JP2004323998A - 経糸ビームの駆動方法及び装置 - Google Patents
経糸ビームの駆動方法及び装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004323998A JP2004323998A JP2003117808A JP2003117808A JP2004323998A JP 2004323998 A JP2004323998 A JP 2004323998A JP 2003117808 A JP2003117808 A JP 2003117808A JP 2003117808 A JP2003117808 A JP 2003117808A JP 2004323998 A JP2004323998 A JP 2004323998A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tension
- warp
- warp beam
- speed
- target
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Looms (AREA)
Abstract
【課題】より短い起動準備時間の基で、経糸張力をより正確に目標張力に調整することにある。
【解決手段】経糸ビームの駆動方法は、経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、起動準備時には、経糸ビームを、先ず低速度より高い速度でかつ経糸張力を目標張力に近づける方向に駆動させ、次いで経糸ビームを低速度まで減速させてその速度を維持することを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】経糸ビームの駆動方法は、経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、起動準備時には、経糸ビームを、先ず低速度より高い速度でかつ経糸張力を目標張力に近づける方向に駆動させ、次いで経糸ビームを低速度まで減速させてその速度を維持することを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、織機の起動に先だって経糸張力を目標張力に設定する、経糸ビームの駆動方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
織機においては、停台中における経糸の伸びや、停台原因を解消する処理等に起因して織布に織段が発生することから、そのような織段の発生を防止するための動作を織機に行わせている。
【0003】
織機における織段防止技術の1つとして、織機の運転開始前に経糸の張力を検出し、その検出結果に基づいて経糸ビームを単独に正転又は逆転させ、経糸張力が予め設定された目標張力と一致した状態で織機の運転を開始するものがある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭59−157355号公報
【0005】
【解決しようとする課題】
しかし、上記の文献には、経糸ビームの駆動に関する具体的な態様(速度指令の出力態様)については何ら開示されていない。
【0006】
一方、織機においては、経糸張力(織前近傍の経糸張力)をより正確に調整(設定)することが織段防止に有効である。
【0007】
しかし、実際には、経糸張力は、筬、綜絖、経て止め装置(ドロッパ)等の経糸や織布に接触する部材による摩擦の影響を受け、経糸ビームの回転が停止してから、経糸張力が全体的に均衡する(織前側と経糸ビーム側の各経糸張力がほぼ同じになる)までに時間がかかる。
【0008】
そのため、経糸ビームを高速度で駆動させて上記張力調整動作を行うと、経糸ビームが停止してから、経糸張力がその後の全体的な張力均衡により目標張力を下回る、という問題がある。そのようなことから、張力調整動作をより正確に行うためには、経糸ビームを低速度で駆動させる必要がある。
【0009】
しかし、経糸ビームを最初から低速で駆動すると、織機が運転開始されるまでにさらに時間がかかることになり、織布の生産性の低下を招く。このような問題は、織布向上においては無視することができない問題である。
【0010】
本発明の目的は、起動準備時に対応する目標張力が設定され、起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を対応する目標張力にした後、運転を再開する織機において、より短い起動準備時間の基で、経糸張力をより正確に目標張力に調整することにある。
【0011】
【解決手段、作用、効果】
本発明に係る経糸ビームの駆動方法は、起動準備時の経糸の目標張力を設定しておき、起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を目標張力にする織機に適用される。
【0012】
そのような駆動方法は、前記経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、起動準備時には、前記経糸ビームを回転駆動させる際に、先ず前記低速度より高い速度でかつ経糸張力を前記目標張力に近づける方向に駆動させ、次いで前記経糸ビームを前記低速度まで減速させてその速度を維持することを含む。
【0013】
本発明に係る経糸ビームの駆動装置は、起動準備信号が発生されたことにより、経糸張力を起動準備時に対応して予め定められる目標張力にすべく経糸ビームを回転駆動させる演算制御部と、起動時に、前記経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を設定する第1の設定器と、起動準備時に経糸張力を前記目標張力に近づけるべく前記経糸ビームを前記低速度より高い速度で駆動させるための高速度を設定する第2の設定器とを含む。前記演算制御部は、前記起動準備信号が発生されたことにより、前記経糸ビームを前記目標張力に近づける方向に経糸ビームを前記高速度で駆動させ、次いで前記経糸ビームを前記低速度まで減速させてその速度を維持させつつ、経糸張力が前記目標張力に達することにより前記経糸ビームを停止させる。
【0014】
本発明に係る他の駆動方法は、経糸張力を前記目標張力に近づける方向に前記経糸ビームを駆動させて、経糸張力が前記目標張力に達したことにより経糸ビームを停止させる過程において、前記経糸張力を前記目標張力に近づける駆動の際に、経糸張力を検出し、前記目標張力に対する経糸張力の偏差量の減少に応じて前記経糸ビームの速度を減速させるステップを含む。
【0015】
本発明に係る他の駆動装置において、演算制御部は、前記起動準備信号が発生されたことにより前記経糸ビームを回転駆動させるに際し、経糸張力が前記目標張力に達する前の駆動期間において、前記目標張力に対する経糸張力の偏差量の減少に応じて前記経糸ビームの速度を減速させる。
【0016】
経糸張力を目標張力に近づける際に、経糸ビームを高速度で駆動させた後に、経糸ビームの速度を減速させると、織前近傍における経糸張力と織布張力とが均衡した状態におかれる。このため、経糸張力が目標張力に達して経糸ビームを停止させても、従来のようにその後経糸張力が張力の均衡に起因して変化する、という不都合を生じることなく、経糸張力は目標張力に維持される。その結果、織前に作用する力が所望の状態となった状態で織機が起動されて、筬打ちが行われるため、織段が解消される。
【0017】
駆動方法は、さらに、前記経糸ビームの減速時に、経糸張力を検出し、検出値が前記目標張力に達したことにより前記経糸ビームを停止させることを含むことができる。
【0018】
前記高い速度から前記低速度への切換は、検出した経糸張力が前記目標張力に達する前の所定の値に達したことにより行うようにしてもよい。これの代わりに、前記高い速度から前記低速度への切換は、起動準備信号が発生してから所定時間経過したことにより行うようにしてもよい。
【0019】
前記経糸ビームを前記高い速度で駆動させる際の速度を起動準備動作開始時の経糸の張力偏差に応じて決定することを含むことができる。
【0020】
他の駆動方法において、経糸張力が前記目標張力に達するまでの間に、前記減速させるステップを複数回実行してもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1を参照するに、織機10において、経糸12は、これが巻かれている経糸ビーム(送出ビーム)14から、バックローラ16、複数の綜絖枠18及び筬20を経て織前22に繋がっている。製織された織布24は、ガイドローラ26を介して服巻ロール28に達し、服巻ロール28と一対のプレスロール30とにより布巻ビーム32に向けて送り出されて、布巻ビーム32に巻き取られる。
【0022】
経糸ビーム14は、送出モータ34により歯車のような送出機構36を介して回転されて複数の経糸12をシートの形で送出する。経糸ビーム14に巻かれている経糸12の量(巻径)は、経糸ビーム14からの経糸12の送り出しにともなって、漸次減少する。
【0023】
このため、経糸ビーム14の巻径は巻径センサ38により検出され、検出された巻径信号Dは送出モータ34を制御する送出制御装置40に供給される。送出モータ34の出力軸の回転速度は、タコジェネレータ42によって検出され、検出された回転速度信号S1は送出制御装置40に供給される。
【0024】
経糸12に作用している経糸張力(実際値)は、バックローラ16に作用する荷重を検出する経糸張力センサ44により検出され、検出された経糸張力T1は送出制御装置40に供給される。
【0025】
各綜絖枠18は、主軸モータ(図示せず)により回転される主軸46の回転運動を受ける運動変換機構48を介して上下に往復駆動されて、経糸12を上下に開口させる。
【0026】
筬20は、主軸46の回転運動を受ける運動変換機構50により揺動駆動されて、経糸12の開口に緯入れされた緯糸52を織前22に打ち付ける。
