JP2004326995A - 磁気ヘッド用クリーニングテープ - Google Patents
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Abstract
【課題】高密度記録が可能な磁気記録再生システムに適応し、良好な電磁変換特性を保つために磁気ヘッドをクリーニングすることができ、特にコンピュータデータ記録用フォーマットに適合するクリーニングテープを提供する。
【解決手段】長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度を、SRa(中心線平均粗さ)で9.0nm〜13.0nmの範囲とし、SRmax(最大高さ)で120.0nm〜270.0nmの範囲とし、テープスティフネスを20〜56の範囲とした。
【選択図】 なし
【解決手段】長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度を、SRa(中心線平均粗さ)で9.0nm〜13.0nmの範囲とし、SRmax(最大高さ)で120.0nm〜270.0nmの範囲とし、テープスティフネスを20〜56の範囲とした。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体で、特にコンピュータデータを記録するために外部記録媒体として有利に用いられる磁気テープに係り、磁気ヘッド表面をクリーニングする事ができる磁気ヘッド用クリーニングテープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータデータを記録するための磁気テープ(バックアップテープ)などの磁気記録媒体用の磁気記録再生システムにおいて、より高密度で記録できるように、記録波長を短波長化したり、記録する際のトラック幅を狭くする傾向にあり、また大量の情報をより速く処理できるように、記録再生などの処理速度を高速化する傾向にある。
【0003】
一方、磁気テープ自体は、より大きな記録容量を達成するために益々薄型化する傾向にある。従って、このような薄型化された磁気テープであっても従来に増して高い走行耐久性が必要になる。また高密度記録用として開発されたシステムにおいては、僅かなテープの変形が安定な走行性を妨げる原因になったり、また磁気ヘッドとの接触状態(所謂、ヘッド当り)に影響を与え、出力低下の発生の原因になるなどの問題も生じ易くなる。このため、磁気ヘッドと磁気テープの接触状態は、常に良好な状態に保たなければならない。
【0004】
一般に磁気テープは、合成樹脂などの可撓性の支持体上に磁性層が設けられた構成である。また、より高い記録密度を達成させるために、支持体上に非磁性層を設け、更にこの上に薄い磁性層を設けた構成の磁気テープも提案されている。そして一般に良好な感度を維持させるためには磁性層の表面は平滑であることが好ましいが、この平滑化による巻き乱れや走行性の悪化を防止するために、支持体の磁性層とは反対側の面にバックコート層が設けられている。
【0005】
支持体の一方の面に磁性層を有し、そして他方の面にバックコート層が設けられた構成の磁気テープは、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。また、支持体の一方の面に非磁性層及び薄い磁性層が順に設けられ、そして該支持体の他方の面にバックコート層が設けられた構成の磁気テープは、例えば、特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−215350号公報
【0007】
【特許文献2】特開平5−21714号公報
【0008】
【特許文献3】特開平5−182178号公報
【0009】
【特許文献4】特開昭60−238179号公報
【0010】
【特許文献5】特公平1−46186号公報
【0011】
【特許文献6】特開平2−265672号公報
【0012】
【特許文献7】特開昭63−88080号公報
【0013】
【特許文献8】特開平2−17921号公報
【0014】
【特許文献9】特開平2−174965号公報。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
磁気ヘッドと磁気テープの間に異物が堆積してしまうと、スペーシングロスを生み出し、出力の低下を引き起こしてしまい、ひどい場合には記録再生が出来なくなる事がある。
【0016】
本発明は、磁気テープについて、上記のように磁気ヘッド上に異物が堆積してしまった際に、それを取り除く効果を持ったテープの検討を行った。その検討によると、最近の磁気記録システムでは、テープの薄型化に伴って該システム内でのハンドリングテンションを低く設定している。また、磁気テープの出力をより大きくするために、磁気テープの表面粗さは平滑になるようにコントロールしている。
【0017】
このため、磁気ヘッドと磁気テープがコンタクトする際の圧力は低くなり、磁気ヘッド上へのダストや磁気テープからの脱落粉、及び磁気ヘッド上を磁気テープが摺動する事によって磁気ヘッドが汚れやすくなる事が判明した。即ち、記録波長の短波長化に伴いテープの表面は平滑になり、磁気ヘッド上に汚れが発生すると、磁気テープへの記録再生が出来なくなる。
【0018】
汚れた磁気ヘッドは、クリーニングをして汚れを取ってやる事で再度記録再生を行える状態に回復させる事が出来る。磁気ヘッドをクリーニングするために磁気テープに適度な表面粗度を与え、ヘッド表面への研磨力を与えることと、スティフネスを調整することで磁気ヘッドとの接触形状を良くすることで解決できる事が解かった。
【0019】
本発明の目的は、高密度記録が可能な磁気記録再生システムに適応し、良好な電磁変換特性を保つために磁気ヘッドをクリーニングすることを目的としたテープを提供する事である。特にコンピュータデータ記録用フォーマットに適合するクリーニングテープを提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRa(中心線平均粗さ)で9.0nm〜13.0nmの範囲にあることを特徴としている。
【0021】
また本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、長尺状の支持体の一方の面に非磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmax(最大高さ)で120.0nm〜270.0nmの範囲にあることを特徴としている。
【0022】
また本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、前記において、テープスティフネスが20〜56の範囲にあることを特徴としている。
【0023】
本明細書において、本発明の磁気テープの表面粗度の値は、例えば、所望の幅で1m長の磁気テープの一端を試験環境(23℃±2℃、50%±10%RH(相対湿度))で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央より下側に長さ15mmを切り出して測定試料を作成し、この測定試料を、例えば、三次元表面粗さ解析装置 ET−30K(小坂研究所製)にてSRa(中心線平均粗さ)、SRmax(最大高さ)を測定した値とする。
【0024】
また、本発明の磁気テープのスティフネス量は、例えば以下の手順で求めた値を意味する。すなわち、所望の幅で1m長の磁気テープの一端を試験環境(23℃±2℃、50%±10%RH)で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央より下側に長さが120mmとなるように切り出して測定試料を作成する。これをスティフネス測定機 MODEL SG−3910(ソニー製)にて測定を行ない、それらの値の平均値をテープのスティフネス量とする。
【0025】
尚、前記スティフネスは、磁気テープに加わる外力fとテープ変形量xの比であり(スティフネスS=f/x)、また、ヤング率をE、テープ厚みをTとするならば、スティフネスS=E×T3なる関係にある。
【0026】
本発明の磁気テープは以下の態様であることが好ましい。
(1)磁気テープの磁性層の表面粗度がSRaで9.0nm〜13.0nmの範囲。更に好ましくは、10.0nm〜11.5nmである。
(2)磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmaxで120.0nm〜270.0nmの範囲。更に好ましくは、135.0nm〜200nmである。
(3)磁気テープの長手方向スティフネスが20〜56の範囲。
(4)支持体の長手方向のヤング率が600〜800kg/mm2。更に好ましくは、650〜750kg/mm2である。
(5)支持体の厚みが3.0〜10.0μm。更に好ましくは、3.5〜9.5μmの範囲にある。
(6)磁気テープの全厚が10.5〜11.5μmである。好ましくは10.8〜11.3μmである。
(7)バックコート層の厚みが0.2〜1.0μm。更に好ましくは、0.3〜0.8μmの範囲にある。
(8)バックコート層が、カーボンブラック、及びモース硬度5〜9の硬質無機粉末を含む。
(9)カーボンブラックが、10〜30μmの微粒子状カーボンブラックと200〜300μmの粗粒子状カーボンブラックの異なる平均粒子サイズを持つ二種類のカーボンブラックを含む。
(10)モース硬度5〜9の硬質無機粉末がα−アルミナまたはα−酸化鉄である。
(11)コンピュータデータ記録用の磁気テープである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRaで9.0nm〜13.0nmの範囲にあることを特徴とする磁気テープである。かつ、磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmaxで120.0nm〜270.0nmの範囲にあり、磁気テープスティフネスが20〜56のものである。
【0028】
本発明の磁気テープには、上記のような特徴を有する、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する単層磁性層の態様と、長尺状の支持体の一方の面に非磁性粉末及び結合剤を含む実質的に非磁性である厚さ1.0〜2.5μmの非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む厚さ0.10〜0.50μmの磁性層とをこの順に有し、そして他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する重層磁性層の態様が含まれる。
【0029】
まず、単層磁性層の態様の磁気テープを説明する。以下に、支持体、磁性層及びバックコート層を順に詳述する。支持体としては、従来から磁気テープの支持体材料として用いられているものを使用することができ、特に非磁性のものが好ましい。これらの例としては、ポリエステル類(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの混合物、エチレンテレフタレート成分とエチレンナフタレート成分を含む重合物)、ポリオレフィン類(例、ポリプロピレン)、セルロース誘導体類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ポリカーボネート、ポリアミド(中でも芳香族ポリアミド、アラミド)、ポリイミド(中でも全芳香族ポリイミド)などの合成樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0030】
支持体の長手方向のスティフネスが幅方向のスティフネスの1.1倍〜1.8倍、更に好ましくは、1.3倍〜1.8倍にあることが好ましい。また、支持体の長手方向のヤング率が600〜800kg/mm2 、更に好ましくは、650〜750kg/mm2 にあることが好ましい。
【0031】
支持体の厚みは、3.0〜10.0μm、更に好ましくは、3.5〜9.5μmの範囲にあることが好ましい。支持体の厚みが3.0μmより薄くなるとVTR走行時にエッジ部のダメージが発生しやすい。
