JP2004026722A - 新規な第四アンモニウム塩及びその製造方法並びに該化合物を含有する抗菌剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、当該化合物を用いる医薬品用および化粧品用の抗菌剤並びに防黴剤に関するものである。また、防腐剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抗菌活性を有する第四アンモニウム塩化合物は古くから知られ、現在も広く一般に用いられている。しかし、このような既存の化合物は通常、殺菌力・抗菌力が糖質、蛋白質及び脂質などに拮抗され、またpHの低い酸性領域では低下を起こし、且つ細胞芽胞に効果がない等の欠点がある。
【0003】
前述の課題を解決する方法として、特開平6−321902号公報や特開2000−95763号公報などで、第四アンモニウム塩構造を1分子中に2個持つ化合物、即ちビス第四アンモニウム塩化合物からなる抗菌剤が提案されている。これら公報記載の化合物は、高い抗菌活性を有しており、一部実際に抗菌剤として利用されている。しかし、これらの化合物は高い抗菌活性を有するものの、まだ不十分であり、また人体に対する安全性が充分でない点で改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示し、且つ人体に対する安全性の高い抗菌剤、防黴剤および防腐剤を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物である。
【0006】
【化9】
【0007】
式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、且つR1、R2、R3の炭素数の和が10以上であり、分岐を有してもよく、Xn−は無機性または有機性のアニオン基であり、nはアニオン基Xn−の価数であって1又は2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。
【0008】
本発明の化合物は下記式(6)と下記式(7)との反応により得られる。
【0009】
【化10】
【0010】
式(6)において、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0011】
【化11】
【0012】
式(7)において、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、分岐を有しても良く、R1、R2、R3の炭素数の和が10以上である。
【0013】
本発明は、新規な第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、本発明の化合物は、医薬品用および化粧品用の抗菌剤並びに防黴剤として使用できる。また、本発明の化合物は、防腐剤として有用なものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
A.新規化合物
本発明は、上記(1)式で表わされる新規な第四アンモニウム塩化合物である。
上記式(1)において、R1、R2、R3で表されるアルキル基としては炭素数1〜16のものが使用でき、それぞれ同じであっても異なっていても良い。また、R1、R2、R3の炭素数の和は10以上である。抗菌性能と人体に対する安全性のバランスを取るためには、R1、R2、R3の何れもメチル基でない場合には、R1、R2、R3がそれぞれ炭素数3〜8のものが好ましく、更には炭素数4〜6のものが好ましい。R1、R2、R3の何れかの1つがメチル基の場合には、残り2つのアルキル基は炭素数4〜12のものが好ましく、更には炭素数5〜8のものが好ましい。R1、R2、R3のうちの2つがメチル基の場合には、残りのアルキル基は炭素数8〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜12のものが好ましい。これらのアルキル基は、分岐を有しても良い。
【0015】
上記式(1)のXn−は無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(2)〜(5)で表されるアニオン基等である。
式(1)の化合物にアニオン基Xが結合する数(m)は、アニオン基Xn−の価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオン基Xn−が2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0016】
【化12】
R4−COO− (2)
【0017】
式(2)中、R4は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基またはアルケニル基を表す。
【0018】
【化13】−OOC−R5−COO− (3)
【0019】
式(3)中、R5は存在しない(COO同志が直接結合する)か、あるいは水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキレン基またはアルケニル基である。
【0020】
【化14】
R6SO4 − (4)
【0021】
式(4)中、R6は炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0022】
【化15】
【0023】
式(5)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。
【0024】
B.新規化合物の製造方法
上記式(1)で表わされる第四アンモニウム塩化合物は、以下に述べる方法により製造できる。
【0025】
上記式(1)で表わされる第四アンモニウム塩化合物の製造方法は、上記式(6)のハロゲン化合物と上記式(7)の第3アミンとの反応により製造する方法である。
【0026】
上記一般式(6)の化合物としては、1,2−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イオドメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イオドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イオドメチル)シクロヘキサンなどのハロゲン化合物が挙げられる。
【0027】
また、式(7)の化合物としては、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N−メチル−N−ブチルペンチルアミン、N−メチル−N−ブチルヘキシルアミン、N−メチル−N−ブチルヘプチルアミン、N−メチル−N−ブチルオクチルアミン、N−メチル−N−ブチルノニルアミン、N−メチル−N−ブチルデシルアミン、N−メチル−N−ブチルウンデシルアミン、N−メチル−N−ブチルドデシルアミン、N−メチルジペンチルアミン、N−メチル−N−ペンチルヘキシルアミン、N−メチル−N−ペンチルヘプチルアミン、N−メチル−N−ペンチルオクチルアミン、N−メチル−N−ペンチルノニルアミン、N−メチル−N−ペンチルデシルアミン、N−メチル−N−ペンチルウンデシルアミン、N−メチル−N−ペンチルドデシルアミン、N−メチルジヘキシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルヘプチルアミン、N−メチル−N−ヘキシルオクチルアミン、N−メチル−N−ヘキシルノニルアミン、N−メチル−N−ヘキシルデシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルウンデシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルドデシルアミン、N−メチルジヘプチルアミン、N−メチル−N−ヘプチルオクチルアミン、N−メチル−N−ヘプチルノニルアミン、N−メチル−N−ヘプチルデシルアミン、N−メチル−N−ヘプチルウンデシルアミン、N−メチル−N−ヘプチルドデシルアミン、N−メチルジオクチルアミン、N−メチル−N−オクチルノニルアミン、N−メチル−N−オクチルデシルアミン、N−メチル−N−オクチルウンデシルアミン、N−メチル−N−オクチルドデシルアミン、N−メチルジノニルアミン、N−メチル−N−ノニルデシルアミン、N−メチル−N−ノニルウンデシルアミン、N−メチル−N−ノニルドデシルアミン、N−メチルジデシルアミン、N−メチル−N−デシルウンデシルアミン、N−メチル−N−デシルデシルアミン、N−メチルジウンデシルアミン、N−メチル−N−ウンデシルドデシルアミン、N−メチルジドデシルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジブチルペンチルアミン、N−ブチルジペンチルアミン、N−ブチル−N−ペンチルヘキシルアミン、N−ブチルジヘキシルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジペンチルヘキシルアミン、N−ペンチルジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどの第3アミンが挙げられる。
