JP2019075263A - メタンを炭素と水素に分解し、分解した水素を燃料電池に投入して発電するシステム - Google Patents
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Abstract
Description
一方で、メタンガスは、天然ガスとして多量に産出するとともに、例えば発酵工程を有する食品工場や下水処理工場などで副生するガスにも含まれており、環境保全およびエネルギーの有効利用の観点から、これらのガスの有効活用が望まれている。
上述の固体高分子型燃料電池を用いたシステムにおいては、メタンを水蒸気改質する際に二酸化炭素が副生する。また、上述の固体酸化物型燃料電池においては、燃料電池の電極反応において二酸化炭素が生成する。
生成した二酸化炭素ガスは、地球温暖化の抑制など、環境保全の観点から、そのまま放出するのではなく、例えばカーボン・キャプチャー・ストレージ(CCS)などの手法により、環境に放出させない手立てが、今後必要とされる。
メタンの水蒸気改質反応は、以下の式(1)で表される。
一方、メタンの熱分解による水素の生成反応は、二酸化炭素が副生しないという、環境保全の観点からの大きな長所を有している。
本発明者らは、長期間に亘ってメタンの熱分解による水素の生成を行うことができた鉄系触媒を取り出し、電子顕微鏡で観察したところ、当該触媒が、多数の繊維状炭素が成長し、その先端ないし表面に鉄系触媒が存在する形態を有することを確認した。このことから、当該接触分解において、メタンが適切な量、触媒表面に供給された場合には、鉄触媒表面上でメタンが炭素と水素に分解され、触媒表面において生成した炭素は、鉄触媒中を移動し、その一端に炭素繊維状に蓄積されることが確認された。これに対し、メタンが適切な量を超えて、過剰に供給された場合には、接触分解により生じた炭素が触媒表面にも残存することにより、触媒活性を有する部分とメタンとの接触が阻害され、触媒が失活するものと推測される。
これについては、メタン分解反応器の出口側に、例えば膜分離法あるいは圧力変動吸着法(PSA)による混合ガス分離装置を配置し、当該ガス分離装置においてメタン分解反応器において生成し、回収された当該混合ガスから未反応のメタンを分離することにより、純度の高い水素ガスを得ることができる。このシステムによれば、メタン分解反応を長期間、安定して行うことができ、純度の高い水素ガスを安定に供給することができる。分離された未反応のメタンは原料ガスとして再度利用することができる。
さらに、メタン分解反応器の内部圧力を高めることにより、メタンの接触熱分解による水素の生成反応を促進することができ、また、反応器から取り出した水素とメタンの混合ガスを高い圧力のまま分離装置に供給することで、水素とメタンの分離速度を高めることができる。
当該ロータリーキルンは、キルン内部の圧力を高めることができる。キルン内部の圧力を高めることにより、メタンの接触熱分解による水素の生成反応を促進することができ、また、キルンから取り出した水素とメタンの混合ガスを高い圧力のまま膜分離装置、あるいはPSA装置に供給することで、水素とメタンの分離速度を高めることができる。
〈1〉上流側に原料ガスであるメタンを導入する原料ガス導入口を有し、下流側に生成ガスである水素と未反応のメタンの混合ガスを取り出す混合ガス取り出し口を有し、反応器内においてメタン分解触媒を用いた接触熱分解によりメタンを炭素と水素に分解するメタン分解反応器と、当該反応器の混合ガス取り出し口に連結し、混合ガスからメタンを取り除く混合ガス分離装置と、当該混合ガス分離装置の、当該装置によりメタンが取り除かれた水素ガスのガス出口に、その燃料極室が連結された、水素を燃料とする燃料電池とを備え、当該混合ガス分離装置からの純度の高い水素ガスを燃料電池の燃料として供給することを特徴とする、水素を燃料とする燃料電池発電システム。
〈2〉混合ガス分離装置において取り除いたメタンを原料ガス導入口に導き、原料ガスの一部として再び用いることを特徴とする、〈1〉に記載のシステム。
〈3〉原料ガスを原料ガス導入口から加圧した状態で供給することにより、メタン分解反応器におけるメタン分解反応と、混合ガス分離装置における混合ガスの分離を加圧下において行うことを特徴とする、〈1〉または〈2〉に記載のシステム。
〈4〉原料ガス導入口の上流側に、さらに原料ガスに含まれる二酸化炭素を除去するための、ガス分離装置を備え、原料ガスをメタン分解反応器に導入する前に、予め原料ガスの二酸化炭素濃度を十分に低減させることを特徴とする、〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のシステム。
