度未満で且つ短時間に混練を行うことが好ましい。例えば、硬化剤を含む原料マスターバッチ(例えば、上記(2)、(4)、(5)又は(7)の組み合わせを含むマスターバッチ)を製造する場合は、インターナルミキサー、双腕型捏和機、ロールミキサー等の高剪断型混練機を用いて短時間で混練を終了することが好適である。
【0035】
このように、硬化剤がある程度分散された原料マスターバッチを予め製造しておき、当該原料マスターバッチを熱硬化性粉体塗料製造に使用することにより、最終的に得られた熱硬化性粉体塗料中の硬化剤の分散性が向上する。したがって、物品表面での粉体塗料の焼付時に、架橋による塗膜の体積の変化が均一となり塗膜の平滑性に良い結果を与えることができる。
【0036】
一方、硬化剤を含まない原料マスターバッチ(例えば、上記(1)、(3)又は(6)の組み合わせを含むマスターバッチ)を製造する場合は、当該硬化剤による熱硬化性樹脂の架橋を考慮する必要がないので、原料を、比較的高温下で、比較的長時間、熱硬化性樹脂と十分に混練することが可能であり、例えば、顔料が非常に高度に分散したマスターバッチを得ることができる。
【0037】
なお、顔料以外の熱硬化性粉体塗料の原料である硬化剤及びその他の添加剤は、熱硬化性樹脂と相溶性の高いものが選択することが好ましい。その場合、これらの混練は比較的容易であり、小馬力の混合撹拌機であっても、十分均一に混合混練させることが可能である。
【0038】
本発明の熱硬化性粉体塗料用の原料マスターバッチが顔料を含む場合、当該顔料は着色顔料、体質顔料又はこれらの混合物のいずれであってもよい。また、顔料の色の種類は特に指定されず、1種類でも、2種類以上でも構わない。しかし、熱硬化性粉体塗料の調色、とくにCCMでの調色、が必要な場合は、1種類の色の顔料のみを配合して原料マスターバッチとすることが好ましい。
【0039】
上記の混練工程を経て得られた混練物は粉砕又は造粒されて原料マスターバッチとされる。粉砕方法としては、公知の手段を用いることが可能であり、例えば、1対のロールで混練物を圧縮してシート状に成形し、これを冷却して粉砕する方法が挙げられる。造粒方法としても、公知の手段を用いることが可能であり、例えば、水平に固定された板状多孔ダイス上のロールが回転して、ダイス上に落下する混練物をダイス孔を通して下方に押し出し、回転するカッターで切断する方法;回転する円筒状多孔ダイスと摩擦により駆動される2個の内部ロールとの間で混練物を押し出し、ダイス外側面のカッターで切断する方法;臼と杵の間に混練物を充填し、上下の杵を移動させて圧縮成形させる方法;並びに、混練物をダイスよりストランドとして押出し、適当な大きさに切断しペレットを得る方法を挙げることができる。なお、必要に応じて、得られた造粒物の表面を平滑とする整粒操作を行ってもよい。
【0040】
本発明の原料マスターバッチ中に配合される各種の原料の濃度は、用途に応じて広範囲に調整することが可能である。原料の種類にも依存するが、原料マスターバッチ中の原料濃度は、0.1〜99質量%、好ましくは、5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは、20〜80質量%である。なお、顔料を含むマスターバッチでは、混練により顔料をマスターバッチ中に十分に分散することが可能であれば、顔料の配合量はマスターバッチ全体の20質量%を越えても良い。したがって、顔料のマスターバッチでは、顔料の濃度は、マスターバッチ全体の30〜70質量%、さらに40〜60重量%、の範囲であってもよい。
【0041】
本発明の熱硬化性粉体塗料は、上記の原料マスターバッチを混練する混練工程と、当該混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程を経て製造することができる。
【0042】
なお、熱硬化性粉体塗料のより高度な均一性を得るためには、混練工程前に、各種の原料マスターバッチを予めドライブレンドする混合工程を設けることが好ましい。当該混合工程は、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等の混合機により原料マスターバッチを混合することによって実施可能である。しかし、必要に応じて混合工程を省略することも可能である。なお、混合工程と混練工程を分離することなく、混合機と混練機の2つの機能を備えた混合混練機を用いて原料を連続的に混合混練してもよい。
【0043】
上記混練工程においては、1種類又は2種類以上の原料マスターバッチを混練することが可能である。顔料等の短時間では熱硬化性樹脂中への分散が困難な原料は予め原料マスターバッチ中に十分に分散させてあるので、当該混練工程で得られる熱硬化性粉体塗料は、従来の製造方法によって得られるものと比較して、極めて成分の分散性が良好で、溶剤型塗料に匹敵する均一性を得ることができる。したがって、本発明で得られた熱硬化性粉体塗料を塗装して得られる塗面は平滑性、鮮映性が極めて優れている。特に、色の異なる原料マスターバッチを所定の割合で混合混練することにより、任意の色の熱硬化性粉体塗料を調製することが可能である。
【0044】
なお、例えば、前記混練工程で混練される原料マスターバッチに硬化剤が含まれていない場合、或いは、前記混練工程で混練される原料マスターバッチ中に硬化剤を含むマスターバッチが含まれていても、硬化剤の絶対量が不足する場合等は、前記混練工程において硬化剤を別途添加することも可能である。また、熱硬化性粉体塗料を構成する熱硬化性樹脂成分は全て原料マスターバッチ由来のものであってもよいが、必要に応じて前記混練工程中に熱硬化性樹脂を更に添加して、熱硬化性粉体塗料の組成を調整してもよい。
【0045】
必要に応じて、原料マスターバッチの混練工程において、或いは、その前後に任意に設置可能な混練工程において、他の熱硬化性粉体塗料を添加して原料マスターバッチと一緒に混練することも可能である。この場合は、他の熱硬化性粉体塗料の色、物性等を適宜選択することにより、本発明の熱硬化性粉体塗料の色相、光沢、平滑度、塗膜物性等の性能を調整することができる。
【0046】
上記の混合及び/又は混練は溶媒の非存在下で行われる。ここでの溶媒とは、原料マスターバッチの製造における場合と同じ意味である。このように、本発明の熱硬化性粉体塗料の製造では溶媒を使用しないので、溶媒が揮発して周囲の環境を汚染することがない。
【0047】
前記混練工程では、原料マスターバッチ同士の相溶化を迅速に行うために加熱下で混練が行われてもよい。しかし、混練物中には硬化剤が含まれることになるので、熱硬化性樹脂の架橋を回避するために、加熱条件は熱硬化性樹脂の硬化温度未満とする必要がある。なお、前記混練工程で使用される混練機としては、溶融混練時の硬化反応を抑制することができるタイプのものが好ましく、例えば、BUSS社のコニーダーを挙げることができる。なお、必要に応じて、前記混練工程において、その他の添加剤(硬化剤及び顔料を除く)を添加してもよい。
【0048】
上記混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程は、粉体塗料の分野で公知の手法により実施することが可能である。例えば、混練工程で得られた混練物をシート状又はストランド状に成形し冷却したものをカッター等で5〜15mm程度のサイズのチップとし、これを更にハンマーミル、高速衝撃粉砕機、高速ピン式粉砕機等によって微粉砕することによって粉砕物を得ることが可能である。なお、1対のロールで混練物を圧縮してシート状に成形し、これを冷却して直接粉砕する方法を採用してもよい。
【0049】
上記粉砕工程で得られた粉砕物は、更に、振動篩い機、ブロアー型ふるい機、ロータリーシーブ、遠心分級機等の公知の篩分け手法によって分級されることが好ましく、この場合は、一定の粒度範囲内の粉体が選択されて熱硬化性粉体塗料として製品化される。
【0050】
本発明で使用される熱硬化性樹脂は、加熱により流動化する性質を有しており、その流動化温度(溶融温度)は、通常約30〜150℃程度である。したがって、原料マスターバッチ製造時の混練温度、並びに、熱硬化性粉体塗料製造時の混練温度は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、上記範囲から適宜選択される。なお、30℃未満では室温で流動化して作業性が悪化するおそれがあり、また、硬化剤が存在する条件下では、加熱温度が高いと部分的に熱硬化性樹脂が架橋するおそれがあるので、熱硬化性樹脂の流動化温度(溶融温度)は、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜100℃、の範囲にあるべきである。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、後述する硬化剤と反応しうる官能基を有する樹脂を使用することができ、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂が好適に用いられる。前記官能基を有する限り、任意のタイプのエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂も使用可能である。また、これらの樹脂を混合したハイブリッド系樹脂、例えば、エポキシ・ポリエステルハイブリッド系樹脂、エポキシ・アクリルハイブリッド系樹脂、ポリエステル・アクリルハイブリッド系樹脂、を使用してもよい。前記反応性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられる。
【0052】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸を主成分とする酸成分と、多価アルコールを主成分とするアルコール成分を原料として、これらの成分を重縮合して製造することができる。上記酸成分は、特に限定されることはなく、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びこれらの無水物などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−ジシクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸を挙げることができる。また、上記アルコール成分も、特に限定されることはなく、例えばエチレンレグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール類;トリメチロールプロパン、グリセリン、ぺンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類を例示することができる。
【0053】