【0028】
上記式(6)と上記式(7)との反応は適当な溶媒中で、50℃〜120℃の温度において実施することができる。
上記式(6)のハロゲン化合物に対し、上記式(7)の第3アミンの使用割合は、上記式(6)の化合物1モルに対して上記式(7)の化合物を2モル以上、例えば2モル〜2.3モルの割合で用いれば良い。
【0029】
上記式(6)と上記式(7)との反応時の溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール類、水又は水とアルコールとの混合溶液、更にはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤などが好適に用いられる。
一般に80℃以上の反応温度であれば1時間〜24時間にて反応は完了する。
【0030】
B−2.化合物の精製方法
前述の方法により生成された化合物は、必要により、通常の分離精製手段、例えば、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作などにより容易に精製することが出来る。
【0031】
B−3.アニオン基の交換
前述の方法により生成された第四アンモニウム塩化合物は、その中に含有されるアニオン基を、イオン交換により別の特定のアニオン基に変えることができる。イオン交換は、例えば、カチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂を充填したカラムにて処理をすることなどにより、容易に行うことが出来る。
【0032】
即ち本発明における第四アンモニウム塩化合物は、下記式(8)の第四アンモニウム塩化合物をカチオン基とするものであるが、その対イオンとなるアニオン基としては、上述した2つの方法によって合成された際のアニオン基を、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン硝酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン又は前述した式(2)〜(5)のいずれかのアニオン基に置き換えることによって製造できる。
【0033】
【化16】
【0034】
式(8)中、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基を表わし、それぞれ同じであっても異なっていても良く、R1、R2、R3の炭素数の和が10以上である。
【0035】
C.抗菌性
上記のようにして得られた本発明の式(1)の化合物は、後記の実施例4、5及び6に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い抗菌スペクトルを有している。
【0036】
本発明の式(1)の化合物は、従来の市販の第四アンモニウム塩化合物等に比べて、同等、あるいはこれ以下の最小殺菌濃度という優れた殺菌活性を示す。従って、本発明の式(1)の化合物は、従来市販の同種の殺菌剤よりも少ない使用濃度で従来の殺菌剤と同等の殺菌効果を発揮する。
【0037】
D.化合物の安全性
本発明の第四アンモニウム塩化合物は、ラットでの経口毒性試験においてLD50(ラット)が2000mg/kg以上の値を持つ、極めて安全性の高い化合物である。
更に本発明の式(1)の化合物について、ヒトメラノーマ細胞を用いて細胞毒性を測定したところ、後記の実施例7に示すとおり、従来の第四アンモニウム塩化合物例えば塩化ベンザルコニウムや特開平6−3219024号公報、特開2000−95763号公報などで紹介されている第四アンモニウム塩化合物と比較して細胞毒性値は同等乃至は数倍低かった。このように式(1)の本発明の化合物は人体に対する毒性が極めて低い。
【0038】
E.化合物の用途
本発明の化合物は、抗菌剤として広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトケア用品、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等における抗菌剤、防黴剤および防腐剤として有用である。
本発明の化合物は、単独で優れた抗菌性を発揮するものであるが、適宜固体又は液体の担体に担持させて使用することができる。
また、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルション、水和剤、粒状剤、粉末、スプレー、エアゾール等として利用できる。
本発明の化合物を抗菌剤として使用できる際の好ましい配合割合は、抗菌剤の全重量を基準にして、0.0001〜100重量%であり、より好ましくは0.001〜10重量%である。
【0039】
F.点眼剤用防腐剤としての利用
従来の点眼剤用防腐剤として、第四アンモニウム塩やグアニジンなどのカチオン基を有する化合物、アルコール類、アミノ安息香酸エステルやソルビン酸などがあるが、防腐力が大きいことから第四アンモニウム塩化合物、特に塩化ベンザルコニウムが一般に汎用されている。
【0040】
しかし、これら防腐剤を配合すると、点眼剤の薬剤成分として共に配合する他の化合物の種類によっては点眼剤の液体に白濁を生じることがある。更に、塩化ベンザルコニウムについては、0.01%以上配合すると角膜に対し障害を起こすことが報告されているため、配合量は安全性が問題にならない範囲内に制限される。
【0041】
このように、従来の防腐剤については低濃度での配合であれば白濁や安全上の問題は生じないが、本来の防腐効果が不充分となってしまう為、別の配合剤を加え、防腐効果を向上させたり白濁を防止したりする改良技術が種々提案されている(特開平2−311417、特開平6−40910)。
【0042】
本発明者は、鋭意検討した結果、後述の実施例8及び9に示すとおり、本発明の化合物(1)が、点眼剤の有効成分として用いられる種々の化合物と不溶性物質を生じることなく、透明な点眼剤を得るための防腐剤として極めて有効であることを見出した。
即ち、本発明の点眼剤用防腐剤は本発明の化合物(1)を有効成分とするものである。
【0043】
本発明の化合物(1)と配合しても白濁を生じない点眼剤の薬剤成分用化合物として例えば以下のものがある。
即ち、ヒアルロン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、ビレノキシン、塩化リゾチウム、クロモグリク酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーなどのカルボキシル基を有する化合物、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、ソジウムメタスルホ安息香酸デキサメサゾンなどのスルホン酸基を有する化合物、フラビンアデニジンジヌクレオチドなどのホスホニル基を有する化合物及び塩酸ピロカルピンなどである。これらの化合物は、何れも、従来、塩化ベンザルコニウムとの配合により白濁が生ずるため薬剤成分として配合できなかったものである。
【0044】
本発明の点眼剤用防腐剤は、上記薬剤成分に加え、必要に応じて点眼剤に使用される各種成分、例えば、抗炎症剤やビタミン剤、抗ヒスタミン剤などの有効成分、pH調整剤や緩衝剤、等張化剤、可溶剤などの添加剤などが配合されていてもその防腐効果に影響はない。
【0045】
