JP2004322186A - 管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金 - Google Patents
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Abstract
【課題】管の曲げ加工に際して発生する可能性のある潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等を適切に防止すること。
【解決手段】曲げ加工装置1のプレッシャー型4に押圧片8を取り付け、外側屈曲部A1の形成位置に対応する管部7aの端面を軸方向に押圧する。管部7aに作用する軸方向の押圧力を調整することにより、塑性流動の発生特性を調整し、皺の発生し易い内側屈曲部A2に対する素材の供給を相対的に控えめとする一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部A1に対する素材の供給を相対的に多めとすることで、内側屈曲部A2の皺と外側屈曲部A1の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消する。
【選択図】 図1
【解決手段】曲げ加工装置1のプレッシャー型4に押圧片8を取り付け、外側屈曲部A1の形成位置に対応する管部7aの端面を軸方向に押圧する。管部7aに作用する軸方向の押圧力を調整することにより、塑性流動の発生特性を調整し、皺の発生し易い内側屈曲部A2に対する素材の供給を相対的に控えめとする一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部A1に対する素材の供給を相対的に多めとすることで、内側屈曲部A2の皺と外側屈曲部A1の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る際に障害となる現象として、屈曲部に発生する潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等の問題がある。
【0003】
これらの問題を軽減化するための管の曲げ加工方法および曲げ加工装置や曲げ加工用芯金が既に幾つか提案されている。
【0004】
まず、曲げ加工によって生じる潰れやヒケを防止する曲げ加工方法としては、外側屈曲部の内面形状を規制する円弧状の先端部を備えた前芯金、および、この円弧状の先端部に係合する凹部を先端に備えた後芯金と、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型からなる通常の曲げ加工装置を用いて行なわれる管の曲げ加工方法が、例えば、特許文献1として公知である。
この曲げ加工方法では、前芯金と後芯金の先端部を突き合わせて管に挿入し、前芯金の挿入部分をロール型とクランプ型とで保持する一方、後芯金の挿入部分をワイパー型とプレッシャー型とで保持し、ワイパー型とプレッシャー型を固定した状態でロール型とクランプ型を回転させて管を屈曲するようになっている。
この際、プレッシャー型が管を径方向外側から押圧しつつ管の軸方向に沿って屈曲形成位置に向けて移動することにより、プレッシャー型と管との間の摩擦力を利用して管の軸方向に沿った圧縮力を管に加え、曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に塑性流動を生成することで、外側屈曲部に生じる潰れやヒケを防止するようにしている。
しかしながら、外側屈曲部の内面形状を規制する先端部を備えた前芯金は、ワイパー型とプレッシャー型の側ではなくロール型とクランプ型の側に位置するので、ロール型とクランプ型を回転させた際には、プレッシャー型と前芯金の先端部との間に隙間が生じる場合があり、塑性流動によって送り出された管の素材が前芯金の先端部で形状を規制されないまま管の内側に向けて潰れたりヒケを生じたりするといった問題を生ずる可能性があった。
【0005】
また、曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に塑性流動を生成することで管の外側屈曲部に発生する潰れやヒケを防止する曲げ加工方法として、管の端面部分の全周を芯金で押圧して管の内部に塑性流動を生成するものが、例えば、特許文献2として提案されている。
この曲げ加工方法では、油圧シリンダで芯金を押圧しているため、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる管の潰れやヒケあるいは極端な肉厚の減少や破断を防止するに足る塑性流動を得ることができるが、この塑性流動は管の全周に亘って均一に生成されるものであるため、管の内側屈曲部の側に管の素材が過剰に供給されて皺が発生するといった弊害を生じる場合がある。
無論、管の端面部分を押す芯金の移動ストロークを調整して塑性流動の程度を変化させることは技術的に可能であるが、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる管の潰れやヒケあるいは極端な肉厚の減少や破断を防止しつつ、同時に、管の内側屈曲部の側に生じる皺の発生を防止できる程度の移動ストロークを見つけ出すのは難しい。また、管の直径が大きな場合には、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる管の潰れやヒケあるいは極端な肉厚の減少や破断を防止するために必要とされる芯金の移動ストロークと管の内側屈曲部に皺が生じない範囲の芯金の移動ストロークとが物理的に全く合致しなくなることもあり、このような場合には、曲げ加工形状の外側屈曲部および内側屈曲部に生じる問題を同時に解消することは不可能となる。
【0006】
一方、管の曲げ加工に利用される曲げ加工用芯金としては、前述した前芯金および後芯金で構成されるものが特許文献1として公知であるが、このものには、曲げ加工形状の内側屈曲部の内面形状を規制する機能がないので、内側屈曲部に発生する皺を防止することはできず、特に、内側屈曲部の内面に向けて突出するような皺の発生を防止することは全く不可能である。
【0007】
これに対し、曲げ加工形状の内側屈曲部の内面形状を規制することが可能な曲げ加工用芯金としては、例えば、特許文献3の曲げ加工装置に採用された湾曲マンドレルが知られている。
この湾曲マンドレルは、目的とする曲げ加工形状に対応したキャビティ形状を有する金型の内部に入れ子のようにして設置されるもので、湾曲マンドレルの他端から押し込まれてくる管の内面形状を湾曲マンドレルの外面形状によって直接的に規制して目的とする曲げ加工形状を得るようになっている。
従って、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる潰れやヒケおよび内側屈曲部に生じる皺を同時に防止することが可能であるが、曲げ半径の小さな曲げ加工を行なう場合、あるいは、曲げ加工の対象となる管の全長が長い場合においては、管の押し込みに際して強力な押し込み力が必要となり、管に座屈が発生する可能性がある。
【0008】
更に、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる潰れやヒケおよび内側屈曲部に生じる皺を防止することが可能な別の曲げ加工用芯型として、例えば、特許文献4に示されるようなものが公知である。
この曲げ加工用芯型は、両側に位置する湾曲型材の間に可撓性板材を積層して構成したものであり、管の内部に曲げ加工用芯型を挿入して曲げ加工を行った後、曲げ加工用芯型自体の可撓性を利用して管の内部から曲げ加工用芯型を引き抜くようになっている。
しかし、このものは基本的に矩形状の管の曲げ加工を対象としたものであり、その構造上、円管等に対して適用することは困難である。曲げ加工用芯型の断面形状を円形とするためには、積層された可撓性板材を束ねる両側の湾曲形型の断面形状を部分円弧状とする必要が生じ、強度上の問題が生じるからである。
また、曲げ半径の小さな曲げ加工に利用した場合には、可撓性板材で形成されているとはいえ、管の内面に対して喰い付きを生じる恐れがあり、曲げ加工後の引き抜き作業が困難となる可能性も否めない。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−214178号公報(図1)
【特許文献2】
特開平6−238352号公報(図1)
【特許文献3】
特開平6−114453号公報(図1〜図3)
【特許文献4】
特開平10−5881号公報(図1,図2)
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の不都合を改善し、管の曲げ加工に際して発生する可能性のある潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等を適切に防止することのできる管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による管の曲げ加工方法は、外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とを各々の先端部を突き合わせるようにして管に挿入し、
前記第一,第二の芯金の係合位置で管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る管の曲げ加工方法であり、特に、
前記管に対し、前記第一の芯金の基部から其の先端に向かう方向の塑性流動を生成しながら管を屈曲させることを特徴とした構成を有する。
【0011】
このような構成によれば、塑性流動の方向性に倣って、管の素材が第一の芯金の基部から第一の芯金の先端に向かう方向に送り出されることになる。
外側屈曲部における管の内面形状を規制する形状規制部は第一の芯金の先端に設けられているので、塑性流動によって送り出された管の素材の内面形状は、内側に潰れたりヒケを生じたりする間もなく、直ちに形状規制部によって形状を規制される。
このようにして内面形状を整えられた部分は、管の屈曲つまり外側屈曲部に生じる延びに伴って、第一の芯金の先端から離間する方向に送られ、同時に、塑性流動によって新たに送り出された管の素材の内面形状が直ちに形状規制部によって形状を規制される。
管の曲げ加工が開始されてから終了するまでの間、このような過程が連続的に繰り返される結果、管の外側屈曲部が内側に潰れたりヒケを生じたりする問題が解消され、同時に、外側屈曲部の過剰な引き延ばしによる極端な肉厚の減少,破断といった問題も解消される。
【0012】
また、本発明による管の曲げ加工方法は、軸方向の圧縮力を加えることにより管の屈曲形成位置に塑性流動を生成しながら管を屈曲させる管の曲げ加工方法であり、
目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成することを特徴とした構成を有する。
【0013】
このような構成によれば、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に対して重点的に軸方向の圧縮力が加えられることになるので、管の直径方向を基準として、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合が徐々に増大する。よって、皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給は相対的に控えめとなる一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給は相対的に多めとなり、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することが可能となる。
【0014】
このように、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に軸方向の圧縮力を加えて塑性流動を生成する構成を適用した場合においては、圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として、30%から90%の範囲内となるように圧縮力を調整することが望ましい。
【0015】
これは実験によって得られた結果であり、外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に軸方向の圧縮力を加えて塑性流動を生成しながら曲げ加工を行った場合では、この圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法に対して30%以上となった際に外側屈曲部の破断が防止され、また、この変位が曲げ加工の対象となる管の外径寸法に対して90%以下となった際に内側屈曲部の皺が防止されることが分かった。
従って、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消するためには、圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として、30%から90%の範囲内となるように圧縮力を調整するのが適当である。
このようにして管の圧縮量の調整ひいては塑性流動の調整を適正化することにより、直径の大きな管の曲げ加工にも対処することができるようになった。
【0016】
本発明の曲げ加工装置は、管の外面形状に倣った溝を有するワイパー型と、
管の外面形状に倣った溝を有してワイパー型に対向して配備され、ワイパー型と共同して管を保持し、其の溝により管を径方向外側から押圧しつつ管の軸方向に沿って管の屈曲形成位置に向けて移動するプレッシャー型と、
管の外面形状に倣った溝を有し、この溝の端部に管の内側屈曲部の外面形状を規制する形状規制部を備えて、管の屈曲形成位置を挟むようにしてワイパー型に隣接配備され、プレッシャー型の移動に同期して、形状規制部を中心として回転するロール型と、
管の外面形状に倣った溝を有してロール型に対向して配備され、ロール型と共同して管を保持し、ロール型の形状規制部を中心としてロール型と一体にプレッシャー型と離間する方向に回転して管を屈曲するクランプ型とを備えた曲げ加工装置であり、特に、
プレッシャー型の移動方向後方側の端部に、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分と当接する押圧片が装着されていることを特徴とした構成を有する。
【0017】
このうち、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型の基本構造に関しては実質的に従来の曲げ加工装置と同様である。
従って、管の曲げ加工は、これらの構成要素を用いて、対向するロール型の溝とクランプ型の溝で管の屈曲形成位置を基準とする片側の管部を保持し、また、対向するワイパー型の溝とプレッシャー型の溝で他側の管部を保持した後、プレッシャー型の溝により管を径方向外側から押圧しつつプレッシャー型を管の軸方向に沿って屈曲形成位置に向けて移動させ、この移動に同期させて、ロール型の形状規制部を中心として、クランプ型がプレッシャー型から離間する方向にロール型およびクランプ型を一体に回転させることによって行なわれる。
本発明においては、特に、プレッシャー型の移動方向後方側の端部に押圧片が設けられており、この押圧片がプレッシャー型と共に管の軸方向に沿って移動するので、プレッシャー型の溝で管を径方向外側から押圧して溝と管との間に作用する摩擦力のみを利用して管を軸方向に押圧していた従来型の曲げ加工装置とは違い、プレッシャー型の溝と管との間の摩擦力の大小や滑りの有無とは関わりなく、確実に、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分を軸方向に押圧することができる。
よって、直径方向を基準としてプレッシャー型に近い位置にある管の端面部分、つまり、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に重点的に軸方向の圧縮力が加えられることになる。このため、管の直径方向を基準として、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合が徐々に増大する。
従って、皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給は相対的に控えめとなる一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給は相対的に多めとなり、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することができる。