【0032】
磁性層は、基本的には強磁性粉末及び結合剤から形成されている。また、磁性層には、通常、潤滑剤、導電性粉末(例、カーボンブラック)、及び研磨剤が含まれている。強磁性粉末としては、例えば、γ−Fe2O3 、Fe3O4 、FeOx(x=1.33〜1.5)、CrO2 、Co含有γ−Fe2O3 、Co含有FeOx(x=1.33〜1.5)、強磁性金属粉末(強磁性合金粉末)、及び板状六方晶フェライト粉末を挙げることができる。本発明においては、強磁性粉末として、強磁性金属粉末、あるいは板状六方晶フェライト粉末の使用が好ましい。特に好ましいものは、強磁性金属粉末である。
【0033】
上記強磁性金属粉末は、その粒子の比表面積が好ましくは30〜70m2 /gであって、X線回折法から求められる結晶子サイズは、50〜300オングストロームである。比表面積が余り小さいと高密度記録に充分に対応できなくなり、又余り大き過ぎても分散が充分に行えず、従って平滑な面の磁性層が形成できなくなるため同様に高密度記録に対応できなくなる。
【0034】
強磁性金属粉末は、少なくともFeを含むことが必要であり、具体的には、Fe、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Zn−Ni又はFe−Ni−Coを主体とした金属単体あるいは合金である。なお、Fe単独でも良い。またこれらの強磁性金属粉末の磁気特性については、高い記録密度を達成するために、その飽和磁化量(飽和磁束密度)(σs )は110emu/g以上、好ましくは120emu/g以上、170emu/g以下である。又保磁力(Hc)は、1400〜2500エルステッド(Oe)(好ましくは、1500〜2400Oe)の範囲である。
【0035】
また透過型電子顕微鏡により求められる粉末の長軸長(すなわち、平均粒子径)は、0.5μm以下、好ましくは、0.01〜0.3μmで軸比(長軸長/短軸長、針状比)は、5〜20、好ましくは、5〜15である。更に特性を改良するために、組成中にB、C、Al、Si、P等の非金属、もしくはその塩、酸化物が添加されることもある。通常、前記金属粉末の粒子表面は、化学的に安定させるために酸化物の層が形成されている。
【0036】
上記板状六方晶フェライト粉末は、その比表面積が25〜65m2 /g、板状比(板径/板厚)が2〜15、そして粒子サイズ(板径)が0.02〜1.0μmである。板状六方晶フェライト粉末は、強磁性金属粉末と同じ理由からその粒子サイズが大きすぎても小さすぎても高密度記録が難しくなる。
【0037】
板状六方晶フェライトとしては、平板状でその平板面に垂直な方向に磁化容易軸がある強磁性体であって、具体的には、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、及びそれらのコバルト置換体等を挙げることができる。これらの中では、特にバリウムフェライトのコバルト置換体、ストロンチウムフェライトのコバルト置換体が好ましい。
【0038】
板状六方晶フェライトには、更に必要に応じてその特性を改良するためにIn、Zn、Ge、Nb、V等の元素を添加してもよい。またこれらの板状六方晶フェライト粉末の磁気特性については、高い記録密度を達成するために、前記のような粒子サイズが必要であると同時に飽和磁化(σs )は少なくとも50emu/g以上、好ましくは53emu/g以上である。又保磁力(Hc)は、700〜2000エルステッド(Oe)の範囲であり、900〜1600Oeの範囲であることが好ましい。
【0039】
強磁性粉末の含水率は0.01〜2重量%とすることが好ましい。また結合剤の種類によって含水率を最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組み合わせにより最適化することが好ましく、そのpHは通常4〜12の範囲であり、好ましくは5〜10の範囲である。強磁性粉末は、必要に応じて、Al、Si、P又はこれらの酸化物などでその表面の一部が被覆されているものが好ましい。表面処理を施してもよい。表面処理を施す際のその使用量は、通常強磁性粉末に対して、0.1〜10重量%である。
【0040】
このように被覆された強磁性粉末は、脂肪酸などの潤滑剤の吸着を100mg/m2 以下に抑えらえるので、潤滑剤の磁性層への添加量を少なくしても所望の効果が達成できる。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、及びSrなどが無機イオンとして含まれる場合があるが、その含有量はできるだけ少ないことが好ましい。通常は500ppm以下であれば特性に影響を与えることはない。
【0041】
潤滑剤は、磁性層表面ににじみ出ることによって、磁性層表面と磁気ヘッドとの摩擦を緩和し、摺接状態を円滑に維持させるために添加される。潤滑剤としては、例えば、脂肪酸及び脂肪酸エステルを挙げることができる。脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、及びパルミトレイン酸等の脂肪族カルボン酸又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
また脂肪酸エステルとしては、例えば、ブチルステアレート、sec−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートとの混合物、オレイルオレエート、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、そしてグリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。上記のような脂肪酸、及び脂肪酸エステルは、単独であるいは二以上の化合物を組み合わせて使用することができる。潤滑剤の通常の含有量は、強磁性粉末100重量部に対して、0.2〜20重量部(好ましくは、0.3〜10重量部)の範囲にある。
【0043】
カーボンブラックは磁性層の表面電気抵抗(SR)の低減、動摩擦係数の低減、走行耐久性の向上、及び磁性層の平滑な表面性を確保する等の種々の目的で添加される。カーボンブラックは、その平均粒子径が5〜350μm(更に好ましくは、10〜300μm)の範囲にあることが好ましい。またその比表面積は、5〜500m2 /g(更に好ましくは、50〜300m2 /g)であることが好ましい。カーボンブラックは平均粒子径の異なるものを二種以上使用することができる。
【0044】
DBP吸油量は、10〜1000ml/100g(更に好ましくは、50〜150ml/100g)の範囲にあることが好ましい。またpHは、2〜10、含水率は、0.1〜10%であることが好ましい。
【0045】
カーボンブラックは様々な製法で得たものが使用できる。使用できるカーボンブラックの例としては、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックおよびランプブラックを挙げることができる。
【0046】
カーボンブラックの具体的な商品例としては、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72(以上、キャボット社製)、#35、#50、#55、#60及び#80(以上、旭カーボン(株)製)、#3950B、#3750B、#3250B、#2400B、#2300B、#1000、#900、#40、#30、及び#10B(以上、三菱化学(株)製)、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15(以上、コロンビアカーボン社製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−500およびケッチェンブラックECDJ−600(以上、ライオンアグゾ(株)製)を挙げることができる。
【0047】
カーボンブラックの通常の添加量は、強磁性粉末100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは、0.2〜15重量部の範囲にある。
【0048】
上記研磨剤としては、例えば、溶融アルミナ、炭化珪素、酸化クロム(Cr203 )、コランダム、人造コランダム、ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー(主成分:コランダムと磁鉄鉱)を挙げることができる。これらの研磨剤は、モース硬度5以上(好ましくは、6以上)であり、平均粒子径が、0.05〜1μmの大きさのもの(更に好ましくは、0.2〜0.8μm、特に0.2〜0.5μm)が好ましい。研磨剤の添加量は、通常強磁性粉末100重量部に対して、3〜25重量部(好ましくは、3〜20重量部)の範囲である。
【0049】
磁性層の結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、及びビニルエーテルを構成単位として含む重合体、あるいは共重合体を挙げることができる。
【0050】
共重合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタアクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタアクリル酸エステル−スチレン共重合体、塩ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロビニルエーテル−アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0051】
上記の他に、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロースなど)、ポリ弗化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂なども利用することができる。
【0052】
また熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物を挙げることができる。
【0053】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、及びイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネートを挙げることができる。
【0054】
上記ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、及びポリカプロラクトンポリウレタンなどの構造を有する公知のものが使用できる。
【0055】
本発明において、磁性層の結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、及びニトロセルロースの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、ポリウレタン樹脂との組合せ、あるいはこれらに更に硬化剤としてのポリイソシアネートを加えた組み合わせで構成されていることが好ましい。
【0056】
結合剤としては、より優れた分散性と得られる層の耐久性を得るために必要に応じて、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2(Mは水素原子、またはアルカリ金属を表わす。)、−OH、−NR2、−N+R3(Rは炭化水素基を表わす。)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくともひとつの極性基を共重合または付加反応で導入して用いることが好ましい。このような極性基は、結合剤に10−1〜10−8モル/g(さらに好ましくは、10−2〜10−6モル/g)の量で導入されていることが好ましい。
【0057】
