JP2004314917A - 車両用サスペンション装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の旋回時の横力により後輪に発生するトーイン効果を安定させる。
【解決手段】車両用サスペンション装置は、前端が車体に連結されて後端に車軸14を介して後輪Wを支持するトレーリングアーム13と、トレーリングアーム13を車体12に連結する3本のラテラルリンク15,16,17とを備える。第1ラテラルリンク15は車軸14の後下方でトレーリングアーム13に連結され、第2ラテラルリンク16を車軸14の後上方でトレーリングアーム13に連結され、第3ラテラルリンク17は車軸14の前上方でトレーリングアーム13に連結される。後輪Wの接地部26に近い弾性キングピン軸Kの下部が1本の第1ラテラルリンク15によって規定されるので、弾性キングピン軸Kと接地部26との距離を一定にして旋回時のトーイン効果を安定させることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】車両用サスペンション装置は、前端が車体に連結されて後端に車軸14を介して後輪Wを支持するトレーリングアーム13と、トレーリングアーム13を車体12に連結する3本のラテラルリンク15,16,17とを備える。第1ラテラルリンク15は車軸14の後下方でトレーリングアーム13に連結され、第2ラテラルリンク16を車軸14の後上方でトレーリングアーム13に連結され、第3ラテラルリンク17は車軸14の前上方でトレーリングアーム13に連結される。後輪Wの接地部26に近い弾性キングピン軸Kの下部が1本の第1ラテラルリンク15によって規定されるので、弾性キングピン軸Kと接地部26との距離を一定にして旋回時のトーイン効果を安定させることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、前端が車体に連結されて後端に車軸を介して後輪を支持するトレーリングアームと、トレーリングアームを車体に連結する第1、第2、第3ラテラルリンクとを備えた車両用サスペンション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両用サスペンション装置は、下記特許文献1および下記特許文献2により公知である。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの1本が車軸の直近の後下方でトレーリングアームに連結され、他の1本が車軸から大きく離れた前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の直近の後上方でトレーリングアームに連結されている。また特許文献2に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの2本が車軸の直近の後下方および前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の直近の前上方でトレーリングアームに連結されている。
【0004】
【特許文献1】
特公昭62−4241号公報
【特許文献2】
特公昭62−48602号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの2本が車軸の後下方および前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の後上方でトレーリングアームに連結されているので、後輪の弾性キングピン軸が前下がりに傾斜してしまい、後輪の接地部が前記弾性キングピン軸の後方に位置することになる。その結果、車両の旋回時に旋回外輪の接地部に路面から旋回方向内向きの横力が加わると、その横力によって後輪がトーアウトする傾向が発生して安定した旋回が阻害される可能性がある。
【0006】
また特許文献2に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの2本が車軸の後下方および前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の前上方でトレーリングアームに連結されているので、弾性キングピン軸の下部が車軸の下方の2本のラテラルリンクの中間位置を通り、その位置が前後方向に安定しない問題がある。このように、弾性キングピン軸の下部の前後位置が安定しないと、後輪の接地部と弾性キングピン軸との距離が変動し、旋回時における後輪のトーイン効果も不安定になってしまう。
【0007】
