JP3570134B2 - 防汚膜の形成方法及び表示素子用フィルター - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CRT(陰極線管)のパネル面等の基材に耐汚染性、耐擦傷性、耐加工性等に優れた防汚膜を形成することができる防汚膜の形成方法、及び該防汚膜が形成された表示素子用フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
透明材料を通して物を見る場合、反射光が強く、反射像が明瞭であることは煩わしく、例えば眼鏡用レンズではゴースト、フレアなどと呼ばれる反射像を生じて目に不快感を与えたりする。またルッキングガラスなどではガラス面上の反射した光のために内容物が判然としない問題が生ずる。
【0003】
従来より反射防止のために屈折率が基材と異なる物質を、真空蒸着法などにより基材上に被覆形成させる方法が行なわれている。この場合、反射防止効果を最も高いものとするためには基材を被覆する物質の厚みの選択が重要であることが知られている。
【0004】
例えば、単層被膜においては、基材より低屈折率の物質を光学的膜厚を対象とする光波長の1/4ないしその奇数倍に選択することが極小の反射率すなわち極大の透過率を与えることが知られている。
【0005】
ここで、光学的膜厚とは、被膜形成材料の屈折率と該被膜の膜厚の積で与えられるものである。さらに複層の反射防止層の形成が可能であり、この場合の膜厚の選択に関していくつかの提案がなされている(光学技術コンタクト Vol.9No.8 p.17 (1971) )。
【0006】
一方、特開昭58−46301号公報、特開昭59−49501号公報、特開昭59−50401号公報には、前記の光学的膜厚の条件を満足させる複層からなる反射防止膜を液状組成物を用いて形成させる方法について記載されている。
【0007】
近年になって軽量安全性、取り扱い易さなどの長所を生かして、プラスチックフィルムを基材とした反射防止性を有する光学物品が考案され、反射防止フィルターとしてCRTのパネル面等に貼着する方法で実用化されている。そして、その多くは表層膜に二酸化珪素で代表される無機酸化物膜あるいは無機ハロゲン化物膜の構成が採用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成された反射防止膜は、被膜形成材料が主として無機酸化物あるいは無機ハロゲン化物であり、反射防止膜は本質的には高い表面硬度を有する反面、指紋、汗、あるいはヘアーリキッド、ヘアースプレーなどの化粧料等による汚れが目立ちやすく、またこれらの付着した汚れが除去しにくいという欠点があった。さらには表面のすべりが悪いために何らかの硬質の物と接触した際にできる傷が太くなるなどの問題を有している。また、水に対する濡れ性が大きいために雨滴、水の飛沫が付着すると大きく拡がり、眼鏡レンズなどにおいては大面積にわたって物体がゆがんで見えるなどの問題点があった。
【0009】
前記特開昭58−46301号公報、特開昭59−49501号公報、特開昭59−50401号公報に記載の反射防止膜においても、硬い表面硬度を付与するためには、最表面膜中にシリカ微粒子などに代表される無機物を30重量%以上含ませることが必要であるが、このような膜組成から得られる反射防止膜は、表面のすべりが悪く、布などの磨耗によって傷が付き易いなどの問題点を有している。
【0010】
これらの問題点を改良する目的で各種の表面処理剤が提案され、市販されているが、いずれも水や各種の溶剤によって溶解するものであって、一時的に機能を付与するものであり、永続性がなく耐久性に乏しいものであった。また特開平3−266801号公報には、撥水性を付与するために、フッ素系樹脂層を形成させる報告がある。しかしながら、これらのフッ素系樹脂では確かに撥水性は増すが、摩擦あるいは磨耗に対して満足する結果が得られないものであった。
【0011】
これに対して、本発明者らは、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を用いて形成した防汚膜は、優れた撥水性を有すると共に、耐摩耗性にも優れ、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性等に優れていることを見い出した。
【0012】
しかしながら、この組成物は、被覆膜を形成後、その撥水性や耐摩耗性を最大限に発揮するまで数時間、場合によっては数日という長時間を要し、その間では汚れや傷が入りやすく、また、他の物品と接触すると、防汚膜の一部が転写し、防汚膜が剥離してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性等に優れた防汚膜を短時間に形成することができる防汚膜の形成方法、及びその防汚膜が形成され、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性等に優れた表面を有する表示素子用フィルターを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、以下に述べる本発明に到達した。即ち本発明の防汚膜の形成方法は、下記の構成からなる。
【0015】
下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を基材に成膜する工程と、
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }j …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、jは1又は2である。)
上記組成物を成膜後、成膜面に水分を供給して上記アルコキシシラン化合物と基材との反応を促進させる反応促進工程とを有することを特徴とする防汚膜の形成方法。
【0016】
また、本発明の表示素子用フィルターは、下記の構成からなる。
【0017】
下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を基材に成膜し、
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }j …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、jは1又は2である。)
上記組成物を成膜後、成膜面に水分を供給して上記アルコキシシラン化合物と基材との反応を促進させることにより形成された防汚膜が表面に形成されてなることを特徴とする表示素子用フィルター。
【0018】
上記式(1)で示される化合物は、フッ素化合物を分子中に含むことにより、撥水性を有し、耐水、耐汚染性が向上している。また、フッ素化合物がトライボロジー特性に優れたパーフルオロポリエーテル基であるから、パーフルオロアルキル基よりも耐摩耗性や摩擦特性が良好である。しかも、例えばSiO2 表面との相互作用を行うアルコキシシラノ基を分子中に含むので、例えば加熱することにより、基材と強固な結合を形成し、それ故に従来不満足であった耐溶剤性などの問題を克服できる。
【0019】
従って、上記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物は、基材表面に耐摩耗性、耐汚染性、耐溶剤性等の特性を有する防汚膜を形成することができる。
【0020】
この場合、基材との反応を促進する触媒として酸又は塩基、リン酸エステル、及びβ−ジケトンから選ばれる1種又は2種以上を防汚膜形成用組成物に添加することにより、加熱温度を低くしても基材との強い結合を形成できる。そのため、製造プロセス的に有利になると共に、基材の選定範囲が広がり、本発明の防汚膜形成用組成物の適用範囲を広げることができる。
【0021】
このような防汚膜形成用組成物は、基材、特に酸化珪素を主成分とする無機膜と上記(1)で示される化合物のアルコキシ基が反応して強固な結合を形成するものであり、それ故、耐摩耗性、耐溶剤性等に優れるが、その反面基材との結合に時間がかかる問題があった。本発明者らは、基材とアルコキシ基との反応が水を利用した脱アルコール反応であるので、空気中の水分を利用するのではなく、防汚膜形成用組成物を塗布した後、塗布面に積極的に水分を供給することにより、シランカップリング剤の硬化反応を顕著に促進させ、これまで実用に耐える皮膜形成に数時間乃至数日を要していたものが、10分程度に短縮されることを見い出した。
【0022】
塗布面に水分を供給する方法としては、例えば塗布面にスチームを吹き付けたり、水分を結露させる方法がある。
【0023】
このような防汚膜形成用組成物を用いて反射防止膜の表面に防汚膜が形成された表示素子用フィルターは、耐溶剤性、耐汚染性、耐加工性、耐擦傷性等に優れた表面を有する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の防汚膜形成用組成物は、上述したように、下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する。
【0026】
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }p …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、pは1又は2である。)
かかるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物の分子量は、特に制限されないが、安定性、取り扱い易さ等の点から数平均分子量で500〜1万、好ましくは500〜2000のものが適当である。
【0027】
上記式(1)中のRf は一価又は二価のパーフルオロポリエーテル基であり、パーフロオロポリエーテル基としては、特に限定されるものではなく、各種鎖長のパーフルオロポリエーテル基が含まれるが、好ましくはC1 〜C3 程度のパーフルオロアルキルオキシ基を繰返し単位とする一価又は二価のパーフルオロポリエーテルである。一価のパーフルオロポリエーテルとしては、具体的には例えば、次に示すようなものがある。