また、本発明の化合物(1)は、後記の実施例4,5及び6に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い殺菌スペクトルを有している上、実施例7に示すとおり、安全性の高い化合物である。更に実施例9に示すとおり点眼剤用防腐剤としての防腐効果も有している。
【0046】
本発明の式(1)の化合物の点眼剤における好ましい配合量は、通常、点眼剤全体の0.0005〜0.1%であり、好ましくは0.002〜0.02%である。0.0005%未満であると防腐剤による防腐効果が不充分になる恐れがあり、0.1%より多いと経済的に不利である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
G−1.合成例
【0048】
<実施例1>
1,4−シクロヘキサンジメタノール100mmolに臭化水素酸48%水溶液300mmol及び濃硫酸100mmolを加え16時間加熱還流した。反応液に酢酸エチルと水を加えて抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒、ヘキサン/酢酸エチル)に付し、前駆体である、1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサンを5.3g得た。収率は20%であった。
【0049】
<実施例2>
実施例1で得られた前駆体の1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン10mmolをアセトニトリル10mlに溶解し、更にN,N−ジメチルデシルアミン30mmolを加え、7時間加熱還流した。放冷後結晶が析出したのでこれをろ別し、酢酸エチルで洗浄して、目的化合物である白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)シクロヘキサンジブロミド(4BADMC−10と略す)を3.5g得た。この化合物の収率は前駆体から55%であった。
【0050】
得られた4BADMC−10の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.88(6H、t、J=6.8Hz)、1.27(20H、br s)、1.34(8H、br s)、1.50(4H、t、J=10.0Hz)、1.72(4H、br s)、1.93(4H、t、J=7.2Hz)、2.14(2H、br s)、3.22(12H、s)、3.38(8H、m)
【0051】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0052】
上記で得られたサンプル4BADMC−10について、経口毒性(LD50:ラット)を測定したところ、>2000mg/kgとなった。
【0053】
<実施例3>
実施例2において、N,N−ジメチルデシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は実施例2と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)シクロヘキサン(4BADMC−12と略す)を2.7g得た。この化合物の収率は39%であった。
【0054】
得られた4BADMC−12の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.88(6H、t、J=6.8Hz)、1.26(32H、br s)、1.37(8H、br s)、1.51(4H、t、J=10.0Hz)、1.72(4H、br s)、1.93(4H、t、J=7.2Hz)、2.15(2H、br s)、3.22(12H、s)、3.36(8H、m)
【0055】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0056】
G−2.試験例
以下に本発明の化合物の抗菌性及び防腐力に関する試験例を示す。
比較のために、先ず、従来の抗菌剤を6種調製した。
【0057】
<比較例1>
比較例1として、市販の第四アンモニウム塩系抗菌剤である塩化ベンザルコニウムを調製した。
【0058】
<比較例2>
比較例2として、以下の通り特開平10−114604号公報で提案された抗菌剤(殺菌消毒剤)を合成し使用した。ハロゲン化合物としてα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジメチルデシルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテル溶媒にて再結晶し、減圧乾燥により、目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−10Cと略す)を6.5g得た。
【0059】
<比較例3>
比較例3として、比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルデシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−12Cと略す)を8.0g得た。
【0060】
<比較例4>
比較例4として、以下の通り特開平6−321902号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをエタノール50mlに溶解し、攪拌した状態で1,6−ジブロモヘキサン10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で12時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物を水50mlに溶解し、これに1N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH11に調整した後、ジエチルエーテルを用いて抽出作業を3回繰り返した。エーテル層にモレキュラーシーブ3A 1/16(和光純薬工業社製)を入れて1晩乾燥した後エーテルを除去し、薄い黄色の溶液状化合物が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、加熱還流条件下で24時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体をアセトニトリル溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(1,6−ジチオヘキサメチレン)−ビス−(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(4MHOと略す)が4.4g得られた。
【0061】
<比較例5>
比較例5として、以下の通り特開2000−95763号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをアセトン50mlに溶解し、攪拌した状態でキシリレンジクロライド10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で5時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をアセトンで洗浄後、純水50mlに溶解し、これに0.5N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH10に調整した後、トルエンを用いて抽出作業を3回繰り返した。有機層を水洗し乾燥した後トルエンを減圧除去し、粗晶が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、100℃にて15時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体を酢酸エチルエステル200mlに投入し、析出した固体をろ別分離し、アセトニトリル/酢酸エチルエステル混合溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(p−キシリルジチオ)−ビス(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(I−8と略す)が4.0g(収率50%)得られた。
【0062】
G−2−1.細菌に対する最小殺菌濃度(MBC)
<実施例4>
