JP2004319153A - 固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の電池性能を低下させることなく、電池の組み立て性を向上することができる固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】この燃料電池は、固体高分子の電解質膜11と、この両面に接合された触媒層12と、この触媒層の外側に接合された拡散層13とからなり、触媒層12は電解質膜11よりも小さく形成されていて電解質膜11の中央に接合されており、この触媒層12の周縁を囲むように枠状の保護フィルム13が設けられており、更に、枠状の保護フィルム13と拡散層15とが、接着剤層17を介して接合されている。
【選択図】 図1
【解決手段】この燃料電池は、固体高分子の電解質膜11と、この両面に接合された触媒層12と、この触媒層の外側に接合された拡散層13とからなり、触媒層12は電解質膜11よりも小さく形成されていて電解質膜11の中央に接合されており、この触媒層12の周縁を囲むように枠状の保護フィルム13が設けられており、更に、枠状の保護フィルム13と拡散層15とが、接着剤層17を介して接合されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質に高分子膜を用いる固体高分子電解質型燃料電池に関し、更に詳しくは、膜−電極接合体(MEA)を用いた固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、電解質に高分子膜を用いる燃料電池であり、出力密度が高く、電池寿命が長い等の特徴を有している。
【0003】
図4は、従来の固体高分子電解質型燃料電池のセルの概略構造の一例を示す断面図である。
【0004】
このセル50は、中央に配置される固体高分子電解質膜51の両面に、電極となる触媒層52が形成されており、更に、それぞれの触媒層52の周囲には、枠状の保護フィルム53が形成されて、膜−電極接合体(MEA)54を構成している。なお、上記の触媒層52の周囲に枠状の保護フィルム53を形成するMEAの構造は、特許第3052536号公報や、特開2002−231274号公報に開示されている。
【0005】
触媒層52及び保護フィルム53上には、集電及びガスを拡散するための拡散層55が接合されており、更に外側には、ガス流通溝56aが設けられたセパレータ56で両面を挟持してセル50が構成されている。そして、一般的には、このセル50を複数枚積層して燃料電池スタックとして発電を行なう。
【0006】
上記のような燃料電池の単セル又はスタックを製造する際には、電極にガスが供給されない部分が生じたり、ガスシールが不充分で外部にリークが生じるのを防止するため、触媒層(電極)、拡散層、ガス流通溝等の位置が正確に組み合わされなければならない。したがって、固体高分子電解質膜51に触媒層52を接合したMEA54に、あらかじめ拡散層55を接合して一体化することで、セル組み立て時の拡散層55の位置ずれを防ぐことが行われている。
【0007】
ここで、MEA54と拡散層55とを一体化する方法としては、図5に示すように、プレス板57を用いて、拡散層55を触媒層52に熱プレスして接合する方法が一般的である。熱プレス条件としては、例えば140℃、5MPa、5分等の条件で行われる。これにより、触媒層52に混合されているパーフルオロスルホン酸ポリマー等の固体高分子電解質ポリマーがガラス転移点以上になることで軟化し、触媒層52と拡散層55とを接合するバインダーとなって両者が接合されるものと考えられている。
【0008】
一方、拡散層55としては、一般的に、カーボン繊維により構成されるカーボンペーパーやカーボンクロスが使用される。この表面にはカーボン繊維の凹凸があり、また、カーボン繊維が突き出している場合もある。このため、拡散層55をMEA54に熱プレスした場合、このカーボン繊維がMEA54に損傷を与え、これによって熱圧着時にMEA54を変形させたり、固体高分子電解質膜51に孔が開いて損傷する場合がある。特に、固体高分子電解質膜51に孔が開いた場合には、電池運転時に反応ガスが反対側の電極にクロスリークする原因となり、電池特性を低下させるという問題を生じる。
【0009】
上記のMEA54や固体高分子電解質膜51の損傷を防止する方法として、例えば、特開2002−343377号公報には、高分子電解質膜の両側に、触媒層とガス拡散層からなる一対の電極が配置され、前記触媒層とガス拡散層が、それらの接合界面に部分的に形成された高分子電解質からなる接着剤層により接着されている燃料電池用電解質膜−電極接合体が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特許第3052536号公報
【特許文献2】
特開2002−231274号公報
【特許文献3】
特開2002−343377号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特開2002−343377号公報の燃料電池用電解質膜−電極接合体においては、部分的な接着剤層を介して触媒層とガス拡散層とを接合することにより、高分子電解質膜の損傷を抑えることができる。
【0012】
しかしながら、接着剤層が、触媒層とガス拡散層との接合界面に形成されており、触媒層上に接着剤層が存在するため、以下の問題を新たに生じる。
【0013】
まず、接着剤層としてパーフルオロスルホン酸ポリマー等を用いた場合、接着剤層自身には導電性がない。このため、触媒層と拡散層との界面に接着剤を設けると、界面の電気抵抗が増大し、電池特性の低下の原因となる。
