JP2004325192A - 金コロイド凝集法によるハプテンの測定方法および測定キット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、検体中のハプテン量を測定する方法を提供し、該方法は、(a)該検体と、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に、抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ハプテン結合蛋白質と該抗ハプテン抗体結合金コロイドとの免疫反応凝集による吸光度変化を、500nm〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、500nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸高度より求める工程を含む。この方法によれば、15分以内にハプテン量を測定することが可能である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、免疫反応を利用するハプテンの測定方法、すなわちハプテンの免疫測定方法に関する。詳細には、ng/mL濃度のハプテンの測定を高感度にかつ短時間に行うことができ、自動分析機での測定が可能である、ハプテンの免疫測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、臨床検査などの各種検査では自動化および測定時間の短縮が図られている。例えば、臨床検査においては、生体試料中の微量物質を測定するために免疫反応を利用する免疫測定方法が広く用いられている。免疫測定法としては、RIA法、EIA法、免疫比濁法、ラテックス凝集法、金属コロイド凝集法などの多くの方法がある。この中でもラテックス凝集法および金属コロイド凝集法は、反応液の分離や洗浄を行う必要がないため、自動化に適している。しかし、低分子物質であるハプテンの測定においては、通常の免疫測定とは異なり競合法による免疫反応を利用するため、その測定を高感度かつ短時間に行うことが困難であり、自動化の妨げとなっている。
【0003】
そのため、ハプテン測定において、高感度かつ短時間で測定が可能な、自動化に適した技術が望まれている。従来、生体試料(血清や血漿など)中のng/mL濃度のハプテンは、RIA法やEIA法で測定されるため、自動化に適しておらず、簡便に測定できなかった。
【0004】
ハプテンがハロペリドールである場合の定量法についての報告がある(特許文献1参照)。この特許文献1には、EIA法によるハロペリドールの定量に、90分程度の時間を要することが記載されている。競合法による免疫測定方法としては、酵素や化学発光物質などで標識された測定対象物質を用いる方法が知られているが、測定には30分以上を要し、B/F分離を必要とする(特許文献2参照)。また、ハプテンの測定法として、抗ハプテン抗体とハプテンとの免疫複合体に対する抗体を用いる方法も知られているが、B/F分離を必要とし、一般的な自動分析機で測定することはできない(特許文献3参照)。さらに、金コロイド凝集法を用いてハプテンを測定する方法として、検体中のハプテンであるエストロゲンの測定において、抗エストロゲン抗体結合金コロイドとエストロゲン結合BSAを用いる方法もある。この測定方法は、まず、検体に抗エストロゲン抗体結合金コロイド液を添加し、次いで終濃度150〜700ng/mLのエストロゲン結合BSA溶液を添加して室温で2時間インキュベートするという二段階の反応を行った後、540nmの吸光度を測定するため、測定に要する時間は2時間余りと長時間であり、自動化は困難であった(非特許文献1参照)。
【0005】
以上の公知の競合法による免疫測定法では、生体試料(血清や血漿など)中のng/mL濃度のハプテンの測定を、高感度かつ短時間で行うことができず、自動化も困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−104259号公報
【特許文献2】
特開平5−340946号公報
【特許文献3】
特開2001−174460号公報
【非特許文献1】
ロイバリング(Leuvering)ら、ジャーナル オブ イムノロジカル メソッド(Journal of Immunological Methods),1983年,第62巻,p.163−174
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、測定感度が良好で、測定時間が短縮された、B/F分離を必要としない自動化に適したハプテンの測定法およびそのための測定キットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、まず、ハプテンを含有する検体と、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合した後、抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合し、金コロイドの免疫反応凝集による吸光度変化を測定することによって、ng/mL濃度のハプテン測定を、高感度かつ短時間に行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
