JP2004143131A - 抗菌力増強剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗菌剤の抗菌力を増強させて低濃度で、且つ長期間使用しても菌に対して抵抗性・耐性を獲得させることなく使える化合物を提供することである。
【解決手段】下記式(1)の第四アンモニウム塩化合物により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物による抗菌力増強剤である。また、下記式(1)の化合物を含有する抗菌配合剤である。
【化1】
(式(1)中、R1〜R6は炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。)
【選択図】 なし
【解決手段】下記式(1)の第四アンモニウム塩化合物により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物による抗菌力増強剤である。また、下記式(1)の化合物を含有する抗菌配合剤である。
【化1】
(式(1)中、R1〜R6は炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌剤に配合することにより抗菌力を増強させる化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機系抗菌剤は古くから知られ、細菌に対し抗菌効果が高く即効性を示すことから、現在でも抗菌剤として広く一般に用いられている。有機系抗菌剤として、アミン化合物、アルコール化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、第四アンモニウム塩化合物、両性界面活性剤、ビグアニド化合物、イソチアゾリン化合物など、非常に多くの種類の化合物が知られており、そして多岐に渡り広く使用されている。下記に代表的なものを挙げる。
【0003】
塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムやジデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどの第四アンモニウム塩化合物類、アルキルポリアミノエチルグリシンやアルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤類、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系化合物類、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドやビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテンなどの有機臭素系抗菌剤類が挙げられる。
【0004】
しかし、有機系抗菌剤は通常、殺菌力・抗菌力が菌体に存在する糖質、蛋白質及び脂質などに拮抗され、また繰り返し使用すると、菌がこれら抗菌剤に対して抵抗性を獲得し、抗菌効果が低下するようになる。また、他の抗菌剤と配合して使用することもあるが、抗菌剤に対する菌の抵抗性獲得を阻害することはできなかった。即ち、有機系抗菌剤は、長期間使用すると菌が抵抗性・耐性を獲得して行き、使用することが困難となる。
【0005】
○2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物について
2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物(以下ビフェニルタイプと称する)において、窒素に結合しているアルキル基がメチル基のもの(下記式(2)のR7〜R12がメチル基)やブチル基のもの(下記式(2)のR7〜R12がn−ブチル基)が知られていたが、これらの化合物については、抗菌活性について報告されていなかった(非特許文献1〜3参照)。
【0006】
【化2】
【0007】
窒素に結合しているアルキル基としてメチル基(式(2)のR8、R9、R11、R12)と炭素数4〜16個(式(2)のR10)および5〜16個(式(2)のR7)のものが記載され、式(2)のR7とR10の炭素数が6個で他はメチル基の化合物、式(2)のR7とR10の炭素数が8個で他はメチル基の化合物、式(2)のR7とR10の炭素数が12個で他はメチル基の化合物および式(2)のR7とR10の炭素数が12個で他はメチル基の化合物について抗菌活性が報告されている(特許文献1参照)。
【0008】
更に、窒素に結合しているアルキル基としてメチル基(式(2)のR8、R9、R11、R12)と炭素数1〜20個(式(2)のR7とR10)のものに抗菌活性が報告されている(特許文献2参照)。また、この特許文献には、式(2)のR7とR10の炭素数が10個で他はメチル基の化合物が記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−187874号(特許請求の範囲)
【特許文献2】
WO2002−060856(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
J. Sci. Ind. Res., 14B, 214−219 (1955).
【非特許文献2】
薬学雑誌, 73, 760−763 (1953).
【非特許文献3】
Bioorganic & Medicinal Chemistry Lett., 5(4), 357−362 (1995).
