JP2004331503A - 新規な第四アンモニウム塩化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、本発明の化合物は点眼剤等の眼科領域用、医薬品用、化粧品用または防腐剤等の抗菌剤または防黴剤、消毒剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抗菌活性を有する第四アンモニウム塩化合物は古くから知られ、現在も広く抗菌剤および消毒剤等として一般に用いられている。しかし、このような化合物は通常、殺菌力及び抗菌力が糖質、蛋白質及び脂質等に拮抗され、またpHの低い酸性領域ではこれが低下してしまう。また、芽胞に効果がない等の欠点がある。
【0003】
前述の欠点を解決する方法として、Pharmazie,38(5), 308−310,(1983)などで、1つの分子内に2つの第四アンモニウム塩構造を持つ化合物が提案されている。この文献記載の化合物は、2つの第四アンモニウム塩がポリメチレンにて結合されたものである。これらの化合物は前述の課題をある程度解決しているものの、抗菌力が充分でなくほとんど使用されていない。
2個の第四アンモニウムとビフェニル環を有する化合物が報告されている。このうちJ. Sci. Ind. Res., 14B, 214−219, (1955)に記載されている第四アンモニウムのアルキル基は、トリメチル(化合物76)、ジメチルエチル(化合物77)、ジメチルn−ブチル(化合物78)、ジプロピルメチル(化合物80)およびジプロピルn−ブチル(化合物81)である。また、Bioorg. Medicinal Chem. Letter, 5(4), 357−362, (1995) に報告されているものは、トリブチルである(化合物6)。しかし、これらの窒素に結合したアルキル基は炭素数4以下であり、更に抗菌活性に対しても言及されていない。
更に、特開平6−321902号公報や特開平10−114604号公報などで、分子内にピリジニウムおよびキノリニウム等の第四アンモニウムが2個ある化合物が提案されている。これら公報記載の化合物は、高い抗菌活性を有し、抗菌性能の点では良好な物であり、実際に抗菌剤として利用されている。しかし、これらの化合物は塩化ベンザルコニウムに比べ高い抗菌活性を有するものの、人体に対する安全性が充分でない点で改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示し、且つ人体に対し安全性の高い抗菌剤を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物である。
【0006】
【化11】
【0007】
[式(1)中、R1はそれぞれ炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって1または2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。]
【0008】
本発明の化合物は以下の[I](以下、第1種と略す)、[II](以下、第2種と略す)または[III](以下、第3種と略す)の反応により得られる。
反応[I]は、下記式(6)および下記式(7)よりなる。
【0009】
【化12】
【0010】
[式(2)において、Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0011】
【化13】
【0012】
[式(3)において、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0013】
反応[II]は、下記式(4)および下記式(5)よりなる。
【0014】
【化14】
【0015】
[式(4)において、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0016】
【化15】
R3−Z (5)
【0017】
[式(5)において、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、下記式(6)または下記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0018】
【化16】
R6SO4− (6)
【0019】
[式(6)中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0020】
【化17】
【0021】
[式(7)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0022】
反応[III]は、下記式(8)および下記式(9)よりなる。
【0023】
【化18】
【0024】
[式(8)中、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0025】
【化19】
R1−J (9)
【0026】
[式(9)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、Jは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または上記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0027】
【発明の実施の形態】
A.新規化合物
本発明は、下記式(1)で表される新規な第四アンモニウム塩化合物である。
【0028】
【化20】
【0029】
[式(1)において、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって1または2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。]
【0030】
上記式(1)において、R1で表されるアルキル基としては炭素数5〜20のものが使用できるが、抗菌性能と人体に対する安全性のバランスを取るためには炭素数6〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜12のものがより好ましい。またR2、R3はメチル基、エチル基のどちらでも良いが、高い抗菌性能を発揮する為には少なくともR2またはR3のどちらか一方がメチル基であることが好ましい。
【0031】
上記式(1)のXは無機性または有機性のアニオンであり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオンなどまたは下記式(11)〜(14)で表されるアニオン等である。
式(1)の化合物にアニオンXが結合する数(m)は、アニオンXの価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオンXが2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0032】
【化21】
R4COO− (11)
【0033】
[式(11)中、R4は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基を表す。]
【0034】
【化22】
−OOC−(R5)p−COO− (12)
【0035】
[式(12)中、pは0または1であり、pが1のときR5は水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基である。]
【0036】
【化23】
R6SO4 − (13)
【0037】
[式(13)中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0038】
【化24】
【0039】
[式(14)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0040】
B.新規化合物の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物は、以下に述べる3種の方法により製造可能である。
【0041】
B−1.第1種の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物の第1種の製造方法は、下記式(2)のハロゲン化物と下記式(3)の第3アミンとの反応により製造する方法である。
【0042】
【化25】
【0043】
[式(2)中、Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0044】
【化26】
【0045】
[式(3)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0046】
上記式(2)の化合物としては、2,2’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(イオドメチル)ビフェニル等のハロゲン化物が挙げられる。
【0047】
また、式(3)の化合物としては、N,N−ジメチルペンチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルヘプチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘプタデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジメチルノナデシルアミン、N,N−ジメチルエイコシルアミン、N,N−ジエチルペンチルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルヘプチルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチルノニルアミン、N,N−ジエチルデシルアミン、N,N−ジエチルンデシルアミン、N,N−ジエチルドデシルアミン、N,N−ジエチルトリデシルアミン、N,N−ジエチルテトラデシルアミン、N,N−ジエチルペンタデシルアミン、N,N−ジエチルヘキサデシルアミン、N,N−ジエチルヘプタデシルアミン、N,N−ジエチルオクタデシルアミン、N,N−ジエチルノナデシルアミン、N,N−ジエチルエイコシルアミン、N−メチル−N−エチルペンチルアミン、N−メチル−N−エチルヘキシルアミン、N−メチル−N−エチルヘプチルアミン、N−メチル−N−エチルオクチルアミン、N−メチル−N−エチルノニルアミン、N−メチル−N−エチルデシルアミン、N−メチル−N−エチルンデシルアミン、N−メチル−N−エチルドデシルアミン、N−メチル−N−エチルトリデシルアミン、N−メチル−N−エチルテトラデシルアミン、N−メチル−N−エチルペンタデシルアミン、N−メチル−N−エチルヘキサデシルアミン、N−メチル−N−エチルヘプタデシルアミン、N−メチル−N−エチルオクタデシルアミン、N−メチル−N−エチルノナデシルアミン、N−メチル−N−エチルエイコシルアミン等の第3アミンが挙げられる。
【0048】
これらの反応は適当な有機溶媒中で、50℃〜120℃の温度において実施することができる。上記式(2)のハロゲン化物に対し、上記式(3)の第3アミンの使用割合は、上記式(2)の化合物1モルに対して上記式(3)の化合物を2モル以上、例えば2.0モル〜2.3モルの割合で用いれば良い。
【0049】
反応溶媒は特に限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール類、または水とアルコールとの混合溶媒、更にはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤等が好適に用いられる。反応温度については、一般に80℃以上であれば1時間〜40時間にて反応は完了する。
【0050】
B−2.第2種の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物の第2種の製造方法は、下記式(4)の第3アミンと、下記式(5)の四級化剤を反応させる方法である。
【0051】
【化27】
【0052】
[式(4)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0053】
【化28】
R3−Z (5)
【0054】
[式(5)中、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、下記式(6)または下記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0055】
【化29】
R6SO4− (6)
【0056】
[式(6)中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0057】
【化30】
【0058】
[式(7)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0059】