〈5〉メタン分解触媒が、鉄触媒であることを特徴とする、〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載のシステム。
〈6〉メタン分解反応器において生成した水素とメタンの混合ガスからメタンを取り除く分離装置が、膜分離装置または圧力変動吸着法(PSA)装置であることを特徴とする、〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載のシステム。
〈7〉二酸化炭素を含む原料メタンガスから二酸化炭素を取り除く分離装置が、膜分離装置または圧力変動吸着法(PSA)装置であることを特徴とする、〈4〉〜〈6〉のいずれかに記載のシステム。
〈8〉水素を燃料とする燃料電池が、固体高分子形燃料電池であることを特徴とする、〈1〉〜〈7〉に記載のシステム。
〈9〉メタン分解反応器がロータリーキルン型の回転式反応器であり、上流側にさらにメタン分解触媒を投入する触媒投入口を有し、下流側にさらに反応使用済みの触媒を回収する触媒回収口を有することを特徴とする、〈1〉〜〈8〉に記載のシステム。
本発明の燃料電池発電システムに用いた水素製造システムによれば、純度の高い水素ガスを安定して製造することができ、メタン分解反応器としてロータリーキルン型回転反応器を用いた水素製造システムによれば、純度の高い水素ガスを、さらに長期間、連続して製造することができるため、燃料電池による発電を安定して行うことができる。
本発明の燃料電池発電システムは、水素製造システムの上流側に、メタンと二酸化炭素を分離する装置を設けることにより、食品工場などから排出される、二酸化炭素を含むメタンガスをも原料ガスとして用いることができる。
以下の要領で、固定床流通式反応器を用いて、メタンの接触熱分解反応を行った。
この実験に用いた固定床流通式反応器は、図2に示すとおり、両端に入口部と出口部を配した、内径36mm、長さ460mmの石英ガラス製の円筒からなり、当該反応器を円筒状のヒーター内に挿入し、全体を円筒の軸方向に水平に設置し、反応器内部の長さ方向中央、下部に、触媒を載置するための石英ボートを設置した。
触媒として、酸化鉄担持アルミナ(44%Fe2O3/Al2O3)を用い、メタンの接触分解実験を行った。
触媒を上記石英ボート上に200mg、反応器の長さ方向50mmにわたって載置した。
反応は、窒素ガスの流通下、反応器内部を所定の反応温度まで昇温させ、次いで、同様の温度に昇温した原料ガスを入口から導入して行い、出口側で生成ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。ガス組成の測定は、メタンと水素を対象として行った。以下の各図ではメタンの転化率のみを示すが、水素の生成についても、メタンの転化率に対応し、同様の挙動を示すことが確認された。
原料ガスとして、温度730℃で100%メタンガスを20cm3/minの流量で導入したときの、出口ガスにおけるメタンの転化率の経時変化を、図3に示す。なお、図3の横軸において、導入開始時に導入した原料ガス(及びその反応生成物)が出口側に到達すべき時点を0minとしている。
図3に示すとおり、原料ガス導入開始後10〜20分程度でメタン転化率が急速に上昇し、30分後には70%程度のメタン転化率が得られ、6時間経過時点でも50〜60%程度のメタン転化率を維持することができた。
反応温度を680℃、690℃、700℃、710℃、740℃の5通りに変化させた以外は実施例1と同様にして、メタンの接触分解反応を行った。得られたメタンの転化率の経時変化を、図4に示す。
図4に示すとおり、680℃では反応は進行せず、690℃、700℃、710℃、および740℃では、それぞれ原料ガス導入後120分、30分、15分および10分程度の時点でメタン転化率が急速に上昇を始め、その後、反応開始後6時間の時点でも70%〜50%程度の安定した転化率が得られている。これらの実験結果から、メタンの分解反応を進行させるためには、アルミナ上に担持された酸化鉄がメタンにより還元されることがまず必要であること、そして、反応温度が低温であればアルミナに担持された酸化鉄のメタンによる還元が進まないために、メタン分解の活性が発現しないが、高温にすればするほど、酸化鉄が速やかに還元され、メタン分解が進行することが推測される。
