JP2004331407A - 水素製造装置及び水素製造方法 - Google Patents
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Abstract
【手段】水素製造装置1は、水素含有化合物の解離を促進するための電界を発生させる浮遊多電極2aを備えている。水素含有化合物を浮遊多電極2aに供するためのエアポンプ3と、電界触媒を用いて水素含有化合物の解離を促進するための電極部2と、解離により生成した水素を解離反応系外へ取り出すための排出ポンプ5と、を備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタン等の水素含有化合物を効率よく分解し、収率よく水素を製造する水素製造装置及び水素製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素エネルギーはクリーンな燃料であり、自動車や民生用のエネルギー源としても将来性が注目されている。従来より、水素の製造法については様々な研究開発が行われてきた。
【0003】
例えば、原料として炭化水素やアルコールを用い、担持Niのような触媒の存在下で、300〜800℃、1〜30atm程度の圧力下で分解させる方法(炭化水素の「水蒸気」改質反応)が知られている。また、原料として水を用い、これを、電気分解、光触媒分解、メカノキャタリシス法などによって分解し、水素を製造する方法も知られている。
【0004】
メタンや天然ガスを電力によって分解する技術についてはプラズマトーチや大電力による放電を用いるものなど、大量のエネルギーを消費する手法がとられてきた。プラズマによるメタンの分解装置として代表的なものの一つはノルウェーのクヴァルナルエンジニアリング社の炭化水素分解装置である(特許文献1〜7参照。)。
【0005】
一方、低温プラズマにより水素含有化合物を分解して水素を得る試みも開示されている。ここに記述されている内容は強誘電体ペレット充填型低温プラズマ装置を用いて、室温から100℃程度までの温度領域で炭化水素類などの分解反応を起こすというものである(特許文献8参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第2572350号明細書
【特許文献2】特許第2588840号明細書
【特許文献3】特許第2593405号明細書
【特許文献4】特許第2593406号明細書
【特許文献5】特許第2711368号明細書
【特許文献6】特許第2867182号明細書
【特許文献7】特許第2893485号明細書
【特許文献8】特開2002−338203号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の技術はそれぞれ以下に記すような課題を有している。炭化水素の「水蒸気」改質反応では、触媒の使用が必須であり、また高温高圧という過酷な条件を必要とするという問題点がある。また、上記炭化水素分解装置は、高温の燃焼プラズマガスを利用しており、プラズマの生成に大エネルギーを使用し、プラズマトーチ内の電極消耗が顕著に生じるものである。また、装置は大型で移動が不可能であるのみならず、装置製作費用が高額である。
【0008】
また、特開2002−338203号公報記載の方法においても印加電圧は数kV以上を要しており、電極の消耗が避け難い。また、バックグラウンドガスとして不活性ガスを共存させることが望ましく、高濃度の原料ガスを処理するには適していない。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小さなエネルギーで効率よくメタン等の水素含有化合物から水素を製造し、かつ小型で部品消耗の小さい水素製造装置及び水素製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、メタンガス等を原料とし、メタン等の水素含有化合物の解離のための触媒として電界触媒(電極)を用い、電界発生のための電極として浮遊多極電極または浮遊同軸円筒電極を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
請求項1の水素製造装置は、上記の課題を解決するために、水素含有化合物の解離を促進するための電界を発生させる電界触媒を備えたことを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、電界触媒によって解離反応を促進させることができるので、小さなエネルギーで効率よくメタン等の水素含有化合物から水素を製造し、かつ小型で部品消耗の小さい水素製造装置を提供できる。
【0012】