【0027】
服巻ロール28は、巻取モータ54の回転運動を受ける巻取機構56により回転されて、2つのプレスロール30とそれぞれ共同して織布24を布巻ビーム32に送り出す。このため、服巻ロール28は巻取ロールとして作用する。
【0028】
主軸46及び巻取モータ54の回転角度は、それぞれ、エンコーダ58及び60によって検出される。検出された主軸回転角度信号S2及び巻取モータ回転角度信号S3は、巻取モータ54を制御する巻取制御装置62に供給される。また、主軸回転角度信号S2は送出制御装置40にも供給される。
【0029】
布巻ビーム32は、布巻ビーム32に巻かれた織布24の周速度が織布24の送り速度より若干速くなるように、主軸46の回転運動を受ける巻取トルク調整機構64により滑り軸受け(図示せず)を介して回転されて、織布24の巻取張力を一定に維持すべく回転される。
【0030】
起動準備時に用いる経糸の複数の目標張力Ts0,Ts1は、織機10の起動に先だって、送出制御装置40に設定される。起動準備時、送出制御装置40は、図示しない織機主制御装置から起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を起動準備時の目標張力Ts1に調整し、次いで目標張力Ts0に調整した後、起動準備完了信号を出力する。
【0031】
目標張力Ts0は、起動準備によって経糸張力T1を調整しなければならない値であり、定常運転時の目標張力Trと同じであってもよいし、異なってもよい。目標張力Ts1は、速度指令の切換のために用いる値であり、目標張力Ts0の手前(これ未満の値)に定められる。
【0032】
具体的には、送出制御装置40は、経糸ビーム14を低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、経糸ビーム14を起動準備時には、先ず設定されている低速度より高い速度でかつ経糸張力を定常運転時の目標張力に近づける方向に駆動させ、その後経糸張力T1を検出し、その検出値が目標張力Ts0に達した時点で経糸ビーム14を設定されている低速度まで減速させてその速度を維持させると共に、経糸張力T1が目標張力Ts0に達したことにより経糸ビーム14を停止させる。
【0033】
送出制御装置40と巻取制御装置62とを別個の回路構成とする代わりに、それらの機能をソフトウエアで実行するコンピュータのような共通の回路で構成としてもよい。
【0034】
図2を参照するに、経糸ビームの駆動装置の一部を構成する送出制御装置40は、定常運転時の経糸の目標張力Trを設定する設定器70と、設定器70に設定された目標張力T0を用いて起動準備動作を実行させる起動準備時制御部72と、定常運転時の制御を実行させる定常運転時制御部74とを含む。
【0035】
設定器70に設定される定常運転時の目標張力Trは、織物の種類のような製織条件や、停台回数のような停台状況によって異なる。このため、定常運転時の目標張力Trは、ときどき再設定(変更)される。
【0036】
起動準備時制御部72は、定常運転時の目標張力Trを基に起動準備時の経糸張力の目標張力Ts0,Ts1を目標張力演算部76で発生し、発生した目標張力Ts0,Ts1を第1の制御器78に供給する。
【0037】
目標張力演算部76には、起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を定常運転時の目標張力Trにより決定するための情報が定常運転時の目標張力Tr毎に予め設定されている。目標張力演算部76は、目標張力Trと設定されている情報とに基づいて起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。決定された目標張力Ts0,Ts1は、第1の制御器80に出力される。
【0038】
そのような情報は、定常運転時の目標張力Trの値(張力値)をパラメータとする関数を含むことができる。この場合、目標張力演算部76は、定常運転時の目標張力Trを用いて関数により規定される演算を行って起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0039】
上記情報は、関数に加えて、定常運転時の目標張力Trを補正するための補正係数kを含み、関数は定常運転時の目標張力Trと補正係数kとを乗算する数式を含むことができる。この場合、目標張力演算部76は、定常運転時の目標張力Trと補正係数kとの乗算を行うことによって起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0040】
これの代わりに、上記情報は、関数に加えて、定常運転時の目標張力Trを補正するための補正値kを含み、関数は定常運転時の目標張力値Trと補正値kとを加算する数式を含むことができる。この場合、目標張力演算部76は、定常運転中の目標張力値Trと補正値kとの加算を行って起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0041】
上記のような関数に代えて、定常運転時の目標張力Tr毎に定められて起動準備時の目標張力Tsを含むデータ群であって定常運転時の目標張力Trを用いて選択可能に記憶されたデータ群を情報としてもよい。この場合、目標張力演算部76は、定常運転時の目標張力値Trに対応するデータをデータ群から選び出して起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0042】
上記のような、関数、補正係数、補正値及びデータ群は、織機の主軸の回転角度(経糸開口量)毎に設定してもよい。この場合、主軸回転角度信号S2が目標張力演算部76に入力されて、目標張力演算部76は、起動準備信号S4が入力したときに、設定されている情報、定常運転時の目標張力Tr及び織機の停止期間中に検出された主軸回転角度信号S2を用いて、主軸の回転角度に対応する目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0043】
目標張力Tsの決定に用いる上記のような情報は、目標張力演算部76に直接設定してもよいし、織機の主制御装置(図示せず)に設定してもよい。また、そのような情報は、テンキーを利用して設定してもよいし、記憶媒体を用いて設定してもよい。
【0044】
補正係数k及び補正値kを用いる場合は、補正なし、と設定してもよい。この場合、補正係数kであれば1であり、補正値kであれば0である。したがって、いずれの場合も、目標張力演算部76は定常運転時の目標張力Trを起動準備時の目標張力Ts0,Ts1として第1の制御器80に供給する。
【0045】
そのようにすれば、定常運転時の目標張力Trの変更にともない、起動準備時の使用する目標張力Ts1,Ts0が自動的に決定されるため、いわゆる変更もれによる織布品質のトラブル(織段)が未然に防止される。
【0046】
目標張力演算部76を設ける代わりに、設定器を介して目標張力Ts1,Ts0を目標値Trとは独立的に設定するように構成してもよい。
【0047】
第1の制御器78は、比較器80、設定器84H,84L及び切換器82を備えている。
【0048】
第1の制御器78は、起動準備信号S4が入力したことにより、先ず目標張力演算部76から供給される目標張力Ts1と張力センサ44から供給される経糸張力T1とを比較器80において比較し、両者が一致したことにより対応する切換信号S10を比較器80から切換器82に出力し、その後所定時間経過したこと又は経糸張力T1が目標張力Ts0と一致したことにより起動準備完了信号S5を比較器80から切換器82に出力する。
【0049】
起動準備完了信号S5は、図示しない主制御装置にも供給される。起動準備完了信号S5が発生されると、送出制御装置40は、起動準備動作を終了する。織機はその後起動される。
【0050】
目標張力Ts0,Ts1は、第1の制御器78に同時に供給してもよいし、順次供給してもよい。また、目標張力Ts0,Ts1は、起動準備信号S4が入力したことにより先ず目標張力Ts1を目標値演算部76から出力するか又は第1の制御器78に取り込み、切換信号s0が発生されたことにより目標張力Ts0を目標値演算部76から出力するか又は第1の制御器78に取り込むようにしてもよく、起動準備動作が行われるまでに設定されていればよい。
【0051】
切換器82の一方の入力端子には、設定器84Hに設定された速度指令−VHが入力されており、他方の入力端子には設定器84Lに設定された速度指令−VLが入力されている。
【0052】
速度指令−VHは、起動準備時に送出モータ34ひいては経糸ビーム14を高速度でしかも経糸張力T1を起動準備時の目標張力Ts1に近づける方向に駆動させる指令であり、速度指令−VLは、その後送出モータ34(経糸ビーム14)を速度指令−VHよりも低い速度で駆動させて目標張力Ts0に近づけるための指令である。いずれの速度指令−VH,−VLも送出モータ34を逆転させる負の値である。
【0053】
切換器82は、起動準備信号S4が入力したときから、切換信号S10が入力するまで、設定器84Hに設定された速度指令−VHを加算部86の一方の入力端子に出力し続ける。その後経糸張力T1が目標張力Ts1に達してから、目標張力Ts0に達して、起動準備完了信号S5が入力するまで、設定器84Lに設定された速度指令−VLを加算部86の一方の入力端子に出力し続ける。
【0054】
しかし、経糸張力T1画目標張力Ts0に達して、起動準備完了信号S5が出力されると、速度指令が0出力となって経糸ビーム14がさらに停止するから、経糸張力T1は起動準備動作により目標張力演算部76で発生した最終的な目標張力Ts0に保たれる。
【0055】
起動準備信号S5は、織機の動作全体を制御する図示しない主制御装置にも供給される。主制御装置は、この信号S5の入力により、織機を運転すべく運転信号S0を出力する。
【0056】