磁性層中の結合剤は、強磁性粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部(好ましくは10〜30重量部)の範囲で用いられる。なお、磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシアネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。
【0058】
磁性層を形成するための塗布液には、磁性粉末を結合剤中に良好に分散させるために、分散剤を添加することができる。また必要に応じて、各層には、可塑剤、カーボンブラック以外の導電性粒子(帯電防止剤)、防黴剤などを添加することができる。
【0059】
分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数11〜17個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、及び銅フタロシアニン等を使用することができる。これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。分散剤は、磁性層に結合剤100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲で添加される。
【0060】
バックコート層はカーボンブラックと結合剤とから形成されている。また無機粉末や潤滑剤が更に添加されていることが好ましい。カーボンブラックは、平均粒子サイズの異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子サイズが10〜20μmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイズが230〜300μmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。
【0061】
一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。
【0062】
また微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、粒子サイズが230〜300μmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバック層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0063】
微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。RAVEN2000B(18μm)、RAVEN1500B(17μm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17μm)(キャボット社製)、PRINTEX90(14μm)、PRINTEX95(15μm)、PRINTEX85(16μm)、PRINTEX75(17μm)(以上、デグサ社製)、#3950(16μm)(三菱化学(株)製)。
【0064】
また粗粒子状カーボンブラックの具体的な商品の例としては、サーマルブラック(270μm)(カーンカルブ社製)、RAVEN MTP(275μm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。
【0065】
バックコート層において、平均粒子サイズの異なる二種類のものを使用する場合、10〜20μmの微粒子状カーボンブラックと230〜300μmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(重量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜85:15の範囲である。バックコート層中のカーボンブラック(その全量)の含有量は、結合剤100重量部に対して、通常30〜110重量部の範囲であり、好ましくは、50〜90重量部の範囲である。
【0066】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バックコート層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これをカーボンブラックと共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。またこの無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。硬質無機粉末は、その平均粒子サイズが80〜250μm(更に好ましくは、100〜210μm)の範囲にあることが好ましい。
【0067】
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2O3)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100重量部に対して通常3〜30重量部であり、好ましくは、3〜20重量部である。
【0068】
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、磁性層に記載した潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バックコート層において、潤滑剤は結合剤100重量部に対して通常1〜5重量部の範囲で添加される。またバックコート層に、磁性層に記載した分散剤を添加することもできる。分散剤の添加量は、磁性層に添加する量と同様な量とすることができる。
【0069】
バックコート層の結合剤は、前記磁性層に記載した結合剤を使用することができる。使用できる結合剤としては、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び硬化剤としてのポリイソシアネートを挙げることができる。本発明では、塩化ビニル系樹脂及び/又はフェノキシ樹脂(全結合剤中40〜90重量%、好ましくは、55〜80重量%)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び硬化剤としてのポリイソシアネートを組み合わせて使用することが好ましい。バックコート層の結合剤はカーボンブラック100重量部に対して、通常5〜250重量部(好ましくは、10〜200重量部)である。
【0070】
次に、重層磁性層の態様の磁気テープを説明する。重層磁性層態様の磁気テープは、基本的に、前述した単層磁性層の態様の磁気テープにおいて、その支持体と磁性層との間に、更に非磁性層が設けられた構成を有する。従って、非磁性層以外は、単層磁性層の態様の磁気テープと同様に構成することができる。
【0071】
非磁性層は、非磁性粉末及び結合剤を含む実質的に非磁性の層である。この非磁性層は、その上の磁性層の電磁変換特性に影響を与えないように実質的に非磁性であることが必要であるが、磁性層の電磁変換特性に悪影響を与えなければ磁性粉末が含まれていても特に問題とはならない。また非磁性層には通常、これらの成分以外に潤滑剤が含まれている。
【0072】
非磁性層で用いられる非磁性粉末としては、例えば、非磁性無機粉末、カーボンブラックを挙げることができる。非磁性無機粉末は、比較的硬いものが好ましく、モース硬度が5以上(更に好ましくは、6以上)のものが好ましい。これらの非磁性無機粉末の例としては、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウムを挙げることができる。これらは単独でまたは組合せて使用することができる。これらのうちでは、二酸化チタン、α−アルミナ、α−酸化鉄又は酸化クロムが好ましい。非磁性無機粉末の平均粒子径は、0.01〜1.0μm(好ましくは、0.01〜0.5μm、特に、0.02〜0.1μm)の範囲にあることが好ましい。
【0073】
カーボンブラックは、磁性層に導電性を付与して帯電を防止すると共に、非磁性層上に形成される磁性層の平滑な表面性を確保する目的で添加される。非磁性層で用いるカーボンブラックとしては前述した磁性層に含有させることができるカーボンブラックを使用することができる。但し、非磁性層で使用するカーボンブラックは、その平均粒子径が35μm以下(更に好ましくは、10〜35μm)であることが好ましい。カーボンブラックの通常の添加量は、全非磁性無機粉末100重量部に対して、3〜20重量部であり、好ましくは、4〜18重量部、更に好ましくは、5〜15重量部である。
【0074】
潤滑剤としては、前述した単層磁性層の態様の磁気テープの磁性層にて記載した脂肪酸、あるいは脂肪酸エステルを使用することができる。潤滑剤の通常の添加量は非磁性層の全非磁性粉末100重量部に対して、0.2〜20重量部の範囲である。
【0075】
非磁性層の結合剤としては、前述した磁性層にて記載した結合剤を用いることができる。結合剤は、非磁性層の非磁性粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部(好ましくは、10〜30重量部)の範囲である。なお、非磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。なお、非磁性層においても前述した磁性層に添加することができる任意成分を添加することができる。
【0076】
本発明の磁気テープは、以下の工程に従い製造することができる。
(工程1)
(1)磁性層、非磁性層、そしてバックコート層の各層の塗布液を調製する。
(2)前記調製した塗布液を、単層磁性層の態様の磁気テープの場合には磁性層用塗布液を、重層磁性層の態様の磁気テープの場合には非磁性層及び磁性層形成用塗布液を、それぞれ長尺状の支持体の一方の面に塗布する。重層磁性層の態様の磁気テープの場合に、磁性層及び非磁性層の形成方法は特に限定されないが、磁性層は、非磁性層用塗布液を支持体上に塗布後、形成された塗布層(非磁性層)が湿潤状態にあるうちにこの上に磁性層用塗布液を塗布する、所謂ウエット・オン・ウエット方式による塗布方法を利用して形成されたものであることが好ましい。
【0077】
上記ウエット・オン・ウエット方式による塗布方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(a)グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、あるいはエクストルージョン塗布装置などを用いて、支持体上にまず非磁性層を形成し、該非磁性層が湿潤状態にあるうちに、支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、磁性層を形成する方法(特許文献4、5、6参照)。
(b)二つの塗布液用スリットを備えた単一の塗布ヘッドからなる塗布装置を用いて支持体上に磁性層、及び非磁性層をほぼ同時に形成する方法(特許文献6、7、8参照)。
(c)バックアップローラ付きエクストルージョン塗布装置を用いて、支持体上に磁性層及び非磁性層をほぼ同時に形成する方法(特許文献9参照)。非磁性層及び磁性層は同時重層塗布法を利用して形成することが好ましい。
(3)磁性層、あるいは非磁性層及び磁性層を形成後、乾燥する。
(工程2)
(4)次に、支持体の他方の面にバックコート層形成用塗布液を塗布し、バックコート層を形成する。
(5)バックコート層を形成後、乾燥する。
【0078】
以上の工程で、幅広で長尺状の磁気記録積層体が製造される。
(工程3)
(6)磁気記録積層体をロールに巻き取る。
(7)カレンダ処理を行う。
(工程4)
(8)所定の幅に裁断する。
(9)所定のカートリッジに巻き込み、磁気テープを作製する。
【0079】
本発明の磁気テープのバックコート層の表面は、テープが巻かれた状態で磁性層の表面に転写される傾向にある。このためバックコート層の表面も比較的高い平滑性を有していることが好ましい。本発明の磁気テープのバックコート層の表面は、その表面粗さRa(カットオフ0.08mmの中心線平均粗さ)が、0.003〜0.060μmの範囲にあるように調整されていることが好ましい。なお、表面粗さは、通常塗膜形成後、カレンダーによる表面処理工程において、用いるカレンダロールの材質、その表面性、そして圧力等により、調節することができる。
