JP2004323605A - 色素混合物、インク、インクセット、このインク又はインクセットを用いたインクジェット記録方法、着色体、及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素混合物、インク、インクセット、このインク又はインクセットを用いたインクジェット記録方法、着色体及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式記録材料、感熱転写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されている。また、ディスプレーではLCDやPDPにおいて、撮影機器ではCCDなどの電子部品において、カラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件に耐えうる色素がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
【0003】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、更にカラー記録が容易であること等から、急速に普及し、更に発展しつつある。インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式等がある。また、インクジェット記録には、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インク等が用いられる。
【0004】
このようなインクジェット記録に適したインクに用いられる色素に対しては、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)に対して強いこと、水や薬品に対する耐久性に優れていること、被記録材に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、更には、安価に入手できることが要求されている。特に、良好なシアン色相を有し、耐光性(光に対する耐久性)、耐オゾン性(オゾンガスに対する耐久性)及び耐湿性(高湿度下における耐久性)に優れる色素が強く望まれている。
【0005】
インクジェット記録に適したインクに用いられる水溶性シアン色素の骨格としてはフタロシアニン系やトリフェニルメタン系が代表的である。最も広範囲に報告され、利用されている代表的なフタロシアニン系色素は、概ね以下のA〜Hで分類される。
【0006】
A:Direct Blue 86、Direct Blue 87、Direct Blue 199、Acid Blue 249又はReactive Blue 71等の公知のフタロシアニン系色素
B:特許文献1〜3等に記載のフタロシアニン系色素
〔例えば、Cu−Pc−(SO3Na)m(SO2NH2)n : m+n=1〜4の混合物〕
C:特許文献4に記載のフタロシアニン系色素
〔例えば、Cu−Pc−(CO2H)m(CONR1R2)n : m+n=0〜4の数〕
D:特許文献5に記載のフタロシアニン系色素
〔例えば、Cu−Pc−(SO3H)m(SO2NR1R2)n : m+n=0〜4の数、且つ、m≠0〕
E:特許文献6に記載のフタロシアニン系色素
〔例えば、Cu−Pc−(SO3H)l(SO2NH2)m(SO2NR1R2)n :l+m+n=0〜4の数〕
F:特許文献7に記載のフタロシアニン系色素
〔例えば、Cu−Pc−(SO2NR1R2)n : n=1〜5の数〕
G:特許文献8、9等に記載のフタロシアニン系色素
〔置換基の置換位置を制御したフタロシアニン化合物、β−位に置換型が導入されたフタロシアニン〕
H:特許文献10に記載のピリジン環を有するフタロシアニン系色素
【0007】
現在一般に広く用いられているDirect Blue 86又はDirect Blue 199に代表されるフタロシアニン系色素については、一般に知られているマゼンタ色素やイエロー色素に比べ耐光性に優れるという特徴がある。フタロシアニン系色素は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンインクとしては余り好ましくない。そのためこれらの色素をシアンインクとして用いる場合は中性からアルカリ性の条件下で使用するのが好ましい。しかしながら、インクが中性からアルカリ性でも、用いる被記録材が酸性紙である場合印刷物の色相が大きく変化する可能性がある。
【0008】
さらに、昨今環境問題として取りあげられることの多い酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによってもグリーン味に変色及び消色し、同時に印字濃度も低下してしまう。
【0009】
一方、トリフェニルメタン系については、色相は良好であるが、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性において非常に劣る。
【0010】
今後、使用分野が拡大して、広告等の展示物に広く使用されると、光や環境中の活性ガスに曝される場合が多くなるため、特に、良好な色相を有し、耐光性および環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他SOxなど)耐性に優れ、安価な色素及びインクがますます強く望まれてくる。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たすシアン色素(例えば、フタロシアニン系色素)及びシアンインクを捜し求めることは、難しい。これまで、活性ガス耐性を付与したフタロシアニン系色素としては、特許文献3、8〜11等に開示されているが、色相、堅牢度(耐光性、耐オゾン性及び耐湿性等)すべての品質を満足させ、更には安価に製造可能なシアン色素及びシアンインクはいまだ得られていない。よってまだ市場の要求を充分に満足させるには至っていない。
【0011】
【特許文献1】
特開昭62−190273号公報
【特許文献2】
特開平7−138511号公報
【特許文献3】
特開2002−105349号公報
【特許文献4】
特開平5−171085号公報
【特許文献5】
特開平10−140063号公報
【特許文献6】
特表平11−515048号公報
【特許文献7】
特開昭59−22967号公報
【特許文献8】
特開2000−303009号公報
【特許文献9】
特開2002−249677号公報
【特許文献10】
特開2003−34758公報
【特許文献11】
特開2002−80762号公報
【特許文献12】
特開平9−316377号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、シアンインクとして良好な色相を有し、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性に優れたインクジェット記録に適したインク及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の色素混合物を用いたインクは、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
(1)下記式(1)で表される、少なくとも1つ以上の無置換スルファモイル基とイオン性親水性基を有する少なくとも1つ以上の置換スルファモイル基を有するフタロシアニン色素の混合物、
【化3】
[式(1)において、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物または金属ハロゲン化物を、R17及びR18はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、置換もしくは無置換のアルケニル基を、Aは架橋基をそれぞれ表し、隣接するR17、R18、Aどうしが互いに連結して環を形成しても良い。Y及びZは、それぞれ独立してハロゲン原子、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアリロキシ基、置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、置換もしくは無置換のアラルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアルケニルオキシ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のシクロアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、置換もしくは無置換のヘテロ環アミノ基、置換もしくは無置換のアラルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアルケニルアミノ基、置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、置換もしくは無置換のアラルキルチオ基、置換もしくは無置換のアルケニルチオ基を表す。但し、Y、Zのうち少なくとも1つは、スルホン酸基、カルボキシル基、またはイオン性親水性基を置換基として有する基である。m、nは1から3であり、且つmとnの和は2から4である。]