詳細には、前記非特許文献1のような二段階の抗原抗体反応を、本発明においては、一段階の競合反応とした。すなわち、予め検体とハプテン結合蛋白質とを混合し、その後抗ハプテン抗体結合金コロイドを添加することによって抗原抗体反応が開始され、検体中の被測定物質であるハプテンとハプテン結合蛋白質との間で抗ハプテン抗体結合金コロイドが競合反応する。
【0010】
すなわち、本発明は、検体中のハプテン量を測定する方法を提供し、この方法は、(a)該検体と、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に、抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ハプテン結合蛋白質と該抗ハプテン抗体結合金コロイドとの免疫反応凝集による吸光度変化を、500nm〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、500nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む。
【0011】
好適な実施態様では、上記混合液中に、終濃度が5〜100ng/mLのハプテン結合蛋白質を含有する。
【0012】
好適な実施態様では、上記工程(a)から(c)は15分以内で行われる。さらに好適な実施態様では、10分以内で行われる。
【0013】
他の好適な実施態様では、上記ハプテン結合蛋白質はハプテン結合ウシ血清アルブミンである。
【0014】
好適な実施態様では、上記第1試薬は、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子を0.5w/v%〜10w/v%の割合で含有する。 さらに好適な実施態様では、上記水溶性高分子物質は、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸、およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0015】
別の好適な実施態様では、上記抗ハプテン抗体結合金コロイドの抗ハプテン抗体は、上記ハプテンと担体との結合物を動物に投与することによって生成されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、そして上記ハプテン結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない。
【0016】
好適な実施態様では、上記ハプテンは、医薬品などの低分子化合物であり、さらに好適な実施態様では、ハロペリドールまたはブロムペリドールである。
【0017】
本発明はまた、上記の方法を実施するために使用される、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬および抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含むハプテン測定用キットを提供する。
【0018】
好適な実施態様では、検体と第1試薬を混合した、混合液中の終濃度が5〜100ng/mLとなる量のハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬、および抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含む、ハプテン測定用キットである。
【0019】
好適な実施態様では、上記ハプテン結合蛋白質はハプテン結合ウシ血清アルブミンである。
【0020】
他の好適な実施態様では、上記第1試薬は、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子物質を0.5w/v%〜10w/v%の割合で含有する。
【0021】
さらに好適な実施態様では、上記水溶性高分子物質は、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸、およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0022】
別の好適な実施態様では、上記抗ハプテン抗体結合金コロイドの抗ハプテン抗体は、上記ハプテンと担体との結合物を動物に投与することによって生成されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、そして上記ハプテン結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない。
【0023】
好適な実施態様では、上記ハプテンはハロペリドールまたはブロムペリドールである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、検体中のハプテン量を測定する方法であり、(a)検体と、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に、抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ハプテン結合蛋白質と該抗ハプテン抗体結合金コロイドとの免疫反応凝集による吸光度変化を、500nm〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、500nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む。