定常運転時制御部74は、経糸12を送出する基本送出速度V1を発生する基本速度発生器88と、経糸12の張力偏差を解消する補正送出速度V2を発生する第2の制御器90と、両速度V1及びV2を加算する加算部92とを備えている。
【0057】
緯糸の打ち込み密度を表す打ち込み密度信号S6と織機の回転数を表す織機回転数信号S7とは基本速度発生器88に入力され、設定器70に設定された目標張力Trと経糸張力センサ44からの張力信号T1とは第2の制御器90に供給される。織機の定常運転を指令する運転信号S0は、主制御装置から基本速度発生器88及び第2の制御器90に供給される。
【0058】
基本速度発生器88は、織機の運転時に発生されるオンの運転信号S0が供給されている間、織機回転数信号S7及び張力信号T1を基に、製織すべき織布24の種類に応じた値、すなわち織布の巻取速度に対応する経糸12の送出速度を算出し、算出した速度を基本送出速度V1として加算部92の一方の入力端子に出力する。
【0059】
第2の制御器90は、張力センサ44から供給される張力信号T1と、設定器70に予め設定された目標張力Trとを基に、経糸に作用している張力(経糸張力)T1が目標張力Trとなるような補正送出速度V2を算出し、算出した補正送出速度V2を加算部92の他方の入力端子に出力する。
【0060】
加算部92は、両入力信号V1及びV2を加算して、加算した信号を定常運転時の速度指令V3を加算部86の他方の入力端子に出力する。しかし、定常運転時制御部74、特に第2の制御器88及び基本速度信号発生器90は、オンの運転信号S0が入力しているとき、すなわち織機の運転中のみに作用するだけであるから、起動準備時には速度指令V3は加算部92から出力されない。
【0061】
このため、加算部86は、起動準備時であると、起動準備制御部72の出力信号−VH又は−VLを速度指令として巻径補正器94に出力し、定常運転時であると、定常運転時制御部74の速度指令V3を加算信号V4として巻径補正器94に出力する。
【0062】
巻径補正器94は、図1に示す巻径センサ38からの巻径信号Dに基づいて、加算部86からの加算信号V4を補正し、補正した送出速度信号S8を減算部96の一方の入力端子に出力する。
【0063】
減算部96は、巻径補正器94からの送出速度信号S8から回転速度信号S1を減算し、その減算結果を送出速度指令S9としてドライバー98に出力する。ドライバー98は、送出速度指令S9に対応して、送出モータ34を駆動させる増幅回路として作用する。
【0064】
具体的には、ドライバー98は、送出モータ34を入力する送出速度指令S9に応じて回転させる電圧を発生する増幅回路であり、減算部96からの送出速度指令S9が正であれば、送出モータ34を正転させ、負であれば送出モータ34を逆転させる。
【0065】
このため、送出制御装置40は、信号S1及びS9を用いて、経糸ビーム14から送り出される経糸12の速度が送出速度指令S9に応じた速度になるように、送出モータ34を制御するフィードバック回路の機能を備えている。
【0066】
起動準備時、送出制御装置40は、起動準備信号S4が入力したことにより、先ず経糸張力T1を目標張力Ts0に急速に近づける速度指令−VHに対応する信号S9で送出モータ34を速度VHに対応する速度で逆転駆動させ、次いで経糸張力T1が目標張力Ts1に一致したことにより速度指令−VHよりも小さい速度指令−VLに対応する信号S9で送出モータ34(ひいては、経糸ビーム14)を速度VLに対応する速度で逆転駆動させる。
【0067】
したがって、織機の停台により生じた経糸の伸び等により経糸張力T1が低下したとしても、送出制御装置40は、起動準備時に経糸ビーム14を、先ず経糸張力が起動準備時の目標張力Ts0に急速に近づく方向に高速度で駆動させ、次いで経糸ビーム14を低速度に減速させてその速度を維持し、その後経糸張力T1が目標張力Ts0に達したことにより起動準備完了信号S10を発生して停止させる。その後、織機は起動(運転開始に)される。
【0068】
起動準備信号S4、切換信号S10、運転信号S0及び目標張力Ts0,Ts1,Trをそれぞれ、図3(A),(B),(C)及び(D)に示し、送出モータ34を上記のように駆動させたことによる経糸ビーム14の回転速度を図3(E)に示す。
【0069】
図3から明らかなように起動準備時、起動準備信号S4のオンにともない、送出モータ34ひいては経糸ビーム14は、先ず高速で逆転され、次いで経糸張力T1が目標張力Ts1に達すると発生される貴意理科恵心号S10のオンにともない低速で逆転される。これにより、経糸張力T1は、先ず高速度で目標張力Ts1に近つけられ、次いで低速度で目標張力Ts0に近づけられる。
【0070】
上記のように、送出制御装置40は、経糸張力T1を定常運転時の目標張力Trに近づける際に、経糸ビーム14の速度を減速させる。これにより、織前近傍における経糸張力と織布張力とが均衡した状態におかれる。
【0071】
上記の結果、経糸張力T1が目標張力Ts0に達して経糸ビーム14を停止させても、従来のように経糸張力T1が張力の均衡に要する時間に起因して変化する、という不都合を生じることなく、経糸張力T1は目標張力Ts0に維持される。
【0072】
起動準備時における送出モータ34(ひいては、経糸ビーム14)の高速度時における回転速度は、上記のように一定に維持することなく、漸次又は段階的に減少させてもよい。具体的には、速度指令の値を、起動準備信号S4の発生時からの経過時間により減少させてもよいし、起動準備時の目標張力Ts1又はTs0を経糸張力T1との偏差量に応じて減少させてもよい。
【0073】
また、起動準備時の速度指令を高速駆動用−VHと低速駆動用−VLの2種類設定する代わりに、それらの速度指令を、それらが漸次又は段階的に減少するように、さらに細分化して設定しておき、切換用の複数の目標張力Ts1・・・Ts1を第1の制御器80に供給して、起動準備時に細分化された速度指令を起動準備信号S4の発生時からの経過時間若しくは目標張力Ts1又はTs0と経糸張力T1との偏差に応じて順次切り換えて出力するようにしてもよい。
【0074】
さらに、起動準備信号S4の発生時における経糸張力T1と最終的な目標張力Ts0との張力偏差ΔTに応じて、高速駆動用の速度指令値−VHを決定するようにすれば、張力偏差量ΔTに応じて速度指令値が決定されるから、起動準備時の張力設定又は調整動作時間の長さを揃えることができる。
【0075】
図4を参照するに、第1の制御器78は、起動準備信号S4によりオン(作動状態)にされるタイマー102を用い、図5に示すように起動準備信号S4が入力したときから設定器104に設定された時間が経過したことにより切換信号S10を切換器82に出力する。
【0076】
切換器82は、起動準備信号S4が入力したときから切換信号S10が入力するまでは大きい速度指令−VHを出力し、切換信号S10が入力すると、小さい速度指令−VLを出力する。
【0077】
第1の制御器78において、起動準備完了信号S5は、経糸センサからの経糸張力T1と、図示しない設定器に設定された最終的な目標張力Ts0とを比較器106で比較し、両者が一致したとき比較器106から発生する。
【0078】
上記のように、第1の制御器78は、速度指令を、起動準備信号S4の発生時からの経過時間により減少させる。3以上の速度指令を出力する場合は、3以上の速度指令を切換器82に設定しておき、速度指令を切り換えるべきタイミングに到達するたびに切換信号S10をタイマー102から出力するようにすればよい。
【0079】
起動準備の際には、本発明の他に、他の織段防止動作を実行する用にしてもよい。例えば、厚段対策として、織前位置を前方に移動させる目的で服巻ロール(すなわち、巻取ロール)を正転させてもよい。これにともなって、織布張力ひいては経糸張力T1画逆に上昇する場合がある。
【0080】
上記した実施例では、起動準備直前の経糸張力が目標値以下になっているものとし、経糸ビームを専ら逆転させている。したがって、起動準備直前時の経糸張力が目標張力を上回っている場合にも対応可能に構成すればよい。
【0081】
また、上記した実施例では、起動準備時の高い速度指令値について、常に同じ値としているため、織機停台中における経糸張力の低下(変動)の大小により、起動準備時の上記した経糸張力の調整に要する時間が変わることになる。このため、起動準備時の経糸張力の偏差が性であるか又は負であるか、さらにはその偏差量の大きさに応じて、速度指令値VH,VLを決定することが望ましい。より具体的には、図2及び図4における設定器84H,84Lを図6のように構成することができる。
【0082】
図6を参照するに、起動準備時制御部110は、経糸張力T1と起動準備時の目標張力Ts0との差(張力偏差)ΔTに応じた速度指令−VH1、−VH2・・・及び−VL1,−VL2・・・を設定器112に設定しておき、起動準備信号S4が偏差発生器114に入力したとき、張力偏差ΔTを張力偏差検出器としての偏差発生器114から速度信号発生器116及び118に出力し、張力偏差ΔTに応じた大きさの速度指令−VH又は−VLを設定器112から速度信号発生器116又は118に読み出して出力する。
【0083】
張力偏差ΔTに応じた速度指令は、例えば表1に示すように、張力偏差ΔTを用いて読み出すことができるように、テーブルの形に設定器112に設定されている。起動準備完了信号S10は、偏差発生器114から発生される。
【0084】
より詳しくは、表1について、経糸張力が目標値を上回っているか又は逆に下回っているか、換言すれば張力偏差がプラスであるかマイナスであるかという点に対応して、高速度の速度指令値−VH及び低速殿速度指令値−VLがそれぞれ定められており、さらには高速度の速度指令値VHについて張力偏差の大小により(より具体的には、50kg・f以上であるか否かという点に対応して)設定されている。
【0085】