(2)前記式(1)において、Aはアルキレン、アリレン、キシリレンを表し、Y及びZはそれぞれ独立して、塩素原子、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アセチルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、ハロゲン原子から成る群から選択される置換基で置換されても良い。)、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシル基、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)、ナフトキシ基(スルホン酸基、アセチルアミノ基からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)、ベンジロキシ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、フェネチルオキシ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、アルキルアミノ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基から成る群から選択される置換基で置換されても良い。)アニリノ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)、ナフチルアミノ基(スルホン酸基または水酸基で置換されていても良い。)、ベンジルアミノ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、フェネチルアミノ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、アルキルチオ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基で置換されても良い。)又はアリールチオ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)であり、Y、Zのうち少なくとも1つは、スルホン酸基、カルボキシル基、またはイオン性親水性基を置換基として有する基である(1)に記載のフタロシアニン色素の混合物、
(3)式(1)においてMがCuである(1)または(2)に記載のフタロシアニン色素の混合物、
(4)式(1)の色素の混合物が、以下の2つの条件を満たす(1)から(3)のいずれか一項に記載のフタロシアニン色素の混合物、
イオン交換水で濃度を0.02g/l、pHを7〜8に調整したときのD65光源、2°視野、透過光路長10mmの測定条件下で、波長400nmから800nmの範囲の分光光度計による測定において、
1.400nmから800nmに少なくとも1つの吸収ピーク(λmax)を有し、640nmより長波長には吸収ピークを有さない。
2.613nmより短波長にλmaxを有する。
(5)式(1)が、フタロシアニン(顔料)をクロルスルホン化、又はスルホン酸基を有するフタロシアニン化合物もしくはその塩をクロロ化する事により、フタロシアニンスルホン酸クロリドを得、次いで下記式(3)の有機アミンとアミノ化剤を反応させて得られてなる(1)から(4)のいずれか一項に記載のフタロシアニン色素の混合物、
【化4】
(6)(1)から(5)のいずれか一項に記載のフタロシアニン色素の混合物を含有するインク、
(7)インクジェット記録用である(1)から(6)のいずれか一項に記載のインク、
(8)色素濃度の異なる2種以上のシアンインクを用いるインクジェットプリンタにおいて、少なくとも1種は(7)に記載のインクを用いることを特徴とするインクセット、
(9)インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、(7)に記載のインク又は(8)に記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録方法、
(10)被記録材が情報伝達用シートである(9)記載のインクジェット記録方法、
(11)情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有するシートである(10)記載のインクジェット記録方法、
(12)(6)から(8)のいずれか一項に記載のインク又はインクセットを含有する容器、
(13)(12)に記載の容器を有するインクジェットプリンタ、
(14)(6)から(8)のいずれか一項に記載のインク又はインクセットで着色された着色体、
(15)フタロシアニン(顔料)をクロルスルホン化、又はスルホン酸基を有するフタロシアニン化合物もしくはその塩をクロロ化する事により、フタロシアニンスルホン酸クロリドを得、上記有機アミンとアミノ化剤を反応させて得られてなる式(1)で表されるフタロシアニン色素の混合物の製造方法、
に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、フタロシアニン環に直接スルホン基を導入せず、1つ以上の無置換スルファモイル基とイオン性親水性基を有する少なくとも1つ以上の置換スルファモイル基で導入したフタロシアニン色素混合物及びそれを用いたインクである。我々は無置換スルファモイル基を有するフタロシアニン色素混合物は耐オゾン性が良好であることを見出し出願した(特許文献3参照)が、1つ以上の無置換スルファモイル基とイオン性親水性基を有する1つ以上の置換スルファモイル基を有する色素の混合物にすることによって極めてオゾンガスに対して耐性が優れることを見出した。
【0015】
本発明のシアンインクは、前記条件を備えた前記式(1)で表される色素混合物を含有し、シアン色として主にインクジェット記録用のインクとして使用される。
【0016】
一般にフタロシアニン誘導体は、その合成時において不可避的に、下記式(2)における置換基R1〜R16の置換位置(R1〜R16が結合しているベンゼン核上の位置を各々1位〜16位と定義する)異性体を含む場合があるが、これら置換位置異性体は互いに区別することなく同一誘導体として見なしている場合が多い。
【0017】
【化5】
【0018】
置換位置が異なるフタロシアニン誘導体を以下の三種類に分類して定義し、以下、置換位置が異なるフタロシアニン誘導体を説明する場合、下記(1)β−位置換型、(2)α−位置換型、(3)α、β−位混合置換型として記載する。
【0019】
(1)β−位置換型:(2及びまたは3位、6及びまたは7位、10及びまたは11位、14及びまたは15位に置換基を有するフタロシアニン化合物)
(2)α−位置換型:(1及びまたは4位、5及びまたは8位、9及びまたは12位、13及びまたは16位に置換基を有するフタロシアニン化合物)
(3)α、β−位混合置換型:(1〜16位の任意の位置に、置換基を有するフタロシアニン化合物:本発明の色素混合物)
【0020】
前記式(1)において、Mは、水素原子、金属原子又はその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表す。金属原子の具体例としては例えば、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。金属酸化物としてはVO、GeO等が挙げられる。また、金属水酸化物としては例えば、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2、AlOH等が挙げられる。さらに、金属ハロゲン化物としては例えば、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl、AlCl等が挙げられる。これらの中でもCu、Ni、Zn、Al、AlOHが好ましく、Cuが最も好ましい。
【0021】
前記式(1)においてR17及びR18はぞれぞれ独立して水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。
【0022】
置換もしくは無置換のアルキル基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルキル基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。
【0023】
置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルキル基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。
【0024】
置換もしくは無置換のアラルキル基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルキル基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。
【0025】
置換もしくは無置換のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。
【0026】
