JP2004331499A - 新規なビス第四アンモニウム塩化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なビス第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、また上記のビス第四アンモニウム塩化合物を有効成分とする抗菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抗菌活性を有する第四アンモニウム塩化合物は古くから知られ、現在も広く一般に用いられている。しかし、このような化合物は、通常、殺菌力、抗菌力の発現が糖質、蛋白質及び脂質などにより抑制されやすく、またpHの低い酸性領域では低下を起こし、且つ細胞芽胞に効果がない等の欠点がある。
【0003】
前述の課題を解決する方法として、特開平6−321902号公報、特開平10−114604号公報や特開2000−95763号公報などで、第四アンモニウム塩構造を1分子中に2個持つ化合物、即ちビス第四アンモニウム塩化合物からなる抗菌剤(又は殺菌剤)が提案されている。これら公報記載の化合物は、その第四アンモニウム塩を構成する窒素原子に1個の炭素数6から18の範囲の長鎖アルキル基が結合した構造を持っており、それゆえ高い抗菌活性を有し、抗菌性能の点では良好な物である。しかし、これらの化合物は高い抗菌活性を有するものの、化合物の疎水性が高く、人体に対する安全性が低い欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示し、且つ人体に対する安全性の高い抗菌剤を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、1分子中に2つの第四アンモニウムを含む化合物が、それらの第四アンモニウムを構成する窒素原子各々に対し、炭素数が4〜12である2個のアルキル基と1個のメチル基又はエチル基である場合において上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成するに至った。
即ち、本発明における第一発明は、下記(1)式で表わされる新規なビス第四アンモニウム塩化合物である。
【0006】
【化15】
【0007】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基であり、R3は炭素数1〜2のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオン基であり、nはアニオン基Xの価数であって、1又は2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。]
【0008】
さらに本発明は、上記ビス第四アンモニウム塩化合物の製造方法及び該化合物を有効成分とする抗菌剤を含むものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記式(1)において、R1、R2で表されるアルキル基としては炭素数4〜12のものが使用できるが、抗菌性能と人体に対する安全性のバランスを取るためには炭素数4〜10のものが好ましく、更には炭素数5〜8のものがより好ましい。
また、R3はメチル基、エチル基のどちらでも良いが、本発明の化合物に高い抗菌性能を発揮させるにはメチル基がより好ましい。
【0010】
上記式(1)のXは無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(2)〜(5)で表されるアニオン基等である。
式(1)の化合物にアニオン基Xが結合する数は、アニオン基Xが−2価の場合には1個であり、−1価の場合には2個である。
【0011】
【化16】
【0012】
[式中、R4は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基またはアルケニル基を表す。]
【0013】
【化17】
【0014】
[式中、R5は存在しない(COO同志が直接結合する)か、あるいは水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基である。]
【0015】
【化18】
【0016】
[式中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0017】
【化19】
【0018】
[式中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0019】
本発明の好ましい化合物、及び更に好ましい化合物におけるR1〜R3は、以下の通りである。
【0020】
【表1】
【0021】
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物を得ることができる好ましい製造方法として、以下に述べる3つの方法がある。
第1の方法は、下記式(6)のハロゲン化物と下記式(7)の第3アミンとの反応により製造する方法である。
【0022】
【化20】
【0023】
[式中、Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0024】
【化21】
【0025】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基であり、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0026】
上記一般式(6)の化合物としては、2,2’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(イオドメチル)ビフェニルなどのハロゲン化物が挙げられる。
【0027】
また、式(7)の化合物としては、N,N−ジブチル−N−メチルアミン、N,N−ジペンチル−N−メチルアミン、N,N−ジヘキシル−N−メチルアミン、N,N−ジヘプチル−N−メチルアミン、N,N−ジオクチル−N−メチルアミン、N,N−ジノニル−N−メチルアミン、N,N−ジデシル−N−メチルアミン、N,N−ジドデシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ヘキシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ヘプチル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−オクチル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ノニル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−デシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−ヘキシル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−オクチル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−デシル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−ヘプチル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−オクチル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−ノニル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−デシル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−オクチル−N−デシル−N−メチルアミン、N−オクチル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−デシル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N,N−ジブチル−N−エチルアミン、N,N−ジペンチル−N−エチルアミン、N,N−ジヘキシル−N−エチルアミン、N,N−ジヘプチル−N−エチルアミン、N,N−ジオクチル−N−エチルアミン、N,N−ジノニル−N−エチルアミン、N,N−ジデシル−N−エチルアミン、N,N−ジドデシル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−ヘキシル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−オクチル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−デシル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−ヘキシル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−オクチル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−デシル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−オクチル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−デシル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−オクチル−N−デシル−N−エチルアミン、N−オクチル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−デシル−N−ドデシル−N−エチルアミンなどの第3アミンが挙げられる。
【0028】
これらの反応は、適当な有機溶媒中で、50℃〜120℃の温度において実施することができる。上記式(7)の第3アミンの好ましい使用割合は、上記式(6)の化合物1モルに対して上記式(7)の化合物が2モル以上、例えば2.0モル〜2.3モルとなる割合である。
【0029】
反応溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合溶液、更にはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤などが好適に用いられる。反応温度については、一般に80℃以上であれば1時間〜40時間にて反応は進行する。
【0030】
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩を製造する第2の方法は、下記式(8)の第3アミンと下記式(9)の四級化剤を反応させる方法である。
【0031】
【化22】
【0032】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基を表す。]
【0033】
【化23】
【0034】
[式中、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子または下記式(10)、(11)の基のいずれかを表す。]
【0035】
【化24】
【0036】
[式中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0037】
【化25】
【0038】
[式中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又はカルボキシル基を表す。]
【0039】
上記式(8)の化合物としては、N,N,N’,N’−テトラブチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラペンチル−4,4‘−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘキシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘプチル−2,2’−ビフェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラオクチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラノニル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラドデシル−2,2’−ビフェニレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジヘキシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジオクチル−2,2’−ビフェニレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジオクチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラブチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラペンチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘキシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘプチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラオクチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラノニル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジヘキシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジオクチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジオクチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラブチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラペンチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘキシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘプチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラオクチル−4,4’−ビフェニリレンジアミンジアミン、N,N,N’,N’−テトラノニル−4,4’−ビフェニリレンジアミンジアミン、N,N,N’,N’−テトラデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミンジアミン、N,N,N’,N’−テトラドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジヘキシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジオクチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジオクチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
また上記式(9)の化合物としては、塩化メタン、塩化エタン、臭化メタン、臭化エタン、ヨウ化メタン、ヨウ化エタン等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、などのスルホン酸アルキル等が挙げられる。
【0041】
これらの反応は適当な溶媒中で50℃〜120℃の温度において実施することができる。四級化剤は熱などにより失活するものも多いため、上記式(8)の第3アミンに対して、上記式(9)の四級化剤化合物は過剰に用いることが望ましい。4倍モル以上、より好ましくは6倍モル以上が好適である。
【0042】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合溶液、更にはN、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル、メチルセロセルブ、メチルセロソルブなどが好適に用いられる。
【0043】
反応雰囲気については、大気中でも合成は可能だが、窒素雰囲気下での反応がより望ましい。反応温度については、一般に80℃以上であれば、1時間から40時間にて反応は完了する。
【0044】
また、上記の反応は、適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中で加圧下、好ましくは10〜100MPa(メガパスカル)において50〜100℃の温度で行うこともできる。反応時間は通常5時間から120時間とすることができる。
【0045】
上記式(8)の第3アミンは、例えば上記式(6)のハロゲン化物と下記式(15)のとの反応から得ることができる。
【0046】
【化26】
【0047】
(式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基を表す)
【0048】
上記式(15)の化合物としては、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジヘプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルジアミン、N,N−ジドデシルジアミン、N−ブチル−N−ヘキシルアミン、N−ブチル−N−オクチルアミン、N−ブチル−N−デシルアミン、N−ブチル−N−ドデシルアミン、N−ヘキシル−N−オクチルアミン、N−ヘキシル−N−デシルアミン、N−ヘキシル−N−ドデシルアミン、N−オクチル−N−デシルアミン、N−オクチル−N−ドデシルアミン、N−デシル−N−ドデシルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0049】
上記式(6)と上記式(15)の三級化反応は、アルコール類、アルコール類と水との混合溶液又は芳香族有機溶剤などの適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件下において実施することができる。上記式(15)の第2アミンの好ましい使用割合は、上記式(6)の化合物1モルに対して上記式(15)の化合物が4モル〜6モル、特に4.1モル〜4.4モルとなる割合である。上記の三級化反応の結果、目的中間生成物である第3アミンと副生成物として原料アミン塩酸塩が生成される。
【0050】
副生成物の生成を抑制するには、上記式(8)と上記式(15)を適当な溶媒にそれぞれ溶解させ、上記式(15)の溶液中に上記式(8)の溶液を少量ずつ加えながら反応を行うとより良い。
【0051】
目的中間生成物である第3アミンと原料アミン塩酸塩の分離は、どのような方法を用いても良いが、抽出作業などによる分離が可能である。更に、有機溶剤の溶解性による違いを利用しても容易に行える。
【0052】
副生成物の原料アミン塩酸塩は原料アミンに再生が可能である。副生成物の原料アミン酸塩にNaOH水溶液などの塩基を作用させると、非水溶性の有機層ができる。この有機層を一般的な分離・精製方法することにより原料の第2アミンが得られる。この再生された第2アミンは再び原料として使用可能である。
【0053】
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩の製造を可能とする第3の方法は、下記式(12)の第3アミンと下記式(13)の四級化剤を反応させる方法である。
【0054】
【化27】
【0055】
[式中、R1は炭素数4〜12のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0056】
【化28】
【0057】
[式中、R2は炭素数4〜12のアルキル基を表し、Jは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または上記式(11)の基のいずれかを表す。]
【0058】
上記式(12)の化合物としては、N,N’−ジブチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジエチル−−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン等が挙げられる。
【0059】
また上記式(13)の化合物としては、塩化ブタン、塩化ペンタン、塩化ヘキサン、塩化ヘプタン、塩化オクタン、塩化ノナン、塩化デカン、臭化ブタン、臭化ペンタン、臭化ヘキサン、臭化ヘプタン、臭化オクタン、臭化ノナン、臭化デカン、ヨウ化ブタン、ヨウ化ペンタン、ヨウ化ヘキサン、ヨウ化ヘプタン、ヨウ化オクタン、ヨウ化ノナン、ヨウ化デカン等のハロゲン化アルキル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ペンチル、p−トルエンスルホン酸ヘキサン、p−トルエンスルホン酸ヘプタン、p−トルエンスルホン酸オクタン、p−トルエンスルホン酸ノナン、p−トルエンスルホン酸デカン、p−トルエンスルホン酸ドデカンなどのスルホン酸アルキル等が挙げられる。
【0060】
式(12)の化合物と式(13)の化合物との反応は、ほぼ第2の方法に順じて実施できる。即ち溶媒としては、アルコール類、又は水とアルコールとの混合溶液、及びN、N−ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブなどが好適に用いられ、又、溶媒が無くても反応は可能である。反応雰囲気、反応温度、反応時間についても第2の方法と同一で実施できる。上記式(12)の第3アミンに対し、上記式(13)の四級化剤の使用割合は、上記式(12)の化合物1モルに対して上記式(13)の化合物を2モル以上で用いれば良く、2.0モル〜2.3モルの割合で良い。また上記の反応は、第2反応と同様に適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中、加圧下で進行させることができる。
【0061】
上記式(12)の第3アミンは、例えば上記式(6)のハロゲン化物と下記式(16)の第2アミンとの反応から得ることができる。
【0062】
【化29】
【0063】
[式中、R1は炭素数4〜12のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0064】
上記式(16)の化合物としては、N−ブチル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−メチルアミン、N−ヘプチル−N−メチルアミン、N−オクチル−N−メチルアミン、N−ノニル−N−メチルアミン、N−デシル−N−メチルアミン、N−ドデシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−エチルアミン、N−ヘプチル−N−エチルアミン、N−オクチル−N−エチルアミン、N−ノニル−N−エチルアミン、N−デシル−N−エチルアミン、N−ドデシル−N−エチルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0065】
上記式(6)と上記式(16)の三級化反応は、上記式(6)と上記式(15)との反応にほぼ準じて、アルコール類、水とアルコール類の混合溶媒又は芳香族有機溶剤など適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件において実施することができる。上記式(16)の第2アミンの好ましい使用割合は、上記式(6)のハロゲン化物1モルに対して上記式(16)の化合物が4モル〜6モル、特に4.1モル〜4.4モルとなる割合である。
目的中間生成物である第3アミンと原料アミン塩酸塩の分離や副生成物の原料アミン塩酸塩の再生も式(6)化合物と式(15)との反応の場合とほぼ同様にして実施できる。
【0066】
前述の3つの方法により生成された化合物は、必要により、通常の分離精製手段、例えば、カラムクロマト分離や再結晶操作などにより容易に精製することが出来る。
【0067】
前述の3つの方法の何れかにより生成された第四アンモニウム塩化合物は、その中に含まれるアニオン基を、イオン交換により別のアニオン基に変えることができる。イオン交換は、例えば、アニオン交換樹脂を充填したカラムにて処理をすることなどにより、容易に行うことが出来る。
【0068】
即ち本発明における第四アンモニウム塩は、下記式(14)の第四アンモニウム塩化合物をカチオン基とするものであるが、その対イオンとなるアニオン基としては、上述した3つの方法によって合成された際のアニオン基を、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン硝酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン又は前述した式(2)〜(5)のいずれかのアニオン基に置き換えることによって製造できる。
【0069】
【化30】
【0070】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基であり、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0071】
上記のようにして得られた本発明の式(1)の化合物は、後記の試験例1及び2に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い抗菌スペクトルを有しており、アルキル鎖(R1、R2)の炭素数が、4〜10、特に5〜8の範囲で強い殺菌活性を示す。
【0072】
本発明の式(1)の化合物は、従来の市販の第四アンモニウム塩等に比べて最小殺菌濃度が1/10以下であるという優れた殺菌活性を示す。従って、本発明の式(1)の化合物を有効成分とする抗菌剤は、従来から市販されている同種の殺菌剤よりもはるかに少ない使用濃度で従来の殺菌剤と同等の殺菌効果を発揮させることができる。
一方、本発明の第四アンモニウム塩化合物は、ラットでの経口毒性試験において2000mg/kg以上の値を持つ、極めて安全性の高い化合物である。
【0073】
更に、本発明の式(1)の化合物について溶血活性を測定したところ、後記の試験例3に示すとおり、従来の第四アンモニウム塩、例えば塩化ベンザルコニウムや特開平6−3219024号公報、特開2000−95763号公報などで紹介されている第四アンモニウム塩化合物と比較して10倍以上溶血活性が低い値が得られた。これにより式(1)の化合物の人体に対する毒性は極めて低いことが認められた。
【0074】
以上より、本発明の式(1)の化合物は、細菌や細胞芽胞に対して広く高い抗菌活性を有し、且つ人体に対する安全性の高い抗菌剤であることが判明した。
【0075】
本発明の化合物は、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等における抗菌剤として幅広くその応用が期待される。
【0076】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
ハロゲン化合物として4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジブチル−N−メチルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルエーテルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチルエーテル混合溶液にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジブチル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−4と略す)が8.6g得られた。目的化合物の収率は80%であった。
【0078】
得られた4BAMB−4の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(8H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C32H54N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0081】
<実施例2>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN,N−ジペンチル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジペンチル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−5と略す)を8.4g得た。この化合物の収率は71%であった。
【0082】
得られた4BAMB−5の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(16H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C36H62N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0083】
【表3】
【0084】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0085】
<実施例3>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN,N−ジヘキシル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジヘキシル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−6と略す)を11.2g得た。この化合物の収率は86%であった。
【0086】
得られた4BAMB−6の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(24H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C40H70N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0087】
【表4】
【0088】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0089】
上記で得られたサンプル4BAMB−6について、経口毒性(LD50:ラット)を測定したところ、>2000mg/kgとなった。
【0090】
<実施例4>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN−オクチル−N−ヘキシル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N−オクチル−N−ヘキシル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−6、8と略す)を9.6g得た。この化合物の収率は68%であった。
【0091】
得られた4BAMB−6、8の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(32H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C44H78N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0092】
【表5】
【0093】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0094】
<実施例5>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN,N−ジオクチル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジオクチル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−8と略す)を13.6g得た。この化合物の収率は89%であった。
【0095】
得られた4BAMB−8の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(40H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C48H86N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0096】
【表6】
【0097】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0098】
<比較例1>
比較例1として、市販の第四アンモニウム塩系抗菌剤(殺菌剤)である塩化ベンザルコニウムを使用した。
【0099】
<比較例2>
比較例2として、以下の通り特開平10−114604号公報で提案された抗菌剤(殺菌消毒剤)を合成し使用した。ハロゲン化合物としてα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolを、3級アミンとしてN,−ドデシル−N,N−ジメチルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテル溶媒にて再結晶し、減圧乾燥により、目的の白色の化合物1,4−ビス(N−ドデシル−N,N−ジメチルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−12Cと略す)を8.02g得た。目的化合物の収率は70%であった。
【0100】
<比較例3>
比較例3として、以下の通り特開平6−321902号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをエタノール50mlに溶解し、攪拌した状態で1,6−ジブロモヘキサン10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で12時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物を水50mlに溶解し、これに1N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH11に調整した後、ジエチルエーテルを用いて抽出作業を3回繰り返した。エーテル層にモレキュラーシーブ3A 1/16(和光純薬工業)を入れて1晩乾燥した後エーテルを除去し、薄い黄色の溶液状化合物が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、加熱還流条件下で24時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体をアセトニトリル溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(1,6−ジチオヘキサメチレン)−ビス−(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(4MHOと略す)が4.40g得られた。目的化合物の収率は56%であった。
【0101】
<比較例4>
比較例4として、以下の通り特開2000−95763号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをアセトン50mlに溶解し、攪拌した状態でキシリレンジクロライド10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で5時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をアセトンで洗浄後、純水50mlに溶解し、これに0.5N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH10に調整した後、トルエンを用いて抽出作業を3回繰り返した。有機層を水洗し乾燥した後トルエンを減圧除去し、粗晶が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、100℃にて15時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体を酢酸エチルエステル200mlに投入し、析出した固体をろ別分離し、アセトニトリル/酢酸エチルエステル混合溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(p−キシリルジチオ)−ビス(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(I−8と略す)が4.0g(収率50%)得られた。
【0102】
<試験例1> 細菌に対する最小殺菌濃度(MBC)の測定
最小殺菌濃度(MBC)の測定は、一般的な無菌水希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて培養した対数増殖期初期状態の菌体を、無菌水にて菌懸濁液濃度が約106cell/mlになるように調整した。段階希釈した薬剤溶液を各0.5ml分注後、調整した菌体懸濁液をそれぞれ0.5mlずつ接種し、30℃で30分間接触後、試験液0.1mlをニュトリエントブロス2mlに移植し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MBC値を決定した。供試菌として、グラム陰性細菌5種及びグラム陰性細菌4種を用いた。試験サンプルとしては、実施例3で合成した4BAMB−6と実施例4で合成した4BAMB−6,8を用い、比較サンプルとして塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表7に示す。
【0103】
【表7】
【0104】
<試験例2> 細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)の測定
最小発育阻止濃度(MIC)の測定は、一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110を用いた。試験サンプルは実施例1〜5にて得られたサンプル並びに比較例1の塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
<試験例3> 赤血球に対する最小溶血活性濃度
ヒトの血液を採取し、等量のアルセバー液(ブドウ糖2.05g、NaCl0.42g、クエン酸ナトリウム0.8g、クエン酸0.55gを含むpH6.1)と混合し、4℃に保存した。実験に用いる直前にこのアルセバー保存血を遠心分離し上澄み及び赤血球上の白血球層を取り除いた。更に赤血球に約10倍量のPBSを加えた後、遠心洗浄を3回繰り返し、最後に赤血球と等量のPBSを加え、50%赤血球とした。段階希釈した薬剤のPBS希釈液990μlに50%赤血球10μlを加え、37℃で1時間作用させた後、遠心分離し、その上澄みを回収し、O.D.540を測定した。別に、薬剤を用いないで同様の試験を行い0%溶血のコントロールとし、PBSの代わりにMilliQ水を用いて100%溶血のコントロールとした。薬剤の最小溶血活性濃度としては、溶血濃度が50%以下となる最も薄い濃度とした。試験サンプルとしては実施例1〜実施例3の4BAMB−4、4BAMB−5及び4BAMB−6を用い、比較サンプルとしては比較例1の塩化ベンザルコニウム、比較例2の4BADMP−12C、比較例3の4MHO及び比較例4のI−8を用いた。結果を表9に示す。
【0107】
【表9】
【0108】
【発明の効果】
上記試験例からも明らかなように、本発明の新規なビス第四アンモニウム塩化合物は、既知の第四ンモニウム塩系化合物に比べて、格段に優れた殺菌効果と広い抗菌スペクトルを示し、且つ、人体に対する安全性も高いため、殺菌剤として極めて有効な化合物である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なビス第四アンモニウム塩化合物とその製造方法に関するものであり、また上記のビス第四アンモニウム塩化合物を有効成分とする抗菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
抗菌活性を有する第四アンモニウム塩化合物は古くから知られ、現在も広く一般に用いられている。しかし、このような化合物は、通常、殺菌力、抗菌力の発現が糖質、蛋白質及び脂質などにより抑制されやすく、またpHの低い酸性領域では低下を起こし、且つ細胞芽胞に効果がない等の欠点がある。
【0003】
前述の課題を解決する方法として、特開平6−321902号公報、特開平10−114604号公報や特開2000−95763号公報などで、第四アンモニウム塩構造を1分子中に2個持つ化合物、即ちビス第四アンモニウム塩化合物からなる抗菌剤(又は殺菌剤)が提案されている。これら公報記載の化合物は、その第四アンモニウム塩を構成する窒素原子に1個の炭素数6から18の範囲の長鎖アルキル基が結合した構造を持っており、それゆえ高い抗菌活性を有し、抗菌性能の点では良好な物である。しかし、これらの化合物は高い抗菌活性を有するものの、化合物の疎水性が高く、人体に対する安全性が低い欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを示し、且つ人体に対する安全性の高い抗菌剤を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、1分子中に2つの第四アンモニウムを含む化合物が、それらの第四アンモニウムを構成する窒素原子各々に対し、炭素数が4〜12である2個のアルキル基と1個のメチル基又はエチル基である場合において上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成するに至った。
即ち、本発明における第一発明は、下記(1)式で表わされる新規なビス第四アンモニウム塩化合物である。
【0006】
【化15】
【0007】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基であり、R3は炭素数1〜2のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオン基であり、nはアニオン基Xの価数であって、1又は2のいずれかから選ばれ、mはnが1のとき2であり、nが2のとき1である。]
【0008】
さらに本発明は、上記ビス第四アンモニウム塩化合物の製造方法及び該化合物を有効成分とする抗菌剤を含むものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記式(1)において、R1、R2で表されるアルキル基としては炭素数4〜12のものが使用できるが、抗菌性能と人体に対する安全性のバランスを取るためには炭素数4〜10のものが好ましく、更には炭素数5〜8のものがより好ましい。
また、R3はメチル基、エチル基のどちらでも良いが、本発明の化合物に高い抗菌性能を発揮させるにはメチル基がより好ましい。
【0010】
上記式(1)のXは無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(2)〜(5)で表されるアニオン基等である。
式(1)の化合物にアニオン基Xが結合する数は、アニオン基Xが−2価の場合には1個であり、−1価の場合には2個である。
【0011】
【化16】
【0012】
[式中、R4は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基またはアルケニル基を表す。]
【0013】
【化17】
【0014】
[式中、R5は存在しない(COO同志が直接結合する)か、あるいは水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基である。]
【0015】
【化18】
【0016】
[式中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0017】
【化19】
【0018】
[式中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。]
【0019】
本発明の好ましい化合物、及び更に好ましい化合物におけるR1〜R3は、以下の通りである。
【0020】
【表1】
【0021】
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物を得ることができる好ましい製造方法として、以下に述べる3つの方法がある。
第1の方法は、下記式(6)のハロゲン化物と下記式(7)の第3アミンとの反応により製造する方法である。
【0022】
【化20】
【0023】
[式中、Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。]
【0024】
【化21】
【0025】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基であり、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0026】
上記一般式(6)の化合物としては、2,2’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、3,3’−ビス(イオドメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(イオドメチル)ビフェニルなどのハロゲン化物が挙げられる。
【0027】
また、式(7)の化合物としては、N,N−ジブチル−N−メチルアミン、N,N−ジペンチル−N−メチルアミン、N,N−ジヘキシル−N−メチルアミン、N,N−ジヘプチル−N−メチルアミン、N,N−ジオクチル−N−メチルアミン、N,N−ジノニル−N−メチルアミン、N,N−ジデシル−N−メチルアミン、N,N−ジドデシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ヘキシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ヘプチル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−オクチル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ノニル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−デシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−ヘキシル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−オクチル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−デシル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−ヘプチル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−オクチル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−ノニル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−デシル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−オクチル−N−デシル−N−メチルアミン、N−オクチル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N−デシル−N−ドデシル−N−メチルアミン、N,N−ジブチル−N−エチルアミン、N,N−ジペンチル−N−エチルアミン、N,N−ジヘキシル−N−エチルアミン、N,N−ジヘプチル−N−エチルアミン、N,N−ジオクチル−N−エチルアミン、N,N−ジノニル−N−エチルアミン、N,N−ジデシル−N−エチルアミン、N,N−ジドデシル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−ヘキシル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−オクチル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−デシル−N−エチルアミン、N−ブチル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−ヘキシル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−オクチル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−デシル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−オクチル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−デシル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−オクチル−N−デシル−N−エチルアミン、N−オクチル−N−ドデシル−N−エチルアミン、N−デシル−N−ドデシル−N−エチルアミンなどの第3アミンが挙げられる。
【0028】
これらの反応は、適当な有機溶媒中で、50℃〜120℃の温度において実施することができる。上記式(7)の第3アミンの好ましい使用割合は、上記式(6)の化合物1モルに対して上記式(7)の化合物が2モル以上、例えば2.0モル〜2.3モルとなる割合である。
【0029】
反応溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合溶液、更にはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤などが好適に用いられる。反応温度については、一般に80℃以上であれば1時間〜40時間にて反応は進行する。
【0030】
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩を製造する第2の方法は、下記式(8)の第3アミンと下記式(9)の四級化剤を反応させる方法である。
【0031】
【化22】
【0032】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基を表す。]
【0033】
【化23】
【0034】
[式中、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子または下記式(10)、(11)の基のいずれかを表す。]
【0035】
【化24】
【0036】
[式中、R6は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0037】
【化25】
【0038】
[式中、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又はカルボキシル基を表す。]
【0039】
上記式(8)の化合物としては、N,N,N’,N’−テトラブチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラペンチル−4,4‘−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘキシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘプチル−2,2’−ビフェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラオクチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラノニル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラドデシル−2,2’−ビフェニレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジヘキシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジオクチル−2,2’−ビフェニレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジオクチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジドデシル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラブチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラペンチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘキシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘプチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラオクチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラノニル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジヘキシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジオクチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジオクチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジドデシル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラブチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラペンチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘキシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヘプチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラオクチル−4,4’−ビフェニリレンジアミンジアミン、N,N,N’,N’−テトラノニル−4,4’−ビフェニリレンジアミンジアミン、N,N,N’,N’−テトラデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミンジアミン、N,N,N’,N’−テトラドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジヘキシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジオクチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジオクチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジドデシル−4,4’−ビフェニリレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
また上記式(9)の化合物としては、塩化メタン、塩化エタン、臭化メタン、臭化エタン、ヨウ化メタン、ヨウ化エタン等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、などのスルホン酸アルキル等が挙げられる。
【0041】
これらの反応は適当な溶媒中で50℃〜120℃の温度において実施することができる。四級化剤は熱などにより失活するものも多いため、上記式(8)の第3アミンに対して、上記式(9)の四級化剤化合物は過剰に用いることが望ましい。4倍モル以上、より好ましくは6倍モル以上が好適である。
【0042】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合溶液、更にはN、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル、メチルセロセルブ、メチルセロソルブなどが好適に用いられる。
【0043】
反応雰囲気については、大気中でも合成は可能だが、窒素雰囲気下での反応がより望ましい。反応温度については、一般に80℃以上であれば、1時間から40時間にて反応は完了する。
【0044】
また、上記の反応は、適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中で加圧下、好ましくは10〜100MPa(メガパスカル)において50〜100℃の温度で行うこともできる。反応時間は通常5時間から120時間とすることができる。
【0045】
上記式(8)の第3アミンは、例えば上記式(6)のハロゲン化物と下記式(15)のとの反応から得ることができる。
【0046】
【化26】
【0047】
(式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基を表す)
【0048】
上記式(15)の化合物としては、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジヘプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルジアミン、N,N−ジドデシルジアミン、N−ブチル−N−ヘキシルアミン、N−ブチル−N−オクチルアミン、N−ブチル−N−デシルアミン、N−ブチル−N−ドデシルアミン、N−ヘキシル−N−オクチルアミン、N−ヘキシル−N−デシルアミン、N−ヘキシル−N−ドデシルアミン、N−オクチル−N−デシルアミン、N−オクチル−N−ドデシルアミン、N−デシル−N−ドデシルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0049】
上記式(6)と上記式(15)の三級化反応は、アルコール類、アルコール類と水との混合溶液又は芳香族有機溶剤などの適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件下において実施することができる。上記式(15)の第2アミンの好ましい使用割合は、上記式(6)の化合物1モルに対して上記式(15)の化合物が4モル〜6モル、特に4.1モル〜4.4モルとなる割合である。上記の三級化反応の結果、目的中間生成物である第3アミンと副生成物として原料アミン塩酸塩が生成される。
【0050】
副生成物の生成を抑制するには、上記式(8)と上記式(15)を適当な溶媒にそれぞれ溶解させ、上記式(15)の溶液中に上記式(8)の溶液を少量ずつ加えながら反応を行うとより良い。
【0051】
目的中間生成物である第3アミンと原料アミン塩酸塩の分離は、どのような方法を用いても良いが、抽出作業などによる分離が可能である。更に、有機溶剤の溶解性による違いを利用しても容易に行える。
【0052】
副生成物の原料アミン塩酸塩は原料アミンに再生が可能である。副生成物の原料アミン酸塩にNaOH水溶液などの塩基を作用させると、非水溶性の有機層ができる。この有機層を一般的な分離・精製方法することにより原料の第2アミンが得られる。この再生された第2アミンは再び原料として使用可能である。
【0053】
上記式(1)で表される第四アンモニウム塩の製造を可能とする第3の方法は、下記式(12)の第3アミンと下記式(13)の四級化剤を反応させる方法である。
【0054】
【化27】
【0055】
[式中、R1は炭素数4〜12のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0056】
【化28】
【0057】
[式中、R2は炭素数4〜12のアルキル基を表し、Jは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または上記式(11)の基のいずれかを表す。]
【0058】
上記式(12)の化合物としては、N,N’−ジブチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジメチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジエチル−2,2’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジメチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジエチル−3,3’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジブチル−N,N’−ジエチル−−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジペンチル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘキシル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジヘプチル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジオクチル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジノニル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジデシル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン、N,N’−ジドデシル−N,N’−ジエチル−4,4’−ビフェニリレンジアミン等が挙げられる。
【0059】
また上記式(13)の化合物としては、塩化ブタン、塩化ペンタン、塩化ヘキサン、塩化ヘプタン、塩化オクタン、塩化ノナン、塩化デカン、臭化ブタン、臭化ペンタン、臭化ヘキサン、臭化ヘプタン、臭化オクタン、臭化ノナン、臭化デカン、ヨウ化ブタン、ヨウ化ペンタン、ヨウ化ヘキサン、ヨウ化ヘプタン、ヨウ化オクタン、ヨウ化ノナン、ヨウ化デカン等のハロゲン化アルキル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ペンチル、p−トルエンスルホン酸ヘキサン、p−トルエンスルホン酸ヘプタン、p−トルエンスルホン酸オクタン、p−トルエンスルホン酸ノナン、p−トルエンスルホン酸デカン、p−トルエンスルホン酸ドデカンなどのスルホン酸アルキル等が挙げられる。
【0060】
式(12)の化合物と式(13)の化合物との反応は、ほぼ第2の方法に順じて実施できる。即ち溶媒としては、アルコール類、又は水とアルコールとの混合溶液、及びN、N−ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブなどが好適に用いられ、又、溶媒が無くても反応は可能である。反応雰囲気、反応温度、反応時間についても第2の方法と同一で実施できる。上記式(12)の第3アミンに対し、上記式(13)の四級化剤の使用割合は、上記式(12)の化合物1モルに対して上記式(13)の化合物を2モル以上で用いれば良く、2.0モル〜2.3モルの割合で良い。また上記の反応は、第2反応と同様に適当な溶媒存在下で、オートクレーブ中、加圧下で進行させることができる。
【0061】
上記式(12)の第3アミンは、例えば上記式(6)のハロゲン化物と下記式(16)の第2アミンとの反応から得ることができる。
【0062】
【化29】
【0063】
[式中、R1は炭素数4〜12のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0064】
上記式(16)の化合物としては、N−ブチル−N−メチルアミン、N−ペンチル−N−メチルアミン、N−ヘキシル−N−メチルアミン、N−ヘプチル−N−メチルアミン、N−オクチル−N−メチルアミン、N−ノニル−N−メチルアミン、N−デシル−N−メチルアミン、N−ドデシル−N−メチルアミン、N−ブチル−N−エチルアミン、N−ペンチル−N−エチルアミン、N−ヘキシル−N−エチルアミン、N−ヘプチル−N−エチルアミン、N−オクチル−N−エチルアミン、N−ノニル−N−エチルアミン、N−デシル−N−エチルアミン、N−ドデシル−N−エチルアミン等の第2アミンが挙げられる。
【0065】
上記式(6)と上記式(16)の三級化反応は、上記式(6)と上記式(15)との反応にほぼ準じて、アルコール類、水とアルコール類の混合溶媒又は芳香族有機溶剤など適当な有機溶媒中で、反応温度50℃〜120℃、反応時間1時間〜48時間の条件において実施することができる。上記式(16)の第2アミンの好ましい使用割合は、上記式(6)のハロゲン化物1モルに対して上記式(16)の化合物が4モル〜6モル、特に4.1モル〜4.4モルとなる割合である。
目的中間生成物である第3アミンと原料アミン塩酸塩の分離や副生成物の原料アミン塩酸塩の再生も式(6)化合物と式(15)との反応の場合とほぼ同様にして実施できる。
【0066】
前述の3つの方法により生成された化合物は、必要により、通常の分離精製手段、例えば、カラムクロマト分離や再結晶操作などにより容易に精製することが出来る。
【0067】
前述の3つの方法の何れかにより生成された第四アンモニウム塩化合物は、その中に含まれるアニオン基を、イオン交換により別のアニオン基に変えることができる。イオン交換は、例えば、アニオン交換樹脂を充填したカラムにて処理をすることなどにより、容易に行うことが出来る。
【0068】
即ち本発明における第四アンモニウム塩は、下記式(14)の第四アンモニウム塩化合物をカチオン基とするものであるが、その対イオンとなるアニオン基としては、上述した3つの方法によって合成された際のアニオン基を、イオン交換により、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン硝酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン又は前述した式(2)〜(5)のいずれかのアニオン基に置き換えることによって製造できる。
【0069】
【化30】
【0070】
[式中、R1、R2はそれぞれ炭素数4〜12のアルキル基であり、R3は炭素数1〜2のアルキル基を表す。]
【0071】
上記のようにして得られた本発明の式(1)の化合物は、後記の試験例1及び2に示すとおり、種々の細菌、真菌に対して広い抗菌スペクトルを有しており、アルキル鎖(R1、R2)の炭素数が、4〜10、特に5〜8の範囲で強い殺菌活性を示す。
【0072】
本発明の式(1)の化合物は、従来の市販の第四アンモニウム塩等に比べて最小殺菌濃度が1/10以下であるという優れた殺菌活性を示す。従って、本発明の式(1)の化合物を有効成分とする抗菌剤は、従来から市販されている同種の殺菌剤よりもはるかに少ない使用濃度で従来の殺菌剤と同等の殺菌効果を発揮させることができる。
一方、本発明の第四アンモニウム塩化合物は、ラットでの経口毒性試験において2000mg/kg以上の値を持つ、極めて安全性の高い化合物である。
【0073】
更に、本発明の式(1)の化合物について溶血活性を測定したところ、後記の試験例3に示すとおり、従来の第四アンモニウム塩、例えば塩化ベンザルコニウムや特開平6−3219024号公報、特開2000−95763号公報などで紹介されている第四アンモニウム塩化合物と比較して10倍以上溶血活性が低い値が得られた。これにより式(1)の化合物の人体に対する毒性は極めて低いことが認められた。
【0074】
以上より、本発明の式(1)の化合物は、細菌や細胞芽胞に対して広く高い抗菌活性を有し、且つ人体に対する安全性の高い抗菌剤であることが判明した。
【0075】
本発明の化合物は、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等における抗菌剤として幅広くその応用が期待される。
【0076】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
ハロゲン化合物として4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolを、第3アミンとしてN,N−ジブチル−N−メチルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルエーテルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチルエーテル混合溶液にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジブチル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−4と略す)が8.6g得られた。目的化合物の収率は80%であった。
【0078】
得られた4BAMB−4の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(8H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C32H54N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0081】
<実施例2>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN,N−ジペンチル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジペンチル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−5と略す)を8.4g得た。この化合物の収率は71%であった。
【0082】
得られた4BAMB−5の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(16H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C36H62N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0083】
【表3】
【0084】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0085】
<実施例3>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN,N−ジヘキシル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジヘキシル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−6と略す)を11.2g得た。この化合物の収率は86%であった。
【0086】
得られた4BAMB−6の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(24H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C40H70N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0087】
【表4】
【0088】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0089】
上記で得られたサンプル4BAMB−6について、経口毒性(LD50:ラット)を測定したところ、>2000mg/kgとなった。
【0090】
<実施例4>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN−オクチル−N−ヘキシル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N−オクチル−N−ヘキシル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−6、8と略す)を9.6g得た。この化合物の収率は68%であった。
【0091】
得られた4BAMB−6、8の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(32H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C44H78N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0092】
【表5】
【0093】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0094】
<実施例5>
実施例1において、第3アミンをN,N−ジブチル−N−メチルアミンの代わりにN,N−ジオクチル−N−メチルアミンを使用した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジオクチル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニレンジクロリド(4BAMB−8と略す)を13.6g得た。この化合物の収率は89%であった。
【0095】
得られた4BAMB−8の1H−NMR(溶媒CD3OD)分析結果は次の通り。単位(δppm)
0.94(12H、t、J=6.8Hz)、1.40(40H、br d)、1.85(8H、br s)、3.02(6H、s)、3.31(8H、m)、4.62(4H、s)、7.25(4H、d)、7.71(4H、d)
また分子式C48H86N2Cl2として元素分析した結果を、次に示した。
【0096】
【表6】
【0097】
以上の分析により、得られた物質が目的化合物であることが確認された。
【0098】
<比較例1>
比較例1として、市販の第四アンモニウム塩系抗菌剤(殺菌剤)である塩化ベンザルコニウムを使用した。
【0099】
<比較例2>
比較例2として、以下の通り特開平10−114604号公報で提案された抗菌剤(殺菌消毒剤)を合成し使用した。ハロゲン化合物としてα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolを、3級アミンとしてN,−ドデシル−N,N−ジメチルアミン42mmolを、溶媒としてエタノール100mlをそれぞれ300ml反応容器中に仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテル溶媒にて再結晶し、減圧乾燥により、目的の白色の化合物1,4−ビス(N−ドデシル−N,N−ジメチルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−12Cと略す)を8.02g得た。目的化合物の収率は70%であった。
【0100】
<比較例3>
比較例3として、以下の通り特開平6−321902号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをエタノール50mlに溶解し、攪拌した状態で1,6−ジブロモヘキサン10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で12時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物を水50mlに溶解し、これに1N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH11に調整した後、ジエチルエーテルを用いて抽出作業を3回繰り返した。エーテル層にモレキュラーシーブ3A 1/16(和光純薬工業)を入れて1晩乾燥した後エーテルを除去し、薄い黄色の溶液状化合物が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、加熱還流条件下で24時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体をアセトニトリル溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(1,6−ジチオヘキサメチレン)−ビス−(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(4MHOと略す)が4.40g得られた。目的化合物の収率は56%であった。
【0101】
<比較例4>
比較例4として、以下の通り特開2000−95763号公報で提案された抗菌剤を合成し使用した。4−メルカプトピリジン20mmolをアセトン50mlに溶解し、攪拌した状態でキシリレンジクロライド10mmolを滴下し、引き続き加熱還流下で5時間反応した。溶液を冷却後、生じた白色沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をアセトンで洗浄後、純水50mlに溶解し、これに0.5N−NaOH水溶液を滴下して溶液をpH10に調整した後、トルエンを用いて抽出作業を3回繰り返した。有機層を水洗し乾燥した後トルエンを減圧除去し、粗晶が得られた。この化合物にDMF50mlを加え溶解させた後オクチルアイオダイド40mmolを加え、100℃にて15時間反応した。反応終了後、溶媒のDMFを除去し得られた淡黄色の固体を酢酸エチルエステル200mlに投入し、析出した固体をろ別分離し、アセトニトリル/酢酸エチルエステル混合溶媒で再結晶、減圧乾燥したところ、目的の白色の固体化合物4,4’−(p−キシリルジチオ)−ビス(1−オクチルピリジニウムアイオダイド)(I−8と略す)が4.0g(収率50%)得られた。
【0102】
<試験例1> 細菌に対する最小殺菌濃度(MBC)の測定
最小殺菌濃度(MBC)の測定は、一般的な無菌水希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて培養した対数増殖期初期状態の菌体を、無菌水にて菌懸濁液濃度が約106cell/mlになるように調整した。段階希釈した薬剤溶液を各0.5ml分注後、調整した菌体懸濁液をそれぞれ0.5mlずつ接種し、30℃で30分間接触後、試験液0.1mlをニュトリエントブロス2mlに移植し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MBC値を決定した。供試菌として、グラム陰性細菌5種及びグラム陰性細菌4種を用いた。試験サンプルとしては、実施例3で合成した4BAMB−6と実施例4で合成した4BAMB−6,8を用い、比較サンプルとして塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表7に示す。
【0103】
【表7】
【0104】
<試験例2> 細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)の測定
最小発育阻止濃度(MIC)の測定は、一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110を用いた。試験サンプルは実施例1〜5にて得られたサンプル並びに比較例1の塩化ベンザルコニウムを用いた。結果を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
<試験例3> 赤血球に対する最小溶血活性濃度
ヒトの血液を採取し、等量のアルセバー液(ブドウ糖2.05g、NaCl0.42g、クエン酸ナトリウム0.8g、クエン酸0.55gを含むpH6.1)と混合し、4℃に保存した。実験に用いる直前にこのアルセバー保存血を遠心分離し上澄み及び赤血球上の白血球層を取り除いた。更に赤血球に約10倍量のPBSを加えた後、遠心洗浄を3回繰り返し、最後に赤血球と等量のPBSを加え、50%赤血球とした。段階希釈した薬剤のPBS希釈液990μlに50%赤血球10μlを加え、37℃で1時間作用させた後、遠心分離し、その上澄みを回収し、O.D.540を測定した。別に、薬剤を用いないで同様の試験を行い0%溶血のコントロールとし、PBSの代わりにMilliQ水を用いて100%溶血のコントロールとした。薬剤の最小溶血活性濃度としては、溶血濃度が50%以下となる最も薄い濃度とした。試験サンプルとしては実施例1〜実施例3の4BAMB−4、4BAMB−5及び4BAMB−6を用い、比較サンプルとしては比較例1の塩化ベンザルコニウム、比較例2の4BADMP−12C、比較例3の4MHO及び比較例4のI−8を用いた。結果を表9に示す。
【0107】
【表9】
【0108】
【発明の効果】
上記試験例からも明らかなように、本発明の新規なビス第四アンモニウム塩化合物は、既知の第四ンモニウム塩系化合物に比べて、格段に優れた殺菌効果と広い抗菌スペクトルを示し、且つ、人体に対する安全性も高いため、殺菌剤として極めて有効な化合物である。
Claims (7)
- 前記無機性または有機性のアニオン基Xが、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸基イオン又は下記式(2)〜(5)のいずれかで表されるアニオン基である請求項1記載のビス第四アンモニウム塩化合物。
- 請求項1又は請求項2記載のビス第四アンモニウム塩化合物を有効成分とすることを特徴とする抗菌剤。
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