請求項2の水素製造装置は、上記の課題を解決するために、水素含有化合物を電界触媒に供するための輸送手段と、電界触媒を用いて水素含有化合物の解離を促進するための反応容器と、解離により生成した水素を解離反応系外へ取り出すための除去手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、上記輸送手段により、メタンガス等の水素含有化合物を電界触媒に連続的にまたは不連続的に供することができる。また、上記反応容器において電界触媒による解離反応を進行させ、除去手段により、生成物である水素を適宜解離反応系外へ取り出すことができるので、確実に正反応を促進させることができる等、より効率的に水素製造を行うことができる。
【0014】
請求項3の水素製造装置は、上記の課題を解決するために、電界触媒は、浮遊多極電極及び/または浮遊同軸円筒電極であることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、電界を発生させるための電極として浮遊多極電極または浮遊同軸円筒電極を用いることによって、電界は各電極面と直交する方向(各電極面の法線方向)に発生し、電極から放射線状に電気力線が生じ、広領域の電界空間を得ることができる。これにより、1kV以下程度の小さな印加電圧によって電極間に静電界が発生するので、電界発生のための大電力設備を省略することができる。また、電極を多数並列(いわゆるマルチ型)に設置することで、原料となる水素含有化合物が、林立する電極間で放電されている箇所を通過することにより、より効率的に水素を生成させることができる。これにより、短時間で大量の水素含有化合物を解離して水素を製造できるので、水素生成量を大幅に増加させることができる。また、電極がいわゆるマルチ型であることで、より低電圧で放電状態を形成することができる。
【0016】
請求項4の水素製造方法は、上記の課題を解決するために、電界により、水素含有化合物の解離を促進させ、水素を発生させることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、電界によって解離反応を促進させることができるので、小さなエネルギーで効率よくメタン等の水素含有化合物から効率的に水素を製造することができる。
【0018】
請求項5の水素製造方法は、上記の課題を解決するために、浮遊多極電極及び/または浮遊同軸円筒電極を、電界を発生させる電界触媒として用いることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、電界を発生させるための電極として浮遊多極電極または浮遊同軸円筒電極を用いることによって、電界は各電極面に垂直方向に発生し、電極から放射線状に電気力線が生じ、広領域の電界空間を得ることができる。これにより、1kV以下程度の低電圧で広領域で電界を発生させられるので、電極の損傷が少ない。また、小さな電極を多数並列(いわゆるマルチ型)に設置することで、原料となる水素含有化合物が、林立する電極間で放電されている箇所を通過することとなるので、より効率的に水素を生成させることができる。これにより、水素生成量を大幅に増加させることができる。
【0020】
請求項6の水素製造方法は、上記の課題を解決するために、常圧雰囲気下で水素含有化合物を解離させることを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、原料である水素含有化合物の処理に際して、加圧または減圧など、雰囲気操作を加えるための装置を省略することができる。
【0022】
請求項7の水素製造方法は、上記の課題を解決するために、電源波形としてパルス波形を用いることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、電源波形としてパルス波形を用いることで、電極への電圧の印加が連続的ではなく間歇的となるため、水素含有化合物解離のために要する電力を大幅に削減することができ、極小電力量で水素含有化合物の解離を促進できる。
【0024】
請求項8の水素製造方法は、上記の課題を解決するために、水素含有化合物が、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、水、硫化水素、水素化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の揮発性化合物であることを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、比較的入手容易な上記水素含有化合物を用いることで、原料の安定供給化が図れるとともに、より低コストで無公害の水素エネルギーを得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明すれば以下のとおりである。
図1は、本実施の形態の水素製造装置1の概略構成を示す説明図である。
