JP2004315975A - フェライト系ステンレス鋼及び接流体部品並びに酸化不動態膜の形成方法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼及び接流体部品並びに酸化不動態膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【目的】 複合電解研磨を行うことなく、最表面にクロム酸化物からなる層を有する酸化不動態膜を形成することが可能な不動態膜形成方法を提供すること。
金属汚染フリー、放出ガス特性、非触媒性及び耐腐食性に優れた超高純度流体供給システム、プロセス装置、接流体部品を提供すること。
【構成】 Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、C:0.01重量%以下、Al:0.01重量%以下であるフェライト系ステンレス鋼の表面を電解研磨し、次いで、不活性ガス中においてベーキングを行うことにより該ステンレス鋼の表面から水分を除去し、次いで、不活性ガスと、500ppb〜2%のH2Oガスとの混合ガス雰囲気中において、300℃〜600℃の温度で熱処理を行うことにより最表面に非晶質のクロム酸化物からなる層を有する酸化不動態膜を形成することを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼及び接流体部品並びに酸化不動態膜の形成方法に係る。より詳細には、高純度フェライト系ステンレス鋼の組成、そのフェライト系ステンレス鋼を用いた流体(ガス、液)との接触部を有する接流体部品、そのフェライト系ステンレス鋼の表面に、全接流体内表面に非晶質のクロム酸化物からなる層を有する酸化不動態膜を形成する方法に関する。
半導体デバイス、磁性体デバイス、超伝導体デバイスの分野においては、ますます高集積化が進み、1μm以下の微細パターンが量産化に突入しつつある。このような微細なパターン形成にとって超高純度のガスの供給は不可欠であり、現在、ガス中の不純物濃度を数ppb以下、さらには数ppt以下に抑制すべく努力がなされている。
その一方、例えば、半導体プロセスガスにはエッチングガスとしてしばしばHBr,HCl等に代表されるハロゲン系の腐食性ガスが使用される。従って、かかるガスとの接触による腐食生成物の発生を防止するためには接ガス部は耐腐食性にも優れていなければならない。
上記要求に答える技術を本発明者はいくつか開発しており、その一つとして、ステンレス鋼母材表面に、電解複合研磨等により微結晶からなる加工歪層を形成し、次いで、不活性ガス中においてベーキングを行うことによりステンレス鋼の表面から水分を除去し、次いで、不活性ガスと、500ppb〜2%のH2Oガスとの混合ガス雰囲気中において、450℃〜600℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする不動態膜形成技術がある(特願平4−266382号)。
この技術によれば、最表面に、非晶質のクロム酸化物からなる層を20nm以上の厚さで有する酸化不動態膜の形成が可能である。そして、かかる不動態膜の形成されたステンレス鋼は、腐食性の高いガスに対しても優れた耐腐食性を示すのみならず、水分、ハイドロカーボンを主とする不純物の吸着が非常に少なく、また、たとえ吸着したとしても低エネルギーで除去可能な表面となっている。さらに、SiH4,B26等の活性な特殊材料ガスに対して触媒効果を示さないきわめて化学的に安定な表面でもある。その結果、かかるステンレス鋼より配管を形成したガス供給システムにおいては、不純物濃度を数pptのレベルに抑制したガスのプロセスチャンバーへの供給を可能たらしめている。
しかるに、上記技術は、主に、オーステナイト系のSUS316Lが一般的に用いられている。
この不動態膜の表面は、上記のような腐食性の高いガスに対しても優れた耐腐食性を示すのみならず、水分、ハイドロカーボンを主とする不純物の吸着が非常に少なく、また、たとえ吸着したとしても低エネルギーで除去可能な表面となっている。さらに、SiH4,B26等の活性な特殊材料ガスに対して触媒効果を示さないきわめて化学的に安定な表面でもある。