上記式(4)の化合物としては、2,2’−ビス(N−メチル−N−ペンチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ヘキシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ヘプチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−オクチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ノニルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−デシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ウンデシル−アミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ドデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−トリデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−テトラデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ペンタデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ヘキサデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−ヘプタデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−オクタデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−ノナデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−エイコシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ペンチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ヘキシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ヘプチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−オクチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ノニルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−デシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ウンデシル−アミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ドデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−トリデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−テトラデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ペンタデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ヘキサデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−ヘプタデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−オクタデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−ノナデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−エイコシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ペンチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ヘキシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ヘプチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−オクチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ノニルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−デシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ウンデシル−アミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ドデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−トリデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−テトラデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ペンタデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ヘキサデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−ヘプタデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−オクタデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−ノナデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−エイコシルアミノメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0060】
また上記式(5)の化合物としては、塩化メタン、塩化エタン、臭化メタン、臭化エタン、ヨウ化メタン、ヨウ化エタン等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル等のスルホン酸アルキル類等が挙げられる。
【0061】
これらの反応は適当な溶媒中で室温〜120℃の温度において実施することができる。四級化剤は熱等により失活するものも多いため、上記式(4)の第3アミンに対して、上記式(5)の四級化剤化合物は過剰に用いることが望ましい。4倍モル以上、より好ましくは6倍モル以上が好適である。この四級化剤化合物は、反応の溶媒として用いることができるものもあるが、用いる量は一般的に20倍モル以下である。
【0062】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール及び2−メトキシエタノール等のアルコール類、または水とアルコールとの混合溶媒、更にはN、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル等の非プロトン性溶媒が好適に用いられる。
【0063】
反応雰囲気については、大気中でも合成は可能だが、窒素雰囲気下での反応がより望ましい。反応温度については、一般に80℃以上であれば、1時間から40時間にて反応は完了する。
【0064】
また、上記の反応は、適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中で加圧下、好ましくは10〜100MPa(メガパスカル)において50〜100℃の温度で行うこともできる。このときの合成を行う時間は、仕込み時間を含めて通常5時間から120時間でできる。
【0065】
上記式(4)の第3アミンは、例えば上記式(2)のハロゲン化物と下記式(15)との反応から得ることができる。
【0066】
【化31】
R1−NH−R2 (15)
【0067】
[式(15)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0068】
上記式(15)の化合物としては、N−メチルペンチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−メチルヘプチルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチルノニルアミン、N−メチルデシルアミン、N−メチルウンデシルアミン、N−メチルドデシルアミン、N−メチルトリデシルアミン、N−メチルテトラデシルアミン、N−メチルペンタデシルアミン、N−メチルヘキサデシルアミン、N−メチルヘプタデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、N−メチルノナデシルアミン、N−メチルエイコシルアミン、N−エチルペンチルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−エチルヘプタアミン、N−エチルオクチルアミン、N−エチルノニルアミン、N−エチルデシルアミン、N−ジエチルウンデシルアミン、N−エチルドデシルアミン、N−エチルトリデシルアミン、N−エチルテトラデシルアミン、N−エチルペンタデシルアミン、N−エチルヘキサデシルアミン、N−エチルヘプタデシルアミン、N−エチルオクタデシルアミン、N−エチルノナデシルアミン、N−エチルエイコシルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0069】
上記式(2)と上記式(15)の三級化反応は、アルコール類、アルコール類と水との混合溶媒または芳香族有機溶媒等の適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件下において実施することができる。上記式(2)と上記式(15)を適当な溶媒にそれぞれ溶解させ、上記式(15)の溶液中に上記式(2)の溶液を少量ずつ加えながら窒素雰囲気下で、反応を行うとより良い。上記式(2)のハロゲン化物に対し、上記式(15)の第2アミンの使用割合は、上記式(2)の化合物1モルに対して上記式(15)の化合物を4モル〜6モル、特に4.1モル〜4.4モルの割合で用いることが好適である。上記の三級化反応の結果、目的中間生成物である第3アミンと副生成物として原料アミンの塩酸塩、臭素酸塩またはヨウ素酸塩などのハロゲン化水素塩が生成される。
【0070】
目的中間生成物である上記式(4)の第3アミンと原料アミン塩の分離は、どのような方法を用いても良いが、抽出作業等により得ることが可能である。更に、有機溶剤に対する溶解性の違いを利用しても容易に行うことができる。
【0071】
副生成物の原料アミン塩は原料アミンに再生が可能である。副生成物の原料アミン塩に水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を作用させると、原料アミンの有機層ができる。この有機層を一般的な分離・精製方法することにより原料の第2アミンが得られる。この再生された第2アミンは再び原料として使用可能である。
【0072】
反応時に原料アミン塩の生成を抑えるには、反応液中に炭酸カリウム等の塩基を加えると良い。これらは溶媒に可溶であっても不溶であっても使用できるが、不溶のものの方が反応終了後分離し易い。塩基を使用した場合、上記式(15)の化合物は式(2)に対し2モル〜4モル、特に2.1モル〜3.0モルの割合で用いれば良い。
【0073】
B−3.第3種の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物の製造を可能とする第3の方法は下記式(8)の第3アミンと下記式(9)の四級化剤にて処理する方法である。
【0074】
【化32】
【0075】
[式(8)中、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0076】
【化33】
R1−J (9)
【0077】
[式(9)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、Jは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または上記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0078】
上記式(8)の化合物としては、
2,2’−ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−エチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−エチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−エチルアミノメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0079】
また上記式(9)の化合物としては、塩化ペンタン、塩化ブタン、塩化ペンタン、塩化ヘキサン、塩化ヘプタン、塩化オクタン、塩化ノナン、塩化デカン、塩化ウンデカン、塩化ドデカン、塩化トリデカン、塩化テトラデカン、塩化ペンタデカン、塩化ヘキサデカン、臭化ブタン、臭化ペンタン、臭化ヘキサン、臭化ヘプタン、臭化オクタン、臭化ノナン、臭化デカン、臭化ウンデカン、臭化ドデカン、臭化トリデカン、臭化テトラデカン、臭化ペンタデカン、臭化ヘキサデカン、ヨウ化ブタン、ヨウ化ペンタン、ヨウ化ヘキサン、ヨウ化ヘプタン、ヨウ化オクタン、ヨウ化ノナン、ヨウ化デカン、ヨウ化ウンデカン、ヨウ化ドデカン、ヨウ化トリデカン、ヨウ化テトラデカン、ヨウ化ペンタデカン、ヨウ化ヘキサデカン等のハロゲン化アルキル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ペンチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル、p−トルエンスルホン酸ヘプチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸ノニル、p−トルエンスルホン酸デシル、p−トルエンスルホン酸ウンデシル、p−トルエンスルホン酸ドデシル、p−トルエンスルホン酸トリデシル、p−トルエンスルホン酸テトラデシル、p−トルエンスルホン酸ペンタデシル、p−トルエンスルホン酸ヘキサデシル等のスルホン酸アルキル等が挙げられる。
【0080】
式(8)の化合物と式(9)の化合物との反応は、ほぼ第2種の方法に順じて実施できる。即ち溶媒としては、アルコール類、または水とアルコールとの混合溶媒、及びN、N−ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブ等が好適に用いられ、また、溶媒が無くても反応は可能である。反応雰囲気、反応温度、反応時間についても第2の方法と同一で実施できる。上記式(8)の第3アミンに対し、上記式(9)の四級化剤の使用割合は、上記式(8)の化合物1モルに対して上記式(9)の化合物を2モル以上で用いれば良く、2.0モル〜2.3モルの割合で良い。また上記の反応は、第2種の反応と同様に適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中、加圧下で進行させることができる。
【0081】
上記式(8)の第3アミンは、例えば上記式(2)のハロゲン化物と下記式(16)のとの反応から得ることができる。
【0082】
【化34】
R2−NH−R3 (16)
【0083】
[式(16)中、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0084】
