JP2004315765A - 印刷インキ - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキに関し、より詳しくは、印刷インキ作製時に種々の溶剤に安定に溶解するとともに、プラスチック成型品、特にポリカーボネート樹脂を用いた成型品への印刷において、その成型の際の加熱に対する耐熱性や成型品への密着強度、可とう性など優れた機械的性質を有し、良好な印刷特性を有する印刷インキに関する。
【0002】
【従来の技術】
スクリーン印刷は、いろいろな種類と材質の被印刷物に印刷することができ、また、さまざまな形状とサイズの被印刷物に印刷することができるという長所を有しているため、広範な用途に広く利用されている。従って、スクリーン印刷等に使用する印刷インキは、他の印刷方式では印刷が困難な被印刷物への印刷を中心に、多くの産業製品利用されている。
また、近年、透明性や耐熱性、耐衝撃性などに優れるポリカーボネート樹脂が、種々の光学用部品や電気用品、自動車部品などのプラスチック成型品に広範に使用され、その使用量は年々増加している。これらのポリカーボネート樹脂を代表としたプラスチックの成型品の表面への印刷にも、スクリーン印刷などが用いられているが、このような用途に使用する印刷インキには、以下のような課題がある。
【0003】
(イ)印刷インキにポリアクリレート樹脂などをバインダー樹脂として用いた場合、耐熱性が劣るため、印刷面がにじみやすい。
(ロ)ポリアクリレート樹脂などをバインダー樹脂にしたインキは、ポリカーボネート樹脂などの成型品の材料と密着性が悪く、印刷面が剥離しやすい。
(ハ)エポキシ樹脂等を使用した二液硬化タイプの印刷用インキは、作業性が悪いあるいはリサイクルなどの点で課題がある。
(ニ)印刷インキのバインダー樹脂として成型品と同じポリカーボネート樹脂を用いる事も考えられるが、一般的に使用されているビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂(以下、「BisA−PC」という。)はハロゲン系の溶剤にしか溶解せず、さらに溶液で保存中に白化やゲル化が生じ、インキとしての使用は困難である。
(ホ)BisA―PC以外のポリカーボネート樹脂として、ガラス転移温度が155〜180℃あるいはそれ以上の耐熱性ポリカーボネート樹脂の利用が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、これらの樹脂を印刷インキとして使用して、一般的なポリカーボネート樹脂であるBisA−PCの基材に印刷した場合、耐熱性以外の点で問題が生じる可能性がある。例えば、これらの樹脂は逆に基材の樹脂(ガラス転移温度145℃であるBisA−PC)よりも耐熱性が高過ぎるため成型温度を高くしなければならず、成型加工が難しくなる。あるいは、インキ面の機械的特性が基材のBisA−PCと同等の性能が求められ場合に、例えば、インキ層の伸びが低い場合は、基材を加工する際にインキ層が追随できずに裂けてしまうなどの問題が生じる。特に先の特許文献1及び特許文献2に記載されているような、シクロヘキサン誘導体のポリカーボネート樹脂を使用した印刷インキは、印刷時の内部応力が大きかったり、伸長性がBisA−PCより劣るため、インキ層の可とう性や追随性に劣るという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第2,997,636号公報
【特許文献2】
特開2001−19885号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチック成型品、特にポリカーボネート成型品への印刷時に認められる上記の問題点を解決し、良好かつ安定なインキ層の印刷面を形成するような印刷インキを提供することを目的とする。また、成型品の成型加工時の耐熱性や機械的特性に優れ、成型加工を経ても良好な印刷面を保持することができる印刷インキを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する共重合ポリカーボネート樹脂をバインダーとして使用した印刷インキが、優れた溶液安定性、機械的性質、密着性を有し、特にプラスチック成型品への印刷に適した、実用上良好な印刷インキを提供することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(イ)バインダー樹脂として、次の一般式(1)
【0008】
【化6】
【0009】
で表される繰り返し単位、及び、次の一般式(2)
【0010】
【化7】
【0011】
[式中、Arは、二価のビスフェノール化合物残基、または二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物残基を示す]
で表される繰り返し単位からなる、共重合ポリカーボネート樹脂を含有する印刷インキ。
(ロ)前記共重合ポリカーボネート樹脂が、次の一般式(3)
【0012】
【化8】
【0013】
[式中、R1はアルキル基、アルコキシ基、またはアリール基、アリール置換アルケニル基、縮合多環式炭化水素基から選ばれる一価の置換基を示し、y/(x+y)=5〜70(質量%)であり、mは0〜4の整数を示す。
ここで、前記アルキル基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アルコキシ基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アリール基としては炭素数6〜40のもの、さらには6〜20のものが好ましく、前記アリール置換アルケニル基としては炭素数8〜50のもの、さらには8〜30のものが好ましく、前記縮合多環式炭化水素基としては核炭素数10〜50のもの、さらには10〜30のものが好ましい。また、y/(x+y)の範囲は5〜50、さらには5〜35(質量%)であることが好ましい。]
で表される共重合体である、前記(イ)記載の印刷インキ。
(ハ)前記共重合ポリカーボネート樹脂が、次の一般式(4)
【0014】
【化9】
【0015】
[式中、R2、R3は各々独立にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール置換アルケニル基、縮合多環式炭化水素基から選ばれる一価の置換基を示し、z/(x+z)=5〜70(質量%)であり、lは1〜10の整数、nは1〜50の整数を示す。
ここで、前記アルキル基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アルコキシ基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アリール基としては炭素数6〜40のもの、さらには6〜20のものが好ましく、前記アリール置換アルケニル基としては炭素数8〜50のもの、さらには8〜30のものが好ましく、前記縮合多環式炭化水素基としては核炭素数10〜50のもの、さらには10〜30のものが好ましい。また、z/(x+z)の範囲は5〜50、さらには5〜35(質量%)であることが好ましい。前記lは1〜5、さらには1〜3であることが好ましい。前記nは1〜30、さらには1〜20であることが好ましい。]
で表される共重合体である、前記(イ)記載の印刷インキ。
(ニ)前記共重合ポリカーボネート樹脂が、次の一般式(5)
【0016】
【化10】
【0017】
[式中、R1、R2、R3、l、m及びnは、一般式(3)又は(4)におけると同一であり、(y+z)/(x+y+z)=5〜70(質量%)である。
ここで、(y+z)/(x+y+z)の範囲は5〜50、さらには5〜35(質量%)であることが好ましい。]
で表される共重合体である、前記(イ)記載の印刷インキ。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の印刷インキに使用する共重合ポリカーボネート樹脂は、前記一般式(1)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから誘導される繰り返し単位及び、前式(2)で表される構造の繰り返し単位を含有する共重合体であり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと特定のビスフェノール型化合物及び/又は二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物とを、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物と反応させることによって製造することができる、ポリカーボネート樹脂である。