しかも車軸の直近の前上方でトレーリングアームに連結されたラテラルリンクの長さが、トレーリングアームの車体への連結部から遠い位置にあるために長くなることが避けられず、前記ラテラルリンクが後席付近の車室の容積を圧迫して居住性を低下させる問題がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両の旋回時の横力により後輪に発生するトーイン効果を安定させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、前端が車体に連結されて後端に車軸を介して後輪を支持するトレーリングアームと、トレーリングアームを車体に連結する第1、第2、第3ラテラルリンクとを備えた車両用サスペンション装置において、第1、第2、第3ラテラルリンクのうちの第1ラテラルリンクで後輪に加わる横力を圧縮荷重として支持し、第1、第2、第3ラテラルリンクのうちの第2、第3ラテラルリンクで後輪に加わる横力を引張荷重として支持し、かつ第1、第2、第3ラテラルリンクで構成される弾性キングピン軸が前傾するようにしたことを特徴とする車両用サスペンション装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、第1ラテラルリンクの位置と、第2、第3ラテラルリンクの中間位置とを通る弾性キングピン軸を前傾させたので、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪をトーインさせて安定した旋回性能を確保することができる。特に、後輪の接地部に近い弾性キングピン軸の下部が1本の第1ラテラルリンクによって規定されるので、弾性キングピン軸と後輪の接地部との距離を一定にして旋回時のトーイン効果を安定させることができる。
【0011】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、第1ラテラルリンクを車軸の後側に配置し、第2ラテラルリンクを車軸の後側に配置し、第3ラテラルリンクを車軸の前側でトレーリングアームの長手方向中央部よりも前方に配置したことを特徴とする車両用サスペンション装置が提案される。
【0012】
上記構成によれば、第3ラテラルリンクをトレーリングアームの長手方向中央部よりも前方に配置したことで弾性キングピン軸が大きく前傾するため、後輪の接地部とその後方の弾性キングピン軸との距離を大きく確保し、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪を効果的にトーインさせて安定した旋回性能を確保することができる。
【0013】
しかも第3ラテラルリンクがトレーリングアームの前端の車体への連結部に近い位置に配置されるので、その第3ラテラルリンクを短くして車体やその搭載物との干渉を回避し、車室の容積を最大限に確保することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すもので、図1は左後輪のサスペンションの側面図、図2は図1の2方向矢視図、図3は図2の3方向矢視図である。
【0016】
図1〜図3に示すように、車両の左側の後輪Wを支持するトレーリングアーム式のダブルウイッシュボンサスペンションは、前端がゴムブッシュジョイント11を介して車体12に上下揺動自在に連結されたトレーリングアーム13を備える。ゴムブッシュジョイント11から車体後方に延びるトレーリングアーム13には、車軸14を介して後輪Wが回転自在に支持される。
【0017】
トレーリングアーム13は3本のラテラルリンク15,16,17を介して車体12に支持されており、車幅方向内端がゴムブッシュジョイント18を介して車体12に連結された第1ラテラルリンク15は、その車幅方向外端が車軸14の後下方でゴムブッシュジョイント19を介してトレーリングアーム13に連結される。車幅方向内端がゴムブッシュジョイント20を介して車体12に連結された第2ラテラルリンク16は、その車幅方向外端が車軸14の後上方でゴムブッシュジョイント21を介してトレーリングアーム13に連結される。第3ラテラルリンク17はコンペンセータリンクと呼ばれるもので、車幅方向内端がゴムブッシュジョイント22を介して車体12に連結されるとともに、車幅方向外端が車軸14の前上方でゴムブッシュジョイント23を介してトレーリングアーム13に連結される。
【0018】
第1、第2ラテラルリンク15,16のトレーリングアーム13に対する連結点の位置、つまりゴムブッシュジョイント19,21の位置は車軸14の直近であるが、第3ラテラルリンク17のトレーリングアーム13に対する連結点の位置、つまりゴムブッシュジョイント23の位置は車軸14から前方に大きく離れており、その位置はトレーリングアーム13の長手方向中央部よりも前方とされる。
【0019】
トレーリングアーム13は前端のゴムブッシュジョイント11を支点として揺動するため、支点に近い第3ラテラルリンク17の長さを、支点から遠い第1、第2ラテラルリンク15,16の長さに比べて大幅に短くすることができる。車軸14の前上方に配置された第3ラテラルリンク17は後席の側方に位置するため、この第3ラテラルリンク17が短くなることで、後席付近の車室の容積の圧迫を最小限に抑えることが可能となる。
【0020】
尚、トレーリングアーム13の後部は、ダンパー24と、その外周に配置したコイルスプリング25とによって車体12に支持される。
【0021】