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
有機系抗菌剤の抗菌力を増強させて低濃度で、且つ長期間使用しても菌に対して抵抗性・耐性を獲得させることなく使える化合物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)の第四アンモニウム塩化合物により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物による抗菌力増強剤である。また、下記式(1)の化合物を含有する抗菌配合剤である。
【0012】
【化3】
【0013】
式(1)中、R1〜R6は炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌力増強剤は、上記(1)式で表される第四アンモニウム塩化合物であり、式(1)以外の有機系抗菌剤を単独で使用するものに比べ、配合したものは低濃度で抗菌活性を示し、且つ有機系抗菌剤に対する抵抗性を菌が獲得することを阻害できるものである。このことから、本発明の抗菌力増強剤を配合した抗菌配合剤は、有機系抗菌剤の使用量が少なくてすみ、且つ長期間使用することができる。なお、有機系抗菌剤を以下抗菌剤と称する。
【0015】
上記式(1)のXn−は無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(3)〜(6)で表されるアニオン基等である。
式(1)の化合物にアニオン基Xが結合する数(m)は、アニオン基Xn−の価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオン基Xn−が2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0016】
R13COO− (3)
式(3)中、R13は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基を表す。
【0017】
−OOC−(R14)p−COO− (4)
式(4)中、pは0または1であり、pが1のときR14は水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基である。
【0018】
R15SO4 − (5)
式(5)中、R15は炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0019】
【化4】
【0020】
式(6)中、R16及びR17はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。
【0021】
本発明の式(1)の化合物は、式(1)以外の抗菌剤に対し抗菌力を増強剤させる活性を有している。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、抗菌剤単独に比べ低濃度で使用することができる。
また、抗菌剤は、長期間使用していくと菌が抵抗性・耐性を獲得して行くが、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、このようなことがない。このことから、本発明の式(1)の化合物を配合した抗菌配合剤は、式(1)以外の化合物を配合した抗菌配合剤と比べ抵抗性・耐性を有する菌株の出現を心配することなく長期間使用することができる。
【0022】
本発明の化合物は、式(1)以外の抗菌剤と配合して使用することができる。この抗菌剤としては、アミン化合物系抗菌剤、アルコール化合物系抗菌剤、アルデヒド化合物系抗菌剤、ハロゲン化合物系抗菌剤、カルボン酸化合物系抗菌剤、フェノール化合物系抗菌剤、第四アンモニウム塩化合物系抗菌剤、両性界面活性剤系抗菌剤、ビグアニド化合物系抗菌剤、イソチアゾリン化合物系抗菌剤、ベータラクタム系抗生物質またはキノロン系合成抗菌剤などである。好ましく配合できる抗菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムやジデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどの第四アンモニウム塩化合物類、アルキルポリアミノエチルグリシンやアルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤類、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系化合物類、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドやビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテンなどの有機臭素系抗菌剤類などを挙げることができ、更に好ましくは第四アンモニウム塩化合物類、ビグアナイド系化合物類、有機臭素系抗菌剤類がであり、特に好ましくは第四アンモニウム塩化合物類である。
【0023】
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物であり、上記式(1)において第4アンモニウム塩がビフェニルに結合する位置はいずれでもよいが、パラ位が好ましく、2個ともパラ位が更に好ましい。
【0024】
上記式(1)において、R2、R3、R5およびR6がメチル基またはエチル基のときのR1は、炭素数1〜20のものが使用できるが、炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜14のものがより好ましく、R4は、炭素数1〜20のものが使用できるが、炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜14のものがより好ましく、R1およびR4が異なっていてもよい。
【0025】
上記式(1)において、R3およびR6がメチル基またはエチル基のときは、R1およびR2は炭素数3〜20のものが使用できるが、R1およびR2はそれぞれ炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数4〜10のものがより好ましく、R1とR2とは同一でも異なっていても良く、R4およびR5は炭素数3〜20のものが使用できるが、R4およびR5はそれぞれ炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数4〜10のものがより好ましく、R4とR5とは同一でも異なっていても良い。また、R1、R2、R4およびR5は同一でも異なっていても良い。
