JP2004329557A - 義歯 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】義歯床1と、義歯床1に固定された人工歯2と、義歯床1又は人工歯2に固定され、義歯を残存する天然歯に装着するにあたって下顎の天然歯5bの上に配置されるレスト6とを有する下顎用の義歯であって、前記レスト6は、下顎の天然歯5bの頬側咬頭5b−1の上に配置される。また、義歯床1の床縁には溝7を形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、義歯床に固定された人工歯を有する義歯に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有床の義歯構造としては、例えば非特許文献1に記載されている構造が一般的である。図9は、非特許文献1に記載されている下顎用の義歯の装着状態を示す平面図である。同図において斜線で示す従来の義歯は、義歯床1と、義歯床1に固定された人工歯2と、義歯を残存歯5に取り付けるクラスプ3とを有している。また、図9においては、左右の義歯床1が連結子4によって連結されている。
【0003】
このような従来の義歯において、クラスプは、義歯を残存歯に連結固定して維持、安定させるとともに、必要に応じて残存歯に荷重を負担させるという重要な機能を果たしており、従来の義歯には欠かせないものとなっている。
【0004】
【非特許文献1】
奥野義彦、「有床義歯技工学2 局部床義歯編」、医歯薬出版株式会社、昭和53年3月5日、p.2−3
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、クラスプによる、審美面及び機能面における弊害があることも事実である。すなわち、審美面では、クラスプが見えて格好が悪いという問題がある。また、機能面では、(1)クラスプが粘膜や舌に引っかかり不快感・違和感がある,(2)クラスプと残存歯との間に食物が詰まりやすく唾液の流れも悪い,(3)クラスプを残存歯に装着する際に残存歯を傷つけやすい,といった問題がある。さらに、上述のように、クラスプには、必要に応じて残存歯に荷重を負担させるという機能もあるが、クラスプを残存歯に装着する際の便宜性のみが考慮され、残存歯どうしにおける適正な噛み合わせを考慮して荷重を負担させるようにはなっていない。したがって、残存歯に過度の負担がかかって残存歯が傷みやすく、ひいては患者が体調に変調を来すという問題もある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来のクラスプを使用せずに、審美的、機能的に優れた義歯を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の義歯は、義歯床と、義歯床に固定された人工歯と、義歯床又は人工歯に固定され、義歯歯を残存歯に装着するにあたって下顎の残存歯の上に配置されるレストとを有する下顎用の義歯であって、前記レストは、下顎の残存歯の頬側咬頭の上に配置されることを特徴とする。
【0008】
このように、本発明では従来の義歯におけるクラスプの代わりにレストを設け、これを下顎の残存歯の上に配置することで、義歯を残存歯に取り付けるとともに、咬合時等に人工歯に加わる荷重を残存歯にも分散させ負担させるようにしている。
【0009】
さらに、レストの配置位置を下顎の残存歯の頬側咬頭の上とすることで、レストを介して残存歯に加わる荷重が、図10に示すように残存歯どうしの適正な噛み合わせ時の荷重の加わり方と同じとなるようにし、残存歯に過度の負担がかからないようにしている。すなわち、残存歯どうしでは、図10に示すように、上顎側残存歯5aの溝5a−1と下顎側残存歯5bの頬側咬頭5b−1とが突き当たるような噛み合わせが適正であり、残存歯への負担が少ないとされている。これに対して、従来の義歯では図9に示すように、クラスプ3の鉤3aは下顎側の残存歯5の溝に載置されている。したがって、下顎側の残存歯5では、その溝部分で人工歯に加わった荷重を受けることになり、図10で説明した残存歯どうしにおける適正な噛み合わせとは異なる場所に荷重が加わり、残存歯5に負担がかかることになる。本発明では、上記のように、レストの配置位置を下顎側の残存歯の頬側咬頭上とすることで、残存歯どうしの適正な噛み合わせ時の荷重の加わり方と同じとなるようにし、残存歯に過度の負担がかからないようにしている。
【0010】
また、本発明の義歯は、義歯床と、義歯床に固定された人工歯とを有する上顎用の義歯であって、人工歯を残存する残存歯に装着した際に生じる隙間を埋める着脱可能な部分床をさらに有することを特徴とする。残存歯にはアンダーカットの部分があるので、義歯床に固定された人工歯を装着しただけでは、どうしても隙間が生じる。本発明は、人工歯を固定した義歯床とは別体の部分床を有し、この部分床によって前記の隙間を埋めるようにしたものである。