【0014】
また、接着剤層自身のガス透過性が小さいため、接着部分においては拡散層から触媒層へのガス供給が妨げられ、接着部分の電極反応が起きず、やはり電池特性の低下の原因となる。
【0015】
更に、接着剤に含まれる溶媒が、触媒層を介して電解質膜まで浸透し、電解質膜にシワや変形が生じやすくなり、セル周囲におけるガスシール性が低下しやすくなる。
【0016】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたもので、特に燃料電池の電池性能を低下させることなく、電池の組み立て性を向上することができる固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の両面に接合された触媒層と、この触媒層の外側に接合された拡散層とを備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記触媒層は、前記固体高分子電解質膜よりも小さく形成されていて、前記固体高分子電解質膜の中央に接合されており、この触媒層の周縁を囲むように前記固体高分子電解質膜に接合された枠状の保護フィルムが設けられ、この枠状の保護フィルムと前記拡散層とが接着剤層を介して接合されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池によれば、触媒層と拡散層とを直接熱圧着することなく、MEAと拡散層とを一体化できるので、拡散層によるMEAの損傷を防止できる。
【0019】
加えて、接着剤層を保護フィルムと拡散層との界面に設け、触媒層には接着剤層を形成していないので、触媒層と拡散層との界面における電気抵抗の増大、ガス透過性の低下、電解質膜へのシワや変形の発生がなく、電池特性を低下させることがない。
【0020】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池においては、前記固体高分子電解質膜の両面に接合された前記枠状の保護フィルムが、前記固体高分子電解質膜の外周で接合して一体化されていることが好ましい。これによれば、固体高分子電解質膜の外周を囲んで挟持するように枠状の保護フィルムを配置できるので、固体高分子電解質膜の大きさを必要最小限とすることができ、高価な固体高分子電解質膜のコストを削減することができる。
【0021】
また、本発明の固体高分子電解質型燃料電池においては、前記接着剤層が、前記固体高分子電解質膜を構成するポリマーで構成されていることが好ましい。これによれば、接着剤として電解質膜を構成するポリマーを使用することで、接着剤が反応ガス中などに溶出することによる、触媒層又は固体高分子電解質膜の被毒を防ぎ、安定した電池特性を得ることができる。
【0022】
更に、本発明の固体高分子電解質型燃料電池においては、前記固体高分子電解質膜及び前記接着剤層が、パーフルオロスルホン酸ポリマーで構成されていることが好ましい。これによれば、パーフルオロスルホン酸ポリマーは、固体高分子電解質膜を構成するポリマーとして用いた場合には、化学的に安定であり、機械的強度が強く、プロトン伝導性が高いという利点があり、接着剤層として用いた場合には、化学的に安定であり、水やエタノール等の溶媒を選択でき、触媒を被毒することがないという利点があるので、固体高分子電解質膜を構成するポリマー及び前記接着剤層として好適に用いられる。
【0023】
一方、本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、固体高分子電解質膜の両面に触媒層を積層する膜−電極接合体形成工程と、前記触媒層上に拡散層を積層する拡散層積層工程とを含む固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、前記膜−電極接合体形成工程では、前記触媒層を前記固体高分子電解質膜よりも小さく形成して、前記固体高分子電解質膜の両面中央に接合すると共に、この触媒層の周縁を囲むように枠状の保護フィルムを前記固体高分子電解質膜の両面に接合し、前記拡散層積層工程では、前記枠状の保護フィルムと前記拡散層とを接着剤層を介して接合することを特徴とする。
【0024】
これによれば、接着剤層の部分のみを熱圧着すればよいので、触媒層と拡散層を熱圧着しないでMEAと拡散層を一体化でき、拡散層によるMEAの損傷を防止できる。また、MEAと拡散層とが一体化できるので、セル組み立て時にMEA、拡散層、セパレータの位置合わせが容易にでき、組み立て性を向上することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。図1、2には、本発明の固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法の一実施形態が示されている。
【0026】
図1は本発明の固体高分子電解質型燃料電池の概略構成を示す断面図であり、図2は、図1の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法を示す工程図であって、(1)膜−電極接合体形成後の平面図(1A)及び断面図(1B)、(2)接着剤層形成後の平面図(2A)及び断面図(2B)、(3)拡散層積層工程における断面図(3B)、(4)拡散層積層工程終了後の平面図(4A)及び断面図(4B)である。
【0027】
図1に示すように、このセル10は、固体高分子からなる電解質膜11、電極となる触媒層12、触媒層12を囲うように形成されている枠状の保護フィルム13より構成される膜−電極接合体(MEA)14と、それぞれの触媒層12の外側に接合された拡散層15と、拡散層15の両側から挟持されるセパレータ16とから主に構成されている。以下、このセル10の製造工程に沿って図2を用いて順に説明する。