一般的な無菌水希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて培養した対数増殖期初期状態の菌体を、無菌水にて菌懸濁液濃度が約106cell/mlになるように調整した。段階希釈した薬剤溶液を各0.5ml分注後、調整した菌体懸濁液をそれぞれ0.5mlずつ接種し、30℃で30分間接触後、試験液0.1mlをニュトリエントブロス2mlに移植し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MBC値を決定した。
供試菌として、グラム陰性細菌5種及びグラム陰性細菌4種を用いた。試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
G−2−2.細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例5>
一般的な寒天希釈法に従い、滅菌水を用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤を含む普通寒天培地上に塗布し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。
供試菌として、Staphylococcus aureus IFO 12732(S.aureus)並びにEscherichia coli K12 W 3110(E.coli)を用いた。
試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして比較例1の塩化ベンザルコニウム、比較例2の4BADMP−10C並びに比較例3の4BADMP−12Cを用いた。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
上記実施例4,5の結果から、本発明の化合物を用いた時のMBC値およびMIC値は比較例の化合物を用いた場合と同等か乃至小さいことから、本発明の化合物は比較例の化合物に対して細菌に対する抗菌力は同等乃至高いことが明らかである。
【0067】
G−2−3.真菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例6>
一般的なブロス希釈法に従い、前培養した供試菌を湿潤剤添加殺菌水で胞子液を調整した。段階希釈した薬剤溶液1mlと胞子液1mlとを混合し、インキュベーター内で、30℃で一週間培養後、増殖の有無を濁度で判定し、濁度の生じていない最小濃度をMICとした。
供試菌として、Aspergillus niger IFO6341(A.niger)及びCandida albicans
ATCC 10231(C.albicans)を用いた。
試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして比較例1の塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
上記実施例6の結果から、本発明の化合物を用いたときのMIC値は塩化ベンザルコニウムを用いた場合より小さいことから、本発明の化合物は塩化ベンザルコニウムに比較して真菌に対する抗菌力が高いことが明らかである。
【0070】
G−2−4.細胞毒性試験
<実施例7>
人由来の生細胞であるヒトメラノーマ細胞A375(以下A375と記す)を用いて細胞毒性試験を行った。A375を96穴プレートに1.5×104cell/well分注し、18時間後、段階希釈した薬剤を含む10%FBS/DMEM培地と交換し、5%CO2、37℃で6時間接触させた後の生細胞数を測定した。測定はXTTアッセイでの発色を吸光度(OD490−650)を利用し測定した。別に薬剤を用いないで同様の試験を行い100%生細胞率のコントロールとし、薬剤として塩化ベンザルコニウム200ppmを用いて0%生細胞数のコントロールとした。生細胞率が50%となる濃度を細胞毒性濃度EC50とした。試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして比較例1の塩化ベンザルコニウム、比較例2の4BADMP−10C、比較例3の4BADMP−12C、比較例4の4MHO並びに比較例5のI−8を用いた。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例7の結果から、本発明の化合物を用いた時の細胞毒性濃度EC50の値は、比較例1〜5の化合物を用いた場合と同等或いは大きいことから、本発明の化合物は人体に対する安全性は従来の抗菌剤に比較して同等乃至は優れていることが明らかである。
【0073】
以上の結果から、本発明の化合物は、比較例の化合物と同等、或いはそれ以上の抗菌活性を有しながらそれらよりも高い安全性を有していると言える。
【0074】
G−2−5.点眼剤薬剤成分との相互作用
<実施例8>
点眼剤用薬剤成分と本発明の化合物を1塩化ナトリウム溶液に溶解し、適量の希塩酸或いは水酸化ナトリウムにてpHを中性にした溶液を調整し、その透明性を肉眼で観察した。
点眼剤用薬剤成分としてコンドロイチン硫酸ナトリウム(以下SKAと略す)、ヒアルロン酸ナトリウム(SHAと略す)、クロモグリク酸ナトリウム(SCAと略す)、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム(SDPAと略す)、フラビンアデニジヌクレオチド(FAと略す)を使用する。
防腐剤の試験サンプルとしては、4BADMC−10(実施例2)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。表5に配合割合と観察結果を示す。
【0075】
【表5】
【0076】
上記実施例8の結果から、本発明の化合物を配合した場合には透明であったのに対して、塩化ベンザルコニウムを配合した場合は白濁が生じた。
【0077】
G−2−6.保存効力試験
<実施例9>
下記表6に記す処方にて配合した溶液を使用し、日本薬局方記載の方法に従い保存効力試験を行った。試験菌として細菌としてE.coliを、真菌としてA.nigerを用いた。下記処方の試験サンプル溶液20mlにE,coli、或いはA.nigerが105〜106個/mlとなるように調製し、初期生菌数を測定する。試験溶液を、E.coliは30℃にて6時間後、A.nigerは25℃にて7日後の生菌数を測定し、その減少度を測定する。
(減少度)=−Log(試験後のサンプル生菌数/初期生菌数)
試験サンプルとしては、4BDAMC−10(実施例3)、4BADMC−12(実施例8)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)、4BDAMP−10C(比較例3)、4BADMP−12C(比較例3)を用いた。結果を表7に示す。
【0078】
【表6】
処方
成分 %
試験サンプル 0.01
塩化ナトリウム 0.9
リン酸緩衝剤 0.05
リン酸 少量(pH=6.0になるよう調整)
精製水 残り
【0079】
【表7】
【0080】
実施例9の試験結果から、本発明の化合物は、E.coliとA.nigerに対する保存効力試験において十分な効果を有している。
【0081】
以上より本発明の化合物が、点眼剤の有効成分として用いられる種々の化合物と不溶性物質を生じることなく、透明な点眼剤を得るための防腐剤として極めて有効であることを見出した。即ち、本発明の点眼剤用防腐剤は本発明の化合物(1)を有効成分とするものである。
【0082】
【発明の効果】
本発明の化合物は、シクロヘキサンに第四アンモニウム塩が2個結合する構造を有する、新規な第四アンモニウム塩化合物である。
本発明の化合物は、既知の抗菌剤と比べ人体に対する安全性が高く、更に単独で優れた殺菌効果と広い抗菌スペクトルを有することから、抗菌剤として有用である。また、本化合物の化合物は点眼剤などの眼科領域用、医薬品用及び化粧品用防腐剤としても有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、当該化合物を用いる医薬品用および化粧品用の抗菌剤並びに防黴剤に関するものである。また、防腐剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抗菌活性を有する第四アンモニウム塩化合物は古くから知られ、現在も広く一般に用いられている。しかし、このような既存の化合物は通常、殺菌力・抗菌力が糖質、蛋白質及び脂質などに拮抗され、またpHの低い酸性領域では低下を起こし、且つ細胞芽胞に効果がない等の欠点がある。