【0019】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、次の一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから誘導されるものである。
【0020】
【化11】
【0021】
また、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の典型例は、次の一般式(7)で表される特定のビスフェノール化合物、及び一般式(8)で表わされる二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物から誘導されるものである。
【0022】
【化12】
【0023】
【化13】
【0024】
[式中、R1、R2、R3、l、m及びnは、それぞれ一般式(3)及び一般式(4)の場合と同一である]
【0025】
このような前記一般式(7)で表される特定のビスフェノール化合物としては、例えば、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)などが挙げられる。また、前記一般式(8)で表される二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンの両末端をフェノールで変性したジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0026】
本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂において、いまひとつ重要な点は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.1dl/g以上であることを要する点である。この還元粘度[ηsp/C]が、0.1dl/g未満では、インキに使用した場合にポリカーボネート樹脂としての本来の機械的強度や耐熱性が十分に得られない。好ましい還元粘度[ηsp/C]の範囲は、0.15〜4.0dl/g、特に好ましくは0.2〜3.0dl/gである。
以上のように特定の構造及び特定の還元粘度[ηsp/C]を有する共重合ポリカーボネート樹脂は、優れた耐久性や溶剤への溶解性を有するポリカーボネートであり、種々の用途に利用することができるが、本発明の印刷用インキのバインダー樹脂として有利に利用することができる。
【0027】
なお、本発明の印刷インキにおいては、この共重合ポリカーボネート樹脂には、本発明の目的に支障のない範囲で、前記した繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を有しているものでもよく、また、他のポリマーや添加物を適宜添加配合して使用することもできる。例えば、前記した繰り返し単位以外の他の繰り返し単位として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)、2, 2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2, 2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1, 1−ジフェニルメタン、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1, 1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4, 4’−ビフェノール、2, 2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4, 4’−ビス(3, 3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2, 2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニン)フルオレンなどが挙げられ、これらは前記一般式(7)及び/又は一般式(8)で表わされる化合物と共に第三成分として一般式(6)の化合物と共重合してもよい。
【0028】
本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂の製造は、前記一般式(6)で表わされる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと、前記一般式(7)及び/又は一般式(8)で表わされる特定のビスフェノール化合物及び/又は二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物とを、炭酸エステル形成性化合物と反応させることにより行われる。この場合、使用する一般式(6)〜(8)の化合物の割合を適宜選択することにより、得られる共重合ポリカーボネート樹脂の共重合の割合を随意に調節することができる。
【0029】
ここで使用する炭酸エステル形成性化合物とは、一般式(6)乃至一般式(8)の化合物と反応して、ポリカーボネート共重合体中のカーボネート結合を形成するためのカルボニル供給源となる化合物であり、このような炭酸エステル形成性化合物としては、例えば、ホスゲン等のジハロゲン化カルボニル又はクロロホルメート等のハロホルメート類が挙げられる。
【0030】
本発明に使用するポリカーボネート共重合体を製造するための反応手法、例えば反応雰囲気、温度・圧力等の条件、反応方式及び操作法などは特に制限はなく、通常は、公知のポリカーボネートの製造において使用される手法を適宜充当すればよい。
例えば、炭酸エステル形成性化合物として、ホスゲン等のジハロゲン化カルボニル又はクロロホルメート等のハロホルメート類を用いる場合、この反応は、適当な溶媒中で、例えば、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩等の塩基性アルカリ金属化合物、あるいはピリジン等の有機塩基等のような酸受容体の存在下で行うことができる。
アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩としては、各種のものが使用可能であるが、経済的な面から、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が好適に使用することができる。これらは、通常は水溶液として好適に使用される。
【0031】
上記の炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、ホスゲン等のガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
上記の酸受容体の使用割合も、同様に反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、使用するビスフェノール化合物の合計モル数(通常、1モルは当量に相当)に対して2当量もしくはこれより若干過剰量の酸受容体を用いることが好ましい。
【0032】
上記の溶媒としては、公知のポリカーボネート製造の際に使用されるものなど各種の溶媒を1種類の単独であるいは2種以上の混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが好適に使用することができる。
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン、又は第四級アンモニウム塩などの触媒を使用することが好ましい。
【0033】
また、重合度を調整するためには分子量調節剤を添加して反応を行うことができる。このような分子量調節剤としては、p−tert−ブチルフェノールやクミルフェノール、フェニルフェノール等の末端停止剤や、フロログリシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸などの分岐剤を添加して反応を行うことができる。また、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0034】
本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂の製造においては、反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲で行われる。また、反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度の加圧下で行うことが好ましい。反応時間は、通常0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜2時間程度である。反応方式としては、連続法、半連続法、回分法等のいずれの方法も採用可能である。