熱硬化性アクリル樹脂としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有エチレン性不飽和モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボン酸基含有不飽和モノマー等のホモポリマー又はコポリマーを例示することができる。
【0054】
熱硬化性エポキシ樹脂としては、グリシジルエステル樹脂、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応物やビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノール/ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール/ノボラック型エポキシ樹脂などを例示することができる。
【0055】
硬化剤としては、熱硬化性粉体塗料に通常用いられるものを使用可能であり、上記熱硬化性樹脂の反応性官能基が水酸基である場合の硬化剤としては、脂肪族多価カルボン酸、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、グリコールウレア硬化剤等が用いられる。脂肪族多価カルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びそれらの無水物を例示できる。アミノ樹脂としては、ヘキサメトキシメラミン樹脂、ヘキサエトキシメラミン樹脂を例示できる。ブロックイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式又は芳香族イソシアネートをフェノール類、ε−カプロラクタム類、アルコール類等でブロックしたものが挙げられる。
【0056】
熱硬化性樹脂の反応性官能基がカルボキシル基である場合、上記硬化剤としてはエポキシ樹脂、ポリエポキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、β−ヒドロキシアルキルアミド化合物などを挙げることができる。ポリエポキシ化合物としては、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジル(メタ)アクリレートのホモ又はコポリマー等が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物としては、トリメチロールプロパン、ソルビトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。β−ヒドロキシアルキルアミド化合物としては、β−ヒドロキシエチルプロピルアミドなどを挙げることができる。
【0057】
熱硬化性樹脂の反応性官能基がエポキシ基である場合の硬化剤としては、上記脂肪族多価カルボン酸の他、ジシアンジアミド等のアミン系硬化剤、カルボキシル酸基含有ポリエステル樹脂等を例示することができる。
【0058】
反応性官能基を有する複数の熱硬化性樹脂を用いたハイブリッド系熱硬化性粉体塗料、例えば、グリシジルエーテル基を備えたエポキシ樹脂とカルボキシル基を備えたポリエステル樹脂とからなるエポキシ/ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、並びに、グリシジル基を備えたアクリル樹脂とカルボキシル基を備えたポリエステル樹脂とからなるアクリル/ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、はそれぞれの樹脂が相互にベース樹脂と硬化剤の関係にあるので、いずれか一方の樹脂を本発明における「熱硬化性樹脂」とみなし、他方の樹脂を本発明で使用される「硬化剤」とみなして、本発明の熱硬化性粉体塗料を製造してもよい。
【0059】
本発明で使用される顔料としては、一般的に熱硬化性粉体塗料に用いられているものを使用することができ、例えば、着色顔料、体質顔料、染料又はこれらの混合物のいずれをも使用することが可能である。
【0060】
着色顔料としては、無機着色顔料と有機着色顔料のいずれをも使用することが可能であり、無機着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、カーボンブラック、ウルトラマリーン、プルシアンブルー、コバルトブルー、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、マンガン紫、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、黄土、黄鉛、カドミウムイエロー、アンチモンイエロー等を挙げることができる。
【0061】
有機着色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17等のフタロシアニン系顔料;C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料;C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95等のアゾ系顔料;C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリン系顔料;C.I.ピグメントイエロー154等のベンズイミダゾロン系顔料;C.I.ピグメントレッド170等のナフトトール系顔料を挙げることができる。
【0062】
着色顔料の色としては、各種の色を採用することが可能であるが、基本色として、イエロー、マゼンダ、シアン、黒、及び、白を準備すれば十分である。イエローとしては、ジスアゾイエロー等のアゾ系顔料、鉄黄等が挙げられる。マゼンダとしては、C.I.ピグメントレッド、ベンガラが挙げられる。シアンとしては、銅フタロシアニン、シアニンブルーが挙げられる。黒としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄が挙げられる。白としては、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられる。
【0063】
染料としては、ニグロシン染料、アニリン染料等が挙げられる。
【0064】
なお、更に、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆雲母等のパール顔料;亜鉛、鉄、銅等の金属のフレーク、粉末及びそれらに表面処理を施したもの;各種のメタリック顔料;等を本発明の顔料として使用することも可能である。
【0065】
体質顔料としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0066】
本発明の原料マスターバッチに含まれる顔料はその製造段階において既に十分に分散されている。また、本発明の原料マスターバッチを使用した熱硬化性粉体塗料の製造における混練工程では硬化剤を含む全ての原料が再度混練される。したがって、本発明の熱硬化性粉体塗料の製造では、各原料は少なくとも2回の混練を経る。複数回の混練により、異なる色の顔料は十分に分散するので、本発明の原料マスターバッチで調色された熱硬化性粉体塗料で得られた塗膜には、粉体塗料のドライブレンド法で得られた塗膜にみられるような色の斑点がなく、均一な色を示す。
【0067】
本発明で使用される添加剤(顔料、硬化剤を除く)としては、熱硬化性粉体塗料において通常使用されている、表面調整剤、平滑剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、発泡防止剤(ワキ防止剤)、帯電制御剤、流動性付与剤、流展剤等を挙げることができる。表面調整剤としては、ジメチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。平滑剤は、粉体塗料の加熱溶融時の流動性を向上させて、塗膜をより平滑にするためのものであり、例えば、アクロナール4F(BASF社製)を挙げることができる。硬化触媒としては、ジブチル錫ジオキサイド等の有機系スズ化合物などが挙げられる。発泡防止剤としては、ベンゾイン化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物などが挙げられる。帯電制御剤は、粉体塗料を、静電塗装、静電流動浸漬法に使用する場合に、その帯電量を増大させ、かつ、安定させるものであり、粉体塗料の帯電特性に応じて正電荷制御剤と負電荷制御剤のいずれかが使用される。正電荷制御剤としては、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級化アンモニウム塩などが挙げられる。負電荷制御剤としては、塩素化ポリエステル、芳香族オキシカルボン酸などが挙げられる。流動性付与剤としては、二酸化チタン、AEROSIL 200(日本アエロジル社製)等のシリカなどが挙げられる。なお、流動性付与剤は、粉体に流動性を付与し、また、耐ブロッキング性を向上させる目的を有するので、粉砕工程で添加されることが好ましい。この他にも、必要に応じて、一般に使用されている酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を使用してもよい。
【0068】
熱硬化性粉体塗料に占める顔料、硬化剤、又は、その他の添加剤(顔料及び硬化剤を除く)の割合は、粉体塗料塗膜の隠蔽性、平滑性等の求められる塗膜性能に応じて適宜選択できる。具体的な配合量としては、顔料、硬化剤及びその他の添加剤の種類によっても異なるが、通常、粉体塗料全体の、0.1〜100重量%、好ましくは0.1〜80重量%、より好ましくは0.1〜60重量%である。
【0069】
本発明の熱硬化性粉体塗料は、被塗装物品の表面に塗布され、焼付けされることによって粉体が加熱溶融して流動化すると共に熱硬化性樹脂が架橋して塗膜を形成することができる。
【0070】
前記被塗装物品としては、粉体塗装が可能な素材であれば特に限定されない。例えば、各種の金属類、各種の表面処理が施された金属類、各種のプラスチック類、並びに、既に塗装された表面を有する各種物品等が挙げられる。また、本発明の熱硬化性粉体塗料の塗布は従来から公知の方法で実施することができ、例えば、静電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装、流動浸漬法等を採用することができる。塗装物品表面に形成される塗装膜厚には特に制限はないが、硬化後の塗膜は10〜1000μm、好ましくは20〜200μmである。また、焼付けは、通常80〜250℃程度、好ましくは100〜200℃程度の温度で、約3〜120分、好ましくは20〜40分程度の時間をかけて行われる。
【0071】