【0003】
前述の課題を解決する方法として、特開平6−321902号公報や特開2000−95763号公報などで、第四アンモニウム塩構造を1分子中に2個持つ化合物、即ちビス第四アンモニウム塩化合物からなる抗菌剤が提案されている。これら公報記載の化合物は、高い抗菌活性を有しており、一部実際に抗菌剤として利用されている。しかし、これらの化合物は高い抗菌活性を有するものの、まだ不十分であり、また人体に対する安全性が充分でない点で改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示し、且つ人体に対する安全性の高い抗菌剤、防黴剤および防腐剤を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物である。
【0006】
【化9】
【0007】
式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、且つR1、R2、R3の炭素数の和が10以上であり、分岐を有してもよく、Xn−は無機性または有機性のアニオン基であり、nはアニオン基Xn−の価数であって1又は2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。
【0008】
本発明の化合物は下記式(6)と下記式(7)との反応により得られる。
【0009】
【化10】
【0010】
式(6)において、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0011】
【化11】
【0012】
式(7)において、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、分岐を有しても良く、R1、R2、R3の炭素数の和が10以上である。
【0013】
本発明は、新規な第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、本発明の化合物は、医薬品用および化粧品用の抗菌剤並びに防黴剤として使用できる。また、本発明の化合物は、防腐剤として有用なものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
A.新規化合物
本発明は、上記(1)式で表わされる新規な第四アンモニウム塩化合物である。
上記式(1)において、R1、R2、R3で表されるアルキル基としては炭素数1〜16のものが使用でき、それぞれ同じであっても異なっていても良い。また、R1、R2、R3の炭素数の和は10以上である。抗菌性能と人体に対する安全性のバランスを取るためには、R1、R2、R3の何れもメチル基でない場合には、R1、R2、R3がそれぞれ炭素数3〜8のものが好ましく、更には炭素数4〜6のものが好ましい。R1、R2、R3の何れかの1つがメチル基の場合には、残り2つのアルキル基は炭素数4〜12のものが好ましく、更には炭素数5〜8のものが好ましい。R1、R2、R3のうちの2つがメチル基の場合には、残りのアルキル基は炭素数8〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜12のものが好ましい。これらのアルキル基は、分岐を有しても良い。
【0015】
上記式(1)のXn−は無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(2)〜(5)で表されるアニオン基等である。
式(1)の化合物にアニオン基Xが結合する数(m)は、アニオン基Xn−の価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオン基Xn−が2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0016】
【化12】
R4−COO− (2)
【0017】
式(2)中、R4は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基またはアルケニル基を表す。
【0018】
【化13】−OOC−R5−COO− (3)
【0019】
式(3)中、R5は存在しない(COO同志が直接結合する)か、あるいは水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキレン基またはアルケニル基である。
【0020】
【化14】
R6SO4 − (4)
【0021】
式(4)中、R6は炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0022】
【化15】
【0023】
式(5)中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。
【0024】
B.新規化合物の製造方法
上記式(1)で表わされる第四アンモニウム塩化合物は、以下に述べる方法により製造できる。
【0025】
上記式(1)で表わされる第四アンモニウム塩化合物の製造方法は、上記式(6)のハロゲン化合物と上記式(7)の第3アミンとの反応により製造する方法である。
【0026】
上記一般式(6)の化合物としては、1,2−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イオドメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イオドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イオドメチル)シクロヘキサンなどのハロゲン化合物が挙げられる。
【0027】
また、式(7)の化合物としては、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N−メチル−N−ブチルペンチルアミン、N−メチル−N−ブチルヘキシルアミン、N−メチル−N−ブチルヘプチルアミン、N−メチル−N−ブチルオクチルアミン、N−メチル−N−ブチルノニルアミン、N−メチル−N−ブチルデシルアミン、N−メチル−N−ブチルウンデシルアミン、N−メチル−N−ブチルドデシルアミン、N−メチルジペンチルアミン、N−メチル−N−ペンチルヘキシルアミン、N−メチル−N−ペンチルヘプチルアミン、N−メチル−N−ペンチルオクチルアミン、N−メチル−N−ペンチルノニルアミン、N−メチル−N−ペンチルデシルアミン、N−メチル−N−ペンチルウンデシルアミン、N−メチル−N−ペンチルドデシルアミン、N−メチルジヘキシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルヘプチルアミン、N−メチル−N−ヘキシルオクチルアミン、N−メチル−N−ヘキシルノニルアミン、N−メチル−N−ヘキシルデシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルウンデシルアミン、N−メチル−N−ヘキシルドデシルアミン、N−メチルジヘプチルアミン、N−メチル−N−ヘプチルオクチルアミン、N−メチル−N−ヘプチルノニルアミン、N−メチル−N−ヘプチルデシルアミン、N−メチル−N−ヘプチルウンデシルアミン、N−メチル−N−ヘプチルドデシルアミン、N−メチルジオクチルアミン、N−メチル−N−オクチルノニルアミン、N−メチル−N−オクチルデシルアミン、N−メチル−N−オクチルウンデシルアミン、N−メチル−N−オクチルドデシルアミン、N−メチルジノニルアミン、N−メチル−N−ノニルデシルアミン、N−メチル−N−ノニルウンデシルアミン、N−メチル−N−ノニルドデシルアミン、N−メチルジデシルアミン、N−メチル−N−デシルウンデシルアミン、N−メチル−N−デシルデシルアミン、N−メチルジウンデシルアミン、N−メチル−N−ウンデシルドデシルアミン、N−メチルジドデシルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジブチルペンチルアミン、N−ブチルジペンチルアミン、N−ブチル−N−ペンチルヘキシルアミン、N−ブチルジヘキシルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジペンチルヘキシルアミン、N−ペンチルジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどの第3アミンが挙げられる。