このため、速度指令信号発生器116,118は、起動準備時における張力偏差ΔTを受けて対応する速度指令値−VH,−VLをそれぞれ出力することができ、後段の切換器82は、前記したように起動準備信号S4の発生時からの経過時間、又はたちと張力の偏差の解消状況により速度指令値−VHから−VLに切換、さらには目標張力Ts0に到達した時点で速度指令値をゼロ出力にすることができる。
【0086】
図7を参照するに、第1の制御器120は、経糸張力T1と起動準備時の目標張力Ts0との差(張力偏差)ΔTの減少に応じた速度指令パターンを設定記憶可能の設定器122に設定しておき、目標張力演算部76から出力される目標張力Tsと経糸張力T1との張力偏差ΔTを偏差発生器としての減算部124で発生し、起動準備信号S4が信号発生器126に入力している間、入力している張力偏差ΔTを用いてその張力偏差ΔTに応じた大きさの速度指令−Vを設定器122から信号発生器126に読み出して出力する。
【0087】
設定器122に設定される速度指令は、図8(A)に示すように、張力偏差ΔTの大きさに応じて直線的に変化するパターン1としてもよいし、張力偏差ΔTの大きさに応じて曲線状に変化するパターン2としてもよく、さらには図8(B)に示すように張力偏差ΔTの大きさに応じて段階的に変化するパターン3としてもよい。
【0088】
パターン1における動作の具体例を図9(C)に示し、その場合の経糸ビームの回転速度を図9(D)に示す。また、図9(D)における起動準備時の経糸ビームの回転速度の9Eの部分を拡大して図9(E)に示す。信号発生器126を信号を周期的に出力するデジタル回路で構成すると、図9(E)から明らかなように、起動準備時、経糸ビームの回転速度は段階的に変速減速される。デジタル回路の代えて、アナログ回路で構成し、信号を連続的に出力するようにしてもよい。
【0089】
上記のようにして起動準備信号が発生されて、経糸ビームの駆動が開始されてから経糸張力が目標張力Ts0に達する前までの駆動期間において、経糸張力の張力偏差ΔTの減少に応じて経糸ビームの回転速度が減速されるようにされている。
【0090】
図示してはいないが、起動準備時制御部120は、起動準備完了信号S10を発生させるために、図2に示す実施例における比較器80と同等の比較器を備えている。
【0091】
図2に示す実施例と図7に示す実施例とを組み合わせて、経糸ビームを図10(A)に示すように、先ず時刻t0からt1にかけて一定の速度で高速回転させ、次いで時刻t1からt2にかけて所定の減少量で漸次減速させ、その後時刻t2から一定の速度で低速回転させてもよい。
【0092】
図2及び図7の実施例を組み合わせた場合、上記の代わりに、経糸ビームを図10(B)に示すように、先ず時刻t0からt1にかけて一定の速度で高速回転させ、次いで時刻t1からt2にかけて第1の減少量αにより漸次減速させ、その後時刻t2から第2の減少量βにより漸次減少させてもよい。
【0093】
上記いずれの実施例においても、起動準備時の最終的な目標張力Ts0を1つ用いる代わりに、起動準備の駆動期間を少なくとも1つの中間期間を含む3以上の駆動期間に分けて、経糸張力を各駆動期間において対応する目標張力Ts0に調整することにより、速度指令を漸次又は段階的に減少させてもよい。
【0094】
また、少なくとも1つの中間期間の目標張力を最終的な目標張力又は定常運転時の目標張力より大きい値とし、その中間期間において経糸張力をそのような大きい値に調整した後、最終的な目標張力に調整するようにしてもよい。そのようにすれば、実際の経糸張力が最終目標張力からずれる、という従来技術の問題を解消することができて、より正確に最終目標張力に調整することが可能になり、より好ましい。
【0095】
上記実施例では、経糸張力T1として、経糸シート全体の張力を検出しているが、その代わりに一部の経糸の張力を検出してもよい。また、経糸張力として、バックローラ16の歪みを検出する代わりに、バックローラ16の変位を検出してもよいし、バックローラ16以外の部材、例えば経糸又は織布に接触する部材の歪みや変位を検出してもよい。
【0096】
設定器や制御器等の各機器として、独立したハード構成の機器を用いる代わりに、それらの機能をソフトウエア処理で実行するコンピュータのような共通の機器を用いてもよい。
【0097】
上記のような経糸ビームによる張力調整動作は、それ自体を単独で実行させるのみならず、巻取ロールによる織段防止動作のような他の織段防止動作とを組み合わせて実行させてもよい。また、経糸ビームによる張力調整動作は、織機の停止時、停止期間中又は起動時等、起動準備時以外に実行する、フェルコントロール、開口装置のレベリング動作、超起動、バックスタート(空打ち)等の他の織段防止動作と組み合わせて実行させてもよい。
【0098】
本発明は、変わり織りの制御にも適用することができる。例えば、複数種類の緯糸を緯入れピックの応じて切り換える織機において、緯糸密度毎に定常運転中の目標張力を切り換える場合に、起動準備時の目標張力も同様に経糸密度毎に定められる目標張力に切り換えるようにしてもよい。
【0099】
【表1】
【0100】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る織段防止装置を備えている織機の概略図である。
【図2】図1に示す織段防止装置の一部を構成する送出制御装置のブロック線図である。
【図3】図2に示す送出制御装置による動作を説明するための図である。
【図4】図1に示す送出制御装置における起動準備時制御部の第2の実施例を示す図である。
【図5】図4に示す起動準備時制御部の動作を説明するための図である。
【図6】図1に示す送出制御装置における起動準備時制御部の第3の実施例を示す図である。
【図7】図2に示す送出制御装置における起動準備時制御部の第4の実施例を示す図である。
【図8】図7に示す起動準備時制御部の速度パターンの設定例を示す図である。
【図9】図7に示す起動準備制御部の動作を説明するための図である。
【図10】起動準備時制御部の他の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
D 巻径信号
Tr 定常運転時の目標張力
Ts0,Ts1 起動準備時の目標張力
V1 基本送出速度
V2 補正送出速度
V,−VH,−VL,V3,V4 速度指令
S0 運転信号
S1 回転速度信号
S2 主軸回転角度信号
S3 巻取モータ回転角度信号
S4 起動準備信号
S5 起動準備完了信号
S6 打ち込み密度信号
S7 織機回転数信号
S8 送出速度信号
S9 送出速度指令
S10 切換信号
10 織機
12 経糸
14 経糸ビーム
16 バックローラ
18 綜絖枠
20 筬
22 織前
24 織布
26 ガイドローラ
28 服巻ロール(巻取ローラ)
30 プレスロール
32 布巻ビーム
34 送出モータ
36 送出機構
38 巻径センサ
40 送出制御装置
42 タコジェネレータ
44 経糸張力センサ
46 主軸
48,50 運動変換機構
52 緯糸
54 巻取モータ
56 巻取機構
58,60 エンコーダ
62 巻取制御装置
84H,84L 設定器
86,92 加算部
92,124 減算部
98 ドライバー
【発明の属する技術分野】
本発明は、織機の起動に先だって経糸張力を目標張力に設定する、経糸ビームの駆動方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
織機においては、停台中における経糸の伸びや、停台原因を解消する処理等に起因して織布に織段が発生することから、そのような織段の発生を防止するための動作を織機に行わせている。
【0003】
織機における織段防止技術の1つとして、織機の運転開始前に経糸の張力を検出し、その検出結果に基づいて経糸ビームを単独に正転又は逆転させ、経糸張力が予め設定された目標張力と一致した状態で織機の運転を開始するものがある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭59−157355号公報
【0005】
【解決しようとする課題】
しかし、上記の文献には、経糸ビームの駆動に関する具体的な態様(速度指令の出力態様)については何ら開示されていない。
【0006】
一方、織機においては、経糸張力(織前近傍の経糸張力)をより正確に調整(設定)することが織段防止に有効である。
【0007】
しかし、実際には、経糸張力は、筬、綜絖、経て止め装置(ドロッパ)等の経糸や織布に接触する部材による摩擦の影響を受け、経糸ビームの回転が停止してから、経糸張力が全体的に均衡する(織前側と経糸ビーム側の各経糸張力がほぼ同じになる)までに時間がかかる。
【0008】
そのため、経糸ビームを高速度で駆動させて上記張力調整動作を行うと、経糸ビームが停止してから、経糸張力がその後の全体的な張力均衡により目標張力を下回る、という問題がある。そのようなことから、張力調整動作をより正確に行うためには、経糸ビームを低速度で駆動させる必要がある。
【0009】
しかし、経糸ビームを最初から低速で駆動すると、織機が運転開始されるまでにさらに時間がかかることになり、織布の生産性の低下を招く。このような問題は、織布向上においては無視することができない問題である。
【0010】
本発明の目的は、起動準備時に対応する目標張力が設定され、起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を対応する目標張力にした後、運転を再開する織機において、より短い起動準備時間の基で、経糸張力をより正確に目標張力に調整することにある。
【0011】
【解決手段、作用、効果】
本発明に係る経糸ビームの駆動方法は、起動準備時の経糸の目標張力を設定しておき、起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を目標張力にする織機に適用される。
【0012】