同図に示すように、本実施の形態の水素製造装置1は、水素原料である水素含有化合物(本実施の形態ではメタン)が外部から導入されるとともに、生成した水素ガスを一旦収容するガス導入部4と、メタンの解離反応が行われる電極部2(反応容器)と、メタンを電極部2内に導入するためのエアポンプ3(輸送手段)と、電極部2内に設置される浮遊多電極2a(電界触媒,浮遊多極電極)と、上記ガス導入部4の一部に設置され、生成した水素を系外へ送出するための排出ポンプ5(除去手段)とから主に構成されている。図に示すように、ガス導入部4、エアポンプ3、電極部2はこの順に導管6により接続されている。また、浮遊多電極2aには電源波形としてパルス波形を用いたパルス電源7が接続されている。
【0027】
ガス導入部4には、ガス導入部4中の空気を排出して真空にするための排気ポンプ8と、原料ガスを外部より導入するためのバルブ9、及び、水素圧を検出するための水素センサー10が、それぞれ導管を介して接続されている。
浮遊多電極2aは、隔壁2bに設置されている。隔壁2bは、電極部2の一部を構成し、該電極部2とガス導入部4とを隔離するとともに、生成した水素をガス導入部4へ送出するための1または複数個の貫通孔を備えている。また、電極部2には、真空度センサー11が設けられている。
【0028】
図2は、浮遊多電極2aの概略構成を説明するための平面図である。同図に示すように、浮遊多電極2aは、ステンレスからなる電極棒2a119本が絶縁板2a2上に等間隔に立設されている。同図では、パルス電源7の正極は、電極棒2a119本のうち、中心部の電極Aに、負極はパルス電源7近傍の電極Bに接続されている。
【0029】
図2において、絶縁板2a2の周辺付近に立設され、陰影を付して示されている電極棒2a1はすべて、電極Bに接続されている。また、電極Aと電極B、その他陰影を付して示される電極棒2a1との間にある電極C、及び電極Cと同様に白丸で示されている電極棒2a1は、電気的に浮遊状態にある。
本発明において、「浮遊」とは、電気的に浮いている、すなわち、電気的に接続されていないことを意味している。このように、電源に接続する電極間に多数の浮遊電極を設置した浮遊多電極を用いることによって、各電極表面近傍の強電界領域を増加させることができる。また、各電極間が狭くなるので、電界をより強くすることができる。
【0030】
上記では、電界触媒として浮遊多電極2aを用いたが、上記浮遊多電極2aに代えて同軸浮遊多電極2a’(浮遊同軸円筒電極)を用いる構成としてもよい。図3(a)は、同軸浮遊多電極2a’の概略構成を示す平面図であり(b)は、その電極部分の一部を省略して示した正面図である。同図(a)に示すように、同軸浮遊多電極2a’は、絶縁板2a2’上に複数本の同軸円筒管が立設された構成である。各電極は同軸円筒管2個1組となって構成されており、順次電気的に接続されている。
同軸円筒管は、図3(a)に示すように、中心電極(図中・で示す)と、該中心電極の外側の円筒管(図中〇で示す)とからなる同軸円筒管が2個1組となっている。1組の外側の円筒管は互いに接続され、電気的に浮遊状態である。内側の中心電極の1つは他の組の中心電極の1つに順次接続されている。このように多数の組が図に示すように順次設置され、最初の1組のうち一方の中心電極(図中A´で示す)に電源の正極を、最後の1組のうち一方の中心電極(図中B´で示す)に電源の負極が接続されている。
【0031】
すなわち、同軸浮遊多電極2a’は、多数の同軸円筒管で形成するコンデンサーを直列接続した構成であり、電源電圧が各コンデンサーに分配されるので、電源電圧を高くすることができる。このように、電極として同軸円筒管を用いると、円筒効果により中心電極近傍の電界がより強くなる。また、外側の円筒管には孔が開けられていて、すべての気体は孔から円筒管内へ流れ込み、電界の影響を受けるようになっている。
【0032】
また、同軸浮遊多電極2a’は、上記のように、コンデンサーを直列接続した構成であったが、コンデンサーを並列接続する構成としてもよい。
図4(a)は、そのような電極形態を備えた同軸浮遊多電極2a’’の構成を示す平面図であり、(b)は、その電極部分の一部を省略して示した正面図である。同軸浮遊多電極2a’’は、多数の同軸円筒管を同図(a)(b)のように接続して電源につないだ状態となっている。この形態は、同軸円筒管で形成されるコンデンサーを並列に接続した形と同様であり、電源電圧と等しい電圧が各コンデンサーに印加されるので、電源電圧は直列型より低電圧化でき、円筒効果による中心電極近傍の電界の強化と広領域化ができる。気体は円筒管に空けられた孔から円筒管内に流れ込み、すべての気体が電界の影響を受けるようになっている。
電極部2は、上記浮遊多電極2a及び同軸浮遊多電極2a’並びに同軸浮遊多電極2a’’のいずれか1種の電極のみを用いても、また、必要に応じ併用してもよい。次に、本実施の形態の水素製造装置1の動作について以下に説明する。
まず、排気ポンプ8により、ガス導入部4中の空気を排出して真空状態にする。次に、バルブ9を開いてメタンガスをガス導入部4内に導入する。一定量のメタンガスを導入した後、エアポンプ3を作動させ、メタンガスを水素製造装置1内に循環させる。
【0033】
次いで、再度バルブ9を開いて水蒸気を導入し、エアポンプ3により電極部2内に導く。