【0028】
上記式(6)と上記式(7)との反応は適当な溶媒中で、50℃〜120℃の温度において実施することができる。
上記式(6)のハロゲン化合物に対し、上記式(7)の第3アミンの使用割合は、上記式(6)の化合物1モルに対して上記式(7)の化合物を2モル以上、例えば2モル〜2.3モルの割合で用いれば良い。
【0029】
上記式(6)と上記式(7)との反応時の溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール類、水又は水とアルコールとの混合溶液、更にはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤などが好適に用いられる。
一般に80℃以上の反応温度であれば1時間〜24時間にて反応は完了する。
【0030】
B−2.化合物の精製方法
前述の方法により生成された化合物は、必要により、通常の分離精製手段、例えば、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作などにより容易に精製することが出来る。
【0031】
B−3.アニオン基の交換
前述の方法により生成された第四アンモニウム塩化合物は、その中に含有されるアニオン基を、イオン交換により別の特定のアニオン基に変えることができる。イオン交換は、例えば、カチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂を充填したカラムにて処理をすることなどにより、容易に行うことが出来る。
【0032】
即ち本発明における第四アンモニウム塩化合物は、下記式(8)の第四アンモニウム塩化合物をカチオン基とするものであるが、その対イオンとなるアニオン基としては、上述した2つの方法によって合成された際のアニオン基を、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン硝酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン又は前述した式(2)〜(5)のいずれかのアニオン基に置き換えることによって製造できる。
【0033】
【化16】
【0034】
式(8)中、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜16のアルキル基を表わし、それぞれ同じであっても異なっていても良く、R1、R2、R3の炭素数の和が10以上である。
【0035】
C.抗菌性
上記のようにして得られた本発明の式(1)の化合物は、後記の実施例4、5及び6に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い抗菌スペクトルを有している。
【0036】
本発明の式(1)の化合物は、従来の市販の第四アンモニウム塩化合物等に比べて、同等、あるいはこれ以下の最小殺菌濃度という優れた殺菌活性を示す。従って、本発明の式(1)の化合物は、従来市販の同種の殺菌剤よりも少ない使用濃度で従来の殺菌剤と同等の殺菌効果を発揮する。
【0037】
D.化合物の安全性
本発明の第四アンモニウム塩化合物は、ラットでの経口毒性試験においてLD50(ラット)が2000mg/kg以上の値を持つ、極めて安全性の高い化合物である。
更に本発明の式(1)の化合物について、ヒトメラノーマ細胞を用いて細胞毒性を測定したところ、後記の実施例7に示すとおり、従来の第四アンモニウム塩化合物例えば塩化ベンザルコニウムや特開平6−3219024号公報、特開2000−95763号公報などで紹介されている第四アンモニウム塩化合物と比較して細胞毒性値は同等乃至は数倍低かった。このように式(1)の本発明の化合物は人体に対する毒性が極めて低い。
【0038】
E.化合物の用途
本発明の化合物は、抗菌剤として広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトケア用品、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等における抗菌剤、防黴剤および防腐剤として有用である。
本発明の化合物は、単独で優れた抗菌性を発揮するものであるが、適宜固体又は液体の担体に担持させて使用することができる。
また、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルション、水和剤、粒状剤、粉末、スプレー、エアゾール等として利用できる。
本発明の化合物を抗菌剤として使用できる際の好ましい配合割合は、抗菌剤の全重量を基準にして、0.0001〜100重量%であり、より好ましくは0.001〜10重量%である。
【0039】
F.点眼剤用防腐剤としての利用
従来の点眼剤用防腐剤として、第四アンモニウム塩やグアニジンなどのカチオン基を有する化合物、アルコール類、アミノ安息香酸エステルやソルビン酸などがあるが、防腐力が大きいことから第四アンモニウム塩化合物、特に塩化ベンザルコニウムが一般に汎用されている。
【0040】
しかし、これら防腐剤を配合すると、点眼剤の薬剤成分として共に配合する他の化合物の種類によっては点眼剤の液体に白濁を生じることがある。更に、塩化ベンザルコニウムについては、0.01%以上配合すると角膜に対し障害を起こすことが報告されているため、配合量は安全性が問題にならない範囲内に制限される。
【0041】
このように、従来の防腐剤については低濃度での配合であれば白濁や安全上の問題は生じないが、本来の防腐効果が不充分となってしまう為、別の配合剤を加え、防腐効果を向上させたり白濁を防止したりする改良技術が種々提案されている(特開平2−311417、特開平6−40910)。
【0042】
本発明者は、鋭意検討した結果、後述の実施例8及び9に示すとおり、本発明の化合物(1)が、点眼剤の有効成分として用いられる種々の化合物と不溶性物質を生じることなく、透明な点眼剤を得るための防腐剤として極めて有効であることを見出した。
即ち、本発明の点眼剤用防腐剤は本発明の化合物(1)を有効成分とするものである。
【0043】
本発明の化合物(1)と配合しても白濁を生じない点眼剤の薬剤成分用化合物として例えば以下のものがある。
即ち、ヒアルロン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、ビレノキシン、塩化リゾチウム、クロモグリク酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーなどのカルボキシル基を有する化合物、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、ソジウムメタスルホ安息香酸デキサメサゾンなどのスルホン酸基を有する化合物、フラビンアデニジンジヌクレオチドなどのホスホニル基を有する化合物及び塩酸ピロカルピンなどである。これらの化合物は、何れも、従来、塩化ベンザルコニウムとの配合により白濁が生ずるため薬剤成分として配合できなかったものである。
【0044】
本発明の点眼剤用防腐剤は、上記薬剤成分に加え、必要に応じて点眼剤に使用される各種成分、例えば、抗炎症剤やビタミン剤、抗ヒスタミン剤などの有効成分、pH調整剤や緩衝剤、等張化剤、可溶剤などの添加剤などが配合されていてもその防腐効果に影響はない。
【0045】
また、本発明の化合物(1)は、後記の実施例4,5及び6に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い殺菌スペクトルを有している上、実施例7に示すとおり、安全性の高い化合物である。更に実施例9に示すとおり点眼剤用防腐剤としての防腐効果も有している。
【0046】
本発明の式(1)の化合物の点眼剤における好ましい配合量は、通常、点眼剤全体の0.0005〜0.1%であり、好ましくは0.002〜0.02%である。0.0005%未満であると防腐剤による防腐効果が不充分になる恐れがあり、0.1%より多いと経済的に不利である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
G−1.合成例
【0048】
<実施例1>