【0026】
上記式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が炭素数3〜20のときが使用できるが、炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数4〜10のものがより好ましく、これらは同一でも異なっていてもよい。
【0027】
本発明の化合物の抗菌配合剤における配合割合は、抗菌配合剤中の抗菌剤合計100質量部に対し、本発明の化合物が1〜80質量部が好ましく、5〜60質量部が更に好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。
【0028】
本発明の抗菌配合剤は、適宜固体又は液体の担体に担持させて使用することもできる。
本発明の抗菌配合剤は、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、粒状剤、粉末、スプレー、エアゾール等として利用できる。
【0029】
本発明の抗菌配合剤は、広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトケア用品、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等において有用である。
【0030】
○実施形態
第四アンモニウム塩化合物類、両性界面活性剤類、ビグアナイド系化合物類および有機臭素系抗菌剤類から選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と式(1)の第四アンモニウム塩化合物とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
第四アンモニウム塩化合物類、ビグアナイド系化合物類、有機臭素系抗菌剤類から選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と式(1)の第四アンモニウム塩化合物とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
式(1)のR1が炭素数4〜16のアルキル基、R2およびR3がメチル基またはエチル基の第四アンモニウム塩化合物と式(1)以外の抗菌剤とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
式(1)のR1およびR2がそれぞれ異なっても良い炭素数4〜16のアルキル基、R3がメチル基またはエチル基の第四アンモニウム塩化合物と式(1)以外の抗菌剤とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
式(1)のR1、R2およびR3がそれぞれ異なっても良い炭素数4〜16のアルキル基の第四アンモニウム塩化合物と式(1)以外の抗菌剤とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各表のMICの単位は、μg/mlである。
【0032】
<合成例1>
300ml反応容器中に、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolとN,N−ジメチルデシルアミン42mmolとエタノール100mlをそれぞれ仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチル混合溶液にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−10と略す)を11.7g得た。
構造は1H−NMR、CHN分析、融点測定などにより決定した。融点は、229.3〜230.6℃で、元素分析の結果を下記に示す(4BADMB−10の分子式はC38H66N2Cl2)。
【0033】
<合成例2>
合成例1において、N,N−ジメチルデシルアミンの代わりにN−メチル−N−ヘキシルオクチルアミンを使用した以外は合成例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N−オクチル−N−ヘキシル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BAMB−6,8と略す)を9.6g得た。
構造は1H−NMR、CHN分析などにより決定した。元素分析の結果を下記に示す(4BAMB−6,8の分子式はC44H78N2Cl2)。
【0034】
<合成例3>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8と略す)を得た。
【0035】
<合成例4>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−6と略す)を得た。
【0036】
<合成例5>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−12と略す)を得た。
【0037】
<合成例6>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルテトラデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−14と略す)を得た。
【0038】
<合成例7>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキサデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−16と略す)を得た。
【0039】
<合成例8>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりに、N,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンとの5:5混合物20mmolを用いた以外は、同様に操作し4BADMB−8と4BADMB−10と4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8:4BADMB−8,10:4BADMB−10=26:49:25であった。
【0040】
<合成例9>
合成例8におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から7:3に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8と4BADMB−10と4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8:4BADMB−8,10:4BADMB−10=50:40:10であった。