【0028】
まず、図2(1)に示すように、電解質膜11の両面に、触媒層12及び該触媒層を囲う枠状の保護フィルム13を積層して膜−電極接合体(MEA)を形成する、膜−電極接合体形成工程を行なう。
【0029】
ここで、触媒層12は、電解質膜11よりも小さく形成され、電解質膜11の中央に形成される。また、触媒層12の周縁を囲むように、枠状の保護フィルム13が形成される。
【0030】
電解質膜11の形状、大きさは特に限定されないが、70〜350mm角が好ましい。また、触媒層12としては50〜300mm角として、周縁に配置される枠状の保護フィルム13が20〜60mmの幅となるように形成することが好ましい。
【0031】
電解質膜11の材質としては、分子中にプロトン交換基を有し、プロトン導電性電解質として機能する固体高分子であればよく、従来公知のイオン交換膜等が利用可能である。
【0032】
具体的には、スルホン酸基を持つポリスチレン系の陽イオン交換膜をカチオン導電性膜として使用したもの、フロロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフロライドの混合膜、パーフルオロスルホン酸ポリマー等が使用できる。なかでも、パーフルオロスルホン酸ポリマーを用いることが好ましい。パーフルオロスルホン酸ポリマーとしては、例えばナフィオン(登録商標:デュポン社製)等を好適に用いることができる。
【0033】
触媒層12としては、白金族等の金属触媒を担持したカーボン粉末等を用いることができ、この触媒を、例えばパーフルオロスルホン酸ポリマーを溶解した溶液と混合することによりペースト状にして、電解質膜11上に塗布形成することができる。また、ポリマーと混合してあらかじめシート化した後に、熱プレス等によって電解質膜11と一体化してもよい。
【0034】
保護フィルム13としては、従来公知のシート状のプラスチック、ゴム、エラストマー等を用いることができる。具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも、上記の電解質膜11がパーフルオロスルホン酸ポリマーの場合には、これと融点が近い上記のフッ素系ポリマーを用いることが好ましい。これによって、保護フィルム13と電解質膜11とを熱融着によって接合することができる。
【0035】
なお、保護フィルム13は、熱プレス等によって電解質膜11上に熱融着で接合してもよく、接着剤等によって接合してもよい。
【0036】
次に、図2(2)に示すように、MEA14の保護フィルム13上に接着剤を塗布して乾燥し、接着剤層17を形成する。
【0037】
接着剤層17としては特に限定されないが、電解質膜11を構成するポリマーを主成分としたものであることが望ましい。これによって、接着剤成分が反応ガス中などに溶出して、触媒層12又は電解質膜11を被毒することを防ぐことができる。具体的には、上記のパーフルオロスルホン酸ポリマーを用いることが好ましい。
【0038】
接着剤層17は、上記のパーフルオロスルホン酸ポリマー等の接着剤成分を、エタノールや水等の溶媒に溶かして溶液状とし、これを保護フィルム13上に枠状に塗布後、乾燥させることにより形成できる。
【0039】
なお、本発明における接着剤層17は、図2(2A)に示すように連続して枠状に形成されていてもよく、スポット状に形成されていてもよい。
【0040】
次いで、図2(3)に示すように、接着剤層17を介して、保護フィルム13と拡散層15とを熱プレスによって接合する拡散層積層工程を行ない、図2(4)に示すようにMEA14と拡散層15とを一体化して、MEA−拡散層接合体を得る。
【0041】
拡散層15としては、カーボン繊維(炭素繊維)よりなる、シート状のカーボンペーパーやカーボンクロスを用いることができる。また、拡散層15は、触媒層12の外周より大きく、保護フィルム13の外周より小さいサイズとすることが好ましく、少なくとも触媒層12及び接着剤層17を覆う大きさであることが好ましい。
【0042】
この拡散層15を、MEA14上の接着層17に重ね合わせて、プレス板18で熱プレスを行なう。なお、この実施形態においては、プレス板18は、触媒層12に相当する部分に中空部18aを有している。これによって、プレス時の熱および圧力を触媒層12に与えることを防ぎ、触媒層12及び電解質膜11の損傷を防止できる。
【0043】
熱プレスの条件としては、接着剤層17を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で行なうことが望ましい。これによって、ポリマーは軟化し、拡散層15の内部に入り込むので、保護フィルム13と拡散層15とを接合できる。具体的には、例えば、接着剤層17としてパーフルオロスルホン酸ポリマーを用いた場合、パーフルオロスルホン酸ポリマーのガラス転移点は110℃程度であるので、加熱温度は130℃以上とすることが好ましい。また、圧力としては2〜6MPaが好ましく、プレス時間は3〜6分間が好ましい。
【0044】
上記の方法によって得られた、MEA−拡散層接合体は、発電時には、図1に示すようにセパレータ16で挟み込み一体化させてセル10を構成する。このとき、0.2〜1.0MPaの圧力を印加するので、触媒層12と拡散層15との間の接触抵抗は充分に小さくなる。
【0045】