【0028】
【化1】
【0029】
また、二価のパーフルオロポリエーテル基としては、例えば次のようなものがある。
【0030】
【化2】
【0031】
なお上記化学構造式中の、l、m、n、k、p及びqはそれぞれ1以上の整数を示す。ここで、上記化学構造式中のp、qの比率は、p/q=0.2〜2の範囲が好ましい。しかしながら、前記したようにパーフルオロポリエーテルの分子構造はこれら例示したものに限定されるものではない。
【0032】
上記一般式(1)で示される化合物は、基本的にパーフルオロポリエーテル基とアルコキシシラノ基とを有すれば、上記した特性を有する防汚膜を形成することができるため、パーフルオロポリエーテル基以外の分子構造についての制限は本質的にはない。しかし、実際にはある程度の合成のし易さ、つまり実現性の観点からの範囲はある。以下、その観点から、各構造部分を説明する。
【0033】
R1 は、2価の原子又は基を示し、R2 とパーフルオロポリエーテル基との結合基であり、特に制限はないが、合成上、炭素以外のO、NH、S等の原子あるいは原子団が好ましい。
【0034】
R2 は炭化水素基であり、炭素数は2〜10の範囲が好ましい。R2 としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基などを例示することができる。
【0035】
R3 はアルコキシ基を構成するアルキル基であり、通常は炭素数が3以下、つまりイソプロピル基、プロピル基、エチル基、メチル基を例示することができるが、炭素数はこれ以上でもよい。
【0036】
本発明の防汚膜形成用組成物は、通常、上記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を、溶媒に希釈して用いる。この溶媒としては、特に限定されないが、使用に当たっては、組成物の安定性、二酸化珪素膜に対する濡れ性、揮発性などを考慮して決めるべきである。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤やアセトン等のケトン系溶剤、あるいはヘキサン等の炭化水素系溶剤などを例示することができ、これらの単独あるいは2種以上の混合物を溶媒として用いることができる。
【0037】
この場合、防汚膜形成用組成物に、触媒として塩酸等の酸又はアンモニア等の塩基、あるいはリン酸ジラウリルエステル等のリン酸エステルを添加することが好ましい。このような触媒を添加することにより、基材との反応温度(乾燥温度)を低くすることができる。これらの触媒の添加量は、0.001〜1mmol/L程度が好ましい。また、酸又は塩基を添加する場合に、アセチルアセトンのようなβ−ジケトン類を添加するとその反応性が高まることから、防汚膜形成用組成物にβ−ジケトン類を添加することが推奨される。このようなカルボニル化合物の添加量は、0.1〜100mmol/L程度とすることができる。
【0038】
そして、本発明の防汚膜形成用組成物は、基材の表面に塗布し、例えば加熱することによって溶媒を揮発させると共に、基材と結合を生じさせ、基材表面に防汚膜を形成することができる。
【0039】
防汚膜を形成する対象となる基材としては、特に制限されないが、少なくとも表面が無機材料で構成されていることが好ましい。例えば、CRT等のガラスパネル、あるいはプラスチック基材表面に形成された例えば反射防止膜としての無機膜を有する反射防止フィルター等に好適に適用することができる。反射防止フィルターに用いる無機膜としては、透明性、屈折率、耐熱性、反射防止性、反射光色、耐久性、表面硬度等を考慮して選定され、特に限定されるものではないが、主としてSiO2 からなるものであることが望ましい。無機膜が主として、SiO2 からなるものであると、より十分な表面硬度が得られると共に、本発明の目的である耐汚染性、耐擦傷性の向上、さらにはこれらの性能の耐久性が顕著なものとして現れるためである。しかし、本発明は、特に二酸化珪素(SiO2 )に限定されるものではない。
【0040】
なお、本発明に係るパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物の塗布にあたっては、塗布されるべき基材の表面は清浄化されていることが好ましく、清浄化に際しては、界面活性剤による汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、フッ素系ガスによる蒸気洗浄などが適用される。また密着性、耐久性の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手段であり、特に好ましく用いられる方法としては活性化ガス処理、酸、アルカリなどによる薬品処理などが挙げられる。
【0041】
その塗布方法としては、通常のコーティング作業で用いられる各種の方法が適用可能であるが、反射防止効果の均一性、さらには反射干渉色のコントロールという観点からスピン塗布、浸漬塗布、カーテンフロー塗布などが好ましく用いられる。また作業性の点から紙、布などの材料に液を含浸させて塗布流延させる方法も好ましく使用される。更に、一般に利用されているロールコーター、例えばエアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビヤコーター等のコーティング装置を用いて防汚膜を成膜することができる。
【0042】
このようなパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物により形成される防汚膜の膜厚についても、特に限定されるものではないが、水に対する静止接触角とのバランスおよび表面硬度との関係から、0.5nm〜50nm、さらに好ましくは1nm〜20nmであることが望ましい。
【0043】
防汚膜形成用組成物を基材表面に塗布した後、溶媒を揮発させると共に、上記式(1)で示される化合物中のアルコキシシランと基材とを反応させて、強固な結合を与えるために、塗膜を加熱処理することが好ましい。この場合の加熱温度は、基材の耐熱性等を考慮して選定されるが、ポリエチレンテレフタレートを基板として用いた場合には30〜70℃の範囲が適当である。
【0044】
そして、本発明においては、このような防汚膜形成用組成物の塗膜を形成した後、基材との結合の反応を促進するため、防汚膜に水分を供給する。水分の供給方法は、例えば、水をスプレーで吹き付ける方法、スチームを吹き付ける方法等直接水分を皮膜に塗布するように供給する方法がある。また、例えば50℃程度の温度の高湿の雰囲気の恒温室に雰囲気温度より低温の室温の基材を置くことにより結露を生じさせ、水分を供給する方法がある。
【0045】
あるいは、防汚膜形成用組成物の溶剤として、例えばエチルアルコールのような蒸発が速く、蒸発潜熱が大きい溶剤を用い、高湿度の雰囲気中で自然乾燥させる方法がある。この方法は、塗膜の乾燥時の溶剤の蒸発により、その気化熱によって防汚膜を周囲より低温にして結露を生じさせるものである。従来、このような結露を生じさせる乾燥は、塗膜に悪影響を及ぼすおそれがあるため、採用されていないが、本発明では積極的に用いることが好ましい。この場合の高湿雰囲気は、防汚膜形成作業が高湿度の雰囲気であれば、そのまま結露が生じる。また、防汚膜形成用組成物の溶剤の蒸発により温度が低下した基材を、高湿度の部屋に入れて結露を生じさせることができる。
【0046】
水分を防汚膜面に与える時間は数分でよく、その後は必要により水分を除去するため乾燥を行う。この反応促進工程により、アルコキシ基と基材との反応が進行し、塗膜形成後10分程度で他の物品と接触しても防汚膜がはげることはなくなる。
【0047】
本発明の防汚膜形成用組成物で形成された防汚膜は、耐摩耗性、耐汚染性、耐溶剤性等の特性を有するため、基材に対し、汚れ難く、汚れが目立たない、更には汚れがとれやすい、表面の滑りが良好なため、傷が付きにくい等の長所を有し、加えて摩耗に対しても耐久性があると共に、溶剤に対する耐久性も良好な表面を付与できる。
【0048】
また、従来の工程に加えて本発明では上記水分供給による反応促進工程を有するので、防汚膜を形成した基材は、すぐに搬送等ができ、ハンドリングが容易になり、生産性が顕著に向上する。特に、フィルム状のものに塗布した場合、ロール状態で長期間保管するときに転写が生じ難く、不良となることが少なくなる。
【0049】
次に、本発明の反射防止フィルターについて説明する。図1は、本発明の一実施態様に係る表示素子用フィルターにおける断面構造を示す。
【0050】
図1に示す実施態様における表示素子用フィルター10は、プラスチック製又はガラス製の透明基材1の一表面上に反射防止膜2が設けられており、この上部面に防汚膜3が形成されている。
【0051】
基材1としては、プラスチック製又はガラス製のCRTの表示面、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー等の平面表示面、CRT等の前面板等が例示できるが、特に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態に係るフィルター10は、プラスチックフィルム基材1に反射防止膜2と防汚膜3が形成された形態とすることができる。上記防汚膜の形成方法は、塗布直後より耐汚れ性や耐摩耗性に優れた皮膜を形成することができ、ロール状態で保存するときの転写を防ぐことができる。
【0053】
