JP2004317539A - 防曇性光学体及び光学体への防曇層形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材の酸化物表面にフッ素原子を含む疎水部と、ポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部とを有する処理剤をコーティングして水に対する接触角が50〜90°である下地処理層を設ける。その下地処理層の上に界面活性剤、好ましくはHLB値が5〜15の範囲のノニオン系界面活性剤を塗布して防曇層を形成するようにした。
Description
【発明の属する技術分野】本発明は各種レンズ、ガラス等の光学体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から光学体、例えば眼鏡レンズの曇りを防止するための技術がいくつか提案されてきている。曇り防止の作用の点から大きく分けてレンズ表面に吸水性樹脂を被覆することと、いわゆる濡れ現象を利用する2つのタイプが挙げられる。但し、近年では吸水性樹脂による防曇作用は吸水性樹脂を被覆すると表面硬度が低くなってしまうことと、その厚みから反射防止レンズには使用できないことから後者の濡れ現象を利用した防曇レンズの開発が主流である。濡れ現象とは要はレンズに付着する水分の表面張力による水滴化を防止するもので、レンズ表面に界面活性剤を塗布することが最も一般的である。
このような界面活性剤を塗布してレンズの曇り防止を図った技術として特許文献1に掲げるような技術がある。同文献1では基材表面に酸化チタンを含有する無機親水性硬質層を形成する技術が開示されている。そして、この無機親水性硬質層の表面に塗布された界面活性剤を安定化させるというものである。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−15092号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、光学体で留意しなければならない課題として水ヤケの問題がある。上記文献1のような界面活性剤の安定化を主目的にすると一般的にはレンズ表面を親水化することとなるため水ヤケしやすくなってしまうからである。ここで水ヤケしやすさは界面活性剤層があれば見かけ上軽減されるが、本質的には下地表面の性質によって決まるものであり、特に界面活性剤層が不十分な状態で使用した場合には下地表面の性質がそのまま現れてしまい、レンズ表面に水ヤケが発生してしまうこととなる。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、十分な防曇作用を有するとともに水ヤケしにくい光学体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1の発明では、基材の酸化物表面に水に対する接触角が50〜90°である下地処理層を設け、同下地処理層の上に界面活性剤を主成分とする防曇層を形成するようにしたことを要旨とする。
請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記下地処理層はフッ素原子を含む疎水部と、−(CH2CH2O)n−で示されるポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部とを有する処理剤をコーティングすることによって形成させるようにしたことを要旨とする。
請求項3の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記下地処理層は−(CH2CH2O)n−で示されるポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部とを有する処理剤をコーティングすることによって形成させるようにしたことを要旨とする。
請求項4の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記界面活性剤はHLB値が5〜15の範囲のノニオン系界面活性剤であることを要旨とする。
請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることを要旨とする。
請求項6の発明では、基材の酸化物表面に水の接触角が50〜90°である下地処理層を設け、同下地処理層の上に界面活性剤を主成分とする処理剤を塗布することによって防曇層を形成するようにしたことを要旨とする。
【0006】
ここに光学体としては眼鏡用レンズ、双眼鏡、望遠鏡のレンズ、窓ガラス、CRT等の光学ディスプレイ、光学フィルター等およそ曇り防止処理が必要と考えられる物品を広く含む概念である。
素材としては無機ガラス及びプラスチックに適用可能である。無機ガラスとしてはSiO2を主成分とするものが使用出来る。また、プラスチックとしては例えばアクリル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリエ−テルサルホン樹脂ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト樹脂等が挙げられる。
【0007】
基材の酸化物表面とは素材自体が酸化物を含有している場合及び基材の表面に形成された所定の酸化物被膜の表面のいずれをも意味する。
所定の酸化物被膜とは例えばハードコート膜、反射防止膜等が挙げられる。
ハードコート膜はコート用のハードコート液に浸漬し、その後公知の方法にて溶媒を蒸発させて形成される。
ハードコート膜は、特にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子から構成されることが好ましい。そのためのハードコート液は水又はアルコール系の溶媒にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子ゾルを分散(混合)させて調整される。
オルガノシロキサン系樹脂はアルコキシシランを加水分解し縮合させて得られるものが好ましい。アルコキシシランの具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルシリケートなどが挙げられる。これらアルコキシシランの加水分解縮合物は、前述のアルコキシシラン化合物を単独または2種以上組合せ、塩酸等の酸性水溶液で加水分解することによって製造される。