ところで、上記した不動態膜の形成技術においては、不動態膜形成のための熱処理前に、微細な加工変質層を、電解複合研磨、バフ研磨あるい流動砥流研磨等の技術を用いて形成することが必須となっている。
しかるに、電解複合研磨を例えば、1/4インチ系の細管の内表面に施そうとすると必ずしも均一に施すことが困難であり、微細な加工変質層が形成されない部分が生じることがある。かかる部分は、不動態膜形成のための熱処理を行っても最表面にクロム酸化物からなる層を有する不動態膜が形成されない。また、電解複合研磨は、電解研磨に比べ施工技術が困難であり、熟練を要するという問題がある。
本発明は、複合電解研磨を行うことなく、最表面にクロム酸化物からなる層を有する酸化不動態膜を形成することが可能な不動態膜形成方法を提供することを目的とする。
本発明は、フエライト系ステンレスの素材を完全に制御した鋼を用い、金属汚染フリー、放出ガス特性、非触媒性及び耐腐食性に優れた超高純度接流体部品を提供することを目的とする。
上記課題は、フェライト系ステンレス鋼の表面を電解研磨し、次いで、不活性ガス中においてベーキングを行うことにより該ステンレス鋼の表面から水分を除去し、次いで、不活性ガスと、500ppb〜2%のH2Oガスとの混合ガス雰囲気中において、300℃〜600℃の温度で熱処理を行うことにより最表面に非晶質のクロム酸化物からなる層を有する酸化不動態膜を形成することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼への酸化不動態膜の形成方法によって達成される。
前記ステンレス鋼は、Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、C:0.01重量%以下、Al:0.01重量%以下であるフェライト系ステンレス鋼であることが好ましい。
また、前記ステンレス鋼は、Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、C:0.01重量%以下、Al:0.01重量%以下、Ni:1.0〜5.0重量%であるフェライト系ステンレス鋼であることが好ましい。
以下に本発明の作用を、本発明をなすに際して得た知見とともに説明する。
本発明者は、電解研磨を施すのみでクロム酸化物よりなる層を最表面に有する不動態膜の形成が可能な技術を鋭意探求した。
まず、上記した技術における加工変質層の役割に基本的見直しを行った。加工変質層の役割は次のように推測されている。すなわち、電解研磨の場合とは異なり、電解複合研磨の場合には、表面が機械的にも研磨されるが、その研磨により切削、塑性変形、溶融、化学変化が生じる。そのため、表面には、ごく微細な結晶からできている化学的に活性ないわゆるベイルビ層、すなわち加工歪層が形成されるとともにその内部に向かって塑性変形層が形成され、このベイルビ層の存在が、クロム酸化物のみからからなる層の形成に関与しているのではないかと考えられる。すなわち、加工変質層に存在する極微な結晶粒界に沿うCrの拡散が促進され、弱酸化性雰囲気では、表面にCr23が形成される。
しかるに、かかる加工変質層の役割は、オーステナイト系ステンレス特有のことではないかとの着想を本発明者は抱いた。
かかる着想に基づき、フェライト系ステンレス鋼につき不動態膜の形成を試みた。
高純度ガス用フェライトステンレスに関する文献としては特開平3−285049号公報が公知である。この文献では、C:0.03%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.001%未満、Ni:2.0%以下、Cr:16〜30%、O:0.05%以下、N:0.03%以下、Al:0.01%以下、Mo:0.1〜3.5%を含有し、残部実質的にFeよりなるフェライト系ステンレス鋼からなり、内面粗さRmaxが0.5μm以下であることを特徴とする高純度ガス用フェライトステンレス鋼管が開示されている。また、Crは『表面にCr23等からなる不動態膜を形成する。』ことが開示され、さらに、『平滑化後に湿式あるいは乾式の酸化処理によって酸化物被膜を生成させてもよい。』ことも開示されている。
