JP2004203762A - 第四アンモニウム塩系抗菌剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】第四アンモニウム塩化合物において、抗菌力を増強させて低濃度で、且つ長期間使用しても菌に対して抵抗性・耐性を獲得させることなく使える化合物を提供することである。
【解決手段】発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【化1】
式(1)中、R1は炭素数4〜20のアルキル基であり、R4は炭素数4〜20のアルキル基であり、R2、R3、R5、R6はそれぞれ独立でもよく炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【選択図】 なし
【解決手段】発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【化1】
式(1)中、R1は炭素数4〜20のアルキル基であり、R4は炭素数4〜20のアルキル基であり、R2、R3、R5、R6はそれぞれ独立でもよく炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、第四アンモニウム塩化合物を配合することによる抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機系抗菌剤は古くから知られ、細菌に対し抗菌効果が高く即効性を示すことから、現在でも抗菌剤として広く一般に用いられている。有機系抗菌剤として、アミン化合物、アルコール化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、第四アンモニウム塩化合物、両性界面活性剤、ビグアナイド化合物、イソチアゾリン化合物など、非常に多くの種類の化合物が知られており、そして多岐に渡り広く使用されている。下記に代表的なものを挙げる。
【0003】
塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムやジデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどの第四アンモニウム塩化合物系抗菌剤、アルキルポリアミノエチルグリシンやアルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤系抗菌剤、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド化合物系抗菌剤、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドやビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテンなどの有機臭素系抗菌剤が挙げられる。
【0004】
しかし、有機系抗菌剤は通常、殺菌力・抗菌力が菌体に存在する糖質、蛋白質及び脂質などに拮抗され、また繰り返し使用すると、菌がこれら抗菌剤に対して抵抗性を獲得し、抗菌効果が低下するようになる。また、他の抗菌剤と配合して使用することもあるが、抗菌剤に対する菌の抵抗性獲得を阻害することはできなかった。一般に、有機系抗菌剤は、長期間使用すると菌が抵抗性・耐性を獲得して行き、使用することが困難となる。
【0005】
○2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物
2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物(以下ビフェニルタイプと称する)において、窒素に結合しているアルキル基がメチル基のもの(下記式(3)のR7〜R12がメチル基)やブチル基のもの(下記式(3)のR7〜R12がn−ブチル基)が知られていたが、これらの化合物については、抗菌活性について報告されていなかった(例えば、非特許文献1参照、非特許文献2参照および非特許文献3参照)。
【0006】
【化3】
【0007】
また、式(3)において窒素に結合しているアルキル基として2個のメチル基(R8、R9、R11、R12)と炭素数4〜16個(R7)、5〜16個(R10)、フェニル(R7、R10)またはフェニル−炭素数1〜10アルキル(R7、R10)のものが記載され、式(3)のR7とR10の炭素数が6個で他はメチル基の化合物、式(3)のR7とR10の炭素数が8個で他はメチル基の化合物、式(3)のR7とR10の炭素数が12個で他はメチル基の化合物および式(3)のR7とR10の炭素数が16個で他はメチル基の化合物について抗菌活性が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
更に、式(3)において窒素に結合しているアルキル基として2個のメチル基(R8、R9、R11、R12)と炭素数1〜20個(R7とR10)のものに抗菌活性が報告されている。また、式(3)のR7とR10の炭素数が10個で他はメチル基の化合物が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
これらの報告は、抗菌活性についてのものであり、ここに記載されている化合物同士を配合することにより抗菌力が増強および抗菌剤耐性菌の発現を抑制できることについて、記載がなくまた示唆もなかった。
【0008】
○先行文献
【特許文献1】
特開2002−187874号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
WO2002−060856(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
J. Sci. Ind. Res., 14B, 214-219 (1955).
【非特許文献2】
薬学雑誌, 73, 760-763 (1953).
【非特許文献3】
Bioorganic & Medicinal Chemistry Lett., 5(4), 357-362 (1995).