更に、内側屈曲部の外面形状がロール型の形状規制部によって外側から規制されるので、内側屈曲部の外側に突出するような皺も確実に防止することができる。
【0018】
この際、プレッシャー型に装着する押圧片は、プレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を先端部に形成した板状体によって形成することができる。この押圧片は、切欠部を管に対向させた状態でプレッシャー型の溝よりも僅かに外側に突出するようにして、プレッシャー型の移動方向後方側の端面に外装して装着する。
【0019】
このような構成を適用した場合には、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面の円弧部分が押圧されることになる。
従って、管の屈曲が開始されてから管の屈曲が終了するまでの間、外側屈曲部の形成位置に対応する部分に対して重点的に塑性流動を生成させることができ、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することが可能となる。
しかも、この押圧片は単純な外付け構造であるため、プレッシャー型に対する脱着作業が容易であり、幅の仕様等が異なる複数の押圧片を選択的に利用して材質等の異なる様々な管の曲げ加工に対処することが可能である。
【0020】
また、板状体からなる押圧片に代えて、プレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を先端面に有し、少なくとも、其の先端外周部の一部に、外側に凸となる曲面を備えた押圧片を設け、この押圧片の切欠部を前記管に対向させた状態でプレッシャー型の溝よりも僅かに外側に突出させ、かつ、押圧片の先端外周部の曲面をプレッシャー型の移動方向前方に向けた状態で、この押圧片をプレッシャー型の移動方向後方側の溝内に埋め込むようにしてもよい。
【0021】
このような構成を適用した場合は、プレッシャー型の移動および管の屈曲が開始された初期段階では外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分の円弧の一点のみが押圧片の凸状の曲面で軸方向に押圧され、その後、プレッシャー型の移動および管の圧縮が進むにつれて、この端面部分が徐々に座屈して押圧片との接触面が増大していく。
従って、管の直径方向を基準に、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合が連続的に滑らかに増大することになり、管の直径方向を基準とする塑性流動の増大傾向が、屈曲形成位置の直径方向の各位置で必要とされる延びの変化特性、言い換えれば、屈曲形成位置の直径方向の各位置で必要とされる素材の送り込み量の変化特性と略一致するので、内側屈曲部における皺の発生や外側屈曲部における潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を効果的に防止できるメリットがある。
【0022】
ここで、これらの押圧片は、プレッシャー型の溝の方向に沿って投影される先端部の幅が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内となるように形成することが望ましい。
【0023】
押圧片の先端部の幅を管の外径寸法を基準として50%以上にするのが望ましいとするのは実験に基く結果であり、これ以下の値にすると、外側屈曲部に肉厚の減少の問題が生じる。また、100%は、押圧片の幅が曲げ加工の対象となる管の外径寸法と一致する値であり、この値以上に押圧片の幅を増大させても押圧片が管の径方向外側に食み出すだけであるから意味がない。
従って、外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を解消するためには、プレッシャー型の溝の方向に沿って投影される押圧片の先端部の幅が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内となるように形成するのが適当である。
【0024】
本発明による管の曲げ加工方法は、外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とを各々の先端部を突き合わせるようにして管に挿入し、
前記第一,第二の芯金の係合位置で管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る管の曲げ加工方法であって、
前記第一の芯金の形状規制部を前記管の外側屈曲部の内面に当接させ、かつ、前記第二の芯金の先端係合部と前記第一の芯金との突き合わせ部分の外周面を前記管の内側屈曲部の内面に当接させながら管を屈曲させることを特徴とした構成を有する。
【0025】
曲げ加工の対象となる管の外側屈曲部の内面と内側屈曲部の内面の形状を同時に規制しながら管を屈曲させるようにしたので、管の外側屈曲部に生じる潰れやヒケと内側屈曲部に生じる皺を同時に防止することができる。
【0026】
本発明による曲げ加工用芯金は、管の外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と、第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とからなるもので、特に、
第一の芯金の形状規制部が、曲げ加工の対象となる管の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体の先端面から軸方向に突出して設けられ、更に、この形状規制部において外側屈曲部の内面形状を規制する側の面と反対する面が、第一の芯金本体の外径よりも径方向内側に位置するように構成されると共に、
第二の芯金の先端係合部は、第一の芯金の先端部と第二の芯金の先端部とを突き合わせるようにして同軸上に配置した状態で、前記外側屈曲部の内面形状を規制する側の面と反対する面に対して径方向外側から重合するようにして、曲げ加工の対象となる管の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体の先端面から、外周面の一部に沿って軸方向に突出して形成されていることを特徴とした構成を有する。
【0027】
この曲げ加工用芯金を利用した管の曲げ加工は、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型を備えた曲げ加工装置を併用して行なわれる。
第一の芯金の先端部と第二の芯金の先端部とを突き合わせて管に挿入する際には、第一の芯金の形状規制部において外側屈曲部の内面形状を規制する側の面がプレッシャー型やクランプ型の溝に対面するようにし、また、第二の芯金は、其の先端係合部を第一の芯金の形状規制部の反対面に対して径方向外側から重合するようにして、第一の芯金本体の先端面に突き合わせるようにする。
そして、第一の芯金を挿入した側の管部をワイパー型の溝とプレッシャー型の溝で保持し、第二の芯金を挿入した側の管部をロール型の溝とクランプ型の溝で保持し、プレッシャー型の溝により管を径方向外側から押圧しつつプレッシャー型を管の軸方向に沿って屈曲形成位置に向けて移動させ、この移動に同期させて、ロール型の形状規制部を中心として、クランプ型がプレッシャー型から離間する方向にロール型およびクランプ型を一体に回転させる。
ロール型およびクランプ型を一体に回転させることで管が徐々に屈曲されていくが、第一の芯金を挿入した側の管部をプレッシャー型の溝で保持しているため、プレッシャー型の移動で生じる塑性流動によって送り出された管の素材の内面形状が、直ちに、第一の芯金の先端に位置する形状規制部の形状規制面によって規制される。従って、管の外側屈曲部が内側に潰れたりヒケを生じたりする問題が解消され、同時に、外側屈曲部の過剰な引き延ばしによる極端な肉厚の減少,破断といった問題も解消される。
また、第二の芯金の先端係合部は、管の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体の外周面の一部に沿って軸方向に突出しており、この先端係合部が、管の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体の先端面に突き合わされているので、管を屈曲させた際には、管の内側屈曲部の内面形状が、第一の芯金本体の先端外周面と第二の芯金における先端係合部の外周面で的確に規制され、内側屈曲部の皺が防止される。
また、この曲げ加工用芯金は、管の端部を押圧する押圧片を備えたプレッシャー型を有する曲げ加工装置と組み合わせて曲げ加工システムとして利用するのが効果的であり、これにより、曲げ加工の屈曲部に発生する潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等の問題を合わせて効果的に解消することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明による管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金の一実施形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は一実施形態の曲げ加工装置1と曲げ加工用芯金2を使用状態にて示した平断面図である。
【0030】
このうち、曲げ加工装置1は、ワイパー型3とプレッシャー型4およびロール型5とクランプ型6によって構成される。
【0031】
プレッシャー型4は、曲げ加工の対象となる管7の外面形状に倣った溝3aを備えたワイパー型3に対向して配備され、プレッシャー型4の溝4aによりワイパー型3の溝3aと共同して管7を保持する。また、プレッシャー型4は溝4aによって管7の外周面を径方向外側から押圧するように付勢され、曲げ加工に際しては、公知の油圧シリンダ等を駆動源として、管7の軸方向に沿って管7の屈曲形成位置Aに向けて移動するようになっている。
【0032】
ロール型5は、管7の外面形状に倣った溝5aを備え、管7の屈曲形成位置Aを挟むようにしてワイパー型3に隣接して配備される。また、溝5aの端部には管7の内側屈曲部の外面形状を規制する半円弧状の形状規制部5bが形成されている。ロール型5における溝5aと形状規制部5bの外観を図2(a)および図2(b)に示す。図1を平断面図として見た場合、第三角法においては、図2(a)が平面図、また、図2(b)は、右側面図を反時計方向に90度回転させた図である。
【0033】
クランプ型6は、管7の外面形状に倣った溝6aを備えてロール型5に対向して配備され、クランプ型6の溝6aによりロール型5の溝5aと共同して管7を保持する。
【0034】
クランプ型6とロール型5は、前述したプレッシャー型4の移動に同期し、ロール型5の形状規制部5bを中心として、クランプ型6がプレッシャー型4から離間する方向に一体となって回転することによって管7を屈曲させる。
【0035】
以上に述べたように、ワイパー型3,プレッシャー型4,ロール型5,クランプ型6の基本構成に関しては従来の曲げ加工装置(例えば、特許文献1のもの)と同様であるが、この実施形態の曲げ加工装置1は、プレッシャー型4の移動方向後方側の端部に、管7の端面部分と当接する押圧片8が装着されている点で、従来の曲げ加工装置と構造が相違する。
【0036】
押圧片8の形状の概略を図3(a)および図3(b)に示す。図1を平断面図として見た場合、第三角法においては、図3(b)が平面図、また、図3(a)は、左側面図を時計方向に90度回転させた図である。この押圧片8は、プレッシャー型4における溝4aの断面形状と相似形状の切欠部8aを先端に備えた板状体によって形成され、その中央部にボルト通し穴9が穿設されている。
【0037】
押圧片8は、図1に示される通り、其の切欠部8aを管7に対向させ、かつ、切欠部8aをプレッシャー型4の溝4aよりも僅かに外側に突出させた状態で、ボルト通し穴9に通されたボルト10を介して、プレッシャー型4の移動方向後方側の端面4bに外装して装着される。
【0038】
図4は、押圧片に関連する他の実施形態について示した平断面図であり、押圧片11の全体形状が円柱形状である点、および、この押圧片11がプレッシャー型4の溝4a内に埋め込まれるようにして装着されている点で図1の実施形態と相違する。
【0039】
押圧片11の形状の概略を図5(a)および図5(b)に示す。図4を平断面図として見た場合、第三角法においては、図5(a)が正面図、また、図5(b)は、左側面図を90度回転させた図である。この押圧片11は、プレッシャー型4における溝4aの断面形状と相似形状の切欠部11aを先端に備えた円柱体によって形成され、その軸心に沿ってネジ穴12が螺刻されている。
【0040】
押圧片11は、図3に示される通り、プレッシャー型4の移動方向後方側において溝4aと直交するようにして穿設された段付きの孔13の拡径部に内嵌され、切欠部11aを管7に対向させて溝4aよりも僅かに外側に突出させた状態で、溝4a内に埋め込まれるようにしてボルト14で固定される。
ここでは、一例として、先端外周部の全周に亘って外側に凸となる曲面を備えた円柱体からなる押圧片11について示しているが、この押圧片に必要とされる要件は、少なくとも其の先端外周部の一部に外側に凸となる曲面を備え、この曲面の部分をプレッシャー型4の移動方向前方に向けて装着すること、つまり、外側に凸となる曲面の部分で管7の端面部分を押圧できるようにすることである。従って、例えば、図5(a)において押圧片11の左半分を削除して半円弧状の曲面を有する押圧片としても構わないし、あるいは、角柱と半円柱とを合成した断面略U字型の押圧片を設け、その半円弧状の曲面の部分をプレッシャー型4の移動方向前方、つまり、図5(a)中の右方向に向けて装着するようにしても構わない。更に言えば、その曲面の形状も完全な円弧である必要はなく、例えば、二次曲線等であってもよい。
【0041】
これらの押圧片8および押圧片11は、何れも、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管7の端面部分、つまり、ワイパー型3とプレッシャー型4で保持される管7の端面のうち、プレッシャー型4に臨む側の端面部分を軸方向に押圧するための手段である。
【0042】
次に、曲げ加工用芯金2の構造について詳細に説明する。この曲げ加工用芯金2は、図6(a)および図6(b)に示されるような第一の芯金15と、図7(a)および図7(b)に示されるような第二の芯金16とからなる。
【0043】
第一の芯金15は、図6(a)および図6(b)に示されるように、曲げ加工の対象となる管7の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体17と、其の先端面17aから軸方向に突出するようにして装着された形状規制部18とによって構成される。
【0044】
形状規制部18は、ピン19を介して第一の芯金本体17の先端に装着されており、図6(a)中の矢印a方向に向けて一定の範囲内で揺動自在である。形状規制部18は、其の揺動方向を基準とする一端面に、管7の外側屈曲部における内面形状を規制する面18aを備え、また、内面形状を規制する側の面18aと反対する側の面18bは、第一の芯金本体17の外径よりも径方向内側に位置するように平取りして形成されている。
【0045】
以下、管7の外側屈曲部における内面形状を規制する球円弧状の面18aを形状規制面18a、また、これと反対する面18bを被重合面18bと称する。
【0046】
被重合面18bにおける平取りの量は、第一の芯金本体17の直径をDとした場合に、0.25D〜0.40Dの範囲とすることが望ましい。平取りの量が余りに少ないと、被重合面18bに重合する第二の芯金16の先端係合部20の厚みが薄くなって強度上の問題が生じる可能性があり、また、平取りの量が余りに多いと、形状規制部18における形状規制面18aの面積それ自体が不十分となって、管7における外側屈曲部の内面形状を適切に規制することが困難となるからである。球円弧状に形成された形状規制面18aの曲率半径は、実質的に、D/2に等しい。
【0047】