【0025】
本発明において、測定に供する検体としては、血清、血漿、尿、髄液などの生体試料、環境中より得られたサンプルまたはその抽出物などが挙げられる。
【0026】
本発明において、ハプテンとは、それ自体は免疫原性を有しない物質をいい、例えば、薬物やホルモンなどの低分子量物質を含み、特に限定されるものではない。最も好適には、抗精神病薬物であるハロペリドールおよびブロムペリドールが挙げられる。
【0027】
(第1試薬)
本発明の方法で使用される第1試薬は、ハプテン結合蛋白質を含有する。
【0028】
本発明において、ハプテン結合蛋白質とは、ハプテンと免疫原性蛋白質との結合物をいう。
【0029】
ハプテン結合蛋白質の蛋白質は、免疫原性蛋白質であって、各種動物由来のアルブミン、ヘモシアニン、サイログロブリン、フィブリノーゲン、酵素などから適宜選ばれる。本発明においては、ウシ血清アルブミン(BSA)が好ましい。
【0030】
ハプテン結合蛋白質は、測定対象のハプテンが蛋白質と結合したものが好ましいが、必ずしも測定対象のハプテンが蛋白質と結合したものでなくてもよい。すなわち、測定対象のハプテン以外のハプテン(以下、ハプテン類縁化合物ということがある)と免疫原性蛋白質とが結合した物質であって、測定対象のハプテンと該ハプテン結合蛋白質とが、抗ハプテン抗体に対して競合反応し得るものであれば、どのような物質が結合してもよい。このような、ハプテンと同等または一定の比率で抗ハプテン抗体と競合反応する物質を、以下、ハプテン類縁化合物結合蛋白質という。したがって、本明細書において、「ハプテン結合蛋白質」というときは、特に断らない限り、ハプテン類縁化合物結合蛋白質を含む。また、「ハプテン類」というときには、ハプテンとハプテン類縁化合物とを含むことを意味する。なお、ハプテン結合蛋白質またはハプテン類縁化合物結合蛋白質には、それぞれ、蛋白質1分子当たり、4〜40程度のハプテンまたはハプテン類縁化合物が結合していることが好ましい。
【0031】
上記ハプテン結合蛋白質は、当業者が通常用いる方法により製造することができる。このような製造方法は、ハプテン類に存在するアミノ基、カルボキシル基またはチオール基などの官能基を利用して、ハプテン類と蛋白質とを直接または結合剤を介して化学結合させるものであり、ハプテン類の構造に応じて種々のものが知られている(生化学実験法11 エンザイムイムノアッセイ、P.Tijssen著、石川栄治編、252頁、1989年、東京化学同人)。化学結合を形成させるための試薬としては、アシル化剤、アルキル化剤などが挙げられる。好ましくは、カルボキシル基を活性化することにより得られるN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、弱アルカリ条件下で用いられるマレイミド類などである。
【0032】
ハプテン結合蛋白質のうち、ハロペリドール結合蛋白質の製造方法は、上記特許文献1に具体的に記載されている。また、同様に、ハロペリドールと構造が類似するブロムペリドールを用いて、ブロムペリドール結合蛋白質を製造することができる。
【0033】
第1試薬に含有されるハプテン結合蛋白質は、検体と第1試薬とを混合した、混合液中に、蛋白質の濃度として、好ましくは終濃度5〜100ng/mL、より好ましくは10〜70ng/mL、さらに好ましくは15〜40ng/mL含有する。
【0034】
第1試薬には、pHの維持のために適切な緩衝剤が含まれ得る。例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、コハク酸緩衝液、あるいはグリシルグリシン、MES(2−(N−モノホリノ)エタンスルホン酸)、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−エタンスルホン酸)、TES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モノホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)などのグッド緩衝液が好適に用いられる。第1試薬のpHは、5.0〜9.0が好ましく、5.5〜7.5がより好ましく、6.0〜7.0がさらに好ましい。緩衝剤の濃度は、好ましくは10〜1000mmol/L、より好ましくは50〜400mmol/Lである。
【0035】
さらに第1試薬には、アジ化ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機塩類、有機酸類、糖類、アミノ酸類、EDTAなどのキレート剤、DTTなどのSH試薬、各種動物由来のアルブミン、動物血清、γ−グロブリンまたはヒトIgGやIgMに対する抗体、非イオン性またはイオン性の界面活性剤などを含有してもよい。これらの濃度は適宜選択できる。例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの無機塩類の濃度は、好ましくは1〜10w/v%、より好ましくは3〜8w/v%である。
【0036】