しかし、鉄酸化物を含まないクロム酸化物からのみなる層を最表面に有する不動態膜形成するための技術は開示されていない。
本発明者は、上記組成(C:0.015%、Si:0.4%、Mn:0.25%、P:0.015%、S:0.0008%、Ni:0.1%、Cr:18%、O:0.02%、N:0.015%、Al:0.007%、Mo:0.28%、残部Fe)のフェライト系ステンレス鋼からなる管の内面を電解研磨し、ベーキング後、不活性ガスと500ppb〜2%のH2Oガスとの混合ガス雰囲気中において熱処理を施し不動態膜の形成を行った。ついで、その管を溶接しガス供給システムを構成した。溶接放し(as weld)の状態のガス供給システムにHClガスを流したところ内面において腐食の発生が認められた。
そこで、本発明者は、腐食発生の原因がステンレス鋼の組成にあるのではないかと考え、各成分の組成をいろいろ変化させ実験を行ったところ、Mn,S,Cu,C,Alが大きく影響していることを見いだした。
すなわち、これらの成分は溶接時にヒュームとして飛散し、飛散した成分が溶接時のバックシールドガスによりガス下流に運ばれ表面に付着し、それが原因となって耐腐食性を劣化させていることを突き止めた。つまり、これらの成分が表面に付着すると下地金属との間で電池を形成し、電池反応が局所的に起こり、腐食をまねいてしまうのである。
そこで、本発明者は、これら成分をどの程度に抑制すればよいかを各種実験を重ねて調べたところ、Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、C:0.01重量%以下、Al:0.01重量%以下とすれば、溶接放し状態であっても耐食性は著しく向上し、また、不動態膜の緻密性も向上することを知見し本発明をなすにいたった。
なお、フェライト系ステンレス鋼の場合には、電解複合研磨を行わず、電解研磨のみにても最表面にクロム酸化物からなる層を有する酸化不動態膜の形成が可能となるのは、上記成分を制御したことが理由の一つとしてあげられる。さらに、これは結晶構造に由来すると考えられる。すなわち、オーステナイト系が面心立方(fcc)構造であるのに対し、フェライト系は体心立方(bcc)構造であることに由来すると考えられる。より詳細に述べるならば、体心立方構造の場合には、Crは非常に拡散しやすく、その拡散速度は面心立方構造の場合の約1000倍と考えられる。従って、フェライト系ステンレス鋼の場合には、人為的に加工変質層を形成せずともCrは表面に拡散し、最表面にクロム酸化物層を形成するものと考えられる。
本発明によれば、従来存在しなかった。100%クロム酸化物からなる層を15nm以上の厚さで表面に有する酸化不動態膜をステンレス鋼表面上に容易にかつ迅速に形成することができる。かかるステンレス鋼は、金属汚染フリー、放出ガス特性、非触媒性及び耐腐食性に優れており、このステンレス鋼を用いて例えば、配管システムを構成すれば超高純度のガスを供給することができ、また、プロセス装置を構成すれば超高純度のガス雰囲気を実現することができる。
以下に本発明の実施態様例を本発明の構成要件に沿って分説する。
(組成)
本発明では、フェライト系ステンレス鋼を対象とする。特に、Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、C:0.01重量%以下、Al:0.01重量%以下とする。これらの成分を上記組成範囲に制限することは、前述したように、耐食性の向上、緻密な酸化不動態膜の形成にとって不可欠である。
他の必須成分としてはCrがあげられるが、13重量%〜35重量%が好ましい。25重量%〜35重量%がより好ましく、29重量%〜35重量%がさらに好ましい。13重量%未満では、耐食性に優れた酸化不動態膜の形成が難しくなる。25重量%以上とすることにより耐食性により優れ、かつ、ガスがより吸着しがたく、吸着したガスの脱離性がより良好な緻密な酸化不動態膜の形成が可能となる。29重量%以上がさらに好ましいことについては後述する。
なお、35重量%を超えると加工性が劣化するため上限は35重量%とする。