置換もしくは無置換のヘテロ環基としては5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環しても良い。また芳香族へテロ環であっても、非芳香族ヘテロ環であっても良い。ヘテロ環の例としては例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。また、これらのヘテロ環は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0027】
置換もしくは無置換のアルケニル基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルケニル基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い。)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられる。
【0028】
前記式(1)においてAは架橋基を表す。架橋基の例としては、例えばアルキレン、シクロアルキレン、アリレンがあげられ、及びこれらを組み合わせて形成される基であっても良い。これらを組み合わせて形成される基の例としては例えば、キシリレンがあげられる。また、R17及びR18と共に架橋基を形成しても良い。また架橋基は置換基を有しても良い。置換基としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基があげられる。
【0029】
アルキレンとしては、例えば炭素原子数が1〜16のアルキレンがあげられる。アルキレンの炭素原子が一部、窒素、酸素及び硫黄原子に置換されても良い。またアルキレンとシクロアルキレンが組み合わさって形成される基であっても良い。
【0030】
シクロアルキレンとしては、例えば炭素原子数が1〜16のシクロアルキレンがあげられる。シクロアルキレンの炭素原子が一部、窒素、酸素及び硫黄原子で置換されても良い。シクロアルキレンとアルキレンが組み合わさって形成される基であっても良い。またシクロアルキレンは橋架け環式炭化水素であってもスピロ環炭化水素であっても良い。
【0031】
アリレンとしては、例えばフェニレン、ナフチレン等があげられる。これらは置換基を有しても良い。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0032】
前記式(1)においてY及びZはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の、シクロアルコキシ基、置換もしくは無置換のアルロキシ基、置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、置換もしくは無置換のアラルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアルケニルオキシ基、置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、置換もしくは無置換のヘテロ環アミノ基、置換もしくは無置換のアラルキルアミノ基、置換もしくは無置換のアルケニルアミノ基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、置換もしくは無置換のアラルキルチオ基、置換もしくは無置換のアルケニルチオ基を表し、Y、Zのうち少なくとも1つはスルホン酸基、カルボキシル基、またはイオン性親水性基を置換基として有する基である。イオン性親水基を置換基として有する。イオン性親水基としては、陰イオン性親水基が好ましく、例えばスルホン酸基、カルボキシル基またはリン酸基、水酸基などがあげられる。これらのイオン性親水性基は、フリー体であってもよいし、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミンのオニウムイオン塩またはアンモニウム塩であってもよい。アルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。有機アミンとして、アルキルアミンとしては、例えばメチルアミン、エチルアミン等の炭素数1〜4の低級アルキルアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のモノ、ジ又はトリ(炭素数1〜4の低級アルカノール)アミンが挙げられる。好ましくはアンモニウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの塩である。
【0033】
置換もしくは無置換のアルコキシ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルコキシ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0034】
置換もしくは無置換のシクロアルコキシ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のシクロアルコキシ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0035】
置換もしくは無置換のアリロキシ基としては、例えばフェノキシキ基、ナフトキシ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0036】
置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環しても良い。また芳香族へテロ環であっても、非芳香族ヘテロ環であっても良い。ヘテロ環の例としては例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。また、これらのヘテロ環は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0037】
置換もしくは無置換のアラルキルオキシ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアラルキルオキシ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0038】
置換もしくは無置換のアルケニルオキシ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルケニルオキシ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0039】
置換もしくは無置換のアルキルアミノ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルキルアミノ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0040】
置換もしくは無置換のシクロアルキルアミノ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のシクロアルキルアミノ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0041】
置換もしくは無置換のアリールアミノ基としては、例えばアニリノ基、ナルチルアミノ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0042】
置換もしくは無置換のヘテロ環アミノ基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環しても良い。また芳香族へテロ環であっても、非芳香族ヘテロ環であっても良い。ヘテロ環の例としては例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。また、これらのヘテロ環は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0043】
置換もしくは無置換のアラルキルアミノ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアラルキルアミノ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0044】
置換もしくは無置換のアルケニルアミノ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルケニルアミノ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0045】
置換もしくは無置換のアルキルチオ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルキルチオ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0046】
置換もしくは無置換のシクロアルキルチオ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のシクロアルキルチオ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0047】
置換もしくは無置換のアリールチオ基としては、例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0048】
置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環しても良い。また芳香族へテロ環であっても、非芳香族ヘテロ環であっても良い。ヘテロ環の例としては例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。また、これらのヘテロ環は置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0049】
置換もしくは無置換のアラルキルチオ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアラルキルチオ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0050】
置換もしくは無置換のアルケニルチオ基としては、例えば炭素原子数が1〜12のアルケニルチオ基があげられる。置換基の例としては例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基(アルキル基、アリール基及びアセチル基で置換されても良い)、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基があげられる。中でもスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、水酸基が好ましい。
【0051】
無置換スルファモイル基の数(m)、置換スルファモイル基の数(n)はそれぞれ1から3であり、且つmとnの和は2から4である。
【0052】
式(1)における無置換スルファモイル基の数(m)の割合が高い場合は、オゾン耐性が高くなる一方、水溶性が低くなり、インク化が困難になる。逆に式(1)における置換スルファモイル基の数(n)の比率が高い場合は、水溶性が高く、ブロンズ現象が起きにくくなる一方、オゾン耐性が低くなる傾向にある。従って、置換スルファモイル基の種類に応じて、無置換スルファモイル基と置換スルファモイル基の割合を適宜調節し、バランスのよい割合を選択すればよい。本発明の前記式(1)で示されるフタロシアニン色素の混合物における、M、置換スルファモイル基の組み合わせの具体例を表1から7に示すが、本発明に用いられるフタロシアニン色素混合物は、下記の例に限定されるものではない。尚、表中、置換スルファモイル基は遊離酸の形で記す。の例に限定されるものではない。尚、表中、前記式(1)は遊離酸の形で記す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
本発明の式(1)の色素の混合物の製造方法を説明する。
【0061】
例えばフタロシアニン(顔料)をクロルスルホン化、又はスルホン酸基を有するフタロシアニン化合物もしくはその塩をクロロ化する事により、フタロシアニンスルホン酸クロリドが得られる。このときフタロシアニン(顔料)又はスルホン基を有するフタロシアニン化合物としては、式(1)のMに対応する金属を中心金属として有するものを選択し、用いることができる。式(1)のMが銅である化合物を製造するには、例えば銅フタロシアニン(顔料)又はスルホン基を有する銅フタロシアニン化合物もしくはその塩(例えばDirect Blue 86、Direct Blue 87など)用いればよい。
上記反応は通常、有機溶媒、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸中で行う。有機溶剤としてはベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、クロルスルホン化剤またはクロロ化剤としてはクロロスルホン酸、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようにして得られたフタロシアニンスルホン酸クロリドのクロロスルホン基は2から4個であり、置換位置も複数考えられることからフタロシアニンスルホン酸クロリドは多種の化合物の色素混合物として存在する。
【0062】
次に、対応するフタロシアニンスルホン酸クロリドと、対応する下記式(3)で表される有機アミンとアミノ化剤を水溶媒中で通常pH8〜10、通常5〜70℃、通常1〜20時間反応させる事により目的の化合物が得られる。反応に用いられるアミノ化剤としては例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、尿素、アンモニア水、アンモニアガス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【化6】
〔式(3)中、R17、R18、A、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。〕
【0064】
なお、有機アミンの使用量は通常、フタロシアニン化合物1モルに対して、通常、理論値の1倍モル以上であるが、有機アミンの反応性、反応条件により異なり、これらに限定されるものではない。
【0065】
式(3)で表される対応する有機アミンの製造方法を説明する。例えばYに対応するアミン類、アルコール類又はチオール類を、通常0.95〜1.1モルと2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1モルとを水中で通常pH3〜7、通常5〜40℃、通常2〜12時間反応させて、1次縮合物を得る。次いで、Zに対応するアミン類、アルコール類又はチオール類を通常0.95〜1.1モルを通常pH4〜10、通常5〜80℃、通常0.5〜12時間反応させることにより、2次縮合物を得る。次いで、通常pH9〜12、通常50〜90℃、通常0.5〜8時間で架橋基に対応するジアミン類1〜50モル反応させることにより、上記式(3)の化合物が得られる。なお、縮合の順序は各種化合物の反応性に応じ適宜定められ、上記に限定されない。
【0066】
また、前記式(1)で表される色素の混合物は一部、2価の連結基(L)を介してフタロシアニン環(Pc)が2量体(例えばPc−L−Pc)または3量体を形成した不純物が生成し、反応生成物中に混入されてもよく、その時複数個存在するLは、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
Lで表される2価の連結基はスルホニル基−SO2−、−SO2−NH−SO2−などが挙げられ、及びこれらを組み合わせて形成される基であってもよい。
【0067】
こうして得られた本発明のフタロシアニン色素の混合物は酸析又は塩析後、濾過等により分離することが出来る。塩析は例えば酸性〜アルカリ性、好ましくはpH1〜11の範囲で塩析を行うことが好ましい。塩析の際の温度は特に限定されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加熱後、食塩等を加えて塩析するのが好ましい。
【0068】
上記の方法で合成される、本発明の前記式(1)で表わされる色素の混合物は、遊離酸の形あるいはその塩の形で得られる。遊離酸とするには、例えば酸析すればよい。また、塩にするには、塩析するか、塩析によって所望の塩が得られないときには、例えば遊離酸にしたものに所望の有機又は無機の塩基を添加する通常の塩交換法を利用すればよい。
【0069】
本発明のシアンインクは、上記の方法にて製造された前記式(1)の色素の混合物を含み、水を媒体として調製されるが、このインクをインクジェット記録用インクとして使用する場合、色素混合物に含まれるCl−及びSO4 2−等の陰イオンの含有量は少ないものが好ましく、その含有量の目安は、フタロシアニン化合物中でCl−及びSO4 2−の総含量として5質量%以下、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、インク中に1質量%以下である。Cl−及びSO4 2−の少ない本発明の色素混合物を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法又は本発明の色素混合物の乾燥品あるいはウェットケーキをアルコール及び水の混合溶媒中で撹拌し、濾過、乾燥する等の方法で脱塩処理すればよい。用いるアルコールは、炭素数1〜4の低級アルコール好ましくは炭素数1〜3のアルコール、更に好ましくはメタノール、エタノール又は2−プロパノールである。また、アルコールでの脱塩処理の際に、使用するアルコールの沸点近くまで加熱後、冷却して脱塩する方法も採用しうる。Cl−及びSO4 2−の含有量は例えばイオンクロマトグラフ法で測定される。
【0070】
本発明のシアンインクをインクジェット記録用インクとして使用する場合、色素混合物に含まれる亜鉛、鉄等の重金属(イオン)、カルシウム、シリカ等の金属(陽イオン)等の含有量が少ないものを用いるのが好ましい(フタロシアニン骨格に含有される銅は除く)。その含有量の目安は例えば、色素混合物の精製乾燥品中に、亜鉛、鉄等の重金属(イオン)、カルシウム、シリカ等の金属(陽イオン)について各々500ppm以下程度である。重金属(イオン)及び金属(陽イオン)の含有量はイオンクロマトグラフ法、原子吸光法又はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法にて測定される。