【0011】
さらに、本発明の義歯は、義歯床と、義歯床に固定された人工歯とを有する下顎用の義歯であって、前記義歯床の舌小帯に対応する部分に隆起部を設けたことを特徴とする。すなわち、安静位での舌の位置形態を想定し、その位置に楽に収まるように、義歯床の舌小帯に対応する部分にテーブル状の隆起部を設けた。具体的には、舌側の歯頸部から舌小帯まで舌の表面形態に合わせるよう従来の義歯床より膨らませる。その膨らみは、前歯部から臼歯部にかけて移行的に小さくし、臼歯部以降はほぼ無くなるようにする。このように、義歯床の舌小帯に対応する部分に隆起部を設けることで、義歯装着時、前記隆起部に舌が載るような形になり、義歯が浮かないようになって安定性が良くなる。
【0012】
また、本発明の義歯は、義歯床と、義歯床に固定された人工歯とを有する義歯であって、前記義歯床の床縁に溝を形成したことを特徴とする。これは、義歯床の床縁に溝を形成すると、義歯装着時の違和感が著しく軽減されるという臨床的事実に基づくものである。この床縁に溝を形成した義歯床は、局部床義歯のみならず、総義歯にも適用できる。また、溝は、床縁の全周にわたって形成しても良いし、一部に形成しても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
【0014】
(実施例1)
図1は、本発明に係るレストを有する義歯を示し、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。同図に示す義歯は、下顎用の義歯で、義歯床1と、義歯床に固定された人工歯2と、義歯床1に固定されたレスト6とからなる。
【0015】
義歯床1は、義歯装着時に天然歯が欠損した後の歯槽堤の粘膜に接して義歯に加わる荷重を伝達し負担させるとともに、義歯を維持、安定させるものである。また、人工歯2を固定して欠損した天然歯を形態的、機能的に回復させるものである。そして、この義歯床1の頬側の床縁には溝7を形成している。溝の幅や深さは、義歯床の大きさや厚さ等によって変化するが、その範囲としては、幅は0.5〜10mm程度、深さは0.1〜3mm程度である。なお、義歯床1の材料としては、レジン或いは金属を使用する。
【0016】
人工歯2は、欠損した天然歯を人工的に補うもので、陶材、レジンあるいは金属からなる。
【0017】
レスト6は、義歯を残存歯に装着するにあたって残存歯の上に配置されるものであって、義歯を安定させるとともに、義歯に加わる荷重を残存歯に分散して負担させるものである。レスト6の材料としては、ステンレス鋼などの錆びにくい材料を使用する。実施例では、直径1.2mmでステンレスワイヤーを使用し、レスト6の長さは2.0mmとしている。
【0018】
図2は、図1の義歯を下顎側の残存歯に装着した状態を示す平面図で、残存歯と区別するため義歯は斜線で示している。図3は、レストの装着状態を示す縦断面図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、義歯を装着した状態において、レスト6は、下顎の残存歯5bの頬側咬頭5b−1に形成されたレスト装着溝5b−2内に配置される。これによって、先に説明したように、レスト6を介して残存歯5bに加わる荷重が、残存歯どうしの適正な噛み合わせ時の荷重の加わり方と同じとなり、残存歯に過度の負担がかからないようになる。さらに、本実施例では図3に示すように、レスト6は、レスト装着溝5b−2で遊びがあるように装着され、レスト6がレスト装着溝5b−2の底部に当接しないようになっている。このように遊びを持ってレスト6をレスト装着溝5b−2に装着することによって、咬合しないときは残存歯5bに荷重が加わらないので、残存歯5bへの負担がより一層軽減される。
【0020】
また、本実施例のように、義歯床1の床縁に溝7を形成したものと、比較例として義歯床の床縁に溝を形成していないものとを、複数の患者に装着してもらったところ、比較例に比べて、義歯床1の床縁に溝7を形成した本実施例のものは、装着時の違和感が著しく低減されることが確認された。
【0021】
(実施例2)
実施例1では、局部床義歯の義歯床の床縁に溝を形成したが、本実施例は、総義歯の義歯床の床縁に溝を形成したものである。図4は、その実施例を示す総義歯の平面図である。同図において、総義歯の義歯床1の咽頭側の床縁に溝7が形成されている。これによって、実施例1の局部床義歯と同様に、装着時の違和感が著しく低減される。
【0022】
(実施例3)
図5は、本発明に係る部分床を有する義歯を示す斜視図である。同図に示す義歯は、上顎用の義歯で、義歯床1と、義歯床1に固定された人工歯2と、義歯床1とは別体の部分床8とからなる。義歯床1は、義歯を装着したときに歯槽堤の前側に位置する前方義歯床1aと歯槽堤の後側に位置する後方義歯床1bとからなる。