また、十分な測定感度が得られるという点において、第1試薬は、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子を0.5w/v%〜10w/v%含有することが好ましく、より好ましくは1w/v%〜5w/v%含有する。水溶性高分子物質としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、プルランなどが挙げられる。好ましくはコンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸およびそれらの塩である。
【0037】
(第2試薬)
本発明の方法で使用される第2試薬は、抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する。
【0038】
第2試薬に含まれる抗ハプテン抗体結合金コロイドは、金コロイドに抗ハプテン抗体を吸着させたものであり、当業者が通常用いる方法よって製造され得る。抗体は、そのままでも、化学処理や酵素処理されたものでもよい。抗ハプテン抗体を金コロイドに結合させた後、ブロッキング剤でブロッキング処理を行う。ブロッキング剤としては、例えば、アルブミンなどの蛋白質が挙げられ、特にウシ血清アルブミンが好ましい。
【0039】
抗ハプテン抗体は、測定対象のハプテンに対して特異的な免疫反応性を有するものであれば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれでもよい。通常は、測定対象のハプテンと担体との結合物を動物に投与することによって生成させたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、ハプテン結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない抗体である。ハプテン結合蛋白質の蛋白質部分と反応する抗体が含まれている場合は、吸着処理などによって除くことができる。
【0040】
抗ハプテン抗体を製造するための上記結合物における担体としては、該結合物が免疫原となり得るものであればいずれでもよく、例えば、蛋白質やポリペプチドなどが挙げられる。具体的には、アルブミン、グロブリン、サイログロブリン、貝ヘモシアニン、エデスチンなどが挙げられる。その中でも、好ましいのはアルブミンであり、特に好ましいのはウシ血清アルブミン(BSA)である。また、抗ハプテン抗体を製造するためのハプテンと担体との結合物として、上記第1試薬に含有されるハプテン結合蛋白質を使用することもできる。
【0041】
ポリクローナル抗体は、上記の測定対象のハプテンが結合したハプテンと担体との結合物を抗原として使用し、適切なアジュバントと混合して、ウサギ、モルモット、羊、山羊などのヒト以外の動物に、非経口的に投与(免疫)し、血清を採取して当業者が通常用いる方法で処理することによって製造し得る。
【0042】
モノクローナル抗体は、上記のように免疫された動物の脾臓細胞を採取し、当業者が通常用いるミルシュタインらの方法によって、ミエローマ細胞との細胞融合、抗体産生細胞スクリーニング、およびクローニングを行い、抗ハプテン抗体を産生する細胞株を樹立し、これを培養することにより製造することができる。
【0043】
なお、抗ハプテン抗体のうち、抗ハロペリドール抗体(ポリクローナル抗体)の具体的な製造方法は、特許文献1に記載されており、ここに記載されている抗体は、ハロペリドールに対する特異性が極めて高い。
【0044】
このようにして得られた抗ハプテン抗体結合金コロイドは、特定のハプテンおよびハプテン結合蛋白質と特異的に結合する。
【0045】
第2試薬には、pHの維持のために適切な緩衝剤が含まれ得る。例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、コハク酸緩衝液、あるいはグリシルグリシン、MES、HEPES、TES、MOPS、PIPESなどのグッド緩衝液が好適に用いられる。第2試薬のpHは、好ましくは6.5〜8.5であり、より好ましくは7.0〜8.0である。緩衝剤の濃度は、好ましくは1〜100mmol/L、より好ましくは3〜20mmol/Lである。
【0046】
さらに第2試薬には、アジ化ナトリウム、糖類、有機酸類、アミノ酸類、EDTAなどのキレート剤、各種動物由来のアルブミン、界面活性剤などを含有してもよい。これらの濃度は適宜選択できる。
【0047】
(ハプテン量の測定方法)
本発明の方法による検体中のハプテン量の測定は、簡単にいえば、検体と上記第1試薬とを混合し、一定の時間後、上記第2試薬を添加して混合した後、金コロイドの凝集による吸光度変化を、500nm〜580nmで2回以上測定、または、500nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求めることによって行われる。これは、抗ハプテン抗体結合金コロイドの免疫凝集により、主波長域(正のピーク)での吸光度が低下し、副波長域(負のピーク)での吸光度が上昇するという原理に基づく。具体的には、吸光度変化の測定は、第2試薬の添加後2分以内に一回目の吸光度測定を行って主波長と副波長との吸光度差を求め、一回目の測定より8分以内に二回目の吸光度測定を行って二回目の吸光度差を求め、一回目と二回目との吸光度差の変化を求める。または、第2試薬添加後2分以内より吸光度測定を開始し、8分間より短い時間内での吸光度変化(時間当たり)を求めてもよい。検体と第1試薬とを混合した時点から、全ての測定が終了するまでに要する時間は、好ましくは15分以内であり、より好ましくは10分以内である。測定温度は、好ましくは20〜45℃であり、より好ましくは30〜40℃、さらに好ましくは37℃である。