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
第四アンモニウム塩化合物において、抗菌力を増強させて低濃度で、且つ長期間使用しても菌に対して抵抗性・耐性を獲得させることなく使える化合物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
【化4】
【0012】
式(1)中、R1は炭素数4〜20のアルキル基であり、R4は炭素数4〜20のアルキル基であり、R2、R3、R5、R6はそれぞれ独立でもよく炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌配合剤は、上記式(1)で表わされる第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤であり、式(1)の化合物がそれぞれ単独のものに比べ配合したものは低濃度で抗菌活性を示し、且つ菌が抵抗性を獲得することを阻止できるものである。このことから、本発明の抗菌配合剤は、使用量が少なくてすみ、且つ長期間使用することができる。なお、有機系抗菌剤を以下抗菌剤と称する。
【0014】
式(1)で表される化合物が、下記式(2)で例示できることもある抗菌配合剤である。
【0015】
【化5】
【0016】
式(2)中、R1は炭素数4〜20のアルキル基であり、R4は炭素数4〜20のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【0017】
式(1)および式(2)のR1、R4としては、それぞれ異なっても良い炭素数4〜20の分岐を有しても良いアルキル基であり、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基であり、例えば、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デカニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などが例示でき、これらは分岐を有しても良いものである。これらの中でヘキシル基、オクチル基、デカニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基が好ましく、更にヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基が好ましい。
【0018】
また式(1)または式(2)のR1とR4とが異なる炭素数のアルキル基を有する化合物としては、R1の炭素数が6個のときR4の炭素数としては、8個、10個、12個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が8個のときR4の炭素数としては、6個、10個、12個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が10個のときR4の炭素数としては、6個、8個、12個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が12個のときR4の炭素数としては、6個、8個、10個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が14個のときR4の炭素数としては、6個、8個、10個、12個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が16個のときR4の炭素数としては、6個、8個、10個、12個または14個のアルキル基を有するものが好ましく、更に好ましくは、炭素数6個と8個との化合物、炭素数8個と10個との化合物、炭素数6個と10個との化合物または炭素数8個と12個との化合物がよく、特に好ましくは、炭素数8個と10個との化合物である。
式(1)におけるR2、R3、R5、R6は、それぞれ独立でもよく炭素数1〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0019】
本発明の抗菌配合剤は、式(1)または式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有するものであり、このうちの1種類が、式(1)または式(2)のR1および/またはR4における炭素数が6個、8個、10個、12個、14個または16個のアルキル基を有する化合物であり、少なくとももう1種類が、式(1)または式(2)のR1および/またはR4に異なる炭素数のアルキル基を有する化合物を含有するものである。
【0020】
即ち、式(1)または式(2)のR1およびR4が同一のアルキル基の化合物による本発明の抗菌配合剤においては、R1およびR4の炭素数が6個と8個との化合物の組合せ、6個と10個との化合物の組合せ、6個と12個との化合物の組合せ、6個と14個との化合物の組合せ、8個と10個との化合物の組合せ、8個と12個との化合物の組合せ、8個と14個との化合物の組合せ、10個と12個との化合物の組合せ、10個と14個との化合物の組合せ、12個と14個との化合物の組合せが例示でき、これら組み合わせにもう1種類以上の化合物との組み合わせが好ましく、更に6個と10個との化合物の組合せ、6個と12個との化合物の組合せ、6個と14個との化合物の組合せ、8個と10個との化合物の組合せ、8個と12個との化合物の組合せ、8個と14個との化合物の組合せ、これら組み合わせにもう1種類の化合物との組み合わせが好ましく、更に8個と10個との化合物の組合せが特に好ましいものである。
【0021】
本発明の抗菌配合剤において、R1およびR4が異なる化合物(A)を配合する場合、これに配合する化合物(B)は、R1およびR4が異なる化合物でもR1およびR4が同一の化合物でもよい。また、配合する化合物(B)は、化合物(A)のR1またはR4と同一のアルキル基を有する化合物でもよく、化合物(A)のR1またはR4と異なるアルキル基を有する化合物でもよく、同一のアルキル基を有する化合物の方が好ましい。
同一のアルキル基を有する化合物を配合するものの例として、式(1)または式(2)のR1にオクチル基およびR4にデシル基を持つ化合物に対し、R1、R4にオクチル基を持つ化合物またはR1、R4にデシル基を持つ化合物が例示できる。
【0022】
上記式(1)および上記式(2)のXn-は無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(4)〜(7)で表されるアニオン基等である。式(1)および上記式(2)の化合物にアニオン基Xが結合する数(m)は、アニオン基Xn-の価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオン基Xn-が2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0023】
R13COO- (4)