本発明で得られた熱硬化性粉体塗料は、例えば、自動車、家電製品、鋼製家具、事務用品、建材、鋼管等の従来から粉体塗料が使用されている用途に制限なく使用できる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明する。下記の「部」および「%」はそれぞれ重量部および重量%を示す。なお、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0073】
実施例1
エポキシ系グレー粉体塗料の製造
【0074】
(1)白色マスターバッチ(WA)の調製
酸化チタンJR603(テイカ株式会社製)30部、炭酸カルシウム5部、エピコート1004(油化シェルエポキシ株式会社製、エポキシ樹脂)100部、アクロナール4F(BASF社製、表面調整剤)0.5部、ベンゾイン(和光純薬製、表面調整剤)0.5部を室温でへンシェルミキサーFM10C(三井鉱山株式会社製)を用いて混合し、エクストルーダー(BUSS社製、ブスコニーダーPR−46)で混練し、次いで、粗粉砕して白色マスターバッチ(WA)を得た。
【0075】
(2)黒色マスターバッチ(BA)の調製
ラーベン1255(カーボンブラック、コロンビアカーボン日本社製)1.0部、炭酸カルシウム30.0部、エポキシ樹脂100部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部を(1)白色マスターバッチの調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチ(BA)を得た。
【0076】
(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WA)95部、黒色マスターバッチ(WB)3部、ジシアンジアミド(硬化剤)1.5部を室温でへンシェルミキサーで混合し、エクストルーダーで溶融混練、粗粉砕した後、微粉砕器(ホソカワミクロン社製、ACM5)で微粉砕し、100メツシュのふるいを通して粗大粒子を除き、平均粒径33μmのエポキシ系グレー粉体塗料を得た。なお、平均粒子径は粒度分布計(日機装株式会社製DSX−2、商品名マイクロトラツクHRA)を用いて測定した。
【0077】
実施例2
ハイブリッド系グレー粉体塗料の製造
【0078】
(1)白色マスターバッチ(WB)の調製
ファインディックM8520(大日本インキ化学工業株式会社製、酸含有ポリエステル樹脂)50部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、酸化チタンJR60350部を実施例1の(1)白色マスターバッチ(WA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して白色マスターバッチ(WB)を得た。
【0079】
(2)黒色マスターバッチ(BB)の調製
ファインディックM852050部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、ラーベン12551.0部を実施例1の(2)黒色マスターバッチ(BA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチを得た。
【0080】
(3)ハイブリッド系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WB)95部、黒色マスターバッチ(BB)3部、エピコート1004(硬化剤として使用)50部を実施例1の(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製と同様の方法により製造し、平均粒径35μmのハイブリッド系グレー粉体塗料を得た。
【0081】
実施例3
ポリエステル系グレー粉体塗料の製造
【0082】
(1)白色マスターバッチ(WC)の調製
ファインディックM8020(大日本インキ化学工業株式会社製、水酸基含有ポリエステル樹脂)60部、アクロナール4F0,5部、ベンゾイン0.5部、酸化チタンJR60340部を実施例1の(1)白色マスターバッチ(WA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して白色マスターバッチ(WC)を得た。
【0083】
(2)黒色マスターバッチ(BC)の調製
ファインディックM802060部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、カーボンブラック ラーベン12551.0部を実施例1の(2)黒色マスターバッチ(BA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチ(BC)を得た。
【0084】
(3)ポリエステル系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WC)95部、黒色マスターバッチ(BC)3部、B1530(ヒュルス社製、ブロックイソシアネート、硬化剤)10部、触媒としてジブチル錫ジオキサイド(DBTO)0.3部を実施例1の(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製と同様の方法により平均粒径35μmのポリエステル系グレー粉体塗料3を得た。
【0085】
実施例4
アクリル系グレー粉体塗料の製造
【0086】
(1)白色マスターバッチ(WD)の調製
ファインディックA−253(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ基含有アクリル共重合樹脂)54部、アクロナール4F0.55部、ベンゾイン0.5部、酸化チタンJR603(テイカ株式会社製)430を実施例1の(1)白色マスターバッチ(WA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して白色マスターバッチ(WD)を得た。
【0087】
(2)黒色マスターバッチ(BD)の調製
ファインデイックM802075.5部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、カーボンブラック ラーベン12551.0部を実施例1の(2)黒色マスターバッチ(WA)と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチ(BD)を得た。
【0088】
(3)アクリル系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WD)95部、黒色マスターバッチ(BD)3部、ドデカン二酸(和光純薬工業株式会社社製、硬化剤)10部を実施例1の(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製と同様の方法により平均粒径35μmのアクリル系グレー粉体塗料を得た。
【0089】
比較例1
エポキシ系グレー粉体塗料の製造
【0090】
(1)白色粉体の調製
酸化チタン35部、炭酸カルシウム2部、エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド(硬化剤)3部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部をへンシェルミキサ―に入れ混合する。次いでエクストルーダー(BUSS社製、ブスコニーダーPR−46)で混練し、排出された混練物を冷却後粗粉砕し、次いで微粉砕、分級(篩分け)して白色粉体を得た。
【0091】
(2)黒色粉体の調製
カーボンブラック ラーベン12551.0部、炭酸カルシウム30部、エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド3部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部を上記(1)白色粉体の調製と同様の方法で混合、混練、粗粉砕、微粉砕、分級(篩分け)して黒色粉体を得た。
【0092】
(3)グレー粉体塗料の調製
特許2909204号の実施例に従い、(1)白色粉体97部、(2)黒色粉体3部を一緒に、0.1%の界面活性剤を含む水に35重量%にしてボールミルにかけてスラリーを形成した。そのスラリーを112℃の入口空気温度および50℃の排出温度を用いてスプレー乾燥した後、凝集組成物を解砕し、篩分けしてグレー粉体塗料を得た。得られた組成物の平均粒子径は18μmであった。
【0093】
比較例2
一般の粉体塗料製造法によるグレー粉体塗料の製造
【0094】
酸化チタン35部、カーボンブラック ラーベン1255 0.3部、炭酸カルシウム5部、エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド3部、アクロナール4F 0.5部、ベンゾイン0.5部を室温でへンシェルミキサーFM10C(三井鉱山株式会社製)を用いてドライブレンドし、エクストルーダー(BUSS社製、ブスコニーダーPR−46)で混練し、次いで、粗粉砕、微粉砕、分級してグレー粉体塗料を得た。グレー粉体塗料の平均粒子径は30μmであった。
【0095】
静電塗装
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた6種類のグレー粉体塗料をリン酸亜鉛処理鋼板上に静電塗装し、180℃で30分間焼付を行い、得られた膜厚約50μmのグレー色塗膜の塗膜外観の評価結果を表1にまとめた。
【0096】
評価方法
評価方法は次の通りに行った。
1)色の均一性:肉眼判定により塗膜表面に着色斑点の有無を観察した。
○・・・着色斑点がまったく無く色調が均一である。
△・・・着色斑点があるが、50cm以上離れてみると斑点が見えにくい。
×・・・着色斑点がはっきり分かり、50cm以上離れてみても斑点が分かる。
2)塗面の平滑性:肉眼判定により塗面の平滑性を観察したり
○・・・へコミ、凹凸などが全くなく、平滑性が良好である。
△・・・少し凹凸があり、やや平滑性が劣る。
×・・・相当に凹凸が認められ、平滑性が劣る。
3)鮮映性:塗面に反射する蛍光灯の輸郭を肉眼で観察した。
○・・・蛍光灯の光の輸郭がはっきり見えて、鮮映性が良好である。
△・・・蛍光灯の光の輸郭がやや不鮮明で、鮮映性がやや劣っている。
×・・・蛍光灯の光の輸郭がよく分からない。鮮映性が劣っている。
4)光沢:JIS K 5400 7.6に基づき、鏡面光沢度測定装置を用い60度光沢を測定した
【0097】
【表1】
【0098】
粉体塗装物品の塗膜表面における顔料分散状態の観察
本発明により製造した実施例1のエポキシ系グレー粉体塗料の塗装により得られた塗膜表面(図1)と、従来の混練粉砕法により製造した比較例2のエポキシ系グレー粉体塗料の塗装により得られた塗膜表面(図2)とを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。走査型電子顕微鏡は日立製作所製S−800を使用した。加速電圧を5kv、倍率5000媒、傾斜45度において塗膜表面の観察を行った。