上記式(16)の化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0085】
上記式(2)と上記式(16)の三級化反応は、上記式(2)と上記式(15)との反応にほぼ準じて、アルコール類、水とアルコール類の混合溶媒または芳香族有機溶媒等適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件において実施することができる。上記式(2)のハロゲン化物に対する上記式(16)の第2アミンの好ましい使用割合は、上記式(2)の化合物1モルに対して上記式(16)の化合物が4モル〜6モルであり、特に4.1モル〜4.4モルの割合が好ましい。目的中間生成物である上記式(8)の第3アミンと原料アミン塩の分離やその再生も式(2)化合物と式(15)化合物との反応の場合とほぼ同様にして実施できる。
【0086】
更に反応時に原料アミン塩の生成を抑える方法についても、式(2)化合物と式(15)化合物との反応の場合とほぼ同様にして実施でき、反応液中に炭酸カリウム等の塩基を加えると良い。これらは溶媒に可溶であっても不溶であっても使用できるが、不溶のものの方が反応終了後分離し易い。塩基を使用した場合、上記式(16)の化合物は式(2)に対し2モル〜4モル、特に2.1モル〜3.0モルの割合で用いれば良い。
【0087】
B−4.化合物の精製方法
前述の3種の方法により生成された化合物は、必要により、通常の分離精製手段、例えば、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作等により容易に精製することができる。
【0088】
B−5.アニオン交換
前述の3種の方法により合成された第四アンモニウム塩化合物は、その中に含まれるアニオンを、イオン交換により別の特定のアニオンに変えることができる。イオン交換は、例えば、カチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂を充填したカラムにて処理をすること等により、容易に行うことができる。
【0089】
即ち本発明における第四アンモニウム塩化合物は、下記式(10)の第四アンモニウム化合物をカチオンとするものであるが、その対イオンとなるアニオンとしては、上述した3つの方法によって合成された際のアニオンを、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン硝酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオンまたは前述した式(11)〜(14)などのアニオンに置き換えることによって製造できる。
【0090】
【化35】
【0091】
[式(10)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0092】
C.抗菌性
上記のようにして得られた本発明の式(1)の化合物は、後記の実施例6〜8に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い抗菌スペクトルを有している。
【0093】
本発明の式(1)の化合物は、アルキル鎖R1の炭素数が、5〜20であり、6〜16が良く、特に8〜12が強い殺菌活性を示し有用である。
【0094】
本発明の式(1)の化合物は、従来の市販の第四アンモニウム塩等に比べて、1/10以下の最小殺菌濃度という優れた殺菌活性を示す。従って、本発明の式(1)の化合物は、従来市販の同種の殺菌剤よりもはるかに少ない使用濃度で従来の殺菌剤と同等の殺菌効果を発揮する。
【0095】
D.化合物の安全性
本発明の第四アンモニウム塩化合物は、ラットでの経口毒性試験においてLD50が2000mg/kg以上の値を持つ、極めて安全性の高い化合物である。
更に本発明の式(1)の化合物の溶血活性について測定したところ、従来の第四アンモニウム塩例えば塩化ベンザルコニウムや特開平6−3219024号公報、特開2000−95763号公報等で紹介されている第四アンモニウム塩化合物と比較して溶血活性は10倍以上低かった。このように式(1)の本発明の化合物は人体に対する毒性が極めて低い。
【0096】
E.化合物の用途
本発明の化合物は、抗菌剤として広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラステック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトレンズケア用品、点眼剤、口腔洗浄剤、歯磨き、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等における抗菌剤および防腐剤として有用である。
本発明の化合物は、単独で優れた抗菌性を発揮するものであるが、適宜固体または液体の担体に担持させて使用することができる。たとえば、アルコールや界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、ペースト、スプレー、エアゾール等として利用できる。また、賦形剤や界面活性剤等の他の成分を配合して、粒状剤、粉末等としても利用できる。
本発明の化合物を抗菌剤および消毒剤等として使用する際の好ましい配合割合は、抗菌剤の全重量を基準にして、0.0001〜100重量%であり、より好ましくは0.001〜10重量%である。また、他の抗菌剤たとえば塩化ベンザルコニウム等と配合し使用することもできる。
【0097】
F.点眼剤用防腐剤としての利用
従来の点眼剤用防腐剤として、第四アンモニウム塩やグアニジン等のカチオン基を有する化合物、アルコール類、アミノ安息香酸エステルやソルビン酸等があるが、防腐力が大きいことから第四アンモニウム塩、特に塩化ベンザルコニウムが一般に汎用されている。
【0098】
しかし、これら防腐剤を配合すると、点眼剤の薬剤成分として共に配合する他の化合物の種類によっては点眼剤の溶液に白濁を生じることがある。更に、塩化ベンザルコニウムについては、0.01%以上配合すると角膜に対し障害を起こすことが報告されているため、配合量は安全性が問題にならない範囲内に制限される。
【0099】
このように、従来の防腐剤については低濃度での配合であれば白濁の問題は生じないが、本来の防腐効果が不充分となってしまう為、別の配合剤を加え、防腐効果を向上させたり白濁を防止したりする改良技術が種々提案されている(特開平2−311417、特開平6−40910)。
【0100】
本発明者らは、鋭意検討した結果、後述の実施例10及び11に示すとおり、本発明の化合物が、点眼剤の有効成分として用いられる種々の化合物と不溶性物を生じることなく、透明な点眼剤を得るための防腐剤として極めて有効であることを見出した。
即ち、本発明の点眼剤用防腐剤は本発明の化合物を有効成分とするものである。
【0101】
本発明の化合物と配合しても白濁を生じない点眼剤の薬剤成分用化合物として例えば以下のものがある。
即ち、ヒアルロン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、ピレノキシン、塩化リゾチウム、クロモグリク酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等のカルボキシル基を有する化合物、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、ソジウムメタスルホ安息香酸デキサメサゾン等のスルホン酸基を有する化合物、フラビンアデニンジヌクレオチド等のホスホニル基を有する化合物及び塩酸ピロカルピン等である。これらの化合物は、何れも、従来、塩化ベンザルコニウムとの配合により白濁が生ずるため薬剤成分として配合できなかったものである。
【0102】
本発明の点眼剤用防腐剤は、上記薬剤成分に加え、必要に応じて点眼剤に使用される各種成分、例えば、抗炎症剤やビタミン剤、抗ヒスタミン剤等の有効成分、pH調整剤や緩衝剤、等張化剤、可溶剤等の添加剤等が配合されていてもその防腐効果に影響はない。
また、本発明の化合物は、後記の実施例に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い殺菌スペクトルを有している上、従来の汎用の第四アンモニウム塩である塩化ベンザルコニウムに比べて高い殺菌活性と防腐力を発揮する。
【0103】
本発明の式(1)の化合物の点眼剤における好ましい配合量は、通常、点眼剤全体の0.0005〜0.1%であり、好ましくは0.002〜0.02%である。0.0005%未満であると防腐剤による防腐効果が不充分になる恐れがあり、0.1%より多いと経済的に不利である。
【0104】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
G−1.合成例
【0105】
<実施例1>
ハロゲン化合物として4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジメチルヘキシルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlを300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチル混合溶媒にて再結晶し、これを減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−6と略す)を9.3g得た。この収率は91%であった。
【0106】
4BADMB−6の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を下記に示す。単位(δppm)
0.89(6H、t、J=7.0Hz)、1.34(12H、br s)、1.83(4H、br s)、3.25(12H、s)、3.55(4H、t、J=8.4Hz)、5.35(4H、s)、7.25(4H、d、J=8.4Hz)、7.67(4H、d、J=8.4Hz)
【0107】
また元素分析した結果を表1に示す(4BADMB−6の分子式はC30H50N2Cl2)。
【0108】
【表1】
【0109】
また融点を測定したところ、209.4〜210.0℃であった。
【0110】
以上の結果より、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0111】
<実施例2>
実施例1のN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8と略す)を7.4g得た。この化合物の収率は65%であった。
【0112】
4BADMB−8の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。単位(δppm)
0.87(6H、t、J=7.0Hz)、1.26(12H、br s)、1.37(8H、br s)、1.83(4H、br s)、3.25(12H、s)、3.57(4H、t、J=8.4Hz)、5.39(4H、s)、7.23(4H、d、J=8.0Hz)、7.69(4H、d、J=8.0Hz)
【0113】
また元素分析した結果を表2に示す(4BADMB−8の分子式はC34H58N2Cl2)。
【0114】
【表2】
【0115】
また融点を測定したところ、246.9〜247.4℃であった。
【0116】
以上の結果より、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0117】
上記で得られた4BADMB−8について、経口毒性(ラット)を測定したところ、2000mg/kgの投与では死亡例は観察されなかった。
【0118】
<実施例3>
実施例1のN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルデシルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−10と略す)を11.7g得た。この化合物の収率は94%であった。
【0119】
4BADMB−10の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。単位(δppm)
0.87(6H、t、J=7.0Hz)、1.26(24H、br s)、1.37(4H、br s)、1.83(4H、br s)、3.25(12H、s)、3.55(4H、br s)、5.36(4H、s)、7.26(4H、d、J=8.0Hz)、7.64(4H、d、J=8.0Hz)
【0120】
また元素分析した結果を表3に示す(4BADMB−10の分子式はC38H66N2Cl2)。
【0121】
【表3】
【0122】
また融点を測定したところ、229.3〜230.6℃であった。
【0123】
以上の結果より、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0124】
上記で得られた4BADMB−10について、経口毒性(ラット)を測定したところ、2000mg/kgの投与では死亡例は観察されなかった。
【0125】
<実施例4>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−12と略す)を10.5g得た。この化合物の収率は77%であった。
【0126】
4BADMB−12の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。
単位(δppm)
0.88(6H、t、J=7.0Hz)、1.25(32H、br s)、1.36(4H、br s)、1.81(4H、br s)、3.23(12H、s)、3.50(4H、br s)、5.34(4H、br s)、7.24(4H、d、J=8.0Hz)、7.66(4H、d、J=8.0Hz)
【0127】
また元素分析した結果を表4に示す(4BADMB−12の分子式はC42H74N2Cl2)。
【0128】
【表4】
【0129】
また融点を測定したところ、216.0〜218.3℃であった。
【0130】
以上の結果により、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0131】
<実施例5>
実施例3において、ハロゲン化合物を4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルの代わりに2,2’−ビス(ブロモメチル)ビフェニルを使用した以外は実施例1と全く同様に反応を行なった。目的生成物の精製操作を行い、白色の粗結晶を得た。ヘキサンにより洗浄を行ない、減圧乾燥により、目的化合物である2,2’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジブロミド(2BADMB−10と略す)を6.2g得た。この化合物の収率は50%であった。