【0080】
単層磁性層の態様の磁気テープの磁性層は、その厚みが、1.0〜2.5μm(更に好ましくは、1.2〜2.5μm、特に好ましくは、1.5〜2.5μm)の範囲にあることが好ましい。また磁気テープの全体の厚みは3〜12μm(好ましくは、5.5〜11.5μm)の範囲にある。また、バックコート層の厚みは、0.2〜1.0μm(更に好ましくは、0.3〜0.8μm)の範囲にあることが好ましい。
【0081】
重層磁性層の態様の磁気テープの磁性層は、その厚みが、0.10〜0.5μm(好ましくは、0.1〜0.30μm)の範囲にある。また、非磁性層の厚みは、1.0〜2.5μm(好ましくは、1.0〜2.0μm)の範囲にある。磁性層の厚みと非磁性層の厚みとの比は、1:2〜1:15(更に好ましくは、1:3〜1:10)の範囲にあることが好ましい。
【0082】
単層磁性層または重層磁性層の態様の磁気テープの全体の厚み及びバックコート層の厚みは、前記単層磁性層の態様の磁気テープと同じ範囲にあることが好ましい。また、磁性層の厚みとバックコート層の厚みとの比(Mag/Back比)は、2.5〜3.5の範囲にあることが好ましい。
【0083】
(実施形態例)
以下に、実施形態例及び比較例を記載し、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す「部」は、特に断らない限り「重量部」を表わす。
【0084】
[実施形態例1]
[磁性層形成用塗布液の調製]
(磁性層形成用成分)
強磁性金属粉末 100部
保磁力(Hc):1650エルステッド(Oe)
BET法による比表面積:56m2/g
結晶子サイズ:170Å
飽和磁化量(σs):130emu/g
粒子サイズ(平均長軸径):0.2μm
針状比:7.0
pH:9.0
極性基(−SO3 K基)含有塩化ビニル系共重合体 10部
−SO3 K基含有量:5×10−6モル/g、重合度350
エポキシ基含有量:モノマー単位で3.5重量%
(MR−110、日本ゼオン(株)製)
極性基(−SO3 Na基)含有ポリエステルポリウレタン樹脂 2.5部
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/ジフェニルメタン−4,
4’−ジイソシアネート(MDI)=0.9/2.6/1(重量比)
−SO3 Na基含有量:1×10−4モル/g
α−アルミナ(粒子サイズ:0.3μm) 10部
カーボンブラック(粒子サイズ:0.10μm) 3部
メチルエチルケトン 150部
シクロヘキサノン 50部。
【0085】
上記各成分を連続ニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を2.5部、及び下記の各成分を加えて十分混合させた後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層形成用塗布液を調製した。
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
トルエン 40部
[バックコート層形成用塗布液の調製]
(バックコート層形成用成分)
微粒子状カーボンブラック粉末 100部
(キャボット社製、BP−800、平均粒子サイズ:17μm)
粗粒子状カーボンブラック粉末 10部
(カーンカルブ社製、サーマルブラック、平均粒子サイズ:270μm)
α−アルミナ(硬質無機粉末) 5部
(平均粒子サイズ:200μm、モース硬度:9)
ニトロセルロース樹脂 140部
ポリウレタン樹脂 5部
ポリイソシアネート 40部
(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)
ポリエステル樹脂 5部
分散剤:オレイン酸銅 5部
メチルエチルケトン 2200部
シクロヘキサノン 300部。
【0086】
上記バックコート層を形成する各成分を連続ニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にトルエン600部加えて十分混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、バックコート層形成用塗布液を調製した。
【0087】
[磁気テープの作製]
得られた磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが1.0μmとなるようにポリエチレンナフタレート(PEN)製支持体[厚さ:8.0μm、長さ(MD)方向のヤング率700kg/mm2 、幅(TD)方向のヤング率600kg/mm2 、磁性層塗布面の中心線平均粗さRa(カットオフ値:0.25mm)6nm]上に塗布を行った。次いで、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに、配向処理を行った。その後、乾燥させることにより磁性層を形成した(工程1)。
【0088】
その後、該支持体の他方の面(磁性層とは反対面)に、上記バックコート層形成用塗布液を乾燥後の厚さが0.6μmとなるように塗布し、乾燥してバックコート層を設けて、支持体の一方の面に磁性層が、そして他方の面にバックコート層がそれぞれ設けられた磁気記録積層体ロールを得た(工程2)。
【0089】
金属ロールと樹脂ロールから構成される7段のカレンダー処理機(温度60℃、線圧150kg/cm2 )に通してカレンダー処理を行い、テンション5kg/mで巻き取った(工程3)。
【0090】
得られた磁気記録積層体ロールを70℃、20時間加熱処理を行なった。次いで、カレンダー処理後の磁気記録積層体ロールを1/2インチ幅にスリットし、本発明に従うコンピュータデータ記録用磁気テープ(以下、単に磁気テープという)を得た。得られた磁気テープをベータ型1/2インチカセットに290m巻き込んだ(工程4)。
【0091】
[実施形態例2]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度60℃、線圧100kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0092】
[実施形態例3]〜[実施形態例5]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度50℃、線圧200kg/cm2(実施形態例3)、150kg/cm2(実施形態例4)、100kg/cm2(実施形態例5)で処理し、ポリエチレンナフタレート(PEN)製支持体[厚さ:8.0μm、長さ(MD)方向のヤング率600kg/mm2 、幅(TD)方向のヤング率600kg/mm2 、磁性層塗布面の中心線平均粗さRa(カットオフ値:0.25mm)6nm]上に塗布を行ったこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0093】
[比較例1]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度90℃、線圧300kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0094】
[比較例2]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度90℃、線圧200kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0095】
[比較例3]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度60℃、線圧200kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0096】
[比較例4]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度50℃、線圧75kg/cm2で処理し、ポリエチレンナフタレート(PEN)製支持体[厚さ:8.0μm、長さ(MD)方向のヤング率550kg/mm2 、幅(TD)方向のヤング率600kg/mm2 、磁性層塗布面の中心線平均粗さRa(カットオフ値:0.25mm)6nm]上に塗布を行ったこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0097】
次の表1に各サンプルのカレンダー処理条件を示す。また表2に各サンプルの評価結果を示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
[クリーニングテープとしての評価]
得られた磁気テープを下記の評価方法にて評価した。
(1)磁気テープの磁性層側の表面粗度を測定した。磁気テープの一端を試験環境(23±2℃、50±10%RH)で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央付近を、長さ50mmを切り出して測定試料を作成し、この測定試料を三次元粗度形を用いてSRa(中心線平均粗さ)およびSRmax(最大高さ)を測定した。
(2)磁気テープの長手方向のスティフネスは、測定幅1/2インチ(12.65mm)で1m長の磁気テープの一端を試験環境(23±2℃、50±5%RH)で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央付近を、長さ50mmを切り出して測定試料を作成し、スティフネスの測定を行った。
(3)磁気ヘッドに対するクリーニング効果の評価は、ヘッドへの付着物を多く発生させる磁気テープをあらかじめ用意し、ベータ型カセットに巻き取ったのちソニー(株)社製テープドライブ GY−8240にて全長を記録走行させ、ヘッド面へのテープからの脱落などによる付着物があるのを確認した後、検討テープを30秒間走行させ、この時ヘッド面が全く汚れていない場合を二重丸、付着物がヘッド摺動面を覆っている面積が摺動面の15%以内の場合を○、付着物がヘッド摺動面を覆っている面積が摺動面の30%以内の場合を△、付着物がヘッド摺動面を覆っている面積が摺動面の50%以上の場合を×とした。
【0101】
上記表2の結果から、磁性層の表面粗度SRaが9.0nmから13.0nmに調整された本発明に従う磁気テープ(実施形態例1〜5)は、磁気ヘッドに対するクリーニング効果があり、粉落ちで覆われた磁気ヘッド上の付着物を取り除く効果が確認できた。特に、実施形態例2〜4は、磁気ヘッドに対する当たり特性も良く、クリーニング効果に優れていた。
【0102】
一方、比較例1の磁気テープの場合には、磁性層表面粗度が小さすぎるために、磁気ヘッド上の付着物を取り除く効果は無かった。比較例2、3は、磁気ヘッドとの当たり特性も悪く、また表面粗度SRaも小さいため、磁気ヘッド上の付着物を取り除く効果は無かった。比較例4は、スティフネスが小さすぎるため、磁気ヘッドとの当たり特性が悪くなり、偏った面積しかクリーニングできず、クリーニング効果は低かった。
【0103】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、磁気テープの磁性層の表面粗度SRaおよびSRmaxと長手方向のテープスティフネスを調整することにより、磁気テープからの粉落ち等の付着物で覆われた磁気ヘッド表面をクリーニングする事が出き、良好な状態に復帰させる事が可能なテープを供給する事が出来る。従って、高密度記録用の記録再生システムに適したクリーニングテープを得ることができる。特に本発明の磁気テープは、コンピュータデータ記録用に有利な磁気テープである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体で、特にコンピュータデータを記録するために外部記録媒体として有利に用いられる磁気テープに係り、磁気ヘッド表面をクリーニングする事ができる磁気ヘッド用クリーニングテープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータデータを記録するための磁気テープ(バックアップテープ)などの磁気記録媒体用の磁気記録再生システムにおいて、より高密度で記録できるように、記録波長を短波長化したり、記録する際のトラック幅を狭くする傾向にあり、また大量の情報をより速く処理できるように、記録再生などの処理速度を高速化する傾向にある。