【0071】
本発明のインクに用いる前記条件を備えた前記式(1)の色素の混合物(乾燥品)は、イオン交換水を用いて、濃度を0.02g/l、pHを7〜8に調整したときのD65光源、2°視野、透過光路長10mmの測定条件下で、波長が400nmから800nmの範囲の分光光度計による測定において、以下の2つの条件を満たすものが特に好ましい。
1.波長400nmから800nmに少なくとも1つの吸収ピーク(λmax)を有し、640nmより長波長には吸収ピークを有さない。
2.613nmより短波長にλmaxを有する。
前記条件を備えた前記式(1)の色素の混合物でλmaxが613nmより長波長に存在する色素混合物は合成しえるが、λmaxが613nmより長波長に存在するとオゾンガスに対する耐久性が劣る傾向がみられる。
【0072】
本発明のインク中に前記式(1)の色素の混合物は、0.1〜8質量%、好ましくは0.3〜6質量%含有される。低い濃度のインクには本発明の色素混合物は0.1〜2.5質量%含有される。
【0073】
インクジェットプリンタにおいて、高精細な画像を供給することを目的に、シアンインクとマゼンタインクについては高濃度のインクと低濃度のインクの2種類のインクが設定されたものもある。その場合、本発明の式(1)の色素の混合物を含有する高濃度のインクと、本発明の式(1)の色素の混合物を含有する低濃度のインクを併用したインクセットとして使用しうる。また前記条件を備えた前記式(1)の色素の混合物に公知のシアン色素と併用してもよい。公知のシアン色素としては、例えばDirect Blue 86、Direct Blue 87、Direct Blue 199、Acid Blue 9、Acid Blue 249又はReactive Blue 71等が挙げられる。更に、公知のシアン色素として、特許文献1〜11の色素を併用しても良い。
【0074】
本発明のインクは水を媒体として調製される。本発明のインク中に、上記のようにして得られた前記条件を備えた前記式(1)の色素の混合物は、0.3〜8質量%含有される。本発明のインクにはさらに必要に応じて、水溶性有機溶剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。水溶性有機溶剤は、染料溶解剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、粘度調整剤、浸透促進剤、表面張力調整剤、消泡剤等として使用される。その他インク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤、分散剤、分散安定剤、等の公知の添加剤が挙げられる。水溶性有機溶剤の含有量は0〜60質量%好ましくは10〜50質量%であり、インク調製剤は0〜20質量%好ましくは0〜15質量%用いるのが良い。
【0075】
本発明で使用しうる水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンまたは1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトンまたはケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、1,2−または1,3−プロピレングリコール、1,2−または1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマーまたはポリアルキレングリコールまたはチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル又はトリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの(C1〜C4)アルキルエーテル、γーブチロラクトンまたはジメチルスルホキシド等があげられる。
【0076】
上記のうち好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジまたはトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドンである。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0077】
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトチリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオシキド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオシキド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウムが挙げられ、無機塩系化合物としては、例えば無水酢酸ソーダが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、等(例えば、アベシア社製プロクセルGXL(S)、プロクセルXL−2(S)等)があげられる。
【0078】
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
【0079】
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
【0080】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物、又はベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物があげられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等があげられる。
【0081】
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等があげられる。
【0082】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
【0083】
表面張力調整剤としては、界面活性剤があげられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などがあげられる。アニオン界面活性剤としてはアルキルスリホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどのアセチレングリコール系(例えば、日信化学社製サーフィノール(登録商標)104E、104PG50、82、465、オルフィンSTG等)、等が挙げられる。これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。なお、本発明のインクの表面張力は通常25〜70mN/m、より好ましくは25〜60mN/mである。また本発明のインクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
【0084】
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
【0085】
本発明のインクを製造方法するにあたり、各薬剤を溶解させる順序には特に制限はない。インクを調製するにあたり、用いる水はイオン交換水または蒸留水など不純物が少ない物が好ましい。さらに、得られたインクは必要に応じメンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが特に好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは、0.8ミクロン〜0.2ミクロンである。
【0086】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクとのインクセットとしても使用される。更にはより高精細な画像を形成する為に、ライトマゼンタインク、ブルーインク、グリーンインク、オレンジインク、ダークイエローインク、グレーインク等と併用したインクセットとしても使用される。
【0087】
適用できるイエローインクの色素としては、種々のものを使用することが出来る。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類残基、ナフトール類残基、アニリン類残基、ピラゾロン残基やピリドン残基等のようなヘテロ環類残基、開鎖型活性メチレン化合物類残基などを有するアリールもしくはヘテロアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキサノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0088】