一方、第二の芯金16は、図7(a)および図7(b)に示されるように、曲げ加工の対象となる管7の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体21と、第二の芯金本体21の先端面21aから第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って軸方向に突出して形成された先端係合部20とによって構成される。つまり、先端係合部20の断面形状は図7(a)に示されるような部分円弧形状であり、円弧部の曲率半径は、第二の芯金本体21の直径Dを基準としてD/2である。
【0048】
この先端係合部20は、例えば、図1あるいは図4に示されるように、第一の芯金15の先端部と第二の芯金16の先端部とを突き合わせるようにして同軸上に配置した状態で、第一の芯金15の先端に位置する形状規制部18の被重合面18bに対して径方向外側から重合するようにして係合する部分である。
【0049】
従って、その厚みは、被重合面18bにおける平取りの量に相当する厚み、つまり、0.25D〜0.40Dの範囲とすることが望ましい。形状規制部18と先端係合部20とを重合させた際の厚さは第一,第二の芯金本体17,21の直径Dと同等もしくは其れよりも僅かに小さい。
【0050】
次に、曲げ加工装置1と曲げ加工用芯金2を併用して行なわれる管7の曲げ加工について具体的に説明する。
【0051】
図1は曲げ加工の加工開始時点における段取り状況を示した図である。図1に示されるように、第一の芯金15の形状規制部18に形成された被重合面18bに対して第二の芯金16の先端係合部20を径方向外側から重合させるようにして第一の芯金15の先端部と第二の芯金16の先端部とを突き合わせ、第一の芯金15の形状規制部18に設けられた形状規制面18aが、プレッシャー型4やクランプ型6の溝4a,6aに対面するようにして、つまり、形状規制面18aが管7における外側屈曲部の形成位置A1の方を向くようにして、第一の芯金15および第二の芯金16を管7に挿入する。
【0052】
そして、第一の芯金15を挿入した側の管部7aの端面に押圧片8の切欠部8aを押し当てるようにしてワイパー型3の溝3aとプレッシャー型4の溝4aとで管部7aを保持し、また、第二の芯金16を挿入した側の管部7bをロール型5の溝5aとクランプ型6の溝6aとで保持する。
【0053】
このようにして曲げ加工の段取り作業が終了したならば、油圧シリンダ等の駆動源を起動して曲げ加工装置1を作動させる。
【0054】
曲げ加工装置1の作動が開始されると、従来の曲げ加工装置の場合と同様、プレッシャー型4の溝4aが管部7aを径方向外側から押圧した状態で、プレッシャー型4が管部7aの軸方向に沿って屈曲形成位置Aに向けて移動を開始する(図1中の矢印b方向)。また、この移動に同期して、ロール型5およびクランプ型6が、ロール型5の形状規制部5bを中心として、クランプ型6がプレッシャー型4から離間する方向に一体となって回転を開始する(図1中の矢印c方向)。
【0055】
この際、プレッシャー型4に装着された押圧片8がプレッシャー型4と共に管部7aの軸方向に沿って移動するので、プレッシャー型4の溝4aと管部7aとの間の摩擦力の大小とは関わりなく、管部7aの端面部分を確実に軸方向に押圧することができる。
【0056】
また、管部7aの端面部分を軸方向に押圧する押圧片8は、プレッシャー型4の溝4aの断面形状と相似形状の切欠部8aを先端部に形成した板状体によって構成されているので、部分円弧状の切欠部8aにより、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置A1に対応する管部7aの端面部分、つまり、図1に示される管部7aの端面の上方部分を重点的に軸方向に押圧することができる。
【0057】
従って、管7の屈曲が開始されてから管7の屈曲が終了するまでの間、外側屈曲部の形成位置A1に対応する部分に対して重点的に塑性流動を生成することができ、外側屈曲部の形成位置A1に向けて管部7aの素材を十分に供給することが可能となるので、従来型の曲げ加工装置との比較において、引き延ばしの対象となる外側屈曲部の形成位置A1に生じる可能性のある内側への潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を適切に解消することが可能となる。
【0058】
ここでいう塑性流動とは、管部7aの端面の一部に軸方向の圧縮力を加えて塑性変形を生じさせ、管部7aを構成する金属素材の格子面に軸方向に沿った滑りを生成することによって得られる管7の内部的な素材の流れのことである。
【0059】
図1の曲げ加工装置1を利用した実施形態では、部分円弧状の切欠部8aを備えた押圧片8を利用して管部7aの端面部分の一部を軸方向に押圧するようにしているので、管部7aの直径方向を基準に、内側屈曲部の形成位置A2に対応する部分、即ち、図1に示される管部7aの下縁部分であって、押圧片8からの押圧力が直接的に作用しない管部7aの部分で生じる塑性流動が最小となる。
【0060】
そして、管部7aの直径方向に沿って管部7aの下縁部分から離間するにつれて、つまり、図1における方向性で管部7aの下縁部分から上方に離間するにつれて、その部位で発生する塑性流動が図9に示されるようにして徐々に増大し、外側屈曲部の形成位置A1に対応する部分、つまり、管部7aの端面が押圧片8の切欠部8aと直に接触する部分において、実質的に同一かつ最大の塑性流動が発生することになる。
【0061】
従って、内側屈曲部の形成位置A2に向けて管部7aの素材が過剰に供給されるといった問題が解消され、内側屈曲部の形成位置A2の内側に生じる皺も、従来型の曲げ加工装置との比較において、効果的に防止することが可能である。また、内側屈曲部の形成位置A2の外側に突出するような皺は、ロール型5の形状規制部5bによって規制することが可能である。
【0062】
このように、皺の発生し易い内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給を相対的に控えめとする一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部の形成位置A1に対する素材の供給を相対的に多めとすることで、内側屈曲部A2に生じる皺と外側屈曲部A1に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することが可能となる。
【0063】
これらの効果は、本実施形態の曲げ加工用芯金2を併用するか否かに関わりなく、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部A1の形成位置に対応する管部7aの端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成するとした管の曲げ加工方法の実施手段である本実施形態の曲げ加工装置1のみによって達成され得る効果である。
【0064】
しかも、この塑性流動によって生じる管部7a内部での素材の流れは、第一の芯金15の基部から第一の芯金15の先端に向かう方向、つまり、図1において左から右へと向かう方向であるから、塑性流動によって外側屈曲部の形成位置A1に向けて送り出された管部7aの素材の形状は、内側に潰れたりヒケを生じたりする間もなく、直ちに、形状規制部18の形状規制面18aによって内側から支えられるようにして其の形状を規制される。
【0065】
そして、このようにして内面形状を整えられた素材部分は、管7の屈曲つまり外側屈曲部の形成位置A1に生じる延びに伴って、第一の芯金15の先端から離間する方向に送られ、同時に、塑性流動によって新たに送り出された管部7aの素材の内面形状が直ちに形状規制面18aによって形状を規制される。
【0066】
管7の曲げ加工が開始されてから終了するまでの間、このような過程が連続的に繰り返される結果、管7における外側屈曲部A1の潰れやヒケ等の問題を効果的に解消することができる。
【0067】
なお、図1に示される通り、第二の芯金本体21の先端面21aと第一の芯金15の形状規制部18との間には或る程度の間隙があり、この間隙の区間内においては、外側屈曲部A1の内面形状が支えられないことになるが、外側屈曲部の形成位置A1に生じる延びの大半は前述の塑性流動によって管部7aから送り込まれる素材によって賄われ、この間隙部分に送られてくるのは、既に形状規制部18の形状規制面18aで形状を規制された部分であり、この部分が更に引き延ばされるといったことはないので、第二の芯金本体21の先端面21aと形状規制部18との間の間隙部分で潰れやヒケ等の異常が発生することはない。
【0068】
塑性流動によって外側屈曲部の形成位置A1に向けて送り出された管部7aの素材が芯金間の間隙に到達する前の段階で素材の内面形状を直ちに規制することによって生じるこれらの効果は、本実施形態の曲げ加工装置1に依存するものではなく、形状規制部18を先端に備えた第一の芯金15の基部側から先端側に向けて塑性流動を生成しつつ曲げ加工を行うとした本実施形態の管の曲げ加工方法によって得られる固有の効果であり、これにより、従来の曲げ加工方法との比較において、管7における外側屈曲部A1の潰れやヒケ等の問題を効果的に解消することができる。
【0069】
実際には、外側屈曲部の形成位置A1および内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給量を調整する本実施形態の曲げ加工装置1に固有の機能と、芯金に対する塑性流動の方向性の選択、言いかえれば、曲げ加工装置1に対する第一,第二の芯金15,16の取り付け方向の適切な選択とが相俟って、特に、外側屈曲部A1に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題が極めて効果的に解消されることになる。
【0070】
図1に示される通り、第二の芯金16の先端係合部20は、第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って第二の芯金本体21の先端面21aから軸方向に突出しており、この先端係合部20が、管7における内側屈曲部の形成位置A2において第一の芯金本体17の先端面17aに突き合わされるようにしてセットされるので、図1に示されるような曲げ加工の開始時点においても、また、図8に示されるような曲げ加工の終了時点においても、第二の芯金16の先端係合部20の先端部と第一の芯金本体17の先端面17aとの密接状態が確実に保証される。
【0071】
従って、曲げ加工の開始から曲げ加工の終了までの何れの時点においても、管7の内側屈曲部A2の内面形状を第一の芯金本体17の先端外周面と第二の芯金16における先端係合部20の円弧状の外周面とで的確に規制することが可能となり、管7の内側屈曲部A2の内面に生じる皺を確実に防止することができる。
【0072】
この効果は、第二の芯金16の先端係合部20を第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って第二の芯金本体21の先端面21aから軸方向に突出させ、第一の芯金15の形状規制部18を跨いで第一の芯金本体17の先端面17aに当接させることを可能とした本実施形態の曲げ加工用芯金2のみによって達成され得る効果である。
【0073】
実際には、管7の内側屈曲部A2の内面形状が曲げ加工用芯金2によって規制されると共に、管7の内側屈曲部A2の外面形状がロール型5の形状規制部5bによって規制されるので、管7の内側屈曲部A2の内外の皺が防止されることになる。
【0074】
特に、本実施形態の曲げ加工装置1と曲げ加工用芯金2を併用した場合では、皺の発生し易い内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給が制限され、かつ、管7の内側屈曲部A2の内外で管7の形状が規制されることになるので、曲げ加工によって内側屈曲部の形成位置A2の部分に生じる皺を効果的に防止することができる。
【0075】
次に、図5(a)および図5(b)に示されるような押圧片11を装着した曲げ加工装置1、つまり、図4に示される曲げ加工装置1を利用して前記と同様の曲げ加工を行った場合の作用効果の相違について説明にする。
【0076】
プレッシャー型4を管部7aの軸方向に沿って屈曲形成位置Aに向けて移動させ、この移動に同期してロール型5およびクランプ型6を一体に回転を開始させることで管7の曲げ加工を行う点については前記と全く同様である。
【0077】
しかし、この場合は、管部7aの端面を軸方向に押圧する押圧片11が円柱体によって形成されているので、プレッシャー型4の移動および管7の屈曲が開始された初期段階で、まず、外側屈曲部の形成位置A1に対応する管部7aの端面部分の円弧の一点のみが押圧片11で軸方向に押圧され、その後、プレッシャー型4の移動および管部7aの圧縮が進むにつれて、例えば図11に示すように、この端面部分が徐々に座屈して押圧片11との接触面が増大していく。
【0078】
従って、押圧片11を利用した場合では、管部7aの直径方向を基準に、内側屈曲部の形成位置A2に対応する部分、即ち、図4に示される管部7aの下縁部分で生じる塑性流動が最小となり、また、管部7aの直径方向に沿って管部7aの下縁部分から離間するにつれて、其の部位で発生する塑性流動が図10に示されるようにして徐々に増大し、管部7aの端面が押圧片11の切欠部11aの外周と直に接触する部分において最大の塑性流動が発生することになる。
【0079】
図9の例のように塑性流動が一定となる区間が生じないのは、管部7aの直径方向における管部7aの圧縮率が全ての位置において相違するからである。
【0080】
円柱体によって形成された押圧片11を利用した場合では、塑性流動の割合が、内側屈曲部の形成位置A2に対応する部分から外側屈曲部の形成位置A1に対応する部分に向けて連続的に滑らかに増大する傾向にあり、この傾向は、管7を屈曲させる際に屈曲形成位置Aの直径方向の各位置で必要とされる延びの変化特性、言い換えれば、屈曲形成位置Aの直径方向の各位置で必要とされる素材の送り込み量の変化特性と略一致するので、内側屈曲部A2における皺の発生や外側屈曲部A1における潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を、板状体からなる押圧片8を利用した場合と比べ、更に効果的に防止できるメリットがある。この効果については、半円弧状の曲面を有する押圧片や断面略U字型の押圧片を利用した場合、つまり、管部7aの端面を押圧する半円弧状あるいは二次曲線状等の曲面を有する押圧片を利用した場合であっても、基本的に同様である。
【0081】
なお、円柱体によって形成された押圧片11を利用する場合においては、図4に示されるプレッシャー型4の孔13の拡径部の直径を大きめに穿設しておき、これに内嵌される押圧片11を幾つか準備して、各押圧片11の先端部の直径のみを変えるようにすれば、管部7aの端面を押圧する押圧片の実質的な幅を選択的に変更することが可能である。
【0082】
ここで、板状体によって形成された押圧片8を利用した場合に得られる屈曲済みの管7の一例を図12に、また、円柱体によって形成された押圧片11を利用した場合に得られる屈曲済みの管7の一例を図13に示す。何れの場合も、最終的には、図中の二点鎖線の位置で不要部を切断して使用するのが一般的である。
【0083】
次に、本実施形態の曲げ加工装置1を利用して管部7aの押し込み量xや押圧片8,11の幅yおよび曲げ半径Rの異なる様々な曲げ加工を行った際の実験結果について図14〜図17を参照して説明する。
【0084】
但し、ここでいう管部7aの押し込み量とは、プレッシャー型4や押圧片8,11の移動ストローク其れ自体ではなく、加工後の屈曲管7から測定したもので、図12に示されるxの値、つまり、押圧片8,11からの押圧力を受けて変形した管部7aの端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位である。
【0085】
また、押圧片8,11の幅yは、図15および図16に示される通り、板状体からなる押圧片8については其の幅y(管部7aの端部に接する円弧の弦の長さ)、また、円柱体からなる押圧片11については其の直径yである。先端外周部の一部に外側に凸となる曲面を備えた押圧片の曲面の部分をプレッシャー型4の移動方向前方に向けて装着した場合では、プレッシャー型4の溝4aの方向に沿って投影される押圧片の先端部の幅をyとする。
【0086】
図17の図表に、曲げ半径Rを一定として管部7aの押し込み量xと押圧片8,11の幅yを変化させて行なった曲げ加工の実験結果を示す。管7の材質については通常のステンレス材とJIS規格のSTKM11Aを使用した。内側屈曲部の半径Rは3mm、管7の外径dは35mm、曲げ角度は90度である。