そのような駆動方法は、前記経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、起動準備時には、前記経糸ビームを回転駆動させる際に、先ず前記低速度より高い速度でかつ経糸張力を前記目標張力に近づける方向に駆動させ、次いで前記経糸ビームを前記低速度まで減速させてその速度を維持することを含む。
【0013】
本発明に係る経糸ビームの駆動装置は、起動準備信号が発生されたことにより、経糸張力を起動準備時に対応して予め定められる目標張力にすべく経糸ビームを回転駆動させる演算制御部と、起動時に、前記経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を設定する第1の設定器と、起動準備時に経糸張力を前記目標張力に近づけるべく前記経糸ビームを前記低速度より高い速度で駆動させるための高速度を設定する第2の設定器とを含む。前記演算制御部は、前記起動準備信号が発生されたことにより、前記経糸ビームを前記目標張力に近づける方向に経糸ビームを前記高速度で駆動させ、次いで前記経糸ビームを前記低速度まで減速させてその速度を維持させつつ、経糸張力が前記目標張力に達することにより前記経糸ビームを停止させる。
【0014】
本発明に係る他の駆動方法は、経糸張力を前記目標張力に近づける方向に前記経糸ビームを駆動させて、経糸張力が前記目標張力に達したことにより経糸ビームを停止させる過程において、前記経糸張力を前記目標張力に近づける駆動の際に、経糸張力を検出し、前記目標張力に対する経糸張力の偏差量の減少に応じて前記経糸ビームの速度を減速させるステップを含む。
【0015】
本発明に係る他の駆動装置において、演算制御部は、前記起動準備信号が発生されたことにより前記経糸ビームを回転駆動させるに際し、経糸張力が前記目標張力に達する前の駆動期間において、前記目標張力に対する経糸張力の偏差量の減少に応じて前記経糸ビームの速度を減速させる。
【0016】
経糸張力を目標張力に近づける際に、経糸ビームを高速度で駆動させた後に、経糸ビームの速度を減速させると、織前近傍における経糸張力と織布張力とが均衡した状態におかれる。このため、経糸張力が目標張力に達して経糸ビームを停止させても、従来のようにその後経糸張力が張力の均衡に起因して変化する、という不都合を生じることなく、経糸張力は目標張力に維持される。その結果、織前に作用する力が所望の状態となった状態で織機が起動されて、筬打ちが行われるため、織段が解消される。
【0017】
駆動方法は、さらに、前記経糸ビームの減速時に、経糸張力を検出し、検出値が前記目標張力に達したことにより前記経糸ビームを停止させることを含むことができる。
【0018】
前記高い速度から前記低速度への切換は、検出した経糸張力が前記目標張力に達する前の所定の値に達したことにより行うようにしてもよい。これの代わりに、前記高い速度から前記低速度への切換は、起動準備信号が発生してから所定時間経過したことにより行うようにしてもよい。
【0019】
前記経糸ビームを前記高い速度で駆動させる際の速度を起動準備動作開始時の経糸の張力偏差に応じて決定することを含むことができる。
【0020】
他の駆動方法において、経糸張力が前記目標張力に達するまでの間に、前記減速させるステップを複数回実行してもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1を参照するに、織機10において、経糸12は、これが巻かれている経糸ビーム(送出ビーム)14から、バックローラ16、複数の綜絖枠18及び筬20を経て織前22に繋がっている。製織された織布24は、ガイドローラ26を介して服巻ロール28に達し、服巻ロール28と一対のプレスロール30とにより布巻ビーム32に向けて送り出されて、布巻ビーム32に巻き取られる。
【0022】
経糸ビーム14は、送出モータ34により歯車のような送出機構36を介して回転されて複数の経糸12をシートの形で送出する。経糸ビーム14に巻かれている経糸12の量(巻径)は、経糸ビーム14からの経糸12の送り出しにともなって、漸次減少する。
【0023】
このため、経糸ビーム14の巻径は巻径センサ38により検出され、検出された巻径信号Dは送出モータ34を制御する送出制御装置40に供給される。送出モータ34の出力軸の回転速度は、タコジェネレータ42によって検出され、検出された回転速度信号S1は送出制御装置40に供給される。
【0024】
経糸12に作用している経糸張力(実際値)は、バックローラ16に作用する荷重を検出する経糸張力センサ44により検出され、検出された経糸張力T1は送出制御装置40に供給される。
【0025】
各綜絖枠18は、主軸モータ(図示せず)により回転される主軸46の回転運動を受ける運動変換機構48を介して上下に往復駆動されて、経糸12を上下に開口させる。
【0026】
筬20は、主軸46の回転運動を受ける運動変換機構50により揺動駆動されて、経糸12の開口に緯入れされた緯糸52を織前22に打ち付ける。
【0027】
服巻ロール28は、巻取モータ54の回転運動を受ける巻取機構56により回転されて、2つのプレスロール30とそれぞれ共同して織布24を布巻ビーム32に送り出す。このため、服巻ロール28は巻取ロールとして作用する。
【0028】
主軸46及び巻取モータ54の回転角度は、それぞれ、エンコーダ58及び60によって検出される。検出された主軸回転角度信号S2及び巻取モータ回転角度信号S3は、巻取モータ54を制御する巻取制御装置62に供給される。また、主軸回転角度信号S2は送出制御装置40にも供給される。
【0029】
布巻ビーム32は、布巻ビーム32に巻かれた織布24の周速度が織布24の送り速度より若干速くなるように、主軸46の回転運動を受ける巻取トルク調整機構64により滑り軸受け(図示せず)を介して回転されて、織布24の巻取張力を一定に維持すべく回転される。
【0030】
起動準備時に用いる経糸の複数の目標張力Ts0,Ts1は、織機10の起動に先だって、送出制御装置40に設定される。起動準備時、送出制御装置40は、図示しない織機主制御装置から起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を起動準備時の目標張力Ts1に調整し、次いで目標張力Ts0に調整した後、起動準備完了信号を出力する。
【0031】
目標張力Ts0は、起動準備によって経糸張力T1を調整しなければならない値であり、定常運転時の目標張力Trと同じであってもよいし、異なってもよい。目標張力Ts1は、速度指令の切換のために用いる値であり、目標張力Ts0の手前(これ未満の値)に定められる。
【0032】
具体的には、送出制御装置40は、経糸ビーム14を低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、経糸ビーム14を起動準備時には、先ず設定されている低速度より高い速度でかつ経糸張力を定常運転時の目標張力に近づける方向に駆動させ、その後経糸張力T1を検出し、その検出値が目標張力Ts0に達した時点で経糸ビーム14を設定されている低速度まで減速させてその速度を維持させると共に、経糸張力T1が目標張力Ts0に達したことにより経糸ビーム14を停止させる。
【0033】
送出制御装置40と巻取制御装置62とを別個の回路構成とする代わりに、それらの機能をソフトウエアで実行するコンピュータのような共通の回路で構成としてもよい。
【0034】
図2を参照するに、経糸ビームの駆動装置の一部を構成する送出制御装置40は、定常運転時の経糸の目標張力Trを設定する設定器70と、設定器70に設定された目標張力T0を用いて起動準備動作を実行させる起動準備時制御部72と、定常運転時の制御を実行させる定常運転時制御部74とを含む。
【0035】
設定器70に設定される定常運転時の目標張力Trは、織物の種類のような製織条件や、停台回数のような停台状況によって異なる。このため、定常運転時の目標張力Trは、ときどき再設定(変更)される。
【0036】
起動準備時制御部72は、定常運転時の目標張力Trを基に起動準備時の経糸張力の目標張力Ts0,Ts1を目標張力演算部76で発生し、発生した目標張力Ts0,Ts1を第1の制御器78に供給する。
【0037】
目標張力演算部76には、起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を定常運転時の目標張力Trにより決定するための情報が定常運転時の目標張力Tr毎に予め設定されている。目標張力演算部76は、目標張力Trと設定されている情報とに基づいて起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。決定された目標張力Ts0,Ts1は、第1の制御器80に出力される。
【0038】
そのような情報は、定常運転時の目標張力Trの値(張力値)をパラメータとする関数を含むことができる。この場合、目標張力演算部76は、定常運転時の目標張力Trを用いて関数により規定される演算を行って起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0039】
上記情報は、関数に加えて、定常運転時の目標張力Trを補正するための補正係数kを含み、関数は定常運転時の目標張力Trと補正係数kとを乗算する数式を含むことができる。この場合、目標張力演算部76は、定常運転時の目標張力Trと補正係数kとの乗算を行うことによって起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0040】
これの代わりに、上記情報は、関数に加えて、定常運転時の目標張力Trを補正するための補正値kを含み、関数は定常運転時の目標張力値Trと補正値kとを加算する数式を含むことができる。この場合、目標張力演算部76は、定常運転中の目標張力値Trと補正値kとの加算を行って起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0041】