フィルム状のフィルターは、たとえば図2に示す陰極線管(CRT)100のパネル101の表面に接着剤層を介して接着することができる。フィルター10の機材1をパネル101に接着する接着剤としては、特に限定されず、各種の公知のものを用いることができるが、一般には紫外線硬化樹脂系接着剤が使用され、かつその硬化層の屈折率が上記パネルの屈折率と近似する、例えばその差が0.8%以内となるものであることが好ましい。具体的には、例えば、分子量550以上のビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート10重量%、ウレタン(メタ)アクリレート20重量%、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート70重量%、光重合開始剤3%およびその他の添加剤数%程度を含有する組成物などが用いられ得る。
【0054】
本発明において、図1に示すフィルター10のプラスチック基材1としては、有機高分子からなる基材であればいかなるものを用いても良いが、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸特性から見て、特に、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体および共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル;アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましい。また耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。この場合には加熱温度の上限が200℃以上となり、その温度範囲が幅広くなることが予想される。
【0055】
また上記のようなプラスチック基材表面はハードコートなどの被膜材料で被覆されたものであってもよく、後述する無機物からなる反射防止膜の下層に存在するこの被膜材料によって、付着性、硬度、耐薬品性、耐久性、染色性などの諸物性を向上させることが可能である。
【0056】
硬度向上のためには従来プラスチックの表面高硬度化被膜として知られる各種の材料を適用したものを用いることができ、例えば特公昭50−28092号公報、特公昭50−28446号公報、特公昭51−24368号公報、特開昭52−112698号公報、特公昭57−2735号公報に開示されるような技術を適用可能である。さらには、(メタ)アクリル酸エステルとペンタエリスリトールなどの架橋剤とを用いてなるアクリル系架橋物や、オルガノポリシロキサン系などといったものであってもよい。これらは単独であるいは適宜組合せて用いることができる。
【0057】
また、基材1は、プラスチックに限らず、例えばガラスでもよい。ガラスとしては、珪酸、ホウ酸、リン酸等を主成分として含む非結晶固体であれば良く、例えばソーダガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラス等が挙げられる(例えば、化学便覧基礎編、P.T−537、日本化学会編)。CRTとしてはストロンチウムやバリウムを含む珪酸ガラスが好ましく用いられ、液晶表示素子装置では無アルカリガラスが好ましく用いられる。
【0058】
このような基材1上部に形成される反射防止膜2は、単層または多層構造を有するものであって、各種の組合せが可能である。特に多層構造とする場合には、その表層膜より下層を形成する物質の膜構成は要求される性能、例えば耐熱性、反射防止性、反射光色、耐久性、表面硬度などに応じて適宜実験等に基づき決定することができる。
【0059】
これらの反射防止膜を形成する二酸化珪素を含めた各種無機物の被膜化方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングに代表される各種のPVD(Physical Vapor Deposition )法がある。
【0060】
反射防止膜を得る上で、上記のPVD法に適した無機物としては、SiO2 以外に、例えば、Al2 O3 、ZrO2 、TiO2 、Ta2 O5 、TaHf2 、SiO、TiO、Ti2 O3 、HfO2 、ZnO、In2 O3 /SnO2 、Y2 O3 、Yb2 O3 、Sb2 O3 、MgO、CeO2 などの無機酸化物が例示できる。 なおこのようなPVD法によって形成される反射防止膜の最外表層膜は、主として二酸化珪素から構成されるものであることが好ましい。二酸化珪素以外の場合には十分な表面硬度が得られないばかりでなく、本発明の目的とする耐汚染性、耐擦傷性の向上、さらにはこれらの性能の耐久性が顕著に現れない虞れがあるためである。しかしながら、本発明は、主として、このような反射防止膜の表面を被覆する防汚膜の構成に係るものであるゆえ、特に反射防止膜の最外表層膜の材質を限定するものではなく、二酸化珪素以外のもので構成されていてもよい。
【0061】
また、この反射防止膜の最外表層膜の膜厚は、反射防止効果以外の要求性能によってそれぞれ決定されるべきものであるが、特に反射防止効果を最大限に発揮させる目的には表層膜の光学的膜厚を対象とする光波長の1/4ないしはその奇数倍に選択することが極小の反射率すなわち極大の透過率を与えるという点から好ましい。
【0062】
一方、前記表層膜の下層部の構成等については特に限定されない。すなわち、前記表層膜を直接基材上に被膜形成させることも可能であるが、反射防止効果をより顕著なものとするためには、基材上に表層膜より屈折率の高い被膜を一層以上被覆することが有効である。これらの複層の反射防止膜の膜厚および屈折率の選択に関してもいくつかの提案がなされている(例えば、光学技術コンタクト Vol.9 No.8 p.17 (1971) )。
【0063】
また下層部に、カーボンスパッタ膜、カーボンCVD膜などの無機光透過膜を設けることも可能である。
【0064】
本発明の表示素子用フィルターは、上記防汚膜形成用組成物により、反射防止膜表面に防汚膜が形成されているため、通常の反射防止膜より汚れ難く、汚れが目立たない、さらには汚れがとれやすい、あるいは表面の滑りが良好なために、傷が付きにくい等の長所を有し、かつこれらの性能に加えて摩耗に関しても耐久性があることから、CRT用フィルターとして好適に使用することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお実施例中において「部」は重量部を表すものである。
【0067】
実施例1
(1)反射防止膜の作製
基材として厚さ100μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。このPETフィルムの片面に反射防止膜として真空蒸着法により、厚さ120nmのITOをプレ蒸着し、その上にSiO2 を70nm蒸着して形成した。
【0068】
(2)防汚膜形成用組成物の調製
表1に示すパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物(分子量約1000、表1中の化合物1)4部を溶媒(希釈剤)としてIPA(2−プロパノール)200部に溶解し、更にアセチルアセトン1ccと濃塩酸0.01cc加えて均一な溶液としたのち、さらにメンブランフィルターで瀘過を行なって防汚膜形成用組成物を得た。
【0069】
(3)防汚膜の形成
前記(1)で得た反射防止膜の表面に、前記(2)で得た防汚膜形成用組成物を5cm/minの引上げ速度でディップコーティングし、塗布後、室温で10秒ほど自然乾燥させ、防汚膜を形成した。
【0070】
(4)防汚膜への水分の供給
防汚膜を形成した室温の基材を50℃、95%RHの恒温槽に入れて5分間放置して基材表面に水分を結露させた。
【0071】
(5)性能評価
恒温室から取り出した後、室温になるまで5分ほど待ち、表面に水がないことを確認して、純水の接触角を測定したところ、114°であった。
【0072】
また、耐溶剤性の試験(エタノール洗浄)として、エタノールを含ませた布で2kgの圧力で表面を20回拭いた後、純水の接触角を測定したところ、114°で変わらなかった。
【0073】
塗布から24時間経過後にもこれらのエタノール洗浄前と洗浄後の純水の接触角を測定した。
【0074】
比較例1
実施例1と同様の反射防止膜を有する基材表面に実施例1の(2)で調製した防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度でディップコーティングし、反射防止性を有する光学物品を得た。その後、常温常湿で、つまり結露させずに同じ時間(10分)放置後に水の接触角を測定したところ、86°であった。また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたために、被覆前のレベル(56°)まで低下した。
【0075】
比較例1−1
実施例1と同様の反射防止膜を有する基材表面に、実施例1の(2)で調製した防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度でディップコーティングし、反射防止性を有する光学部品を得た。その後、常温(例えば25℃程度)高湿度(95%RH)の恒温槽に入れ、5分間放置した。この場合、結露は生じない。
【0076】
恒温槽から取り出した後、室内に5分間放置し、純水との接触角を測定したところ、92°であった。このように、単に高湿雰囲気下に曝しただけで結露を伴わない場合は、反応速度を促進する効果は見られるが、顕著な効果は表れない。
【0077】
また、エタノール洗浄後は皮膜が剥がれたため、被覆前のレベル(56°)まで低下した。
【0078】
実施例2
(1)反射防止膜の作製
実施例1と同じものを用いた。
【0079】
(2)防汚膜形成用組成物の調製
溶媒(希釈剤)としてIPAの代わりにエタノールを使用した以外は、実施例1と同様に防汚膜形成用組成物を調製した。
【0080】
(3)防汚膜の形成及び水分の供給