式(4)中、R13は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基を表す。
【0024】
-OOC−(R14)p−COO- (5)
式(5)中、pは0または1であり、pが1のときR14は水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基である。
【0025】
R15SO4 - (6)
式(6)中、R15は炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0026】
【化6】
【0027】
式(7)中、R16及びR17はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。
【0028】
式(1)または式(2)で表される化合物を単独で用いるよりも、2種以上配合して用いることにより、抗菌力を増強させることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができる。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抗菌剤を単独で用いることに比べ低濃度で使用することができる。
また、抗菌剤は、長期間使用していくと菌に対し抵抗性・耐性を獲得して行くことが多いが、本発明の抗菌配合剤は、このようなことが認められない。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抵抗性・耐性を有する菌株の出現を心配することなく長期間使用することができる。
【0029】
本発明の抗菌配合剤は、式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有するものであり、または式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有するものである。この抗菌配合剤における配合割合は、式(1)または式(2)で表される化合物を2種以上含有するものにおいて、1種の化合物100質量部に対し、他の化合物の合計が10〜900質量部含有することを特徴とするものであり、20〜500質量部が更に好ましく、50〜200質量部が特に好ましい。例えば、式(2)のR1およびR4の炭素数が10個のアルキル基である化合物(C)と式(2)のR1およびR4の炭素数が8個のアルキル基である化合物(D)との抗菌配合剤であるとき、化合物(C)100質量部に対し化合物(D)は、10〜900質量部が好ましく、20〜500質量部が更に好ましく、50〜200質量部が特に好ましいものである。
【0030】
配合の仕方はどのような方法でも良い。予め式(1)または式(2)で表される化合物を合成し、それらを配合しても良いし、式(1)または式(2)で表される化合物を合成する際に、2種類以上のアミン原料を配合した上で合成を行っても良い。
【0031】
本発明の抗菌配合剤は、適宜固体又は液体の担体に担持させて使用することもできる。
本発明の抗菌配合剤は、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、粒状剤、粉末、スプレー、エアゾール等として利用できる。
【0032】
本発明の抗菌配合剤は、広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトケア用品、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等において有用である。
【0033】
○実施形態
・式(1)または式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤において、式(1)または式(2)におけるR1および/またはR4の炭素数が6〜16の偶数個のアルキル基を有する化合物を2種以上含有する抗菌配合剤。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各表のMICの単位は、μg/mlである。
【0035】
<合成例1>
300ml反応容器中に、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolとN,N−ジメチルデシルアミン42mmolとエタノール100mlをそれぞれ仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチル混合溶液にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−10Cと略す)を11.7g得た。
構造は1H−NMR、CHN分析、融点測定などにより決定した。融点は、229.3〜230.6℃で、元素分析の結果を下記に示す(4BADMB−10Cの分子式はC38H66N2Cl2)。
【0036】
<合成例2>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8Cと略す)を得た。
【0037】
<合成例3>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−6Cと略す)を得た。
【0038】
<合成例4>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−12Cと略す)を得た。
【0039】
<合成例5>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルテトラデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−14Cと略す)を得た。
【0040】
<合成例6>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキサデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−16Cと略す)を得た。
【0041】
<合成例7>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりに、N,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンとの5:5混合物20mmolを用いた以外は、同様に操作し4BADMB−8Cと4BADMB−10Cと4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8C:4BADMB−8,10:4BADMB−10C=26:49:25であった。
【0042】
<合成例8>
合成例7におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から7:3に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8Cと4BADMB−10Cと4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8C:4BADMB−8,10:4BADMB−10C=50:40:10であった。