以上の方法によって製造されたセル10は、触媒層12と拡散層15とを熱圧着することなく、MEA14と拡散層15とを一体化できるので、拡散層15によるMEA14の損傷を防止できる。また、触媒層12と拡散層15との界面には接着剤層がないので、界面における電気抵抗の増大、ガス透過性の低下、電解質膜へのシワや変形の発生等の悪影響もなく、電池特性を低下させることがない。更に、MEAと拡散層とを一体化してMEA−拡散層接合体としたので、セルの組み立て性を向上して生産性を向上することができる。
【0046】
図3には、本発明の固体高分子電解質型燃料電池の他の実施形態が示されている。なお、以下の実施形態の説明においては、前記実施形態と同一部分には同符合を付して、その説明を省略することにする。
【0047】
図3は、電解質膜11の両面に接合された枠状の保護フィルムが、電解質膜11の外周で接合して一体化されており、保護フィルム13’とされている点が上記の実施形態と異なっている。
【0048】
これによって、電解質膜11の外周を囲んで挟持するように枠状の保護フィルム13’を配置できるので、電解質膜11の大きさを必要最小限とすることができ、高価な固体高分子電解質膜のコストを削減することができる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
【0050】
実施例
図2に示すような製造方法によって、図1に示すような構成のMEA−拡散層接合体を製造した。
【0051】
電解質膜11として、130×130mmのパーフルオロスルホン酸ポリマー(デュポン社製:ナフィオン117、厚さ183μm)を用い、その両面に、枠状の保護フィルム13として、幅30mm、内周が100×100mmの、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルム(厚さ50μm)を重ねて熱プレスにより接合した。
【0052】
次に、触媒層12として、白金担持カーボンとパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(ナフィオン溶液)とを混合したペーストを、上記の電解質膜11上の保護フィルム13の枠内に厚さ50μmで塗布し、図2(1)に示すような、MEA14を形成した。
【0053】
更に、上記PFAフィルム上の、触媒層12側の端部に沿って、ナフィオン溶液を幅2mmで触媒層12を囲むように塗布して溶媒を乾燥させ、図2(2)に示すような、接着剤層17を形成した。
【0054】
次いで、図2(3)に示すように、拡散層15として、カーボンペーパー(東レ株式会社製:TGPH60)を、触媒層12及び接着剤層17を覆うように重ねた後、中空部18aを有するプレス板18で、140℃、4MPa、5分間の条件で熱プレスして、図2(4)に示すようなMEA14と拡散層15とを一体化して、MEA−拡散層接合体を得た。
【0055】
試験例
上記の実施例のMEA−拡散層接合体、及び、図4、5に示すような従来のMEA−拡散層接合体について、一定圧力および一定電圧を印加したときの短絡電流で、電解質膜の損傷度合を評価した。
【0056】
短絡電流の測定方法としては、金メッキした銅板で上記の固体高分子電解質型燃料電池を挟み込み、温度25℃、湿度50%の一定環境下で、銅板間に、印加圧力2MPa、印加電圧1.0Vを印加した時の銅板間を流れる電流値を測定した。この評価方法によれば、拡散層が電解質膜を損傷してアノードとカソード間が電気的に短絡すると、この短絡電流が大きくなる。
【0057】
その結果、実施例のMEA−拡散層接合体における短絡電流は0Aであったのに対し、図4、5に示す従来の製法で作製したMEA−拡散層接合体の短絡電流は、0.3〜1.0Aと高く、本発明のMEA−拡散層接合体においては、電解質膜の損傷が小さいことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、触媒層と拡散層を熱圧着しないでMEAと拡散層を一体化できるので、拡散層によるMEAの損傷を防止できる。また、触媒層と拡散層との界面における電気抵抗の増大、ガス透過性の低下、電解質膜へのシワや変形の発生等の悪影響もなく、電池特性を低下させることがない。更に、MEAと拡散層を一体化できるので、セルの組み立て性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子電解質型燃料電池の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法の一実施形態を示す工程図であって、(1)膜−電極接合体形成後の平面図(1A)及び断面図(1B)、(2)接着剤層形成後の平面図(2A)及び断面図(2B)、(3)拡散層積層工程における断面図(3B)、(4)拡散層形成工程終了後の平面図(4A)及び断面図(4B)である。
【図3】本発明の固体高分子電解質型燃料電池の他の実施形態を示す図であって(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図4】従来の固体高分子電解質型燃料電池の一例を示す断面図である。
【図5】従来の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法の一例を示す断面図である。
10:セル
11、11’:電解質膜
12:触媒層
13、13’:保護フィルム
14:膜−電極接合体(MEA)
15:拡散層
16:セパレータ
17:接着剤層
18:プレス板
18a:中空部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質に高分子膜を用いる固体高分子電解質型燃料電池に関し、更に詳しくは、膜−電極接合体(MEA)を用いた固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、電解質に高分子膜を用いる燃料電池であり、出力密度が高く、電池寿命が長い等の特徴を有している。