28℃、65%の雰囲気中で、前記(1)で得た反射防止膜の表面に、前記(2)で得た防汚膜形成用組成物を30cm/minの速い引上げ速度でディップコーティングし、塗布後、同じ雰囲気中で自然乾燥させたところ、塗膜表面がエタノールの蒸発による気化熱により結露した。結露部分はその後の乾燥工程で10秒ほどで乾燥させた。
【0081】
(4)性能評価
塗布から10分後に乾燥を確認し、純水の接触角を測定したところ、114°であった。
【0082】
また、耐溶剤性の試験として、エタノールを含ませた布で表面を拭いた後、純水の接触角を測定したところ、114°で変わらなかった。
【0083】
比較例2
実施例2において、防汚膜形成用組成物としてエタノールの代わりに沸点の高いIPAを用い、同じ基材を用いてゆっくりとした引き上げ速度(5cm/min)で引き上げた以外は同様に防汚膜形成用組成物を調製し、塗布した。この場合は、結露は生じなかった。同じ時間(10分後)に純水の接触角を測定したところ、90°であった。
【0084】
また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたため、純水の接触角は被覆前のレベル(52°)まで低下した。
【0085】
実施例3
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物1の代わりに化合物2を用いた以外は、全て実施例1と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングして、恒温室で結露させ、防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0086】
比較例3
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物1の代わりに化合物2を用いた以外は、全て比較例1と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングして、防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0087】
実施例4
(1)反射防止膜の作製
実施例1と同じものを用いた。
【0088】
(2)防汚膜形成用組成物の調製
表1に示すパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物(分子量約1000、表1中の化合物3)4部を溶媒(希釈剤)としてIPA(2−プロパノール)200部に溶解し、更にアセチルアセトン1ccと濃塩酸0.01cc加えて均一な溶液としたのち、さらにメンブランフィルターで瀘過を行なって防汚膜形成用組成物を得た。
【0089】
(3)防汚膜の形成
前記(1)で得た反射防止膜の表面に、前記(2)で得た防汚膜形成用組成物を5cm/minの引上げ速度でディップコーティングし、塗布後、室温で10秒ほど自然乾燥させ、防汚膜を形成した。
【0090】
(4)防汚膜への水分の供給
家庭用加湿器によってスチームを塗膜面に噴霧した後、60℃で5分間乾燥させ、反射防止性を有する光学部品を得た。
【0091】
(5)性能評価
恒温室から取り出した後、室温になるまで5分ほど待ち、表面に水がないことを確認して、純水の接触角を測定したところ、114°であった。
【0092】
また、耐溶剤性の試験(エタノール洗浄)として、エタノールを含ませた布で2kgの圧力で表面を20回拭いた(エタノール洗浄)後、純水の接触角を測定したところ、113°でほとんど変わらなかった。
【0093】
比較例4
実施例4と同様に、反射防止膜の表面に同じ防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度でディップコーティングし、反射防止性を有する光学部品を得た。この場合、結露は生じなかった。その後、常温、常湿で加湿処理せずに同じ時間(10分後)放置後に水の接触角を測定したところ86°であった。また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたため、被覆前のレベル(56°)まで低下した。
【0094】
実施例5
溶剤(希釈剤)としてIPAの代わりにエタノールを使用した以外は実施例4と同様に反射防止膜の表面に防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度ディップコーティングした。このコーティングで光学部品の温度は、エタノールの揮発に伴う蒸発潜熱により室温より低下した。
【0095】
この光学部品を水蒸気を充満させた部屋を通過させて表面に結露を生じさせた後、60℃で乾燥させ、反射防止性を有する光学部品を得た。
【0096】
比較例5
溶剤として沸点の高いIPAを用い、23℃、65%RH雰囲気中でゆっくりとした引き上げ速度(5cm/min)で引き上げたものを同じ時間(5分後)に接触角を測定したところ、90°であった。
【0097】
また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたため、被覆前のレベル(52°)まで低下した。
【0098】
実施例6
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物3の代わりに化合物4を用いた以外は、全て実施例4と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、加湿器でスチームを塗膜面に吹き付けて防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0099】
比較例6
加湿器でスチームを塗膜面に吹き付ける工程を省略して硬化反応を促進しなかった以外は実施例6と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、防汚膜を得た。塗布10分後と塗布24時間後の純水接触角度を測定した。結果を表2に示す。
【0100】
実施例7
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物3の代わりに化合物4を用いた以外は、全て実施例5と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、水蒸気充満室を通して結露させ、防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0101】
比較例7
溶剤としてメタノールの代わりにIPAを用い、水蒸気充満室を通さずに硬化反応を促進しなかった以外は実施例7と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、防汚膜を得た。塗布10分後と塗布24時間後の純水接触角度を測定した。結果を表2に示す。
【0102】
実施例8
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物3の代わりに化合物5を用いた以外は、全て実施例4と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、加湿器でスチームを塗膜面に吹き付けて防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0103】
比較例8
加湿器でスチームを塗膜面に吹き付ける工程を省略して硬化反応を促進しなかった以外は実施例8と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、防汚膜を得た。塗布10分後と塗布24時間後の純水接触角度を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表2の結果より、塗膜形成直後の防汚膜に水分を供給することにより、極めて短時間で塗膜が硬化することが認められる。
【0107】
【発明の効果】
パーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を有する防汚膜形成用組成物を基材表面に塗布した後、塗膜面に水分を供給し、塗膜の硬化を速めることにより、次のような利点がある。
【0108】
(1)被覆直後から指紋、手垢などによる汚れがつき難く、また目立ちにくい。しかも、この効果が永続的に持続する。
【0109】
(2)他の物との接触、例えばフィルム状の物へ皮膜を形成し、このフィルム状の物をロール状態で長期間保管する場合などに、皮膜の転写や剥がれがなく、機能が損なわれるおそれがない。
【0110】
また、本発明の表示素子用フィルターは、上記特性を有する防汚膜が形成されているので、手垢、水垢等の汚染防止効果があり、かつ滑り性、耐磨耗性に優れ、CRT等の反射防止フィルターなどとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示素子用フィルターの一例を示す断面図である。
【図2】陰極線管の斜視図である。
【符号の説明】
1…基材、2…反射防止膜、3…防汚膜、10…表示素子用フィルター
【発明の属する技術分野】
本発明は、CRT(陰極線管)のパネル面等の基材に耐汚染性、耐擦傷性、耐加工性等に優れた防汚膜を形成することができる防汚膜の形成方法、及び該防汚膜が形成された表示素子用フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
透明材料を通して物を見る場合、反射光が強く、反射像が明瞭であることは煩わしく、例えば眼鏡用レンズではゴースト、フレアなどと呼ばれる反射像を生じて目に不快感を与えたりする。またルッキングガラスなどではガラス面上の反射した光のために内容物が判然としない問題が生ずる。
【0003】
従来より反射防止のために屈折率が基材と異なる物質を、真空蒸着法などにより基材上に被覆形成させる方法が行なわれている。この場合、反射防止効果を最も高いものとするためには基材を被覆する物質の厚みの選択が重要であることが知られている。
【0004】