【0099】
図1及び図2から明らかなように、実施例1の粉体塗料から得られた塗膜表面は樹脂に覆われ平坦であるのに対し、比較例2の粉体塗料から得られた塗膜表面には樹脂でよくぬれていない顔料粒子が突出しており、これらの顔料粒子が凹凸を形成するために、表面が粗い。これが、表1に示した比較例2の平滑性、鮮映度及び60度光沢が実施例1に比較して低い理由であると思われる。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、平滑性、光沢、鮮映性等の外観が優れ、顔料の分散性が良好で調色しやすく、塗装物品上の塗膜の色が均一な熱硬化性粉体塗料を得ることができる。
【0101】
しかも、従来の熱硬化性粉体塗料の製造方法に比較して、精度良く、且つ、簡便に調色が行えるので、熱硬化性粉体塗料の多色少量生産を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の粉体塗料の塗装物品の表面の電子顕微鏡写真
【図2】比較例2の粉体塗料の塗装物品の表面の電子顕微鏡写真
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性粉体塗料及びその製造方法に関し、特に、熱硬化性マスターバッチを用いた熱硬化性粉体塗料の製造方法に関する。また、本発明は、調色精度が優れ、且つ、調色が容易な熱硬化性粉体塗料の製造方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性粉体塗料とは、塗料中に有機溶剤や水等の溶媒を含まない一方で、熱硬化性樹脂、顔料、硬化剤、その他の添加剤を塗膜形成成分として含む粉体状の塗料の一種である。粉体塗料は、通常の液状塗料と同様に、美装用又は保護用の工業用塗料として使用されている。
【0003】
熱硬化性粉体塗料の製造方法には大きく分けて湿式法と乾式法の2種類がある。湿式法は各種原料を有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させた状態で混合を行い、その後、溶媒を濾過又は噴霧乾燥等の方法で除去して粉体塗料を得る手法である。乾式法は熱硬化性粉体塗料の製造に一般的に使用されている手法であり、原料である熱硬化性樹脂、顔料、硬化剤、その他の添加剤を溶媒の非存在下で混合(ドライブレンド)し、次いでこれらの原料を所定の温度条件下で混練した後、冷却して粉砕する。粉砕物は、次いで分級され、秤量して袋詰めされて粉体塗料の製品となる。
【0004】
乾式法による熱硬化性粉体塗料の製造中の混練工程は、熱硬化性樹脂をその融点付近まで加熱して流動性を得た上で、これに剪断力を与えて、顔料等の原料を樹脂中に分散させるのが目的である。しかし、混練中に過度に熱硬化性樹脂を加熱すると、熱硬化性樹脂が架橋して分子量が増加することにより、得られる粉体塗料にブツが生じたり、物性が悪化し、結果的に粉体塗料から得られる塗膜の外観や平滑性が悪化する。したがって、乾式法による熱硬化性粉体塗料の製造中の混練工程では、できるだけ温度を上げずに且つ短時間で混練機を通過させる必要がある。なお、熱硬化性粉体塗料の製造に用いる混練機は分散効率がよく、また、万が一熱硬化性樹脂が架橋しても、架橋した樹脂成分を完全に且つ速やかに排出できる、いわゆるセルフクリーニング性の良い専用機が用いられている。
【0005】
しかし、比較的低温で且つ短時間の混練工程を含む乾式法で製造された熱硬化性粉体塗料は、顔料を十分に解砕することができないために、低温であっても長時間かけて顔料を分散させることのできる湿式法で製造された熱硬化性粉体塗料に比べて、顔料の分散が十分でない。このため、乾式法で製造された熱硬化性粉体塗料の塗装面は湿式法で得られた熱硬化性粉体塗料の塗装面と比較して結果的に鮮映性が劣り、やや曇ったものとなる傾向がある。なお、加熱による架橋性がなく、強力な混練機を用いて、高温で長時間混練を継続可能な熱可塑性樹脂からなる熱可塑性粉体塗料と比較しても、乾式法で得られた熱硬化性粉体塗料中の顔料のぬれ(wetting)と分散性は十分でない。このように、熱硬化性粉体塗料の製造は、ベース樹脂である熱硬化性樹脂の加熱架橋性により、原料、特に顔料、の分散に困難を伴う。
【0006】
また、熱硬化性粉体塗料は、更に粉体塗料特有の調色の困難性という問題点をも有している。
【0007】
例えば、通常の液状塗料の調色では、同じタイプで色が異なる液状塗料を撹拌して混合すると、容易に相互に溶け合って、均一な色の液状塗料が得られる。したがって、塗装時に比較的自由な調色を行うことができる。しかし、粉体塗料の調色では、色が異なる粉体塗料を塗装時に混合しても相互に溶け合わないので、この混合物を塗装すると、均一な色とならず、それぞれの色の斑点が生じる。したがって、塗装時に調色を行うことは困難である。
【0008】
このため、熱硬化性粉体塗料を用いて所定の色の塗装を得るには、数種類の着色顔料と熱硬化性樹脂、硬化剤、その他の添加剤を混合し、混練、粉砕、分級と続く一連の製造工程を経て得られた粉体塗料を実際に塗装して色を判定する必要がある。しかし、通常、所定の色に調色するためには、この一連の工程を何回も繰り返して色合わせしなければならない。したがって、熱硬化性粉体塗料の調色は極めて効率が悪く時間を要する。このように、調色の困難性は熱硬化性粉体塗料の大きな欠点であり、溶媒を使用しないこと等から環境にやさしい塗料と評価され、様々な用途が期待される熱硬化性粉体塗料の発展を阻害する要因となっている。
【0009】
そこで、これらの長い製造工程を経ず、着色した粉体塗料同士を混合して調色するドライブレンド方式が特許第2909204号公報、特開平11−70360号公報、特開2000−303029号公報、特開2001−302981号公報に提案されている。
【0010】
特許第2909204号は粒子の最大寸法が20μm以下の小さい粒径の色の異なる粉体塗料をドライブレンドする粉体塗料の調色方法を開示している。通常の粉体塗料の粒径は30μm程度であり、ドライブレンド方式で調色した混合粉体塗料で得られた塗膜は、色相の異なる斑点となる。しかし、この調色方法では、使用する粉体塗料の粒子径が肉眼で判別不可能な程度に十分小さいのでドライブレンド方式でも見かけ上均一に調色できると説明されている。しかし得られた塗膜は実際には均一な色相ではない。しかも、粒子径が20μm以下と小さいので、粉体塗料が凝集して粉体自体の流動性が悪い。したがって、例えば、塗装ガンから均一に粉体塗料を吐出させることができないので、市販の静電塗装装置で塗装を行うことは極めて困難である。
【0011】
特開平11−70360号公報、特開2000−303029号公報、特開2001−302981号公報には二種類以上の顔料を含む着色粉体塗料を塗装現場でドライブレンドして塗装、焼付し、粉体塗料が溶融した時点で色の異なる粉体塗料同士が融着・混和して顔料粒子が混ざりあい、調色効果が得られる方法を開示している。しかし、一般に、粉体塗料は焼付時の溶融粘度が高いので顔料が十分に融合して混色することは難しい。また、調色しようとする色の明度が異なると斑点が目立つので、濃色、中間色、淡色ごとにそれぞれ明度の異なる着色粉体塗料を必要とする。したがって、結果的に、莫大な数の色合わせ用着色粉体塗料をストックする必要があり、貯蔵場所と経済上の負担が大きいなどの難点がある。
【0012】
すなわち、これらの調色に関する先行技術では、たしかに、乾式法による複雑で長時間と多くの労力を要する熱硬化性体塗料の製造工程を経ることなく、色の異なる二種類以上の熱硬化性粉体塗料をドライブレンドして塗装時に調色しているが、通常の液状塗料の調色のレベルに相当する均一な色が得られなかったり、多くの種類の着色粉体塗料を準備しなければならないという問題点が依然として存在している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題点を解決することを目的とするものであり、具体的には、平滑性、光沢、鮮映性などの塗膜外観が良好で、且つ、調色精度が良く、塗膜が均一な色調をもつ熱硬化性粉体塗料を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、(1)熱硬化性樹脂、並びに、(2)顔料、硬化剤及び熱硬化性粉体塗料用添加剤(顔料及び硬化剤を除く)からなる群から選択された1種類以上の原料を含む、熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを用いて熱硬化性粉体塗料を製造することによって解決される。
【0015】
前記原料マスターバッチは、(2)顔料、硬化剤、及び、熱硬化性粉体塗料用添加剤(顔料及び硬化剤を除く)からなる群から選択された1種類以上の原料を、溶媒の非存在下で(1)熱硬化性樹脂と共に混練後、粉砕又は造粒する工程を経て製造することができる。前記混練は前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で行われてもよい。
【0016】
本発明の熱硬化性粉体塗料は、具体的には、上記熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを、溶媒の非存在下、熱硬化性樹脂の硬化温度未満で混練する混練工程、並びに、前記混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程を経て製造することができる。さらに、明度、彩度、及び、色相の少なくとも1つが異なる2種類以上の熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを使用する場合は、溶媒の非存在下、前記マスターバッチを熱硬化性樹脂の硬化温度未満で混練する混練工程、並びに、前記混練工程で得られた混合混練物を粉砕する粉砕工程を経て、所望の色の熱硬化性粉体塗料を製造することができる。
【0017】
前記混練工程では、熱硬化性樹脂及び/又は硬化剤を更に添加することが可能である。また、本発明の熱硬化性粉体塗料の製造方法は、前記粉砕工程で得られた粉砕物を分級する分級工程を更に含んでもよい。
【0018】
上記の製造方法により得られた熱硬化性粉体塗料は、例えば、土木建築資材、電気・電子機器、車両、道路資材、水道・ガス資材、金属製品、家庭用品、各種機械・工具、計器、医療機器、農業用資材、船舶、スポーツ・レジャー用品等の各種物品の塗装に好適に使用される。
【0019】
【作用】
熱硬化性粉体塗料は、熱硬化性樹脂、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤から構成されており、通常は、これらの原料を一度に混合し、更に加熱下で混練して熱硬化性粉体塗料を製造している。この場合、熱硬化性樹脂の架橋を回避するために、比較的短時間でこれらの原料を混練する必要があるので、熱硬化性粉体塗料中の上記原料、特に顔料のぬれが悪く分散が不十分となるおそれがある。しかし、本発明では、この混練工程を実質的に2回に分離するので、熱硬化性樹脂の架橋を回避しつつも、顔料等の原料が熱硬化性樹脂でぬれることにより、熱硬化性粉体塗料中に当該原料を良好に分散させることが可能である。