【0003】
一方、磁気テープ自体は、より大きな記録容量を達成するために益々薄型化する傾向にある。従って、このような薄型化された磁気テープであっても従来に増して高い走行耐久性が必要になる。また高密度記録用として開発されたシステムにおいては、僅かなテープの変形が安定な走行性を妨げる原因になったり、また磁気ヘッドとの接触状態(所謂、ヘッド当り)に影響を与え、出力低下の発生の原因になるなどの問題も生じ易くなる。このため、磁気ヘッドと磁気テープの接触状態は、常に良好な状態に保たなければならない。
【0004】
一般に磁気テープは、合成樹脂などの可撓性の支持体上に磁性層が設けられた構成である。また、より高い記録密度を達成させるために、支持体上に非磁性層を設け、更にこの上に薄い磁性層を設けた構成の磁気テープも提案されている。そして一般に良好な感度を維持させるためには磁性層の表面は平滑であることが好ましいが、この平滑化による巻き乱れや走行性の悪化を防止するために、支持体の磁性層とは反対側の面にバックコート層が設けられている。
【0005】
支持体の一方の面に磁性層を有し、そして他方の面にバックコート層が設けられた構成の磁気テープは、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。また、支持体の一方の面に非磁性層及び薄い磁性層が順に設けられ、そして該支持体の他方の面にバックコート層が設けられた構成の磁気テープは、例えば、特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−215350号公報
【0007】
【特許文献2】特開平5−21714号公報
【0008】
【特許文献3】特開平5−182178号公報
【0009】
【特許文献4】特開昭60−238179号公報
【0010】
【特許文献5】特公平1−46186号公報
【0011】
【特許文献6】特開平2−265672号公報
【0012】
【特許文献7】特開昭63−88080号公報
【0013】
【特許文献8】特開平2−17921号公報
【0014】
【特許文献9】特開平2−174965号公報。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
磁気ヘッドと磁気テープの間に異物が堆積してしまうと、スペーシングロスを生み出し、出力の低下を引き起こしてしまい、ひどい場合には記録再生が出来なくなる事がある。
【0016】
本発明は、磁気テープについて、上記のように磁気ヘッド上に異物が堆積してしまった際に、それを取り除く効果を持ったテープの検討を行った。その検討によると、最近の磁気記録システムでは、テープの薄型化に伴って該システム内でのハンドリングテンションを低く設定している。また、磁気テープの出力をより大きくするために、磁気テープの表面粗さは平滑になるようにコントロールしている。
【0017】
このため、磁気ヘッドと磁気テープがコンタクトする際の圧力は低くなり、磁気ヘッド上へのダストや磁気テープからの脱落粉、及び磁気ヘッド上を磁気テープが摺動する事によって磁気ヘッドが汚れやすくなる事が判明した。即ち、記録波長の短波長化に伴いテープの表面は平滑になり、磁気ヘッド上に汚れが発生すると、磁気テープへの記録再生が出来なくなる。
【0018】
汚れた磁気ヘッドは、クリーニングをして汚れを取ってやる事で再度記録再生を行える状態に回復させる事が出来る。磁気ヘッドをクリーニングするために磁気テープに適度な表面粗度を与え、ヘッド表面への研磨力を与えることと、スティフネスを調整することで磁気ヘッドとの接触形状を良くすることで解決できる事が解かった。
【0019】
本発明の目的は、高密度記録が可能な磁気記録再生システムに適応し、良好な電磁変換特性を保つために磁気ヘッドをクリーニングすることを目的としたテープを提供する事である。特にコンピュータデータ記録用フォーマットに適合するクリーニングテープを提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRa(中心線平均粗さ)で9.0nm〜13.0nmの範囲にあることを特徴としている。
【0021】
また本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、長尺状の支持体の一方の面に非磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmax(最大高さ)で120.0nm〜270.0nmの範囲にあることを特徴としている。
【0022】
また本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、前記において、テープスティフネスが20〜56の範囲にあることを特徴としている。
【0023】
本明細書において、本発明の磁気テープの表面粗度の値は、例えば、所望の幅で1m長の磁気テープの一端を試験環境(23℃±2℃、50%±10%RH(相対湿度))で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央より下側に長さ15mmを切り出して測定試料を作成し、この測定試料を、例えば、三次元表面粗さ解析装置 ET−30K(小坂研究所製)にてSRa(中心線平均粗さ)、SRmax(最大高さ)を測定した値とする。
【0024】
また、本発明の磁気テープのスティフネス量は、例えば以下の手順で求めた値を意味する。すなわち、所望の幅で1m長の磁気テープの一端を試験環境(23℃±2℃、50%±10%RH)で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央より下側に長さが120mmとなるように切り出して測定試料を作成する。これをスティフネス測定機 MODEL SG−3910(ソニー製)にて測定を行ない、それらの値の平均値をテープのスティフネス量とする。
【0025】
尚、前記スティフネスは、磁気テープに加わる外力fとテープ変形量xの比であり(スティフネスS=f/x)、また、ヤング率をE、テープ厚みをTとするならば、スティフネスS=E×T3なる関係にある。
【0026】
本発明の磁気テープは以下の態様であることが好ましい。
(1)磁気テープの磁性層の表面粗度がSRaで9.0nm〜13.0nmの範囲。更に好ましくは、10.0nm〜11.5nmである。
(2)磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmaxで120.0nm〜270.0nmの範囲。更に好ましくは、135.0nm〜200nmである。
(3)磁気テープの長手方向スティフネスが20〜56の範囲。
(4)支持体の長手方向のヤング率が600〜800kg/mm2。更に好ましくは、650〜750kg/mm2である。
(5)支持体の厚みが3.0〜10.0μm。更に好ましくは、3.5〜9.5μmの範囲にある。
(6)磁気テープの全厚が10.5〜11.5μmである。好ましくは10.8〜11.3μmである。
(7)バックコート層の厚みが0.2〜1.0μm。更に好ましくは、0.3〜0.8μmの範囲にある。
(8)バックコート層が、カーボンブラック、及びモース硬度5〜9の硬質無機粉末を含む。
(9)カーボンブラックが、10〜30μmの微粒子状カーボンブラックと200〜300μmの粗粒子状カーボンブラックの異なる平均粒子サイズを持つ二種類のカーボンブラックを含む。
(10)モース硬度5〜9の硬質無機粉末がα−アルミナまたはα−酸化鉄である。
(11)コンピュータデータ記録用の磁気テープである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の磁気ヘッド用クリーニングテープは、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRaで9.0nm〜13.0nmの範囲にあることを特徴とする磁気テープである。かつ、磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmaxで120.0nm〜270.0nmの範囲にあり、磁気テープスティフネスが20〜56のものである。
【0028】
本発明の磁気テープには、上記のような特徴を有する、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する単層磁性層の態様と、長尺状の支持体の一方の面に非磁性粉末及び結合剤を含む実質的に非磁性である厚さ1.0〜2.5μmの非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む厚さ0.10〜0.50μmの磁性層とをこの順に有し、そして他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する重層磁性層の態様が含まれる。
【0029】
まず、単層磁性層の態様の磁気テープを説明する。以下に、支持体、磁性層及びバックコート層を順に詳述する。支持体としては、従来から磁気テープの支持体材料として用いられているものを使用することができ、特に非磁性のものが好ましい。これらの例としては、ポリエステル類(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの混合物、エチレンテレフタレート成分とエチレンナフタレート成分を含む重合物)、ポリオレフィン類(例、ポリプロピレン)、セルロース誘導体類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ポリカーボネート、ポリアミド(中でも芳香族ポリアミド、アラミド)、ポリイミド(中でも全芳香族ポリイミド)などの合成樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0030】
支持体の長手方向のスティフネスが幅方向のスティフネスの1.1倍〜1.8倍、更に好ましくは、1.3倍〜1.8倍にあることが好ましい。また、支持体の長手方向のヤング率が600〜800kg/mm2 、更に好ましくは、650〜750kg/mm2 にあることが好ましい。
【0031】
支持体の厚みは、3.0〜10.0μm、更に好ましくは、3.5〜9.5μmの範囲にあることが好ましい。支持体の厚みが3.0μmより薄くなるとVTR走行時にエッジ部のダメージが発生しやすい。
【0032】
磁性層は、基本的には強磁性粉末及び結合剤から形成されている。また、磁性層には、通常、潤滑剤、導電性粉末(例、カーボンブラック)、及び研磨剤が含まれている。強磁性粉末としては、例えば、γ−Fe2O3 、Fe3O4 、FeOx(x=1.33〜1.5)、CrO2 、Co含有γ−Fe2O3 、Co含有FeOx(x=1.33〜1.5)、強磁性金属粉末(強磁性合金粉末)、及び板状六方晶フェライト粉末を挙げることができる。本発明においては、強磁性粉末として、強磁性金属粉末、あるいは板状六方晶フェライト粉末の使用が好ましい。特に好ましいものは、強磁性金属粉末である。
【0033】
上記強磁性金属粉末は、その粒子の比表面積が好ましくは30〜70m2 /gであって、X線回折法から求められる結晶子サイズは、50〜300オングストロームである。比表面積が余り小さいと高密度記録に充分に対応できなくなり、又余り大き過ぎても分散が充分に行えず、従って平滑な面の磁性層が形成できなくなるため同様に高密度記録に対応できなくなる。
【0034】