例えば、単層被膜においては、基材より低屈折率の物質を光学的膜厚を対象とする光波長の1/4ないしその奇数倍に選択することが極小の反射率すなわち極大の透過率を与えることが知られている。
【0005】
ここで、光学的膜厚とは、被膜形成材料の屈折率と該被膜の膜厚の積で与えられるものである。さらに複層の反射防止層の形成が可能であり、この場合の膜厚の選択に関していくつかの提案がなされている(光学技術コンタクト Vol.9No.8 p.17 (1971) )。
【0006】
一方、特開昭58−46301号公報、特開昭59−49501号公報、特開昭59−50401号公報には、前記の光学的膜厚の条件を満足させる複層からなる反射防止膜を液状組成物を用いて形成させる方法について記載されている。
【0007】
近年になって軽量安全性、取り扱い易さなどの長所を生かして、プラスチックフィルムを基材とした反射防止性を有する光学物品が考案され、反射防止フィルターとしてCRTのパネル面等に貼着する方法で実用化されている。そして、その多くは表層膜に二酸化珪素で代表される無機酸化物膜あるいは無機ハロゲン化物膜の構成が採用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成された反射防止膜は、被膜形成材料が主として無機酸化物あるいは無機ハロゲン化物であり、反射防止膜は本質的には高い表面硬度を有する反面、指紋、汗、あるいはヘアーリキッド、ヘアースプレーなどの化粧料等による汚れが目立ちやすく、またこれらの付着した汚れが除去しにくいという欠点があった。さらには表面のすべりが悪いために何らかの硬質の物と接触した際にできる傷が太くなるなどの問題を有している。また、水に対する濡れ性が大きいために雨滴、水の飛沫が付着すると大きく拡がり、眼鏡レンズなどにおいては大面積にわたって物体がゆがんで見えるなどの問題点があった。
【0009】
前記特開昭58−46301号公報、特開昭59−49501号公報、特開昭59−50401号公報に記載の反射防止膜においても、硬い表面硬度を付与するためには、最表面膜中にシリカ微粒子などに代表される無機物を30重量%以上含ませることが必要であるが、このような膜組成から得られる反射防止膜は、表面のすべりが悪く、布などの磨耗によって傷が付き易いなどの問題点を有している。
【0010】
これらの問題点を改良する目的で各種の表面処理剤が提案され、市販されているが、いずれも水や各種の溶剤によって溶解するものであって、一時的に機能を付与するものであり、永続性がなく耐久性に乏しいものであった。また特開平3−266801号公報には、撥水性を付与するために、フッ素系樹脂層を形成させる報告がある。しかしながら、これらのフッ素系樹脂では確かに撥水性は増すが、摩擦あるいは磨耗に対して満足する結果が得られないものであった。
【0011】
これに対して、本発明者らは、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を用いて形成した防汚膜は、優れた撥水性を有すると共に、耐摩耗性にも優れ、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性等に優れていることを見い出した。
【0012】
しかしながら、この組成物は、被覆膜を形成後、その撥水性や耐摩耗性を最大限に発揮するまで数時間、場合によっては数日という長時間を要し、その間では汚れや傷が入りやすく、また、他の物品と接触すると、防汚膜の一部が転写し、防汚膜が剥離してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性等に優れた防汚膜を短時間に形成することができる防汚膜の形成方法、及びその防汚膜が形成され、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性等に優れた表面を有する表示素子用フィルターを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、以下に述べる本発明に到達した。即ち本発明の防汚膜の形成方法は、下記の構成からなる。
【0015】
下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を基材に成膜する工程と、
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }j …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、jは1又は2である。)
上記組成物を成膜後、成膜面に水分を供給して上記アルコキシシラン化合物と基材との反応を促進させる反応促進工程とを有することを特徴とする防汚膜の形成方法。
【0016】
また、本発明の表示素子用フィルターは、下記の構成からなる。
【0017】
下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を基材に成膜し、
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }j …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、jは1又は2である。)
上記組成物を成膜後、成膜面に水分を供給して上記アルコキシシラン化合物と基材との反応を促進させることにより形成された防汚膜が表面に形成されてなることを特徴とする表示素子用フィルター。
【0018】
上記式(1)で示される化合物は、フッ素化合物を分子中に含むことにより、撥水性を有し、耐水、耐汚染性が向上している。また、フッ素化合物がトライボロジー特性に優れたパーフルオロポリエーテル基であるから、パーフルオロアルキル基よりも耐摩耗性や摩擦特性が良好である。しかも、例えばSiO2 表面との相互作用を行うアルコキシシラノ基を分子中に含むので、例えば加熱することにより、基材と強固な結合を形成し、それ故に従来不満足であった耐溶剤性などの問題を克服できる。
【0019】
従って、上記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物は、基材表面に耐摩耗性、耐汚染性、耐溶剤性等の特性を有する防汚膜を形成することができる。
【0020】
この場合、基材との反応を促進する触媒として酸又は塩基、リン酸エステル、及びβ−ジケトンから選ばれる1種又は2種以上を防汚膜形成用組成物に添加することにより、加熱温度を低くしても基材との強い結合を形成できる。そのため、製造プロセス的に有利になると共に、基材の選定範囲が広がり、本発明の防汚膜形成用組成物の適用範囲を広げることができる。
【0021】
このような防汚膜形成用組成物は、基材、特に酸化珪素を主成分とする無機膜と上記(1)で示される化合物のアルコキシ基が反応して強固な結合を形成するものであり、それ故、耐摩耗性、耐溶剤性等に優れるが、その反面基材との結合に時間がかかる問題があった。本発明者らは、基材とアルコキシ基との反応が水を利用した脱アルコール反応であるので、空気中の水分を利用するのではなく、防汚膜形成用組成物を塗布した後、塗布面に積極的に水分を供給することにより、シランカップリング剤の硬化反応を顕著に促進させ、これまで実用に耐える皮膜形成に数時間乃至数日を要していたものが、10分程度に短縮されることを見い出した。
【0022】
塗布面に水分を供給する方法としては、例えば塗布面にスチームを吹き付けたり、水分を結露させる方法がある。
【0023】
このような防汚膜形成用組成物を用いて反射防止膜の表面に防汚膜が形成された表示素子用フィルターは、耐溶剤性、耐汚染性、耐加工性、耐擦傷性等に優れた表面を有する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の防汚膜形成用組成物は、上述したように、下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する。
【0026】
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }p …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、pは1又は2である。)
かかるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物の分子量は、特に制限されないが、安定性、取り扱い易さ等の点から数平均分子量で500〜1万、好ましくは500〜2000のものが適当である。
【0027】
上記式(1)中のRf は一価又は二価のパーフルオロポリエーテル基であり、パーフロオロポリエーテル基としては、特に限定されるものではなく、各種鎖長のパーフルオロポリエーテル基が含まれるが、好ましくはC1 〜C3 程度のパーフルオロアルキルオキシ基を繰返し単位とする一価又は二価のパーフルオロポリエーテルである。一価のパーフルオロポリエーテルとしては、具体的には例えば、次に示すようなものがある。
【0028】
【化1】
【0029】
また、二価のパーフルオロポリエーテル基としては、例えば次のようなものがある。
【0030】
【化2】
【0031】
なお上記化学構造式中の、l、m、n、k、p及びqはそれぞれ1以上の整数を示す。ここで、上記化学構造式中のp、qの比率は、p/q=0.2〜2の範囲が好ましい。しかしながら、前記したようにパーフルオロポリエーテルの分子構造はこれら例示したものに限定されるものではない。
【0032】
上記一般式(1)で示される化合物は、基本的にパーフルオロポリエーテル基とアルコキシシラノ基とを有すれば、上記した特性を有する防汚膜を形成することができるため、パーフルオロポリエーテル基以外の分子構造についての制限は本質的にはない。しかし、実際にはある程度の合成のし易さ、つまり実現性の観点からの範囲はある。以下、その観点から、各構造部分を説明する。
【0033】
R1 は、2価の原子又は基を示し、R2 とパーフルオロポリエーテル基との結合基であり、特に制限はないが、合成上、炭素以外のO、NH、S等の原子あるいは原子団が好ましい。
【0034】
R2 は炭化水素基であり、炭素数は2〜10の範囲が好ましい。R2 としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基などを例示することができる。
【0035】
R3 はアルコキシ基を構成するアルキル基であり、通常は炭素数が3以下、つまりイソプロピル基、プロピル基、エチル基、メチル基を例示することができるが、炭素数はこれ以上でもよい。
【0036】
本発明の防汚膜形成用組成物は、通常、上記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を、溶媒に希釈して用いる。この溶媒としては、特に限定されないが、使用に当たっては、組成物の安定性、二酸化珪素膜に対する濡れ性、揮発性などを考慮して決めるべきである。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤やアセトン等のケトン系溶剤、あるいはヘキサン等の炭化水素系溶剤などを例示することができ、これらの単独あるいは2種以上の混合物を溶媒として用いることができる。
【0037】
この場合、防汚膜形成用組成物に、触媒として塩酸等の酸又はアンモニア等の塩基、あるいはリン酸ジラウリルエステル等のリン酸エステルを添加することが好ましい。このような触媒を添加することにより、基材との反応温度(乾燥温度)を低くすることができる。これらの触媒の添加量は、0.001〜1mmol/L程度が好ましい。また、酸又は塩基を添加する場合に、アセチルアセトンのようなβ−ジケトン類を添加するとその反応性が高まることから、防汚膜形成用組成物にβ−ジケトン類を添加することが推奨される。このようなカルボニル化合物の添加量は、0.1〜100mmol/L程度とすることができる。
【0038】
そして、本発明の防汚膜形成用組成物は、基材の表面に塗布し、例えば加熱することによって溶媒を揮発させると共に、基材と結合を生じさせ、基材表面に防汚膜を形成することができる。
【0039】
防汚膜を形成する対象となる基材としては、特に制限されないが、少なくとも表面が無機材料で構成されていることが好ましい。例えば、CRT等のガラスパネル、あるいはプラスチック基材表面に形成された例えば反射防止膜としての無機膜を有する反射防止フィルター等に好適に適用することができる。反射防止フィルターに用いる無機膜としては、透明性、屈折率、耐熱性、反射防止性、反射光色、耐久性、表面硬度等を考慮して選定され、特に限定されるものではないが、主としてSiO2 からなるものであることが望ましい。無機膜が主として、SiO2 からなるものであると、より十分な表面硬度が得られると共に、本発明の目的である耐汚染性、耐擦傷性の向上、さらにはこれらの性能の耐久性が顕著なものとして現れるためである。しかし、本発明は、特に二酸化珪素(SiO2 )に限定されるものではない。
【0040】
なお、本発明に係るパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物の塗布にあたっては、塗布されるべき基材の表面は清浄化されていることが好ましく、清浄化に際しては、界面活性剤による汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、フッ素系ガスによる蒸気洗浄などが適用される。また密着性、耐久性の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手段であり、特に好ましく用いられる方法としては活性化ガス処理、酸、アルカリなどによる薬品処理などが挙げられる。
【0041】
その塗布方法としては、通常のコーティング作業で用いられる各種の方法が適用可能であるが、反射防止効果の均一性、さらには反射干渉色のコントロールという観点からスピン塗布、浸漬塗布、カーテンフロー塗布などが好ましく用いられる。また作業性の点から紙、布などの材料に液を含浸させて塗布流延させる方法も好ましく使用される。更に、一般に利用されているロールコーター、例えばエアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビヤコーター等のコーティング装置を用いて防汚膜を成膜することができる。
【0042】
このようなパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物により形成される防汚膜の膜厚についても、特に限定されるものではないが、水に対する静止接触角とのバランスおよび表面硬度との関係から、0.5nm〜50nm、さらに好ましくは1nm〜20nmであることが望ましい。
【0043】
防汚膜形成用組成物を基材表面に塗布した後、溶媒を揮発させると共に、上記式(1)で示される化合物中のアルコキシシランと基材とを反応させて、強固な結合を与えるために、塗膜を加熱処理することが好ましい。この場合の加熱温度は、基材の耐熱性等を考慮して選定されるが、ポリエチレンテレフタレートを基板として用いた場合には30〜70℃の範囲が適当である。
【0044】
そして、本発明においては、このような防汚膜形成用組成物の塗膜を形成した後、基材との結合の反応を促進するため、防汚膜に水分を供給する。水分の供給方法は、例えば、水をスプレーで吹き付ける方法、スチームを吹き付ける方法等直接水分を皮膜に塗布するように供給する方法がある。また、例えば50℃程度の温度の高湿の雰囲気の恒温室に雰囲気温度より低温の室温の基材を置くことにより結露を生じさせ、水分を供給する方法がある。
【0045】
あるいは、防汚膜形成用組成物の溶剤として、例えばエチルアルコールのような蒸発が速く、蒸発潜熱が大きい溶剤を用い、高湿度の雰囲気中で自然乾燥させる方法がある。この方法は、塗膜の乾燥時の溶剤の蒸発により、その気化熱によって防汚膜を周囲より低温にして結露を生じさせるものである。従来、このような結露を生じさせる乾燥は、塗膜に悪影響を及ぼすおそれがあるため、採用されていないが、本発明では積極的に用いることが好ましい。この場合の高湿雰囲気は、防汚膜形成作業が高湿度の雰囲気であれば、そのまま結露が生じる。また、防汚膜形成用組成物の溶剤の蒸発により温度が低下した基材を、高湿度の部屋に入れて結露を生じさせることができる。
【0046】
水分を防汚膜面に与える時間は数分でよく、その後は必要により水分を除去するため乾燥を行う。この反応促進工程により、アルコキシ基と基材との反応が進行し、塗膜形成後10分程度で他の物品と接触しても防汚膜がはげることはなくなる。
【0047】
本発明の防汚膜形成用組成物で形成された防汚膜は、耐摩耗性、耐汚染性、耐溶剤性等の特性を有するため、基材に対し、汚れ難く、汚れが目立たない、更には汚れがとれやすい、表面の滑りが良好なため、傷が付きにくい等の長所を有し、加えて摩耗に対しても耐久性があると共に、溶剤に対する耐久性も良好な表面を付与できる。
【0048】
また、従来の工程に加えて本発明では上記水分供給による反応促進工程を有するので、防汚膜を形成した基材は、すぐに搬送等ができ、ハンドリングが容易になり、生産性が顕著に向上する。特に、フィルム状のものに塗布した場合、ロール状態で長期間保管するときに転写が生じ難く、不良となることが少なくなる。
【0049】
次に、本発明の反射防止フィルターについて説明する。図1は、本発明の一実施態様に係る表示素子用フィルターにおける断面構造を示す。
【0050】
図1に示す実施態様における表示素子用フィルター10は、プラスチック製又はガラス製の透明基材1の一表面上に反射防止膜2が設けられており、この上部面に防汚膜3が形成されている。
【0051】
基材1としては、プラスチック製又はガラス製のCRTの表示面、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー等の平面表示面、CRT等の前面板等が例示できるが、特に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態に係るフィルター10は、プラスチックフィルム基材1に反射防止膜2と防汚膜3が形成された形態とすることができる。上記防汚膜の形成方法は、塗布直後より耐汚れ性や耐摩耗性に優れた皮膜を形成することができ、ロール状態で保存するときの転写を防ぐことができる。
【0053】
フィルム状のフィルターは、たとえば図2に示す陰極線管(CRT)100のパネル101の表面に接着剤層を介して接着することができる。フィルター10の機材1をパネル101に接着する接着剤としては、特に限定されず、各種の公知のものを用いることができるが、一般には紫外線硬化樹脂系接着剤が使用され、かつその硬化層の屈折率が上記パネルの屈折率と近似する、例えばその差が0.8%以内となるものであることが好ましい。具体的には、例えば、分子量550以上のビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート10重量%、ウレタン(メタ)アクリレート20重量%、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート70重量%、光重合開始剤3%およびその他の添加剤数%程度を含有する組成物などが用いられ得る。
【0054】