【0035】
なお、本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂において、得られるポリマーの還元粘度[ηsp/C]を上記の範囲にするには、例えば、上記の反応条件を適宜選択したり、前述の末端停止剤や分岐剤のような分子量調節剤の使用量を調節するなど各種の方法によって目的の還元粘度のものとすることができる。また、場合により、得られたポリマーに適宜、混合・分画等の物理的処理及び/又はポリマー反応・架橋処理・部分分解処理などの化学的処理を施して所定の還元粘度[ηsp/C]のポリカーボネート樹脂として取得することもできる。
【0036】
上述の重縮合反応によって得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離・精製法などの各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート共重合体として回収することができる。
【0037】
次に、本発明の印刷インキは、以上のようなポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として含有し、更に、顔料、溶剤、可塑剤、その他の樹脂、及び必要に応じてその他の添加剤を含有する印刷インキである。本発明の印刷インキにおいて、上記ポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いる場合、このポリカーボネート樹脂を1種のみ用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよいし、また、所望に応じて本発明の目的の達成を阻害しない範囲で、他のポリカーボネート樹脂などの樹脂成分と併用してもよい。
【0038】
本発明の印刷インキに用いられるインキ用顔料としては、一般に印刷インキに使用されるものが制限されることなく使用することができるが、具体的には、例えば次のものが挙げられる。即ち、ジスアゾイエロー系の黄色顔料;ジニトロアニリンオレンジやジスアゾオレンジPMPなどのダイダイ色顔料;ブリリアントカーミン6B、レーキレッドCの2つのアゾレーキ系やニトロセルロース系、ポリアミド系、アゾ系などの赤色顔料;メチルバイオレットレーキ、ローダミンBレーキなどのレーキ顔料;ジオキサジンバイオレットなどの紫色顔料;さらにはカーボンブラック、酸化鉄、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどの顔料;フィラーなどが挙げられる。
【0039】
本発明の印刷インキに用いられるインキに添加する樹脂成分としては、本発明のポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂をブレンドしてもよく、例えば以下のような樹脂が挙げられる。即ち、ロジン、セラック、ギルソナイトなどの天然樹脂やそれら天然樹脂の誘導体;フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニル、ブチラール樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロースなどの合成樹脂がある。
【0040】
また、本発明の印刷インキに用いられる溶剤としては以下の溶剤が挙げられる。即ち、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ゴム揮発油などの脂肪族炭化水素溶剤;ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテンなどの芳香族炭化水素溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール(トリデカノール)などのアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)、イソホロンなどのケトン系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセルソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)などのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)などのグリコールエーテルエステル系溶剤等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、その沸点が120℃以上である、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテン、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが溶剤として好ましい。
【0042】
また、本発明の印刷インキに用いられる可塑剤としては、例えばアジピン酸、セバシン酸、クエン酸、アゼライン酸、水添ロジンなどのエステルや、塩化パラフィン、ひまし油、エポキシ系およびエステル系可塑剤などが用いられている。その他の添加剤としては、ポリジメチルシロキサンなどの消泡剤を添加することができる。
【0043】
つぎに、本発明の印刷インキを使用する場合の印刷方式としては、凸版印刷、平板印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの各種印刷方式で適用できるが、特にスクリーン印刷に好適である。印刷対象物としては、各種のプラスチックのフィルム、その他の成型品、特にポリカーボネート樹脂やポリカーボネートと他の樹脂のアロイなどの成型品への印刷に好適である。
【0044】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
実施例1:
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 89gと4.4’(1,3−フェニレンビス)(1−メチルエチリデン)ビスフェノール13gとを2Nの水酸化カリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン350mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で30分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜5であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を700mlとした後、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール25gを2N水酸化カリウム溶液200mlに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tertーブチルフェノール2.0gを加えた。次いで、この混合液を激しく撹拌しながら、触媒として7%トリエチルアミン水溶液を2ml加え、25℃において撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットル、水1リットルで2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投入し、再沈精製した。
このようにして得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.5dl/gであった。1H−NMRスペクトル分析より下記の繰り返し単位からなることが確認された。また、このポリマーのガラス転移温度をDSCにて測定した。この値を第1表に示す。
【0046】
【化14】
【0047】
次に、上記で得られたポリマー22g及び顔料としてカーボンブラック6.5gを、溶剤としてシクロヘキサノン70ml中に添加し、十分に分散して印刷インキ組成物を調製した。この印刷インキ組成物を用いて市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約3μmの印刷を施し100℃で2時間乾燥した。その印刷したシートを120℃で深さ5mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0048】
実施例2:
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 102gを2Nの水酸化カリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン350mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で30分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜5であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を700mlとした後、末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン(フェノール当量1.600)110gと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン10g、加え、さらに2N水酸化カリウム溶液200ml溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール2.0gを加えた。次いで、この混合液を激しく撹拌しながら、触媒として7 %トリエチルアミン水溶液を2ml加え、25℃において撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットル、水1リットルで2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投入し、再沈精製した。
このようにして得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.5dl/gであった。1H−NMRスペクトル分析より下記の繰り返し単位からなることが確認された。また、このポリマーのガラス転移温度をDSCにて測定したが、明瞭なピークは得られずガラス転移点を測定できなかった。
【0049】
【化15】
【0050】
次に、ここで得られたポリマー22g及び顔料としてカーボンブラック6.5gを、溶剤としてシクロヘキサノン70ml中に添加し、十分に分散して印刷インキ組成物を調製した。この印刷インキ組成物を用いて市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約3μmの印刷を施し100℃で2時間乾燥した。その印刷したシートを120℃で深さ5mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0051】
実施例3:
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 102gを2Nの水酸化カリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン350mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で30分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜4であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を600mlとした後、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール15g及び末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン57gを2N水酸化カリウム溶液200mlに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール2.0gを加えた。次いで、この混合液を激しく撹拌しながら、触媒として7%トリエチルアミン水溶液を2ml加え、25℃において撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットル、水1リットルで2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投入し、再沈精製した。
このようにして得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.6dl/gであった。1H−NMRスペクトル分析より下記の繰り返し単位からなることが確認された。
また、このポリマーのガラス転移温度を測定したが、明瞭なピークは得られずガラス転移点を測定できなかった。
【0052】
【化16】
【0053】
次にここで得られたポリマー22g及び顔料としてアルミナ粒子2.2gを、溶剤としてトリメチルベンゼン70ml中に添加し、十分に分散して印刷インキ組成物を調製した。この印刷インキ組成物を用いて市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約5μmの印刷を施し100℃で2時間乾燥した。その印刷したシートを120℃で深さ5mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0054】
実施例4:
実施例2の末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン(フェノール当量1,600)110gと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン10gの代わりに、末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン(フェノール当量1,600)55gと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン17gを用いた以外は、実施例2と同様な合成を行い、得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする0.5g/d1の溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.6d1/gであった。1H−NMRスペクトル分析により下記の繰り返し単位からなることが確認された。
また、このポリマーのガラス転移温度を測定したが、明瞭なピークは得られずガラス転移点を測定できなかった。
【0055】
【化17】
【0056】
次に得られたポリマー22g及び顔料としてアルミナ粒子2.2gを溶剤としてトリメチルベンゼン70mlに分散したインキを調整した。その溶液を市販のBisA−PC(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に印刷した(膜厚約10μm)。その印刷したシートを115℃で絞り加工(深さ10mm)し、印刷面の状態を目視にて確認した。その評価結果を第1表に示す。
【0057】
比較例1:
実施例1で得られたポリカーボネート樹脂の代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを原料として得た下記の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(還元粘度[ηsp/C]が0.5dl/gのもの)をバインダー樹脂として使用した他は、実施例1と同様にして印刷用インキを調製したが、インキ成分の混合に際してこのポリカーボネート樹脂が溶剤であるシクロヘキサノンにほとんど溶解しなかった。一部溶解したものもあったが、これらもすぐに結晶化してしまい、印刷用インキを作成することができなかった。
【0058】
【化18】
【0059】
比較例2:
実施例1のポリカーボネート樹脂の代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを原料とする下記構造式ポリカーボネート樹脂(還元粘度;0.5dl/g)をバインダー樹脂として使用し、実施例1と同様にして印刷インキを調製した。この印刷インキを使用して、実施例1と同様にして市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約10μmの印刷を施し、その印刷したシートを120℃で深さ10mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0060】
【化19】