適用できるマゼンタインクの色素としては、種々のものを使用することが出来る。例えばカプラー成分としてフェノール類残基、ナフトール類残基、アニリン類残基などを有するアリールもしくはヘテロアゾ染料;例えばカプラー成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類などを有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙げることができる。
【0089】
前記の各色素は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。適用できるブラック色素としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0090】
本発明のインクは、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、または記録法、特にインクジェット印捺法における使用に適する。
【0091】
本発明のインクジェット記録方法は、前記の方法で作製されたインクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、光沢紙、光沢フィルム、電子写真共用紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、ガラス、金属、陶磁器、皮革等に画像を形成する。
【0092】
画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与えたり耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物(ポリマーラテックスともいう)を併用してもよい。ポリマーラテックスを被記録材に付与する時期については、着色剤を付与する前であっても,後であっても、また同時であってもよく、したがって添加する場所も被記録材中であっても、インク中であってもよく、あるいはポリマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。
【0093】
以下に、本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる被記録材(特に記録紙及び記録フィルム)について説明する。記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、通常、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が好ましい。支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体として、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0094】
支持体上に設けられるインク受容層には、顔料や水性バインダーが含有されていてもよい。顔料としては、白色顔料が好ましく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の白色無機顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料が好ましく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが好ましい。
【0095】
インク受容層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
【0096】
インク受容層中に添加する媒染剤は、例えばポリマー媒染剤が用いられる。
【0097】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が好ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらのカチオン樹脂の中で特にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンが好適である。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0098】
耐光性向上剤としては、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、ヒンダートアミン系酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中で硫酸亜鉛が好適である。
【0099】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。その他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0100】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬べーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント,ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0101】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0102】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸法安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバックコート層に添加しても、カールを防止することができる。
【0103】
これら記録紙及び記録フィルムは、一般的にインクジェット専用紙、光沢紙又は光沢フィルムと呼ばれており、例えばピクトリコ(旭硝子(株)製)、カラーBJペーパー、高品位専用紙、カラーBJフォトフィルムシート、スーパーフォトペーパー、プロフェッショナルフォトペーパー(いずれもキャノン(株)製)、カラーイメージジェット用紙(シャープ(株)製)、PM写真用紙、スーパーファイン専用光沢フィルム(いずれもエプソン(株)製)、ピクタファイン(日立マクセル(株)製)等として市販されている。特に、本発明のインクを用いたインクジェット記録方法においては、被記録材として支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する記録紙及び記録フィルムに特に有効に機能する。なお、普通紙にも利用できることはもちろんである。
【0104】
本発明のインクを用いた着色体は、前記の方法で作製されたインクをインクジェットプリンタにて印刷し、着色されたものである。
【0105】
本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録するには、例えば上記のインクを含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で、被記録材に記録すればよい。インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタや加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ等があげられる。
【0106】
本発明によるインクは貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、本発明によるインクをインクジェット印捺において使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明によるインクは連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間一定の再循環下またはオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
【0107】
本発明のインクは、鮮明なシアン色であり、特に耐オゾン性に優れ、かつ耐光性、耐水性においても優れた記録物を得ることができる。濃淡のシアンインクのセットとして用いることによって、さらに耐オゾン性及び耐光性、耐水性に優れた他のイエロー、マゼンタ、その他必要に応じて、グリーン、レッド、オレンジ、ブルーなどのインクと共に用いる事で、広い可視領域の色調を色出しする事ができ、耐オゾン性に優れ、かつ耐光性、耐水性においても優れた記録物を得ることができる。
【0108】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。
【0109】
実施例1
(1)(銅フタロシアニンのクロスル化)
クロロスルホン酸46.1部中に攪拌しながら60℃以下で銅フタロシアニン(顔料)5.76部を徐々に仕込み、140℃で4時間反応を行った。次に反応液を80℃まで冷却し、塩化チオニル23.8部を30分間かけて滴下し、80℃で2時間、次いで90℃で1時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出している結晶を濾過し、氷冷塩酸水溶液(2%)100部で洗浄し銅フタロシアニンクロロスルホン化物のウェットケーキ31.2部を得た。