【0020】
具体的には、本発明では、最初の混練工程によって顔料等を予め高度に分散したマスターバッチを製造し、各種のマスターバッチを2回目の混練工程によって相互に溶解させるという2段階のステップを経て熱硬化性粉体塗料を製造する。マスターバッチの製造段階では、硬化剤を必ずしも配合する必要がないので、硬化剤を含まない原料のマスターバッチの製造では、当該原料を時間をかけてベース樹脂である熱硬化性樹脂に分散させることができる。
【0021】
これまで、熱可塑性樹脂をベースとしたマスターバッチは知られているが、熱可塑性樹脂とは性質が全く異なる熱硬化性樹脂をベースとしたマスターバッチを熱硬化性粉体塗料の分野で使用することは全く行われていない。本発明は、熱硬化性粉体塗料の製造にマスターバッチを使用する初めてのタイプの技術である。
【0022】
本発明の各種のマスターバッチでは、熱硬化性粉体塗料の原料がベースとなる熱硬化性樹脂中に予め十分に分散しているので、これらのマスターバッチを、溶媒の非存在下で、必要に応じて混合し、2回目の混練によって均一化することによって、原料が高度に均一に分散された熱硬化性粉体塗料が製造される。流展剤を添加すると表面張力が低下してぬれが促進されるので好ましい。なお、熱硬化性樹脂中への原料のぬれと分散はマスターバッチ製造段階である程度達成されているので、上記の2回目の混練は極めて容易に行うことが可能である。したがって、特に、本発明のマスターバッチを購入して熱硬化性粉体塗料を製造するユーザーは、熱硬化性粉体塗料の製造を容易に行うことができる。
【0023】
また、例えば、異なる顔料を使用する等して、明度、彩度、及び、色相の少なくとも1つが異なる2種類以上の本発明のマスターバッチを予め製造しておくことによって、熱硬化性粉体塗料の色を容易に調整することが可能である。すなわち、本発明のマスターバッチ中には顔料が予め十分に分散しているので、必要に応じて複数色のマスターバッチを所定量混合して2回目の混練を行うことによって、異なる色の顔料が容易に均一に分散し、その結果、均一な色調の熱硬化性粉体塗料を得ることができる。
【0024】
特に、色の異なる本発明のマスターバッチを従来の顔料と同様に扱うことにより、CCM(コンピュータ・カラー・マッチング)を用いて精度のよい調色が可能になる。通常の熱硬化性粉体塗料の製造方法では顔料の分散度が低いので、通常、製品の調色合格基準は色差ΔE=1以内と定められている。しかし、顔料が良好に分散している本発明の顔料マスターバッチを使用して調色すると色差ΔE=0.5以内にすることが可能である。CCMを使用すると調色精度が良いので試作回数が少なくて済み、短時間で調色を行うことができるので様々な色の熱硬化性粉体塗料を短時間で製造することができる。
【0025】
さらに、従来の熱硬化性粉体塗料のドライブレンドによる調色では数十色の顔料を必要とするが、本発明のマスターバッチを用いて様々な色の熱硬化性粉体塗料を製造するにあたっては、必要な色はマスターバッチを混練して得ることができるので、原色のマスターバッチがあれば十分である。例えば酸化チタン、カーボンブラック、シアニンブルー、べんがら、鉄黄を基本とし、その他は、必要な色の数だけ、その色に応じた顔料を含むマスターバッチがあればよい。これにより、不要な顔料の在庫を削減することも可能である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について順次説明する。
【0027】
本発明では、まず熱硬化性粉体塗料の原料(熱硬化性樹脂、並びに、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤)のマスターバッチ(以下、「原料マスターバッチ」という)を製造し、これを用いて熱硬化性粉体塗料を製造する。
【0028】
本発明の熱硬化性粉体塗料用の原料マスターバッチは、熱硬化性粉体塗料用成分から構成されるが、具体的には、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤(顔料及び硬化剤を除く。以下同じ)の中から選択される1種類以上、好ましくは1種類又は2種類、の原料を熱硬化性樹脂中に含むものである。したがって、原料マスターバッチは、(1)熱硬化性樹脂+顔料、(2)熱硬化性樹脂+硬化剤、(3)熱硬化性樹脂+添加剤、(4)熱硬化性樹脂+顔料+硬化剤、(5)熱硬化性樹脂+硬化剤+添加剤、(6)熱硬化性樹脂+顔料+添加剤、(7)熱硬化性樹脂+顔料+硬化剤+添加剤の何れの組み合わせから構成されていてもよい。
【0029】
なお、本発明の熱硬化性粉体塗料用の原料マスターバッチは、顔料、硬化剤及び添加剤のいずれかのカテゴリーの中から選択された2種類以上の原料を含むものであってもよい。例えば、本発明の原料マスターバッチは2種類の異なる顔料を含むことができる。また、原料マスターバッチは、顔料、硬化剤及び添加剤のいずれかのカテゴリー中から選択された2種類以上の原料と、他のカテゴリー中から選択された1種類以上の原料とを同時に含むものであってもよい。例えば、本発明の原料マスターバッチは、2種類以上の顔料と1種類の添加剤を含むことができる。
【0030】
原料マスターバッチは、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤からなる群から選択された1種類以上の原料と、熱硬化性樹脂とを、インターナルミキサー(バンバリミキサー)、双腕型捏和機(ニーダーキミサー、加圧ニーダー)、ロールミキサー等の混練機、或いは、1軸又は2軸型エクストルーダー等の押出機を用いて混練することにより、製造可能である。
【0031】
原料マスターバッチの製造段階では、熱硬化性樹脂中に、顔料、硬化剤、及び、その他の添加剤を十分に分散することが好ましい。したがって、前記混練工程前に熱硬化性樹脂とその他の原料を予め混合し、得られた混合物を上記の混練工程に付することが好ましい。混合工程は、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等の混合機により熱硬化性樹脂とその他の原料を混合することによって実施可能である。しかし、必要に応じて混合工程を省略することも可能である。なお、混合工程と混練工程を分離することなく、混合機と混練機の2つの機能を備えた混合混練機を用いて原料を連続的に混合混練してもよい。
【0032】
上記の混合及び/又は混練は溶媒の非存在下で行われる。ここでの溶媒とは、室温で液状であり、揮発性を有するものを意味するが、その種類は特に限定されるものではない。具体的な溶媒としては、例えば、水、アルコール、炭化水素、ハロゲン系炭化水素、揮発性シリコーン等を挙げることができる。本発明の原料マスターバッチの製造では溶媒を使用しないので、溶媒が揮発して周囲の環境を汚染することがない。
【0033】
上記の混練工程では数十〜数百の1次粒子がコアギュレート(凝集)している顔料等の2次粒子が解砕されて熱硬化性樹脂中に分散される。顔料等の凝集力に打ち勝つ為には、顔料等のぬれを促進すると共に、大きな剪断力を発生することの可能な混練機を使用することが好ましい。
【0034】
上記の混練工程は、任意の温度及び時間条件で行うことが可能である。しかし、硬化剤を含む原料マスターバッチを製造する場合は、熱硬化性樹脂の架橋を回避するために、熱硬化性樹脂の硬化温度未満で且つ短時間に混練を行うことが好ましい。例えば、硬化剤を含む原料マスターバッチ(例えば、上記(2)、(4)、(5)又は(7)の組み合わせを含むマスターバッチ)を製造する場合は、インターナルミキサー、双腕型捏和機、ロールミキサー等の高剪断型混練機を用いて短時間で混練を終了することが好適である。
【0035】
このように、硬化剤がある程度分散された原料マスターバッチを予め製造しておき、当該原料マスターバッチを熱硬化性粉体塗料製造に使用することにより、最終的に得られた熱硬化性粉体塗料中の硬化剤の分散性が向上する。したがって、物品表面での粉体塗料の焼付時に、架橋による塗膜の体積の変化が均一となり塗膜の平滑性に良い結果を与えることができる。
【0036】
一方、硬化剤を含まない原料マスターバッチ(例えば、上記(1)、(3)又は(6)の組み合わせを含むマスターバッチ)を製造する場合は、当該硬化剤による熱硬化性樹脂の架橋を考慮する必要がないので、原料を、比較的高温下で、比較的長時間、熱硬化性樹脂と十分に混練することが可能であり、例えば、顔料が非常に高度に分散したマスターバッチを得ることができる。
【0037】
なお、顔料以外の熱硬化性粉体塗料の原料である硬化剤及びその他の添加剤は、熱硬化性樹脂と相溶性の高いものが選択することが好ましい。その場合、これらの混練は比較的容易であり、小馬力の混合撹拌機であっても、十分均一に混合混練させることが可能である。
【0038】
本発明の熱硬化性粉体塗料用の原料マスターバッチが顔料を含む場合、当該顔料は着色顔料、体質顔料又はこれらの混合物のいずれであってもよい。また、顔料の色の種類は特に指定されず、1種類でも、2種類以上でも構わない。しかし、熱硬化性粉体塗料の調色、とくにCCMでの調色、が必要な場合は、1種類の色の顔料のみを配合して原料マスターバッチとすることが好ましい。
【0039】
上記の混練工程を経て得られた混練物は粉砕又は造粒されて原料マスターバッチとされる。粉砕方法としては、公知の手段を用いることが可能であり、例えば、1対のロールで混練物を圧縮してシート状に成形し、これを冷却して粉砕する方法が挙げられる。造粒方法としても、公知の手段を用いることが可能であり、例えば、水平に固定された板状多孔ダイス上のロールが回転して、ダイス上に落下する混練物をダイス孔を通して下方に押し出し、回転するカッターで切断する方法;回転する円筒状多孔ダイスと摩擦により駆動される2個の内部ロールとの間で混練物を押し出し、ダイス外側面のカッターで切断する方法;臼と杵の間に混練物を充填し、上下の杵を移動させて圧縮成形させる方法;並びに、混練物をダイスよりストランドとして押出し、適当な大きさに切断しペレットを得る方法を挙げることができる。なお、必要に応じて、得られた造粒物の表面を平滑とする整粒操作を行ってもよい。
【0040】
本発明の原料マスターバッチ中に配合される各種の原料の濃度は、用途に応じて広範囲に調整することが可能である。原料の種類にも依存するが、原料マスターバッチ中の原料濃度は、0.1〜99質量%、好ましくは、5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは、20〜80質量%である。なお、顔料を含むマスターバッチでは、混練により顔料をマスターバッチ中に十分に分散することが可能であれば、顔料の配合量はマスターバッチ全体の20質量%を越えても良い。したがって、顔料のマスターバッチでは、顔料の濃度は、マスターバッチ全体の30〜70質量%、さらに40〜60重量%、の範囲であってもよい。