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂を印刷インキのバインダー樹脂として使用するので、印刷インキの作成時に種々の溶剤を用いても安定なインキ溶液を提供することができる。そのため特にポリカーボネート樹脂との親和性も強く、ポリカーボネート樹脂成型品にスクリーン印刷を施すような場合に、印刷されたインキ層が優れた密着性や伸長性、可とう性などの機械的特性を有するため、にじみや剥がれのない良好な印刷を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキに関し、より詳しくは、印刷インキ作製時に種々の溶剤に安定に溶解するとともに、プラスチック成型品、特にポリカーボネート樹脂を用いた成型品への印刷において、その成型の際の加熱に対する耐熱性や成型品への密着強度、可とう性など優れた機械的性質を有し、良好な印刷特性を有する印刷インキに関する。
【0002】
【従来の技術】
スクリーン印刷は、いろいろな種類と材質の被印刷物に印刷することができ、また、さまざまな形状とサイズの被印刷物に印刷することができるという長所を有しているため、広範な用途に広く利用されている。従って、スクリーン印刷等に使用する印刷インキは、他の印刷方式では印刷が困難な被印刷物への印刷を中心に、多くの産業製品利用されている。
また、近年、透明性や耐熱性、耐衝撃性などに優れるポリカーボネート樹脂が、種々の光学用部品や電気用品、自動車部品などのプラスチック成型品に広範に使用され、その使用量は年々増加している。これらのポリカーボネート樹脂を代表としたプラスチックの成型品の表面への印刷にも、スクリーン印刷などが用いられているが、このような用途に使用する印刷インキには、以下のような課題がある。
【0003】
(イ)印刷インキにポリアクリレート樹脂などをバインダー樹脂として用いた場合、耐熱性が劣るため、印刷面がにじみやすい。
(ロ)ポリアクリレート樹脂などをバインダー樹脂にしたインキは、ポリカーボネート樹脂などの成型品の材料と密着性が悪く、印刷面が剥離しやすい。
(ハ)エポキシ樹脂等を使用した二液硬化タイプの印刷用インキは、作業性が悪いあるいはリサイクルなどの点で課題がある。
(ニ)印刷インキのバインダー樹脂として成型品と同じポリカーボネート樹脂を用いる事も考えられるが、一般的に使用されているビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂(以下、「BisA−PC」という。)はハロゲン系の溶剤にしか溶解せず、さらに溶液で保存中に白化やゲル化が生じ、インキとしての使用は困難である。
(ホ)BisA―PC以外のポリカーボネート樹脂として、ガラス転移温度が155〜180℃あるいはそれ以上の耐熱性ポリカーボネート樹脂の利用が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、これらの樹脂を印刷インキとして使用して、一般的なポリカーボネート樹脂であるBisA−PCの基材に印刷した場合、耐熱性以外の点で問題が生じる可能性がある。例えば、これらの樹脂は逆に基材の樹脂(ガラス転移温度145℃であるBisA−PC)よりも耐熱性が高過ぎるため成型温度を高くしなければならず、成型加工が難しくなる。あるいは、インキ面の機械的特性が基材のBisA−PCと同等の性能が求められ場合に、例えば、インキ層の伸びが低い場合は、基材を加工する際にインキ層が追随できずに裂けてしまうなどの問題が生じる。特に先の特許文献1及び特許文献2に記載されているような、シクロヘキサン誘導体のポリカーボネート樹脂を使用した印刷インキは、印刷時の内部応力が大きかったり、伸長性がBisA−PCより劣るため、インキ層の可とう性や追随性に劣るという問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第2,997,636号公報
【特許文献2】
特開2001−19885号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチック成型品、特にポリカーボネート成型品への印刷時に認められる上記の問題点を解決し、良好かつ安定なインキ層の印刷面を形成するような印刷インキを提供することを目的とする。また、成型品の成型加工時の耐熱性や機械的特性に優れ、成型加工を経ても良好な印刷面を保持することができる印刷インキを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する共重合ポリカーボネート樹脂をバインダーとして使用した印刷インキが、優れた溶液安定性、機械的性質、密着性を有し、特にプラスチック成型品への印刷に適した、実用上良好な印刷インキを提供することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(イ)バインダー樹脂として、次の一般式(1)
【0008】
【化6】
【0009】
で表される繰り返し単位、及び、次の一般式(2)
【0010】
【化7】
【0011】
[式中、Arは、二価のビスフェノール化合物残基、または二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物残基を示す]
で表される繰り返し単位からなる、共重合ポリカーボネート樹脂を含有する印刷インキ。
(ロ)前記共重合ポリカーボネート樹脂が、次の一般式(3)
【0012】
【化8】
【0013】
[式中、R1はアルキル基、アルコキシ基、またはアリール基、アリール置換アルケニル基、縮合多環式炭化水素基から選ばれる一価の置換基を示し、y/(x+y)=5〜70(質量%)であり、mは0〜4の整数を示す。
ここで、前記アルキル基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アルコキシ基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アリール基としては炭素数6〜40のもの、さらには6〜20のものが好ましく、前記アリール置換アルケニル基としては炭素数8〜50のもの、さらには8〜30のものが好ましく、前記縮合多環式炭化水素基としては核炭素数10〜50のもの、さらには10〜30のものが好ましい。また、y/(x+y)の範囲は5〜50、さらには5〜35(質量%)であることが好ましい。]
で表される共重合体である、前記(イ)記載の印刷インキ。
(ハ)前記共重合ポリカーボネート樹脂が、次の一般式(4)
【0014】
【化9】
【0015】
[式中、R2、R3は各々独立にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリール置換アルケニル基、縮合多環式炭化水素基から選ばれる一価の置換基を示し、z/(x+z)=5〜70(質量%)であり、lは1〜10の整数、nは1〜50の整数を示す。
ここで、前記アルキル基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アルコキシ基としては炭素数1〜20のもの、さらには1〜10のものが好ましく、前記アリール基としては炭素数6〜40のもの、さらには6〜20のものが好ましく、前記アリール置換アルケニル基としては炭素数8〜50のもの、さらには8〜30のものが好ましく、前記縮合多環式炭化水素基としては核炭素数10〜50のもの、さらには10〜30のものが好ましい。また、z/(x+z)の範囲は5〜50、さらには5〜35(質量%)であることが好ましい。前記lは1〜5、さらには1〜3であることが好ましい。前記nは1〜30、さらには1〜20であることが好ましい。]
で表される共重合体である、前記(イ)記載の印刷インキ。
(ニ)前記共重合ポリカーボネート樹脂が、次の一般式(5)
【0016】
【化10】
【0017】
[式中、R1、R2、R3、l、m及びnは、一般式(3)又は(4)におけると同一であり、(y+z)/(x+y+z)=5〜70(質量%)である。
ここで、(y+z)/(x+y+z)の範囲は5〜50、さらには5〜35(質量%)であることが好ましい。]
で表される共重合体である、前記(イ)記載の印刷インキ。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の印刷インキに使用する共重合ポリカーボネート樹脂は、前記一般式(1)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから誘導される繰り返し単位及び、前式(2)で表される構造の繰り返し単位を含有する共重合体であり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと特定のビスフェノール型化合物及び/又は二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物とを、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物と反応させることによって製造することができる、ポリカーボネート樹脂である。