【0003】
図4は、従来の固体高分子電解質型燃料電池のセルの概略構造の一例を示す断面図である。
【0004】
このセル50は、中央に配置される固体高分子電解質膜51の両面に、電極となる触媒層52が形成されており、更に、それぞれの触媒層52の周囲には、枠状の保護フィルム53が形成されて、膜−電極接合体(MEA)54を構成している。なお、上記の触媒層52の周囲に枠状の保護フィルム53を形成するMEAの構造は、特許第3052536号公報や、特開2002−231274号公報に開示されている。
【0005】
触媒層52及び保護フィルム53上には、集電及びガスを拡散するための拡散層55が接合されており、更に外側には、ガス流通溝56aが設けられたセパレータ56で両面を挟持してセル50が構成されている。そして、一般的には、このセル50を複数枚積層して燃料電池スタックとして発電を行なう。
【0006】
上記のような燃料電池の単セル又はスタックを製造する際には、電極にガスが供給されない部分が生じたり、ガスシールが不充分で外部にリークが生じるのを防止するため、触媒層(電極)、拡散層、ガス流通溝等の位置が正確に組み合わされなければならない。したがって、固体高分子電解質膜51に触媒層52を接合したMEA54に、あらかじめ拡散層55を接合して一体化することで、セル組み立て時の拡散層55の位置ずれを防ぐことが行われている。
【0007】
ここで、MEA54と拡散層55とを一体化する方法としては、図5に示すように、プレス板57を用いて、拡散層55を触媒層52に熱プレスして接合する方法が一般的である。熱プレス条件としては、例えば140℃、5MPa、5分等の条件で行われる。これにより、触媒層52に混合されているパーフルオロスルホン酸ポリマー等の固体高分子電解質ポリマーがガラス転移点以上になることで軟化し、触媒層52と拡散層55とを接合するバインダーとなって両者が接合されるものと考えられている。
【0008】
一方、拡散層55としては、一般的に、カーボン繊維により構成されるカーボンペーパーやカーボンクロスが使用される。この表面にはカーボン繊維の凹凸があり、また、カーボン繊維が突き出している場合もある。このため、拡散層55をMEA54に熱プレスした場合、このカーボン繊維がMEA54に損傷を与え、これによって熱圧着時にMEA54を変形させたり、固体高分子電解質膜51に孔が開いて損傷する場合がある。特に、固体高分子電解質膜51に孔が開いた場合には、電池運転時に反応ガスが反対側の電極にクロスリークする原因となり、電池特性を低下させるという問題を生じる。
【0009】
上記のMEA54や固体高分子電解質膜51の損傷を防止する方法として、例えば、特開2002−343377号公報には、高分子電解質膜の両側に、触媒層とガス拡散層からなる一対の電極が配置され、前記触媒層とガス拡散層が、それらの接合界面に部分的に形成された高分子電解質からなる接着剤層により接着されている燃料電池用電解質膜−電極接合体が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特許第3052536号公報
【特許文献2】
特開2002−231274号公報
【特許文献3】
特開2002−343377号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特開2002−343377号公報の燃料電池用電解質膜−電極接合体においては、部分的な接着剤層を介して触媒層とガス拡散層とを接合することにより、高分子電解質膜の損傷を抑えることができる。
【0012】
しかしながら、接着剤層が、触媒層とガス拡散層との接合界面に形成されており、触媒層上に接着剤層が存在するため、以下の問題を新たに生じる。
【0013】
まず、接着剤層としてパーフルオロスルホン酸ポリマー等を用いた場合、接着剤層自身には導電性がない。このため、触媒層と拡散層との界面に接着剤を設けると、界面の電気抵抗が増大し、電池特性の低下の原因となる。
【0014】
また、接着剤層自身のガス透過性が小さいため、接着部分においては拡散層から触媒層へのガス供給が妨げられ、接着部分の電極反応が起きず、やはり電池特性の低下の原因となる。
【0015】
更に、接着剤に含まれる溶媒が、触媒層を介して電解質膜まで浸透し、電解質膜にシワや変形が生じやすくなり、セル周囲におけるガスシール性が低下しやすくなる。
【0016】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたもので、特に燃料電池の電池性能を低下させることなく、電池の組み立て性を向上することができる固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の両面に接合された触媒層と、この触媒層の外側に接合された拡散層とを備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記触媒層は、前記固体高分子電解質膜よりも小さく形成されていて、前記固体高分子電解質膜の中央に接合されており、この触媒層の周縁を囲むように前記固体高分子電解質膜に接合された枠状の保護フィルムが設けられ、この枠状の保護フィルムと前記拡散層とが接着剤層を介して接合されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池によれば、触媒層と拡散層とを直接熱圧着することなく、MEAと拡散層とを一体化できるので、拡散層によるMEAの損傷を防止できる。
【0019】