なお、耐食性を高めるためにMoを含有せしめてもよい。
Niはオーステナイト生成元素であるためフェライト系ステンレス鋼では含有を回避する。しかるに、本発明では、フェライト組織が維持される範囲で含有せしめることが好ましい。フェライト組織が維持される量は、実験により求めてもよいが、シェフラーの組織図に沿って計算により求めてもよい。特に、本発明では、他のオーステナイト生成元素であるMn,Cを極力低減してあるため、Crの含有量にもよるが、1〜5重量%(好ましくは、2重量%を超え5重量以下)含有せしめることも可能である。
Niを含有せしめた場合には、より緻密で耐食性の優れた酸化不動態膜の形成が可能となる。すなわち、本発明方法では、熱処理を行う雰囲気ガス中に水素を添加することが望ましい。その理由は、水素は鉄酸化物の還元に寄与する。すなわち、鉄酸化物を還元するが、クロム酸化物は還元しない。そのため、水素を添加した場合には、より緻密なクロム酸化物膜の形成が可能となる。しかるに、Niを含有せしめた場合には、鏡面仕上げした(表面粗さRmax1μm以下)ステンレス鋼表面のNiが水素ガスを水素ラジカル(H*)に分解する触媒として働く。水素となる。このラジカル化した水素は鉄酸化物をよりよく還元するため、クロム酸化物のみからなる層がより形成されやすくなる。
かかる触媒機能をステンレス表面にもたせるためには、1重量%以上含有せしめることが好ましい。ただ、5重量%を超えるとオーステナイト組織になってしまう場合もあるため5重量%以下とすることが好ましい。
(Cr29重量%以上、CとNの合計0.01重量%以下)
Cr29重量%以上とし、かつ、CとNの合計量を0.01重量以下とすることが好ましい。従来、SUSU304に代表されるオーステナイト系ステンレスにおいては、溶接を行った場合、溶接部(溶接ビード部)におけるCr濃度は著しく低下し、12重量%以下になることもある。その結果、溶接部における耐食性の劣化を招き、また、酸化不動態処理を行ってもクロムを主成分とする酸化不動態膜が必ずしも形成されなくなるという問題がある。
母材中のCr含有量を増やすことにより溶接部のCr濃度をある量以上にすることも考えられるが、上述したように加工性の点から含有量には上限があり、その上限である35重量%を含有せしめたとしても必ずしも上記問題は解決されない。また、Ti,Nbを添加してTiCあるいはNbCとして炭化物を析出せしめることによりCr炭化物の析出の防止ひいては溶接部におけるCr濃度の低下の防止を行うことが行われる。しかし、TiCあるいはNbCが析出した鋼を電解研磨すると、TiCあるいはNbCは母相よりも硬度が高いため表面粗度が粗くなるという問題が生じる。また、TiCあるいはNbCを析出せしめると加工性の低下を招くという問題も生じる。
そこで、溶接部あるいは溶接時の熱影響部においても母材部と同様の酸化不動態膜(クロムを主成分とする酸化不動態膜)の形成が可能な手段を探求したところ、C及びNの合計量を0.01重量%以下という極微量に低減せしめればよいことを見いだした。ただそのためにはCrの量を29重量%以上とする必要があることも見いだした。すなわち、Crが29重量%以上とし、かつ、CとNの合計量を0.01重量%以下として始めて溶接部あるいは溶接時の熱影響部においても母材部と同様の酸化不動態膜(クロムを主成分とする酸化不動態膜)の形成が可能となる。なお、CとNの合計量を0.005重量%以下とすることがより好ましい。
(電解研磨)
本発明では電解研磨を行う。ただし、電解複合研磨等により加工変質層の形成を行う必要はない。従って、例えば、1/4インチより細い径を有する管の内面にも最表面がクロム酸化物からなる層を有する不動態膜を確実に形成することが可能となる。
電解研磨による表面粗さは、Rmax1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。
(ベーキング)