【0019】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、次の一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから誘導されるものである。
【0020】
【化11】
【0021】
また、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の典型例は、次の一般式(7)で表される特定のビスフェノール化合物、及び一般式(8)で表わされる二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物から誘導されるものである。
【0022】
【化12】
【0023】
【化13】
【0024】
[式中、R1、R2、R3、l、m及びnは、それぞれ一般式(3)及び一般式(4)の場合と同一である]
【0025】
このような前記一般式(7)で表される特定のビスフェノール化合物としては、例えば、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)などが挙げられる。また、前記一般式(8)で表される二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンの両末端をフェノールで変性したジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0026】
本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂において、いまひとつ重要な点は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.1dl/g以上であることを要する点である。この還元粘度[ηsp/C]が、0.1dl/g未満では、インキに使用した場合にポリカーボネート樹脂としての本来の機械的強度や耐熱性が十分に得られない。好ましい還元粘度[ηsp/C]の範囲は、0.15〜4.0dl/g、特に好ましくは0.2〜3.0dl/gである。
以上のように特定の構造及び特定の還元粘度[ηsp/C]を有する共重合ポリカーボネート樹脂は、優れた耐久性や溶剤への溶解性を有するポリカーボネートであり、種々の用途に利用することができるが、本発明の印刷用インキのバインダー樹脂として有利に利用することができる。
【0027】
なお、本発明の印刷インキにおいては、この共重合ポリカーボネート樹脂には、本発明の目的に支障のない範囲で、前記した繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を有しているものでもよく、また、他のポリマーや添加物を適宜添加配合して使用することもできる。例えば、前記した繰り返し単位以外の他の繰り返し単位として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)、2, 2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2, 2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1, 1−ジフェニルメタン、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1, 1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4, 4’−ビフェノール、2, 2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4, 4’−ビス(3, 3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、1, 1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2, 2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニン)フルオレンなどが挙げられ、これらは前記一般式(7)及び/又は一般式(8)で表わされる化合物と共に第三成分として一般式(6)の化合物と共重合してもよい。
【0028】
本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂の製造は、前記一般式(6)で表わされる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと、前記一般式(7)及び/又は一般式(8)で表わされる特定のビスフェノール化合物及び/又は二価のポリオルガノシロキサンフェノール変性物とを、炭酸エステル形成性化合物と反応させることにより行われる。この場合、使用する一般式(6)〜(8)の化合物の割合を適宜選択することにより、得られる共重合ポリカーボネート樹脂の共重合の割合を随意に調節することができる。
【0029】
ここで使用する炭酸エステル形成性化合物とは、一般式(6)乃至一般式(8)の化合物と反応して、ポリカーボネート共重合体中のカーボネート結合を形成するためのカルボニル供給源となる化合物であり、このような炭酸エステル形成性化合物としては、例えば、ホスゲン等のジハロゲン化カルボニル又はクロロホルメート等のハロホルメート類が挙げられる。
【0030】
本発明に使用するポリカーボネート共重合体を製造するための反応手法、例えば反応雰囲気、温度・圧力等の条件、反応方式及び操作法などは特に制限はなく、通常は、公知のポリカーボネートの製造において使用される手法を適宜充当すればよい。
例えば、炭酸エステル形成性化合物として、ホスゲン等のジハロゲン化カルボニル又はクロロホルメート等のハロホルメート類を用いる場合、この反応は、適当な溶媒中で、例えば、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩等の塩基性アルカリ金属化合物、あるいはピリジン等の有機塩基等のような酸受容体の存在下で行うことができる。
アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩としては、各種のものが使用可能であるが、経済的な面から、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が好適に使用することができる。これらは、通常は水溶液として好適に使用される。
【0031】
上記の炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、ホスゲン等のガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
上記の酸受容体の使用割合も、同様に反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、使用するビスフェノール化合物の合計モル数(通常、1モルは当量に相当)に対して2当量もしくはこれより若干過剰量の酸受容体を用いることが好ましい。
【0032】
上記の溶媒としては、公知のポリカーボネート製造の際に使用されるものなど各種の溶媒を1種類の単独であるいは2種以上の混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが好適に使用することができる。
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン、又は第四級アンモニウム塩などの触媒を使用することが好ましい。
【0033】
また、重合度を調整するためには分子量調節剤を添加して反応を行うことができる。このような分子量調節剤としては、p−tert−ブチルフェノールやクミルフェノール、フェニルフェノール等の末端停止剤や、フロログリシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸などの分岐剤を添加して反応を行うことができる。また、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0034】
本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂の製造においては、反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲で行われる。また、反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度の加圧下で行うことが好ましい。反応時間は、通常0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜2時間程度である。反応方式としては、連続法、半連続法、回分法等のいずれの方法も採用可能である。