【0043】
<合成例9>
合成例7におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から8:2に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8Cと4BADMB−10Cと4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8C:4BADMB−8,10:4BADMB−10C=64:31:5であった。
【0044】
<合成例10>
合成例7で得られた混合物を、カラムクロマトグラフィーによる分離を行い、4BADMB−8,10を単離した。
【0045】
○比較例用化合物
・塩化ベンザルコニウム(和光純薬工業社製):以下BACと略す。
・ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド(Aldrich社製):以下DDABと略す。
・グルコン酸クロルヘキシジン(和光純薬工業社製):以下CHGと略す。
・2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(中国のSuzhou Jinlong New Chemical Material Co., Ltd.(蘇州金龍化工新材料有限公司)社製):以下DBNPAと略す。
・ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン(中国のJITAT Co., Ltd.(佳綽有限公司)社製):以下BBABと略す。
【0046】
<実施例1>
○最小発育阻止濃度(MIC)の繰り返し試験
試験は、一般的なブロス希釈法に準じて行った最小発育阻止濃度を繰り返し実施することにより行った。即ち、供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110(以下E.coliと略す)を用い、一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した混合薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、濁りの認められない試験薬剤の最小濃度をMIC(μg/ml)とし、このMICより一段試験化合物濃度の少ない検定液中の菌(即ち、濁りが認められた検定液の菌)を用いて、次の試験菌液とした。このようにして、この操作を10回繰り返した。
1回目〜10回目の各MIC値の結果を表1に示す。なお、表1には、4BADMB−10Cを10Cと4BADMB−8Cを8Cと記載する。
【0047】
【表1】
【0048】
<実施例2>
○4BADMB−10Cと4BADMB−8Cとの配合剤
合成例で合成した4BADMB−10Cと4BADMB−8Cとを表2記載の質量比で混合し、最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。この、結果を表2に示す。なお、表2には、4BADMB−10Cを10Cと、4BADMB−8Cを8Cと記載する。
○細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値(μg/ml)を決定した。
供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110(以下E.coliと略す)(親株)および、実施例1で得た4BADMB−8Cに対する耐性株についても試験を行った。
【0049】
【表2】
【0050】
<実施例3>
○4BADMB−8Cと4BADMB−12Cとの配合剤
実施例2における試験化合物を4BADMB−8Cと4BADMB−12Cとにした以外は、同様にしてMICを測定したこれらの結果を表3に示す。なお、表3には、4BADMB−8Cを8Cと4BADMB−12Cを12Cと記載する。
【0051】
【表3】
【0052】
<実施例4>
○4BADMB−6Cと4BADMB−10Cとの配合剤
実施例2における試験化合物を4BADMB−6Cと4BADMB−10Cとにした以外は、同様にしてMICを測定した。これらの結果を表4に示す。なお、表4には、4BADMB−6Cを6Cと4BADMB−10Cを10Cと記載した。
【0053】
【表4】
【0054】
<実施例5>
○4BADMB−8Cと4BADMB−8、10と4BADMB−10Cとの配合剤
実施例2における試験化合物に加えて、合成例7〜9にて合成した4BADMB−8Cと4BADMB−8、10と4BADMB−10Cとの配合物と、合成例10で得た4BADMB−8、10を用いてMICを測定した。これらの結果を表5に示す。なお、表5には、4BADMB−8Cを8Cと4BADMB−8、10を8−10と4BADMB−10Cを10Cと記載した。
【0055】
【表5】
【0056】
<実施例5>
○細胞毒性
人由来の生細胞であるヒトメラノーマ細胞A375(以下A375と記す)を用いて細胞毒性試験を行った。A375を96穴プレートに1.5×104cell/well分注し、18時間後、段階希釈した薬剤を含む10%FBS/DMEM培地と交換し、5%CO2、37℃で6時間接触させた後の生細胞数を測定した。測定はXTTアッセイでの発色を吸光度(OD490-650)を利用し測定した。別に薬剤を用いないで同様の試験を行い100%生細胞率のコントロールとし、薬剤として塩化ベンザルコニウム200ppmを用いて0%生細胞数のコントロールとした。生細胞率が50%となる濃度を細胞毒性濃度EC50(μg/ml)とした。結果を下記表6に示す。なお、表6には、4BADMB−8Cを8Cと4BADMB−8、10を8−10と4BADMB−10Cを10Cと記載する。
【0057】
【表6】
【0058】
【発明の効果】
式(1)または式(2)で表される化合物を単独で用いるよりも、2種以上配合して用いることにより、抗菌力を増強させることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができる。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抗菌剤を単独で用いることに比べ低濃度で使用することができる。また、抗菌剤は、長期間使用していくと菌に対し抵抗性・耐性を獲得して行くことが多いが、本発明の抗菌配合剤は、このようなことが認められない。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抵抗性・耐性を有する菌株の出現を心配することなく長期間使用することができる。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、低濃度で且つ連続して長期間使用することができ産業上有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、第四アンモニウム塩化合物を配合することによる抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機系抗菌剤は古くから知られ、細菌に対し抗菌効果が高く即効性を示すことから、現在でも抗菌剤として広く一般に用いられている。有機系抗菌剤として、アミン化合物、アルコール化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、第四アンモニウム塩化合物、両性界面活性剤、ビグアナイド化合物、イソチアゾリン化合物など、非常に多くの種類の化合物が知られており、そして多岐に渡り広く使用されている。下記に代表的なものを挙げる。