1,4−シクロヘキサンジメタノール100mmolに臭化水素酸48%水溶液300mmol及び濃硫酸100mmolを加え16時間加熱還流した。反応液に酢酸エチルと水を加えて抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒、ヘキサン/酢酸エチル)に付し、前駆体である、1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサンを5.3g得た。収率は20%であった。
【0049】
<実施例2>
実施例1で得られた前駆体の1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン10mmolをアセトニトリル10mlに溶解し、更にN,N−ジメチルデシルアミン30mmolを加え、7時間加熱還流した。放冷後結晶が析出したのでこれをろ別し、酢酸エチルで洗浄して、目的化合物である白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)シクロヘキサンジブロミド(4BADMC−10と略す)を3.5g得た。この化合物の収率は前駆体から55%であった。
【0050】
得られた4BADMC−10の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.88(6H、t、J=6.8Hz)、1.27(20H、br s)、1.34(8H、br s)、1.50(4H、t、J=10.0Hz)、1.72(4H、br s)、1.93(4H、t、J=7.2Hz)、2.14(2H、br s)、3.22(12H、s)、3.38(8H、m)
【0051】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0052】
上記で得られたサンプル4BADMC−10について、経口毒性(LD50:ラット)を測定したところ、>2000mg/kgとなった。
【0053】
<実施例3>
実施例2において、N,N−ジメチルデシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は実施例2と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)シクロヘキサン(4BADMC−12と略す)を2.7g得た。この化合物の収率は39%であった。
【0054】
得られた4BADMC−12の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.88(6H、t、J=6.8Hz)、1.26(32H、br s)、1.37(8H、br s)、1.51(4H、t、J=10.0Hz)、1.72(4H、br s)、1.93(4H、t、J=7.2Hz)、2.15(2H、br s)、3.22(12H、s)、3.36(8H、m)
【0055】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0056】
G−2.試験例
以下に本発明の化合物の抗菌性及び防腐力に関する試験例を示す。
比較のために、先ず、従来の抗菌剤を6種調製した。
【0057】
<比較例1>
比較例1として、市販の第四アンモニウム塩系抗菌剤である塩化ベンザルコニウムを調製した。
【0058】
<比較例2>
比較例2として、以下の通り特開平10−114604号公報で提案された抗菌剤(殺菌消毒剤)を合成し使用した。ハロゲン化合物としてα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジメチルデシルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテル溶媒にて再結晶し、減圧乾燥により、目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−10Cと略す)を6.5g得た。
【0059】
<比較例3>
比較例3として、比較例2の第3アミンをN,N−ジメチルデシルアミンの代わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを使用した以外は比較例2と全く同じ操作を行ない目的の白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−12Cと略す)を8.0g得た。
【0060】
<比較例4>
比較例4として、以下の通り特開平6−321902号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをエタノール50mlに溶解し、攪拌した状態で1,6−ジブロモヘキサン10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で12時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物を水50mlに溶解し、これに1N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH11に調整した後、ジエチルエーテルを用いて抽出作業を3回繰り返した。エーテル層にモレキュラーシーブ3A 1/16(和光純薬工業社製)を入れて1晩乾燥した後エーテルを除去し、薄い黄色の溶液状化合物が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、加熱還流条件下で24時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体をアセトニトリル溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(1,6−ジチオヘキサメチレン)−ビス−(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(4MHOと略す)が4.4g得られた。
【0061】
<比較例5>
比較例5として、以下の通り特開2000−95763号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをアセトン50mlに溶解し、攪拌した状態でキシリレンジクロライド10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で5時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をアセトンで洗浄後、純水50mlに溶解し、これに0.5N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH10に調整した後、トルエンを用いて抽出作業を3回繰り返した。有機層を水洗し乾燥した後トルエンを減圧除去し、粗晶が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、100℃にて15時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体を酢酸エチルエステル200mlに投入し、析出した固体をろ別分離し、アセトニトリル/酢酸エチルエステル混合溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(p−キシリルジチオ)−ビス(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(I−8と略す)が4.0g(収率50%)得られた。
【0062】
G−2−1.細菌に対する最小殺菌濃度(MBC)
<実施例4>
一般的な無菌水希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて培養した対数増殖期初期状態の菌体を、無菌水にて菌懸濁液濃度が約106cell/mlになるように調整した。段階希釈した薬剤溶液を各0.5ml分注後、調整した菌体懸濁液をそれぞれ0.5mlずつ接種し、30℃で30分間接触後、試験液0.1mlをニュトリエントブロス2mlに移植し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MBC値を決定した。
供試菌として、グラム陰性細菌5種及びグラム陰性細菌4種を用いた。試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