【0048】
通常、測定する試料と同様の測定操作で標準品(2濃度以上)を測定し、検量線を作成し、試料中のハプテン濃度を求める。
【0049】
(ハプテン測定用キット)
本発明のハプテン測定用キットは、検体と第1試薬を混合した、混合液中の終濃度が5〜100ng/mLとなる量のハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬、および抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含む。第1試薬および第2試薬は、それぞれ上記のとおりである。また、本発明のハプテン測定用キットは、検量線作成用のハプテンの標準品を含んでいてもよい。本発明のハプテン測定用キットは、上記測定方法において使用することが好ましく、特に好ましくは、ハロペリドールまたはブロムペリドールの測定に使用される。
【0050】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例において、%は、特に記載がない限り、w/v%を表す。
【0051】
(ハロペリドールの測定)
実施例1:ハロペリドール結合BSAの調製
ハロペリドールに活性エステルを導入したハロペリドール誘導体4−[4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジノ]−4−(N−スクシンイミノキシスクシノイル)アミノブチロフェノン6mgを、4mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。この液を、BSA15mgを含む0.05mol/Lのホウ酸−炭酸緩衝液に加えて室温3時間撹拌した。メンブランろ過し、0.238%HEPES緩衝液(pH7.1)500mLで洗浄した後、0.238%HEPES緩衝液(pH7.1)5Lに対して透析し、非結合物を除去して、ハロペリドール誘導体にBSAを結合させたハプテン抗原(ハロペリドール結合BSA)を得た。ハロペリドール誘導体および得られた結合物の265nmにおける吸光度の比較から、BSA1分子に対するハロペリドールの結合数を求めたところ、約12〜14分子であった。
【0052】
実施例2:ハロペリドール結合BSAを含む第1試薬の調製
実施例1で調製したハロペリドール結合BSAをBSA濃度として30ng/mL、5%塩化ナトリウム、0.2%EDTA、0.2%トリトンX−100、3%γ−ブチロラクトン、0.1%BSA,3%ウサギ血清、2.2%コンドロイチン硫酸ナトリウム、および0.1%アジ化ナトリウムを含む200mmol/L MES(pH6.2)を調製し、第1試薬とした。
【0053】
実施例3:抗ハロペリドール抗体の調製
実施例1で調製したハプテン抗原(ハロペリドール結合BSA)を、0.9%NaClに1%の濃度になるように溶解し、等量のフロインド完全アジュバントを加えてエマルジョン化し、これを、ウサギの足蹠左右各1箇所および背部皮下5箇所に0.1mLずつ注射した。その後2週間ごとに背部皮下5箇所に0.1mLずつ6回注射を行った。最終免疫の10日後に麻酔下全採血し、抗血清を得た。この抗血清5mLに0.2mol/L リン酸緩衝液(pH7)5mLを加えて希釈し、氷冷下、飽和硫安10mLを滴下し、得られた沈殿を0.1mol/L リン酸緩衝液(pH7)10mLに溶解した。これを0.1mol/L リン酸緩衝液(pH7)2.5Lに対して透析した後、CNB活性化SepharoseにBSAを固相化したカラムを通して、BSAに反応する抗体を除去し、抗ハロペリドール抗体を得た。
【0054】
実施例4:金コロイド液の調製
95℃の蒸留水1Lに10%塩化金酸溶液2mLを攪拌しながら加え、1分後に2%クエン酸ナトリウム溶液10mLを加え、さらに20分間攪拌した後、30℃に冷却した。冷却後、0.1M炭酸カリウム溶液でpH7.1に調節し、金コロイド液を得た。
【0055】
実施例5:抗ハロペリドール抗体結合金コロイド試薬(第2試薬)の調製
実施例3で調製した抗ハロペリドール抗体を、0.05%アジ化ナトリウムを含む10mmol/mL HEPES(pH7.1)で希釈し、10μg/mLの濃度にした。この液100mLを、実施例4で調製した金コロイド液1Lに加え、冷却しながら2時間攪拌した。5.46%マンニトール、0.5%BSA、および0.05%アジ化ナトリウムを含む10mmol/L HEPES(pH7.1)を110mL添加し、37℃で90分間攪拌した。8,000回転/分で40分間遠心分離し、上清を除去した後、3%マンニトール、0.1%BSA、および0.05%アジ化ナトリウムを含む5mmol/L HEPES(pH7.5)(A溶液)を約1L加え、抗体結合金コロイドを分散させた後、8,000回転/分で40分間遠心分離し、上清を除去し、A溶液に抗体結合金コロイドを分散させて全量を160mLとし、抗ハロペリドール抗体結合金コロイド試薬を調製し、第2試薬とした。
【0056】
実施例6:ハロペリドール標準液の調製
エタノール溶液に溶解したハロペリドール1mg/mLをウシ胎児血清で希釈し、0、3、7.5、15、30、および50ng/mLの各濃度のハロペリドールを含む標準液を調製した。
【0057】
実施例7:ハロペリドールの自動分析装置日立7070形での測定
実施例6で調製した標準液各17μLおよび実施例2で調製した第1試薬200μLを混合・攪拌し、37℃で5分間加温した。次いで、実施例5で調製した第2試薬50μLを添加・攪拌して、主波長546nmおよび副波長660nmで測光ポイント18から31の二ポイント測定を行い、時間当たりの吸光度変化を求めた(全体の測定時間は10分)。測定結果から、ハロペリドール濃度0〜50ng/mLまでの検量線が得られた。その結果を図1に示す。
【0058】
実施例8:市販のEIA試薬による測定法との相関性
ハロペリドール投与中のヒト患者の血清の55検体ならびに血清に標準品を添加した7検体を用いて、上記実施例7と同様の操作を行って、血清中のハロペリドールを測定した。一方、市販のEIA試薬である「マーキット(登録商標)MハロペリドールII」(大日本製薬株式会社販売)を用いて同一の血清についてハロペリドール濃度を測定した。測定は本製品の添付文書に従い行った。これらの測定結果についての相関を図2に示す。相関係数は0.995と良好であり、10分間の測定時間であっても、従来の方法と同様に、精度良く測定できることを確認した。
【0059】
実施例9:ポリエチレングリコール(PEG)を含む第1試薬を用いる測定
実施例2において、コンドロイチン硫酸ナトリウムの代わりに、ポリエチレングリコール(PEG)6,000を0.15%用いて、第1試薬を調製した。実施例7と同様にハロペリドール標準品を測定した。実施例7と同様に、10分間の測定時間でng/mLレベルの濃度のハロペリドールを測定できたが、実施例7と比較して、低濃度域での精度がやや劣っていた。
【0060】
(ブロムペリドールの測定)
実施例10:ブロムペリドール結合BSAの調製
ブロムペリドールに活性エステルを導入したブロムペリドール誘導体4−[4−(4−ブロモフェニル)−4−ヒドロキシピペリジノ]−4−(N−スクシンイミノキシスクシノイル)アミノブチロフェノン6mgを、4mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。この液を、BSA15mgを含む0.05mol/Lのホウ酸−炭酸緩衝液に加えて室温3時間撹拌した。メンブランろ過し、0.238% HEPES緩衝液(pH7.1)500mLで洗浄した後、0.238% HEPES緩衝液(pH7.1)5Lに対して透析し、非結合物を除去して、ブロムペリドール誘導体にBSAを結合させたハプテン抗原(ブロムペリドール結合BSA)を得た。ブロムペリドール誘導体および得られた結合物の265nmにおける吸光度の比較から、BSA1分子に対するブロムペリドールの結合数を求めたところ、約12〜14分子であった。
【0061】
実施例11:ブロムペリドール結合BSAを含む第1試薬の調製
ハロペリドール結合BSAの代わりに、実施例10で調製したブロムペリドール結合BSAを用いること以外は、実施例2と同様にして、ブロムペリドール結合BSAを含む第1試薬を調製した。
【0062】
実施例12:抗ブロムペリドール抗体の調製
ハロペリドール結合BSAの代わりに、実施例10で調製したブロムペリドール結合BSAを用いること以外は、実施例3と同様にして、抗ブロムペリドール抗体を得た。
【0063】
実施例13:抗ブロムペリドール抗体結合金コロイド試薬(第2試薬)の調製抗ハロペリドール抗体の代わりに実施例12で調製した抗ブロムペリドール抗体を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、抗ブロムペリドール抗体結合金コロイド試薬を調製し、第2試薬とした。
【0064】
実施例14:ブロムペリドール標準液の調製
エタノール溶液に溶解したブロムペリドール1mg/mLをウシ胎児血清で希釈し、0、3、7.5、15、30、および50ng/mLの各濃度のブロムペリドールを含む標準液を調製した。
【0065】
実施例15:ブロムペリドールの自動分析装置日立7070形での測定
実施例14で調製した標準液各17μLおよび実施例11で調製した第1試薬200μLを混合・攪拌し、37℃で5分間加温した。次いで、実施例13で調製した第2試薬50μLを添加・攪拌して、主波長546nmおよび副波長660nmで測光ポイント18から31の二ポイント測定を行い、時間当たりの吸光度変化を求めた(全体の測定時間は10分)。測定結果から、ブロムペリドール濃度0〜50ng/mLまでの検量線が得られた。その結果を図3に示す。
【0066】
実施例16:市販のEIA試薬による測定法との相関性
ブロムペリドール投与中のヒト患者の血清の59検体ならびに血清に標準品を添加した5検体を用いて、上記実施例15と同様の操作を行って、血清中のブロムペリドールを測定した。一方、市販のEIA試薬である「マーキット(登録商標)MブロムペリドールII」(大日本製薬株式会社販売)を用いて同一の血清についてブロムペリドール濃度を測定した。測定は本製品の添付文書に従い行った。これらの測定結果についての相関を図4に示す。相関係数は0.992と良好であり、10分間の測定時間であっても、従来の方法と同様に、精度良く測定できることを確認した。