加えて、接着剤層を保護フィルムと拡散層との界面に設け、触媒層には接着剤層を形成していないので、触媒層と拡散層との界面における電気抵抗の増大、ガス透過性の低下、電解質膜へのシワや変形の発生がなく、電池特性を低下させることがない。
【0020】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池においては、前記固体高分子電解質膜の両面に接合された前記枠状の保護フィルムが、前記固体高分子電解質膜の外周で接合して一体化されていることが好ましい。これによれば、固体高分子電解質膜の外周を囲んで挟持するように枠状の保護フィルムを配置できるので、固体高分子電解質膜の大きさを必要最小限とすることができ、高価な固体高分子電解質膜のコストを削減することができる。
【0021】
また、本発明の固体高分子電解質型燃料電池においては、前記接着剤層が、前記固体高分子電解質膜を構成するポリマーで構成されていることが好ましい。これによれば、接着剤として電解質膜を構成するポリマーを使用することで、接着剤が反応ガス中などに溶出することによる、触媒層又は固体高分子電解質膜の被毒を防ぎ、安定した電池特性を得ることができる。
【0022】
更に、本発明の固体高分子電解質型燃料電池においては、前記固体高分子電解質膜及び前記接着剤層が、パーフルオロスルホン酸ポリマーで構成されていることが好ましい。これによれば、パーフルオロスルホン酸ポリマーは、固体高分子電解質膜を構成するポリマーとして用いた場合には、化学的に安定であり、機械的強度が強く、プロトン伝導性が高いという利点があり、接着剤層として用いた場合には、化学的に安定であり、水やエタノール等の溶媒を選択でき、触媒を被毒することがないという利点があるので、固体高分子電解質膜を構成するポリマー及び前記接着剤層として好適に用いられる。
【0023】
一方、本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、固体高分子電解質膜の両面に触媒層を積層する膜−電極接合体形成工程と、前記触媒層上に拡散層を積層する拡散層積層工程とを含む固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、前記膜−電極接合体形成工程では、前記触媒層を前記固体高分子電解質膜よりも小さく形成して、前記固体高分子電解質膜の両面中央に接合すると共に、この触媒層の周縁を囲むように枠状の保護フィルムを前記固体高分子電解質膜の両面に接合し、前記拡散層積層工程では、前記枠状の保護フィルムと前記拡散層とを接着剤層を介して接合することを特徴とする。
【0024】
これによれば、接着剤層の部分のみを熱圧着すればよいので、触媒層と拡散層を熱圧着しないでMEAと拡散層を一体化でき、拡散層によるMEAの損傷を防止できる。また、MEAと拡散層とが一体化できるので、セル組み立て時にMEA、拡散層、セパレータの位置合わせが容易にでき、組み立て性を向上することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。図1、2には、本発明の固体高分子電解質型燃料電池及びその製造方法の一実施形態が示されている。
【0026】
図1は本発明の固体高分子電解質型燃料電池の概略構成を示す断面図であり、図2は、図1の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法を示す工程図であって、(1)膜−電極接合体形成後の平面図(1A)及び断面図(1B)、(2)接着剤層形成後の平面図(2A)及び断面図(2B)、(3)拡散層積層工程における断面図(3B)、(4)拡散層積層工程終了後の平面図(4A)及び断面図(4B)である。
【0027】
図1に示すように、このセル10は、固体高分子からなる電解質膜11、電極となる触媒層12、触媒層12を囲うように形成されている枠状の保護フィルム13より構成される膜−電極接合体(MEA)14と、それぞれの触媒層12の外側に接合された拡散層15と、拡散層15の両側から挟持されるセパレータ16とから主に構成されている。以下、このセル10の製造工程に沿って図2を用いて順に説明する。
【0028】
まず、図2(1)に示すように、電解質膜11の両面に、触媒層12及び該触媒層を囲う枠状の保護フィルム13を積層して膜−電極接合体(MEA)を形成する、膜−電極接合体形成工程を行なう。
【0029】
ここで、触媒層12は、電解質膜11よりも小さく形成され、電解質膜11の中央に形成される。また、触媒層12の周縁を囲むように、枠状の保護フィルム13が形成される。
【0030】
電解質膜11の形状、大きさは特に限定されないが、70〜350mm角が好ましい。また、触媒層12としては50〜300mm角として、周縁に配置される枠状の保護フィルム13が20〜60mmの幅となるように形成することが好ましい。
【0031】
電解質膜11の材質としては、分子中にプロトン交換基を有し、プロトン導電性電解質として機能する固体高分子であればよく、従来公知のイオン交換膜等が利用可能である。
【0032】
具体的には、スルホン酸基を持つポリスチレン系の陽イオン交換膜をカチオン導電性膜として使用したもの、フロロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフロライドの混合膜、パーフルオロスルホン酸ポリマー等が使用できる。なかでも、パーフルオロスルホン酸ポリマーを用いることが好ましい。パーフルオロスルホン酸ポリマーとしては、例えばナフィオン(登録商標:デュポン社製)等を好適に用いることができる。
【0033】