【0034】
この状態で、パルス電源7をオンにして、浮遊多電極2aにより電場をかける。電界が形成されている電極部2内に導入されたメタンガスは、林立する各浮遊多電極2a間を通過する。浮遊多電極2a近傍は、放電状態となっており、強電界内にメタンガスと水蒸気が混入することとなる。これにより、電界が触媒となって、メタンと水蒸気の下記式に示すような反応が促進され、カーボンブラックと水素ガスが効率的に生成する。
【0035】
【式1】
【0036】
上記反応により生成した水素ガスは、排出ポンプ5により反応系外へ取り出すことで、より確実に正反応を促進させることができ、電界触媒の触媒効果をさらに向上させることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、エアポンプ3により一定量のメタンガスを循環させる不連続的なバッチ式の構成としたが、これに限定されず、例えば、バルブ9から順次適当量のメタンガス及び水蒸気を連続的に導入し、水素ガスを順次取り出していく連続的・開放的構成としてもよい。
【0038】
本実施の形態の水素製造装置1では、電源波形としてパルス波形を用いることで、電極への電圧の印加が連続的ではなく間歇的となるため、水素含有化合物解離のために要する電力を大幅に削減することができ、極小電力量で水素含有化合物の解離を促進できる。
本発明の水素製造方法は、例えば、上記電極部2に示すような手段で形成された電界を用いて、例えば、上記式に示すような、水素含有化合物の解離を促進させ、水素を生成させる方法である。本発明の水素製造方法は、例えば、上記水素製造装置1等を用いて使用することができる。
本発明の水素製造方法に使用する原料としての水素含有化合物は、揮発性を有するものが特に好ましく、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類等の有機化合物;水、硫化水素、水素化物等の無機化合物;等が挙げられる。上記例示の水素含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
炭化水素類は、揮発性であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン等のほかに1分子あたりの水素含有率が高いネオペンタン等も有効である。不飽和脂肪族炭化水素としては、エチレン、プロピレン、プロピン、ブチレン、ブタジエン等が挙げられる。上記例示の炭化水素類のうち、メタン、エタン、プロパンが特に好ましい。
アルコール類としては、飽和アルコール、不飽和アルコール等が使用できる。飽和アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等が挙げられる。不飽和アルコールとしては、アリルアルコール等が挙げられる。上記例示のアルコール類のうち、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが特に好ましい。
【0039】
上記例示の水素含有化合物のほか、アルデヒド類、エーテル類、エステル類当の有機化合物も使用することができる。また、水としては、純水のほか、雨水、水道水、1次処理済み排水等を使用することができる。また、無機化合物として、水以外に硫化水素等の硫黄化合物、SiH4等のシラン類、PH3等のホスフィン類等も使用できる。
【0040】
本発明の水素製造方法は、原料となる水素含有化合物の種類にもよるが、通常、室温付近、室温〜100℃付近の温度領域で使用される。また、高沸点の水素含有化合物を用いる場合には、上記温度領域以上に適宜温度設定して用いればよい。また、水素含有化合物の蒸気圧により、適宜濃度を調整することが可能である。
【0041】
上記のように、電界を発生させるための電極として浮遊多極電極または浮遊同軸円筒電極を用いることによって、電界は各電極面に垂直方向に発生し、電極から放射線状に電気力線が生じ、広領域の電界空間を得ることができる。これにより、1kV以下程度の小さな印加電圧によっても電極間に静電界が発生するので、電界発生のための大電力設備を省略することができる。
【0042】
また、電極を多数並列(いわゆるマルチ型)に設置することで、原料となる水素含有化合物が、林立する電極間で放電されている箇所を通過することにより、より効率的に水素を生成させることができる。これにより、短時間で大量の水素含有化合物を解離して水素を製造できるので、水素生成量を大幅に増加させることができる。また、電極がいわゆるマルチ型であることで、より低電圧で放電状態を形成することができる。
【0043】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について、説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
原料ガスとして純メタンを用い、水素製造装置のガス導入部に純メタンを充満させ密封した。次に、下記の条件でエアーポンプを循環させ、純メタンに、パルス電界を作用させた。ガス導入部はステンレス製(460cm3)を使用し、下記の条件で水素を生成させた。
【0045】
圧力 : 1気圧
印加電圧 : Vd=530V
電流 : Id=1.2mA
周波数 : f =340Hz
パルス幅 : δτ=4×10−5sec
電力 : p =540×1.2×10−3/2=0.318W
正味印加時間:Δτ =4×340×4×10−5 =5.44×10−2sec
電力量 :pΔτ=0.318×5.44×10−2=1.73×10−2ws
上記条件で生成した水素量は0.64cm3であった。これより生成効率γ(消費電力量に対する水素生成量)をもとめたところ1.33×105(L/kWh)であった。尚、従来の炭化水素分解装置(クヴァルナルエンジニアリング社製)を用い、原料ガスとして純メタンを用いた場合、生成効率γは、795(L/kWh)程度であり、本実施例によれば、従来と比較して高効率で水素を生成できることがわかる。
また、印加時間(sec)と、水素生成量(cm3)との関係を図5に示した。図5より明らかなように、水素製造装置内の浮遊多電極にパルス電源からのパルス電圧を加えた瞬間に水素が生成され、すぐに平衡状態に達することがわかる。また、本実施例の浮遊多電極への印加電圧と、電極間の電流との関係を図6に示した(ch1:電極への印加電圧(単位:V)、ch2:電極間の電流(単位:A))。
【0046】
〔実施例2〕
周波数f=470Hz、パルス幅δτ=4secとし、印加電圧を変化させた以外は、実施例と同様の操作を行い、印加電圧(Vd:V)の大きさと水素ガス生成量(H2:cm3)との関係をグラフにした。結果を図7に示す。図7より明らかなように、印加電圧が500Vまでは水素が発生しないが、700Vから電圧の増加とともに急激に水素の生成量が増加することがわかる。従って、7〜8kV程度の電圧が必要である従来の水素製造装置と比較して、低電圧で高効率に水素を生成できることがわかる。
【0047】
〔実施例3〕
印加電圧を固定でVd=530V、正味の印加時間:5.44×10−2secとし、パルス電源の周波数fを変化させる以外は実施例1と同様の操作を行い、周波数(Hz)と水素生成量(cm3)との関係を調べた。結果を図8に示す。図8より明らかなように、周波数400Hz付近が水素生成の最適値であることがわかる。従って、比較的少ない電力量で効率的に水素生成できることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
請求項1の水素製造装置は、以上のように、水素含有化合物の解離を促進するための電界を発生させる電界触媒を備えた構成である。
【0049】
それゆえ、電界触媒によって解離反応を促進させることができるので、小さなエネルギーで効率よくメタン等の水素含有化合物から水素を製造し、かつ小型で部品消耗の小さい水素製造装置を提供できるという効果を奏する。
【0050】
請求項2の水素製造装置は、以上のように、水素含有化合物を電界触媒に供するための輸送手段と、電界触媒を用いて水素含有化合物の解離を促進するための反応容器と、解離により生成した水素を解離反応系外へ取り出すための除去手段と、を備えた構成である。
【0051】
それゆえ、上記輸送手段により、メタンガス等の水素含有化合物を電界触媒に連続的にまたは不連続的に供することができる。また、上記反応容器において電界触媒による解離反応を進行させ、除去手段により、生成物である水素を適宜解離反応系外へ取り出すことができるので、確実に正反応を促進させることができる等、より効率的に水素製造を行えるという効果を奏する。
【0052】
請求項3の水素製造装置は、以上のように、電界触媒は、浮遊多極電極及び/または浮遊同軸円筒電極である構成である。
【0053】
それゆえ、電界を発生させるための電極として浮遊多極電極または浮遊同軸円筒電極を用いることによって、電界は各電極面に垂直方向に発生し、電極から放射線状に電気力線が生じ、広領域の電界空間を得ることができる。これにより、1kV以下程度の小さな印加電圧によって電極間に静電界が発生するので、電界発生のための大電力設備を省略することができる。また、電極を多数並列に設置することで、原料となる水素含有化合物が、林立する電極間で放電されている箇所を通過することにより、より効率的に水素を生成させることができる。これにより、短時間で大量の水素含有化合物を解離して水素を製造できるので、水素生成量を大幅に増加させることができる。また、電極がいわゆるマルチ型であることで、より低電圧で放電状態を形成できるという効果を奏する。
【0054】
請求項4の水素製造方法は、以上のように、電界により、水素含有化合物の解離を促進させ、水素を発生させる構成である。
【0055】
それゆえ、電界によって解離反応を促進させることができるので、小さなエネルギーで効率よくメタン等の水素含有化合物から効率的に水素を製造できるという効果を奏する。
【0056】
請求項5の水素製造方法は、以上のように、浮遊多極電極及び/または浮遊同軸円筒電極を、電界を発生させる電界触媒として用い構成である。
【0057】
それゆえ、電界を発生させるための電極として浮遊多極電極または浮遊同軸円筒電極を用いることによって、電界は各電極面に垂直方向に発生し、電極から放射線状に電気力線が生じ、広領域の電界空間を得ることができる。これにより、1kV以下程度の低電圧で広領域で電界を発生させられるので、電極の損傷が少ない。また、小さな電極を多数並列(いわゆるマルチ型)に設置することで、原料となる水素含有化合物が、林立する電極間で放電されている箇所を通過することとなるので、より効率的に水素を生成させることができる。これにより、水素生成量を大幅に増加するという効果を奏する。
【0058】
請求項6の水素製造方法は、以上のように、常圧雰囲気下で水素含有化合物を解離させる構成である。
【0059】
それゆえ、原料である水素含有化合物の処理に際して、加圧または減圧など、雰囲気操作を加えるための装置を省略できるという効果を奏する。
【0060】
請求項7の水素製造方法は、以上のように、電源波形としてパルス波形を用いる構成である。
【0061】
それゆえ、電源波形としてパルス波形を用いることで、電極への電圧の印加が連続的ではなく間歇的となるため、水素含有化合物解離のために要する電力を大幅に削減することができ、少ない電力量で水素含有化合物の解離を促進できる。
【0062】
請求項8の水素製造方法は、以上のように、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、水、硫化水素、水素化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の揮発性化合物である構成である。
【0063】
それゆえ、容易な上記水素含有化合物を用いることで、原料の安定供給化が図れるとともに、より低コストで無公害の水素エネルギーできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の水素製造装置1の概略構成を示す説明図である。
【図2】浮遊多電極2aの概略構成を説明するための平面図である。
【図3】(a)は、同軸浮遊多電極2a’の概略構成を示す平面図である。
(b)は、その電極部分の一部を省略して示した正面図である。
【図4】(a)は、同軸浮遊多電極2a’’の概略構成を示す平面図である。
(b)は、その電極部分の一部を省略して示した正面図である。
【図5】本実施の形態の水素製造装置への電圧印加時間と水素生成量との関係を示すグラフである。
【図6】本実施の形態の水素製造装置の印加電圧水素生成量との関係を示すグラフである。
【図7】本実施の形態の水素製造装置において周波数と水素生成量との関係を示すグラフである。
【図8】本実施の形態の水素製造装置において周波数と水素生成量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 水素製造装置
2 電極部(反応容器)
2a 浮遊多電極(電界触媒)
2a’,2a’’ 同軸浮遊多電極(電界触媒)
3 エアポンプ(輸送手段)
4 ガス導入部
5 排出ポンプ(除去手段)
7 パルス電源
Claims (8)
- 水素含有化合物の解離を促進するための電界を発生させる電界触媒を備えたことを特徴とする水素製造装置。
- 水素含有化合物を電界触媒に供するための輸送手段と、電界触媒を用いて水素含有化合物の解離を促進するための反応容器と、解離により生成した水素を解離反応系外へ取り出すための除去手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の水素製造装置。
- 電界触媒は、浮遊多極電極及び/または浮遊同軸円筒電極であることを特徴とする請求項1または2記載の水素製造装置。
- 電界により、水素含有化合物の解離を促進させ、水素を発生させることを特徴とする水素製造方法。
- 浮遊多極電極及び/または浮遊同軸円筒電極を、電界を発生させる電界触媒として用いることを特徴とする請求項4記載の水素製造方法。
- 常圧雰囲気下で水素含有化合物を解離させることを特徴とする請求項4または5記載の水素製造方法。
- 電源波形としてパルス波形を用いることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の水素製造方法。
- 水素含有化合物が、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、水、硫化水素、水素化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の揮発性化合物であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の水素製造方法。
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