【0041】
<合成例10>
合成例8におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から8:2に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8と4BADMB−10と4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8:4BADMB−8,10:4BADMB−10=64:31:5であった。
【0042】
<合成例11>
合成例8で得られた混合物を、カラムクロマトグラフィーによる分離を行い、4BADMB−8,10を単離した。
【0043】
<合成例12>
特開平10−114604号公報で提案された化合物を合成した。即ち、300ml反応容器中にα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolとN,N−ジメチルデシルアミン42mmolとエタノール100mlをそれぞれ仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテル溶媒にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−10Cと略す)を6.5g得た。
【0044】
○比較例用化合物
比較例用の化合物としては、合成例12で合成した4BADMP−10Cと、下記記載のものを使用した。
・塩化ベンザルコニウム(和光純薬工業社製):以下BACと略す。
・ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド(Aldrich社製):以下DDABと略す。
・グルコン酸クロルヘキシジン(和光純薬工業社製):以下CHGと略す。
・2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(中国のSuzhou Jinlong New Chemical Material Co., Ltd.(蘇州金龍化工新材料有限公司)社製):以下DBNPAと略す。
・ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン(中国のJITAT Co., Ltd.(佳綽有限公司)社製):以下BBABと略す。
【0045】
<試験例1>
○細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。
供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110(以下E.coliと略す)とStaphylococcus aureus IFO 12732(以下S.aureusと略す)を用いた。試験した化合物は、合成例1の4BADMB−10(式(1)のR1がデシル基でR2及びR3がメチル基のもの)、合成例2の4BAMB−6,8(式(1)のR1がオクチル基でR2がヘキシル基でR3がメチル基のもの)、BAC、DDAB、CHG、DBNPA、BBABおよび4BADMP−10Cを用いた。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<実施例1>
○塩化ベンザルコニウム(BAC)に対する活性
合成例1の4BADMB−10と塩化ベンザルコニウム(BAC)とを質量比で、20:80、40:60、60:40、80:20の割合で混合した。この混合薬剤、4BADMB−10CおよびBACについて、試験例1と同様の操作を行い、MIC値を測定した。
結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
<実施例2>
○塩化ベンザルコニウム(BAC)に対する活性
合成例2の4BAMB−6,8と塩化ベンザルコニウム(BAC)とを質量比で、20:80、40:60、60:40、80:20の割合で混合した。この混合薬剤、4BAMB−6,8およびBACについて、試験例1と同様の操作を行い、MIC値を測定した。
結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
<実施例3>
○DDABに対する活性
BACの代わりにDDABを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表4および表5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
<実施例4>
○CHGに対する活性
BACの代わりにCHGを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表6および表7に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
<実施例5>
○DBNPAに対する活性
BACの代わりにDBNPAを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表8および表9に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
<実施例6>
○BBABに対する活性
BACの代わりにBBABを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表10および表11に示す。
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
上記実施例の結果(表2〜11)から、本発明の化合物を配合した混合剤は、比較用化合物単剤の場合と比較して、MIC値が小さくなる。このことから、本発明の化合物は、比較例の化合物と混合して使用することにより、抗菌力が増強することは明らかである。
【0064】
<実施例7>
○最小発育阻止濃度(MIC)の変化試験
試験は、合成例1の4BADMB−10とBAC、DDAB、CHG、DBNPA、BBABまたは4BADMP−10Cとを質量比で30:70に混合したものを用いて行った。
試験は、抗菌剤耐性菌を取得する方法に準じて行った。即ち、供試菌として、E. coli を用い、一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した混合薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、濁りの認められない試験薬剤の最小濃度をMICとし、このMICより一段試験化合物濃度の少ない検定液中の菌(即ち、濁りが認められた検定液の菌)を用いて、次の試験菌液とした。このようにして、この操作を10回繰り返した。