強磁性金属粉末は、少なくともFeを含むことが必要であり、具体的には、Fe、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Zn−Ni又はFe−Ni−Coを主体とした金属単体あるいは合金である。なお、Fe単独でも良い。またこれらの強磁性金属粉末の磁気特性については、高い記録密度を達成するために、その飽和磁化量(飽和磁束密度)(σs )は110emu/g以上、好ましくは120emu/g以上、170emu/g以下である。又保磁力(Hc)は、1400〜2500エルステッド(Oe)(好ましくは、1500〜2400Oe)の範囲である。
【0035】
また透過型電子顕微鏡により求められる粉末の長軸長(すなわち、平均粒子径)は、0.5μm以下、好ましくは、0.01〜0.3μmで軸比(長軸長/短軸長、針状比)は、5〜20、好ましくは、5〜15である。更に特性を改良するために、組成中にB、C、Al、Si、P等の非金属、もしくはその塩、酸化物が添加されることもある。通常、前記金属粉末の粒子表面は、化学的に安定させるために酸化物の層が形成されている。
【0036】
上記板状六方晶フェライト粉末は、その比表面積が25〜65m2 /g、板状比(板径/板厚)が2〜15、そして粒子サイズ(板径)が0.02〜1.0μmである。板状六方晶フェライト粉末は、強磁性金属粉末と同じ理由からその粒子サイズが大きすぎても小さすぎても高密度記録が難しくなる。
【0037】
板状六方晶フェライトとしては、平板状でその平板面に垂直な方向に磁化容易軸がある強磁性体であって、具体的には、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、及びそれらのコバルト置換体等を挙げることができる。これらの中では、特にバリウムフェライトのコバルト置換体、ストロンチウムフェライトのコバルト置換体が好ましい。
【0038】
板状六方晶フェライトには、更に必要に応じてその特性を改良するためにIn、Zn、Ge、Nb、V等の元素を添加してもよい。またこれらの板状六方晶フェライト粉末の磁気特性については、高い記録密度を達成するために、前記のような粒子サイズが必要であると同時に飽和磁化(σs )は少なくとも50emu/g以上、好ましくは53emu/g以上である。又保磁力(Hc)は、700〜2000エルステッド(Oe)の範囲であり、900〜1600Oeの範囲であることが好ましい。
【0039】
強磁性粉末の含水率は0.01〜2重量%とすることが好ましい。また結合剤の種類によって含水率を最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組み合わせにより最適化することが好ましく、そのpHは通常4〜12の範囲であり、好ましくは5〜10の範囲である。強磁性粉末は、必要に応じて、Al、Si、P又はこれらの酸化物などでその表面の一部が被覆されているものが好ましい。表面処理を施してもよい。表面処理を施す際のその使用量は、通常強磁性粉末に対して、0.1〜10重量%である。
【0040】
このように被覆された強磁性粉末は、脂肪酸などの潤滑剤の吸着を100mg/m2 以下に抑えらえるので、潤滑剤の磁性層への添加量を少なくしても所望の効果が達成できる。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、及びSrなどが無機イオンとして含まれる場合があるが、その含有量はできるだけ少ないことが好ましい。通常は500ppm以下であれば特性に影響を与えることはない。
【0041】
潤滑剤は、磁性層表面ににじみ出ることによって、磁性層表面と磁気ヘッドとの摩擦を緩和し、摺接状態を円滑に維持させるために添加される。潤滑剤としては、例えば、脂肪酸及び脂肪酸エステルを挙げることができる。脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、及びパルミトレイン酸等の脂肪族カルボン酸又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
また脂肪酸エステルとしては、例えば、ブチルステアレート、sec−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートとの混合物、オレイルオレエート、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、そしてグリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。上記のような脂肪酸、及び脂肪酸エステルは、単独であるいは二以上の化合物を組み合わせて使用することができる。潤滑剤の通常の含有量は、強磁性粉末100重量部に対して、0.2〜20重量部(好ましくは、0.3〜10重量部)の範囲にある。
【0043】
カーボンブラックは磁性層の表面電気抵抗(SR)の低減、動摩擦係数の低減、走行耐久性の向上、及び磁性層の平滑な表面性を確保する等の種々の目的で添加される。カーボンブラックは、その平均粒子径が5〜350μm(更に好ましくは、10〜300μm)の範囲にあることが好ましい。またその比表面積は、5〜500m2 /g(更に好ましくは、50〜300m2 /g)であることが好ましい。カーボンブラックは平均粒子径の異なるものを二種以上使用することができる。
【0044】
DBP吸油量は、10〜1000ml/100g(更に好ましくは、50〜150ml/100g)の範囲にあることが好ましい。またpHは、2〜10、含水率は、0.1〜10%であることが好ましい。
【0045】
カーボンブラックは様々な製法で得たものが使用できる。使用できるカーボンブラックの例としては、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックおよびランプブラックを挙げることができる。
【0046】
カーボンブラックの具体的な商品例としては、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72(以上、キャボット社製)、#35、#50、#55、#60及び#80(以上、旭カーボン(株)製)、#3950B、#3750B、#3250B、#2400B、#2300B、#1000、#900、#40、#30、及び#10B(以上、三菱化学(株)製)、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15(以上、コロンビアカーボン社製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−500およびケッチェンブラックECDJ−600(以上、ライオンアグゾ(株)製)を挙げることができる。
【0047】
カーボンブラックの通常の添加量は、強磁性粉末100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは、0.2〜15重量部の範囲にある。
【0048】
上記研磨剤としては、例えば、溶融アルミナ、炭化珪素、酸化クロム(Cr203 )、コランダム、人造コランダム、ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー(主成分:コランダムと磁鉄鉱)を挙げることができる。これらの研磨剤は、モース硬度5以上(好ましくは、6以上)であり、平均粒子径が、0.05〜1μmの大きさのもの(更に好ましくは、0.2〜0.8μm、特に0.2〜0.5μm)が好ましい。研磨剤の添加量は、通常強磁性粉末100重量部に対して、3〜25重量部(好ましくは、3〜20重量部)の範囲である。
【0049】
磁性層の結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、及びビニルエーテルを構成単位として含む重合体、あるいは共重合体を挙げることができる。
【0050】
共重合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタアクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタアクリル酸エステル−スチレン共重合体、塩ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロビニルエーテル−アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0051】
上記の他に、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロースなど)、ポリ弗化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂なども利用することができる。
【0052】
また熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物を挙げることができる。
【0053】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、及びイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネートを挙げることができる。
【0054】
上記ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、及びポリカプロラクトンポリウレタンなどの構造を有する公知のものが使用できる。
【0055】
本発明において、磁性層の結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、及びニトロセルロースの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、ポリウレタン樹脂との組合せ、あるいはこれらに更に硬化剤としてのポリイソシアネートを加えた組み合わせで構成されていることが好ましい。
【0056】
結合剤としては、より優れた分散性と得られる層の耐久性を得るために必要に応じて、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2(Mは水素原子、またはアルカリ金属を表わす。)、−OH、−NR2、−N+R3(Rは炭化水素基を表わす。)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくともひとつの極性基を共重合または付加反応で導入して用いることが好ましい。このような極性基は、結合剤に10−1〜10−8モル/g(さらに好ましくは、10−2〜10−6モル/g)の量で導入されていることが好ましい。
【0057】
磁性層中の結合剤は、強磁性粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部(好ましくは10〜30重量部)の範囲で用いられる。なお、磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシアネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。
【0058】
磁性層を形成するための塗布液には、磁性粉末を結合剤中に良好に分散させるために、分散剤を添加することができる。また必要に応じて、各層には、可塑剤、カーボンブラック以外の導電性粒子(帯電防止剤)、防黴剤などを添加することができる。
【0059】
分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数11〜17個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、及び銅フタロシアニン等を使用することができる。これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。分散剤は、磁性層に結合剤100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲で添加される。
【0060】