本発明では、電解研磨後、不活性ガス中においてベーキングを行うことによりステンレス鋼の表面から水分を除去する。ベーキング温度、時間としては、付着水分の除去が可能な温度であれば特に限定されないが、例えば、少なくとも150℃から200℃あるいはそれより高い400℃〜500℃の温度で行えばよい。ただ、フェライト系ステンレス鋼の場合は、475℃脆性が生じるためこの温度への加熱は避けてベーキングを行うことが好ましい。なお、ベーキングは、水分含有量が数ppm以下(より好ましくは数ppb以下)の不活性ガス(例えば、Arガス、N2ガス)雰囲気中で行うことが好ましい。
(熱処理雰囲気)
次いで、
不活性ガスと、
500ppb〜2%のH2Oガスと、
の混合ガスの弱酸化性雰囲気中において、300℃〜600℃の温度で熱処理を行う。あるいは、
不活性ガスと、
4ppm〜1%の酸素ガスと、
の混合ガスの弱酸化性雰囲気中において、300℃〜600℃の温度で熱処理を行う。
不活性ガスとしては例えば、アルゴンガス、窒素ガス等を用いればよい。
2Oガスは、500ppb〜2%とするが、500ppb未満では、酸化クロムのみからなる層を表面に形成することはできず、表面が鉄酸化物とクロム酸化物との混合組成となってしまう。
一方、2%を越えると鉄酸化物を主成分とし、しかもポーラスな不動態膜が形成されてしまい、耐食性が悪くなる。
なお、不活性ガスと500ppb〜2%のH2Oガスとの混合ガス雰囲気とするためには、一般的には、不活性ガスと500ppb〜2%のH2Oガスとを予め混合した状態で、不動態膜を形成するステンレス鋼表面に供給するが、不活性ガスと250ppb〜1%の酸素ガスと500ppb〜2%の水素ガスとの混合ガスを、不動態膜を形成するステンレス鋼表面に供給してもよい。後者の場合、ステンレス鋼中のNiが触媒となり、水素ラジカルを発生するとともにこの水素ラジカルが酸素と反応してH2Oガスが生成し、所望の弱酸化性雰囲気が得られる ことになる。
(水素ガスの添加)
上記雰囲気ガス中に水素を10%以下添加することが好ましい。水素ガス添加の効果は前述した通りである。すなわち、鉄酸化物を還元する作用を担っている。特に、ラジカル化した水素はその作用が顕著である。
ただ、10%を超えると、不動態膜の緻密さが減少し始めるため10%以下が好ましい。また、0.1ppm以上が好ましい。0.1ppm未満では上記作用を十分発揮し得ないことがある。
(温度)
熱処理温度は、300℃〜600℃である。300℃未満では、熱処理時間を長くしてもクロム酸化物のみからなる層の厚さを厚く形成することはできない。逆に600℃を越えると、鉄酸化物を偏析した状態で含む層が表面に形成されるとともに、不動態膜全体としても不均一な組成となり、耐食性の悪い不動態膜が形成されてしまう。これは、C量を減少させたとはいえ、600℃を超えると母材においてクロムカーバイト(例えば、Cr236等)が析出し、この析出物のためにCrがとられてしまうため不動態膜の組成に偏りが生じてしまうためと考えられる。また、Cr236が粒界に析出すると粒界が腐食されやすくなり好ましいくない。
(時間)
なお、熱処理時間は、温度にも依存するが、0.5時間以上が好ましい。熱処理時間を増加させるにつれクロム酸化物層の厚さは増加する。
(用途)
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、例えば、配管、プロセス装置、接ガス部品(例えば、弁のダイヤフラム)等の構成材料に好適に用いられる。
また、ガスの供給系用材料としてではなく、薬品、超純水等の液の供給系用材料としても好適に用いられる。本発明に係るステンレス材料は、薬品等への金属原子の溶出が皆無に近く、そのため薬品等を汚染することがないためである。
なお、本発明に係るステンレス鋼は、特に、溶接用材料に用いた場合にその顕著な特性を発揮する。すなわち、配管を例にとると、配管同士を溶接した場合、溶接放し(as weld)の状態であっても超高純度のガスを供給することができる。それは、溶接を行っても腐食の原因となるMn等のヒュームの発生は皆無に近いためである。