1回目と10回目の各化合物におけるMIC値の結果を表12に示す。
【0065】
【表12】
【0066】
<実施例8>
実施例7において4BADMB−10の代わりに合成例2の4BAMB−6,8を使用した以外は実施例7と同様の試験を行い、最小発育阻止濃度(MIC)の変化試験を行った。
【0067】
【表13】
【0068】
<比較例1>
○化合物単独でのMICの変化試験
4BADMB−10、4BAMB−6,8、BAC、DDAB、CHG、DBNPA、BBABまたは4BADMP−10Cに対し実施例6の試験方法を用いて測定を行い、この1回目と10回目の各薬剤におけるMIC値の結果を表14に示す。
【0069】
【表14】
【0070】
上記表14の結果から、比較例用化合物は、死滅しない程度の濃度と菌を接触させ続けると、MIC値が2倍以上に上昇する菌株が出現する。しかし、本発明の化合物は、この操作を繰り返してもMIC値の上昇が認められないことから、抵抗性を示す菌株が出現しないことを示している。
表12および表13から分かるように本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、死滅しない程度の濃度のものと菌とを接触させ続けても抵抗性を示す菌株が出現しない。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、長期間続けて使用できることを示している。
【0071】
【発明の効果】
本発明の式(1)の化合物は、抗菌剤に対し抗菌力を増強させる働きを有している。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、低濃度で使用することができ、産業上有用である。また、抗菌剤は、長期間使用していると抵菌力に抵抗性を示す菌株(耐性株)が出現してくるが、本発明の化合物を配合することにより耐性株の出現を抑制することができる。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、低濃度で且つ連続して長期間使用することができ、産業上有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌剤に配合することにより抗菌力を増強させる化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機系抗菌剤は古くから知られ、細菌に対し抗菌効果が高く即効性を示すことから、現在でも抗菌剤として広く一般に用いられている。有機系抗菌剤として、アミン化合物、アルコール化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、第四アンモニウム塩化合物、両性界面活性剤、ビグアニド化合物、イソチアゾリン化合物など、非常に多くの種類の化合物が知られており、そして多岐に渡り広く使用されている。下記に代表的なものを挙げる。
【0003】
塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムやジデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどの第四アンモニウム塩化合物類、アルキルポリアミノエチルグリシンやアルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤類、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系化合物類、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドやビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテンなどの有機臭素系抗菌剤類が挙げられる。
【0004】
しかし、有機系抗菌剤は通常、殺菌力・抗菌力が菌体に存在する糖質、蛋白質及び脂質などに拮抗され、また繰り返し使用すると、菌がこれら抗菌剤に対して抵抗性を獲得し、抗菌効果が低下するようになる。また、他の抗菌剤と配合して使用することもあるが、抗菌剤に対する菌の抵抗性獲得を阻害することはできなかった。即ち、有機系抗菌剤は、長期間使用すると菌が抵抗性・耐性を獲得して行き、使用することが困難となる。
【0005】
○2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物について
2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物(以下ビフェニルタイプと称する)において、窒素に結合しているアルキル基がメチル基のもの(下記式(2)のR7〜R12がメチル基)やブチル基のもの(下記式(2)のR7〜R12がn−ブチル基)が知られていたが、これらの化合物については、抗菌活性について報告されていなかった(非特許文献1〜3参照)。
【0006】
【化2】
【0007】
窒素に結合しているアルキル基としてメチル基(式(2)のR8、R9、R11、R12)と炭素数4〜16個(式(2)のR10)および5〜16個(式(2)のR7)のものが記載され、式(2)のR7とR10の炭素数が6個で他はメチル基の化合物、式(2)のR7とR10の炭素数が8個で他はメチル基の化合物、式(2)のR7とR10の炭素数が12個で他はメチル基の化合物および式(2)のR7とR10の炭素数が12個で他はメチル基の化合物について抗菌活性が報告されている(特許文献1参照)。
【0008】
更に、窒素に結合しているアルキル基としてメチル基(式(2)のR8、R9、R11、R12)と炭素数1〜20個(式(2)のR7とR10)のものに抗菌活性が報告されている(特許文献2参照)。また、この特許文献には、式(2)のR7とR10の炭素数が10個で他はメチル基の化合物が記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−187874号(特許請求の範囲)
【特許文献2】
WO2002−060856(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
J. Sci. Ind. Res., 14B, 214−219 (1955).
【非特許文献2】
薬学雑誌, 73, 760−763 (1953).
【非特許文献3】
Bioorganic & Medicinal Chemistry Lett., 5(4), 357−362 (1995).