【0003】
塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムやジデシルジメチルアンモニウムブロマイドなどの第四アンモニウム塩化合物系抗菌剤、アルキルポリアミノエチルグリシンやアルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤系抗菌剤、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド化合物系抗菌剤、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドやビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテンなどの有機臭素系抗菌剤が挙げられる。
【0004】
しかし、有機系抗菌剤は通常、殺菌力・抗菌力が菌体に存在する糖質、蛋白質及び脂質などに拮抗され、また繰り返し使用すると、菌がこれら抗菌剤に対して抵抗性を獲得し、抗菌効果が低下するようになる。また、他の抗菌剤と配合して使用することもあるが、抗菌剤に対する菌の抵抗性獲得を阻害することはできなかった。一般に、有機系抗菌剤は、長期間使用すると菌が抵抗性・耐性を獲得して行き、使用することが困難となる。
【0005】
○2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物
2個の第四アンモニウム基が結合しているビフェニルタイプの化合物(以下ビフェニルタイプと称する)において、窒素に結合しているアルキル基がメチル基のもの(下記式(3)のR7〜R12がメチル基)やブチル基のもの(下記式(3)のR7〜R12がn−ブチル基)が知られていたが、これらの化合物については、抗菌活性について報告されていなかった(例えば、非特許文献1参照、非特許文献2参照および非特許文献3参照)。
【0006】
【化3】
【0007】
また、式(3)において窒素に結合しているアルキル基として2個のメチル基(R8、R9、R11、R12)と炭素数4〜16個(R7)、5〜16個(R10)、フェニル(R7、R10)またはフェニル−炭素数1〜10アルキル(R7、R10)のものが記載され、式(3)のR7とR10の炭素数が6個で他はメチル基の化合物、式(3)のR7とR10の炭素数が8個で他はメチル基の化合物、式(3)のR7とR10の炭素数が12個で他はメチル基の化合物および式(3)のR7とR10の炭素数が16個で他はメチル基の化合物について抗菌活性が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
更に、式(3)において窒素に結合しているアルキル基として2個のメチル基(R8、R9、R11、R12)と炭素数1〜20個(R7とR10)のものに抗菌活性が報告されている。また、式(3)のR7とR10の炭素数が10個で他はメチル基の化合物が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
これらの報告は、抗菌活性についてのものであり、ここに記載されている化合物同士を配合することにより抗菌力が増強および抗菌剤耐性菌の発現を抑制できることについて、記載がなくまた示唆もなかった。
【0008】
○先行文献
【特許文献1】
特開2002−187874号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
WO2002−060856(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
J. Sci. Ind. Res., 14B, 214-219 (1955).
【非特許文献2】
薬学雑誌, 73, 760-763 (1953).
【非特許文献3】
Bioorganic & Medicinal Chemistry Lett., 5(4), 357-362 (1995).
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
第四アンモニウム塩化合物において、抗菌力を増強させて低濃度で、且つ長期間使用しても菌に対して抵抗性・耐性を獲得させることなく使える化合物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、下記式(1)で示される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤により課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
【化4】
【0012】
式(1)中、R1は炭素数4〜20のアルキル基であり、R4は炭素数4〜20のアルキル基であり、R2、R3、R5、R6はそれぞれ独立でもよく炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌配合剤は、上記式(1)で表わされる第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤であり、式(1)の化合物がそれぞれ単独のものに比べ配合したものは低濃度で抗菌活性を示し、且つ菌が抵抗性を獲得することを阻止できるものである。このことから、本発明の抗菌配合剤は、使用量が少なくてすみ、且つ長期間使用することができる。なお、有機系抗菌剤を以下抗菌剤と称する。
【0014】
式(1)で表される化合物が、下記式(2)で例示できることもある抗菌配合剤である。
【0015】
【化5】
【0016】
式(2)中、R1は炭素数4〜20のアルキル基であり、R4は炭素数4〜20のアルキル基であり、Xは無機性または有機性のアニオンであり、nはアニオンXの価数であって、mはnとmとの積が2となる数である。
【0017】