さらに、オーステナイト系ステンレスに比較すると溶接部近傍において溶接前後でCr組成に変化がないという特徴と有している。図4、図5に基づいてこの点を説明する。図4は管を7.5rpmで1回転させ、突き合わせ溶接を行った場合であり、図5は管を30rpmで2回転させて突き合わせ溶接を行った場合である。両図とも溶接後における管内部の最表面のCr濃度を溶接部を起点としてESCAにより測定したものである。いずれの場合にあってもオーステナイト系ステンレス鋼の場合は、Crの組成が溶接部近傍で激減していることがわかる。それに対し、本願発明に係るフェライト系ステンレス鋼の場合にはCrの組成の低下は認められない。従って、本願発明に係るフェライト系ステンレス鋼は溶接後であっても優れた耐食性を維持し得るものである。
なお、本発明におけるプロセス装置とは、半導体製造装置、超電導薄膜製造装置、磁性薄膜製造装置、金属薄膜製造装置、誘電体薄膜製造装置等であり、例えばスパッタ、真空蒸着,CVD、PCVD、MOCVD、MBE、ドライエッチング、イオン注入、拡散・酸化炉等の成膜装置及び処理装置、また、例えばオージェ電子分光、XPS、SIMS、RHEED,TRXRF等の評価装置である。また、超純水製造供給装置及びその供給配管系も本発明のプロセス装置に含まれる。
また、接流体部品としては、例えば、バルブ、マスフローコントローラ、継ぎ手、フィルター、レギュレータ等を構成する本体あるいは構成部品があげられる。
(好適な溶接方法)
溶接方法としては、溶接部への入熱量を600ジュール/cm以下とする溶接方法が好ましい。溶接速度を20cm/min以上とすることが好ましく、また、溶接部の表面に対し垂直成分を有する磁場を印加しながら溶接することが好ましい。また、その磁場は50ガウス以上とすることが好ましい。溶接ビード幅を1mm以下とすることが好ましい。また、前述した特願平4−303681号(平成4年11月13日出願)に開示されている溶接方法を適宜本発明で適用できる。
以下に本発明の実施例を説明する。なお、当然のことであるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例l)
本実施例では、Cr含有量29.1重量%のフェライト系ステンレス鋼を電解研磨処理した。表面粗度は約0.5μmとした。
本実施例で用いたステンレス鋼の組成を表1に示す。
Figure 2004315975
(重量%)
電解研磨後、炉内に上記のステンレス鋼を装入し、不純物濃度が数ppb以下のArガスを炉内に流しながら室温から550℃まで1時間かけて昇温し、同温度で1時間ベーキングを行い表面から付着水分を除去した。上記ベーキング終了後、水素濃度10%、水分濃度100ppmの拠理ガスに切り替え3時間の熱処理を行った。
図1に処理前の、また図2に処理後のESCA解析図をそれぞれ示す。
図1と図2から明らかなように、前記条件で形成されたフェライト系の不動態膜の最表面は100%Cr23が探さ方向に対して約15nmの厚さに形成されている。すなわち、上記ステンレス鋼に電解研磨処理を施した表面に100%Cr23層を最表面に有する不動態膜を形成できることが分かった。
(実施例2)
[水分の脱ガス評価]
フェライト系材料の電解研磨処理表面にCr23処理を施した配管の水分脱離特性を評価した。
評価方法は、外径1/4インチ、長さ2mの配管を用意し、配管を24時間大気に晒して空気中に含まれる水分を配管内表面に充分に吸着させた後、超高純度アルゴンガスを上流より供給して、配管内表面より脱離する水分量を計測した。計測装置は大気圧イオン化質量分析計(APIMS)である。
結果を図3に示す。
図3中の点線は従来のオーステナイト系ステンレスに電解研磨を施したもの、実線はフェライト系ステンレスに電解研磨処理後Cr23処理したものである。ここで評価したCr23不動態処理条件は実施例1に示した条件に準ずる。
図3に示す結果より、フエライト系ステンレス鋼の電解研磨処理表面にCr23処理を施した表面が水分脱離特性に非常に優れていることが言える。要するに、実効表面積が非常に小さいCr23不動態処理表面が水分脱離特性に対して優れた効果を発揮する事がわかる。
また、容器内に試料とともに1000ppmの水分を含む塩化水素ガスを導入し、50℃で14日放置することにより耐食性試験を行ったところ、15nmの厚さでクロム酸化物の層を最表面に有する不動態膜が形成された本実施例のステンレス鋼は全く腐食されていなかった。