【0087】
図17の図表の第1行目から第4行目のデータは、押圧片8,11の幅yを一定の値(=20mm)として押し込み量xの値のみを変化させた対照実験のデータであり、これらのデータから、管部7aの押し込み量xの相違が曲げ加工に対してどのような影響を与えるかを容易に推し量ることができる。
良好な結果が得られるのは、押し込み量xの値が12mm〜30mmの範囲である。管7の外径が相違すれば、当然、これに適した押し込み量xの値も相違するので、管7の直径による影響を排除するため、押し込み量xの値を管7の直径dで除し、0.34〜0.85の範囲、つまり、押圧片8,11からの押圧力を受けて最も圧縮される管部7aの端面部分と最も圧縮されにくい管部7aの端面部分との間の軸方向の変位xが管7の外径寸法の30%から90%となる範囲で適切な曲げ加工が達成され得ることが分かる。
【0088】
このようにして管部7aの圧縮量の調整ひいては塑性流動の調整を適正化することにより、直径の大きな管の曲げ加工にも対処することができるようになる。
【0089】
一方、図17の図表の第5行目から第8行目のデータは、管部7aの押し込み量xを一定の値(=17mm)として押圧片8,11の幅yのみを変化させたときのデータであるから、これらのデータにより、押圧片8,11の幅yの相違が曲げ加工に対してどのような影響を与えるかを容易に推し量ることができる。
良好な結果が得られるのは、押圧片8,11の幅yの値が18mm以上の場合である。管7の外径が相違すれば、当然、これに適した押圧片8,11の幅yの値も相違するので、管7の直径による影響を排除するため、押圧片8,11の幅yの値を管7の直径dで除し、0.51以上の範囲、つまり、押圧片8,11の幅yを管7の外径寸法の50%以上とすることで適切な曲げ加工が達成され得ることが分かる。
なお、押圧片8,11の幅yを管7の直径の100%以上としても押圧片8,11が管7自体の直径を越えて管7に接することはないので、押圧片8,11の幅の上限が100%となるのは自明である。無論、押圧片8の強度を向上させるために切欠部8aの両側に補強部を形成した結果として押圧片8の幅が管7の直径を越えることに問題はない。
【0090】
図18は、管7の外径dを一定(=34mm)として内側屈曲部の曲げ半径Rを変化させて90度の曲げ加工を行なった際の実験結果を示した図表である。管7に挿入する曲げ加工用芯金として、従来型の曲げ加工用芯金と本実施形態の曲げ加工用芯金2とを利用して対照実験を行なっている。曲げ加工装置としては前述の実施形態の曲げ加工装置1を使用し、これを従来型の曲げ加工用芯金と組み合わせる場合にはプレッシャー型4から押圧片8,11を取り外し、また、本実施形態の曲げ加工用芯金2と組み合わせる場合にはプレッシャー型4に押圧片8を装着した。
【0091】
図18の図表から明らかなように、従来型の曲げ加工用芯金を使用した場合では、内側屈曲部の曲げ半径Rが40mmを下回ると変形や皺,減肉,破断が発生するのに対し、本実施形態の曲げ加工用芯金2を使用した場合では内側屈曲部の曲げ半径Rが3mmに至るまで適切な曲げ加工が施されることが分かる。
【0092】
これは、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部A1の形成位置に対応する管部7aの端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成することで内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給を制限すると共に外側屈曲部の形成位置A1に対する素材の供給を相対的に多めとする管の曲げ加工方法、および、形状規制部18を先端に備えた第一の芯金15の基部側から先端側に向けて塑性流動を生成しつつ曲げ加工を行うことで塑性流動により外側屈曲部の形成位置A1に向けて送り出された管部7aの素材の形状を直ちに規制する管の曲げ加工方法とを適用した本実施形態の曲げ加工装置1による作用効果と、先端係合部20を第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って先端面21aから軸方向に突出させて第一の芯金15の形状規制部18を跨がせて第一の芯金本体17の先端面17aに当接させることで管7の内側屈曲部A2の内面形状を第一の芯金本体17の先端外周面と第二の芯金16における先端係合部20の円弧状の外周面とで的確に規制するようにした本実施形態の曲げ加工用芯金2との組み合わせによって生じる相乗的な作用効果である。
【0093】
【発明の効果】
本発明による管の曲げ加工方法は、管の外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金の基部から其の先端に向かう方向で管の内部に塑性流動を生成しながら管を屈曲させるようにしたので、塑性流動によって管の外側屈曲部の形成位置に送り出される管の素材の内面形状を直ちに形状規制部によって規制することができ、第一,第二の芯金間の間隙の影響によって外側屈曲部の内面形状の規制が不十分となって生じる外側屈曲部の潰れやヒケの発生といった問題、および、外側屈曲部の過剰な引き延ばしによる極端な肉厚の減少や破断といった問題を防止することができる。
【0094】
また、本発明による管の曲げ加工方法は、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に軸方向の圧縮力を加えて管の内部に塑性流動を生成するようにしているので、管の直径方向を基準として、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて徐々に塑性流動の割合を増大させることが可能となり、皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給が相対的に控えめとなる一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給が相対的に多めとなるので、内側屈曲部に生じる皺と外側屈曲部に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することができる。
【0095】
特に、圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として30%から90%の範囲内となるように管の端面部分に作用させる軸方向の圧縮力を調整することで、直径の大きな管の曲げ加工に際しても、皺,潰れ,ヒケ,極端な肉厚の減少等のない最適の曲げ加工を実現することができる。
【0096】
また、本発明の曲げ加工装置は、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分と当接する押圧片をプレッシャー型の移動方向後方側の端部に装着しているので、プレッシャー型の溝と管との間の摩擦力の大小とは関わりなく、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分を滑ることなく的確に軸方向に押圧することができ、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に重点的に軸方向の圧縮力を加えられるので、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合を徐々に増大させて皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給を相対的に控えめとし、また、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給を相対的に多めとして、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することができる。
【0097】
更に、プレッシャー型に装着する押圧片をプレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を先端部に形成した板状体によって形成することにより押圧片を単純な外付け構造とすることができ、プレッシャー型に対する脱着作業が容易となるので、幅の仕様等が異なる複数の押圧片を選択的に利用して材質等の異なる様々な管の曲げ加工に対処することが可能となる。
【0098】
また、板状体からなる押圧片に代えて、少なくとも先端外周部の一部に外側に凸となる曲面を備えた押圧片を設け、この押圧片の先端外周部の曲面をプレッシャー型の移動方向前方に向けてプレッシャー型に装着することで、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合を連続的に滑らかに増大させて、内側屈曲部における皺の発生や外側屈曲部における潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を更に効果的に防止できるようになる。
【0099】
特に、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内となるように押圧片の先端部の幅を形成することで、管の外側屈曲部に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を的確に解消することができる。
【0100】
また、本発明による管の曲げ加工方法は、第一の芯金の形状規制部を管の外側屈曲部の内面に当接させ、かつ、第二の芯金の先端係合部と第一の芯金との突き合わせ部分の外周面を管の内側屈曲部の内面に当接させながら管を屈曲させるようにしているので、曲げ加工の対象となる管の外側屈曲部の内面と内側屈曲部の内面の形状を同時に規制しながら管を屈曲させることができ、管の外側屈曲部に生じる潰れやヒケと内側屈曲部に生じる皺を同時に防止することができる。
【0101】
本発明による曲げ加工用芯金は、第一の芯金本体の先端面から軸方向に突出して設けた形状規制部と第二の芯金の先端係合部とを重合させて突き合わせるようにして管内にセットすることができるので、管の屈曲開始から屈曲終了までの全ての工程で管の内側屈曲部の内面形状を第一の芯金本体の先端外周面と第二の芯金における先端係合部の外周面で的確に規制することができ、内側屈曲部に生じる皺を的確に防止することができる。
このため、管の内面形状を規制するための湾曲マンドレルを配置するための大型の金型は不要であり、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型からなる通常の曲げ加工装置で管の曲げ加工を実現することができ、しかも、湾曲マンドレルでは不可能な曲げ半径の小さな曲げ加工や全長の長い管に対する曲げ加工にも管を座屈させることなく対処することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施形態の曲げ加工装置と曲げ加工用芯金を使用状態にて示した平断面図である。
【図2】同実施形態の曲げ加工装置の一部を構成するロール型の溝と形状規制部の形状の概略を示した図で、図2(a)は平面図、また、図2(b)は右側面図を反時計方向に90度回転させた図である。
【図3】同実施形態の曲げ加工装置のプレッシャー型に装着される押圧片を示した図で、図3(a)は左側面図を時計方向に90度回転させた図、また、図3(b)は平面図である。
【図4】他の実施形態の押圧片を装着した曲げ加工装置を使用状態にて示した平断面図である。
【図5】同実施形態の曲げ加工装置のプレッシャー型に装着される押圧片を示した図で、図5(a)は正面図、また、図5(b)は左側面図を180度回転させた図である。
【図6】曲げ加工用芯金の一部を構成する第一の芯金の構造を示した図で、図6(a)は部分断面平面図、また、図6(b)は右側面図を反時計方向に90度回転させた図である。
【図7】曲げ加工用芯金の一部を構成する第二の芯金の構造を示した図で、図7(a)は左側面図を時計方向に90度回転させた図、また、図7(b)は平面図である。
【図8】曲げ加工が終了した時点における曲げ加工装置と曲げ加工用芯金の状況を示した平断面図である。
【図9】板状体からなる押圧片を利用した場合の塑性流動の発生特性について一例を示した線図である。
【図10】外側に凸となる曲面を備えた押圧片を利用した場合の塑性流動の発生特性について一例を示した線図である。
【図11】外側に凸となる曲面を備えた押圧片を利用して管の端面を押圧した場合に生じる管の形状変化の一例を示した断面図である。
【図12】板状体によって形成された押圧片を利用した場合に得られる屈曲管の一例を示した断面図である。
【図13】外側に凸となる曲面を備えた押圧片を利用した場合に得られる屈曲管の一例を示した断面図である。
【図14】押し込み量xを説明した概念図である。
【図15】板状体からなる押圧片の幅yを説明した概念図である。
【図16】外側に凸となる曲面を備えた押圧片の幅yを説明した概念図である。
【図17】曲げ半径を一定として管部の押し込み量xと押圧片の幅yを変化させて行なった曲げ加工の実験結果を示した図表である。
【図18】管の外径を一定として内側屈曲部の曲げ半径Rを変化させて従来型の曲げ加工用芯金と本実施形態の曲げ加工用芯金とを利用して90度の曲げ加工を行なった際の実験結果を示した図表である。
【符号の説明】
1 曲げ加工装置
2 曲げ加工用芯金
3 ワイパー型
3a 溝
4 プレッシャー型
4a 溝
4b プレッシャー型の移動方向後方側の端面
5 ロール型
5a 溝
5b 形状規制部
6 クランプ型
6a 溝
7 管
7a 第一の芯金を挿入した側の管部
7b 第二の芯金を挿入した側の管部
8 押圧片
8a 切欠部
9 ボルト通し穴
10 ボルト
11 押圧片
11a 切欠部
12 ネジ穴
13 孔
14 ボルト
15 第一の芯金
16 第二の芯金
17 第一の芯金本体
17a 第一の芯金本体の先端面
18 形状規制部
18a 内面形状を規制する側の面(形状規制面)
18b 内面形状を規制する側の面と反対する面(被重合面)
19 ピン
20 先端係合部
21 第二の芯金本体
21a 第二の芯金本体の先端面
A 屈曲形成位置
A1 外側屈曲部の形成位置
A2 内側屈曲部の形成位置
【発明の属する技術分野】
本発明は、管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る際に障害となる現象として、屈曲部に発生する潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等の問題がある。
【0003】
これらの問題を軽減化するための管の曲げ加工方法および曲げ加工装置や曲げ加工用芯金が既に幾つか提案されている。
【0004】
まず、曲げ加工によって生じる潰れやヒケを防止する曲げ加工方法としては、外側屈曲部の内面形状を規制する円弧状の先端部を備えた前芯金、および、この円弧状の先端部に係合する凹部を先端に備えた後芯金と、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型からなる通常の曲げ加工装置を用いて行なわれる管の曲げ加工方法が、例えば、特許文献1として公知である。
この曲げ加工方法では、前芯金と後芯金の先端部を突き合わせて管に挿入し、前芯金の挿入部分をロール型とクランプ型とで保持する一方、後芯金の挿入部分をワイパー型とプレッシャー型とで保持し、ワイパー型とプレッシャー型を固定した状態でロール型とクランプ型を回転させて管を屈曲するようになっている。
この際、プレッシャー型が管を径方向外側から押圧しつつ管の軸方向に沿って屈曲形成位置に向けて移動することにより、プレッシャー型と管との間の摩擦力を利用して管の軸方向に沿った圧縮力を管に加え、曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に塑性流動を生成することで、外側屈曲部に生じる潰れやヒケを防止するようにしている。
しかしながら、外側屈曲部の内面形状を規制する先端部を備えた前芯金は、ワイパー型とプレッシャー型の側ではなくロール型とクランプ型の側に位置するので、ロール型とクランプ型を回転させた際には、プレッシャー型と前芯金の先端部との間に隙間が生じる場合があり、塑性流動によって送り出された管の素材が前芯金の先端部で形状を規制されないまま管の内側に向けて潰れたりヒケを生じたりするといった問題を生ずる可能性があった。
【0005】