(2){下記式(4)(式(3)において、Y:アニリン−2,5−ジスルホン酸、Z:アミノ、A:エチレンジアミンである化合物)の合成}
【0110】
【化7】
【0111】
氷水300部中にリパールOH(アニオン界面活性剤 ライオン社製)2.9部、塩化シアヌル96.5部を投入し30分間攪拌した。次にアニリン−2,5−ジスルホン酸モノナトリウム塩(純度91.2%)150.8部を投入し、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加しながらpH2.7〜3.0を保持しながら10〜15℃で2時間、25〜30℃で2時間反応を行った。次に反応液を10℃以下に冷却した後、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH10.0に調整した。この反応液に28%アンモニア水60.7部添加し10〜15℃,2時間次いで27〜30℃,2時間反応を行った。次にエチレンジアミン600部を投入し80℃で1時間反応を行った。液量を2000部に調整し、塩化ナトリウム200部を投入、続いて濃塩酸を滴下し、pH1.0に調整し結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液500部で洗浄し、ウェットケーキ245.9部を得た。得られたウェットケーキ245.9部をメタノール1700部中に投入し、水90部を加え、60℃で1時間攪拌懸濁させた後、濾過、メタノールで洗浄、乾燥し、式(4)の化合物125.8部を得た。
(3)(クロスルケーキとアミンの縮合)
氷水100部中に実施例1−(1)で得られた銅フタロシアニンクロロスルホン化物のウェットケーキ15.6部を投入し、攪拌懸濁させた。10分後、5℃以下を保持したまま28%アンモニア水を滴下し、pH9.0に調整した。次に式(4)の化合物4.3部を投入し、28%アンモニア水を添加しながらpH9.0を保持し、10℃で2時間、20℃で2時間、50℃で1時間反応を行った。水を加え、液量を450部に調整し、塩化ナトリウム90部を投入し結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ19.3部を得た。
得られたウェットケーキ19.3部をメタノール193部中に投入し、60℃で1時間攪拌懸濁させた後、濾過、メタノールで洗浄、乾燥し、青色結晶4.4部を得た。
反応生成物は多様な混合物であるが、平均すれば、本発明の式(1)におけるMと置換スルファモイル基が表1のNo.1の混合物であり、置換スルファモイル基が2個(n=2)、無置換スルファモイル基が2個(m=2)縮合した色素混合物であると考えられる。水中でのλmaxは605.5nmであった。
【0112】
実施例2
(1)(銅フタロシアニンのクロスル化)
クロロスルホン酸23.0部中に攪拌しながら60℃以下で銅フタロシアニン(顔料)2.9部を徐々に仕込み、120℃で4時間反応を行った。次に反応液を80℃まで冷却し、塩化チオニル11.9部を30分間かけて滴下し、80℃で2時間、次いで90℃で1時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出している結晶を濾過し、氷冷塩酸水溶液(2%)100部で洗浄し銅フタロシアニンクロロスルホン化物のウェットケーキ14.3部を得た。
(2)(クロスルケーキとアミンの縮合)
氷水200部中に実施例2−(1)で得られた銅フタロシアニンクロロスルホン化物のウェットケーキ14.3部を投入し、攪拌懸濁させた。10分後、5℃以下を保持したまま28%アンモニア水を滴下し、pH9.0に調整した。次に実施例1−(2)で得られた式(4)の化合物4.3部を投入し、28%アンモニア水を添加しながらpH9.0を保持し、10℃で2時間、20℃で2時間、50℃で1時間反応を行った。水を加え、液量を360部に調整し、塩化ナトリウム72部を投入し結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ48.3部を得た。再度、水に溶解させ、全量を500部に調整、60℃に昇温した後、塩化ナトリウム50部添加し、35%塩酸水溶液を添加しpHを1.0に調整し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、10%塩化ナトリウム水溶液200部で洗浄し、ウェットケーキ53.5部を得た。
得られたウェットケーキ53.5部をメタノール535部中に投入し、60℃で1時間攪拌懸濁させた後、濾過、メタノールで洗浄、乾燥し、青色結晶4.5部を得た。
反応生成物は多様な混合物であるが、平均すれば、本発明の式(1)における置換スルファモイル基が表1のNo.1の混合物であり、置換スルファモイル基が2個(n=2)、無置換スルファモイル基が1個(m=1)縮合した色素混合物であると考えられる。水中でのλmaxは600.5nmであった。
【0113】
実施例3(インク評価)
(A)インクの調製
下記表8に記載の各成分を混合溶解し、0.45μmのメンブランフィルター(アドバンテック社製)で濾過する事により本発明のインクを得た。尚、水はイオン交換水を使用した。又、インクのpHがpH=8〜10、総量が100部になるように水、苛性ソーダ(pH調整剤)を加えた。インクは実施例1の色素混合物を用いたインクをC−1、実施例2の色素混合物を用いたインクをC−2とした。
【0114】
表8
上記実施例1及び2で得られた各色素混合物 1.3部
水+苛性ソーダ 79.6部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
IPA(イソプロピルアルコール) 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(日信化学社製) 0.1部
計 100.0部
【0115】
比較例として、Direct Ylue 199として使用されているインクジェット記録用色素、製品名:Projet Cyan 1(アベシア社製:比較例1)と下記式(5)に表す銅フタロシアニン骨格に直接スルホン酸基が導入された特許文献12の実施例2に記載の色素(比較例2)を印刷時、表8の実施例1及び2のインクと同じ印刷濃度になるように同様の方法で調製した。比較例1の製品を用いたインクはC−A、比較例2の色素を用いたインクはC−Bとした
【0116】
【化8】
【0117】
(B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(商品名 キヤノン社製 BJ S630)を用いて、光沢紙A(エプソン社製PM写真用紙 KA420PSK)、光沢紙B(キヤノン社製プロフェッショナルフォトペーパー PR−101)の2種にインクジェット記録を行った。
【0118】
(C)記録画像の評価
1.色相評価
記録画像の色相は、記録紙を測色システム(GRETAG SPM50:GRETAG社製)を用いて測色し、印刷物のL*が50〜90の範囲にあるときのa*、b*値を測色した。評価は好ましいa*値を−50〜−10、b*値を−50〜−10と定義し、3段階で行なった。
○:a*、b*値共に好ましい領域内に存在
△:a*、b*値片方のみ好ましい領域内に存在
×:a*、b*値共に好ましい領域外に存在
【0119】
2.耐光性試験
記録画像の試験片を、キセノンウェザーメーター(ATLAS社製 型式Ci4000)を用い、0.36W/平方メートル照度で、槽内温度24℃、湿度60%RHの条件にて50時間照射した。試験後、反射濃度(D値)が0.70〜0.85の範囲で、試験前後の反射濃度を測色システムを用いて測色した。測定後、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、3段階で評価した。
○:残存率70%以上
△:残存率50〜70%
×:残存率50%未満
【0120】
3.耐オゾン性試験
記録画像の試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度12ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHで3時間放置した。試験後、反射濃度(D値)が0.70〜0.85の範囲で、試験前後の反射濃度を測色システムを用いて測色した。測定後、色素残存率を(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)で計算して求め、3段階で評価した。
○:残存率70%以上
△:残存率40〜70%
×:残存率40%未満
【0121】
4.耐湿性試験
記録画像の試験片を、恒温恒湿器(応用技研産業社製)を用いて、槽内温度50℃、湿度90%RHで3日間放置した。試験後、試験片のにじみを目視にて3段階で評価した。
○:にじみが認められない
△:わずかににじみが認められる
×:大きくにじみが認められる
【0122】
実施例1及び2で得られた色素混合物を使用したインク(C−1及びC−2)の記録画像の色相評価、耐光性試験結果、耐オゾン性試験結果及び耐湿性試験結果をそれぞれ表9(光沢紙A)及び表10(光沢紙B)に表わす。
【0123】
表9
インク評価結果:光沢紙A
インク番号 色相 耐光性 耐オゾン性 耐湿性
C−1 ○ ○ ○ ○