式(1)および式(2)のR1、R4としては、それぞれ異なっても良い炭素数4〜20の分岐を有しても良いアルキル基であり、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基であり、例えば、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デカニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などが例示でき、これらは分岐を有しても良いものである。これらの中でヘキシル基、オクチル基、デカニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基が好ましく、更にヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基が好ましい。
【0018】
また式(1)または式(2)のR1とR4とが異なる炭素数のアルキル基を有する化合物としては、R1の炭素数が6個のときR4の炭素数としては、8個、10個、12個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が8個のときR4の炭素数としては、6個、10個、12個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が10個のときR4の炭素数としては、6個、8個、12個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が12個のときR4の炭素数としては、6個、8個、10個、14個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が14個のときR4の炭素数としては、6個、8個、10個、12個または16個のアルキル基を有するものが好ましく、R1の炭素数が16個のときR4の炭素数としては、6個、8個、10個、12個または14個のアルキル基を有するものが好ましく、更に好ましくは、炭素数6個と8個との化合物、炭素数8個と10個との化合物、炭素数6個と10個との化合物または炭素数8個と12個との化合物がよく、特に好ましくは、炭素数8個と10個との化合物である。
式(1)におけるR2、R3、R5、R6は、それぞれ独立でもよく炭素数1〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0019】
本発明の抗菌配合剤は、式(1)または式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有するものであり、このうちの1種類が、式(1)または式(2)のR1および/またはR4における炭素数が6個、8個、10個、12個、14個または16個のアルキル基を有する化合物であり、少なくとももう1種類が、式(1)または式(2)のR1および/またはR4に異なる炭素数のアルキル基を有する化合物を含有するものである。
【0020】
即ち、式(1)または式(2)のR1およびR4が同一のアルキル基の化合物による本発明の抗菌配合剤においては、R1およびR4の炭素数が6個と8個との化合物の組合せ、6個と10個との化合物の組合せ、6個と12個との化合物の組合せ、6個と14個との化合物の組合せ、8個と10個との化合物の組合せ、8個と12個との化合物の組合せ、8個と14個との化合物の組合せ、10個と12個との化合物の組合せ、10個と14個との化合物の組合せ、12個と14個との化合物の組合せが例示でき、これら組み合わせにもう1種類以上の化合物との組み合わせが好ましく、更に6個と10個との化合物の組合せ、6個と12個との化合物の組合せ、6個と14個との化合物の組合せ、8個と10個との化合物の組合せ、8個と12個との化合物の組合せ、8個と14個との化合物の組合せ、これら組み合わせにもう1種類の化合物との組み合わせが好ましく、更に8個と10個との化合物の組合せが特に好ましいものである。
【0021】
本発明の抗菌配合剤において、R1およびR4が異なる化合物(A)を配合する場合、これに配合する化合物(B)は、R1およびR4が異なる化合物でもR1およびR4が同一の化合物でもよい。また、配合する化合物(B)は、化合物(A)のR1またはR4と同一のアルキル基を有する化合物でもよく、化合物(A)のR1またはR4と異なるアルキル基を有する化合物でもよく、同一のアルキル基を有する化合物の方が好ましい。
同一のアルキル基を有する化合物を配合するものの例として、式(1)または式(2)のR1にオクチル基およびR4にデシル基を持つ化合物に対し、R1、R4にオクチル基を持つ化合物またはR1、R4にデシル基を持つ化合物が例示できる。
【0022】
上記式(1)および上記式(2)のXn-は無機性または有機性のアニオン基であり、好ましくは、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン又は下記式(4)〜(7)で表されるアニオン基等である。式(1)および上記式(2)の化合物にアニオン基Xが結合する数(m)は、アニオン基Xn-の価数をnとしたとき、nとmとの積が2となる数であり、例えば、アニオン基Xn-が2価の場合には1であり、1価の場合には2である。
【0023】
R13COO- (4)
式(4)中、R13は水酸基またはカルボニル基を有しても良い炭素数1〜7のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基を表す。
【0024】
-OOC−(R14)p−COO- (5)
式(5)中、pは0または1であり、pが1のときR14は水酸基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜7のアルケニル基である。
【0025】
R15SO4 - (6)
式(6)中、R15は炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0026】
【化6】
【0027】
式(7)中、R16及びR17はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシル基を表す。
【0028】
式(1)または式(2)で表される化合物を単独で用いるよりも、2種以上配合して用いることにより、抗菌力を増強させることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができる。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抗菌剤を単独で用いることに比べ低濃度で使用することができる。
また、抗菌剤は、長期間使用していくと菌に対し抵抗性・耐性を獲得して行くことが多いが、本発明の抗菌配合剤は、このようなことが認められない。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抵抗性・耐性を有する菌株の出現を心配することなく長期間使用することができる。
【0029】