無機酸化物微粒子の具体的な例としては、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウム等の各ゾルを単独で又は2種以上を混晶化して使用可能である。2種以上を複合化した例としては、例えば、酸化スズと酸化タングステンの複合ゾルが挙げられる。無機酸化物微粒子の大きさはハードコート膜の透明性に関連するので重要である。無機酸化物微粒子径は100nm以下であることが必要であり、特に1〜50nmであることが好ましい。無機酸化物微粒子の配合量はハードコート膜の硬さ、強靭性に大きく影響する。通常はハードコート成分中、40〜60重量パーセントが好ましい。
【0008】
またハードコート液中には必要に応じ、硬化触媒として、アセチルアセトン金属塩、エチレンジアミン四酢酸金属塩などを添加することも可能である。さらに必要に応じ、界面活性剤、着色剤、溶媒などを添加してコーティング剤を調整することも可能である。
ハードコート膜の膜厚は0.5〜4.0μ、特に1.0〜3.0μの範囲が好ましい。このような範囲とした点についてまず膜厚0.5μ以上としたのは、薄過ぎる場合には所望の硬度が得られないためである。一方、膜厚を4.0μ以上にすると硬度は上げ易いが、本レンズのクラックが発生しやすくなり、さらに脆くなりやすいなど物性面への問題が生じるためこのように上限を設定することが好ましい。
【0009】
反射防止膜は公知の蒸着法やイオンスパッタリング法等により形成されている。反射防止層は、光学理論に基づいた多層構造膜が採用される。膜材料としては、SiO、SiO2、Al2O3、Y2O3、Yb2O3、CeO2、ZrO2、Ta2O3、TiO2、など一般的な無機酸化物を使用することができる。
反射防止膜は特性の異なるこれらを材料とした薄膜を周知の手段(例えば蒸着)により定石に従って1層から順に蒸着して形成される。
【0010】
下地処理層は下地処理剤を基材又は基材上に形成された所定の酸化物被膜上に塗布(手塗り、ディッピング法、スピンコート法)、蒸着法又はイオンスパッタリング法によって形成される。塗布される場合には下地処理剤には粘度を調整するために溶剤を加えても良い。溶剤としては酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が好ましい。下地処理層の水に対する接触角は50〜90°の範囲に含まれることが必要である。
下地処理剤としてはフッ素原子を含む疎水部と、−(CH2CH2O)n−で示されるポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部を有するものを使用することが好ましい(nは1以上の整数)。
また、−(CH2CH2O)n−で示されるポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部を有するものを使用することが好ましい(nは1以上の整数)。
ここに、フッ素原子を含む疎水部とは例えば、
【0011】
【化1】
【0012】
が挙げられる。このように水素原子がすべてフッ素原子に置換されたパーフルオロ化合物が疎水性から好ましいが、一部だけフッ素原子に置換されているフルオロ化合物であっても構わない。
また、基材と反応するカップリング部としては例えば、
−Si(OR)n
で示されるアルコキシシラン基、
−SiOH
で示されるシラノール基、
−NCO
で示されるイソシアネート基、
が挙げられる。
これら3種の官能基は基材側との結合の関係で好適である。すなわち、アルコキシシラン基及びシラノール基は基材側のシラノールと反応して共有結合することで(例えば反射防止膜中の最外層膜に由来するSiO2)と反応し、形成される下地層の耐久性が向上すると考えられる。
また、イソシアネート基はシリカ膜上の結合水と反応し、シリカ層(例えば反射防止膜中の最外層膜に由来するSiO2層)とイオン結合することで形成される下地層の耐久性が向上すると考えられる。
これらの官能基は単独であるいは2種以上が選択されてもよい。
【0013】
下地処理剤に含まれる化合物としては具体的には次のようものが例示される。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
これら下地処理剤に含まれる化合物はカップリング部によって基材(酸化物被膜)上に固定されることとなる。また、分子量としては500〜20000の範囲のものが使用可能であり、特に700〜5000の範囲が好ましい。
水に対する接触角の大小は疎水部のフッ素量に左右される(フッ素割合が高い場合には接触角は大きくなる)ため、疎水部と親水部とカップリング部の比率はそのフッ素量を考慮して適宜選択される。下地層の厚味は0.5〜20nm好ましくは1〜10nmである。
下地処理剤は上記いずれかの手段でコーティングされ、常温〜120℃の温度域で30分〜2時間加熱される。特に50〜70℃の温度域で1〜2時間加熱するのが好ましい。
【0019】
下地処理層の上に形成される防曇層を構成する界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系及びカチオン系が挙げられ、特にノニオン系が好ましいがノニオン系を主体とし異種のものを複数混合して使用することも可能である。また、フッ素系と非フッ素系があるが、特にフッ素系は濡れ性の向上が期待できる。ノニオン系については出願人の性能評価試験に基づけばHLB値が5〜15の範囲がもっとも防曇性能が高く、この範囲から外れるほど防曇性能が低下する傾向となる。防曇層の厚味は反射防止膜の反射色に影響がでない程度であることが望ましい。
防曇層は界面活性剤を塗布することで形成される。界面活性剤は所定の水又はアルコール系の溶媒に溶解させた溶液として調整される。
【0020】
【実施例】本発明について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
A[基材]
ビス(β―エピチオプロピル)スルフィド85重量部、チオフェノール15重量部の100重量部に、触媒として2−ジエタノールアミノエタノール0.5重量部を室温で均一溶液とした。次にこの液をレンズ用モールドに注入し、脱気後に引続きオーブン中で10℃から120まで22時間をかけてゆっくりと重合硬化させ、屈折率1.6、アッベ数36の光学特性を有する度数0.00のフラットレンズを形成した。
以下、基材については各実施例及び比較例とも同様である。
B.ハードコート膜の形成(一層目)