G−2−2.細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例5>
一般的な寒天希釈法に従い、滅菌水を用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤を含む普通寒天培地上に塗布し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。
供試菌として、Staphylococcus aureus IFO 12732(S.aureus)並びにEscherichia coli K12 W 3110(E.coli)を用いた。
試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして比較例1の塩化ベンザルコニウム、比較例2の4BADMP−10C並びに比較例3の4BADMP−12Cを用いた。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
上記実施例4,5の結果から、本発明の化合物を用いた時のMBC値およびMIC値は比較例の化合物を用いた場合と同等か乃至小さいことから、本発明の化合物は比較例の化合物に対して細菌に対する抗菌力は同等乃至高いことが明らかである。
【0067】
G−2−3.真菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
<実施例6>
一般的なブロス希釈法に従い、前培養した供試菌を湿潤剤添加殺菌水で胞子液を調整した。段階希釈した薬剤溶液1mlと胞子液1mlとを混合し、インキュベーター内で、30℃で一週間培養後、増殖の有無を濁度で判定し、濁度の生じていない最小濃度をMICとした。
供試菌として、Aspergillus niger IFO6341(A.niger)及びCandida albicans
ATCC 10231(C.albicans)を用いた。
試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして比較例1の塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
上記実施例6の結果から、本発明の化合物を用いたときのMIC値は塩化ベンザルコニウムを用いた場合より小さいことから、本発明の化合物は塩化ベンザルコニウムに比較して真菌に対する抗菌力が高いことが明らかである。
【0070】
G−2−4.細胞毒性試験
<実施例7>
人由来の生細胞であるヒトメラノーマ細胞A375(以下A375と記す)を用いて細胞毒性試験を行った。A375を96穴プレートに1.5×104cell/well分注し、18時間後、段階希釈した薬剤を含む10%FBS/DMEM培地と交換し、5%CO2、37℃で6時間接触させた後の生細胞数を測定した。測定はXTTアッセイでの発色を吸光度(OD490−650)を利用し測定した。別に薬剤を用いないで同様の試験を行い100%生細胞率のコントロールとし、薬剤として塩化ベンザルコニウム200ppmを用いて0%生細胞数のコントロールとした。生細胞率が50%となる濃度を細胞毒性濃度EC50とした。試験サンプルとしては、実施例2で合成した4BADMC−10と実施例3で合成した4BADMC−12を用い、比較サンプルとして比較例1の塩化ベンザルコニウム、比較例2の4BADMP−10C、比較例3の4BADMP−12C、比較例4の4MHO並びに比較例5のI−8を用いた。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例7の結果から、本発明の化合物を用いた時の細胞毒性濃度EC50の値は、比較例1〜5の化合物を用いた場合と同等或いは大きいことから、本発明の化合物は人体に対する安全性は従来の抗菌剤に比較して同等乃至は優れていることが明らかである。
【0073】
以上の結果から、本発明の化合物は、比較例の化合物と同等、或いはそれ以上の抗菌活性を有しながらそれらよりも高い安全性を有していると言える。
【0074】
G−2−5.点眼剤薬剤成分との相互作用
<実施例8>
点眼剤用薬剤成分と本発明の化合物を1塩化ナトリウム溶液に溶解し、適量の希塩酸或いは水酸化ナトリウムにてpHを中性にした溶液を調整し、その透明性を肉眼で観察した。
点眼剤用薬剤成分としてコンドロイチン硫酸ナトリウム(以下SKAと略す)、ヒアルロン酸ナトリウム(SHAと略す)、クロモグリク酸ナトリウム(SCAと略す)、ジメチルイソプロピルアズレンスルホン酸ナトリウム(SDPAと略す)、フラビンアデニジヌクレオチド(FAと略す)を使用する。
防腐剤の試験サンプルとしては、4BADMC−10(実施例2)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)を用いた。表5に配合割合と観察結果を示す。
【0075】
【表5】
【0076】
上記実施例8の結果から、本発明の化合物を配合した場合には透明であったのに対して、塩化ベンザルコニウムを配合した場合は白濁が生じた。
【0077】
G−2−6.保存効力試験
<実施例9>
下記表6に記す処方にて配合した溶液を使用し、日本薬局方記載の方法に従い保存効力試験を行った。試験菌として細菌としてE.coliを、真菌としてA.nigerを用いた。下記処方の試験サンプル溶液20mlにE,coli、或いはA.nigerが105〜106個/mlとなるように調製し、初期生菌数を測定する。試験溶液を、E.coliは30℃にて6時間後、A.nigerは25℃にて7日後の生菌数を測定し、その減少度を測定する。
(減少度)=−Log(試験後のサンプル生菌数/初期生菌数)
試験サンプルとしては、4BDAMC−10(実施例3)、4BADMC−12(実施例8)と塩化ベンザルコニウム(比較例1)、4BDAMP−10C(比較例3)、4BADMP−12C(比較例3)を用いた。結果を表7に示す。
【0078】
【表6】
処方
成分 %
試験サンプル 0.01
塩化ナトリウム 0.9
リン酸緩衝剤 0.05
リン酸 少量(pH=6.0になるよう調整)
精製水 残り
【0079】
【表7】
【0080】
実施例9の試験結果から、本発明の化合物は、E.coliとA.nigerに対する保存効力試験において十分な効果を有している。
【0081】
以上より本発明の化合物が、点眼剤の有効成分として用いられる種々の化合物と不溶性物質を生じることなく、透明な点眼剤を得るための防腐剤として極めて有効であることを見出した。即ち、本発明の点眼剤用防腐剤は本発明の化合物(1)を有効成分とするものである。
【0082】
【発明の効果】
本発明の化合物は、シクロヘキサンに第四アンモニウム塩が2個結合する構造を有する、新規な第四アンモニウム塩化合物である。
本発明の化合物は、既知の抗菌剤と比べ人体に対する安全性が高く、更に単独で優れた殺菌効果と広い抗菌スペクトルを有することから、抗菌剤として有用である。また、本化合物の化合物は点眼剤などの眼科領域用、医薬品用及び化粧品用防腐剤としても有用である。
Claims (7)
- 無機性または有機性のアニオン基Xが、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸基イオン又は下記式(2)〜(5)のいずれかで表されるアニオン基である請求項1記載の第四アンモニウム塩化合物。
- 請求項3記載の方法によって製造された下記一般式(8)を、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸基イオン又は上記式(2)〜(5)のいずれかのイオン化合物から選ばれる1種のアニオン基に置換させてなる請求項1又は請求項2に記載の第四アンモニウム塩化合物の製造方法。
- 請求項1又は請求項2記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する抗菌剤又は防黴剤。
- 請求項1又は請求項2記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する医薬品または化粧品
- 請求項1又は請求項2記載の第四アンモニウム塩化合物を含有する点眼剤。
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