バックコート層はカーボンブラックと結合剤とから形成されている。また無機粉末や潤滑剤が更に添加されていることが好ましい。カーボンブラックは、平均粒子サイズの異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子サイズが10〜20μmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイズが230〜300μmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。
【0061】
一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。
【0062】
また微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、粒子サイズが230〜300μmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバック層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0063】
微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。RAVEN2000B(18μm)、RAVEN1500B(17μm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17μm)(キャボット社製)、PRINTEX90(14μm)、PRINTEX95(15μm)、PRINTEX85(16μm)、PRINTEX75(17μm)(以上、デグサ社製)、#3950(16μm)(三菱化学(株)製)。
【0064】
また粗粒子状カーボンブラックの具体的な商品の例としては、サーマルブラック(270μm)(カーンカルブ社製)、RAVEN MTP(275μm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。
【0065】
バックコート層において、平均粒子サイズの異なる二種類のものを使用する場合、10〜20μmの微粒子状カーボンブラックと230〜300μmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(重量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜85:15の範囲である。バックコート層中のカーボンブラック(その全量)の含有量は、結合剤100重量部に対して、通常30〜110重量部の範囲であり、好ましくは、50〜90重量部の範囲である。
【0066】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バックコート層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これをカーボンブラックと共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。またこの無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。硬質無機粉末は、その平均粒子サイズが80〜250μm(更に好ましくは、100〜210μm)の範囲にあることが好ましい。
【0067】
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2O3)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100重量部に対して通常3〜30重量部であり、好ましくは、3〜20重量部である。
【0068】
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、磁性層に記載した潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バックコート層において、潤滑剤は結合剤100重量部に対して通常1〜5重量部の範囲で添加される。またバックコート層に、磁性層に記載した分散剤を添加することもできる。分散剤の添加量は、磁性層に添加する量と同様な量とすることができる。
【0069】
バックコート層の結合剤は、前記磁性層に記載した結合剤を使用することができる。使用できる結合剤としては、ニトロセルロース樹脂、塩化ビニル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び硬化剤としてのポリイソシアネートを挙げることができる。本発明では、塩化ビニル系樹脂及び/又はフェノキシ樹脂(全結合剤中40〜90重量%、好ましくは、55〜80重量%)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び硬化剤としてのポリイソシアネートを組み合わせて使用することが好ましい。バックコート層の結合剤はカーボンブラック100重量部に対して、通常5〜250重量部(好ましくは、10〜200重量部)である。
【0070】
次に、重層磁性層の態様の磁気テープを説明する。重層磁性層態様の磁気テープは、基本的に、前述した単層磁性層の態様の磁気テープにおいて、その支持体と磁性層との間に、更に非磁性層が設けられた構成を有する。従って、非磁性層以外は、単層磁性層の態様の磁気テープと同様に構成することができる。
【0071】
非磁性層は、非磁性粉末及び結合剤を含む実質的に非磁性の層である。この非磁性層は、その上の磁性層の電磁変換特性に影響を与えないように実質的に非磁性であることが必要であるが、磁性層の電磁変換特性に悪影響を与えなければ磁性粉末が含まれていても特に問題とはならない。また非磁性層には通常、これらの成分以外に潤滑剤が含まれている。
【0072】
非磁性層で用いられる非磁性粉末としては、例えば、非磁性無機粉末、カーボンブラックを挙げることができる。非磁性無機粉末は、比較的硬いものが好ましく、モース硬度が5以上(更に好ましくは、6以上)のものが好ましい。これらの非磁性無機粉末の例としては、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウムを挙げることができる。これらは単独でまたは組合せて使用することができる。これらのうちでは、二酸化チタン、α−アルミナ、α−酸化鉄又は酸化クロムが好ましい。非磁性無機粉末の平均粒子径は、0.01〜1.0μm(好ましくは、0.01〜0.5μm、特に、0.02〜0.1μm)の範囲にあることが好ましい。
【0073】
カーボンブラックは、磁性層に導電性を付与して帯電を防止すると共に、非磁性層上に形成される磁性層の平滑な表面性を確保する目的で添加される。非磁性層で用いるカーボンブラックとしては前述した磁性層に含有させることができるカーボンブラックを使用することができる。但し、非磁性層で使用するカーボンブラックは、その平均粒子径が35μm以下(更に好ましくは、10〜35μm)であることが好ましい。カーボンブラックの通常の添加量は、全非磁性無機粉末100重量部に対して、3〜20重量部であり、好ましくは、4〜18重量部、更に好ましくは、5〜15重量部である。
【0074】
潤滑剤としては、前述した単層磁性層の態様の磁気テープの磁性層にて記載した脂肪酸、あるいは脂肪酸エステルを使用することができる。潤滑剤の通常の添加量は非磁性層の全非磁性粉末100重量部に対して、0.2〜20重量部の範囲である。
【0075】
非磁性層の結合剤としては、前述した磁性層にて記載した結合剤を用いることができる。結合剤は、非磁性層の非磁性粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部(好ましくは、10〜30重量部)の範囲である。なお、非磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。なお、非磁性層においても前述した磁性層に添加することができる任意成分を添加することができる。
【0076】
本発明の磁気テープは、以下の工程に従い製造することができる。
(工程1)
(1)磁性層、非磁性層、そしてバックコート層の各層の塗布液を調製する。
(2)前記調製した塗布液を、単層磁性層の態様の磁気テープの場合には磁性層用塗布液を、重層磁性層の態様の磁気テープの場合には非磁性層及び磁性層形成用塗布液を、それぞれ長尺状の支持体の一方の面に塗布する。重層磁性層の態様の磁気テープの場合に、磁性層及び非磁性層の形成方法は特に限定されないが、磁性層は、非磁性層用塗布液を支持体上に塗布後、形成された塗布層(非磁性層)が湿潤状態にあるうちにこの上に磁性層用塗布液を塗布する、所謂ウエット・オン・ウエット方式による塗布方法を利用して形成されたものであることが好ましい。
【0077】
上記ウエット・オン・ウエット方式による塗布方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(a)グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、あるいはエクストルージョン塗布装置などを用いて、支持体上にまず非磁性層を形成し、該非磁性層が湿潤状態にあるうちに、支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、磁性層を形成する方法(特許文献4、5、6参照)。
(b)二つの塗布液用スリットを備えた単一の塗布ヘッドからなる塗布装置を用いて支持体上に磁性層、及び非磁性層をほぼ同時に形成する方法(特許文献6、7、8参照)。
(c)バックアップローラ付きエクストルージョン塗布装置を用いて、支持体上に磁性層及び非磁性層をほぼ同時に形成する方法(特許文献9参照)。非磁性層及び磁性層は同時重層塗布法を利用して形成することが好ましい。
(3)磁性層、あるいは非磁性層及び磁性層を形成後、乾燥する。
(工程2)
(4)次に、支持体の他方の面にバックコート層形成用塗布液を塗布し、バックコート層を形成する。
(5)バックコート層を形成後、乾燥する。
【0078】
以上の工程で、幅広で長尺状の磁気記録積層体が製造される。
(工程3)
(6)磁気記録積層体をロールに巻き取る。
(7)カレンダ処理を行う。
(工程4)
(8)所定の幅に裁断する。
(9)所定のカートリッジに巻き込み、磁気テープを作製する。
【0079】
本発明の磁気テープのバックコート層の表面は、テープが巻かれた状態で磁性層の表面に転写される傾向にある。このためバックコート層の表面も比較的高い平滑性を有していることが好ましい。本発明の磁気テープのバックコート層の表面は、その表面粗さRa(カットオフ0.08mmの中心線平均粗さ)が、0.003〜0.060μmの範囲にあるように調整されていることが好ましい。なお、表面粗さは、通常塗膜形成後、カレンダーによる表面処理工程において、用いるカレンダロールの材質、その表面性、そして圧力等により、調節することができる。
【0080】
単層磁性層の態様の磁気テープの磁性層は、その厚みが、1.0〜2.5μm(更に好ましくは、1.2〜2.5μm、特に好ましくは、1.5〜2.5μm)の範囲にあることが好ましい。また磁気テープの全体の厚みは3〜12μm(好ましくは、5.5〜11.5μm)の範囲にある。また、バックコート層の厚みは、0.2〜1.0μm(更に好ましくは、0.3〜0.8μm)の範囲にあることが好ましい。
【0081】
重層磁性層の態様の磁気テープの磁性層は、その厚みが、0.10〜0.5μm(好ましくは、0.1〜0.30μm)の範囲にある。また、非磁性層の厚みは、1.0〜2.5μm(好ましくは、1.0〜2.0μm)の範囲にある。磁性層の厚みと非磁性層の厚みとの比は、1:2〜1:15(更に好ましくは、1:3〜1:10)の範囲にあることが好ましい。
【0082】
単層磁性層または重層磁性層の態様の磁気テープの全体の厚み及びバックコート層の厚みは、前記単層磁性層の態様の磁気テープと同じ範囲にあることが好ましい。また、磁性層の厚みとバックコート層の厚みとの比(Mag/Back比)は、2.5〜3.5の範囲にあることが好ましい。
【0083】
(実施形態例)
以下に、実施形態例及び比較例を記載し、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す「部」は、特に断らない限り「重量部」を表わす。