反応容器中に、エタノール206g、メタノール分散チタニア系ゾル300g(触媒化成工業(株)製 固形分30パーセント)、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン60g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン30g、テトラエトキシシラン60gを加え、その混合液中に0.01Nの塩酸水溶液を滴下、攪拌して加水分解を行った。次にフロー調整剤0.5g(L−7604:日本ユニカ社(株)製)および触媒1.0gを加え、室温で3時間攪拌してハードコート液を形成した。このハードコート液をディッピング法で塗布し、風乾後、110℃×2h加熱硬化させて、膜厚2.0μのハードコート膜を形成した。
以下、ハードコート膜については各実施例及び比較例とも同様である。
【0021】
C.反射防止膜(多層膜)の形成(二層目)
上記のハードコート膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で反射防止膜の形成を行った。膜の構成は、光学膜厚で下から二酸化珪素層がλ/4、酸化ジルコニウム層0.5λ/4、二酸化珪素層0.2λ/4、酸化ジルコニウム層がλ/4、最上層の二酸化珪素層がλ/4の5層膜とした。ここで、λは500nmに設定した。
以下、反射防止膜については各実施例及び比較例とも同様である。
D.下地処理層の形成
上記反射防止膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で下地処理層の形成を行った。蒸着後1時間同温度で保持し、下地処理層を定着させた。下地処理剤としては、
イ)C9F17−O−(CH2CH2O)4−H・・・72重量パーセント
ロ)OCN−CH2CH2CH2Si−(OC2H5)3・・・28重量パーセント
を触媒下、室温にて60時間かけて反応させたもの(1a)を使用した。水に対する接触角は84.0°とした。
E.防曇層の形成
HLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤(フタ−ジェント222F、(株)ネオス製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0022】
実施例2
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記反射防止膜が形成されたレンズに対して手塗りで下地処理剤を塗布し、基板温度60℃で下地処理層の形成を行った。塗布後1時間同温度で保持し、下地処理層を定着させた。下地処理剤としては、
イ)上記実施例1のイ)において平均の付加モル数を6.4に変更した原料・・・75重量パーセント
ロ)上記実施例1のロ)と同じ原料・・・25重量パーセント
これらイ)及びロ)を触媒下、室温にて60時間かけて反応させたもの(1b)を使用した。水に対する接触角は52.2°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0023】
実施例3
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記反射防止膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で下地処理層の形成を行った。蒸着後1時間同温度で保持し、下地処理層を定着させた。下地処理剤としては
イ)
【0024】
【化6】
【0025】
ロ)上記実施例1のロ)と同じ原料・・・51重量パーセント
これらイ)及びロ)を触媒下、室温にて20時間かけて反応させたもの(2a)を使用した。水に対する接触角は64.6°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0026】
実施例4
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記反射防止膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で下地処理層の形成を行った。蒸着後1時間同温度で保持し、下地処理層を定着させた。下地処理剤としては
イ)上記実施例3のイ)と同じ原料・・・66重量パーセント
ロ)上記実施例3のロ)と同じ原料・・・34重量パーセント
これらイ)及びロ)を触媒下、室温にて20時間かけて反応させたもの(2b)を使用した。水に対する接触角は62.3°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0027】
実施例5
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例3と同様の処理で形成した。水に対する接触角は64.6°とした。
E.防曇層の形成
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートからなるHLB10.0の非フッ素系ノニオン界面活性剤(レオド−ルTW−0106V、花王(株)製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0028】
実施例6
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例3と同様の処理で形成した。水に対する接触角は64.6°とした。
E.防曇層の形成
ポリアルキレングリコール誘導体からなるHLB8.0の非フッ素系ノニオン(プルロニック系)界面活性剤(プロノンB−204、日本油脂(株)製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0029】
実施例7
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例4と同様の処理で形成した。水に対する接触角は62.3°とした。
E.防曇層の形成
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルからなる非フッ素系アニオン界面活性剤(エマ−ルE−27C、花王(株)製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0030】
実施例8
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例4と同様の処理で形成した。水に対する接触角は62.3°とした。
E.防曇層の形成
ソルビタンモノオレエートからなるHLB4.3の非フッ素系ノニオン界面活性剤(エマゾ−ルO−10V、花王(株)製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0031】
実施例9
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例4と同様の処理で形成した。水に対する接触角は62.3°とした。