本発明において、図1に示すフィルター10のプラスチック基材1としては、有機高分子からなる基材であればいかなるものを用いても良いが、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸特性から見て、特に、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAのモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体および共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル;アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましい。また耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。この場合には加熱温度の上限が200℃以上となり、その温度範囲が幅広くなることが予想される。
【0055】
また上記のようなプラスチック基材表面はハードコートなどの被膜材料で被覆されたものであってもよく、後述する無機物からなる反射防止膜の下層に存在するこの被膜材料によって、付着性、硬度、耐薬品性、耐久性、染色性などの諸物性を向上させることが可能である。
【0056】
硬度向上のためには従来プラスチックの表面高硬度化被膜として知られる各種の材料を適用したものを用いることができ、例えば特公昭50−28092号公報、特公昭50−28446号公報、特公昭51−24368号公報、特開昭52−112698号公報、特公昭57−2735号公報に開示されるような技術を適用可能である。さらには、(メタ)アクリル酸エステルとペンタエリスリトールなどの架橋剤とを用いてなるアクリル系架橋物や、オルガノポリシロキサン系などといったものであってもよい。これらは単独であるいは適宜組合せて用いることができる。
【0057】
また、基材1は、プラスチックに限らず、例えばガラスでもよい。ガラスとしては、珪酸、ホウ酸、リン酸等を主成分として含む非結晶固体であれば良く、例えばソーダガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラス等が挙げられる(例えば、化学便覧基礎編、P.T−537、日本化学会編)。CRTとしてはストロンチウムやバリウムを含む珪酸ガラスが好ましく用いられ、液晶表示素子装置では無アルカリガラスが好ましく用いられる。
【0058】
このような基材1上部に形成される反射防止膜2は、単層または多層構造を有するものであって、各種の組合せが可能である。特に多層構造とする場合には、その表層膜より下層を形成する物質の膜構成は要求される性能、例えば耐熱性、反射防止性、反射光色、耐久性、表面硬度などに応じて適宜実験等に基づき決定することができる。
【0059】
これらの反射防止膜を形成する二酸化珪素を含めた各種無機物の被膜化方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングに代表される各種のPVD(Physical Vapor Deposition )法がある。
【0060】
反射防止膜を得る上で、上記のPVD法に適した無機物としては、SiO2 以外に、例えば、Al2 O3 、ZrO2 、TiO2 、Ta2 O5 、TaHf2 、SiO、TiO、Ti2 O3 、HfO2 、ZnO、In2 O3 /SnO2 、Y2 O3 、Yb2 O3 、Sb2 O3 、MgO、CeO2 などの無機酸化物が例示できる。 なおこのようなPVD法によって形成される反射防止膜の最外表層膜は、主として二酸化珪素から構成されるものであることが好ましい。二酸化珪素以外の場合には十分な表面硬度が得られないばかりでなく、本発明の目的とする耐汚染性、耐擦傷性の向上、さらにはこれらの性能の耐久性が顕著に現れない虞れがあるためである。しかしながら、本発明は、主として、このような反射防止膜の表面を被覆する防汚膜の構成に係るものであるゆえ、特に反射防止膜の最外表層膜の材質を限定するものではなく、二酸化珪素以外のもので構成されていてもよい。
【0061】
また、この反射防止膜の最外表層膜の膜厚は、反射防止効果以外の要求性能によってそれぞれ決定されるべきものであるが、特に反射防止効果を最大限に発揮させる目的には表層膜の光学的膜厚を対象とする光波長の1/4ないしはその奇数倍に選択することが極小の反射率すなわち極大の透過率を与えるという点から好ましい。
【0062】
一方、前記表層膜の下層部の構成等については特に限定されない。すなわち、前記表層膜を直接基材上に被膜形成させることも可能であるが、反射防止効果をより顕著なものとするためには、基材上に表層膜より屈折率の高い被膜を一層以上被覆することが有効である。これらの複層の反射防止膜の膜厚および屈折率の選択に関してもいくつかの提案がなされている(例えば、光学技術コンタクト Vol.9 No.8 p.17 (1971) )。
【0063】
また下層部に、カーボンスパッタ膜、カーボンCVD膜などの無機光透過膜を設けることも可能である。
【0064】
本発明の表示素子用フィルターは、上記防汚膜形成用組成物により、反射防止膜表面に防汚膜が形成されているため、通常の反射防止膜より汚れ難く、汚れが目立たない、さらには汚れがとれやすい、あるいは表面の滑りが良好なために、傷が付きにくい等の長所を有し、かつこれらの性能に加えて摩耗に関しても耐久性があることから、CRT用フィルターとして好適に使用することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお実施例中において「部」は重量部を表すものである。
【0067】
実施例1
(1)反射防止膜の作製
基材として厚さ100μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。このPETフィルムの片面に反射防止膜として真空蒸着法により、厚さ120nmのITOをプレ蒸着し、その上にSiO2 を70nm蒸着して形成した。
【0068】
(2)防汚膜形成用組成物の調製
表1に示すパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物(分子量約1000、表1中の化合物1)4部を溶媒(希釈剤)としてIPA(2−プロパノール)200部に溶解し、更にアセチルアセトン1ccと濃塩酸0.01cc加えて均一な溶液としたのち、さらにメンブランフィルターで瀘過を行なって防汚膜形成用組成物を得た。
【0069】
(3)防汚膜の形成
前記(1)で得た反射防止膜の表面に、前記(2)で得た防汚膜形成用組成物を5cm/minの引上げ速度でディップコーティングし、塗布後、室温で10秒ほど自然乾燥させ、防汚膜を形成した。
【0070】
(4)防汚膜への水分の供給
防汚膜を形成した室温の基材を50℃、95%RHの恒温槽に入れて5分間放置して基材表面に水分を結露させた。
【0071】
(5)性能評価
恒温室から取り出した後、室温になるまで5分ほど待ち、表面に水がないことを確認して、純水の接触角を測定したところ、114°であった。
【0072】
また、耐溶剤性の試験(エタノール洗浄)として、エタノールを含ませた布で2kgの圧力で表面を20回拭いた後、純水の接触角を測定したところ、114°で変わらなかった。
【0073】
塗布から24時間経過後にもこれらのエタノール洗浄前と洗浄後の純水の接触角を測定した。
【0074】
比較例1
実施例1と同様の反射防止膜を有する基材表面に実施例1の(2)で調製した防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度でディップコーティングし、反射防止性を有する光学物品を得た。その後、常温常湿で、つまり結露させずに同じ時間(10分)放置後に水の接触角を測定したところ、86°であった。また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたために、被覆前のレベル(56°)まで低下した。
【0075】
比較例1−1
実施例1と同様の反射防止膜を有する基材表面に、実施例1の(2)で調製した防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度でディップコーティングし、反射防止性を有する光学部品を得た。その後、常温(例えば25℃程度)高湿度(95%RH)の恒温槽に入れ、5分間放置した。この場合、結露は生じない。
【0076】
恒温槽から取り出した後、室内に5分間放置し、純水との接触角を測定したところ、92°であった。このように、単に高湿雰囲気下に曝しただけで結露を伴わない場合は、反応速度を促進する効果は見られるが、顕著な効果は表れない。
【0077】
また、エタノール洗浄後は皮膜が剥がれたため、被覆前のレベル(56°)まで低下した。
【0078】
実施例2
(1)反射防止膜の作製
実施例1と同じものを用いた。
【0079】
(2)防汚膜形成用組成物の調製
溶媒(希釈剤)としてIPAの代わりにエタノールを使用した以外は、実施例1と同様に防汚膜形成用組成物を調製した。
【0080】
(3)防汚膜の形成及び水分の供給
28℃、65%の雰囲気中で、前記(1)で得た反射防止膜の表面に、前記(2)で得た防汚膜形成用組成物を30cm/minの速い引上げ速度でディップコーティングし、塗布後、同じ雰囲気中で自然乾燥させたところ、塗膜表面がエタノールの蒸発による気化熱により結露した。結露部分はその後の乾燥工程で10秒ほどで乾燥させた。
【0081】
(4)性能評価
塗布から10分後に乾燥を確認し、純水の接触角を測定したところ、114°であった。
【0082】
また、耐溶剤性の試験として、エタノールを含ませた布で表面を拭いた後、純水の接触角を測定したところ、114°で変わらなかった。
【0083】
比較例2
実施例2において、防汚膜形成用組成物としてエタノールの代わりに沸点の高いIPAを用い、同じ基材を用いてゆっくりとした引き上げ速度(5cm/min)で引き上げた以外は同様に防汚膜形成用組成物を調製し、塗布した。この場合は、結露は生じなかった。同じ時間(10分後)に純水の接触角を測定したところ、90°であった。
【0084】