【0084】
[実施形態例1]
[磁性層形成用塗布液の調製]
(磁性層形成用成分)
強磁性金属粉末 100部
保磁力(Hc):1650エルステッド(Oe)
BET法による比表面積:56m2/g
結晶子サイズ:170Å
飽和磁化量(σs):130emu/g
粒子サイズ(平均長軸径):0.2μm
針状比:7.0
pH:9.0
極性基(−SO3 K基)含有塩化ビニル系共重合体 10部
−SO3 K基含有量:5×10−6モル/g、重合度350
エポキシ基含有量:モノマー単位で3.5重量%
(MR−110、日本ゼオン(株)製)
極性基(−SO3 Na基)含有ポリエステルポリウレタン樹脂 2.5部
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/ジフェニルメタン−4,
4’−ジイソシアネート(MDI)=0.9/2.6/1(重量比)
−SO3 Na基含有量:1×10−4モル/g
α−アルミナ(粒子サイズ:0.3μm) 10部
カーボンブラック(粒子サイズ:0.10μm) 3部
メチルエチルケトン 150部
シクロヘキサノン 50部。
【0085】
上記各成分を連続ニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を2.5部、及び下記の各成分を加えて十分混合させた後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層形成用塗布液を調製した。
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
トルエン 40部
[バックコート層形成用塗布液の調製]
(バックコート層形成用成分)
微粒子状カーボンブラック粉末 100部
(キャボット社製、BP−800、平均粒子サイズ:17μm)
粗粒子状カーボンブラック粉末 10部
(カーンカルブ社製、サーマルブラック、平均粒子サイズ:270μm)
α−アルミナ(硬質無機粉末) 5部
(平均粒子サイズ:200μm、モース硬度:9)
ニトロセルロース樹脂 140部
ポリウレタン樹脂 5部
ポリイソシアネート 40部
(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)
ポリエステル樹脂 5部
分散剤:オレイン酸銅 5部
メチルエチルケトン 2200部
シクロヘキサノン 300部。
【0086】
上記バックコート層を形成する各成分を連続ニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にトルエン600部加えて十分混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、バックコート層形成用塗布液を調製した。
【0087】
[磁気テープの作製]
得られた磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが1.0μmとなるようにポリエチレンナフタレート(PEN)製支持体[厚さ:8.0μm、長さ(MD)方向のヤング率700kg/mm2 、幅(TD)方向のヤング率600kg/mm2 、磁性層塗布面の中心線平均粗さRa(カットオフ値:0.25mm)6nm]上に塗布を行った。次いで、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに、配向処理を行った。その後、乾燥させることにより磁性層を形成した(工程1)。
【0088】
その後、該支持体の他方の面(磁性層とは反対面)に、上記バックコート層形成用塗布液を乾燥後の厚さが0.6μmとなるように塗布し、乾燥してバックコート層を設けて、支持体の一方の面に磁性層が、そして他方の面にバックコート層がそれぞれ設けられた磁気記録積層体ロールを得た(工程2)。
【0089】
金属ロールと樹脂ロールから構成される7段のカレンダー処理機(温度60℃、線圧150kg/cm2 )に通してカレンダー処理を行い、テンション5kg/mで巻き取った(工程3)。
【0090】
得られた磁気記録積層体ロールを70℃、20時間加熱処理を行なった。次いで、カレンダー処理後の磁気記録積層体ロールを1/2インチ幅にスリットし、本発明に従うコンピュータデータ記録用磁気テープ(以下、単に磁気テープという)を得た。得られた磁気テープをベータ型1/2インチカセットに290m巻き込んだ(工程4)。
【0091】
[実施形態例2]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度60℃、線圧100kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0092】
[実施形態例3]〜[実施形態例5]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度50℃、線圧200kg/cm2(実施形態例3)、150kg/cm2(実施形態例4)、100kg/cm2(実施形態例5)で処理し、ポリエチレンナフタレート(PEN)製支持体[厚さ:8.0μm、長さ(MD)方向のヤング率600kg/mm2 、幅(TD)方向のヤング率600kg/mm2 、磁性層塗布面の中心線平均粗さRa(カットオフ値:0.25mm)6nm]上に塗布を行ったこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0093】
[比較例1]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度90℃、線圧300kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0094】
[比較例2]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度90℃、線圧200kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0095】
[比較例3]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度60℃、線圧200kg/cm2で処理したこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0096】
[比較例4]
実施形態例1において、カレンダー処理機の条件を温度50℃、線圧75kg/cm2で処理し、ポリエチレンナフタレート(PEN)製支持体[厚さ:8.0μm、長さ(MD)方向のヤング率550kg/mm2 、幅(TD)方向のヤング率600kg/mm2 、磁性層塗布面の中心線平均粗さRa(カットオフ値:0.25mm)6nm]上に塗布を行ったこと以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作成した。
【0097】
次の表1に各サンプルのカレンダー処理条件を示す。また表2に各サンプルの評価結果を示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
[クリーニングテープとしての評価]
得られた磁気テープを下記の評価方法にて評価した。
(1)磁気テープの磁性層側の表面粗度を測定した。磁気テープの一端を試験環境(23±2℃、50±10%RH)で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央付近を、長さ50mmを切り出して測定試料を作成し、この測定試料を三次元粗度形を用いてSRa(中心線平均粗さ)およびSRmax(最大高さ)を測定した。
(2)磁気テープの長手方向のスティフネスは、測定幅1/2インチ(12.65mm)で1m長の磁気テープの一端を試験環境(23±2℃、50±5%RH)で固定し、他端を自由端として3時間懸垂させた後、それの中央付近を、長さ50mmを切り出して測定試料を作成し、スティフネスの測定を行った。
(3)磁気ヘッドに対するクリーニング効果の評価は、ヘッドへの付着物を多く発生させる磁気テープをあらかじめ用意し、ベータ型カセットに巻き取ったのちソニー(株)社製テープドライブ GY−8240にて全長を記録走行させ、ヘッド面へのテープからの脱落などによる付着物があるのを確認した後、検討テープを30秒間走行させ、この時ヘッド面が全く汚れていない場合を二重丸、付着物がヘッド摺動面を覆っている面積が摺動面の15%以内の場合を○、付着物がヘッド摺動面を覆っている面積が摺動面の30%以内の場合を△、付着物がヘッド摺動面を覆っている面積が摺動面の50%以上の場合を×とした。
【0101】
上記表2の結果から、磁性層の表面粗度SRaが9.0nmから13.0nmに調整された本発明に従う磁気テープ(実施形態例1〜5)は、磁気ヘッドに対するクリーニング効果があり、粉落ちで覆われた磁気ヘッド上の付着物を取り除く効果が確認できた。特に、実施形態例2〜4は、磁気ヘッドに対する当たり特性も良く、クリーニング効果に優れていた。
【0102】
一方、比較例1の磁気テープの場合には、磁性層表面粗度が小さすぎるために、磁気ヘッド上の付着物を取り除く効果は無かった。比較例2、3は、磁気ヘッドとの当たり特性も悪く、また表面粗度SRaも小さいため、磁気ヘッド上の付着物を取り除く効果は無かった。比較例4は、スティフネスが小さすぎるため、磁気ヘッドとの当たり特性が悪くなり、偏った面積しかクリーニングできず、クリーニング効果は低かった。
【0103】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、磁気テープの磁性層の表面粗度SRaおよびSRmaxと長手方向のテープスティフネスを調整することにより、磁気テープからの粉落ち等の付着物で覆われた磁気ヘッド表面をクリーニングする事が出き、良好な状態に復帰させる事が可能なテープを供給する事が出来る。従って、高密度記録用の記録再生システムに適したクリーニングテープを得ることができる。特に本発明の磁気テープは、コンピュータデータ記録用に有利な磁気テープである。
Claims (4)
- 長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRa(中心線平均粗さ)で9.0nm〜13.0nmの範囲にあることを特徴とする磁気ヘッド用クリーニングテープ。
- 長尺状の支持体の一方の面に非磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にカーボンブラック及び結合剤を含むバックコート層を有する、全体の厚みが8.0〜12.0μmの磁気テープであって、該磁気テープの磁性層の表面粗度がSRmax(最大高さ)で120.0nm〜270.0nmの範囲にあることを特徴とする磁気ヘッド用クリーニングテープ。
- テープスティフネスが20〜56の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド用クリーニングテープ。
- テープスティフネスが20〜56の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の磁気ヘッド用クリーニングテープ。
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Cited By (1)
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WO2022158314A1 (ja) * | 2021-01-20 | 2022-07-28 | ソニーグループ株式会社 | 磁気記録媒体、磁気記録再生装置および磁気記録媒体カートリッジ |
-
2003
- 2003-04-30 JP JP2003124618A patent/JP2004326995A/ja active Pending
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