【0035】
なお、本発明に使用する共重合ポリカーボネート樹脂において、得られるポリマーの還元粘度[ηsp/C]を上記の範囲にするには、例えば、上記の反応条件を適宜選択したり、前述の末端停止剤や分岐剤のような分子量調節剤の使用量を調節するなど各種の方法によって目的の還元粘度のものとすることができる。また、場合により、得られたポリマーに適宜、混合・分画等の物理的処理及び/又はポリマー反応・架橋処理・部分分解処理などの化学的処理を施して所定の還元粘度[ηsp/C]のポリカーボネート樹脂として取得することもできる。
【0036】
上述の重縮合反応によって得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離・精製法などの各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート共重合体として回収することができる。
【0037】
次に、本発明の印刷インキは、以上のようなポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として含有し、更に、顔料、溶剤、可塑剤、その他の樹脂、及び必要に応じてその他の添加剤を含有する印刷インキである。本発明の印刷インキにおいて、上記ポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いる場合、このポリカーボネート樹脂を1種のみ用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよいし、また、所望に応じて本発明の目的の達成を阻害しない範囲で、他のポリカーボネート樹脂などの樹脂成分と併用してもよい。
【0038】
本発明の印刷インキに用いられるインキ用顔料としては、一般に印刷インキに使用されるものが制限されることなく使用することができるが、具体的には、例えば次のものが挙げられる。即ち、ジスアゾイエロー系の黄色顔料;ジニトロアニリンオレンジやジスアゾオレンジPMPなどのダイダイ色顔料;ブリリアントカーミン6B、レーキレッドCの2つのアゾレーキ系やニトロセルロース系、ポリアミド系、アゾ系などの赤色顔料;メチルバイオレットレーキ、ローダミンBレーキなどのレーキ顔料;ジオキサジンバイオレットなどの紫色顔料;さらにはカーボンブラック、酸化鉄、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどの顔料;フィラーなどが挙げられる。
【0039】
本発明の印刷インキに用いられるインキに添加する樹脂成分としては、本発明のポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂をブレンドしてもよく、例えば以下のような樹脂が挙げられる。即ち、ロジン、セラック、ギルソナイトなどの天然樹脂やそれら天然樹脂の誘導体;フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニル、ブチラール樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロースなどの合成樹脂がある。
【0040】
また、本発明の印刷インキに用いられる溶剤としては以下の溶剤が挙げられる。即ち、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ゴム揮発油などの脂肪族炭化水素溶剤;ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテンなどの芳香族炭化水素溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール(トリデカノール)などのアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)、イソホロンなどのケトン系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセルソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)などのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)などのグリコールエーテルエステル系溶剤等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、その沸点が120℃以上である、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテン、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが溶剤として好ましい。
【0042】
また、本発明の印刷インキに用いられる可塑剤としては、例えばアジピン酸、セバシン酸、クエン酸、アゼライン酸、水添ロジンなどのエステルや、塩化パラフィン、ひまし油、エポキシ系およびエステル系可塑剤などが用いられている。その他の添加剤としては、ポリジメチルシロキサンなどの消泡剤を添加することができる。
【0043】
つぎに、本発明の印刷インキを使用する場合の印刷方式としては、凸版印刷、平板印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの各種印刷方式で適用できるが、特にスクリーン印刷に好適である。印刷対象物としては、各種のプラスチックのフィルム、その他の成型品、特にポリカーボネート樹脂やポリカーボネートと他の樹脂のアロイなどの成型品への印刷に好適である。
【0044】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
実施例1:
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 89gと4.4’(1,3−フェニレンビス)(1−メチルエチリデン)ビスフェノール13gとを2Nの水酸化カリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン350mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で30分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜5であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を700mlとした後、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール25gを2N水酸化カリウム溶液200mlに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tertーブチルフェノール2.0gを加えた。次いで、この混合液を激しく撹拌しながら、触媒として7%トリエチルアミン水溶液を2ml加え、25℃において撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットル、水1リットルで2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投入し、再沈精製した。
このようにして得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.5dl/gであった。1H−NMRスペクトル分析より下記の繰り返し単位からなることが確認された。また、このポリマーのガラス転移温度をDSCにて測定した。この値を第1表に示す。
【0046】
【化14】
【0047】
次に、上記で得られたポリマー22g及び顔料としてカーボンブラック6.5gを、溶剤としてシクロヘキサノン70ml中に添加し、十分に分散して印刷インキ組成物を調製した。この印刷インキ組成物を用いて市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約3μmの印刷を施し100℃で2時間乾燥した。その印刷したシートを120℃で深さ5mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0048】
実施例2:
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 102gを2Nの水酸化カリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン350mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で30分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜5であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を700mlとした後、末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン(フェノール当量1.600)110gと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン10g、加え、さらに2N水酸化カリウム溶液200ml溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール2.0gを加えた。次いで、この混合液を激しく撹拌しながら、触媒として7 %トリエチルアミン水溶液を2ml加え、25℃において撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットル、水1リットルで2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投入し、再沈精製した。
このようにして得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.5dl/gであった。1H−NMRスペクトル分析より下記の繰り返し単位からなることが確認された。また、このポリマーのガラス転移温度をDSCにて測定したが、明瞭なピークは得られずガラス転移点を測定できなかった。
【0049】
【化15】
【0050】
次に、ここで得られたポリマー22g及び顔料としてカーボンブラック6.5gを、溶剤としてシクロヘキサノン70ml中に添加し、十分に分散して印刷インキ組成物を調製した。この印刷インキ組成物を用いて市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約3μmの印刷を施し100℃で2時間乾燥した。その印刷したシートを120℃で深さ5mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0051】
実施例3:
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 102gを2Nの水酸化カリウム水溶液550mlに溶解した溶液と、塩化メチレン350mlとを混合して撹拌しながら、冷却下、液中にホスゲンガスを950ml/分の割合で30分間吹き込んだ。次いで、この反応液を静置分離し、有機層に重合度が2〜4であり、分子末端にクロロホーメート基を有するオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。得られたオリゴマー溶液に塩化メチレンを加えて全量を600mlとした後、4,4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビスフェノール15g及び末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン57gを2N水酸化カリウム溶液200mlに溶解した溶液と混合し、これに分子量調節剤であるp−tert−ブチルフェノール2.0gを加えた。次いで、この混合液を激しく撹拌しながら、触媒として7%トリエチルアミン水溶液を2ml加え、25℃において撹拌下で1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、次いで水1.5リットルで2回、0.01規定塩酸1リットル、水1リットルで2回の順に洗浄し、有機相をメタノール中に投入し、再沈精製した。
このようにして得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.6dl/gであった。1H−NMRスペクトル分析より下記の繰り返し単位からなることが確認された。
また、このポリマーのガラス転移温度を測定したが、明瞭なピークは得られずガラス転移点を測定できなかった。
【0052】
【化16】
【0053】
次にここで得られたポリマー22g及び顔料としてアルミナ粒子2.2gを、溶剤としてトリメチルベンゼン70ml中に添加し、十分に分散して印刷インキ組成物を調製した。この印刷インキ組成物を用いて市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約5μmの印刷を施し100℃で2時間乾燥した。その印刷したシートを120℃で深さ5mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0054】
実施例4:
実施例2の末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン(フェノール当量1,600)110gと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン10gの代わりに、末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン(フェノール当量1,600)55gと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン17gを用いた以外は、実施例2と同様な合成を行い、得られたポリマーは塩化メチレンを溶媒とする0.5g/d1の溶液の20℃における還元粘度[ηsp/C]が0.6d1/gであった。1H−NMRスペクトル分析により下記の繰り返し単位からなることが確認された。
また、このポリマーのガラス転移温度を測定したが、明瞭なピークは得られずガラス転移点を測定できなかった。
【0055】
【化17】
【0056】
次に得られたポリマー22g及び顔料としてアルミナ粒子2.2gを溶剤としてトリメチルベンゼン70mlに分散したインキを調整した。その溶液を市販のBisA−PC(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に印刷した(膜厚約10μm)。その印刷したシートを115℃で絞り加工(深さ10mm)し、印刷面の状態を目視にて確認した。その評価結果を第1表に示す。
【0057】
比較例1:
実施例1で得られたポリカーボネート樹脂の代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを原料として得た下記の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(還元粘度[ηsp/C]が0.5dl/gのもの)をバインダー樹脂として使用した他は、実施例1と同様にして印刷用インキを調製したが、インキ成分の混合に際してこのポリカーボネート樹脂が溶剤であるシクロヘキサノンにほとんど溶解しなかった。一部溶解したものもあったが、これらもすぐに結晶化してしまい、印刷用インキを作成することができなかった。
【0058】
【化18】
【0059】
比較例2:
実施例1のポリカーボネート樹脂の代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを原料とする下記構造式ポリカーボネート樹脂(還元粘度;0.5dl/g)をバインダー樹脂として使用し、実施例1と同様にして印刷インキを調製した。この印刷インキを使用して、実施例1と同様にして市販のBisA−PC樹脂(出光石油化学タフロンA2600)のシート上に、膜厚約10μmの印刷を施し、その印刷したシートを120℃で深さ10mmの絞り加工を行い、印刷面の状態を目視にて観察した。その評価結果を第1表に示す。
【0060】
【化19】
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂を印刷インキのバインダー樹脂として使用するので、印刷インキの作成時に種々の溶剤を用いても安定なインキ溶液を提供することができる。そのため特にポリカーボネート樹脂との親和性も強く、ポリカーボネート樹脂成型品にスクリーン印刷を施すような場合に、印刷されたインキ層が優れた密着性や伸長性、可とう性などの機械的特性を有するため、にじみや剥がれのない良好な印刷を提供することができる。
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