また、曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に塑性流動を生成することで管の外側屈曲部に発生する潰れやヒケを防止する曲げ加工方法として、管の端面部分の全周を芯金で押圧して管の内部に塑性流動を生成するものが、例えば、特許文献2として提案されている。
この曲げ加工方法では、油圧シリンダで芯金を押圧しているため、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる管の潰れやヒケあるいは極端な肉厚の減少や破断を防止するに足る塑性流動を得ることができるが、この塑性流動は管の全周に亘って均一に生成されるものであるため、管の内側屈曲部の側に管の素材が過剰に供給されて皺が発生するといった弊害を生じる場合がある。
無論、管の端面部分を押す芯金の移動ストロークを調整して塑性流動の程度を変化させることは技術的に可能であるが、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる管の潰れやヒケあるいは極端な肉厚の減少や破断を防止しつつ、同時に、管の内側屈曲部の側に生じる皺の発生を防止できる程度の移動ストロークを見つけ出すのは難しい。また、管の直径が大きな場合には、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる管の潰れやヒケあるいは極端な肉厚の減少や破断を防止するために必要とされる芯金の移動ストロークと管の内側屈曲部に皺が生じない範囲の芯金の移動ストロークとが物理的に全く合致しなくなることもあり、このような場合には、曲げ加工形状の外側屈曲部および内側屈曲部に生じる問題を同時に解消することは不可能となる。
【0006】
一方、管の曲げ加工に利用される曲げ加工用芯金としては、前述した前芯金および後芯金で構成されるものが特許文献1として公知であるが、このものには、曲げ加工形状の内側屈曲部の内面形状を規制する機能がないので、内側屈曲部に発生する皺を防止することはできず、特に、内側屈曲部の内面に向けて突出するような皺の発生を防止することは全く不可能である。
【0007】
これに対し、曲げ加工形状の内側屈曲部の内面形状を規制することが可能な曲げ加工用芯金としては、例えば、特許文献3の曲げ加工装置に採用された湾曲マンドレルが知られている。
この湾曲マンドレルは、目的とする曲げ加工形状に対応したキャビティ形状を有する金型の内部に入れ子のようにして設置されるもので、湾曲マンドレルの他端から押し込まれてくる管の内面形状を湾曲マンドレルの外面形状によって直接的に規制して目的とする曲げ加工形状を得るようになっている。
従って、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる潰れやヒケおよび内側屈曲部に生じる皺を同時に防止することが可能であるが、曲げ半径の小さな曲げ加工を行なう場合、あるいは、曲げ加工の対象となる管の全長が長い場合においては、管の押し込みに際して強力な押し込み力が必要となり、管に座屈が発生する可能性がある。
【0008】
更に、曲げ加工形状の外側屈曲部に生じる潰れやヒケおよび内側屈曲部に生じる皺を防止することが可能な別の曲げ加工用芯型として、例えば、特許文献4に示されるようなものが公知である。
この曲げ加工用芯型は、両側に位置する湾曲型材の間に可撓性板材を積層して構成したものであり、管の内部に曲げ加工用芯型を挿入して曲げ加工を行った後、曲げ加工用芯型自体の可撓性を利用して管の内部から曲げ加工用芯型を引き抜くようになっている。
しかし、このものは基本的に矩形状の管の曲げ加工を対象としたものであり、その構造上、円管等に対して適用することは困難である。曲げ加工用芯型の断面形状を円形とするためには、積層された可撓性板材を束ねる両側の湾曲形型の断面形状を部分円弧状とする必要が生じ、強度上の問題が生じるからである。
また、曲げ半径の小さな曲げ加工に利用した場合には、可撓性板材で形成されているとはいえ、管の内面に対して喰い付きを生じる恐れがあり、曲げ加工後の引き抜き作業が困難となる可能性も否めない。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−214178号公報(図1)
【特許文献2】
特開平6−238352号公報(図1)
【特許文献3】
特開平6−114453号公報(図1〜図3)
【特許文献4】
特開平10−5881号公報(図1,図2)
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の不都合を改善し、管の曲げ加工に際して発生する可能性のある潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等を適切に防止することのできる管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による管の曲げ加工方法は、外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とを各々の先端部を突き合わせるようにして管に挿入し、
前記第一,第二の芯金の係合位置で管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る管の曲げ加工方法であり、特に、
前記管に対し、前記第一の芯金の基部から其の先端に向かう方向の塑性流動を生成しながら管を屈曲させることを特徴とした構成を有する。
【0011】
このような構成によれば、塑性流動の方向性に倣って、管の素材が第一の芯金の基部から第一の芯金の先端に向かう方向に送り出されることになる。
外側屈曲部における管の内面形状を規制する形状規制部は第一の芯金の先端に設けられているので、塑性流動によって送り出された管の素材の内面形状は、内側に潰れたりヒケを生じたりする間もなく、直ちに形状規制部によって形状を規制される。
このようにして内面形状を整えられた部分は、管の屈曲つまり外側屈曲部に生じる延びに伴って、第一の芯金の先端から離間する方向に送られ、同時に、塑性流動によって新たに送り出された管の素材の内面形状が直ちに形状規制部によって形状を規制される。
管の曲げ加工が開始されてから終了するまでの間、このような過程が連続的に繰り返される結果、管の外側屈曲部が内側に潰れたりヒケを生じたりする問題が解消され、同時に、外側屈曲部の過剰な引き延ばしによる極端な肉厚の減少,破断といった問題も解消される。
【0012】
また、本発明による管の曲げ加工方法は、軸方向の圧縮力を加えることにより管の屈曲形成位置に塑性流動を生成しながら管を屈曲させる管の曲げ加工方法であり、
目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成することを特徴とした構成を有する。
【0013】
このような構成によれば、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に対して重点的に軸方向の圧縮力が加えられることになるので、管の直径方向を基準として、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合が徐々に増大する。よって、皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給は相対的に控えめとなる一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給は相対的に多めとなり、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することが可能となる。
【0014】
このように、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に軸方向の圧縮力を加えて塑性流動を生成する構成を適用した場合においては、圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として、30%から90%の範囲内となるように圧縮力を調整することが望ましい。
【0015】
これは実験によって得られた結果であり、外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に軸方向の圧縮力を加えて塑性流動を生成しながら曲げ加工を行った場合では、この圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法に対して30%以上となった際に外側屈曲部の破断が防止され、また、この変位が曲げ加工の対象となる管の外径寸法に対して90%以下となった際に内側屈曲部の皺が防止されることが分かった。
従って、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消するためには、圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として、30%から90%の範囲内となるように圧縮力を調整するのが適当である。
このようにして管の圧縮量の調整ひいては塑性流動の調整を適正化することにより、直径の大きな管の曲げ加工にも対処することができるようになった。
【0016】
本発明の曲げ加工装置は、管の外面形状に倣った溝を有するワイパー型と、
管の外面形状に倣った溝を有してワイパー型に対向して配備され、ワイパー型と共同して管を保持し、其の溝により管を径方向外側から押圧しつつ管の軸方向に沿って管の屈曲形成位置に向けて移動するプレッシャー型と、
管の外面形状に倣った溝を有し、この溝の端部に管の内側屈曲部の外面形状を規制する形状規制部を備えて、管の屈曲形成位置を挟むようにしてワイパー型に隣接配備され、プレッシャー型の移動に同期して、形状規制部を中心として回転するロール型と、
管の外面形状に倣った溝を有してロール型に対向して配備され、ロール型と共同して管を保持し、ロール型の形状規制部を中心としてロール型と一体にプレッシャー型と離間する方向に回転して管を屈曲するクランプ型とを備えた曲げ加工装置であり、特に、
プレッシャー型の移動方向後方側の端部に、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分と当接する押圧片が装着されていることを特徴とした構成を有する。
【0017】
このうち、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型の基本構造に関しては実質的に従来の曲げ加工装置と同様である。
従って、管の曲げ加工は、これらの構成要素を用いて、対向するロール型の溝とクランプ型の溝で管の屈曲形成位置を基準とする片側の管部を保持し、また、対向するワイパー型の溝とプレッシャー型の溝で他側の管部を保持した後、プレッシャー型の溝により管を径方向外側から押圧しつつプレッシャー型を管の軸方向に沿って屈曲形成位置に向けて移動させ、この移動に同期させて、ロール型の形状規制部を中心として、クランプ型がプレッシャー型から離間する方向にロール型およびクランプ型を一体に回転させることによって行なわれる。
本発明においては、特に、プレッシャー型の移動方向後方側の端部に押圧片が設けられており、この押圧片がプレッシャー型と共に管の軸方向に沿って移動するので、プレッシャー型の溝で管を径方向外側から押圧して溝と管との間に作用する摩擦力のみを利用して管を軸方向に押圧していた従来型の曲げ加工装置とは違い、プレッシャー型の溝と管との間の摩擦力の大小や滑りの有無とは関わりなく、確実に、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分を軸方向に押圧することができる。
よって、直径方向を基準としてプレッシャー型に近い位置にある管の端面部分、つまり、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に重点的に軸方向の圧縮力が加えられることになる。このため、管の直径方向を基準として、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合が徐々に増大する。
従って、皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給は相対的に控えめとなる一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給は相対的に多めとなり、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することができる。
更に、内側屈曲部の外面形状がロール型の形状規制部によって外側から規制されるので、内側屈曲部の外側に突出するような皺も確実に防止することができる。
【0018】
この際、プレッシャー型に装着する押圧片は、プレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を先端部に形成した板状体によって形成することができる。この押圧片は、切欠部を管に対向させた状態でプレッシャー型の溝よりも僅かに外側に突出するようにして、プレッシャー型の移動方向後方側の端面に外装して装着する。
【0019】
このような構成を適用した場合には、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面の円弧部分が押圧されることになる。
従って、管の屈曲が開始されてから管の屈曲が終了するまでの間、外側屈曲部の形成位置に対応する部分に対して重点的に塑性流動を生成させることができ、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することが可能となる。
しかも、この押圧片は単純な外付け構造であるため、プレッシャー型に対する脱着作業が容易であり、幅の仕様等が異なる複数の押圧片を選択的に利用して材質等の異なる様々な管の曲げ加工に対処することが可能である。
【0020】
また、板状体からなる押圧片に代えて、プレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を先端面に有し、少なくとも、其の先端外周部の一部に、外側に凸となる曲面を備えた押圧片を設け、この押圧片の切欠部を前記管に対向させた状態でプレッシャー型の溝よりも僅かに外側に突出させ、かつ、押圧片の先端外周部の曲面をプレッシャー型の移動方向前方に向けた状態で、この押圧片をプレッシャー型の移動方向後方側の溝内に埋め込むようにしてもよい。
【0021】
このような構成を適用した場合は、プレッシャー型の移動および管の屈曲が開始された初期段階では外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分の円弧の一点のみが押圧片の凸状の曲面で軸方向に押圧され、その後、プレッシャー型の移動および管の圧縮が進むにつれて、この端面部分が徐々に座屈して押圧片との接触面が増大していく。
従って、管の直径方向を基準に、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合が連続的に滑らかに増大することになり、管の直径方向を基準とする塑性流動の増大傾向が、屈曲形成位置の直径方向の各位置で必要とされる延びの変化特性、言い換えれば、屈曲形成位置の直径方向の各位置で必要とされる素材の送り込み量の変化特性と略一致するので、内側屈曲部における皺の発生や外側屈曲部における潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を効果的に防止できるメリットがある。
【0022】
ここで、これらの押圧片は、プレッシャー型の溝の方向に沿って投影される先端部の幅が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内となるように形成することが望ましい。
【0023】
押圧片の先端部の幅を管の外径寸法を基準として50%以上にするのが望ましいとするのは実験に基く結果であり、これ以下の値にすると、外側屈曲部に肉厚の減少の問題が生じる。また、100%は、押圧片の幅が曲げ加工の対象となる管の外径寸法と一致する値であり、この値以上に押圧片の幅を増大させても押圧片が管の径方向外側に食み出すだけであるから意味がない。
従って、外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を解消するためには、プレッシャー型の溝の方向に沿って投影される押圧片の先端部の幅が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内となるように形成するのが適当である。