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
有機系抗菌剤の抗菌力を増強させて低濃度で、且つ長期間使用しても菌に対して抵抗性・耐性を獲得させることなく使える化合物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)の第四アンモニウム塩化合物により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物による抗菌力増強剤である。また、下記式(1)の化合物を含有する抗菌配合剤である。
【0012】
【化3】
【0013】
式(1)中、R1〜R6は炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同じであっても異なっていても良く、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌力増強剤は、上記(1)式で表される第四アンモニウム塩化合物であり、式(1)以外の有機系抗菌剤を単独で使用するものに比べ、配合したものは低濃度で抗菌活性を示し、且つ有機系抗菌剤に対する抵抗性を菌が獲得することを阻害できるものである。このことから、本発明の抗菌力増強剤を配合した抗菌配合剤は、有機系抗菌剤の使用量が少なくてすみ、且つ長期間使用することができる。なお、有機系抗菌剤を以下抗菌剤と称する。
【0015】
上記式(1)のXn−は無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(3)〜(6)で表されるアニオン基等である。
式(1)の化合物にアニオン基Xが結合する数(m)は、アニオン基Xn−の価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオン基Xn−が2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0016】
R13COO− (3)
式(3)中、R13は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基を表す。
【0017】
−OOC−(R14)p−COO− (4)
式(4)中、pは0または1であり、pが1のときR14は水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基である。
【0018】
R15SO4 − (5)
式(5)中、R15は炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0019】
【化4】
【0020】
式(6)中、R16及びR17はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。
【0021】
本発明の式(1)の化合物は、式(1)以外の抗菌剤に対し抗菌力を増強剤させる活性を有している。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、抗菌剤単独に比べ低濃度で使用することができる。
また、抗菌剤は、長期間使用していくと菌が抵抗性・耐性を獲得して行くが、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、このようなことがない。このことから、本発明の式(1)の化合物を配合した抗菌配合剤は、式(1)以外の化合物を配合した抗菌配合剤と比べ抵抗性・耐性を有する菌株の出現を心配することなく長期間使用することができる。
【0022】
本発明の化合物は、式(1)以外の抗菌剤と配合して使用することができる。この抗菌剤としては、アミン化合物系抗菌剤、アルコール化合物系抗菌剤、アルデヒド化合物系抗菌剤、ハロゲン化合物系抗菌剤、カルボン酸化合物系抗菌剤、フェノール化合物系抗菌剤、第四アンモニウム塩化合物系抗菌剤、両性界面活性剤系抗菌剤、ビグアニド化合物系抗菌剤、イソチアゾリン化合物系抗菌剤、ベータラクタム系抗生物質またはキノロン系合成抗菌剤などである。好ましく配合できる抗菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムやジデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどの第四アンモニウム塩化合物類、アルキルポリアミノエチルグリシンやアルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤類、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系化合物類、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドやビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテンなどの有機臭素系抗菌剤類などを挙げることができ、更に好ましくは第四アンモニウム塩化合物類、ビグアナイド系化合物類、有機臭素系抗菌剤類がであり、特に好ましくは第四アンモニウム塩化合物類である。
【0023】
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物であり、上記式(1)において第4アンモニウム塩がビフェニルに結合する位置はいずれでもよいが、パラ位が好ましく、2個ともパラ位が更に好ましい。
【0024】
上記式(1)において、R2、R3、R5およびR6がメチル基またはエチル基のときのR1は、炭素数1〜20のものが使用できるが、炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜14のものがより好ましく、R4は、炭素数1〜20のものが使用できるが、炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数8〜14のものがより好ましく、R1およびR4が異なっていてもよい。
【0025】
上記式(1)において、R3およびR6がメチル基またはエチル基のときは、R1およびR2は炭素数3〜20のものが使用できるが、R1およびR2はそれぞれ炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数4〜10のものがより好ましく、R1とR2とは同一でも異なっていても良く、R4およびR5は炭素数3〜20のものが使用できるが、R4およびR5はそれぞれ炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数4〜10のものがより好ましく、R4とR5とは同一でも異なっていても良い。また、R1、R2、R4およびR5は同一でも異なっていても良い。
【0026】
上記式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が炭素数3〜20のときが使用できるが、炭素数4〜16のものが好ましく、更には炭素数4〜10のものがより好ましく、これらは同一でも異なっていてもよい。
【0027】
本発明の化合物の抗菌配合剤における配合割合は、抗菌配合剤中の抗菌剤合計100質量部に対し、本発明の化合物が1〜80質量部が好ましく、5〜60質量部が更に好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。
【0028】
本発明の抗菌配合剤は、適宜固体又は液体の担体に担持させて使用することもできる。