【0041】
本発明の熱硬化性粉体塗料は、上記の原料マスターバッチを混練する混練工程と、当該混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程を経て製造することができる。
【0042】
なお、熱硬化性粉体塗料のより高度な均一性を得るためには、混練工程前に、各種の原料マスターバッチを予めドライブレンドする混合工程を設けることが好ましい。当該混合工程は、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー等の混合機により原料マスターバッチを混合することによって実施可能である。しかし、必要に応じて混合工程を省略することも可能である。なお、混合工程と混練工程を分離することなく、混合機と混練機の2つの機能を備えた混合混練機を用いて原料を連続的に混合混練してもよい。
【0043】
上記混練工程においては、1種類又は2種類以上の原料マスターバッチを混練することが可能である。顔料等の短時間では熱硬化性樹脂中への分散が困難な原料は予め原料マスターバッチ中に十分に分散させてあるので、当該混練工程で得られる熱硬化性粉体塗料は、従来の製造方法によって得られるものと比較して、極めて成分の分散性が良好で、溶剤型塗料に匹敵する均一性を得ることができる。したがって、本発明で得られた熱硬化性粉体塗料を塗装して得られる塗面は平滑性、鮮映性が極めて優れている。特に、色の異なる原料マスターバッチを所定の割合で混合混練することにより、任意の色の熱硬化性粉体塗料を調製することが可能である。
【0044】
なお、例えば、前記混練工程で混練される原料マスターバッチに硬化剤が含まれていない場合、或いは、前記混練工程で混練される原料マスターバッチ中に硬化剤を含むマスターバッチが含まれていても、硬化剤の絶対量が不足する場合等は、前記混練工程において硬化剤を別途添加することも可能である。また、熱硬化性粉体塗料を構成する熱硬化性樹脂成分は全て原料マスターバッチ由来のものであってもよいが、必要に応じて前記混練工程中に熱硬化性樹脂を更に添加して、熱硬化性粉体塗料の組成を調整してもよい。
【0045】
必要に応じて、原料マスターバッチの混練工程において、或いは、その前後に任意に設置可能な混練工程において、他の熱硬化性粉体塗料を添加して原料マスターバッチと一緒に混練することも可能である。この場合は、他の熱硬化性粉体塗料の色、物性等を適宜選択することにより、本発明の熱硬化性粉体塗料の色相、光沢、平滑度、塗膜物性等の性能を調整することができる。
【0046】
上記の混合及び/又は混練は溶媒の非存在下で行われる。ここでの溶媒とは、原料マスターバッチの製造における場合と同じ意味である。このように、本発明の熱硬化性粉体塗料の製造では溶媒を使用しないので、溶媒が揮発して周囲の環境を汚染することがない。
【0047】
前記混練工程では、原料マスターバッチ同士の相溶化を迅速に行うために加熱下で混練が行われてもよい。しかし、混練物中には硬化剤が含まれることになるので、熱硬化性樹脂の架橋を回避するために、加熱条件は熱硬化性樹脂の硬化温度未満とする必要がある。なお、前記混練工程で使用される混練機としては、溶融混練時の硬化反応を抑制することができるタイプのものが好ましく、例えば、BUSS社のコニーダーを挙げることができる。なお、必要に応じて、前記混練工程において、その他の添加剤(硬化剤及び顔料を除く)を添加してもよい。
【0048】
上記混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程は、粉体塗料の分野で公知の手法により実施することが可能である。例えば、混練工程で得られた混練物をシート状又はストランド状に成形し冷却したものをカッター等で5〜15mm程度のサイズのチップとし、これを更にハンマーミル、高速衝撃粉砕機、高速ピン式粉砕機等によって微粉砕することによって粉砕物を得ることが可能である。なお、1対のロールで混練物を圧縮してシート状に成形し、これを冷却して直接粉砕する方法を採用してもよい。
【0049】
上記粉砕工程で得られた粉砕物は、更に、振動篩い機、ブロアー型ふるい機、ロータリーシーブ、遠心分級機等の公知の篩分け手法によって分級されることが好ましく、この場合は、一定の粒度範囲内の粉体が選択されて熱硬化性粉体塗料として製品化される。
【0050】
本発明で使用される熱硬化性樹脂は、加熱により流動化する性質を有しており、その流動化温度(溶融温度)は、通常約30〜150℃程度である。したがって、原料マスターバッチ製造時の混練温度、並びに、熱硬化性粉体塗料製造時の混練温度は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、上記範囲から適宜選択される。なお、30℃未満では室温で流動化して作業性が悪化するおそれがあり、また、硬化剤が存在する条件下では、加熱温度が高いと部分的に熱硬化性樹脂が架橋するおそれがあるので、熱硬化性樹脂の流動化温度(溶融温度)は、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜100℃、の範囲にあるべきである。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、後述する硬化剤と反応しうる官能基を有する樹脂を使用することができ、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂が好適に用いられる。前記官能基を有する限り、任意のタイプのエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂も使用可能である。また、これらの樹脂を混合したハイブリッド系樹脂、例えば、エポキシ・ポリエステルハイブリッド系樹脂、エポキシ・アクリルハイブリッド系樹脂、ポリエステル・アクリルハイブリッド系樹脂、を使用してもよい。前記反応性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられる。
【0052】
熱硬化性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸を主成分とする酸成分と、多価アルコールを主成分とするアルコール成分を原料として、これらの成分を重縮合して製造することができる。上記酸成分は、特に限定されることはなく、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びこれらの無水物などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−ジシクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸を挙げることができる。また、上記アルコール成分も、特に限定されることはなく、例えばエチレンレグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール類;トリメチロールプロパン、グリセリン、ぺンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類を例示することができる。
【0053】
熱硬化性アクリル樹脂としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有エチレン性不飽和モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボン酸基含有不飽和モノマー等のホモポリマー又はコポリマーを例示することができる。
【0054】
熱硬化性エポキシ樹脂としては、グリシジルエステル樹脂、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応物やビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノール/ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール/ノボラック型エポキシ樹脂などを例示することができる。
【0055】
硬化剤としては、熱硬化性粉体塗料に通常用いられるものを使用可能であり、上記熱硬化性樹脂の反応性官能基が水酸基である場合の硬化剤としては、脂肪族多価カルボン酸、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、グリコールウレア硬化剤等が用いられる。脂肪族多価カルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びそれらの無水物を例示できる。アミノ樹脂としては、ヘキサメトキシメラミン樹脂、ヘキサエトキシメラミン樹脂を例示できる。ブロックイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式又は芳香族イソシアネートをフェノール類、ε−カプロラクタム類、アルコール類等でブロックしたものが挙げられる。
【0056】
熱硬化性樹脂の反応性官能基がカルボキシル基である場合、上記硬化剤としてはエポキシ樹脂、ポリエポキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、β−ヒドロキシアルキルアミド化合物などを挙げることができる。ポリエポキシ化合物としては、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジル(メタ)アクリレートのホモ又はコポリマー等が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物としては、トリメチロールプロパン、ソルビトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。β−ヒドロキシアルキルアミド化合物としては、β−ヒドロキシエチルプロピルアミドなどを挙げることができる。
【0057】
熱硬化性樹脂の反応性官能基がエポキシ基である場合の硬化剤としては、上記脂肪族多価カルボン酸の他、ジシアンジアミド等のアミン系硬化剤、カルボキシル酸基含有ポリエステル樹脂等を例示することができる。
【0058】