【0023】
図6は、図5の義歯を装着する手順を示す説明図で、(a)は、義歯床に固定された人工歯のみを装着した状態を示し、(b)はその後に部分床を装着した状態を示す。図6(a)に示すように、義歯床1に固定された人工歯2のみを装着しただけでは、歯槽又は残存歯5aと義歯床1又は人工歯2との間に隙間を生じるが、部分床8を装着することで、図6(b)に示すように、その隙間が埋められて審美的、機能的にも良好な状態となる。また、部分床8は、義歯床1と別体で着脱可能であるので、義歯の着脱が容易であり、しかも、部分床8自体は繰り返して使用することができる。
【0024】
(実施例4)
図7は、義歯床の舌小帯に対応する部分に隆起部を設けた本発明に係る義歯を示し、(a)は斜視図、(b)はA−A断面図である。また、図8は、従来の義歯を示し、(a)は斜視図、(b)はB−B断面図である。
【0025】
図7に示す本実施例の義歯は、下顎用の総義歯であり、義歯床1と人工歯2とからなる。そして、図8に示す従来の義歯の義歯床の舌小帯に対応する部分は平坦であるが、本実施例の義歯の義歯床1の舌小帯に対応する部分には隆起部9が設けられている。
【0026】
このように義歯床1の舌小帯に対応する部分に隆起部9を設けることで、義歯装着時にこの隆起部9に舌が載るような形になり、義歯が浮かなくなって安定性が良くなる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0028】
(1)クラスプを有していないので、従来のクラスプによる審美的、機能的な問題が解消される。
【0029】
(2)レストの配置位置を下顎の残存歯の頬側咬頭の上としているので、レストを介して残存歯に加わる荷重が、残存歯どうしの適正な噛み合わせ時の荷重の加わり方と同じとなり、残存歯に過度の負担がかからない。
【0030】
(3)義歯を残存する残存歯に装着した際に生じる隙間を埋める着脱可能な部分床を有しているので、義歯装着時に隙間が生じることがなく、審美的、機能的にも良好となる。
【0031】
(4)義歯床の舌小帯に対応する部分に隆起部を設けているので、義歯装着時に義歯が浮きにくくなり安定性が良くなる。
【0032】
(5)義歯床の床縁に溝を形成したので、義歯装着時の違和感が著しく軽減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレストを有する義歯を示し、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図2】図1の義歯を下顎側の残存歯に装着した状態を示す平面図である。
【図3】レストの装着状態を示す縦断面図である。
【図4】総義歯の義歯床の床縁に溝を形成した実施例の平面図である。
【図5】本発明に係る部分床を有する義歯を示す斜視図である。
【図6】図4の義歯を装着する手順を示す説明図で、(a)は義歯床に固定された人工歯のみを装着した状態を示し、(b)はその後に部分床を装着した状態を示す。
【図7】義歯床の舌小帯に対応する部分に隆起部を設けた本発明に係る義歯を示し、(a)は斜視図、(b)はA−A断面図である。
【図8】従来の義歯を示し、(a)は斜視図、(b)はB−B断面図である。
【図9】非特許文献1に記載されている下顎用の義歯の装着状態を示す平面図である。
【図10】残存歯どうしの適正な噛み合わせの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 義歯床
1a 前方義歯床
1b 後方義歯床
2 人工歯
3 クラスプ
4 連結子
5 残存歯
5a 上顎側残存歯
5a−1 上顎側残存歯の溝
5b 下顎側残存歯
5b−1 下顎側残存歯の頬側咬頭
6 レスト
7 義歯床床縁の溝
8 部分床
9 隆起部
Claims (5)
- 義歯床と、義歯床に固定された人工歯と、義歯床又は人工歯に固定され、義歯を残存歯に装着するにあたって下顎の残存歯の上に配置されるレストとを有する下顎用の義歯であって、前記レストは、下顎の残存歯の頬側咬頭の上に配置されることを特徴とする義歯。
- 義歯床と、義歯床に固定された人工歯とを有する上顎用の義歯であって、義歯を残存歯に装着した際に生じる隙間を埋める着脱可能な部分床をさらに有することを特徴とする義歯。
- 義歯床と、義歯床に固定された人工歯とを有する下顎用の義歯であって、前記義歯床の舌小帯に対応する部分に隆起部を設けたことを特徴とする義歯。
- 義歯床と、義歯床に固定された人工歯とを有する義歯であって、前記義歯床の床縁に溝を形成したことを特徴とする義歯。
- 前記義歯床の床縁に溝を形成した請求項1〜3の何れか1項に記載の義歯。
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