C−2 ○ ○ ○ ○
C−A ○ ○ × ○
C−B ○ ○ × ○
【0124】
表10
インク評価結果:光沢紙B
インク番号 色相 耐光性 耐オゾン性 耐湿性
C−1 ○ ○ ○ ○
C−2 ○ ○ ○ ○
C−A ○ ○ × ○
C−B ○ ○ × ○
【0125】
表9及び10から明らかなように、本発明の化合物を用いたシアンインクは色相に優れ、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性に優れるものである。特に耐オゾン性に優れることは明らかである。特に本発明のシアンインクの耐オゾン性がC−Bインクより優れることから、フタロシアニン骨格に直接スルホン酸基を導入しない効果が耐オゾン性に良好に働くことが確認された。
【0126】
実施例4(インクセット)
淡色シアン及び濃色シアンの2種類の濃度が設定されたシアンインクセットを有するインクジェットプリンタ(商品名 キヤノン社製 BJ F850)に、淡色シアンインクとしてC−1を、濃色シアンインク及びその他残りの各インクとして純正インクをそれぞれ装着して、光沢紙A(エプソン社製PM写真用紙 KA420PSK)、光沢紙B(キヤノン社製プロフェッショナルフォトペーパーPR−101)の2種にインクジェット記録を行った。印刷結果は、ドット抜けなどが生じず、またフルカラー画像印刷としても満足のいく、鮮明な印刷物が得られた。この結果、本発明のインクは、淡色シアン及び濃色シアンの2種類の濃度が設定されたシアンインクセットを有するインクジェットプリンタにも使用できることが確認された。淡色シアンインクとしてC−1の代わりにC−2を用いる他は同様にしてインクジェット記録を行ったが、結果は上記と同様に良好であった。
【0127】
実施例5(吸収スペクトル)
実施例1及び2で得た色素混合物を各々1.0g秤量し、イオン交換水を加えて50gの水溶液にした。次にその水溶液を0.5g秤量し、イオン交換水を加え、メスフラスコにて500mlにした(濃度は0.02g/l、pHは7〜8)。この液を分光光度計UV−2100にてD65光源、2°視野、透過光路長10mmの測定条件下で、波長が400nmから800nmの範囲の分光光度計の吸収カーブを測定した。640nmより長波長の吸収ピークの有無とλmaxを表11に示す。
比較例として、前記比較例1で合成した色素混合物、前記比較例2で用いた色素(製品名:Projet Cyan 1 アベシア社製)を同様の方法にて調製及び測定を行った。結果を表11に示す。
【0128】
【0129】
表9、10、及び実施例4の結果から、本発明の色素混合物は、耐オゾン性が優れていることがわかり、これらは、表11の結果から水溶液での吸光度が前記条件、即ち、
1.波長が400nmから800nmの範囲の分光光度計の吸収カーブにおいて、1つの吸収ピーク(λmax)を有し、640nmより長波長には吸収ピークがない。
2.λmaxが613nmより短波長に有する。
の2つを満たすことがわかった。また、表9、10の結果から、比較例は実施例に比べて、耐オゾン性が劣っていることがわかり、これらは水溶液での吸光度が前記条件をすべてを満たしていないことがわかった。言い換えれば、水溶液での吸光度が前記条件をすべて満たす式(1)の色素の混合物は、耐オゾン性が優れていることがわかる。
【0130】
【発明の効果】
本発明のフタロシアニン色素混合物を用いたインクは、シアンインクとして良好な色相を有し、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性に優れたインクである。また、長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。更に、他のマゼンタインク及びイエローインクと共に用いることで、広い可視領域の色調を色だしすることができる。従って、本発明のフタロシアニン色素混合物を用いたシアンインクはインクジェット記録用のインクとして極めて有用である。
Claims (15)
- 下記式(1)で表される、少なくとも1つ以上の無置換スルファモイル基とイオン性親水性基を有する少なくとも1つ以上の置換スルファモイル基を有するフタロシアニン色素の混合物
- 前記式(1)において、Aはアルキレン、アリレン、キシリレンを表し、Y及びZはそれぞれ独立して、塩素原子、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アセチルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、ハロゲン原子から成る群から選択される置換基で置換されても良い。)、フェノキシ基(スルホン酸基、カルボキシル基、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)、ナフトキシ基(スルホン酸基、アセチルアミノ基からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)、ベンジロキシ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、フェネチルオキシ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、アルキルアミノ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基から成る群から選択される置換基で置換されても良い。)アニリノ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アセチルアミノ基、ウレイド基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)、ナフチルアミノ基(スルホン酸基または水酸基で置換されていても良い。)、ベンジルアミノ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、フェネチルアミノ基(スルホン酸基で置換されても良い。)、アルキルチオ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基で置換されても良い。)又はアリールチオ基(スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基からなる群から選択される1種または2種以上の置換基で置換されても良い。)であり、Y、Zのうち少なくとも1つは、スルホン酸基、カルボキシル基、またはイオン性親水性基を置換基として有する基である請求項1に記載のフタロシアニン色素の混合物
- 式(1)においてMがCuである請求項1または2に記載のフタロシアニン色素の混合物
- 式(1)の色素の混合物が、以下の2つの条件を満たす請求項1から3のいずれか一項に記載のフタロシアニン色素の混合物
イオン交換水で濃度を0.02g/l、pHを7〜8に調整したときのD65光源、2°視野、透過光路長10mmの測定条件下で、波長400nmから800nmの範囲の分光光度計による測定において、
1.400nmから800nmに少なくとも1つの吸収ピーク(λmax)を有し、640nmより長波長には吸収ピークを有さない。
2.613nmより短波長にλmaxを有する。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフタロシアニン色素の混合物を含有するインク
- インクジェット記録用である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインク
- 色素濃度の異なる2種以上のシアンインクを用いるインクジェットプリンタにおいて、少なくとも1種は請求項7に記載のインクを用いることを特徴とするインクセット
- インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、請求項7に記載のインク又は請求項8に記載のインクセットを用いることを特徴とするインクジェット記録方法
- 被記録材が情報伝達用シートである請求項9記載のインクジェット記録方法
- 情報伝達用シートが表面処理されたシートであって、支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有するシートである請求項10記載のインクジェット記録方法
- 請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のインク又はインクセットを含有する容器
- 請求項12に記載の容器を有するインクジェットプリンタ
- 請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のインク又はインクセットで着色された着色体
- フタロシアニン(顔料)をクロルスルホン化、又はスルホン酸基を有するフタロシアニン化合物もしくはその塩をクロロ化する事により、フタロシアニンスルホン酸クロリドを得、上記有機アミンとアミノ化剤を反応させて得られてなる式(1)で表されるフタロシアニン色素の混合物の製造方法
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