本発明の抗菌配合剤は、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、粒状剤、粉末、スプレー、エアゾール等として利用できる。
【0029】
本発明の抗菌配合剤は、広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトケア用品、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等において有用である。
【0030】
○実施形態
第四アンモニウム塩化合物類、両性界面活性剤類、ビグアナイド系化合物類および有機臭素系抗菌剤類から選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と式(1)の第四アンモニウム塩化合物とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
第四アンモニウム塩化合物類、ビグアナイド系化合物類、有機臭素系抗菌剤類から選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と式(1)の第四アンモニウム塩化合物とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
式(1)のR1が炭素数4〜16のアルキル基、R2およびR3がメチル基またはエチル基の第四アンモニウム塩化合物と式(1)以外の抗菌剤とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
式(1)のR1およびR2がそれぞれ異なっても良い炭素数4〜16のアルキル基、R3がメチル基またはエチル基の第四アンモニウム塩化合物と式(1)以外の抗菌剤とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
式(1)のR1、R2およびR3がそれぞれ異なっても良い炭素数4〜16のアルキル基の第四アンモニウム塩化合物と式(1)以外の抗菌剤とを含有することを特徴とする抗菌配合剤。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各表のMICの単位は、μg/mlである。
【0032】
<合成例1>
300ml反応容器中に、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolとN,N−ジメチルデシルアミン42mmolとエタノール100mlをそれぞれ仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチル混合溶液にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−10と略す)を11.7g得た。
構造は1H−NMR、CHN分析、融点測定などにより決定した。融点は、229.3〜230.6℃で、元素分析の結果を下記に示す(4BADMB−10の分子式はC38H66N2Cl2)。
【0033】
<合成例2>
合成例1において、N,N−ジメチルデシルアミンの代わりにN−メチル−N−ヘキシルオクチルアミンを使用した以外は合成例1と全く同様の操作を行い、目的化合物である白色の化合物4,4’−ビス(N−オクチル−N−ヘキシル−N−メチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BAMB−6,8と略す)を9.6g得た。
構造は1H−NMR、CHN分析などにより決定した。元素分析の結果を下記に示す(4BAMB−6,8の分子式はC44H78N2Cl2)。
【0034】
<合成例3>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8と略す)を得た。
【0035】
<合成例4>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−6と略す)を得た。
【0036】
<合成例5>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−12と略す)を得た。
【0037】
<合成例6>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルテトラデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−14と略す)を得た。
【0038】
<合成例7>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキサデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−16と略す)を得た。
【0039】
<合成例8>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりに、N,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンとの5:5混合物20mmolを用いた以外は、同様に操作し4BADMB−8と4BADMB−10と4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8:4BADMB−8,10:4BADMB−10=26:49:25であった。
【0040】
<合成例9>
合成例8におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から7:3に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8と4BADMB−10と4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8:4BADMB−8,10:4BADMB−10=50:40:10であった。
【0041】
<合成例10>
合成例8におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から8:2に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8と4BADMB−10と4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8:4BADMB−8,10:4BADMB−10=64:31:5であった。
【0042】
<合成例11>
合成例8で得られた混合物を、カラムクロマトグラフィーによる分離を行い、4BADMB−8,10を単離した。
【0043】
<合成例12>
特開平10−114604号公報で提案された化合物を合成した。即ち、300ml反応容器中にα、α’−ジクロロ−p−キシレン20mmolとN,N−ジメチルデシルアミン42mmolとエタノール100mlをそれぞれ仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶をジエチルエーテル溶媒にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物1,4−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)フェニレンジクロリド(4BADMP−10Cと略す)を6.5g得た。
【0044】
○比較例用化合物
比較例用の化合物としては、合成例12で合成した4BADMP−10Cと、下記記載のものを使用した。
・塩化ベンザルコニウム(和光純薬工業社製):以下BACと略す。
・ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド(Aldrich社製):以下DDABと略す。
・グルコン酸クロルヘキシジン(和光純薬工業社製):以下CHGと略す。
・2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(中国のSuzhou Jinlong New Chemical Material Co., Ltd.(蘇州金龍化工新材料有限公司)社製):以下DBNPAと略す。
・ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン(中国のJITAT Co., Ltd.(佳綽有限公司)社製):以下BBABと略す。
【0045】
<試験例1>
○細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値を決定した。
供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110(以下E.coliと略す)とStaphylococcus aureus IFO 12732(以下S.aureusと略す)を用いた。試験した化合物は、合成例1の4BADMB−10(式(1)のR1がデシル基でR2及びR3がメチル基のもの)、合成例2の4BAMB−6,8(式(1)のR1がオクチル基でR2がヘキシル基でR3がメチル基のもの)、BAC、DDAB、CHG、DBNPA、BBABおよび4BADMP−10Cを用いた。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<実施例1>
○塩化ベンザルコニウム(BAC)に対する活性
合成例1の4BADMB−10と塩化ベンザルコニウム(BAC)とを質量比で、20:80、40:60、60:40、80:20の割合で混合した。この混合薬剤、4BADMB−10CおよびBACについて、試験例1と同様の操作を行い、MIC値を測定した。
結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
<実施例2>
○塩化ベンザルコニウム(BAC)に対する活性
合成例2の4BAMB−6,8と塩化ベンザルコニウム(BAC)とを質量比で、20:80、40:60、60:40、80:20の割合で混合した。この混合薬剤、4BAMB−6,8およびBACについて、試験例1と同様の操作を行い、MIC値を測定した。
結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
<実施例3>
○DDABに対する活性
BACの代わりにDDABを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表4および表5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
<実施例4>
○CHGに対する活性
BACの代わりにCHGを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表6および表7に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
<実施例5>
○DBNPAに対する活性
BACの代わりにDBNPAを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表8および表9に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
<実施例6>
○BBABに対する活性
BACの代わりにBBABを用いた以外は実施例1および実施例2と同様の操作を行い、MIC値を測定した。結果を表10および表11に示す。
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
上記実施例の結果(表2〜11)から、本発明の化合物を配合した混合剤は、比較用化合物単剤の場合と比較して、MIC値が小さくなる。このことから、本発明の化合物は、比較例の化合物と混合して使用することにより、抗菌力が増強することは明らかである。
【0064】
<実施例7>
○最小発育阻止濃度(MIC)の変化試験
試験は、合成例1の4BADMB−10とBAC、DDAB、CHG、DBNPA、BBABまたは4BADMP−10Cとを質量比で30:70に混合したものを用いて行った。
試験は、抗菌剤耐性菌を取得する方法に準じて行った。即ち、供試菌として、E. coli を用い、一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した混合薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、濁りの認められない試験薬剤の最小濃度をMICとし、このMICより一段試験化合物濃度の少ない検定液中の菌(即ち、濁りが認められた検定液の菌)を用いて、次の試験菌液とした。このようにして、この操作を10回繰り返した。
1回目と10回目の各化合物におけるMIC値の結果を表12に示す。
【0065】
【表12】
【0066】
<実施例8>
実施例7において4BADMB−10の代わりに合成例2の4BAMB−6,8を使用した以外は実施例7と同様の試験を行い、最小発育阻止濃度(MIC)の変化試験を行った。
【0067】
【表13】
【0068】
<比較例1>
○化合物単独でのMICの変化試験
4BADMB−10、4BAMB−6,8、BAC、DDAB、CHG、DBNPA、BBABまたは4BADMP−10Cに対し実施例6の試験方法を用いて測定を行い、この1回目と10回目の各薬剤におけるMIC値の結果を表14に示す。
【0069】
【表14】
【0070】
上記表14の結果から、比較例用化合物は、死滅しない程度の濃度と菌を接触させ続けると、MIC値が2倍以上に上昇する菌株が出現する。しかし、本発明の化合物は、この操作を繰り返してもMIC値の上昇が認められないことから、抵抗性を示す菌株が出現しないことを示している。
表12および表13から分かるように本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、死滅しない程度の濃度のものと菌とを接触させ続けても抵抗性を示す菌株が出現しない。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、長期間続けて使用できることを示している。
【0071】
【発明の効果】
本発明の式(1)の化合物は、抗菌剤に対し抗菌力を増強させる働きを有している。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、低濃度で使用することができ、産業上有用である。また、抗菌剤は、長期間使用していると抵菌力に抵抗性を示す菌株(耐性株)が出現してくるが、本発明の化合物を配合することにより耐性株の出現を抑制することができる。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、低濃度で且つ連続して長期間使用することができ、産業上有用である。
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