反応温度を740℃とし、原料のメタンガス流量を10cm3/min、20cm3/min、40cm3/min、60cm3/min、80cm3/minの5通りに変化させた以外は実施例1と同様にして、メタンの接触分解反応を行った。得られたメタンの転化率の経時変化を、図5に示す。
図5に示すとおり、メタンガス流量が大きくなると、より速やかに触媒が失活する。
また、それぞれのメタンガス流量において、メタンの転化率が実質的に0%となった時点での失活触媒における炭素と、最初に仕込んだ時点での触媒の重量比を、表1に示す。
実施例2において、反応温度740℃でメタンの接触熱分解反応を360分行った時点で酸化鉄担持アルミナ触媒を採取し、その形態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。得られた写真を図6上、下に示す。
図6上の写真から、触媒の表面に炭素の固まりが成長していることが見て取れ、また、その500倍拡大写真である図6下の写真から、当該炭素の固まりが、多数の繊維状の炭素が絡み合った構造を有しており、その先端ないし表面には、鉄触媒(白く光った部分)が存在することが見て取れる。
上述の実施例3の結果、及び、上記SEMの観察結果から推測される、酸化鉄担持アルミナ触媒におけるメタン分解機構のイメージは、図7に示すとおり、酸化鉄のメタンによる還元により生じたアルミナ上の鉄触媒表面上でメタンが炭素と水素に分解され、水素は気相中に拡散するとともに、触媒表面において生成した炭素は、鉄触媒中に浸透・拡散し、メタンの触媒表面への供給速度が適切であれば、鉄触媒と担体であるアルミナの間に炭素繊維状に蓄積されるというものである。これに対し、メタンが適切な量を超えて、過剰に供給された場合には、接触分解により生じた炭素が鉄触媒表面にも残存することにより、触媒活性を有する部分とメタンとの接触が阻害され、触媒が失活するものと推測される。
反応温度を750℃とし、原料として二酸化炭素を1%、2%、または3%含有するメタンガスを用いた以外は実施例1と同様にして、メタンの接触分解反応を行った。得られたメタンの転化率の経時変化を、図8に示す。図8には、実施例2において、100%メタンガスを原料として、反応温度740℃で得られたメタンの転化率の経時変化を併せて表示している。
図8に示すとおり、二酸化炭素量が3%の場合は、メタン分解は進行しないが、2%以下であればメタン分解は進行することを確認した。
次に、原料として二酸化炭素を2%含有するメタンガスを用い、反応温度を720℃、740℃または750℃とした場合の、メタンの転化率の経時変化を、図9に示す。
図9に示すとおり、100%メタンガスの場合はメタン分解が進行する720℃では、二酸化炭素濃度が2%の場合であってもメタン分解は進行せず、740℃でもメタン分解反応の立ち上がりにかなりの時間を要するが、750℃程度の高温にすれば満足し得るメタン分解が得られた。
本発明によるメタンの接触熱分解反応においては、上述のとおり、いずれの条件においても、メタンが100%分解されることはなく、反応器出口から取り出される生成ガスには、水素に加えて未反応メタンが20%以上残存する。このため、高純度の水素を得るためには、生成ガスから未反応のメタンを分離する必要がある。
このような分離は、例えば、公知の膜分離装置や圧力変動吸着法(PSA)装置などを用いて行うことができる。
本発明によるメタンの接触熱分解反応においては、上述のとおり、原料メタンガスに二酸化炭素が許容範囲を超えて含まれている場合は、メタンの分解反応が進行しない。このため、メタンに加えて二酸化炭素を40%程度含有することが多い、発酵工程を有する食品工場や下水処理工場などで副生するガスを、本発明の水素製造システムの原料ガスとして用いる場合には、予め原料ガス中の二酸化炭素を分離することにより、メタンの純度を98%程度まで高めておくことが必要である。
このような分離は、例えば、公知の膜分離装置や圧力変動吸着法(PSA)装置などを用いて行うことができる。
以上の知見に基づいて、本発明によるメタンの接触熱分解を長期間に亘り連続して行うための、ロータリーキルン型回転反応器を設計した。その模式図を、図10に示す。
図10において、1はメタン分解反応器であり、直径100mm、長さ250mmの円筒の両端に、原料ガスと触媒を反応器に供給する原料供給管2と、生成ガスと使用済み触媒を反応器から取り出す生成物取り出し管3を内挿するための外套管部を有し、当該外套管部には反応器を回転駆動するための駆動部4が取り付けられ、また、円筒の内面には、円筒の長さ方向に延びた8本の突起部を有している。5は原料供給管2に内挿した羽根付き軸6を回転駆動するための駆動部であり、7は生成物取り出し管3に内挿した羽根付き軸8を回転駆動するための駆動部である。9は原料供給管2に原料ガス及び触媒を供給するためのホッパーである。なお、原料ガスについては、別途、原料供給管2に対する供給口を設けてもよい。10は生成物取り出し管3に設けた生成ガス取り出し口であり、11は同じく使用済み触媒の取り出し口である。12は、加熱領域を示し、この部分を加熱炉内に配置する等、適宜の方法により加熱する。