さて、車両が右旋回すると左側の後輪Wの接地部26に路面から旋回方向内向きの横力Fが作用し、この横力Fによって後輪Wは弾性キングピン軸Kまわりに転舵される。このとき、前記横力Fにより、第1〜第3ラテラルリンク15〜17のうち、車軸14の下方にある第1ラテラルリンク15には圧縮力が作用し、車軸14の上方にある第2,第3ラテラルリンク16,17には引張力が作用する。
【0022】
その結果、弾性キングピン軸Kは、第1ラテラルリンク15の外端のゴムブッシュジョイント19と、第2,第3ラテラルリンク16,17の外端の二つのゴムブッシュジョイント21,23の中間位置とを通ることになり、その弾性キングピン軸Kは前下りに傾斜する。このとき、第3ラテラルリンク17が車軸14よりも前方に大きく離れているため、弾性キングピン軸Kの前傾角は大きくなり、後輪Wの接地部26と弾性キングピン軸Kとの距離は大きくなる。
【0023】
従って、車両の右旋回に伴って左側の後輪Wの接地部26に路面から旋回方向内向きの横力Fが作用すると、この横力Fによって弾性キングピン軸K回りに大きなモーメントが発生し、前記各ゴムブッシュジョイント11,18〜23が撓むことで左側の後輪Wがトーイン方向に効果的に転舵され、車両の安定した旋回性能を確保することができる。
【0024】
また2本の第2、第3ラテラルリンク16,17の中間位置を通る弾性キングピン軸Kの上部の前後方向位置は、第2、第3ラテラルリンク16,17の寸法誤差等によって安定しないのに対し、1本の第1ラテラルリンク15により決まる弾性キングピン軸Kの下部の前後方向位置は安定する。従って、弾性キングピン軸Kの上部の前後方向位置が変動しても、弾性キングピン軸Kの下部の前後方向位置が一定であることで、弾性キングピン軸Kと後輪Wの接地部26との距離はあまり変化せず、車両の旋回時における後輪Wのトーイン効果を安定して発揮させることができる。
【0025】
それに対して、上記特許文献2に記載されたものは、弾性キングピン軸の下部が2本のラテラルリンクの中間位置を通るので、それら2本のラテラルリンクの寸法誤差等により弾性キングピン軸の下部の前後方向位置が大きく変動してしまい、弾性キングピン軸と後輪の接地部との距離が変化して後輪のトーイン効果を安定しないことになる。
【0026】
以上、車両の左側の後輪Wについて説明したが、車両の右側の後輪Wも車体中心面に対して左右対称な構造であるため、左側の後輪Wと同様の作用効果を達成することができる。
【0027】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、第1ラテラルリンクの位置と、第2、第3ラテラルリンクの中間位置とを通る弾性キングピン軸を前傾させたので、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪をト−インさせて安定した旋回性能を確保することができる。特に、後輪の接地部に近い弾性キングピン軸の下部が1本の第1ラテラルリンクによって規定されるので、弾性キングピン軸と後輪の接地部との距離を一定にして旋回時のトーイン効果を安定させることができる。
【0029】
また請求項2に記載された発明によれば、第3ラテラルリンクをトレーリングアームの長手方向中央部よりも前方に配置したことで弾性キングピン軸が大きく前傾するため、後輪の接地部とその後方の弾性キングピン軸との距離を大きく確保し、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪を効果的にトーインさせて安定した旋回性能を確保することができる。
【0030】
しかも第3ラテラルリンクがトレーリングアームの前端の車体への連結部に近い位置に配置されるので、その第3ラテラルリンクを短くして車体やその搭載物との干渉を回避し、車室の容積を最大限に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】左後輪のサスペンションの側面図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】図2の3方向矢視図
【符号の説明】
12 車体
13 トレーリングアーム
14 車軸
15 第1ラテラルリンク
16 第2ラテラルリンク
17 第3ラテラルリンク
W 後輪
【発明の属する技術分野】
本発明は、前端が車体に連結されて後端に車軸を介して後輪を支持するトレーリングアームと、トレーリングアームを車体に連結する第1、第2、第3ラテラルリンクとを備えた車両用サスペンション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両用サスペンション装置は、下記特許文献1および下記特許文献2により公知である。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの1本が車軸の直近の後下方でトレーリングアームに連結され、他の1本が車軸から大きく離れた前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の直近の後上方でトレーリングアームに連結されている。また特許文献2に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの2本が車軸の直近の後下方および前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の直近の前上方でトレーリングアームに連結されている。