反応性官能基を有する複数の熱硬化性樹脂を用いたハイブリッド系熱硬化性粉体塗料、例えば、グリシジルエーテル基を備えたエポキシ樹脂とカルボキシル基を備えたポリエステル樹脂とからなるエポキシ/ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、並びに、グリシジル基を備えたアクリル樹脂とカルボキシル基を備えたポリエステル樹脂とからなるアクリル/ポリエステルハイブリッド系粉体塗料、はそれぞれの樹脂が相互にベース樹脂と硬化剤の関係にあるので、いずれか一方の樹脂を本発明における「熱硬化性樹脂」とみなし、他方の樹脂を本発明で使用される「硬化剤」とみなして、本発明の熱硬化性粉体塗料を製造してもよい。
【0059】
本発明で使用される顔料としては、一般的に熱硬化性粉体塗料に用いられているものを使用することができ、例えば、着色顔料、体質顔料、染料又はこれらの混合物のいずれをも使用することが可能である。
【0060】
着色顔料としては、無機着色顔料と有機着色顔料のいずれをも使用することが可能であり、無機着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、カーボンブラック、ウルトラマリーン、プルシアンブルー、コバルトブルー、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、マンガン紫、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、黄土、黄鉛、カドミウムイエロー、アンチモンイエロー等を挙げることができる。
【0061】
有機着色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17等のフタロシアニン系顔料;C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料;C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95等のアゾ系顔料;C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリン系顔料;C.I.ピグメントイエロー154等のベンズイミダゾロン系顔料;C.I.ピグメントレッド170等のナフトトール系顔料を挙げることができる。
【0062】
着色顔料の色としては、各種の色を採用することが可能であるが、基本色として、イエロー、マゼンダ、シアン、黒、及び、白を準備すれば十分である。イエローとしては、ジスアゾイエロー等のアゾ系顔料、鉄黄等が挙げられる。マゼンダとしては、C.I.ピグメントレッド、ベンガラが挙げられる。シアンとしては、銅フタロシアニン、シアニンブルーが挙げられる。黒としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄が挙げられる。白としては、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられる。
【0063】
染料としては、ニグロシン染料、アニリン染料等が挙げられる。
【0064】
なお、更に、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆雲母等のパール顔料;亜鉛、鉄、銅等の金属のフレーク、粉末及びそれらに表面処理を施したもの;各種のメタリック顔料;等を本発明の顔料として使用することも可能である。
【0065】
体質顔料としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0066】
本発明の原料マスターバッチに含まれる顔料はその製造段階において既に十分に分散されている。また、本発明の原料マスターバッチを使用した熱硬化性粉体塗料の製造における混練工程では硬化剤を含む全ての原料が再度混練される。したがって、本発明の熱硬化性粉体塗料の製造では、各原料は少なくとも2回の混練を経る。複数回の混練により、異なる色の顔料は十分に分散するので、本発明の原料マスターバッチで調色された熱硬化性粉体塗料で得られた塗膜には、粉体塗料のドライブレンド法で得られた塗膜にみられるような色の斑点がなく、均一な色を示す。
【0067】
本発明で使用される添加剤(顔料、硬化剤を除く)としては、熱硬化性粉体塗料において通常使用されている、表面調整剤、平滑剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、発泡防止剤(ワキ防止剤)、帯電制御剤、流動性付与剤、流展剤等を挙げることができる。表面調整剤としては、ジメチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。平滑剤は、粉体塗料の加熱溶融時の流動性を向上させて、塗膜をより平滑にするためのものであり、例えば、アクロナール4F(BASF社製)を挙げることができる。硬化触媒としては、ジブチル錫ジオキサイド等の有機系スズ化合物などが挙げられる。発泡防止剤としては、ベンゾイン化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物などが挙げられる。帯電制御剤は、粉体塗料を、静電塗装、静電流動浸漬法に使用する場合に、その帯電量を増大させ、かつ、安定させるものであり、粉体塗料の帯電特性に応じて正電荷制御剤と負電荷制御剤のいずれかが使用される。正電荷制御剤としては、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級化アンモニウム塩などが挙げられる。負電荷制御剤としては、塩素化ポリエステル、芳香族オキシカルボン酸などが挙げられる。流動性付与剤としては、二酸化チタン、AEROSIL 200(日本アエロジル社製)等のシリカなどが挙げられる。なお、流動性付与剤は、粉体に流動性を付与し、また、耐ブロッキング性を向上させる目的を有するので、粉砕工程で添加されることが好ましい。この他にも、必要に応じて、一般に使用されている酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を使用してもよい。
【0068】
熱硬化性粉体塗料に占める顔料、硬化剤、又は、その他の添加剤(顔料及び硬化剤を除く)の割合は、粉体塗料塗膜の隠蔽性、平滑性等の求められる塗膜性能に応じて適宜選択できる。具体的な配合量としては、顔料、硬化剤及びその他の添加剤の種類によっても異なるが、通常、粉体塗料全体の、0.1〜100重量%、好ましくは0.1〜80重量%、より好ましくは0.1〜60重量%である。
【0069】
本発明の熱硬化性粉体塗料は、被塗装物品の表面に塗布され、焼付けされることによって粉体が加熱溶融して流動化すると共に熱硬化性樹脂が架橋して塗膜を形成することができる。
【0070】
前記被塗装物品としては、粉体塗装が可能な素材であれば特に限定されない。例えば、各種の金属類、各種の表面処理が施された金属類、各種のプラスチック類、並びに、既に塗装された表面を有する各種物品等が挙げられる。また、本発明の熱硬化性粉体塗料の塗布は従来から公知の方法で実施することができ、例えば、静電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装、流動浸漬法等を採用することができる。塗装物品表面に形成される塗装膜厚には特に制限はないが、硬化後の塗膜は10〜1000μm、好ましくは20〜200μmである。また、焼付けは、通常80〜250℃程度、好ましくは100〜200℃程度の温度で、約3〜120分、好ましくは20〜40分程度の時間をかけて行われる。
【0071】
本発明で得られた熱硬化性粉体塗料は、例えば、自動車、家電製品、鋼製家具、事務用品、建材、鋼管等の従来から粉体塗料が使用されている用途に制限なく使用できる。
【0072】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明する。下記の「部」および「%」はそれぞれ重量部および重量%を示す。なお、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0073】
実施例1
エポキシ系グレー粉体塗料の製造
【0074】
(1)白色マスターバッチ(WA)の調製
酸化チタンJR603(テイカ株式会社製)30部、炭酸カルシウム5部、エピコート1004(油化シェルエポキシ株式会社製、エポキシ樹脂)100部、アクロナール4F(BASF社製、表面調整剤)0.5部、ベンゾイン(和光純薬製、表面調整剤)0.5部を室温でへンシェルミキサーFM10C(三井鉱山株式会社製)を用いて混合し、エクストルーダー(BUSS社製、ブスコニーダーPR−46)で混練し、次いで、粗粉砕して白色マスターバッチ(WA)を得た。
【0075】
(2)黒色マスターバッチ(BA)の調製
ラーベン1255(カーボンブラック、コロンビアカーボン日本社製)1.0部、炭酸カルシウム30.0部、エポキシ樹脂100部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部を(1)白色マスターバッチの調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチ(BA)を得た。
【0076】
(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WA)95部、黒色マスターバッチ(WB)3部、ジシアンジアミド(硬化剤)1.5部を室温でへンシェルミキサーで混合し、エクストルーダーで溶融混練、粗粉砕した後、微粉砕器(ホソカワミクロン社製、ACM5)で微粉砕し、100メツシュのふるいを通して粗大粒子を除き、平均粒径33μmのエポキシ系グレー粉体塗料を得た。なお、平均粒子径は粒度分布計(日機装株式会社製DSX−2、商品名マイクロトラツクHRA)を用いて測定した。
【0077】
実施例2
ハイブリッド系グレー粉体塗料の製造
【0078】
(1)白色マスターバッチ(WB)の調製
ファインディックM8520(大日本インキ化学工業株式会社製、酸含有ポリエステル樹脂)50部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、酸化チタンJR60350部を実施例1の(1)白色マスターバッチ(WA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して白色マスターバッチ(WB)を得た。
【0079】
(2)黒色マスターバッチ(BB)の調製
ファインディックM852050部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、ラーベン12551.0部を実施例1の(2)黒色マスターバッチ(BA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチを得た。
【0080】