このように構成したロータリーキルン型回転反応器を図示するように出口側が下方になるように傾斜させ、原料供給管2に内挿した羽根付き軸6、メタン分解反応器1、および生成物取り出し管3に内挿した羽根付き軸8をそれぞれ回転させ、原料供給管2から原料メタンガス及びメタン分解触媒をメタン分解反応器1に連続して供給する。メタン分解反応器1に供給された原料メタンガス及びメタン分解触媒は、反応器の回転により、反応器内部に設けた突起部にガイドされて、反応器内部を順次、回転、移動し、この間、加熱されることでメタンの接触分解反応が進行する。これにより生成したガスと、炭素が析出した触媒は、生成物取り出し管3から順次取り出され、生成ガスは生成ガス取り出し口10から、炭素が析出した触媒は使用済み触媒取り出し口11から、それぞれ取り出される。
このように構成されたロータリーキルン型回転反応器の生成ガス取り出し口10に上述した水素―メタン分離装置を取り付けることにより、高純度の水素ガスを得ることができ、また、未反応のメタンを再度原料ガスの一部として利用できる、また、原料ガスから上述のメタン−二酸化炭素分離装置を用いて二酸化炭素の濃度を低減することにより、工場廃ガスなどの二酸化炭素を含むメタンガスも原料ガスとして利用することができる。
Claims (9)
- 上流側に原料ガスであるメタンを導入する原料ガス導入口を有し、下流側に生成ガスである水素と未反応のメタンの混合ガスを取り出す混合ガス取り出し口を有し、反応器内においてメタン分解触媒を用いた接触熱分解によりメタンを炭素と水素に分解するメタン分解反応器と、当該反応器の混合ガス取り出し口に連結し、混合ガスからメタンを取り除く混合ガス分離装置と、当該混合ガス分離装置の、当該装置によりメタンが取り除かれた水素ガスのガス出口に、その燃料極室が連結された、水素を燃料とする燃料電池とを備え、当該混合ガス分離装置からの純度の高い水素ガスを燃料電池の燃料として供給することを特徴とする、水素を燃料とする燃料電池発電システム。
- 混合ガス分離装置において取り除いたメタンを原料ガス導入口に導き、原料ガスの一部として再び用いることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
- 原料ガスを原料ガス導入口から加圧した状態で供給することにより、メタン分解反応器におけるメタン分解反応と、混合ガス分離装置における混合ガスの分離を加圧下において行うことを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
- 原料ガス導入口の上流側に、さらに原料ガスに含まれる二酸化炭素を除去するための、ガス分離装置を備え、原料ガスをメタン分解反応器に導入する前に、予め原料ガスの二酸化炭素濃度を十分に低減させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
- メタン分解触媒が、鉄触媒であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシステム。
- メタン分解反応器において生成した水素とメタンの混合ガスからメタンを取り除く分離装置が、膜分離装置または圧力変動吸着法(PSA)装置であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
- 二酸化炭素を含む原料メタンガスから二酸化炭素を取り除く分離装置が、膜分離装置または圧力変動吸着法(PSA)装置であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載のシステム。
- 水素を燃料とする燃料電池が、固体高分子形燃料電池であることを特徴とする、請求項1〜7に記載のシステム。
- メタン分解反応器がロータリーキルン型の回転式反応器であり、上流側にさらにメタン分解触媒を投入する触媒投入口を有し、下流側にさらに反応使用済みの触媒を回収する触媒回収口を有することを特徴とする、請求項1〜8に記載のシステム。
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