【0024】
本発明による管の曲げ加工方法は、外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とを各々の先端部を突き合わせるようにして管に挿入し、
前記第一,第二の芯金の係合位置で管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る管の曲げ加工方法であって、
前記第一の芯金の形状規制部を前記管の外側屈曲部の内面に当接させ、かつ、前記第二の芯金の先端係合部と前記第一の芯金との突き合わせ部分の外周面を前記管の内側屈曲部の内面に当接させながら管を屈曲させることを特徴とした構成を有する。
【0025】
曲げ加工の対象となる管の外側屈曲部の内面と内側屈曲部の内面の形状を同時に規制しながら管を屈曲させるようにしたので、管の外側屈曲部に生じる潰れやヒケと内側屈曲部に生じる皺を同時に防止することができる。
【0026】
本発明による曲げ加工用芯金は、管の外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と、第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とからなるもので、特に、
第一の芯金の形状規制部が、曲げ加工の対象となる管の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体の先端面から軸方向に突出して設けられ、更に、この形状規制部において外側屈曲部の内面形状を規制する側の面と反対する面が、第一の芯金本体の外径よりも径方向内側に位置するように構成されると共に、
第二の芯金の先端係合部は、第一の芯金の先端部と第二の芯金の先端部とを突き合わせるようにして同軸上に配置した状態で、前記外側屈曲部の内面形状を規制する側の面と反対する面に対して径方向外側から重合するようにして、曲げ加工の対象となる管の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体の先端面から、外周面の一部に沿って軸方向に突出して形成されていることを特徴とした構成を有する。
【0027】
この曲げ加工用芯金を利用した管の曲げ加工は、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型を備えた曲げ加工装置を併用して行なわれる。
第一の芯金の先端部と第二の芯金の先端部とを突き合わせて管に挿入する際には、第一の芯金の形状規制部において外側屈曲部の内面形状を規制する側の面がプレッシャー型やクランプ型の溝に対面するようにし、また、第二の芯金は、其の先端係合部を第一の芯金の形状規制部の反対面に対して径方向外側から重合するようにして、第一の芯金本体の先端面に突き合わせるようにする。
そして、第一の芯金を挿入した側の管部をワイパー型の溝とプレッシャー型の溝で保持し、第二の芯金を挿入した側の管部をロール型の溝とクランプ型の溝で保持し、プレッシャー型の溝により管を径方向外側から押圧しつつプレッシャー型を管の軸方向に沿って屈曲形成位置に向けて移動させ、この移動に同期させて、ロール型の形状規制部を中心として、クランプ型がプレッシャー型から離間する方向にロール型およびクランプ型を一体に回転させる。
ロール型およびクランプ型を一体に回転させることで管が徐々に屈曲されていくが、第一の芯金を挿入した側の管部をプレッシャー型の溝で保持しているため、プレッシャー型の移動で生じる塑性流動によって送り出された管の素材の内面形状が、直ちに、第一の芯金の先端に位置する形状規制部の形状規制面によって規制される。従って、管の外側屈曲部が内側に潰れたりヒケを生じたりする問題が解消され、同時に、外側屈曲部の過剰な引き延ばしによる極端な肉厚の減少,破断といった問題も解消される。
また、第二の芯金の先端係合部は、管の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体の外周面の一部に沿って軸方向に突出しており、この先端係合部が、管の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体の先端面に突き合わされているので、管を屈曲させた際には、管の内側屈曲部の内面形状が、第一の芯金本体の先端外周面と第二の芯金における先端係合部の外周面で的確に規制され、内側屈曲部の皺が防止される。
また、この曲げ加工用芯金は、管の端部を押圧する押圧片を備えたプレッシャー型を有する曲げ加工装置と組み合わせて曲げ加工システムとして利用するのが効果的であり、これにより、曲げ加工の屈曲部に発生する潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断,皺の発生等の問題を合わせて効果的に解消することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明による管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金の一実施形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は一実施形態の曲げ加工装置1と曲げ加工用芯金2を使用状態にて示した平断面図である。
【0030】
このうち、曲げ加工装置1は、ワイパー型3とプレッシャー型4およびロール型5とクランプ型6によって構成される。
【0031】
プレッシャー型4は、曲げ加工の対象となる管7の外面形状に倣った溝3aを備えたワイパー型3に対向して配備され、プレッシャー型4の溝4aによりワイパー型3の溝3aと共同して管7を保持する。また、プレッシャー型4は溝4aによって管7の外周面を径方向外側から押圧するように付勢され、曲げ加工に際しては、公知の油圧シリンダ等を駆動源として、管7の軸方向に沿って管7の屈曲形成位置Aに向けて移動するようになっている。
【0032】
ロール型5は、管7の外面形状に倣った溝5aを備え、管7の屈曲形成位置Aを挟むようにしてワイパー型3に隣接して配備される。また、溝5aの端部には管7の内側屈曲部の外面形状を規制する半円弧状の形状規制部5bが形成されている。ロール型5における溝5aと形状規制部5bの外観を図2(a)および図2(b)に示す。図1を平断面図として見た場合、第三角法においては、図2(a)が平面図、また、図2(b)は、右側面図を反時計方向に90度回転させた図である。
【0033】
クランプ型6は、管7の外面形状に倣った溝6aを備えてロール型5に対向して配備され、クランプ型6の溝6aによりロール型5の溝5aと共同して管7を保持する。
【0034】
クランプ型6とロール型5は、前述したプレッシャー型4の移動に同期し、ロール型5の形状規制部5bを中心として、クランプ型6がプレッシャー型4から離間する方向に一体となって回転することによって管7を屈曲させる。
【0035】
以上に述べたように、ワイパー型3,プレッシャー型4,ロール型5,クランプ型6の基本構成に関しては従来の曲げ加工装置(例えば、特許文献1のもの)と同様であるが、この実施形態の曲げ加工装置1は、プレッシャー型4の移動方向後方側の端部に、管7の端面部分と当接する押圧片8が装着されている点で、従来の曲げ加工装置と構造が相違する。
【0036】
押圧片8の形状の概略を図3(a)および図3(b)に示す。図1を平断面図として見た場合、第三角法においては、図3(b)が平面図、また、図3(a)は、左側面図を時計方向に90度回転させた図である。この押圧片8は、プレッシャー型4における溝4aの断面形状と相似形状の切欠部8aを先端に備えた板状体によって形成され、その中央部にボルト通し穴9が穿設されている。
【0037】
押圧片8は、図1に示される通り、其の切欠部8aを管7に対向させ、かつ、切欠部8aをプレッシャー型4の溝4aよりも僅かに外側に突出させた状態で、ボルト通し穴9に通されたボルト10を介して、プレッシャー型4の移動方向後方側の端面4bに外装して装着される。
【0038】
図4は、押圧片に関連する他の実施形態について示した平断面図であり、押圧片11の全体形状が円柱形状である点、および、この押圧片11がプレッシャー型4の溝4a内に埋め込まれるようにして装着されている点で図1の実施形態と相違する。
【0039】
押圧片11の形状の概略を図5(a)および図5(b)に示す。図4を平断面図として見た場合、第三角法においては、図5(a)が正面図、また、図5(b)は、左側面図を90度回転させた図である。この押圧片11は、プレッシャー型4における溝4aの断面形状と相似形状の切欠部11aを先端に備えた円柱体によって形成され、その軸心に沿ってネジ穴12が螺刻されている。
【0040】
押圧片11は、図3に示される通り、プレッシャー型4の移動方向後方側において溝4aと直交するようにして穿設された段付きの孔13の拡径部に内嵌され、切欠部11aを管7に対向させて溝4aよりも僅かに外側に突出させた状態で、溝4a内に埋め込まれるようにしてボルト14で固定される。
ここでは、一例として、先端外周部の全周に亘って外側に凸となる曲面を備えた円柱体からなる押圧片11について示しているが、この押圧片に必要とされる要件は、少なくとも其の先端外周部の一部に外側に凸となる曲面を備え、この曲面の部分をプレッシャー型4の移動方向前方に向けて装着すること、つまり、外側に凸となる曲面の部分で管7の端面部分を押圧できるようにすることである。従って、例えば、図5(a)において押圧片11の左半分を削除して半円弧状の曲面を有する押圧片としても構わないし、あるいは、角柱と半円柱とを合成した断面略U字型の押圧片を設け、その半円弧状の曲面の部分をプレッシャー型4の移動方向前方、つまり、図5(a)中の右方向に向けて装着するようにしても構わない。更に言えば、その曲面の形状も完全な円弧である必要はなく、例えば、二次曲線等であってもよい。
【0041】
これらの押圧片8および押圧片11は、何れも、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管7の端面部分、つまり、ワイパー型3とプレッシャー型4で保持される管7の端面のうち、プレッシャー型4に臨む側の端面部分を軸方向に押圧するための手段である。
【0042】
次に、曲げ加工用芯金2の構造について詳細に説明する。この曲げ加工用芯金2は、図6(a)および図6(b)に示されるような第一の芯金15と、図7(a)および図7(b)に示されるような第二の芯金16とからなる。
【0043】
第一の芯金15は、図6(a)および図6(b)に示されるように、曲げ加工の対象となる管7の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体17と、其の先端面17aから軸方向に突出するようにして装着された形状規制部18とによって構成される。
【0044】
形状規制部18は、ピン19を介して第一の芯金本体17の先端に装着されており、図6(a)中の矢印a方向に向けて一定の範囲内で揺動自在である。形状規制部18は、其の揺動方向を基準とする一端面に、管7の外側屈曲部における内面形状を規制する面18aを備え、また、内面形状を規制する側の面18aと反対する側の面18bは、第一の芯金本体17の外径よりも径方向内側に位置するように平取りして形成されている。
【0045】
以下、管7の外側屈曲部における内面形状を規制する球円弧状の面18aを形状規制面18a、また、これと反対する面18bを被重合面18bと称する。
【0046】
被重合面18bにおける平取りの量は、第一の芯金本体17の直径をDとした場合に、0.25D〜0.40Dの範囲とすることが望ましい。平取りの量が余りに少ないと、被重合面18bに重合する第二の芯金16の先端係合部20の厚みが薄くなって強度上の問題が生じる可能性があり、また、平取りの量が余りに多いと、形状規制部18における形状規制面18aの面積それ自体が不十分となって、管7における外側屈曲部の内面形状を適切に規制することが困難となるからである。球円弧状に形成された形状規制面18aの曲率半径は、実質的に、D/2に等しい。
【0047】
一方、第二の芯金16は、図7(a)および図7(b)に示されるように、曲げ加工の対象となる管7の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体21と、第二の芯金本体21の先端面21aから第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って軸方向に突出して形成された先端係合部20とによって構成される。つまり、先端係合部20の断面形状は図7(a)に示されるような部分円弧形状であり、円弧部の曲率半径は、第二の芯金本体21の直径Dを基準としてD/2である。
【0048】
この先端係合部20は、例えば、図1あるいは図4に示されるように、第一の芯金15の先端部と第二の芯金16の先端部とを突き合わせるようにして同軸上に配置した状態で、第一の芯金15の先端に位置する形状規制部18の被重合面18bに対して径方向外側から重合するようにして係合する部分である。
【0049】
従って、その厚みは、被重合面18bにおける平取りの量に相当する厚み、つまり、0.25D〜0.40Dの範囲とすることが望ましい。形状規制部18と先端係合部20とを重合させた際の厚さは第一,第二の芯金本体17,21の直径Dと同等もしくは其れよりも僅かに小さい。
【0050】
次に、曲げ加工装置1と曲げ加工用芯金2を併用して行なわれる管7の曲げ加工について具体的に説明する。
【0051】
図1は曲げ加工の加工開始時点における段取り状況を示した図である。図1に示されるように、第一の芯金15の形状規制部18に形成された被重合面18bに対して第二の芯金16の先端係合部20を径方向外側から重合させるようにして第一の芯金15の先端部と第二の芯金16の先端部とを突き合わせ、第一の芯金15の形状規制部18に設けられた形状規制面18aが、プレッシャー型4やクランプ型6の溝4a,6aに対面するようにして、つまり、形状規制面18aが管7における外側屈曲部の形成位置A1の方を向くようにして、第一の芯金15および第二の芯金16を管7に挿入する。
【0052】
そして、第一の芯金15を挿入した側の管部7aの端面に押圧片8の切欠部8aを押し当てるようにしてワイパー型3の溝3aとプレッシャー型4の溝4aとで管部7aを保持し、また、第二の芯金16を挿入した側の管部7bをロール型5の溝5aとクランプ型6の溝6aとで保持する。
【0053】
このようにして曲げ加工の段取り作業が終了したならば、油圧シリンダ等の駆動源を起動して曲げ加工装置1を作動させる。
【0054】
曲げ加工装置1の作動が開始されると、従来の曲げ加工装置の場合と同様、プレッシャー型4の溝4aが管部7aを径方向外側から押圧した状態で、プレッシャー型4が管部7aの軸方向に沿って屈曲形成位置Aに向けて移動を開始する(図1中の矢印b方向)。また、この移動に同期して、ロール型5およびクランプ型6が、ロール型5の形状規制部5bを中心として、クランプ型6がプレッシャー型4から離間する方向に一体となって回転を開始する(図1中の矢印c方向)。
【0055】
この際、プレッシャー型4に装着された押圧片8がプレッシャー型4と共に管部7aの軸方向に沿って移動するので、プレッシャー型4の溝4aと管部7aとの間の摩擦力の大小とは関わりなく、管部7aの端面部分を確実に軸方向に押圧することができる。
【0056】
また、管部7aの端面部分を軸方向に押圧する押圧片8は、プレッシャー型4の溝4aの断面形状と相似形状の切欠部8aを先端部に形成した板状体によって構成されているので、部分円弧状の切欠部8aにより、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置A1に対応する管部7aの端面部分、つまり、図1に示される管部7aの端面の上方部分を重点的に軸方向に押圧することができる。
【0057】
従って、管7の屈曲が開始されてから管7の屈曲が終了するまでの間、外側屈曲部の形成位置A1に対応する部分に対して重点的に塑性流動を生成することができ、外側屈曲部の形成位置A1に向けて管部7aの素材を十分に供給することが可能となるので、従来型の曲げ加工装置との比較において、引き延ばしの対象となる外側屈曲部の形成位置A1に生じる可能性のある内側への潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を適切に解消することが可能となる。
【0058】