E.防曇層の形成
ポリオキシエチレンラウリルエーテルからなるHLB18.1の非フッ素系ノニオン界面活性剤(エマルゲン130K、花王(株)製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0032】
実施例10
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例2と同様の処理で形成した。水に対する接触角は53.0°とした。
E.防曇層の形成
実施例5と同じポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートからなるHLB10.0の非フッ素系ノニオン界面活性剤(レオド−ルTW−0106V、花王(株)製)を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0033】
実施例11
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記実施例1の条件において、
イ)上記実施例1のイ)と同じ原料・・・70重量パーセント
ロ)
【0034】
【化7】
【0035】
を触媒下、室温にて60時間かけて反応させたもの(1c)を使用した。水に対する接触角は57.4°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表1及び表2にまとめた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
比較例1
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
比較例1では下地処理層は形成させなかった。反射防止膜表面での水に対する接触角は38.4°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表3及び4にまとめた。
【0039】
比較例2
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記反射防止膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で下地処理層の形成を行った。蒸着後1時間同温度で保持し、下地処理層を定着させた。下地処理剤としては、ポリオキシエチレン基を含まないパ−フルオロアルキル基を持つシラン化合物を使用した。
反射防止膜表面での水に対する接触角は97.8°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表3及び4にまとめた。
【0040】
比較例3
A.〜C.省略
D.下地処理層の形成
上記反射防止膜が形成されたレンズを真空槽内にセットし、真空蒸着法によって、基板温度60℃で下地処理層の形成を行った。蒸着後1時間同温度で保持し、下地処理層を定着させた。下地処理剤としては、
イ)HO−(CH2CH2O)45−H・・・91.7重量パーセント
ロ)上記実施例11のロ)と同じ原料・・・8.3重量パーセント
これらイ)及びロ)を触媒下、室温にて20時間かけて反応させたもの(2c)を使用した。水に対する接触角は31.2°とした。
E.防曇層の形成
実施例1と同じHLB10.7のフッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表3及び4にまとめた。
【0041】
比較例4
A.〜B.省略
C.反射防止膜(多層膜)の形成(二層目)
比較例4では反射防止膜は形成させなかった。
D.下地処理層の形成
比較例4では下地処理層は形成させなかった。
E.防曇層の形成
実施例5と同じポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートからなるHLB10.0の非フッ素系ノニオン界面活性剤を手塗りで塗布した。
[評価結果]
結果を表3及び4にまとめた。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
性能評価方法について
(a)初期防曇性
防曇層を形成した後、呼気による曇り具合を目視した。
判定基準
A: 均一な水膜を形成し曇らない
B: 斑な水膜を形成する
C: 細かな水滴を形成し曇る
(b)耐久防曇性
水中に1分間浸せきした後すぐにエア−ブロ−乾燥し、呼気による曇り具合を目視した。
判定基準は初期防曇性と同じである。
(c)水ヤケ防止性
防曇層を水洗除去し乾燥した表面に水道水の小さな水滴を付着させ、自然乾燥後ティッシュペ−パ−で拭き取ってレンズ表面に残るヤケを目視した。
判定基準
○: 水ヤケはまったくない
△: 水ヤケはほとんどないか、めだたない
×: 水ヤケがめだつ
【0045】
評価結果によれば、実施例では比較的水ヤケを防止しつつ防曇性が得られることが分かる。
Claims (6)
- 基材の酸化物表面に水に対する接触角が50〜90°である下地処理層を設け、同下地処理層の上に界面活性剤を主成分とする防曇層を形成するようにしたことを特徴とする防曇性光学体。
- 前記下地処理層はフッ素原子を含む疎水部と、−(CH2CH2O)n−で示されるポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部とを有する処理剤をコーティングすることによって形成させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の防曇性光学体。
- 前記下地処理層は−(CH2CH2O)n−で示されるポリオキシエチレン基を含む親水部と、基材と反応するカップリング部とを有する処理剤をコーティングすることによって形成させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の防曇性光学体。
- 前記界面活性剤はHLB値が5〜15の範囲のノニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防曇性光学体。
- 前記界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防曇性光学体。
- 基材の酸化物表面に水の接触角が50〜90°である下地処理層を設け、同下地処理層の上に界面活性剤を主成分とする処理剤を塗布することによって防曇層を形成するようにしたことを特徴とする光学体への防曇層形成方法。
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