【0132】
2BADMB−10の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。単位(δppm)
0.88(6H、t、J=6.8Hz)、1.24(28H、br)、2.02(4H、br s)、2.83(4H、m)、2.93(6H、s)、3.07(6H、s)、4.88(4H、m)、7.41(2H、br s)、7.64(4H、m)、8.15(2H、br s)
【0133】
以上の結果により、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0134】
比較のために、先ず、従来の抗菌剤を6種調製した。
【0135】
<比較例1>
比較例1として、市販の第四アンモニウム塩系抗菌剤である塩化ベンザルコニウムを調製した。
【0136】
<比較例2>
特開平10−114604号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。即ち、ハロゲン化合物としてα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジメチルヘキシルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテルにて再結晶し、減圧乾燥により、目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルヘキシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−6Cと略す)を5.0g得た。
【0137】
<比較例3>
比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルオクチルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−8Cと略す)を6.5g得た。
【0138】
<比較例4>
比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルデシルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルデシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−10Cと略す)を6.5g得た。
【0139】
<比較例5>
比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルドデシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−12Cと略す)を8.0g得た。
【0140】
<比較例6>
特開平6−321902号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。即ち、4−メルカプトピリジン20mmolをエタノール50mlに溶解し、攪拌した状態で1,6−ジブロモヘキサン10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で12時間反応した。反応溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物を水50mlに溶解し、これに1N−水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液をpH11に調整した後、ジエチルエーテルを用いて抽出作業を3回繰り返した。エーテル層にモレキュラーシーブ3A 1/16(和光純薬工業)を入れて1晩乾燥した後エーテルを除去し、薄い黄色の溶液状化合物が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後、オクチルアイオダイド40mmolを加え、加熱還流条件下で24時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体をアセトニトリルで再結晶、減圧乾燥し、目的の白色の固体化合物4,4’−(1,6−ジチオヘキサメチレン)−ビス−(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(4MHOと略す)を4.4g得た。
【0141】
<比較例7>
特開2000−95763号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。即ち、4−メルカプトピリジン20mmolをアセトン50mlに溶解し、攪拌した状態でキシリレンジクロライド10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で5時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をアセトンで洗浄後、純水50mlに溶解し、これに0.5N−水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液をpH10に調整した後、トルエンを用いて抽出作業を3回繰り返した。有機層を水洗し乾燥した後、トルエンを減圧除去し、粗晶が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、100℃にて15時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体を酢酸エチルエステル200mlに投入し、析出した固体をろ別分離し、アセトニトリル/酢酸エチルエステル混合溶媒で再結晶、減圧乾燥し、目的の白色の固体化合物4,4’−(p−キシリルジチオ)−ビス(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(I−8と略す)を4.0g(収率50%)得た。
【0142】
G−2.活性試験
以下に本発明の化合物の抗菌性及び防腐力に関する試験例を示す。
G−2−1.細菌に対する最小殺菌濃度(MBC)
【0143】
<実施例6>
一般的な無菌水希釈法に従い、ニュートリエントブロスを用いて培養した対数増殖期初期状態の菌体を、無菌水にて菌懸濁液濃度が約106cell/mlになるように調整した。段階希釈した薬剤溶液を各0.5ml分注後、調整した菌体懸濁液をそれぞれ0.5mlずつ接種し、30℃で30分間接触後、試験液0.1mlをニュトリエントブロス2mlに移植し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MBC値を決定した。
供試菌として、グラム陰性細菌5種及びグラム陰性細菌4種を用いた。
試験サンプルとして、4BADMB−8(実施例2)、4BADMB−10(実施例3)を用い、塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。結果を下記表5に示す。
【0144】
【表5】
【0145】
G−2−2.細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例7>
一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。
供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110を用いた。
試験サンプルは実施例1〜5にて得られた化合物並びに比較例1〜6にて調整した化合物を用いた。結果を下記表6に示す。
【0146】
【表6】
【0147】
上記表5および表6の結果から、本発明の化合物を用いた時のMBC値およびMIC値は比較例の化合物と同等以下であることから、本発明の化合物は比較例の化合物に対して細菌に対する抗菌力が同等以上であることが明らかである。
【0148】
G−2−3.真菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例8>
一般的なブロス希釈法に従い、前培養した供試菌を湿潤剤添加殺菌水で胞子液を調整した。段階希釈した薬剤溶液1mlと胞子液1mlとを混合し、インキュベーター内で、30℃で一週間培養後、増殖の有無を濁度で判定し、濁度の生じていない最小濃度をMICとした。
供試菌として、Aspergillus niger IFO6341(A.niger)及びCandida albicans ATCC 10231(C.albicans)を用いた。
試験サンプルとして、4BADMB−8(実施例2)と4BADMB−10(実施例3)を用い、塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。結果を表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
上記表7の結果から、本発明の化合物を用いたときのMIC値は塩化ベンザルコニウムを用いた場合より小さいことから、本発明の化合物は塩化ベンザルコニウムに比較して真菌に対する抗菌力が高いことが明らかである。
【0151】
G−2−4.赤血球に対する最小溶血活性濃度
<実施例9>
ヒトの血液を採取し、等量のアルセバー液(ブドウ糖2.05g、塩化ナトリウム0.42g、クエン酸ナトリウム0.8g、クエン酸0.55gを含むpH6.1)と混合し、4℃に保存した。実験に用いる直前にこのアルセバー保存血を遠心分離し上澄み及び赤血球上の白血球層を取り除いた。更に赤血球に約10倍量のPBSを加えた後、遠心洗浄を3回繰り返し、最後に赤血球と等量のPBSを加え、50%赤血球とした。段階希釈した薬剤のPBS希釈液990μlに50%赤血球10μlを加え、37℃で1時間作用させた後、遠心分離し、その上澄みを回収し、540nmでのO.D.を測定した。別に、薬剤を用いないで同様の試験を行い0%溶血のコントロールとし、PBSの代わりに純水を用いて100%溶血のコントロールとした。薬剤の最小溶血活性濃度としては、溶血濃度が50%以下となる最も薄い濃度とした。
試験サンプルとしては4BADMB−6(実施例1)、4BADMB−8(実施例2)及び4BADMB−10(実施例3)を用い、塩化ベンザルコニウム(比較例1)、4BADMP−6C(比較例2)、4BADMP−8C(比較例3)、4BADMP−10C(比較例4)、4BADMP−12C(比較例5)、4MHO(比較例6)及びI−8(比較例7)を用いた。結果を下記表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
上記表8の結果から、本発明の化合物を用いた場合、従来の抗菌剤を用いた場合に比較して同等乃至は大きな最小溶血活性濃度を示したことから、人体に対する安全性は従来の抗菌剤に比較して同等乃至は優れていることが明らかである。
【0154】
G−2−5.点眼剤薬剤成分との相互作用
<実施例10>
点眼剤用薬剤成分と本発明の化合物を1%塩化ナトリウム溶液に溶解し、適量の希塩酸或いは水酸化ナトリウムにてpHを中性にした溶液を調整し、その透明性を肉眼で観察した。
点眼剤用薬剤成分としてコンドロイチン硫酸ナトリウム(以下SKAと略す)、ヒアルロン酸ナトリウム(SHAと略す)、クロモグリク酸ナトリウム(SCAと略す)、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム(SDPAと略す)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAと略す)を使用し、防腐剤の試験サンプルとしては、4BADMB−8(実施例2)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。
下記表9に配合割合と観察結果を示した。
【0155】
【表9】
【0156】
上記表9の結果から、本発明の化合物を配合した場合には透明であったのに対して、塩化ベンザルコニウムを配合した場合は白濁が生じた。
【0157】
G−2−6.防腐力試験
<実施例11>
下記表10及び表11に記す処方にて配合した溶液を使用し、アメリカ薬局方記載(Pharmcopeia of the United States XX、873(1980))の方法により防腐力試験を行った。観察は、1、4、24時間、7、14、21、28日後に行い、防腐力を判定した。
試験菌として細菌としてEscherichia coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa).及びStaphyloccous aureus(S.aureus)、真菌としてA.niger及びC.albicansを用いた。
試験サンプルとしては、4BADMB−8(実施例2)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。防腐効果が確認された観察時間の結果を下記表12に示す。
この試験結果から、本発明の防腐剤は、塩化ベンザルコニウムに比較して短時間で防腐効果を発揮する、即ち防腐力が高いことが明らかである。
【0158】
【表10】
【0159】
【表11】
【0160】
【表12】
【0161】
この表12結果から、本発明の防腐剤は、塩化ベンザルコニウムに比較して短時間で防腐力を発揮する、即ち防腐力が高いことが明らかである。
【0162】
【発明の効果】
本発明の化合物は、新規な第四アンモニウム塩化合物であり、ビフェニル環に第四アンモニウムが2個結合する構造を有するものである。
本発明の化合物は抗菌剤として有用であり、既知の抗菌剤と比べ人体に対する安全性が高く、更に単独で優れた殺菌効果と広い抗菌スペクトルを有する。
本化合物の化合物は点眼剤等の眼科領域用、医薬品用及び化粧品用防腐剤としても有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、本発明の化合物は点眼剤等の眼科領域用、医薬品用、化粧品用または防腐剤等の抗菌剤または防黴剤、消毒剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抗菌活性を有する第四アンモニウム塩化合物は古くから知られ、現在も広く抗菌剤および消毒剤等として一般に用いられている。しかし、このような化合物は通常、殺菌力及び抗菌力が糖質、蛋白質及び脂質等に拮抗され、またpHの低い酸性領域ではこれが低下してしまう。また、芽胞に効果がない等の欠点がある。