ここでいう塑性流動とは、管部7aの端面の一部に軸方向の圧縮力を加えて塑性変形を生じさせ、管部7aを構成する金属素材の格子面に軸方向に沿った滑りを生成することによって得られる管7の内部的な素材の流れのことである。
【0059】
図1の曲げ加工装置1を利用した実施形態では、部分円弧状の切欠部8aを備えた押圧片8を利用して管部7aの端面部分の一部を軸方向に押圧するようにしているので、管部7aの直径方向を基準に、内側屈曲部の形成位置A2に対応する部分、即ち、図1に示される管部7aの下縁部分であって、押圧片8からの押圧力が直接的に作用しない管部7aの部分で生じる塑性流動が最小となる。
【0060】
そして、管部7aの直径方向に沿って管部7aの下縁部分から離間するにつれて、つまり、図1における方向性で管部7aの下縁部分から上方に離間するにつれて、その部位で発生する塑性流動が図9に示されるようにして徐々に増大し、外側屈曲部の形成位置A1に対応する部分、つまり、管部7aの端面が押圧片8の切欠部8aと直に接触する部分において、実質的に同一かつ最大の塑性流動が発生することになる。
【0061】
従って、内側屈曲部の形成位置A2に向けて管部7aの素材が過剰に供給されるといった問題が解消され、内側屈曲部の形成位置A2の内側に生じる皺も、従来型の曲げ加工装置との比較において、効果的に防止することが可能である。また、内側屈曲部の形成位置A2の外側に突出するような皺は、ロール型5の形状規制部5bによって規制することが可能である。
【0062】
このように、皺の発生し易い内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給を相対的に控えめとする一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部の形成位置A1に対する素材の供給を相対的に多めとすることで、内側屈曲部A2に生じる皺と外側屈曲部A1に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することが可能となる。
【0063】
これらの効果は、本実施形態の曲げ加工用芯金2を併用するか否かに関わりなく、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部A1の形成位置に対応する管部7aの端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成するとした管の曲げ加工方法の実施手段である本実施形態の曲げ加工装置1のみによって達成され得る効果である。
【0064】
しかも、この塑性流動によって生じる管部7a内部での素材の流れは、第一の芯金15の基部から第一の芯金15の先端に向かう方向、つまり、図1において左から右へと向かう方向であるから、塑性流動によって外側屈曲部の形成位置A1に向けて送り出された管部7aの素材の形状は、内側に潰れたりヒケを生じたりする間もなく、直ちに、形状規制部18の形状規制面18aによって内側から支えられるようにして其の形状を規制される。
【0065】
そして、このようにして内面形状を整えられた素材部分は、管7の屈曲つまり外側屈曲部の形成位置A1に生じる延びに伴って、第一の芯金15の先端から離間する方向に送られ、同時に、塑性流動によって新たに送り出された管部7aの素材の内面形状が直ちに形状規制面18aによって形状を規制される。
【0066】
管7の曲げ加工が開始されてから終了するまでの間、このような過程が連続的に繰り返される結果、管7における外側屈曲部A1の潰れやヒケ等の問題を効果的に解消することができる。
【0067】
なお、図1に示される通り、第二の芯金本体21の先端面21aと第一の芯金15の形状規制部18との間には或る程度の間隙があり、この間隙の区間内においては、外側屈曲部A1の内面形状が支えられないことになるが、外側屈曲部の形成位置A1に生じる延びの大半は前述の塑性流動によって管部7aから送り込まれる素材によって賄われ、この間隙部分に送られてくるのは、既に形状規制部18の形状規制面18aで形状を規制された部分であり、この部分が更に引き延ばされるといったことはないので、第二の芯金本体21の先端面21aと形状規制部18との間の間隙部分で潰れやヒケ等の異常が発生することはない。
【0068】
塑性流動によって外側屈曲部の形成位置A1に向けて送り出された管部7aの素材が芯金間の間隙に到達する前の段階で素材の内面形状を直ちに規制することによって生じるこれらの効果は、本実施形態の曲げ加工装置1に依存するものではなく、形状規制部18を先端に備えた第一の芯金15の基部側から先端側に向けて塑性流動を生成しつつ曲げ加工を行うとした本実施形態の管の曲げ加工方法によって得られる固有の効果であり、これにより、従来の曲げ加工方法との比較において、管7における外側屈曲部A1の潰れやヒケ等の問題を効果的に解消することができる。
【0069】
実際には、外側屈曲部の形成位置A1および内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給量を調整する本実施形態の曲げ加工装置1に固有の機能と、芯金に対する塑性流動の方向性の選択、言いかえれば、曲げ加工装置1に対する第一,第二の芯金15,16の取り付け方向の適切な選択とが相俟って、特に、外側屈曲部A1に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題が極めて効果的に解消されることになる。
【0070】
図1に示される通り、第二の芯金16の先端係合部20は、第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って第二の芯金本体21の先端面21aから軸方向に突出しており、この先端係合部20が、管7における内側屈曲部の形成位置A2において第一の芯金本体17の先端面17aに突き合わされるようにしてセットされるので、図1に示されるような曲げ加工の開始時点においても、また、図8に示されるような曲げ加工の終了時点においても、第二の芯金16の先端係合部20の先端部と第一の芯金本体17の先端面17aとの密接状態が確実に保証される。
【0071】
従って、曲げ加工の開始から曲げ加工の終了までの何れの時点においても、管7の内側屈曲部A2の内面形状を第一の芯金本体17の先端外周面と第二の芯金16における先端係合部20の円弧状の外周面とで的確に規制することが可能となり、管7の内側屈曲部A2の内面に生じる皺を確実に防止することができる。
【0072】
この効果は、第二の芯金16の先端係合部20を第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って第二の芯金本体21の先端面21aから軸方向に突出させ、第一の芯金15の形状規制部18を跨いで第一の芯金本体17の先端面17aに当接させることを可能とした本実施形態の曲げ加工用芯金2のみによって達成され得る効果である。
【0073】
実際には、管7の内側屈曲部A2の内面形状が曲げ加工用芯金2によって規制されると共に、管7の内側屈曲部A2の外面形状がロール型5の形状規制部5bによって規制されるので、管7の内側屈曲部A2の内外の皺が防止されることになる。
【0074】
特に、本実施形態の曲げ加工装置1と曲げ加工用芯金2を併用した場合では、皺の発生し易い内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給が制限され、かつ、管7の内側屈曲部A2の内外で管7の形状が規制されることになるので、曲げ加工によって内側屈曲部の形成位置A2の部分に生じる皺を効果的に防止することができる。
【0075】
次に、図5(a)および図5(b)に示されるような押圧片11を装着した曲げ加工装置1、つまり、図4に示される曲げ加工装置1を利用して前記と同様の曲げ加工を行った場合の作用効果の相違について説明にする。
【0076】
プレッシャー型4を管部7aの軸方向に沿って屈曲形成位置Aに向けて移動させ、この移動に同期してロール型5およびクランプ型6を一体に回転を開始させることで管7の曲げ加工を行う点については前記と全く同様である。
【0077】
しかし、この場合は、管部7aの端面を軸方向に押圧する押圧片11が円柱体によって形成されているので、プレッシャー型4の移動および管7の屈曲が開始された初期段階で、まず、外側屈曲部の形成位置A1に対応する管部7aの端面部分の円弧の一点のみが押圧片11で軸方向に押圧され、その後、プレッシャー型4の移動および管部7aの圧縮が進むにつれて、例えば図11に示すように、この端面部分が徐々に座屈して押圧片11との接触面が増大していく。
【0078】
従って、押圧片11を利用した場合では、管部7aの直径方向を基準に、内側屈曲部の形成位置A2に対応する部分、即ち、図4に示される管部7aの下縁部分で生じる塑性流動が最小となり、また、管部7aの直径方向に沿って管部7aの下縁部分から離間するにつれて、其の部位で発生する塑性流動が図10に示されるようにして徐々に増大し、管部7aの端面が押圧片11の切欠部11aの外周と直に接触する部分において最大の塑性流動が発生することになる。
【0079】
図9の例のように塑性流動が一定となる区間が生じないのは、管部7aの直径方向における管部7aの圧縮率が全ての位置において相違するからである。
【0080】
円柱体によって形成された押圧片11を利用した場合では、塑性流動の割合が、内側屈曲部の形成位置A2に対応する部分から外側屈曲部の形成位置A1に対応する部分に向けて連続的に滑らかに増大する傾向にあり、この傾向は、管7を屈曲させる際に屈曲形成位置Aの直径方向の各位置で必要とされる延びの変化特性、言い換えれば、屈曲形成位置Aの直径方向の各位置で必要とされる素材の送り込み量の変化特性と略一致するので、内側屈曲部A2における皺の発生や外側屈曲部A1における潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を、板状体からなる押圧片8を利用した場合と比べ、更に効果的に防止できるメリットがある。この効果については、半円弧状の曲面を有する押圧片や断面略U字型の押圧片を利用した場合、つまり、管部7aの端面を押圧する半円弧状あるいは二次曲線状等の曲面を有する押圧片を利用した場合であっても、基本的に同様である。
【0081】
なお、円柱体によって形成された押圧片11を利用する場合においては、図4に示されるプレッシャー型4の孔13の拡径部の直径を大きめに穿設しておき、これに内嵌される押圧片11を幾つか準備して、各押圧片11の先端部の直径のみを変えるようにすれば、管部7aの端面を押圧する押圧片の実質的な幅を選択的に変更することが可能である。
【0082】
ここで、板状体によって形成された押圧片8を利用した場合に得られる屈曲済みの管7の一例を図12に、また、円柱体によって形成された押圧片11を利用した場合に得られる屈曲済みの管7の一例を図13に示す。何れの場合も、最終的には、図中の二点鎖線の位置で不要部を切断して使用するのが一般的である。
【0083】
次に、本実施形態の曲げ加工装置1を利用して管部7aの押し込み量xや押圧片8,11の幅yおよび曲げ半径Rの異なる様々な曲げ加工を行った際の実験結果について図14〜図17を参照して説明する。
【0084】
但し、ここでいう管部7aの押し込み量とは、プレッシャー型4や押圧片8,11の移動ストローク其れ自体ではなく、加工後の屈曲管7から測定したもので、図12に示されるxの値、つまり、押圧片8,11からの押圧力を受けて変形した管部7aの端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位である。
【0085】
また、押圧片8,11の幅yは、図15および図16に示される通り、板状体からなる押圧片8については其の幅y(管部7aの端部に接する円弧の弦の長さ)、また、円柱体からなる押圧片11については其の直径yである。先端外周部の一部に外側に凸となる曲面を備えた押圧片の曲面の部分をプレッシャー型4の移動方向前方に向けて装着した場合では、プレッシャー型4の溝4aの方向に沿って投影される押圧片の先端部の幅をyとする。
【0086】
図17の図表に、曲げ半径Rを一定として管部7aの押し込み量xと押圧片8,11の幅yを変化させて行なった曲げ加工の実験結果を示す。管7の材質については通常のステンレス材とJIS規格のSTKM11Aを使用した。内側屈曲部の半径Rは3mm、管7の外径dは35mm、曲げ角度は90度である。
【0087】
図17の図表の第1行目から第4行目のデータは、押圧片8,11の幅yを一定の値(=20mm)として押し込み量xの値のみを変化させた対照実験のデータであり、これらのデータから、管部7aの押し込み量xの相違が曲げ加工に対してどのような影響を与えるかを容易に推し量ることができる。
良好な結果が得られるのは、押し込み量xの値が12mm〜30mmの範囲である。管7の外径が相違すれば、当然、これに適した押し込み量xの値も相違するので、管7の直径による影響を排除するため、押し込み量xの値を管7の直径dで除し、0.34〜0.85の範囲、つまり、押圧片8,11からの押圧力を受けて最も圧縮される管部7aの端面部分と最も圧縮されにくい管部7aの端面部分との間の軸方向の変位xが管7の外径寸法の30%から90%となる範囲で適切な曲げ加工が達成され得ることが分かる。
【0088】
このようにして管部7aの圧縮量の調整ひいては塑性流動の調整を適正化することにより、直径の大きな管の曲げ加工にも対処することができるようになる。
【0089】
一方、図17の図表の第5行目から第8行目のデータは、管部7aの押し込み量xを一定の値(=17mm)として押圧片8,11の幅yのみを変化させたときのデータであるから、これらのデータにより、押圧片8,11の幅yの相違が曲げ加工に対してどのような影響を与えるかを容易に推し量ることができる。
良好な結果が得られるのは、押圧片8,11の幅yの値が18mm以上の場合である。管7の外径が相違すれば、当然、これに適した押圧片8,11の幅yの値も相違するので、管7の直径による影響を排除するため、押圧片8,11の幅yの値を管7の直径dで除し、0.51以上の範囲、つまり、押圧片8,11の幅yを管7の外径寸法の50%以上とすることで適切な曲げ加工が達成され得ることが分かる。
なお、押圧片8,11の幅yを管7の直径の100%以上としても押圧片8,11が管7自体の直径を越えて管7に接することはないので、押圧片8,11の幅の上限が100%となるのは自明である。無論、押圧片8の強度を向上させるために切欠部8aの両側に補強部を形成した結果として押圧片8の幅が管7の直径を越えることに問題はない。
【0090】
図18は、管7の外径dを一定(=34mm)として内側屈曲部の曲げ半径Rを変化させて90度の曲げ加工を行なった際の実験結果を示した図表である。管7に挿入する曲げ加工用芯金として、従来型の曲げ加工用芯金と本実施形態の曲げ加工用芯金2とを利用して対照実験を行なっている。曲げ加工装置としては前述の実施形態の曲げ加工装置1を使用し、これを従来型の曲げ加工用芯金と組み合わせる場合にはプレッシャー型4から押圧片8,11を取り外し、また、本実施形態の曲げ加工用芯金2と組み合わせる場合にはプレッシャー型4に押圧片8を装着した。
【0091】
図18の図表から明らかなように、従来型の曲げ加工用芯金を使用した場合では、内側屈曲部の曲げ半径Rが40mmを下回ると変形や皺,減肉,破断が発生するのに対し、本実施形態の曲げ加工用芯金2を使用した場合では内側屈曲部の曲げ半径Rが3mmに至るまで適切な曲げ加工が施されることが分かる。
【0092】
これは、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部A1の形成位置に対応する管部7aの端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成することで内側屈曲部の形成位置A2に対する素材の供給を制限すると共に外側屈曲部の形成位置A1に対する素材の供給を相対的に多めとする管の曲げ加工方法、および、形状規制部18を先端に備えた第一の芯金15の基部側から先端側に向けて塑性流動を生成しつつ曲げ加工を行うことで塑性流動により外側屈曲部の形成位置A1に向けて送り出された管部7aの素材の形状を直ちに規制する管の曲げ加工方法とを適用した本実施形態の曲げ加工装置1による作用効果と、先端係合部20を第二の芯金本体21の外周面の一部に沿って先端面21aから軸方向に突出させて第一の芯金15の形状規制部18を跨がせて第一の芯金本体17の先端面17aに当接させることで管7の内側屈曲部A2の内面形状を第一の芯金本体17の先端外周面と第二の芯金16における先端係合部20の円弧状の外周面とで的確に規制するようにした本実施形態の曲げ加工用芯金2との組み合わせによって生じる相乗的な作用効果である。