【0004】
【特許文献1】
特公昭62−4241号公報
【特許文献2】
特公昭62−48602号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの2本が車軸の後下方および前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の後上方でトレーリングアームに連結されているので、後輪の弾性キングピン軸が前下がりに傾斜してしまい、後輪の接地部が前記弾性キングピン軸の後方に位置することになる。その結果、車両の旋回時に旋回外輪の接地部に路面から旋回方向内向きの横力が加わると、その横力によって後輪がトーアウトする傾向が発生して安定した旋回が阻害される可能性がある。
【0006】
また特許文献2に記載されたものは、3本のラテラルリンクのうちの2本が車軸の後下方および前下方でトレーリングアームに連結され、残りの1本が車軸の前上方でトレーリングアームに連結されているので、弾性キングピン軸の下部が車軸の下方の2本のラテラルリンクの中間位置を通り、その位置が前後方向に安定しない問題がある。このように、弾性キングピン軸の下部の前後位置が安定しないと、後輪の接地部と弾性キングピン軸との距離が変動し、旋回時における後輪のトーイン効果も不安定になってしまう。
【0007】
しかも車軸の直近の前上方でトレーリングアームに連結されたラテラルリンクの長さが、トレーリングアームの車体への連結部から遠い位置にあるために長くなることが避けられず、前記ラテラルリンクが後席付近の車室の容積を圧迫して居住性を低下させる問題がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両の旋回時の横力により後輪に発生するトーイン効果を安定させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、前端が車体に連結されて後端に車軸を介して後輪を支持するトレーリングアームと、トレーリングアームを車体に連結する第1、第2、第3ラテラルリンクとを備えた車両用サスペンション装置において、第1、第2、第3ラテラルリンクのうちの第1ラテラルリンクで後輪に加わる横力を圧縮荷重として支持し、第1、第2、第3ラテラルリンクのうちの第2、第3ラテラルリンクで後輪に加わる横力を引張荷重として支持し、かつ第1、第2、第3ラテラルリンクで構成される弾性キングピン軸が前傾するようにしたことを特徴とする車両用サスペンション装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、第1ラテラルリンクの位置と、第2、第3ラテラルリンクの中間位置とを通る弾性キングピン軸を前傾させたので、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪をトーインさせて安定した旋回性能を確保することができる。特に、後輪の接地部に近い弾性キングピン軸の下部が1本の第1ラテラルリンクによって規定されるので、弾性キングピン軸と後輪の接地部との距離を一定にして旋回時のトーイン効果を安定させることができる。
【0011】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、第1ラテラルリンクを車軸の後側に配置し、第2ラテラルリンクを車軸の後側に配置し、第3ラテラルリンクを車軸の前側でトレーリングアームの長手方向中央部よりも前方に配置したことを特徴とする車両用サスペンション装置が提案される。
【0012】
上記構成によれば、第3ラテラルリンクをトレーリングアームの長手方向中央部よりも前方に配置したことで弾性キングピン軸が大きく前傾するため、後輪の接地部とその後方の弾性キングピン軸との距離を大きく確保し、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪を効果的にトーインさせて安定した旋回性能を確保することができる。
【0013】
しかも第3ラテラルリンクがトレーリングアームの前端の車体への連結部に近い位置に配置されるので、その第3ラテラルリンクを短くして車体やその搭載物との干渉を回避し、車室の容積を最大限に確保することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すもので、図1は左後輪のサスペンションの側面図、図2は図1の2方向矢視図、図3は図2の3方向矢視図である。
【0016】