触媒層12としては、白金族等の金属触媒を担持したカーボン粉末等を用いることができ、この触媒を、例えばパーフルオロスルホン酸ポリマーを溶解した溶液と混合することによりペースト状にして、電解質膜11上に塗布形成することができる。また、ポリマーと混合してあらかじめシート化した後に、熱プレス等によって電解質膜11と一体化してもよい。
【0034】
保護フィルム13としては、従来公知のシート状のプラスチック、ゴム、エラストマー等を用いることができる。具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも、上記の電解質膜11がパーフルオロスルホン酸ポリマーの場合には、これと融点が近い上記のフッ素系ポリマーを用いることが好ましい。これによって、保護フィルム13と電解質膜11とを熱融着によって接合することができる。
【0035】
なお、保護フィルム13は、熱プレス等によって電解質膜11上に熱融着で接合してもよく、接着剤等によって接合してもよい。
【0036】
次に、図2(2)に示すように、MEA14の保護フィルム13上に接着剤を塗布して乾燥し、接着剤層17を形成する。
【0037】
接着剤層17としては特に限定されないが、電解質膜11を構成するポリマーを主成分としたものであることが望ましい。これによって、接着剤成分が反応ガス中などに溶出して、触媒層12又は電解質膜11を被毒することを防ぐことができる。具体的には、上記のパーフルオロスルホン酸ポリマーを用いることが好ましい。
【0038】
接着剤層17は、上記のパーフルオロスルホン酸ポリマー等の接着剤成分を、エタノールや水等の溶媒に溶かして溶液状とし、これを保護フィルム13上に枠状に塗布後、乾燥させることにより形成できる。
【0039】
なお、本発明における接着剤層17は、図2(2A)に示すように連続して枠状に形成されていてもよく、スポット状に形成されていてもよい。
【0040】
次いで、図2(3)に示すように、接着剤層17を介して、保護フィルム13と拡散層15とを熱プレスによって接合する拡散層積層工程を行ない、図2(4)に示すようにMEA14と拡散層15とを一体化して、MEA−拡散層接合体を得る。
【0041】
拡散層15としては、カーボン繊維(炭素繊維)よりなる、シート状のカーボンペーパーやカーボンクロスを用いることができる。また、拡散層15は、触媒層12の外周より大きく、保護フィルム13の外周より小さいサイズとすることが好ましく、少なくとも触媒層12及び接着剤層17を覆う大きさであることが好ましい。
【0042】
この拡散層15を、MEA14上の接着層17に重ね合わせて、プレス板18で熱プレスを行なう。なお、この実施形態においては、プレス板18は、触媒層12に相当する部分に中空部18aを有している。これによって、プレス時の熱および圧力を触媒層12に与えることを防ぎ、触媒層12及び電解質膜11の損傷を防止できる。
【0043】
熱プレスの条件としては、接着剤層17を構成するポリマーのガラス転移点以上の温度で行なうことが望ましい。これによって、ポリマーは軟化し、拡散層15の内部に入り込むので、保護フィルム13と拡散層15とを接合できる。具体的には、例えば、接着剤層17としてパーフルオロスルホン酸ポリマーを用いた場合、パーフルオロスルホン酸ポリマーのガラス転移点は110℃程度であるので、加熱温度は130℃以上とすることが好ましい。また、圧力としては2〜6MPaが好ましく、プレス時間は3〜6分間が好ましい。
【0044】
上記の方法によって得られた、MEA−拡散層接合体は、発電時には、図1に示すようにセパレータ16で挟み込み一体化させてセル10を構成する。このとき、0.2〜1.0MPaの圧力を印加するので、触媒層12と拡散層15との間の接触抵抗は充分に小さくなる。
【0045】
以上の方法によって製造されたセル10は、触媒層12と拡散層15とを熱圧着することなく、MEA14と拡散層15とを一体化できるので、拡散層15によるMEA14の損傷を防止できる。また、触媒層12と拡散層15との界面には接着剤層がないので、界面における電気抵抗の増大、ガス透過性の低下、電解質膜へのシワや変形の発生等の悪影響もなく、電池特性を低下させることがない。更に、MEAと拡散層とを一体化してMEA−拡散層接合体としたので、セルの組み立て性を向上して生産性を向上することができる。
【0046】
図3には、本発明の固体高分子電解質型燃料電池の他の実施形態が示されている。なお、以下の実施形態の説明においては、前記実施形態と同一部分には同符合を付して、その説明を省略することにする。
【0047】
図3は、電解質膜11の両面に接合された枠状の保護フィルムが、電解質膜11の外周で接合して一体化されており、保護フィルム13’とされている点が上記の実施形態と異なっている。
【0048】
これによって、電解質膜11の外周を囲んで挟持するように枠状の保護フィルム13’を配置できるので、電解質膜11の大きさを必要最小限とすることができ、高価な固体高分子電解質膜のコストを削減することができる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
【0050】
実施例
図2に示すような製造方法によって、図1に示すような構成のMEA−拡散層接合体を製造した。
【0051】
電解質膜11として、130×130mmのパーフルオロスルホン酸ポリマー(デュポン社製:ナフィオン117、厚さ183μm)を用い、その両面に、枠状の保護フィルム13として、幅30mm、内周が100×100mmの、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルム(厚さ50μm)を重ねて熱プレスにより接合した。
【0052】