【0067】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、ng/mL濃度のハプテンを、15分以内、好ましくは10分以内という短時間で精度良く測定できる。また、B/F分離を必要としない。そのため、自動化に非常に適している。したがって、本発明の方法は、臨床検査分野などでの測定の迅速化および省力化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】0〜50ng/mLの濃度のハロペリドールの検量線である。
【図2】従来法と本発明の方法とのハロペリドールの測定結果の相関を示すグラフである。
【図3】0〜50ng/mLの濃度のブロムペリドールの検量線である。
【図4】従来法と本発明の方法とのブロムペリドールの測定結果の相関を示すグラフである。
Claims (15)
- 検体中のハプテン量を測定する方法であって、(a)該検体と、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬とを混合する工程、(b)該混合液に、抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を添加して混合する工程、および(c)該ハプテン結合蛋白質と該抗ハプテン抗体結合金コロイドとの免疫反応凝集による吸光度変化を、500nm〜580nmで2回以上測定した吸光度、または、500nm〜580nmを主波長および620nm〜800nmを副波長とする二波長で2回以上測定した吸光度より求める工程を含む、方法。
- 前記混合液中に、終濃度が5〜100ng/mLのハプテン結合蛋白質を含有する、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(a)から(c)が15分以内で行われる、請求項1または2に記載の方法。
- 前記ハプテン結合蛋白質がハプテン結合ウシ血清アルブミンである、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記第1試薬が、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子物質を0.5w/v%〜10w/v%の割合で含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記水溶性高分子物質が、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸、およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項5に記載の方法。
- 前記抗ハプテン抗体結合金コロイドの抗ハプテン抗体が、前記ハプテンと担体との結合物を動物に投与することによって生成されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、そして前記ハプテン結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ハプテンがハロペリドールまたはブロムペリドールである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法を実施するために使用される、ハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬および抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含むハプテン測定用キット。
- 検体と第1試薬を混合した、混合液中の終濃度が5〜100ng/mLとなる量のハプテン結合蛋白質を含有する第1試薬、および抗ハプテン抗体結合金コロイドを含有する第2試薬を含む、ハプテン測定用キット。
- 前記ハプテン結合蛋白質がハプテン結合ウシ血清アルブミンである、請求項10に記載のキット。
- 前記第1試薬が、平均分子量5,000から500,000の水溶性高分子物質を0.5w/v%〜10w/v%の割合で含有する、請求項10または11に記載のキット。
- 前記水溶性高分子物質が、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸、およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項10から12のいずれか1項に記載のキット。
- 前記抗ハプテン抗体結合金コロイドの抗ハプテン抗体が、前記ハプテンと担体との結合物を動物に投与することによって生成されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、そして前記ハプテン結合蛋白質の蛋白質部分と反応しない、請求項10から13のいずれか1項に記載のキット。
- 前記ハプテンがハロペリドールまたはブロムペリドールである、請求項10から14のいずれか1項に記載のキット。
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