図1〜図3に示すように、車両の左側の後輪Wを支持するトレーリングアーム式のダブルウイッシュボンサスペンションは、前端がゴムブッシュジョイント11を介して車体12に上下揺動自在に連結されたトレーリングアーム13を備える。ゴムブッシュジョイント11から車体後方に延びるトレーリングアーム13には、車軸14を介して後輪Wが回転自在に支持される。
【0017】
トレーリングアーム13は3本のラテラルリンク15,16,17を介して車体12に支持されており、車幅方向内端がゴムブッシュジョイント18を介して車体12に連結された第1ラテラルリンク15は、その車幅方向外端が車軸14の後下方でゴムブッシュジョイント19を介してトレーリングアーム13に連結される。車幅方向内端がゴムブッシュジョイント20を介して車体12に連結された第2ラテラルリンク16は、その車幅方向外端が車軸14の後上方でゴムブッシュジョイント21を介してトレーリングアーム13に連結される。第3ラテラルリンク17はコンペンセータリンクと呼ばれるもので、車幅方向内端がゴムブッシュジョイント22を介して車体12に連結されるとともに、車幅方向外端が車軸14の前上方でゴムブッシュジョイント23を介してトレーリングアーム13に連結される。
【0018】
第1、第2ラテラルリンク15,16のトレーリングアーム13に対する連結点の位置、つまりゴムブッシュジョイント19,21の位置は車軸14の直近であるが、第3ラテラルリンク17のトレーリングアーム13に対する連結点の位置、つまりゴムブッシュジョイント23の位置は車軸14から前方に大きく離れており、その位置はトレーリングアーム13の長手方向中央部よりも前方とされる。
【0019】
トレーリングアーム13は前端のゴムブッシュジョイント11を支点として揺動するため、支点に近い第3ラテラルリンク17の長さを、支点から遠い第1、第2ラテラルリンク15,16の長さに比べて大幅に短くすることができる。車軸14の前上方に配置された第3ラテラルリンク17は後席の側方に位置するため、この第3ラテラルリンク17が短くなることで、後席付近の車室の容積の圧迫を最小限に抑えることが可能となる。
【0020】
尚、トレーリングアーム13の後部は、ダンパー24と、その外周に配置したコイルスプリング25とによって車体12に支持される。
【0021】
さて、車両が右旋回すると左側の後輪Wの接地部26に路面から旋回方向内向きの横力Fが作用し、この横力Fによって後輪Wは弾性キングピン軸Kまわりに転舵される。このとき、前記横力Fにより、第1〜第3ラテラルリンク15〜17のうち、車軸14の下方にある第1ラテラルリンク15には圧縮力が作用し、車軸14の上方にある第2,第3ラテラルリンク16,17には引張力が作用する。
【0022】
その結果、弾性キングピン軸Kは、第1ラテラルリンク15の外端のゴムブッシュジョイント19と、第2,第3ラテラルリンク16,17の外端の二つのゴムブッシュジョイント21,23の中間位置とを通ることになり、その弾性キングピン軸Kは前下りに傾斜する。このとき、第3ラテラルリンク17が車軸14よりも前方に大きく離れているため、弾性キングピン軸Kの前傾角は大きくなり、後輪Wの接地部26と弾性キングピン軸Kとの距離は大きくなる。
【0023】
従って、車両の右旋回に伴って左側の後輪Wの接地部26に路面から旋回方向内向きの横力Fが作用すると、この横力Fによって弾性キングピン軸K回りに大きなモーメントが発生し、前記各ゴムブッシュジョイント11,18〜23が撓むことで左側の後輪Wがトーイン方向に効果的に転舵され、車両の安定した旋回性能を確保することができる。
【0024】
また2本の第2、第3ラテラルリンク16,17の中間位置を通る弾性キングピン軸Kの上部の前後方向位置は、第2、第3ラテラルリンク16,17の寸法誤差等によって安定しないのに対し、1本の第1ラテラルリンク15により決まる弾性キングピン軸Kの下部の前後方向位置は安定する。従って、弾性キングピン軸Kの上部の前後方向位置が変動しても、弾性キングピン軸Kの下部の前後方向位置が一定であることで、弾性キングピン軸Kと後輪Wの接地部26との距離はあまり変化せず、車両の旋回時における後輪Wのトーイン効果を安定して発揮させることができる。
【0025】
それに対して、上記特許文献2に記載されたものは、弾性キングピン軸の下部が2本のラテラルリンクの中間位置を通るので、それら2本のラテラルリンクの寸法誤差等により弾性キングピン軸の下部の前後方向位置が大きく変動してしまい、弾性キングピン軸と後輪の接地部との距離が変化して後輪のトーイン効果を安定しないことになる。
【0026】
以上、車両の左側の後輪Wについて説明したが、車両の右側の後輪Wも車体中心面に対して左右対称な構造であるため、左側の後輪Wと同様の作用効果を達成することができる。
【0027】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、第1ラテラルリンクの位置と、第2、第3ラテラルリンクの中間位置とを通る弾性キングピン軸を前傾させたので、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪をト−インさせて安定した旋回性能を確保することができる。特に、後輪の接地部に近い弾性キングピン軸の下部が1本の第1ラテラルリンクによって規定されるので、弾性キングピン軸と後輪の接地部との距離を一定にして旋回時のトーイン効果を安定させることができる。
【0029】
また請求項2に記載された発明によれば、第3ラテラルリンクをトレーリングアームの長手方向中央部よりも前方に配置したことで弾性キングピン軸が大きく前傾するため、後輪の接地部とその後方の弾性キングピン軸との距離を大きく確保し、旋回外輪となる後輪の接地部が路面から受ける横力で該後輪を効果的にトーインさせて安定した旋回性能を確保することができる。
【0030】
しかも第3ラテラルリンクがトレーリングアームの前端の車体への連結部に近い位置に配置されるので、その第3ラテラルリンクを短くして車体やその搭載物との干渉を回避し、車室の容積を最大限に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】左後輪のサスペンションの側面図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】図2の3方向矢視図
【符号の説明】
12 車体
13 トレーリングアーム
14 車軸
15 第1ラテラルリンク
16 第2ラテラルリンク
17 第3ラテラルリンク
W 後輪
Claims (2)
- 前端が車体に連結されて後端に車軸(14)を介して後輪(W)を支持するトレーリングアーム(13)と、トレーリングアーム(13)を車体に連結する第1、第2、第3ラテラルリンク(15,16,17)とを備えた車両用サスペンション装置において、
第1、第2、第3ラテラルリンク(15,16,17)のうちの第1ラテラルリンク(15)で後輪(W)に加わる横力を圧縮荷重として支持し、
第1、第2、第3ラテラルリンク(15,16,17)のうちの第2、第3ラテラルリンク(16,17)で後輪(W)に加わる横力を引張荷重として支持し、
かつ第1、第2、第3ラテラルリンク(15,16,17)で構成される弾性キングピン軸(K)が前傾するようにしたことを特徴とする車両用サスペンション装置。 - 第1ラテラルリンク(15)を車軸(14)の後側に配置し、第2ラテラルリンク(16)を車軸(14)の後側に配置し、第3ラテラルリンク(17)を車軸(14)の前側でトレーリングアーム(13)の長手方向中央部よりも前方に配置したことを特徴とする、請求項1に記載の車両用サスペンション装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003115474A JP2004314917A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 車両用サスペンション装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003115474A JP2004314917A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 車両用サスペンション装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004314917A true JP2004314917A (ja) | 2004-11-11 |
Family
ID=33474665
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003115474A Pending JP2004314917A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 車両用サスペンション装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004314917A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010264972A (ja) * | 2009-05-12 | 2010-11-25 | Honda Motor Co Ltd | セミ・アクティブ・トー力コンプライアンス制御機能を有するリヤサスペンション |
-
2003
- 2003-04-21 JP JP2003115474A patent/JP2004314917A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010264972A (ja) * | 2009-05-12 | 2010-11-25 | Honda Motor Co Ltd | セミ・アクティブ・トー力コンプライアンス制御機能を有するリヤサスペンション |
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