次に、触媒層12として、白金担持カーボンとパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(ナフィオン溶液)とを混合したペーストを、上記の電解質膜11上の保護フィルム13の枠内に厚さ50μmで塗布し、図2(1)に示すような、MEA14を形成した。
【0053】
更に、上記PFAフィルム上の、触媒層12側の端部に沿って、ナフィオン溶液を幅2mmで触媒層12を囲むように塗布して溶媒を乾燥させ、図2(2)に示すような、接着剤層17を形成した。
【0054】
次いで、図2(3)に示すように、拡散層15として、カーボンペーパー(東レ株式会社製:TGPH60)を、触媒層12及び接着剤層17を覆うように重ねた後、中空部18aを有するプレス板18で、140℃、4MPa、5分間の条件で熱プレスして、図2(4)に示すようなMEA14と拡散層15とを一体化して、MEA−拡散層接合体を得た。
【0055】
試験例
上記の実施例のMEA−拡散層接合体、及び、図4、5に示すような従来のMEA−拡散層接合体について、一定圧力および一定電圧を印加したときの短絡電流で、電解質膜の損傷度合を評価した。
【0056】
短絡電流の測定方法としては、金メッキした銅板で上記の固体高分子電解質型燃料電池を挟み込み、温度25℃、湿度50%の一定環境下で、銅板間に、印加圧力2MPa、印加電圧1.0Vを印加した時の銅板間を流れる電流値を測定した。この評価方法によれば、拡散層が電解質膜を損傷してアノードとカソード間が電気的に短絡すると、この短絡電流が大きくなる。
【0057】
その結果、実施例のMEA−拡散層接合体における短絡電流は0Aであったのに対し、図4、5に示す従来の製法で作製したMEA−拡散層接合体の短絡電流は、0.3〜1.0Aと高く、本発明のMEA−拡散層接合体においては、電解質膜の損傷が小さいことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、触媒層と拡散層を熱圧着しないでMEAと拡散層を一体化できるので、拡散層によるMEAの損傷を防止できる。また、触媒層と拡散層との界面における電気抵抗の増大、ガス透過性の低下、電解質膜へのシワや変形の発生等の悪影響もなく、電池特性を低下させることがない。更に、MEAと拡散層を一体化できるので、セルの組み立て性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子電解質型燃料電池の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法の一実施形態を示す工程図であって、(1)膜−電極接合体形成後の平面図(1A)及び断面図(1B)、(2)接着剤層形成後の平面図(2A)及び断面図(2B)、(3)拡散層積層工程における断面図(3B)、(4)拡散層形成工程終了後の平面図(4A)及び断面図(4B)である。
【図3】本発明の固体高分子電解質型燃料電池の他の実施形態を示す図であって(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図4】従来の固体高分子電解質型燃料電池の一例を示す断面図である。
【図5】従来の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法の一例を示す断面図である。
10:セル
11、11’:電解質膜
12:触媒層
13、13’:保護フィルム
14:膜−電極接合体(MEA)
15:拡散層
16:セパレータ
17:接着剤層
18:プレス板
18a:中空部
Claims (5)
- 固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜の両面に接合された触媒層と、この触媒層の外側に接合された拡散層とを備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記触媒層は、前記固体高分子電解質膜よりも小さく形成されていて、前記固体高分子電解質膜の中央に接合されており、この触媒層の周縁を囲むように前記固体高分子電解質膜に接合された枠状の保護フィルムが設けられ、この枠状の保護フィルムと前記拡散層とが接着剤層を介して接合されていることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
- 前記固体高分子電解質膜の両面に接合された前記枠状の保護フィルムが、前記固体高分子電解質膜の外周で接合して一体化されている請求項1に記載の固体高分子電解質型燃料電池。
- 前記接着剤層が、前記固体高分子電解質膜を構成するポリマーで構成されている請求項1又は2に記載の固体高分子電解質型燃料電池。
- 前記固体高分子電解質膜及び前記接着剤層が、パーフルオロスルホン酸ポリマーで構成されている請求項3に記載の固体高分子電解質型燃料電池。
- 固体高分子電解質膜の両面に触媒層を積層する膜−電極接合体形成工程と、前記触媒層上に拡散層を積層する拡散層積層工程とを含む固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、前記膜−電極接合体形成工程では、前記触媒層を前記固体高分子電解質膜よりも小さく形成して、前記固体高分子電解質膜の両面中央に接合すると共に、この触媒層の周縁を囲むように枠状の保護フィルムを前記固体高分子電解質膜の両面に接合し、前記拡散層積層工程では、前記枠状の保護フィルムと前記拡散層とを接着剤層を介して接合することを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。
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