【0093】
【発明の効果】
本発明による管の曲げ加工方法は、管の外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金の基部から其の先端に向かう方向で管の内部に塑性流動を生成しながら管を屈曲させるようにしたので、塑性流動によって管の外側屈曲部の形成位置に送り出される管の素材の内面形状を直ちに形状規制部によって規制することができ、第一,第二の芯金間の間隙の影響によって外側屈曲部の内面形状の規制が不十分となって生じる外側屈曲部の潰れやヒケの発生といった問題、および、外側屈曲部の過剰な引き延ばしによる極端な肉厚の減少や破断といった問題を防止することができる。
【0094】
また、本発明による管の曲げ加工方法は、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に軸方向の圧縮力を加えて管の内部に塑性流動を生成するようにしているので、管の直径方向を基準として、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて徐々に塑性流動の割合を増大させることが可能となり、皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給が相対的に控えめとなる一方、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給が相対的に多めとなるので、内側屈曲部に生じる皺と外側屈曲部に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することができる。
【0095】
特に、圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として30%から90%の範囲内となるように管の端面部分に作用させる軸方向の圧縮力を調整することで、直径の大きな管の曲げ加工に際しても、皺,潰れ,ヒケ,極端な肉厚の減少等のない最適の曲げ加工を実現することができる。
【0096】
また、本発明の曲げ加工装置は、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分と当接する押圧片をプレッシャー型の移動方向後方側の端部に装着しているので、プレッシャー型の溝と管との間の摩擦力の大小とは関わりなく、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分を滑ることなく的確に軸方向に押圧することができ、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に重点的に軸方向の圧縮力を加えられるので、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合を徐々に増大させて皺の発生し易い内側屈曲部に対する素材の供給を相対的に控えめとし、また、潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題の発生し易い外側屈曲部に対する素材の供給を相対的に多めとして、内側屈曲部の皺と外側屈曲部の潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を同時に解消することができる。
【0097】
更に、プレッシャー型に装着する押圧片をプレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を先端部に形成した板状体によって形成することにより押圧片を単純な外付け構造とすることができ、プレッシャー型に対する脱着作業が容易となるので、幅の仕様等が異なる複数の押圧片を選択的に利用して材質等の異なる様々な管の曲げ加工に対処することが可能となる。
【0098】
また、板状体からなる押圧片に代えて、少なくとも先端外周部の一部に外側に凸となる曲面を備えた押圧片を設け、この押圧片の先端外周部の曲面をプレッシャー型の移動方向前方に向けてプレッシャー型に装着することで、内側屈曲部の形成位置に対応する部分から外側屈曲部の形成位置に対応する部分に向けて塑性流動の割合を連続的に滑らかに増大させて、内側屈曲部における皺の発生や外側屈曲部における潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を更に効果的に防止できるようになる。
【0099】
特に、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内となるように押圧片の先端部の幅を形成することで、管の外側屈曲部に生じる潰れやヒケ,極端な肉厚の減少,破断といった問題を的確に解消することができる。
【0100】
また、本発明による管の曲げ加工方法は、第一の芯金の形状規制部を管の外側屈曲部の内面に当接させ、かつ、第二の芯金の先端係合部と第一の芯金との突き合わせ部分の外周面を管の内側屈曲部の内面に当接させながら管を屈曲させるようにしているので、曲げ加工の対象となる管の外側屈曲部の内面と内側屈曲部の内面の形状を同時に規制しながら管を屈曲させることができ、管の外側屈曲部に生じる潰れやヒケと内側屈曲部に生じる皺を同時に防止することができる。
【0101】
本発明による曲げ加工用芯金は、第一の芯金本体の先端面から軸方向に突出して設けた形状規制部と第二の芯金の先端係合部とを重合させて突き合わせるようにして管内にセットすることができるので、管の屈曲開始から屈曲終了までの全ての工程で管の内側屈曲部の内面形状を第一の芯金本体の先端外周面と第二の芯金における先端係合部の外周面で的確に規制することができ、内側屈曲部に生じる皺を的確に防止することができる。
このため、管の内面形状を規制するための湾曲マンドレルを配置するための大型の金型は不要であり、ワイパー型,プレッシャー型,ロール型,クランプ型からなる通常の曲げ加工装置で管の曲げ加工を実現することができ、しかも、湾曲マンドレルでは不可能な曲げ半径の小さな曲げ加工や全長の長い管に対する曲げ加工にも管を座屈させることなく対処することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施形態の曲げ加工装置と曲げ加工用芯金を使用状態にて示した平断面図である。
【図2】同実施形態の曲げ加工装置の一部を構成するロール型の溝と形状規制部の形状の概略を示した図で、図2(a)は平面図、また、図2(b)は右側面図を反時計方向に90度回転させた図である。
【図3】同実施形態の曲げ加工装置のプレッシャー型に装着される押圧片を示した図で、図3(a)は左側面図を時計方向に90度回転させた図、また、図3(b)は平面図である。
【図4】他の実施形態の押圧片を装着した曲げ加工装置を使用状態にて示した平断面図である。
【図5】同実施形態の曲げ加工装置のプレッシャー型に装着される押圧片を示した図で、図5(a)は正面図、また、図5(b)は左側面図を180度回転させた図である。
【図6】曲げ加工用芯金の一部を構成する第一の芯金の構造を示した図で、図6(a)は部分断面平面図、また、図6(b)は右側面図を反時計方向に90度回転させた図である。
【図7】曲げ加工用芯金の一部を構成する第二の芯金の構造を示した図で、図7(a)は左側面図を時計方向に90度回転させた図、また、図7(b)は平面図である。
【図8】曲げ加工が終了した時点における曲げ加工装置と曲げ加工用芯金の状況を示した平断面図である。
【図9】板状体からなる押圧片を利用した場合の塑性流動の発生特性について一例を示した線図である。
【図10】外側に凸となる曲面を備えた押圧片を利用した場合の塑性流動の発生特性について一例を示した線図である。
【図11】外側に凸となる曲面を備えた押圧片を利用して管の端面を押圧した場合に生じる管の形状変化の一例を示した断面図である。
【図12】板状体によって形成された押圧片を利用した場合に得られる屈曲管の一例を示した断面図である。
【図13】外側に凸となる曲面を備えた押圧片を利用した場合に得られる屈曲管の一例を示した断面図である。
【図14】押し込み量xを説明した概念図である。
【図15】板状体からなる押圧片の幅yを説明した概念図である。
【図16】外側に凸となる曲面を備えた押圧片の幅yを説明した概念図である。
【図17】曲げ半径を一定として管部の押し込み量xと押圧片の幅yを変化させて行なった曲げ加工の実験結果を示した図表である。
【図18】管の外径を一定として内側屈曲部の曲げ半径Rを変化させて従来型の曲げ加工用芯金と本実施形態の曲げ加工用芯金とを利用して90度の曲げ加工を行なった際の実験結果を示した図表である。
【符号の説明】
1 曲げ加工装置
2 曲げ加工用芯金
3 ワイパー型
3a 溝
4 プレッシャー型
4a 溝
4b プレッシャー型の移動方向後方側の端面
5 ロール型
5a 溝
5b 形状規制部
6 クランプ型
6a 溝
7 管
7a 第一の芯金を挿入した側の管部
7b 第二の芯金を挿入した側の管部
8 押圧片
8a 切欠部
9 ボルト通し穴
10 ボルト
11 押圧片
11a 切欠部
12 ネジ穴
13 孔
14 ボルト
15 第一の芯金
16 第二の芯金
17 第一の芯金本体
17a 第一の芯金本体の先端面
18 形状規制部
18a 内面形状を規制する側の面(形状規制面)
18b 内面形状を規制する側の面と反対する面(被重合面)
19 ピン
20 先端係合部
21 第二の芯金本体
21a 第二の芯金本体の先端面
A 屈曲形成位置
A1 外側屈曲部の形成位置
A2 内側屈曲部の形成位置
Claims (9)
- 外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とを各々の先端部を突き合わせるようにして管に挿入し、
前記第一,第二の芯金の係合位置で管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る管の曲げ加工方法であって、
前記管に対し、前記第一の芯金の基部から其の先端に向かう方向の塑性流動を生成しながら管を屈曲させることを特徴とした管の曲げ加工方法。 - 軸方向の圧縮力を加えることにより管の屈曲形成位置に塑性流動を生成しながら管を屈曲させる管の曲げ加工方法であって、
目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分に圧縮力を加えて塑性流動を生成することを特徴とした管の曲げ加工方法。 - 前記圧縮力を受けて変形する側の管の端面部分において、変形による移動量が最も多い部位と変形による移動量が最も少ない部位との間の軸方向の変位が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として、30%から90%の範囲内となるように前記圧縮力を加えることを特徴とした請求項2記載の管の曲げ加工方法。
- 管の外面形状に倣った溝を有するワイパー型と、
前記管の外面形状に倣った溝を有して前記ワイパー型に対向して配備され、前記ワイパー型と共同して前記管を保持し、其の溝により前記管を径方向外側から押圧しつつ前記管の軸方向に沿って前記管の屈曲形成位置に向けて移動するプレッシャー型と、
前記管の外面形状に倣った溝を有し、この溝の端部に前記管の内側屈曲部の外面形状を規制する形状規制部を備えて、前記管の屈曲形成位置を挟むようにして前記ワイパー型に隣接配備され、前記プレッシャー型の移動に同期して、前記形状規制部を中心として回転するロール型と、
前記管の外面形状に倣った溝を有して前記ロール型に対向して配備され、前記ロール型と共同して前記管を保持し、前記ロール型の形状規制部を中心として前記ロール型と一体に前記プレッシャー型と離間する方向に回転して前記管を屈曲するクランプ型とを備えた曲げ加工装置であって、
前記プレッシャー型の移動方向後方側の端部に、目的とする曲げ加工形状の外側屈曲部の形成位置に対応する管の端面部分と当接する押圧片が装着されていることを特徴とした曲げ加工装置。 - 前記押圧片は、其の先端部に前記プレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を形成した板状体によって形成され、この切欠部を前記管に対向させた状態で前記プレッシャー型の溝よりも僅かに外側に突出するようにして、前記プレッシャー型の移動方向後方側の端面に外装して装着されていることを特徴とした請求項4記載の曲げ加工装置。
- 前記押圧片は、其の先端面に前記プレッシャー型の溝の断面形状と相似形状の切欠部を有し、少なくとも、其の先端外周部の一部に、外側に凸となる曲面を備え、前記切欠部を前記管に対向させた状態で前記プレッシャー型の溝よりも僅かに外側に突出させ、かつ、前記曲面を前記プレッシャー型の移動方向前方に向けて、前記プレッシャー型の移動方向後方側の前記溝内に埋め込まれて装着されていることを特徴とした請求項4記載の曲げ加工装置。
- 前記プレッシャー型の溝の方向に沿って投影される前記押圧片の先端部の幅が、曲げ加工の対象となる管の外径寸法を基準として50%から100%の範囲内に形成されていることを特徴とした請求項4,請求項5または請求項6の何れか一項に記載の曲げ加工装置。
- 外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とを各々の先端部を突き合わせるようにして管に挿入し、
前記第一,第二の芯金の係合位置で管を屈曲させて目的とする曲げ加工形状を得る管の曲げ加工方法であって、
前記第一の芯金の形状規制部を前記管の外側屈曲部の内面に当接させ、かつ、前記第二の芯金の先端係合部と前記第一の芯金との突き合わせ部分の外周面を前記管の内側屈曲部の内面に当接させながら管を屈曲させることを特徴とした管の曲げ加工方法。 - 管の曲げ加工に用いられる曲げ加工用芯金であって、
管の外側屈曲部の内面形状を規制する形状規制部を先端に備えた第一の芯金と、前記第一の芯金の先端に係合する先端係合部を備えた第二の芯金とからなり、前記形状規制部は、曲げ加工の対象となる管の内径に匹敵する外径を有する第一の芯金本体の先端面から軸方向に突出して設けられ、前記外側屈曲部の内面形状を規制する側の面と反対する面が、前記第一の芯金本体の外径よりも径方向内側に位置するように構成され、
前記先端係合部は、前記第一の芯金の先端部と前記第二の芯金の先端部とを突き合わせるようにして同軸上に配置した状態で、前記外側屈曲部の内面形状を規制する側の面と反対する面に対し、径方向外側から重合するようにして、曲げ加工の対象となる管の内径に匹敵する外径を有する第二の芯金本体の先端面から該第二の芯金本体の外周面の一部に沿って軸方向に突出して形成されていることを特徴とした曲げ加工用芯金。
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JP2003123610A JP2004322186A (ja) | 2003-04-28 | 2003-04-28 | 管の曲げ加工方法および曲げ加工装置と曲げ加工用芯金 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN101961733A (zh) * | 2010-09-16 | 2011-02-02 | 浙江天兴管业有限公司 | 一种金属弯头冷挤压成型方法 |
CN106424244A (zh) * | 2016-08-31 | 2017-02-22 | 合肥华升泵阀股份有限公司 | 一种弯头的弯曲装置 |
JP2017047433A (ja) * | 2015-08-31 | 2017-03-09 | 株式会社デンソーエアシステムズ | 加工ユニットおよび加工装置 |
JP2017070993A (ja) * | 2015-10-09 | 2017-04-13 | トヨタ自動車株式会社 | パイプ引き曲げ加工装置 |
CN111389980A (zh) * | 2020-03-20 | 2020-07-10 | 苏州工业园区良裕科技有限公司 | 一种弯管机强力后助推弯管控制方法及系统 |
-
2003
- 2003-04-28 JP JP2003123610A patent/JP2004322186A/ja not_active Withdrawn
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