(実施例3)
表2に示す化学組成をもつ高純度フェライト系ステンレス鋼を溶接サンプルとして用いた。電解研磨後、溶接を7.5rpm(0.25cm/sec)の速度で1周溶接を行った。
Figure 2004315975
(重量%)
ビード幅は2mmとした。溶接時に使用したバックシールドガス及びアークシールドガスには高純度(水分及び酸素の含有量数ppb以下)の水素とアルゴンとの混合ガスを用いた。
溶接後、ビード部を含むサンプルチューブを長手方向に切断し、XPS(X線光電子分布)を用いて最表面の金属の組成を評価した。
その結果を図6に示す。バックシールドガスの流れに対してビード部上流/下流5mmのポイントで、Crの濃度は増加している。これまでの実験結果から、溶接速度が速くなるに従いCr濃度が増加するポイントはよりビード部に近づく傾向にあることがわかった。
(実施例4)
表2に示す化学組成をもつ高純度フェライト系ステンレス鋼に予め酸化クロムを主成分とする酸化不動態膜を形成し、この材料を用いて溶接を行った。溶接は、30rpm(1cm/sec)の速度で1周の条件で行った。ビード幅は2mmとした。溶接時に使用したバックシールドガス及びアークシールドガスには高純度(水分及び酸素の含有量数ppb以下)の水素とアルゴンとの混合ガスを用いた。
溶接後、通電加熱方式で溶接部近傍のみを550℃に加熱し、まず高純度Arガスのみで1時間ベーキングを施し、内表面に吸着している水分及びハイドロカーボン等の不純物を除去した。次いで、上流から10%H2に100ppmH2Oを含む高純度Arガスを3時間流した。上記処理後、ビード部を含むサンプルチューブを長手方向に切断し、XPS(X線光電子分布)を用いて最表面の金属の組成を評価した。
その結果を図7に示す。ビード部を含む溶接部近傍の最表面は100%の酸化クロムで覆われていることがわかる。
実施例1における酸化不動態膜形成前のXPS解析図である。 実施例1における酸化不動態膜形成後のXPS解析図である。 実施例2におけるAPIMSの分析結果を示すグラフである。 溶接後におけるCr組成の変化を示すESCAによる測定結果を示すグラフである(7.5rpm×1回転)。 溶接後におけるCr組成の変化を示すESCAによる測定結果を示すグラフである(30rpm×2回転)。 実施例3における酸化不動態膜形成後のXPS解析図である。 実施例4における酸化不動態膜形成後のXPS解析図である。

Claims (5)

  1. Cr:29重量%〜35重量%、C及びNの合計が0.01重量%以下である高純度フェライト系ステンレス鋼。
  2. 前記ステンレス鋼は、Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、Al:0.01重量%以下であるフェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載フェライト系ステンレス鋼。
  3. 前記ステンレス鋼は、Mn:0.03重量%以下、S:0.001重量%以下、Cu:0.05重量%以下、Al:0.01重量%以下、Ni:1.0〜5.0重量%であるフェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. 電解研磨した、Cr:25重量%〜35重量%、C及びNの合計が0.01重量%以下である高純度フェライト系ステンレス鋼の溶接部近傍における最表面のクロム濃度が、熱影響を受けない母材の最表面のクロム濃度より高い溶接部を備えていることを特徴とする接流体供給部品。
  5. Cr:25重量%〜35重量%、C及びNの合計が0.01重量%以下である高純度フェライト系ステンレス鋼を電解研磨した後、クロムを主成分とする酸化クロム不動態膜の形成処理を施し、次いで、溶接を行い、溶接後、溶接部を局所的に加熱しながら、酸化不動態膜の形成処理のための処理ガスを流すことにより全接流体内表面にクロムを主成分とする酸化クロム不動態膜を形成することを特徴とする酸化不動態膜の形成方法。
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