上記のような関数に代えて、定常運転時の目標張力Tr毎に定められて起動準備時の目標張力Tsを含むデータ群であって定常運転時の目標張力Trを用いて選択可能に記憶されたデータ群を情報としてもよい。この場合、目標張力演算部76は、定常運転時の目標張力値Trに対応するデータをデータ群から選び出して起動準備時の目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0042】
上記のような、関数、補正係数、補正値及びデータ群は、織機の主軸の回転角度(経糸開口量)毎に設定してもよい。この場合、主軸回転角度信号S2が目標張力演算部76に入力されて、目標張力演算部76は、起動準備信号S4が入力したときに、設定されている情報、定常運転時の目標張力Tr及び織機の停止期間中に検出された主軸回転角度信号S2を用いて、主軸の回転角度に対応する目標張力Ts0,Ts1を決定する。
【0043】
目標張力Tsの決定に用いる上記のような情報は、目標張力演算部76に直接設定してもよいし、織機の主制御装置(図示せず)に設定してもよい。また、そのような情報は、テンキーを利用して設定してもよいし、記憶媒体を用いて設定してもよい。
【0044】
補正係数k及び補正値kを用いる場合は、補正なし、と設定してもよい。この場合、補正係数kであれば1であり、補正値kであれば0である。したがって、いずれの場合も、目標張力演算部76は定常運転時の目標張力Trを起動準備時の目標張力Ts0,Ts1として第1の制御器80に供給する。
【0045】
そのようにすれば、定常運転時の目標張力Trの変更にともない、起動準備時の使用する目標張力Ts1,Ts0が自動的に決定されるため、いわゆる変更もれによる織布品質のトラブル(織段)が未然に防止される。
【0046】
目標張力演算部76を設ける代わりに、設定器を介して目標張力Ts1,Ts0を目標値Trとは独立的に設定するように構成してもよい。
【0047】
第1の制御器78は、比較器80、設定器84H,84L及び切換器82を備えている。
【0048】
第1の制御器78は、起動準備信号S4が入力したことにより、先ず目標張力演算部76から供給される目標張力Ts1と張力センサ44から供給される経糸張力T1とを比較器80において比較し、両者が一致したことにより対応する切換信号S10を比較器80から切換器82に出力し、その後所定時間経過したこと又は経糸張力T1が目標張力Ts0と一致したことにより起動準備完了信号S5を比較器80から切換器82に出力する。
【0049】
起動準備完了信号S5は、図示しない主制御装置にも供給される。起動準備完了信号S5が発生されると、送出制御装置40は、起動準備動作を終了する。織機はその後起動される。
【0050】
目標張力Ts0,Ts1は、第1の制御器78に同時に供給してもよいし、順次供給してもよい。また、目標張力Ts0,Ts1は、起動準備信号S4が入力したことにより先ず目標張力Ts1を目標値演算部76から出力するか又は第1の制御器78に取り込み、切換信号s0が発生されたことにより目標張力Ts0を目標値演算部76から出力するか又は第1の制御器78に取り込むようにしてもよく、起動準備動作が行われるまでに設定されていればよい。
【0051】
切換器82の一方の入力端子には、設定器84Hに設定された速度指令−VHが入力されており、他方の入力端子には設定器84Lに設定された速度指令−VLが入力されている。
【0052】
速度指令−VHは、起動準備時に送出モータ34ひいては経糸ビーム14を高速度でしかも経糸張力T1を起動準備時の目標張力Ts1に近づける方向に駆動させる指令であり、速度指令−VLは、その後送出モータ34(経糸ビーム14)を速度指令−VHよりも低い速度で駆動させて目標張力Ts0に近づけるための指令である。いずれの速度指令−VH,−VLも送出モータ34を逆転させる負の値である。
【0053】
切換器82は、起動準備信号S4が入力したときから、切換信号S10が入力するまで、設定器84Hに設定された速度指令−VHを加算部86の一方の入力端子に出力し続ける。その後経糸張力T1が目標張力Ts1に達してから、目標張力Ts0に達して、起動準備完了信号S5が入力するまで、設定器84Lに設定された速度指令−VLを加算部86の一方の入力端子に出力し続ける。
【0054】
しかし、経糸張力T1画目標張力Ts0に達して、起動準備完了信号S5が出力されると、速度指令が0出力となって経糸ビーム14がさらに停止するから、経糸張力T1は起動準備動作により目標張力演算部76で発生した最終的な目標張力Ts0に保たれる。
【0055】
起動準備信号S5は、織機の動作全体を制御する図示しない主制御装置にも供給される。主制御装置は、この信号S5の入力により、織機を運転すべく運転信号S0を出力する。
【0056】
定常運転時制御部74は、経糸12を送出する基本送出速度V1を発生する基本速度発生器88と、経糸12の張力偏差を解消する補正送出速度V2を発生する第2の制御器90と、両速度V1及びV2を加算する加算部92とを備えている。
【0057】
緯糸の打ち込み密度を表す打ち込み密度信号S6と織機の回転数を表す織機回転数信号S7とは基本速度発生器88に入力され、設定器70に設定された目標張力Trと経糸張力センサ44からの張力信号T1とは第2の制御器90に供給される。織機の定常運転を指令する運転信号S0は、主制御装置から基本速度発生器88及び第2の制御器90に供給される。
【0058】
基本速度発生器88は、織機の運転時に発生されるオンの運転信号S0が供給されている間、織機回転数信号S7及び張力信号T1を基に、製織すべき織布24の種類に応じた値、すなわち織布の巻取速度に対応する経糸12の送出速度を算出し、算出した速度を基本送出速度V1として加算部92の一方の入力端子に出力する。
【0059】
第2の制御器90は、張力センサ44から供給される張力信号T1と、設定器70に予め設定された目標張力Trとを基に、経糸に作用している張力(経糸張力)T1が目標張力Trとなるような補正送出速度V2を算出し、算出した補正送出速度V2を加算部92の他方の入力端子に出力する。
【0060】
加算部92は、両入力信号V1及びV2を加算して、加算した信号を定常運転時の速度指令V3を加算部86の他方の入力端子に出力する。しかし、定常運転時制御部74、特に第2の制御器88及び基本速度信号発生器90は、オンの運転信号S0が入力しているとき、すなわち織機の運転中のみに作用するだけであるから、起動準備時には速度指令V3は加算部92から出力されない。
【0061】
このため、加算部86は、起動準備時であると、起動準備制御部72の出力信号−VH又は−VLを速度指令として巻径補正器94に出力し、定常運転時であると、定常運転時制御部74の速度指令V3を加算信号V4として巻径補正器94に出力する。
【0062】
巻径補正器94は、図1に示す巻径センサ38からの巻径信号Dに基づいて、加算部86からの加算信号V4を補正し、補正した送出速度信号S8を減算部96の一方の入力端子に出力する。
【0063】
減算部96は、巻径補正器94からの送出速度信号S8から回転速度信号S1を減算し、その減算結果を送出速度指令S9としてドライバー98に出力する。ドライバー98は、送出速度指令S9に対応して、送出モータ34を駆動させる増幅回路として作用する。
【0064】
具体的には、ドライバー98は、送出モータ34を入力する送出速度指令S9に応じて回転させる電圧を発生する増幅回路であり、減算部96からの送出速度指令S9が正であれば、送出モータ34を正転させ、負であれば送出モータ34を逆転させる。
【0065】
このため、送出制御装置40は、信号S1及びS9を用いて、経糸ビーム14から送り出される経糸12の速度が送出速度指令S9に応じた速度になるように、送出モータ34を制御するフィードバック回路の機能を備えている。
【0066】
起動準備時、送出制御装置40は、起動準備信号S4が入力したことにより、先ず経糸張力T1を目標張力Ts0に急速に近づける速度指令−VHに対応する信号S9で送出モータ34を速度VHに対応する速度で逆転駆動させ、次いで経糸張力T1が目標張力Ts1に一致したことにより速度指令−VHよりも小さい速度指令−VLに対応する信号S9で送出モータ34(ひいては、経糸ビーム14)を速度VLに対応する速度で逆転駆動させる。
【0067】
したがって、織機の停台により生じた経糸の伸び等により経糸張力T1が低下したとしても、送出制御装置40は、起動準備時に経糸ビーム14を、先ず経糸張力が起動準備時の目標張力Ts0に急速に近づく方向に高速度で駆動させ、次いで経糸ビーム14を低速度に減速させてその速度を維持し、その後経糸張力T1が目標張力Ts0に達したことにより起動準備完了信号S10を発生して停止させる。その後、織機は起動(運転開始に)される。
【0068】
起動準備信号S4、切換信号S10、運転信号S0及び目標張力Ts0,Ts1,Trをそれぞれ、図3(A),(B),(C)及び(D)に示し、送出モータ34を上記のように駆動させたことによる経糸ビーム14の回転速度を図3(E)に示す。
【0069】
図3から明らかなように起動準備時、起動準備信号S4のオンにともない、送出モータ34ひいては経糸ビーム14は、先ず高速で逆転され、次いで経糸張力T1が目標張力Ts1に達すると発生される貴意理科恵心号S10のオンにともない低速で逆転される。これにより、経糸張力T1は、先ず高速度で目標張力Ts1に近つけられ、次いで低速度で目標張力Ts0に近づけられる。
【0070】
上記のように、送出制御装置40は、経糸張力T1を定常運転時の目標張力Trに近づける際に、経糸ビーム14の速度を減速させる。これにより、織前近傍における経糸張力と織布張力とが均衡した状態におかれる。
【0071】
上記の結果、経糸張力T1が目標張力Ts0に達して経糸ビーム14を停止させても、従来のように経糸張力T1が張力の均衡に要する時間に起因して変化する、という不都合を生じることなく、経糸張力T1は目標張力Ts0に維持される。
【0072】