また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたため、純水の接触角は被覆前のレベル(52°)まで低下した。
【0085】
実施例3
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物1の代わりに化合物2を用いた以外は、全て実施例1と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングして、恒温室で結露させ、防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0086】
比較例3
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物1の代わりに化合物2を用いた以外は、全て比較例1と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングして、防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0087】
実施例4
(1)反射防止膜の作製
実施例1と同じものを用いた。
【0088】
(2)防汚膜形成用組成物の調製
表1に示すパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物(分子量約1000、表1中の化合物3)4部を溶媒(希釈剤)としてIPA(2−プロパノール)200部に溶解し、更にアセチルアセトン1ccと濃塩酸0.01cc加えて均一な溶液としたのち、さらにメンブランフィルターで瀘過を行なって防汚膜形成用組成物を得た。
【0089】
(3)防汚膜の形成
前記(1)で得た反射防止膜の表面に、前記(2)で得た防汚膜形成用組成物を5cm/minの引上げ速度でディップコーティングし、塗布後、室温で10秒ほど自然乾燥させ、防汚膜を形成した。
【0090】
(4)防汚膜への水分の供給
家庭用加湿器によってスチームを塗膜面に噴霧した後、60℃で5分間乾燥させ、反射防止性を有する光学部品を得た。
【0091】
(5)性能評価
恒温室から取り出した後、室温になるまで5分ほど待ち、表面に水がないことを確認して、純水の接触角を測定したところ、114°であった。
【0092】
また、耐溶剤性の試験(エタノール洗浄)として、エタノールを含ませた布で2kgの圧力で表面を20回拭いた(エタノール洗浄)後、純水の接触角を測定したところ、113°でほとんど変わらなかった。
【0093】
比較例4
実施例4と同様に、反射防止膜の表面に同じ防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度でディップコーティングし、反射防止性を有する光学部品を得た。この場合、結露は生じなかった。その後、常温、常湿で加湿処理せずに同じ時間(10分後)放置後に水の接触角を測定したところ86°であった。また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたため、被覆前のレベル(56°)まで低下した。
【0094】
実施例5
溶剤(希釈剤)としてIPAの代わりにエタノールを使用した以外は実施例4と同様に反射防止膜の表面に防汚膜形成用組成物を5cm/minの引き上げ速度ディップコーティングした。このコーティングで光学部品の温度は、エタノールの揮発に伴う蒸発潜熱により室温より低下した。
【0095】
この光学部品を水蒸気を充満させた部屋を通過させて表面に結露を生じさせた後、60℃で乾燥させ、反射防止性を有する光学部品を得た。
【0096】
比較例5
溶剤として沸点の高いIPAを用い、23℃、65%RH雰囲気中でゆっくりとした引き上げ速度(5cm/min)で引き上げたものを同じ時間(5分後)に接触角を測定したところ、90°であった。
【0097】
また、エタノール洗浄後は被覆が剥がれたため、被覆前のレベル(52°)まで低下した。
【0098】
実施例6
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物3の代わりに化合物4を用いた以外は、全て実施例4と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、加湿器でスチームを塗膜面に吹き付けて防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0099】
比較例6
加湿器でスチームを塗膜面に吹き付ける工程を省略して硬化反応を促進しなかった以外は実施例6と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、防汚膜を得た。塗布10分後と塗布24時間後の純水接触角度を測定した。結果を表2に示す。
【0100】
実施例7
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物3の代わりに化合物4を用いた以外は、全て実施例5と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、水蒸気充満室を通して結露させ、防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0101】
比較例7
溶剤としてメタノールの代わりにIPAを用い、水蒸気充満室を通さずに硬化反応を促進しなかった以外は実施例7と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、防汚膜を得た。塗布10分後と塗布24時間後の純水接触角度を測定した。結果を表2に示す。
【0102】
実施例8
化合物(パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物)として、表1の化合物3の代わりに化合物5を用いた以外は、全て実施例4と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、加湿器でスチームを塗膜面に吹き付けて防汚膜を得た。結果を表2に示す。
【0103】
比較例8
加湿器でスチームを塗膜面に吹き付ける工程を省略して硬化反応を促進しなかった以外は実施例8と同様に防汚膜形成用組成物を基材にコーティングし、防汚膜を得た。塗布10分後と塗布24時間後の純水接触角度を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表2の結果より、塗膜形成直後の防汚膜に水分を供給することにより、極めて短時間で塗膜が硬化することが認められる。
【0107】
【発明の効果】
パーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を有する防汚膜形成用組成物を基材表面に塗布した後、塗膜面に水分を供給し、塗膜の硬化を速めることにより、次のような利点がある。
【0108】
(1)被覆直後から指紋、手垢などによる汚れがつき難く、また目立ちにくい。しかも、この効果が永続的に持続する。
【0109】
(2)他の物との接触、例えばフィルム状の物へ皮膜を形成し、このフィルム状の物をロール状態で長期間保管する場合などに、皮膜の転写や剥がれがなく、機能が損なわれるおそれがない。
【0110】
また、本発明の表示素子用フィルターは、上記特性を有する防汚膜が形成されているので、手垢、水垢等の汚染防止効果があり、かつ滑り性、耐磨耗性に優れ、CRT等の反射防止フィルターなどとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示素子用フィルターの一例を示す断面図である。
【図2】陰極線管の斜視図である。
【符号の説明】
1…基材、2…反射防止膜、3…防汚膜、10…表示素子用フィルター
Claims (8)
- 下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を基材に成膜する工程と、
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }j …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、jは1又は2である。)
上記組成物を成膜後、成膜面に水分を供給して上記アルコキシシラン化合物と基材との反応を促進させる反応促進工程と
を有することを特徴とする防汚膜の形成方法。 - 酸又は塩基、リン酸エステル、及びβ−ジケトンから選ばれる1種又は2種以上を添加した防汚膜形成用組成物を用いる
請求項1記載の防汚膜の形成方法。 - 上記成膜面に結露を生じさせて水分を供給する
請求項1記載の防汚膜の形成方法。 - 高湿度の雰囲気中で成膜面の温度を雰囲気より下げることにより成膜面に結露を生じさせる
請求項3記載の防汚膜の形成方法。 - 上記成膜面にスチームを吹き付けて水分を供給する
請求項1記載の防汚膜の形成方法。 - 上記基材の防汚膜を形成する面の最外層が酸化珪素を主成分とする無機膜である
請求項1記載の防汚膜の形成方法。 - 下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物を基材に成膜し、
Rf {COR1 −R2 −Si(OR3 )3 }j …(1)
(但し、式中、Rf はパーフルオロポリエーテル基を示し、R1 は2価の原子又は基を示し、R2 はアルキレン基を示し、R3 はアルキル基を示し、jは1又は2である。)
上記組成物を成膜後、成膜面に水分を供給して上記アルコキシシラン化合物と基材との反応を促進させることにより形成された防汚膜が表面に形成されてなることを特徴とする表示素子用フィルター。 - プラスチックフィルム基材面に最外層が酸化珪素を主成分とする無機膜が形成され、更に該最外層の上に防汚膜が形成されている請求項7記載の表示素子用フィルター。
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