本発明の抗菌配合剤は、式(1)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有するものであり、または式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有するものである。この抗菌配合剤における配合割合は、式(1)または式(2)で表される化合物を2種以上含有するものにおいて、1種の化合物100質量部に対し、他の化合物の合計が10〜900質量部含有することを特徴とするものであり、20〜500質量部が更に好ましく、50〜200質量部が特に好ましい。例えば、式(2)のR1およびR4の炭素数が10個のアルキル基である化合物(C)と式(2)のR1およびR4の炭素数が8個のアルキル基である化合物(D)との抗菌配合剤であるとき、化合物(C)100質量部に対し化合物(D)は、10〜900質量部が好ましく、20〜500質量部が更に好ましく、50〜200質量部が特に好ましいものである。
【0030】
配合の仕方はどのような方法でも良い。予め式(1)または式(2)で表される化合物を合成し、それらを配合しても良いし、式(1)または式(2)で表される化合物を合成する際に、2種類以上のアミン原料を配合した上で合成を行っても良い。
【0031】
本発明の抗菌配合剤は、適宜固体又は液体の担体に担持させて使用することもできる。
本発明の抗菌配合剤は、必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、粒状剤、粉末、スプレー、エアゾール等として利用できる。
【0032】
本発明の抗菌配合剤は、広範囲の分野で利用でき、例えば、防菌防臭加工繊維製品、皮革製品、建材、木材、塗料、接着剤、プラスティック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油、食品、医薬品、医療・環境消毒剤、眼科治療剤、コンタクトケア用品、点眼剤、洗浄剤、化粧品、文房具、農薬、畜産分野等において有用である。
【0033】
○実施形態
・式(1)または式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤において、式(1)または式(2)におけるR1および/またはR4の炭素数が6〜16の偶数個のアルキル基を有する化合物を2種以上含有する抗菌配合剤。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各表のMICの単位は、μg/mlである。
【0035】
<合成例1>
300ml反応容器中に、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル20mmolとN,N−ジメチルデシルアミン42mmolとエタノール100mlをそれぞれ仕込み加熱還流下で5時間反応させた後、溶媒のエタノールを減圧除去することにより粗晶を得た。この粗晶を酢酸エチルで洗浄後、アセトニトリル/酢酸エチル混合溶液にて再結晶し、減圧乾燥により、白色の化合物4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−10Cと略す)を11.7g得た。
構造は1H−NMR、CHN分析、融点測定などにより決定した。融点は、229.3〜230.6℃で、元素分析の結果を下記に示す(4BADMB−10Cの分子式はC38H66N2Cl2)。
【0036】
<合成例2>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルオクチルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8Cと略す)を得た。
【0037】
<合成例3>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−6Cと略す)を得た。
【0038】
<合成例4>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルドデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−12Cと略す)を得た。
【0039】
<合成例5>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルテトラデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−テトラデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−14Cと略す)を得た。
【0040】
<合成例6>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりにN,N−ジメチルヘキサデシルアミンを用いた以外は、同様に操作し4,4’−ビス(N,N−ジメチル−N−ヘキサデシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−16Cと略す)を得た。
【0041】
<合成例7>
合成例1におけるN,N−ジメチルデシルアミンの替わりに、N,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンとの5:5混合物20mmolを用いた以外は、同様に操作し4BADMB−8Cと4BADMB−10Cと4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8C:4BADMB−8,10:4BADMB−10C=26:49:25であった。
【0042】
<合成例8>
合成例7におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から7:3に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8Cと4BADMB−10Cと4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8C:4BADMB−8,10:4BADMB−10C=50:40:10であった。
【0043】
<合成例9>
合成例7におけるN,N−ジメチルオクチルアミンとN,N−ジメチルデシルアミンの比5:5から8:2に変えた以外は、同様に操作し4BADMB−8Cと4BADMB−10Cと4−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)―4’−(N,N−ジメチル−N−デシルアンモニオメチル)ビフェニルジクロリド(4BADMB−8,10と略す)の混合物を得た。この混合物の組成比は重量比で4BADMB−8C:4BADMB−8,10:4BADMB−10C=64:31:5であった。
【0044】
<合成例10>
合成例7で得られた混合物を、カラムクロマトグラフィーによる分離を行い、4BADMB−8,10を単離した。
【0045】
○比較例用化合物
・塩化ベンザルコニウム(和光純薬工業社製):以下BACと略す。
・ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド(Aldrich社製):以下DDABと略す。
・グルコン酸クロルヘキシジン(和光純薬工業社製):以下CHGと略す。
・2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(中国のSuzhou Jinlong New Chemical Material Co., Ltd.(蘇州金龍化工新材料有限公司)社製):以下DBNPAと略す。
・ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン(中国のJITAT Co., Ltd.(佳綽有限公司)社製):以下BBABと略す。
【0046】
<実施例1>
○最小発育阻止濃度(MIC)の繰り返し試験
試験は、一般的なブロス希釈法に準じて行った最小発育阻止濃度を繰り返し実施することにより行った。即ち、供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110(以下E.coliと略す)を用い、一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した混合薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、濁りの認められない試験薬剤の最小濃度をMIC(μg/ml)とし、このMICより一段試験化合物濃度の少ない検定液中の菌(即ち、濁りが認められた検定液の菌)を用いて、次の試験菌液とした。このようにして、この操作を10回繰り返した。
1回目〜10回目の各MIC値の結果を表1に示す。なお、表1には、4BADMB−10Cを10Cと4BADMB−8Cを8Cと記載する。
【0047】
【表1】
【0048】
<実施例2>
○4BADMB−10Cと4BADMB−8Cとの配合剤
合成例で合成した4BADMB−10Cと4BADMB−8Cとを表2記載の質量比で混合し、最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。この、結果を表2に示す。なお、表2には、4BADMB−10Cを10Cと、4BADMB−8Cを8Cと記載する。
○細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)
一般的なブロス希釈法に従い、ニュトリエントブロスを用いて菌懸濁濃度が、106cell/mlになるように調整した定常期状態の菌液を、段階希釈した薬剤溶液に添加し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無により、MIC値(μg/ml)を決定した。
供試菌として、Escherichia coli K12 W 3110(以下E.coliと略す)(親株)および、実施例1で得た4BADMB−8Cに対する耐性株についても試験を行った。
【0049】
【表2】
【0050】
<実施例3>
○4BADMB−8Cと4BADMB−12Cとの配合剤
実施例2における試験化合物を4BADMB−8Cと4BADMB−12Cとにした以外は、同様にしてMICを測定したこれらの結果を表3に示す。なお、表3には、4BADMB−8Cを8Cと4BADMB−12Cを12Cと記載する。
【0051】
【表3】
【0052】
<実施例4>
○4BADMB−6Cと4BADMB−10Cとの配合剤
実施例2における試験化合物を4BADMB−6Cと4BADMB−10Cとにした以外は、同様にしてMICを測定した。これらの結果を表4に示す。なお、表4には、4BADMB−6Cを6Cと4BADMB−10Cを10Cと記載した。
【0053】
【表4】
【0054】
<実施例5>
○4BADMB−8Cと4BADMB−8、10と4BADMB−10Cとの配合剤
実施例2における試験化合物に加えて、合成例7〜9にて合成した4BADMB−8Cと4BADMB−8、10と4BADMB−10Cとの配合物と、合成例10で得た4BADMB−8、10を用いてMICを測定した。これらの結果を表5に示す。なお、表5には、4BADMB−8Cを8Cと4BADMB−8、10を8−10と4BADMB−10Cを10Cと記載した。
【0055】
【表5】
【0056】
<実施例5>
○細胞毒性
人由来の生細胞であるヒトメラノーマ細胞A375(以下A375と記す)を用いて細胞毒性試験を行った。A375を96穴プレートに1.5×104cell/well分注し、18時間後、段階希釈した薬剤を含む10%FBS/DMEM培地と交換し、5%CO2、37℃で6時間接触させた後の生細胞数を測定した。測定はXTTアッセイでの発色を吸光度(OD490-650)を利用し測定した。別に薬剤を用いないで同様の試験を行い100%生細胞率のコントロールとし、薬剤として塩化ベンザルコニウム200ppmを用いて0%生細胞数のコントロールとした。生細胞率が50%となる濃度を細胞毒性濃度EC50(μg/ml)とした。結果を下記表6に示す。なお、表6には、4BADMB−8Cを8Cと4BADMB−8、10を8−10と4BADMB−10Cを10Cと記載する。
【0057】
【表6】
【0058】
【発明の効果】
式(1)または式(2)で表される化合物を単独で用いるよりも、2種以上配合して用いることにより、抗菌力を増強させることができるとともに、耐性菌の発生を抑制することができる。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抗菌剤を単独で用いることに比べ低濃度で使用することができる。また、抗菌剤は、長期間使用していくと菌に対し抵抗性・耐性を獲得して行くことが多いが、本発明の抗菌配合剤は、このようなことが認められない。このことから、本発明の抗菌配合剤は、抵抗性・耐性を有する菌株の出現を心配することなく長期間使用することができる。このことから、本発明の化合物を配合した抗菌配合剤は、低濃度で且つ連続して長期間使用することができ産業上有用である。
Claims (5)
- 上記式(1)または上記式(2)で表される化合物を2種以上含有するものにおいて、1種の化合物100質量部に対して、他の化合物が10〜900質量部含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗菌配合剤。
- 上記式(1)または上記式(2)で表される第四アンモニウム塩化合物を2種以上含有する抗菌配合剤において、この内の1種が上記式(1)または上記式(2)におけるR1および/またはR4の炭素数が6個、8個、10個、12個、14個、16個のアルキル基を有する化合物である請求項1または請求項2に記載の抗菌配合剤。
- 請求項1〜4にそれぞれ記載の抗菌配合剤を含有する消毒剤または抗菌剤。
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