起動準備時における送出モータ34(ひいては、経糸ビーム14)の高速度時における回転速度は、上記のように一定に維持することなく、漸次又は段階的に減少させてもよい。具体的には、速度指令の値を、起動準備信号S4の発生時からの経過時間により減少させてもよいし、起動準備時の目標張力Ts1又はTs0を経糸張力T1との偏差量に応じて減少させてもよい。
【0073】
また、起動準備時の速度指令を高速駆動用−VHと低速駆動用−VLの2種類設定する代わりに、それらの速度指令を、それらが漸次又は段階的に減少するように、さらに細分化して設定しておき、切換用の複数の目標張力Ts1・・・Ts1を第1の制御器80に供給して、起動準備時に細分化された速度指令を起動準備信号S4の発生時からの経過時間若しくは目標張力Ts1又はTs0と経糸張力T1との偏差に応じて順次切り換えて出力するようにしてもよい。
【0074】
さらに、起動準備信号S4の発生時における経糸張力T1と最終的な目標張力Ts0との張力偏差ΔTに応じて、高速駆動用の速度指令値−VHを決定するようにすれば、張力偏差量ΔTに応じて速度指令値が決定されるから、起動準備時の張力設定又は調整動作時間の長さを揃えることができる。
【0075】
図4を参照するに、第1の制御器78は、起動準備信号S4によりオン(作動状態)にされるタイマー102を用い、図5に示すように起動準備信号S4が入力したときから設定器104に設定された時間が経過したことにより切換信号S10を切換器82に出力する。
【0076】
切換器82は、起動準備信号S4が入力したときから切換信号S10が入力するまでは大きい速度指令−VHを出力し、切換信号S10が入力すると、小さい速度指令−VLを出力する。
【0077】
第1の制御器78において、起動準備完了信号S5は、経糸センサからの経糸張力T1と、図示しない設定器に設定された最終的な目標張力Ts0とを比較器106で比較し、両者が一致したとき比較器106から発生する。
【0078】
上記のように、第1の制御器78は、速度指令を、起動準備信号S4の発生時からの経過時間により減少させる。3以上の速度指令を出力する場合は、3以上の速度指令を切換器82に設定しておき、速度指令を切り換えるべきタイミングに到達するたびに切換信号S10をタイマー102から出力するようにすればよい。
【0079】
起動準備の際には、本発明の他に、他の織段防止動作を実行する用にしてもよい。例えば、厚段対策として、織前位置を前方に移動させる目的で服巻ロール(すなわち、巻取ロール)を正転させてもよい。これにともなって、織布張力ひいては経糸張力T1画逆に上昇する場合がある。
【0080】
上記した実施例では、起動準備直前の経糸張力が目標値以下になっているものとし、経糸ビームを専ら逆転させている。したがって、起動準備直前時の経糸張力が目標張力を上回っている場合にも対応可能に構成すればよい。
【0081】
また、上記した実施例では、起動準備時の高い速度指令値について、常に同じ値としているため、織機停台中における経糸張力の低下(変動)の大小により、起動準備時の上記した経糸張力の調整に要する時間が変わることになる。このため、起動準備時の経糸張力の偏差が性であるか又は負であるか、さらにはその偏差量の大きさに応じて、速度指令値VH,VLを決定することが望ましい。より具体的には、図2及び図4における設定器84H,84Lを図6のように構成することができる。
【0082】
図6を参照するに、起動準備時制御部110は、経糸張力T1と起動準備時の目標張力Ts0との差(張力偏差)ΔTに応じた速度指令−VH1、−VH2・・・及び−VL1,−VL2・・・を設定器112に設定しておき、起動準備信号S4が偏差発生器114に入力したとき、張力偏差ΔTを張力偏差検出器としての偏差発生器114から速度信号発生器116及び118に出力し、張力偏差ΔTに応じた大きさの速度指令−VH又は−VLを設定器112から速度信号発生器116又は118に読み出して出力する。
【0083】
張力偏差ΔTに応じた速度指令は、例えば表1に示すように、張力偏差ΔTを用いて読み出すことができるように、テーブルの形に設定器112に設定されている。起動準備完了信号S10は、偏差発生器114から発生される。
【0084】
より詳しくは、表1について、経糸張力が目標値を上回っているか又は逆に下回っているか、換言すれば張力偏差がプラスであるかマイナスであるかという点に対応して、高速度の速度指令値−VH及び低速殿速度指令値−VLがそれぞれ定められており、さらには高速度の速度指令値VHについて張力偏差の大小により(より具体的には、50kg・f以上であるか否かという点に対応して)設定されている。
【0085】
このため、速度指令信号発生器116,118は、起動準備時における張力偏差ΔTを受けて対応する速度指令値−VH,−VLをそれぞれ出力することができ、後段の切換器82は、前記したように起動準備信号S4の発生時からの経過時間、又はたちと張力の偏差の解消状況により速度指令値−VHから−VLに切換、さらには目標張力Ts0に到達した時点で速度指令値をゼロ出力にすることができる。
【0086】
図7を参照するに、第1の制御器120は、経糸張力T1と起動準備時の目標張力Ts0との差(張力偏差)ΔTの減少に応じた速度指令パターンを設定記憶可能の設定器122に設定しておき、目標張力演算部76から出力される目標張力Tsと経糸張力T1との張力偏差ΔTを偏差発生器としての減算部124で発生し、起動準備信号S4が信号発生器126に入力している間、入力している張力偏差ΔTを用いてその張力偏差ΔTに応じた大きさの速度指令−Vを設定器122から信号発生器126に読み出して出力する。
【0087】
設定器122に設定される速度指令は、図8(A)に示すように、張力偏差ΔTの大きさに応じて直線的に変化するパターン1としてもよいし、張力偏差ΔTの大きさに応じて曲線状に変化するパターン2としてもよく、さらには図8(B)に示すように張力偏差ΔTの大きさに応じて段階的に変化するパターン3としてもよい。
【0088】
パターン1における動作の具体例を図9(C)に示し、その場合の経糸ビームの回転速度を図9(D)に示す。また、図9(D)における起動準備時の経糸ビームの回転速度の9Eの部分を拡大して図9(E)に示す。信号発生器126を信号を周期的に出力するデジタル回路で構成すると、図9(E)から明らかなように、起動準備時、経糸ビームの回転速度は段階的に変速減速される。デジタル回路の代えて、アナログ回路で構成し、信号を連続的に出力するようにしてもよい。
【0089】
上記のようにして起動準備信号が発生されて、経糸ビームの駆動が開始されてから経糸張力が目標張力Ts0に達する前までの駆動期間において、経糸張力の張力偏差ΔTの減少に応じて経糸ビームの回転速度が減速されるようにされている。
【0090】
図示してはいないが、起動準備時制御部120は、起動準備完了信号S10を発生させるために、図2に示す実施例における比較器80と同等の比較器を備えている。
【0091】
図2に示す実施例と図7に示す実施例とを組み合わせて、経糸ビームを図10(A)に示すように、先ず時刻t0からt1にかけて一定の速度で高速回転させ、次いで時刻t1からt2にかけて所定の減少量で漸次減速させ、その後時刻t2から一定の速度で低速回転させてもよい。
【0092】
図2及び図7の実施例を組み合わせた場合、上記の代わりに、経糸ビームを図10(B)に示すように、先ず時刻t0からt1にかけて一定の速度で高速回転させ、次いで時刻t1からt2にかけて第1の減少量αにより漸次減速させ、その後時刻t2から第2の減少量βにより漸次減少させてもよい。
【0093】
上記いずれの実施例においても、起動準備時の最終的な目標張力Ts0を1つ用いる代わりに、起動準備の駆動期間を少なくとも1つの中間期間を含む3以上の駆動期間に分けて、経糸張力を各駆動期間において対応する目標張力Ts0に調整することにより、速度指令を漸次又は段階的に減少させてもよい。
【0094】
また、少なくとも1つの中間期間の目標張力を最終的な目標張力又は定常運転時の目標張力より大きい値とし、その中間期間において経糸張力をそのような大きい値に調整した後、最終的な目標張力に調整するようにしてもよい。そのようにすれば、実際の経糸張力が最終目標張力からずれる、という従来技術の問題を解消することができて、より正確に最終目標張力に調整することが可能になり、より好ましい。
【0095】
上記実施例では、経糸張力T1として、経糸シート全体の張力を検出しているが、その代わりに一部の経糸の張力を検出してもよい。また、経糸張力として、バックローラ16の歪みを検出する代わりに、バックローラ16の変位を検出してもよいし、バックローラ16以外の部材、例えば経糸又は織布に接触する部材の歪みや変位を検出してもよい。
【0096】
設定器や制御器等の各機器として、独立したハード構成の機器を用いる代わりに、それらの機能をソフトウエア処理で実行するコンピュータのような共通の機器を用いてもよい。
【0097】
上記のような経糸ビームによる張力調整動作は、それ自体を単独で実行させるのみならず、巻取ロールによる織段防止動作のような他の織段防止動作とを組み合わせて実行させてもよい。また、経糸ビームによる張力調整動作は、織機の停止時、停止期間中又は起動時等、起動準備時以外に実行する、フェルコントロール、開口装置のレベリング動作、超起動、バックスタート(空打ち)等の他の織段防止動作と組み合わせて実行させてもよい。
【0098】
本発明は、変わり織りの制御にも適用することができる。例えば、複数種類の緯糸を緯入れピックの応じて切り換える織機において、緯糸密度毎に定常運転中の目標張力を切り換える場合に、起動準備時の目標張力も同様に経糸密度毎に定められる目標張力に切り換えるようにしてもよい。
【0099】
【表1】
【0100】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る織段防止装置を備えている織機の概略図である。