【0003】
前述の欠点を解決する方法として、Pharmazie,38(5), 308−310,(1983)などで、1つの分子内に2つの第四アンモニウム塩構造を持つ化合物が提案されている。この文献記載の化合物は、2つの第四アンモニウム塩がポリメチレンにて結合されたものである。これらの化合物は前述の課題をある程度解決しているものの、抗菌力が充分でなくほとんど使用されていない。
2個の第四アンモニウムとビフェニル環を有する化合物が報告されている。このうちJ. Sci. Ind. Res., 14B, 214−219, (1955)に記載されている第四アンモニウムのアルキル基は、トリメチル(化合物76)、ジメチルエチル(化合物77)、ジメチルn−ブチル(化合物78)、ジプロピルメチル(化合物80)およびジプロピルn−ブチル(化合物81)である。また、Bioorg. Medicinal Chem. Letter, 5(4), 357−362, (1995) に報告されているものは、トリブチルである(化合物6)。しかし、これらの窒素に結合したアルキル基は炭素数4以下であり、更に抗菌活性に対しても言及されていない。
更に、特開平6−321902号公報や特開平10−114604号公報などで、分子内にピリジニウムおよびキノリニウム等の第四アンモニウムが2個ある化合物が提案されている。これら公報記載の化合物は、高い抗菌活性を有し、抗菌性能の点では良好な物であり、実際に抗菌剤として利用されている。しかし、これらの化合物は塩化ベンザルコニウムに比べ高い抗菌活性を有するものの、人体に対する安全性が充分でない点で改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示し、且つ人体に対し安全性の高い抗菌剤を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物である。
【0006】
【化11】
【0007】
[式(1)中、R1はそれぞれ炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって1または2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。]
【0008】
本発明の化合物は以下の[I](以下、第1種と略す)、[II](以下、第2種と略す)または[III](以下、第3種と略す)の反応により得られる。
反応[I]は、下記式(6)および下記式(7)よりなる。
【0009】
【化12】
【0010】
[式(2)において、Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0011】
【化13】
【0012】
[式(3)において、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0013】
反応[II]は、下記式(4)および下記式(5)よりなる。
【0014】
【化14】
【0015】
[式(4)において、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0016】
【化15】
R3−Z (5)
【0017】
[式(5)において、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、下記式(6)または下記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0018】
【化16】
R6SO4− (6)
【0019】
[式(6)中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0020】
【化17】
【0021】
[式(7)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0022】
反応[III]は、下記式(8)および下記式(9)よりなる。
【0023】
【化18】
【0024】
[式(8)中、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0025】
【化19】
R1−J (9)
【0026】
[式(9)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、Jは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または上記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0027】
【発明の実施の形態】
A.新規化合物
本発明は、下記式(1)で表される新規な第四アンモニウム塩化合物である。
【0028】
【化20】
【0029】
[式(1)において、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって1または2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。]
【0030】
上記式(1)において、R1で表されるアルキル基としては炭素数5〜20のものが使用できるが、抗菌性能と人体に対する安全性のバランスを取るためには炭素数6〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜12のものがより好ましい。またR2、R3はメチル基、エチル基のどちらでも良いが、高い抗菌性能を発揮する為には少なくともR2またはR3のどちらか一方がメチル基であることが好ましい。
【0031】
上記式(1)のXは無機性または有機性のアニオンであり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオンなどまたは下記式(11)〜(14)で表されるアニオン等である。
式(1)の化合物にアニオンXが結合する数(m)は、アニオンXの価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオンXが2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0032】
【化21】
R4COO− (11)
【0033】
[式(11)中、R4は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基を表す。]
【0034】
【化22】
−OOC−(R5)p−COO− (12)
【0035】
[式(12)中、pは0または1であり、pが1のときR5は水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基である。]
【0036】
【化23】
R6SO4 − (13)
【0037】
[式(13)中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0038】
【化24】
【0039】
[式(14)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0040】
B.新規化合物の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物は、以下に述べる3種の方法により製造可能である。
【0041】
B−1.第1種の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物の第1種の製造方法は、下記式(2)のハロゲン化物と下記式(3)の第3アミンとの反応により製造する方法である。
【0042】
【化25】
【0043】
[式(2)中、Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0044】
【化26】
【0045】
[式(3)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0046】
上記式(2)の化合物としては、2,2’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(イオドメチル)ビフェニル等のハロゲン化物が挙げられる。
【0047】
また、式(3)の化合物としては、N,N−ジメチルペンチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルヘプチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘプタデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジメチルノナデシルアミン、N,N−ジメチルエイコシルアミン、N,N−ジエチルペンチルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルヘプチルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチルノニルアミン、N,N−ジエチルデシルアミン、N,N−ジエチルンデシルアミン、N,N−ジエチルドデシルアミン、N,N−ジエチルトリデシルアミン、N,N−ジエチルテトラデシルアミン、N,N−ジエチルペンタデシルアミン、N,N−ジエチルヘキサデシルアミン、N,N−ジエチルヘプタデシルアミン、N,N−ジエチルオクタデシルアミン、N,N−ジエチルノナデシルアミン、N,N−ジエチルエイコシルアミン、N−メチル−N−エチルペンチルアミン、N−メチル−N−エチルヘキシルアミン、N−メチル−N−エチルヘプチルアミン、N−メチル−N−エチルオクチルアミン、N−メチル−N−エチルノニルアミン、N−メチル−N−エチルデシルアミン、N−メチル−N−エチルンデシルアミン、N−メチル−N−エチルドデシルアミン、N−メチル−N−エチルトリデシルアミン、N−メチル−N−エチルテトラデシルアミン、N−メチル−N−エチルペンタデシルアミン、N−メチル−N−エチルヘキサデシルアミン、N−メチル−N−エチルヘプタデシルアミン、N−メチル−N−エチルオクタデシルアミン、N−メチル−N−エチルノナデシルアミン、N−メチル−N−エチルエイコシルアミン等の第3アミンが挙げられる。
【0048】
これらの反応は適当な有機溶媒中で、50℃〜120℃の温度において実施することができる。上記式(2)のハロゲン化物に対し、上記式(3)の第3アミンの使用割合は、上記式(2)の化合物1モルに対して上記式(3)の化合物を2モル以上、例えば2.0モル〜2.3モルの割合で用いれば良い。
【0049】
反応溶媒は特に限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール類、または水とアルコールとの混合溶媒、更にはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤等が好適に用いられる。反応温度については、一般に80℃以上であれば1時間〜40時間にて反応は完了する。
【0050】
B−2.第2種の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物の第2種の製造方法は、下記式(4)の第3アミンと、下記式(5)の四級化剤を反応させる方法である。
【0051】
【化27】
【0052】
[式(4)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0053】
【化28】
R3−Z (5)
【0054】
[式(5)中、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、下記式(6)または下記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0055】
【化29】
R6SO4− (6)
【0056】
[式(6)中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0057】
【化30】
【0058】
[式(7)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0059】
上記式(4)の化合物としては、2,2’−ビス(N−メチル−N−ペンチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ヘキシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ヘプチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−オクチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ノニルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−デシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ウンデシル−アミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ドデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−トリデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−テトラデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ペンタデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−ヘキサデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−ヘプタデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−オクタデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−ノナデシルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−(N−メチル−N−エイコシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ペンチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ヘキシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ヘプチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−オクチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ノニルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−デシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ウンデシル−アミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ドデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−トリデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−テトラデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ペンタデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−ヘキサデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−ヘプタデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−オクタデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−ノナデシルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−(N−メチル−N−エイコシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ペンチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ヘキシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ヘプチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−オクチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ノニルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−デシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ウンデシル−アミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ドデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−トリデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−テトラデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ペンタデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−ヘキサデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−ヘプタデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−オクタデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−ノナデシルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−(N−メチル−N−エイコシルアミノメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0060】
また上記式(5)の化合物としては、塩化メタン、塩化エタン、臭化メタン、臭化エタン、ヨウ化メタン、ヨウ化エタン等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル等のスルホン酸アルキル類等が挙げられる。
【0061】
これらの反応は適当な溶媒中で室温〜120℃の温度において実施することができる。四級化剤は熱等により失活するものも多いため、上記式(4)の第3アミンに対して、上記式(5)の四級化剤化合物は過剰に用いることが望ましい。4倍モル以上、より好ましくは6倍モル以上が好適である。この四級化剤化合物は、反応の溶媒として用いることができるものもあるが、用いる量は一般的に20倍モル以下である。
【0062】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール及び2−メトキシエタノール等のアルコール類、または水とアルコールとの混合溶媒、更にはN、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル等の非プロトン性溶媒が好適に用いられる。
【0063】
反応雰囲気については、大気中でも合成は可能だが、窒素雰囲気下での反応がより望ましい。反応温度については、一般に80℃以上であれば、1時間から40時間にて反応は完了する。
【0064】
また、上記の反応は、適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中で加圧下、好ましくは10〜100MPa(メガパスカル)において50〜100℃の温度で行うこともできる。このときの合成を行う時間は、仕込み時間を含めて通常5時間から120時間でできる。
【0065】
上記式(4)の第3アミンは、例えば上記式(2)のハロゲン化物と下記式(15)との反応から得ることができる。
【0066】
【化31】
R1−NH−R2 (15)
【0067】
[式(15)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0068】
上記式(15)の化合物としては、N−メチルペンチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−メチルヘプチルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチルノニルアミン、N−メチルデシルアミン、N−メチルウンデシルアミン、N−メチルドデシルアミン、N−メチルトリデシルアミン、N−メチルテトラデシルアミン、N−メチルペンタデシルアミン、N−メチルヘキサデシルアミン、N−メチルヘプタデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、N−メチルノナデシルアミン、N−メチルエイコシルアミン、N−エチルペンチルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−エチルヘプタアミン、N−エチルオクチルアミン、N−エチルノニルアミン、N−エチルデシルアミン、N−ジエチルウンデシルアミン、N−エチルドデシルアミン、N−エチルトリデシルアミン、N−エチルテトラデシルアミン、N−エチルペンタデシルアミン、N−エチルヘキサデシルアミン、N−エチルヘプタデシルアミン、N−エチルオクタデシルアミン、N−エチルノナデシルアミン、N−エチルエイコシルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0069】
上記式(2)と上記式(15)の三級化反応は、アルコール類、アルコール類と水との混合溶媒または芳香族有機溶媒等の適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件下において実施することができる。上記式(2)と上記式(15)を適当な溶媒にそれぞれ溶解させ、上記式(15)の溶液中に上記式(2)の溶液を少量ずつ加えながら窒素雰囲気下で、反応を行うとより良い。上記式(2)のハロゲン化物に対し、上記式(15)の第2アミンの使用割合は、上記式(2)の化合物1モルに対して上記式(15)の化合物を4モル〜6モル、特に4.1モル〜4.4モルの割合で用いることが好適である。上記の三級化反応の結果、目的中間生成物である第3アミンと副生成物として原料アミンの塩酸塩、臭素酸塩またはヨウ素酸塩などのハロゲン化水素塩が生成される。
【0070】
目的中間生成物である上記式(4)の第3アミンと原料アミン塩の分離は、どのような方法を用いても良いが、抽出作業等により得ることが可能である。更に、有機溶剤に対する溶解性の違いを利用しても容易に行うことができる。
【0071】
副生成物の原料アミン塩は原料アミンに再生が可能である。副生成物の原料アミン塩に水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を作用させると、原料アミンの有機層ができる。この有機層を一般的な分離・精製方法することにより原料の第2アミンが得られる。この再生された第2アミンは再び原料として使用可能である。
【0072】
反応時に原料アミン塩の生成を抑えるには、反応液中に炭酸カリウム等の塩基を加えると良い。これらは溶媒に可溶であっても不溶であっても使用できるが、不溶のものの方が反応終了後分離し易い。塩基を使用した場合、上記式(15)の化合物は式(2)に対し2モル〜4モル、特に2.1モル〜3.0モルの割合で用いれば良い。
【0073】
B−3.第3種の製造方法
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物の製造を可能とする第3の方法は下記式(8)の第3アミンと下記式(9)の四級化剤にて処理する方法である。
【0074】
【化32】
【0075】
[式(8)中、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0076】
【化33】
R1−J (9)
【0077】
[式(9)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、Jは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または上記式(7)の基のいずれかを表す。]
【0078】
上記式(8)の化合物としては、
2,2’−ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(N−メチル−N−エチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(N−メチル−N−エチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−メチル−N−エチルアミノメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0079】
また上記式(9)の化合物としては、塩化ペンタン、塩化ブタン、塩化ペンタン、塩化ヘキサン、塩化ヘプタン、塩化オクタン、塩化ノナン、塩化デカン、塩化ウンデカン、塩化ドデカン、塩化トリデカン、塩化テトラデカン、塩化ペンタデカン、塩化ヘキサデカン、臭化ブタン、臭化ペンタン、臭化ヘキサン、臭化ヘプタン、臭化オクタン、臭化ノナン、臭化デカン、臭化ウンデカン、臭化ドデカン、臭化トリデカン、臭化テトラデカン、臭化ペンタデカン、臭化ヘキサデカン、ヨウ化ブタン、ヨウ化ペンタン、ヨウ化ヘキサン、ヨウ化ヘプタン、ヨウ化オクタン、ヨウ化ノナン、ヨウ化デカン、ヨウ化ウンデカン、ヨウ化ドデカン、ヨウ化トリデカン、ヨウ化テトラデカン、ヨウ化ペンタデカン、ヨウ化ヘキサデカン等のハロゲン化アルキル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ペンチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル、p−トルエンスルホン酸ヘプチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸ノニル、p−トルエンスルホン酸デシル、p−トルエンスルホン酸ウンデシル、p−トルエンスルホン酸ドデシル、p−トルエンスルホン酸トリデシル、p−トルエンスルホン酸テトラデシル、p−トルエンスルホン酸ペンタデシル、p−トルエンスルホン酸ヘキサデシル等のスルホン酸アルキル等が挙げられる。
【0080】
式(8)の化合物と式(9)の化合物との反応は、ほぼ第2種の方法に順じて実施できる。即ち溶媒としては、アルコール類、または水とアルコールとの混合溶媒、及びN、N−ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブ等が好適に用いられ、また、溶媒が無くても反応は可能である。反応雰囲気、反応温度、反応時間についても第2の方法と同一で実施できる。上記式(8)の第3アミンに対し、上記式(9)の四級化剤の使用割合は、上記式(8)の化合物1モルに対して上記式(9)の化合物を2モル以上で用いれば良く、2.0モル〜2.3モルの割合で良い。また上記の反応は、第2種の反応と同様に適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中、加圧下で進行させることができる。
【0081】
上記式(8)の第3アミンは、例えば上記式(2)のハロゲン化物と下記式(16)のとの反応から得ることができる。
【0082】
【化34】
R2−NH−R3 (16)
【0083】
[式(16)中、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0084】
上記式(16)の化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0085】
上記式(2)と上記式(16)の三級化反応は、上記式(2)と上記式(15)との反応にほぼ準じて、アルコール類、水とアルコール類の混合溶媒または芳香族有機溶媒等適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件において実施することができる。上記式(2)のハロゲン化物に対する上記式(16)の第2アミンの好ましい使用割合は、上記式(2)の化合物1モルに対して上記式(16)の化合物が4モル〜6モルであり、特に4.1モル〜4.4モルの割合が好ましい。目的中間生成物である上記式(8)の第3アミンと原料アミン塩の分離やその再生も式(2)化合物と式(15)化合物との反応の場合とほぼ同様にして実施できる。
【0086】
更に反応時に原料アミン塩の生成を抑える方法についても、式(2)化合物と式(15)化合物との反応の場合とほぼ同様にして実施でき、反応液中に炭酸カリウム等の塩基を加えると良い。これらは溶媒に可溶であっても不溶であっても使用できるが、不溶のものの方が反応終了後分離し易い。塩基を使用した場合、上記式(16)の化合物は式(2)に対し2モル〜4モル、特に2.1モル〜3.0モルの割合で用いれば良い。
【0087】
B−4.化合物の精製方法
前述の3種の方法により生成された化合物は、必要により、通常の分離精製手段、例えば、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作等により容易に精製することができる。
【0088】
B−5.アニオン交換
前述の3種の方法により合成された第四アンモニウム塩化合物は、その中に含まれるアニオンを、イオン交換により別の特定のアニオンに変えることができる。イオン交換は、例えば、カチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂を充填したカラムにて処理をすること等により、容易に行うことができる。
【0089】
即ち本発明における第四アンモニウム塩化合物は、下記式(10)の第四アンモニウム化合物をカチオンとするものであるが、その対イオンとなるアニオンとしては、上述した3つの方法によって合成された際のアニオンを、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン硝酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオンまたは前述した式(11)〜(14)などのアニオンに置き換えることによって製造できる。
【0090】
【化35】
【0091】
[式(10)中、R1は炭素数5〜20のアルキル基であり、R2及びR3はそれぞれ炭素数1〜2のアルキル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0092】
C.抗菌性
上記のようにして得られた本発明の式(1)の化合物は、後記の実施例6〜8に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い抗菌スペクトルを有している。
【0093】
本発明の式(1)の化合物は、アルキル鎖R1の炭素数が、5〜20であり、6〜16が良く、特に8〜12が強い殺菌活性を示し有用である。
【0094】
本発明の式(1)の化合物は、従来の市販の第四アンモニウム塩等に比べて、1/10以下の最小殺菌濃度という優れた殺菌活性を示す。従って、本発明の式(1)の化合物は、従来市販の同種の殺菌剤よりもはるかに少ない使用濃度で従来の殺菌剤と同等の殺菌効果を発揮する。
【0095】
D.化合物の安全性
本発明の第四アンモニウム塩化合物は、ラットでの経口毒性試験においてLD50が2000mg/kg以上の値を持つ、極めて安全性の高い化合物である。
更に本発明の式(1)の化合物の溶血活性について測定したところ、従来の第四アンモニウム塩例えば塩化ベンザルコニウムや特開平6−3219024号公報、特開2000−95763号公報等で紹介されている第四アンモニウム塩化合物と比較して溶血活性は10倍以上低かった。このように式(1)の本発明の化合物は人体に対する毒性が極めて低い。
【0096】
E.化合物の用途
本発明の化合物は、抗菌剤として広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラステック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトレンズケア用品、点眼剤、口腔洗浄剤、歯磨き、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等における抗菌剤および防腐剤として有用である。
本発明の化合物は、単独で優れた抗菌性を発揮するものであるが、適宜固体または液体の担体に担持させて使用することができる。たとえば、アルコールや界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、ペースト、スプレー、エアゾール等として利用できる。また、賦形剤や界面活性剤等の他の成分を配合して、粒状剤、粉末等としても利用できる。
本発明の化合物を抗菌剤および消毒剤等として使用する際の好ましい配合割合は、抗菌剤の全重量を基準にして、0.0001〜100重量%であり、より好ましくは0.001〜10重量%である。また、他の抗菌剤たとえば塩化ベンザルコニウム等と配合し使用することもできる。
【0097】
F.点眼剤用防腐剤としての利用
従来の点眼剤用防腐剤として、第四アンモニウム塩やグアニジン等のカチオン基を有する化合物、アルコール類、アミノ安息香酸エステルやソルビン酸等があるが、防腐力が大きいことから第四アンモニウム塩、特に塩化ベンザルコニウムが一般に汎用されている。
【0098】
しかし、これら防腐剤を配合すると、点眼剤の薬剤成分として共に配合する他の化合物の種類によっては点眼剤の溶液に白濁を生じることがある。更に、塩化ベンザルコニウムについては、0.01%以上配合すると角膜に対し障害を起こすことが報告されているため、配合量は安全性が問題にならない範囲内に制限される。
【0099】
このように、従来の防腐剤については低濃度での配合であれば白濁の問題は生じないが、本来の防腐効果が不充分となってしまう為、別の配合剤を加え、防腐効果を向上させたり白濁を防止したりする改良技術が種々提案されている(特開平2−311417、特開平6−40910)。
【0100】
本発明者らは、鋭意検討した結果、後述の実施例10及び11に示すとおり、本発明の化合物が、点眼剤の有効成分として用いられる種々の化合物と不溶性物を生じることなく、透明な点眼剤を得るための防腐剤として極めて有効であることを見出した。
即ち、本発明の点眼剤用防腐剤は本発明の化合物を有効成分とするものである。
【0101】
本発明の化合物と配合しても白濁を生じない点眼剤の薬剤成分用化合物として例えば以下のものがある。
即ち、ヒアルロン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、ピレノキシン、塩化リゾチウム、クロモグリク酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等のカルボキシル基を有する化合物、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、ソジウムメタスルホ安息香酸デキサメサゾン等のスルホン酸基を有する化合物、フラビンアデニンジヌクレオチド等のホスホニル基を有する化合物及び塩酸ピロカルピン等である。これらの化合物は、何れも、従来、塩化ベンザルコニウムとの配合により白濁が生ずるため薬剤成分として配合できなかったものである。
【0102】
本発明の点眼剤用防腐剤は、上記薬剤成分に加え、必要に応じて点眼剤に使用される各種成分、例えば、抗炎症剤やビタミン剤、抗ヒスタミン剤等の有効成分、pH調整剤や緩衝剤、等張化剤、可溶剤等の添加剤等が配合されていてもその防腐効果に影響はない。
また、本発明の化合物は、後記の実施例に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い殺菌スペクトルを有している上、従来の汎用の第四アンモニウム塩である塩化ベンザルコニウムに比べて高い殺菌活性と防腐力を発揮する。
【0103】
本発明の式(1)の化合物の点眼剤における好ましい配合量は、通常、点眼剤全体の0.0005〜0.1%であり、好ましくは0.002〜0.02%である。0.0005%未満であると防腐剤による防腐効果が不充分になる恐れがあり、0.1%より多いと経済的に不利である。
【0104】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
G−1.合成例
【0105】
<実施例1>
ハロゲン化合物として4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジメチルヘキシルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlを300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチル混合溶媒にて再結晶し、これを減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−6と略す)を9.3g得た。この収率は91%であった。
【0106】
4BADMB−6の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を下記に示す。単位(δppm)
0.89(6H、t、J=7.0Hz)、1.34(12H、br s)、1.83(4H、br s)、3.25(12H、s)、3.55(4H、t、J=8.4Hz)、5.35(4H、s)、7.25(4H、d、J=8.4Hz)、7.67(4H、d、J=8.4Hz)
【0107】
また元素分析した結果を表1に示す(4BADMB−6の分子式はC30H50N2Cl2)。
【0108】
【表1】
【0109】
また融点を測定したところ、209.4〜210.0℃であった。
【0110】
以上の結果より、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0111】
<実施例2>
実施例1のN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8と略す)を7.4g得た。この化合物の収率は65%であった。
【0112】
4BADMB−8の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。単位(δppm)
0.87(6H、t、J=7.0Hz)、1.26(12H、br s)、1.37(8H、br s)、1.83(4H、br s)、3.25(12H、s)、3.57(4H、t、J=8.4Hz)、5.39(4H、s)、7.23(4H、d、J=8.0Hz)、7.69(4H、d、J=8.0Hz)
【0113】
また元素分析した結果を表2に示す(4BADMB−8の分子式はC34H58N2Cl2)。
【0114】
【表2】
【0115】
また融点を測定したところ、246.9〜247.4℃であった。
【0116】
以上の結果より、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0117】
上記で得られた4BADMB−8について、経口毒性(ラット)を測定したところ、2000mg/kgの投与では死亡例は観察されなかった。
【0118】
<実施例3>
実施例1のN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルデシルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−10と略す)を11.7g得た。この化合物の収率は94%であった。
【0119】
4BADMB−10の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。単位(δppm)
0.87(6H、t、J=7.0Hz)、1.26(24H、br s)、1.37(4H、br s)、1.83(4H、br s)、3.25(12H、s)、3.55(4H、br s)、5.36(4H、s)、7.26(4H、d、J=8.0Hz)、7.64(4H、d、J=8.0Hz)
【0120】
また元素分析した結果を表3に示す(4BADMB−10の分子式はC38H66N2Cl2)。
【0121】
【表3】
【0122】
また融点を測定したところ、229.3〜230.6℃であった。
【0123】
以上の結果より、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0124】
上記で得られた4BADMB−10について、経口毒性(ラット)を測定したところ、2000mg/kgの投与では死亡例は観察されなかった。
【0125】
<実施例4>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−12と略す)を10.5g得た。この化合物の収率は77%であった。
【0126】
4BADMB−12の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。
単位(δppm)
0.88(6H、t、J=7.0Hz)、1.25(32H、br s)、1.36(4H、br s)、1.81(4H、br s)、3.23(12H、s)、3.50(4H、br s)、5.34(4H、br s)、7.24(4H、d、J=8.0Hz)、7.66(4H、d、J=8.0Hz)
【0127】
また元素分析した結果を表4に示す(4BADMB−12の分子式はC42H74N2Cl2)。
【0128】
【表4】
【0129】
また融点を測定したところ、216.0〜218.3℃であった。
【0130】
以上の結果により、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0131】
<実施例5>
実施例3において、ハロゲン化合物を4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルの代わりに2,2’−ビス(ブロモメチル)ビフェニルを使用した以外は実施例1と全く同様に反応を行なった。目的生成物の精製操作を行い、白色の粗結晶を得た。ヘキサンにより洗浄を行ない、減圧乾燥により、目的化合物である2,2’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジブロミド(2BADMB−10と略す)を6.2g得た。この化合物の収率は50%であった。
【0132】
2BADMB−10の1H−NMR(溶媒CDCl3)分析結果を次に示す。単位(δppm)
0.88(6H、t、J=6.8Hz)、1.24(28H、br)、2.02(4H、br s)、2.83(4H、m)、2.93(6H、s)、3.07(6H、s)、4.88(4H、m)、7.41(2H、br s)、7.64(4H、m)、8.15(2H、br s)
【0133】
以上の結果により、得られた物質が目的化合物であると確認した。
【0134】
比較のために、先ず、従来の抗菌剤を6種調製した。
【0135】
<比較例1>
比較例1として、市販の第四アンモニウム塩系抗菌剤である塩化ベンザルコニウムを調製した。
【0136】
<比較例2>
特開平10−114604号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。即ち、ハロゲン化合物としてα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジメチルヘキシルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテルにて再結晶し、減圧乾燥により、目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルヘキシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−6Cと略す)を5.0g得た。
【0137】
<比較例3>
比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルオクチルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−8Cと略す)を6.5g得た。
【0138】
<比較例4>
比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルデシルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルデシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−10Cと略す)を6.5g得た。
【0139】
<比較例5>
比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルヘキシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチルドデシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−12Cと略す)を8.0g得た。
【0140】
<比較例6>
特開平6−321902号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。即ち、4−メルカプトピリジン20mmolをエタノール50mlに溶解し、攪拌した状態で1,6−ジブロモヘキサン10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で12時間反応した。反応溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物を水50mlに溶解し、これに1N−水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液をpH11に調整した後、ジエチルエーテルを用いて抽出作業を3回繰り返した。エーテル層にモレキュラーシーブ3A 1/16(和光純薬工業)を入れて1晩乾燥した後エーテルを除去し、薄い黄色の溶液状化合物が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後、オクチルアイオダイド40mmolを加え、加熱還流条件下で24時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体をアセトニトリルで再結晶、減圧乾燥し、目的の白色の固体化合物4,4’−(1,6−ジチオヘキサメチレン)−ビス−(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(4MHOと略す)を4.4g得た。
【0141】
<比較例7>
特開2000−95763号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。即ち、4−メルカプトピリジン20mmolをアセトン50mlに溶解し、攪拌した状態でキシリレンジクロライド10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で5時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をアセトンで洗浄後、純水50mlに溶解し、これに0.5N−水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液をpH10に調整した後、トルエンを用いて抽出作業を3回繰り返した。有機層を水洗し乾燥した後、トルエンを減圧除去し、粗晶が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、100℃にて15時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体を酢酸エチルエステル200mlに投入し、析出した固体をろ別分離し、アセトニトリル/酢酸エチルエステル混合溶媒で再結晶、減圧乾燥し、目的の白色の固体化合物4,4’−(p−キシリルジチオ)−ビス(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(I−8と略す)を4.0g(収率50%)得た。
【0142】
G−2.活性試験
以下に本発明の化合物の抗菌性及び防腐力に関する試験例を示す。
G−2−1.細菌に対する最小殺菌濃度(MBC)
【0143】
<実施例6>
一般的な無菌水希釈法に従い、ニュートリエントブロスを用いて培養した対数増殖期初期状態の菌体を、無菌水にて菌懸濁液濃度が約106cell/mlになるように調整した。段階希釈した薬剤溶液を各0.5ml分注後、調整した菌体懸濁液をそれぞれ0.5mlずつ接種し、30℃で30分間接触後、試験液0.1mlをニュトリエントブロス2mlに移植し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MBC値を決定した。
供試菌として、グラム陰性細菌5種及びグラム陰性細菌4種を用いた。
試験サンプルとして、4BADMB−8(実施例2)、4BADMB−10(実施例3)を用い、塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。結果を下記表5に示す。
【0144】
【表5】
【0145】
G−2−2.細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例7>
一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。
供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110を用いた。
試験サンプルは実施例1〜5にて得られた化合物並びに比較例1〜6にて調整した化合物を用いた。結果を下記表6に示す。
【0146】
【表6】
【0147】
上記表5および表6の結果から、本発明の化合物を用いた時のMBC値およびMIC値は比較例の化合物と同等以下であることから、本発明の化合物は比較例の化合物に対して細菌に対する抗菌力が同等以上であることが明らかである。
【0148】
G−2−3.真菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例8>
一般的なブロス希釈法に従い、前培養した供試菌を湿潤剤添加殺菌水で胞子液を調整した。段階希釈した薬剤溶液1mlと胞子液1mlとを混合し、インキュベーター内で、30℃で一週間培養後、増殖の有無を濁度で判定し、濁度の生じていない最小濃度をMICとした。
供試菌として、Aspergillus niger IFO6341(A.niger)及びCandida albicans ATCC 10231(C.albicans)を用いた。
試験サンプルとして、4BADMB−8(実施例2)と4BADMB−10(実施例3)を用い、塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。結果を表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
上記表7の結果から、本発明の化合物を用いたときのMIC値は塩化ベンザルコニウムを用いた場合より小さいことから、本発明の化合物は塩化ベンザルコニウムに比較して真菌に対する抗菌力が高いことが明らかである。
【0151】
G−2−4.赤血球に対する最小溶血活性濃度
<実施例9>
ヒトの血液を採取し、等量のアルセバー液(ブドウ糖2.05g、塩化ナトリウム0.42g、クエン酸ナトリウム0.8g、クエン酸0.55gを含むpH6.1)と混合し、4℃に保存した。実験に用いる直前にこのアルセバー保存血を遠心分離し上澄み及び赤血球上の白血球層を取り除いた。更に赤血球に約10倍量のPBSを加えた後、遠心洗浄を3回繰り返し、最後に赤血球と等量のPBSを加え、50%赤血球とした。段階希釈した薬剤のPBS希釈液990μlに50%赤血球10μlを加え、37℃で1時間作用させた後、遠心分離し、その上澄みを回収し、540nmでのO.D.を測定した。別に、薬剤を用いないで同様の試験を行い0%溶血のコントロールとし、PBSの代わりに純水を用いて100%溶血のコントロールとした。薬剤の最小溶血活性濃度としては、溶血濃度が50%以下となる最も薄い濃度とした。
試験サンプルとしては4BADMB−6(実施例1)、4BADMB−8(実施例2)及び4BADMB−10(実施例3)を用い、塩化ベンザルコニウム(比較例1)、4BADMP−6C(比較例2)、4BADMP−8C(比較例3)、4BADMP−10C(比較例4)、4BADMP−12C(比較例5)、4MHO(比較例6)及びI−8(比較例7)を用いた。結果を下記表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
上記表8の結果から、本発明の化合物を用いた場合、従来の抗菌剤を用いた場合に比較して同等乃至は大きな最小溶血活性濃度を示したことから、人体に対する安全性は従来の抗菌剤に比較して同等乃至は優れていることが明らかである。
【0154】
G−2−5.点眼剤薬剤成分との相互作用
<実施例10>
点眼剤用薬剤成分と本発明の化合物を1%塩化ナトリウム溶液に溶解し、適量の希塩酸或いは水酸化ナトリウムにてpHを中性にした溶液を調整し、その透明性を肉眼で観察した。
点眼剤用薬剤成分としてコンドロイチン硫酸ナトリウム(以下SKAと略す)、ヒアルロン酸ナトリウム(SHAと略す)、クロモグリク酸ナトリウム(SCAと略す)、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム(SDPAと略す)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAと略す)を使用し、防腐剤の試験サンプルとしては、4BADMB−8(実施例2)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。
下記表9に配合割合と観察結果を示した。
【0155】
【表9】
【0156】
上記表9の結果から、本発明の化合物を配合した場合には透明であったのに対して、塩化ベンザルコニウムを配合した場合は白濁が生じた。
【0157】
G−2−6.防腐力試験
<実施例11>
下記表10及び表11に記す処方にて配合した溶液を使用し、アメリカ薬局方記載(Pharmcopeia of the United States XX、873(1980))の方法により防腐力試験を行った。観察は、1、4、24時間、7、14、21、28日後に行い、防腐力を判定した。
試験菌として細菌としてEscherichia coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa).及びStaphyloccous aureus(S.aureus)、真菌としてA.niger及びC.albicansを用いた。
試験サンプルとしては、4BADMB−8(実施例2)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。防腐効果が確認された観察時間の結果を下記表12に示す。
この試験結果から、本発明の防腐剤は、塩化ベンザルコニウムに比較して短時間で防腐効果を発揮する、即ち防腐力が高いことが明らかである。
【0158】
【表10】
【0159】
【表11】
【0160】
【表12】
【0161】
この表12結果から、本発明の防腐剤は、塩化ベンザルコニウムに比較して短時間で防腐力を発揮する、即ち防腐力が高いことが明らかである。
【0162】
【発明の効果】
本発明の化合物は、新規な第四アンモニウム塩化合物であり、ビフェニル環に第四アンモニウムが2個結合する構造を有するものである。
本発明の化合物は抗菌剤として有用であり、既知の抗菌剤と比べ人体に対する安全性が高く、更に単独で優れた殺菌効果と広い抗菌スペクトルを有する。
本化合物の化合物は点眼剤等の眼科領域用、医薬品用及び化粧品用防腐剤としても有用である。
Claims (11)
- 請求項1または請求項5記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する抗菌剤または防黴剤。
- 請求項1または請求項5記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する消毒剤。
- 請求項1または請求項5記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する医薬品または化粧品。
- 請求項1または請求項5記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する医薬品用防腐剤または化粧品用防腐剤。
- 請求項1または請求項5記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する点眼剤。
- 請求項1または請求項5記載の第四アンモニウム塩化合物を防腐剤として含有する点眼剤。
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