(3)ハイブリッド系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WB)95部、黒色マスターバッチ(BB)3部、エピコート1004(硬化剤として使用)50部を実施例1の(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製と同様の方法により製造し、平均粒径35μmのハイブリッド系グレー粉体塗料を得た。
【0081】
実施例3
ポリエステル系グレー粉体塗料の製造
【0082】
(1)白色マスターバッチ(WC)の調製
ファインディックM8020(大日本インキ化学工業株式会社製、水酸基含有ポリエステル樹脂)60部、アクロナール4F0,5部、ベンゾイン0.5部、酸化チタンJR60340部を実施例1の(1)白色マスターバッチ(WA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して白色マスターバッチ(WC)を得た。
【0083】
(2)黒色マスターバッチ(BC)の調製
ファインディックM802060部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、カーボンブラック ラーベン12551.0部を実施例1の(2)黒色マスターバッチ(BA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチ(BC)を得た。
【0084】
(3)ポリエステル系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WC)95部、黒色マスターバッチ(BC)3部、B1530(ヒュルス社製、ブロックイソシアネート、硬化剤)10部、触媒としてジブチル錫ジオキサイド(DBTO)0.3部を実施例1の(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製と同様の方法により平均粒径35μmのポリエステル系グレー粉体塗料3を得た。
【0085】
実施例4
アクリル系グレー粉体塗料の製造
【0086】
(1)白色マスターバッチ(WD)の調製
ファインディックA−253(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ基含有アクリル共重合樹脂)54部、アクロナール4F0.55部、ベンゾイン0.5部、酸化チタンJR603(テイカ株式会社製)430を実施例1の(1)白色マスターバッチ(WA)の調製と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して白色マスターバッチ(WD)を得た。
【0087】
(2)黒色マスターバッチ(BD)の調製
ファインデイックM802075.5部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部、カーボンブラック ラーベン12551.0部を実施例1の(2)黒色マスターバッチ(WA)と同様の方法により混合、混練、粗粉砕して黒色マスターバッチ(BD)を得た。
【0088】
(3)アクリル系グレー粉体塗料の調製
白色マスターバッチ(WD)95部、黒色マスターバッチ(BD)3部、ドデカン二酸(和光純薬工業株式会社社製、硬化剤)10部を実施例1の(3)エポキシ系グレー粉体塗料の調製と同様の方法により平均粒径35μmのアクリル系グレー粉体塗料を得た。
【0089】
比較例1
エポキシ系グレー粉体塗料の製造
【0090】
(1)白色粉体の調製
酸化チタン35部、炭酸カルシウム2部、エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド(硬化剤)3部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部をへンシェルミキサ―に入れ混合する。次いでエクストルーダー(BUSS社製、ブスコニーダーPR−46)で混練し、排出された混練物を冷却後粗粉砕し、次いで微粉砕、分級(篩分け)して白色粉体を得た。
【0091】
(2)黒色粉体の調製
カーボンブラック ラーベン12551.0部、炭酸カルシウム30部、エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド3部、アクロナール4F0.5部、ベンゾイン0.5部を上記(1)白色粉体の調製と同様の方法で混合、混練、粗粉砕、微粉砕、分級(篩分け)して黒色粉体を得た。
【0092】
(3)グレー粉体塗料の調製
特許2909204号の実施例に従い、(1)白色粉体97部、(2)黒色粉体3部を一緒に、0.1%の界面活性剤を含む水に35重量%にしてボールミルにかけてスラリーを形成した。そのスラリーを112℃の入口空気温度および50℃の排出温度を用いてスプレー乾燥した後、凝集組成物を解砕し、篩分けしてグレー粉体塗料を得た。得られた組成物の平均粒子径は18μmであった。
【0093】
比較例2
一般の粉体塗料製造法によるグレー粉体塗料の製造
【0094】
酸化チタン35部、カーボンブラック ラーベン1255 0.3部、炭酸カルシウム5部、エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド3部、アクロナール4F 0.5部、ベンゾイン0.5部を室温でへンシェルミキサーFM10C(三井鉱山株式会社製)を用いてドライブレンドし、エクストルーダー(BUSS社製、ブスコニーダーPR−46)で混練し、次いで、粗粉砕、微粉砕、分級してグレー粉体塗料を得た。グレー粉体塗料の平均粒子径は30μmであった。
【0095】
静電塗装
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた6種類のグレー粉体塗料をリン酸亜鉛処理鋼板上に静電塗装し、180℃で30分間焼付を行い、得られた膜厚約50μmのグレー色塗膜の塗膜外観の評価結果を表1にまとめた。
【0096】
評価方法
評価方法は次の通りに行った。
1)色の均一性:肉眼判定により塗膜表面に着色斑点の有無を観察した。
○・・・着色斑点がまったく無く色調が均一である。
△・・・着色斑点があるが、50cm以上離れてみると斑点が見えにくい。
×・・・着色斑点がはっきり分かり、50cm以上離れてみても斑点が分かる。
2)塗面の平滑性:肉眼判定により塗面の平滑性を観察したり
○・・・へコミ、凹凸などが全くなく、平滑性が良好である。
△・・・少し凹凸があり、やや平滑性が劣る。
×・・・相当に凹凸が認められ、平滑性が劣る。
3)鮮映性:塗面に反射する蛍光灯の輸郭を肉眼で観察した。
○・・・蛍光灯の光の輸郭がはっきり見えて、鮮映性が良好である。
△・・・蛍光灯の光の輸郭がやや不鮮明で、鮮映性がやや劣っている。
×・・・蛍光灯の光の輸郭がよく分からない。鮮映性が劣っている。
4)光沢:JIS K 5400 7.6に基づき、鏡面光沢度測定装置を用い60度光沢を測定した
【0097】
【表1】
【0098】
粉体塗装物品の塗膜表面における顔料分散状態の観察
本発明により製造した実施例1のエポキシ系グレー粉体塗料の塗装により得られた塗膜表面(図1)と、従来の混練粉砕法により製造した比較例2のエポキシ系グレー粉体塗料の塗装により得られた塗膜表面(図2)とを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。走査型電子顕微鏡は日立製作所製S−800を使用した。加速電圧を5kv、倍率5000媒、傾斜45度において塗膜表面の観察を行った。
【0099】
図1及び図2から明らかなように、実施例1の粉体塗料から得られた塗膜表面は樹脂に覆われ平坦であるのに対し、比較例2の粉体塗料から得られた塗膜表面には樹脂でよくぬれていない顔料粒子が突出しており、これらの顔料粒子が凹凸を形成するために、表面が粗い。これが、表1に示した比較例2の平滑性、鮮映度及び60度光沢が実施例1に比較して低い理由であると思われる。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、平滑性、光沢、鮮映性等の外観が優れ、顔料の分散性が良好で調色しやすく、塗装物品上の塗膜の色が均一な熱硬化性粉体塗料を得ることができる。
【0101】
しかも、従来の熱硬化性粉体塗料の製造方法に比較して、精度良く、且つ、簡便に調色が行えるので、熱硬化性粉体塗料の多色少量生産を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の粉体塗料の塗装物品の表面の電子顕微鏡写真
【図2】比較例2の粉体塗料の塗装物品の表面の電子顕微鏡写真
Claims (9)
- (1)熱硬化性樹脂;並びに
(2)顔料、硬化剤、及び、熱硬化性粉体塗料用添加剤(顔料及び硬化剤を除く)からなる群から選択された1種類以上の原料
を含む、熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチ。 - (1)熱硬化性樹脂;並びに
(2)顔料、硬化剤、及び、熱硬化性粉体塗料用添加剤(顔料及び硬化剤を除く)からなる群から選択された1種類以上の原料
を、溶媒の非存在下で混練後、粉砕又は造粒する工程を含む、熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチの製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂の硬化温度未満で前記混練を行う、請求項2記載の熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチの製造方法。
- 請求項1記載の熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを、溶媒の非存在下、前記硬化温度未満で混練する混練工程;並びに、
前記混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程
を含む熱硬化性粉体塗料の製造方法。 - 明度、彩度、及び、色相の少なくとも1つが異なる2種類以上の請求項1記載の熱硬化性粉体塗料用原料マスターバッチを、溶媒の非存在下、前記硬化温度未満で混練する混練工程;並びに、
前記混練工程で得られた混練物を粉砕する粉砕工程
を含む熱硬化性粉体塗料の製造方法。 - 前記混練工程において、熱硬化性樹脂及び/又は硬化剤を更に添加する、請求項4又は5記載の熱硬化性粉体塗料の製造方法。
- 前記粉砕工程で得られた粉砕物を分級する分級工程を更に含む、請求項4乃至6のいずれかに記載の熱硬化性粉体塗料の製造方法。
- 請求項4乃至7のいずれかに記載の製造方法により得られた熱硬化性粉体塗料。
- 請求項8記載の粉体塗料により塗装された粉体塗装物品。
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-
2003
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