【図2】図1に示す織段防止装置の一部を構成する送出制御装置のブロック線図である。
【図3】図2に示す送出制御装置による動作を説明するための図である。
【図4】図1に示す送出制御装置における起動準備時制御部の第2の実施例を示す図である。
【図5】図4に示す起動準備時制御部の動作を説明するための図である。
【図6】図1に示す送出制御装置における起動準備時制御部の第3の実施例を示す図である。
【図7】図2に示す送出制御装置における起動準備時制御部の第4の実施例を示す図である。
【図8】図7に示す起動準備時制御部の速度パターンの設定例を示す図である。
【図9】図7に示す起動準備制御部の動作を説明するための図である。
【図10】起動準備時制御部の他の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
D 巻径信号
Tr 定常運転時の目標張力
Ts0,Ts1 起動準備時の目標張力
V1 基本送出速度
V2 補正送出速度
V,−VH,−VL,V3,V4 速度指令
S0 運転信号
S1 回転速度信号
S2 主軸回転角度信号
S3 巻取モータ回転角度信号
S4 起動準備信号
S5 起動準備完了信号
S6 打ち込み密度信号
S7 織機回転数信号
S8 送出速度信号
S9 送出速度指令
S10 切換信号
10 織機
12 経糸
14 経糸ビーム
16 バックローラ
18 綜絖枠
20 筬
22 織前
24 織布
26 ガイドローラ
28 服巻ロール(巻取ローラ)
30 プレスロール
32 布巻ビーム
34 送出モータ
36 送出機構
38 巻径センサ
40 送出制御装置
42 タコジェネレータ
44 経糸張力センサ
46 主軸
48,50 運動変換機構
52 緯糸
54 巻取モータ
56 巻取機構
58,60 エンコーダ
62 巻取制御装置
84H,84L 設定器
86,92 加算部
92,124 減算部
98 ドライバー
Claims (9)
- 起動準備時の経糸の目標張力を設定しておき、起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を前記目標張力にする、経糸ビームの駆動方法であって、
前記経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を予め設定しておき、起動準備時には、前記経糸ビームを回転駆動させる際に、先ず前記低速度より高い速度でかつ経糸張力を前記目標張力に近づける方向に駆動させ、次いで前記経糸ビームを前記低速度まで減速させてその速度を維持することを含む、経糸ビームの駆動方法。 - 前記経糸ビームの減速時に、経糸張力を検出し、検出値が前記目標張力に達したことにより前記経糸ビームを停止させることを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記高い速度から前記低速度への切換は、検出した経糸張力が目標張力に達する前の所定の値に達したことにより行う、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記高い速度から前記低速度への切換は、起動準備信号が発生してから所定時間経過したことにより行う、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記経糸ビームを前記高い速度で駆動させる際の速度を起動準備動作開始前の経糸の張力偏差に応じて決定することを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 起動準備時の目標張力を設定しておき、起動準備信号が発生されたことにより経糸ビームを回転駆動させて経糸張力を前記目標張力にする、経糸ビームの駆動方法であって、
前記経糸ビームを回転駆動させる際に、経糸張力を検出し、前記目標張力に対する経糸張力の偏差量の減少に応じて前記経糸ビームの速度を減速させるステップを含む、経糸ビームの駆動方法。 - 経糸張力が前記目標張力に達するまでの間に、前記減速させるステップを複数回実行する、請求項6に記載の方法。
- 起動準備信号が発生されたことにより、経糸張力を起動準備時に対応して予め定められる目標張力にすべく経糸ビームを回転駆動させる演算制御部と、起動時に、前記経糸ビームを低い速度で駆動させるための低速度を設定する第1の設定器と、起動準備時に経糸張力を前記目標張力に近づけるべく前記経糸ビームを前記低速度より高い速度で駆動させるための高速度を設定する第2の設定器とを含み、
前記演算制御部は、前記起動準備信号が発生されたことにより、前記経糸ビームを前記目標張力に近づける方向に経糸ビームを前記高速度で駆動させ、次いで前記経糸ビームを前記低速度まで減速させてその速度を維持させつつ、経糸張力が前記目標張力に達することにより前記経糸ビームを停止させる、経糸ビームの駆動装置。 - 起動準備信号が発生されたことにより、経糸張力を起動準備時に対応して予め定められる目標張力にすべく経糸ビームを回転駆動させる演算制御部を含み、
前記演算制御部は、前記起動準備信号が発生されたことにより前記経糸ビームを回転駆動させるに際し、経糸張力が前記目標張力に達する前の駆動期間において、前記目標張力に対する経糸張力の偏差量の減少に応じて前記経糸ビームの速度を減速させる、経糸ビームの駆動装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003117808A JP2004323998A (ja) | 2003-04-23 | 2003-04-23 | 経糸ビームの駆動方法及び装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003117808A JP2004323998A (ja) | 2003-04-23 | 2003-04-23 | 経糸ビームの駆動方法及び装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004323998A true JP2004323998A (ja) | 2004-11-18 |
Family
ID=33497547
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003117808A Pending JP2004323998A (ja) | 2003-04-23 | 2003-04-23 | 経糸ビームの駆動方法及び装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004323998A (ja) |
-
2003
- 2003-04-23 JP JP2003117808A patent/JP2004323998A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPS63145451A (ja) | 織機のたて糸張力制御方法 | |
EP1285984B1 (en) | Loom-operating method and loom-operating system | |
JP4142474B2 (ja) | 織機の織り段防止方法及び装置 | |
EP0594250B1 (en) | Improved device for automatically varying the position of the shed vertex in a loom | |
JP4189249B2 (ja) | 織機における織段防止装置 | |
JP4851495B2 (ja) | 織機の経糸制御装置 | |
JPH0360941B2 (ja) | ||
JP4156439B2 (ja) | 経糸制御方法 | |
JP2004323998A (ja) | 経糸ビームの駆動方法及び装置 | |
EP1331295A2 (en) | Method and apparatus for preventing weft bars in a loom | |
JP4159916B2 (ja) | 織機の経糸制御方法 | |
US6070619A (en) | Easing roller control method | |
JP3406823B2 (ja) | 織機の送出制御装置 | |
JPS62263347A (ja) | 変わり織り制御方法 | |
JP4616368B2 (ja) | 織機の織り段防止方法及び装置 | |
JP3576999B2 (ja) | 織機における織段防止方法及び装置 | |
JP4849659B2 (ja) | 織機の経糸制御方法 | |
JP2003003351A (ja) | 織機における織段防止方法及び装置 | |
JP2003221762A (ja) | 織機運転制御方法 | |
JP2001131845A (ja) | パイル経糸の張力制御方法 | |
JPH02259141A (ja) | 織機における織段発生防止方法 | |
JP3343494B2 (ja) | 織機の織段防止方法 | |
JP2004339660A (ja) | 織機における織段防止方法及び装置 | |
JP2002339195A (ja) | 織機における織段防止方法及び装置 | |
JP2004332169A (ja) | 織段防止装置における駆動量の決定方法及び装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20060112 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070822 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071218 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20080422 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |