JP2004311869A - 窒化物半導体系電界効果トランジスタとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速スイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタを得る。
【解決手段】窒化物半導体系電界効果トランジスタを、基板1と、基板1上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層3と、チャネル層3上に形成されチャネル層3よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層4と、キャリア供給層4上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極6,7と、ソースおよびドレイン電極間の前記キャリア供給層4に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域8と、絶縁膜領域8上に設けられたゲート電極9と、で構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】窒化物半導体系電界効果トランジスタを、基板1と、基板1上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層3と、チャネル層3上に形成されチャネル層3よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層4と、キャリア供給層4上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極6,7と、ソースおよびドレイン電極間の前記キャリア供給層4に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域8と、絶縁膜領域8上に設けられたゲート電極9と、で構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体系電界効果トランジスタとその製造方法に関し、特に高速スイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体系、特に窒化ガリウム系半導体は高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率、高い電子飽和速度を有しており高周波の高出力電界効果トランジスタの構成材料として期待されている。特に、AlGaN/GaNヘテロ接合構造を有する電界効果トランジスタは、AlGaNとGaNとのヘテロ接合界面付近に電子が高濃度で蓄積するいわゆる2次元電子ガスが形成されるが、かかる2次元電子ガスはAlGaNに添加されるドナー不純物とは空間的に分離されて存在するため高い電子移動度を有するので高周波で動作可能となる。さらに、AlGaN/GaN系へテロ構造における2次元電子は、現在高周波電界効果トランジスタとして普及しているAlGaAs/GaAs系の場合に比べて、高電界領域で2倍以上の電子速度を有し、高周波でスイッチング動作可能な高出力電界効果トランジスタへの応用が期待されている。
【0003】
従来の窒化物半導体系電界効果トランジスタは、例えば、非特許文献1の図1に開示されているような素子構造を有している。非特許文献1の図1の素子構造では、均一なキャリア供給層上にソース、ゲートおよびドレイン電極が形成されている。
【0004】
まず、従来の窒化物半導体系電界効果トランジスタの動作を説明する。以下、説明の便宜上、活性領域を3つの領域に分ける。すなわち、ソース電極近傍をソース領域1、ゲート電極近傍をゲート領域2、ドレイン電極近傍をドレイン領域3とする。ゲート電極に印加されるゲート電圧を制御することでゲート電極からAlGaNキャリア供給層、GaNチャネル層に伸長する空乏層の長さを調節できる。空乏層がAlGaNキャリア供給層からGaNチャネル層に伸長すると2次元電子ガス濃度が減少する。この結果、GaNチャネル層の抵抗が増加する。さらに、空乏層をGaNチャネル層内に伸長させると、最終的には2次元電子ガスが無くなる。この結果、抵抗が非常に高くなる。
【0005】
以上の原理から、ゲート領域2ではゲート電圧制御によって電流をオン、オフするいわゆるスイッチとして機能する。ゲート電圧がゼロのときに、空乏層をGaNチャネル層内部に充分伸長させておくと、オンとオフが切り替わるしきい値電圧Vthを正にすることができる。なお、しきい値電圧Vthが負の場合、オフにした状態でゲート電極からAlGaNキャリア供給層へリーク電流が流れて余分な電力を消費するため、しきい値電圧Vthは正にすることが望ましい。
【0006】
活性領域でゲート領域2以外の部分はソース領域1とドレイン領域3である。ソース領域1とドレイン領域3はスイッチング動作には関与しない。しかし、ソース領域1ではソース電極とゲート電極とが互いに接触しないようにするため、両者の間隔を0.1〜10μm程度に維持する必要がある。なお、かかる間隔はフォトリソグラフィ技術における転写精度や加工方法の精度等により決定される。また、ドレイン電圧は用途によって異なるが0〜10kV程度の電圧値となる。よって、動作電圧が破壊耐圧を超えないようにするため、ゲート電極とドレイン電極の間隔を1〜1000μm程度に設定する必要がある。したがって、ドレイン領域3の抵抗は2次元電子ガス濃度で決まる。高速でスイッチング動作する電界効果トランジスタにおいては、ソース/ドレイン電極間に電流が流れるオン状態ではドレイン領域3の抵抗値は低い方が望ましい。
【0007】
【非特許文献1】
G.Hanington 他,”P/He ion implant isolation technology for AlGaN/GaN HEMT、HEMT: High Electron Mobility Transistor”, Electronics Letters,イギリス,1998年,34巻,2号, 193−195ページ
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
電界効果トランジスタのしきい値電圧をVthとすると、
Vth=φ−ΔEc−qd1N2/(2ε)−qPd2/ε (1)
となる。なお、(1)式中、φはショットキー障壁高さ、ΔEcは伝導帯側のバンド不連続、qは電荷量、Nはキャリア供給層のドーピング濃度、d1はキャリア供給層中のドーピング膜厚、εは誘電率、Pは分極率、d2はキャリア供給層の層厚をそれぞれ表す。(1)式中、第3項がキャリア供給層のドーピングによる項、第4項が分極による項を表す。第3項はGaAs系材料と共通の値となるが、第4項の分極による項がGaN等の窒化物半導体系特有の大きな値となっている。よって、窒化物半導体系電界効果トランジスタではしきい値電圧Vthに対する第3項の寄与は殆ど無い一方、第4項からの寄与が大半を占める。従って、窒化物半導体系電界効果トランジスタではしきい値電圧Vth制御のファクターとして、キャリア供給層の層厚d2が非常に重要である。
【0009】
しきい値電圧VthとGaNチャネル層の抵抗をAlGaNキャリア供給層の層厚の関数として図12、13に示す。なお、GaNチャネル層の抵抗がAlGaNキャリア供給層の層厚に依存する理由は、上述したようにAlGaNキャリア供給層側からGaNチャネル層へと供給される電子濃度がAlGaNキャリア供給層の層厚に依存しているからである。しきい値電圧Vthは図12に示すようにAlGaNキャリア供給層の層厚が増加することで比例的に減少する。したがって、しきい値電圧Vthを正とするには、AlGaNキャリア供給層の層厚を小さくする方が良いことがわかる。図12の例によると、しきい値電圧Vthを正とするにはAlGaNキャリア供給層を6nm程度以下とする必要があることがわかる。また、シート抵抗は、図13に示すようにAlGaNキャリア供給層の層厚の増加とともに急激に減少した後、あまり変化しなくなる。図13の例では、層厚9nm以下ではGaNチャネル層の抵抗が非常に高くなる。
【0010】
従来の窒化物半導体系電界効果トランジスタでは、AlGaNキャリア供給層の層厚は各領域において一定である。したがって、図12、13からしきい値電圧Vthを正とするためAlGaNキャリア供給層の層厚を薄くすると、ゲート/ドレイン間抵抗、ソース/ゲート間抵抗はそれぞれ大きくなる。一方、AlGaNキャリア供給層の層厚を厚くして各抵抗を低減しようとすると、しきい値電圧Vthは負となってしまう。要するに、しきい値電圧Vthが正で、かつゲート/ドレイン間およびソース/ゲート間抵抗が低いという相反する両条件を満足しないと、高周波でスイッチング動作可能な電界効果トランジスタは得られなかった。
【0011】
ゲート電極を構成する金属のショットキー障壁を一層高くして、しきい値電圧Vthが正となるようなAlGaNキャリア供給層の層厚を実効的に増加させることも可能であるが、AlGaNキャリア供給層はその禁制帯幅が3.4eV以上と広いため、ショットキー障壁の高いゲート電極を構成する金属を形成するのは困難である。
【0012】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、しきい値電圧Vthを正にすると同時にゲート/ドレイン間およびゲート/ソース間抵抗が低減され高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタを得ることを目的とし、さらにかかる窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化物半導体系電界効果トランジスタは、基板と、上記基板上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層と、上記チャネル層上に形成され上記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層と、上記キャリア供給層上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極と、上記ソースおよびドレイン電極間の上記キャリア供給層に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域と、上記絶縁膜領域上に設けられたゲート電極と、を備えた。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子構造を図1に示す。なお、図1は窒化物半導体系電界効果トランジスタのゲート長方向における素子断面図である。
【0015】
基板1上に、バッファ層2、GaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4が形成され、素子周辺部には素子分離領域5が設けられている。AlGaNキャリア供給層4上にはソース電極6とドレイン電極7が形成され、さらに、ソースおよびドレイン電極間のAlGaNキャリア供給層4中に、一部がAlGaNキャリア供給層4表面に露出し、AlGaNキャリア供給層4の構成原子の少なくとも一種類の原子および酸素からなる酸化物で構成された絶縁膜領域8が形成され、かかる絶縁膜領域8上にゲート電極9が設けられている。GaNチャネル層3およびAlGaNキャリア供給層4の導電型は同一であり、N型あるいはP型のどちらの導電型でも同様に機能するが、以下、各層はN型として説明を進める。
【0016】
本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法を図2ないし7の各工程における素子構造断面図に基づき説明する。まず、基板1上にバッファ層2、GaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4を順次結晶成長する(図2)。基板1の材料としては、サファイア、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、炭化珪素(SiC)等が適用可能である。また、結晶成長法としては、有機金属を用いた化学的気相成長法(MOCVD: Metalorganic Chemical Vapor Deposition)、分子線エピタキシー法(MBE: Molecular Beam Epitaxy)が好適であるが、他の結晶成長法を用いても良い。
【0017】
バッファ層2は基板1と上層の窒化物半導体からなる各層の格子定数が大きく異なる場合に、高品質なGaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4を形成させるために必要となるが、結晶成長条件等によって高品質な窒化物半導体系結晶が得られる場合は無くてもかまわない。
【0018】
なお、ピエゾ効果が発現する窒素化物半導体から構成され、かつ、バンドギャップエネルギーが異なる材料であればチャネル層3とキャリア供給層4は他の材料と置換可能である。例えばGaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4を、それぞれInGaNとAlGaN、InGaAlNとAlGaN、AlGaNとAlN等の材料の組合せに置換可能である。また、GaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4は不純物が導入されていてもあるいはされていなくてもいずれでも良い。層厚はGaNチャネル層3で40〜5000nmの範囲、AlGaNキャリア供給層4で2〜100nmの範囲が好適である。
【0019】
続いて、AlGaNキャリア供給層4上で後工程において絶縁膜領域8を形成する部分以外の領域に窒化膜(酸化マスク用絶縁膜)10を形成する(図3)。かかる窒化膜10は後述の酸化工程において酸化マスク用絶縁膜として機能する。なお、絶縁膜領域8を形成する領域に相当する部位には、開口部10aが設けられている。かかる開口部10aは以下の方法で得られる。まず、窒化膜10をウエハ全面に堆積した後、さらにレジストを被覆させ、フォトリソグラフィ技術によって開口部10aに相当する部分のレジストを除去し、ドライエッチング等の方法によりレジスト開口部底面の窒化膜10を取り除いた後、レジストを除去する。この結果、図3に示すような開口部10aが形成される。上述の窒化膜10はAlGaNキャリア供給層4の酸化防止を目的としているため、上記窒化膜10の膜厚としては2〜1000nm程度であれば良い。なお、酸化方法にも依存するが要するに後工程におけるAlGaNキャリア供給層4の酸化が防止できれば良く、上述の窒化膜10以外に例えば酸化膜、レジスト、金属等の材料も同様に適用可能である。
【0020】
次に、ソースおよびドレイン電極6,7間のAlGaNキャリア供給層4に一部が表面に露出し、AlGaNキャリア供給層4の構成原子の少なくとも一種類の原子および酸素からなる酸化物で構成された絶縁膜領域8を形成する(図4)。絶縁膜領域8形成を目的としたAlGaNキャリア供給層4の酸化は、例えば酸素が0.1〜10L/分程度で流れている石英管中にウエハを設置し、500〜1500℃の温度で5〜500分間、熱酸化させる方法が好適である。かかる方法でAlGaNキャリア供給層4を約25nm程度酸化する場合は、800〜1100℃の温度で10〜60分程度の熱処理時間の条件を適用すれば容易に実現できる。
【0021】
AlGaNキャリア供給層4の酸化を行うには雰囲気ガス中に酸素があれば良く、酸素以外にオゾン、水(水蒸気)、酸化窒素等の雰囲気ガスも使用可能である。熱酸化の際、AlGaNキャリア供給層4表面から窒素が抜けるのを防止するために、雰囲気ガス中に窒素、アンモニアガス等を混合する方法も高品質な結晶を維持する上で有効である。また、雰囲気ガスをプラズマ励起し、ウエハに当てることでAlGaNキャリア供給層4の酸化が促進され、処理時間を短縮することが可能となる。
【0022】
AlGaNキャリア供給層4の酸化方法としては、上述のガスを用いる方法以外に溶液に浸漬させて酸化する方法もまた簡便かつ有効である。水酸化カリウム(KOH)やリン酸(H3PO4)等のアルカリあるいは酸溶液中(水との混合液)にウエハと白金(Pt)電極を浸漬し、ウエハとPt電極間に電流を流すことでAlGaNキャリア供給層4を酸化できる。酸化を促進させるためにウエハ表面にHgランプやHeCdレーザで紫外光を照射しても良い。KOH溶液を8〜12pHとし、電流密度を0.1〜20mA/cm2とすることで、10秒から60分程度でAlGaNキャリア供給層4中に25nm程度の酸化膜が形成できる。
【0023】
絶縁膜領域8の形成後、プラズマエッチングや熱リン酸等のウエットエッチングによって窒化膜10を除去する(図5)。
【0024】
続いて、AlGaNキャリア供給層4上にソースおよびドレイン電極6,7を形成する(図6)。形成方法は以下の通りである。ソースおよびドレイン電極6,7となる以外の部分をレジストで被覆し、ソースおよびドレイン電極を構成する金属、つまり、オーミック特性が得られる金属を真空蒸着やスパッタ法等により成膜する。かかる金属材料としては、例えばTi/Al、Ti/Al/Ti/Mo/Au、Ti/WSi等の組合せが挙げられる。レジストのパターニングは通常のリソグラフィ技術によって行う。ソースおよびドレイン電極6,7の膜厚は材料にも依存するものの、それぞれの金属材料において2〜1000nmの範囲が好適である。いわゆるリフトオフ法を用いれば、容易にソースとドレイン領域に金属パターンが形成される。
【0025】
ソースおよびドレイン電極6,7において良好なオーミック特性を得るために、通常、リフトオフ後に熱処理を行う。熱処理はランプによる加熱、炉による加熱等が用いられ、窒素やアルゴンの不活性ガス、または水素や酸素雰囲気中で500〜1000℃、10〜300秒程度で熱処理される。これにより、ソース電極6からAlGaNキャリア供給層4直下のGaNチャネル層3、そしてドレイン電極7に達する電流の通路が確保される。
【0026】
続いて、素子周辺部に素子分離領域5を形成する(図7)。まず、ソース電極6からドレイン電極7に通じる電流を流す領域(活性領域)をレジストで被覆する。この状態で結晶に損傷を与えるようなイオン、例えばP/He、N、Zn、Ar等のイオンを注入する。イオンはGaNチャネル層3である低抵抗領域を越えるまで注入する必要がある。つまり、ウエハ表面から5〜5000nm程度の深さ以上にイオン注入する必要がある。一方、ドーズ量としては1012〜1015cm−2の範囲が好適である。レジスト被覆領域へのイオン注入を防止するため、レジストの厚さは1〜10μm程度とする。イオン注入後、レジストを除去するとウエハは図7に示すような断面形状を呈する。この後、素子分離領域5の抵抗を増大させるための熱処理を行っても良い。熱処理はオーミック電極形成の場合と同様、ランプ加熱や炉加熱で300〜800℃の温度で1〜10分程度、不活性ガス、あるいは水素や酸素雰囲気中で行う。
【0027】
続いて、ソースおよびドレイン電極6,7を形成した場合と同様のリフトオフ方法によって、絶縁膜領域8上にゲート電極9形成用の金属膜を形成する。すなわち、レジストでゲート領域以外にパターンを形成後、ゲート金属を蒸着し、レジストを除去する。ゲート電極9としてはショットキー特性を示す金属、例えばNi、Pt、Ir、Pd、PtSi等を適用する。かかる金属を1〜500nm程度成膜する。また、ゲート金属上に、さらに金(Au)やアルミニウム(Al)を積層しても良い。
【0028】
ゲート電極9を形成することにより、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの主要部分が完成する(図1)。なお、実際はこの後、表面を保護する保護膜、回路を作製する配線等の工程があるが、公知の構造および工程なので省略する。
【0029】
以下、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの動作を説明する。一般に、窒化物半導体系電界効果トランジスタではGaNチャネル層3のバンドギャップエネルギーがAlGaNキャリア供給層4より小さく、かつ窒化物半導体ではピエゾ効果が顕著であるため、GaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4の界面のGaNチャネル層3側に電子が蓄積され、低抵抗領域(2次元電子ガス領域)が形成される。
【0030】
本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタによれば、図1に示すようにゲート電極9直下では絶縁膜領域8が形成されている分、他の領域に比べてAlGaNキャリア供給層4の層厚は相対的に薄い。言い換えれば、ゲート領域以外のAlGaNキャリア供給層4の層厚はゲート電極9直下に比べて相対的に厚い。つまり、絶縁膜領域8の膜厚制御と結晶成長時に決まる結晶層厚の制御によって各領域のAlGaNキャリア供給層4の実効的な層厚を別個に設定できる。このように、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタではAlGaNキャリア供給層4の層厚をゲート領域とそれ以外の領域で変えることが可能となるので、スイッチング動作する部位に相当するゲート電極9直下のAlGaNキャリア供給層4の層厚を酸化による絶縁膜領域8の形成により実効的に薄層化してしきい値電圧Vthを正に保ちつつ、ゲート電極9近傍以外の領域のAlGaNキャリア供給層4の層厚を予め厚くすることによりソース/ゲート間およびゲート/ドレイン間抵抗が低減される結果、高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタが容易に得られる。
【0031】
また、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタではゲート電極9の直下に酸化膜(絶縁膜領域8)が形成される構成となっているため、ゲート電極9からAlGaNキャリア供給層4へのリーク電流が減少するので、消費電力も低減できる。
【0032】
上述の製造方法では、ゲート電極9は従来の素子構造と同様の金属等が用いられるが、しきい値電圧Vthを正にするにはショットキー障壁高さが大きい材料を用いる程有利であるため、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)等の金属がゲート電極9の構成材料として好適である。さらに、GaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4の導電型がN型の場合は、GaN、AlGaN、AlN等のp型半導体もゲート電極9の構成材料として適用可能である。一方、絶縁膜領域8を構成する酸化膜の膜厚はしきい値電圧Vthが正となる程度であれば良い。すなわち、AlGaNキャリア供給層4を1〜50nm程度残存するように酸化膜で構成された絶縁膜領域8を形成する。よって、酸化膜厚としては2〜100nm程度が好適である。
【0033】
上述の製造方法以外に図5で示された工程において窒化膜10を残存させた状態で絶縁膜領域8を形成しても良い。この場合、ゲート電極9のゲート長は窒化膜10の開口部10aより広くしてもあるいは狭くしても良いが、広い方が好適である。ゲート電極9のゲート長を窒化膜10の開口部10aより広くすれば、ゲート抵抗が一層低減され、動作周波数の改善が可能となるからである。また、窒化膜10の開口部10aにテーパを形成した後、開口部10aより広いゲート長を有するゲート電極9を形成することでゲート電極9からドレイン電極7に伸長する電界が緩和され、耐圧の改善が図れる。この際、テーパはドレイン電極7側にのみ形成しておいても同様な効果が得られる。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子構造を図8に示す。実施の形態1では絶縁膜領域8を構成する酸化膜の膜厚はAlGaNキャリア供給層4中で酸化される部分の厚さで決定される。但し、この場合、酸化後の工程による酸化膜の目減りは考えない。酸化膜が厚い場合、ゲート容量が増加して動作周波数を制限するため、より一層動作周波数を向上させたい場合、かかるゲート容量の存在が動作特性向上の制限となるおそれがある。そこで、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタでは、AlGaNキャリア供給層4で絶縁膜領域を形成する部分を予めエッチングで薄層化してAlGaNキャリア供給層の層厚を減少させて、必要とされる酸化膜の膜厚、つまり絶縁膜領域の厚さを相対的に低減することを特徴とする。すなわち、図8の素子構造断面図に示すように、ゲート電極10は絶縁膜領域12を介してAlGaNキャリア供給層4上に形成されたエッチング溝11上に設けられる。
【0035】
以下、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法を図9〜11に基づき説明する。基板1上へバッファ層2、GaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4を結晶成長する工程、AlGaNキャリア供給層4上に窒化膜10を形成した後、開口部10aを設ける工程までは実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
窒化膜10をエッチングマスクとして開口部10aの底面のAlGaNキャリア供給層4をエッチングして、エッチング溝11を形成する(図9)。AlGaNキャリア供給層4中へのエッチング溝11形成には、塩素ガスを含んだエッチングガスによるドライエッチングや紫外光照射下でのKOHやNaOH溶液中でのウエットエッチングが好適である。エッチング量はAlGaNキャリア供給層4および酸化膜19の厚さの総和によって決定され、1〜100nm程度のエッチング深さが好適である。例えば、AlGaNキャリア供給層4の層厚が20〜40nm程度であれば、AlGaNキャリア供給層4を10〜30nm程度エッチングして、エッチング溝11上に5〜10nmの酸化膜を成膜して絶縁膜領域12を形成する。
【0037】
この後、開口部10aを通してエッチング溝11の内面を上述の膜厚程度に酸化する(図11)。酸化方法は実施の形態1と同様の方法が適用可能である。この後、実施の形態1と同様にソースおよびドレイン電極6,7、素子分離領域5、ゲート電極9をそれぞれ形成して、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの主要部が完成する(図8)。
【0038】
窒化膜10を残存させた状態でゲート電極9を形成することは実施の形態1と同様可能である。また、ソースおよびドレイン電極6,7を形成した後、図9から11の工程により絶縁膜領域12を構成する酸化膜を形成し、その後、素子分離領域5やゲート電極9を形成することもできる。同様に、図9〜11の酸化膜形成の工程は素子分離領域5の形成後でも良い。この場合、ソースおよびドレイン電極6,7や素子分離領域5は絶縁膜領域12を構成する酸化膜形成時の熱処理により特性が劣化する場合があるので、より低温での酸化方法、例えば、オゾンやプラズマを用いる方法や溶液中での酸化方法等が望ましい。
【0039】
酸化は酸素がAlGaNキャリア供給層4中に侵入することで起きる反応であるため、絶縁膜領域12は窒化膜10の開口部10aより広がる。しかしながら、ゲート電極9からの電界もゲート端から周辺に広がっているため、結果的に、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタは正常に動作する。絶縁膜領域12の広がりはほぼ酸化膜の膜厚と等しい。通常、ソース/ゲート電極間、ゲート/ドレイン電極間は0.1μm以上あるので、酸化膜の膜厚がかかる間隔以下であれば問題はない。また、この広がりを予め考慮し、各電極間の距離を決めておくことも可能である。
【0040】
実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタによれば、図8に示すようにゲート電極9直下ではエッチング溝11が形成されている分、他の領域に比べてAlGaNキャリア供給層4の層厚は相対的に薄い。言い換えれば、ゲート領域以外のAlGaNキャリア供給層4の層厚はゲート電極9直下に比べて相対的に厚い。つまり、結晶成長時のAlGaNキャリア供給層4の層厚およびエッチング溝11形成時のエッチング量で決まる厚さに任意かつ別個に設定できる。このように、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタでは実施の形態1と同様、AlGaNキャリア供給層4の層厚をゲート領域とそれ以外の領域で変えることが可能となるので、スイッチング動作する部分のAlGaNキャリア供給層4の層厚をエッチングによって薄層化することによりしきい値電圧Vthを正に保ちつつ、AlGaNキャリア供給層4の層厚を予め厚くすることによりソース/ゲート間およびゲート/ドレイン間抵抗が低減され、またゲート容量を発生させる絶縁膜領域12の膜厚も低減できる結果、しきい値電圧Vthが正でかつ一層高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタが容易に得られる。
【0041】
また、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタではゲート電極9の直下に酸化膜(絶縁膜領域12)が形成される構成となっているため、ゲート電極9からAlGaNキャリア供給層4へのリーク電流が減少するので、消費電力も低減できる。さらに、ゲート電極9部分のAlGaNキャリア供給層4にエッチング溝11を形成した後に酸化することで絶縁膜領域12を構成する酸化膜の膜厚と、絶縁膜領域12直下のAlGaNキャリア供給層4の層厚を別個に制御することができる利点もある。
【0042】
なお、以上の各実施の形態の説明では、しきい値電圧Vthは正が望ましいとしたが、上述の素子構造を適用した結果、しきい値電圧Vthが負電圧でもゼロに近い場合は同様の効果、つまりリーク電流の低減効果を奏することは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る窒化物半導体系電界効果トランジスタは、基板と、上記基板上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層と、上記チャネル層上に形成され上記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層と、上記キャリア供給層上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極と、上記ソースおよびドレイン電極間の上記キャリア供給層に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域と、上記絶縁膜領域上に設けられたゲート電極と、を備えたので、しきい値電圧Vthを正に保ちつつ高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタが容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子断面図である。
【図2】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図3】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図4】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図5】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図6】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図7】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図8】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子断面図である。
【図9】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図10】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図11】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図12】しきい値電圧とAlGaNキャリア供給層の層厚の関係を示すグラフである。
【図13】シート抵抗とAlGaNキャリア供給層の層厚の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板、 2 バッファ層、 3 GaNチャネル層、 4 AlGaNキャリア供給層、 5 素子分離領域、 6 ソース電極、 7 ドレイン電極、8 絶縁膜領域、 9 ゲート電極、 10 窒化膜(酸化マスク用絶縁膜)、 10a 窒化膜の開口部、 11 エッチング溝、 12 絶縁膜領域。
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体系電界効果トランジスタとその製造方法に関し、特に高速スイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体系、特に窒化ガリウム系半導体は高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率、高い電子飽和速度を有しており高周波の高出力電界効果トランジスタの構成材料として期待されている。特に、AlGaN/GaNヘテロ接合構造を有する電界効果トランジスタは、AlGaNとGaNとのヘテロ接合界面付近に電子が高濃度で蓄積するいわゆる2次元電子ガスが形成されるが、かかる2次元電子ガスはAlGaNに添加されるドナー不純物とは空間的に分離されて存在するため高い電子移動度を有するので高周波で動作可能となる。さらに、AlGaN/GaN系へテロ構造における2次元電子は、現在高周波電界効果トランジスタとして普及しているAlGaAs/GaAs系の場合に比べて、高電界領域で2倍以上の電子速度を有し、高周波でスイッチング動作可能な高出力電界効果トランジスタへの応用が期待されている。
【0003】
従来の窒化物半導体系電界効果トランジスタは、例えば、非特許文献1の図1に開示されているような素子構造を有している。非特許文献1の図1の素子構造では、均一なキャリア供給層上にソース、ゲートおよびドレイン電極が形成されている。
【0004】
まず、従来の窒化物半導体系電界効果トランジスタの動作を説明する。以下、説明の便宜上、活性領域を3つの領域に分ける。すなわち、ソース電極近傍をソース領域1、ゲート電極近傍をゲート領域2、ドレイン電極近傍をドレイン領域3とする。ゲート電極に印加されるゲート電圧を制御することでゲート電極からAlGaNキャリア供給層、GaNチャネル層に伸長する空乏層の長さを調節できる。空乏層がAlGaNキャリア供給層からGaNチャネル層に伸長すると2次元電子ガス濃度が減少する。この結果、GaNチャネル層の抵抗が増加する。さらに、空乏層をGaNチャネル層内に伸長させると、最終的には2次元電子ガスが無くなる。この結果、抵抗が非常に高くなる。
【0005】
以上の原理から、ゲート領域2ではゲート電圧制御によって電流をオン、オフするいわゆるスイッチとして機能する。ゲート電圧がゼロのときに、空乏層をGaNチャネル層内部に充分伸長させておくと、オンとオフが切り替わるしきい値電圧Vthを正にすることができる。なお、しきい値電圧Vthが負の場合、オフにした状態でゲート電極からAlGaNキャリア供給層へリーク電流が流れて余分な電力を消費するため、しきい値電圧Vthは正にすることが望ましい。
【0006】
活性領域でゲート領域2以外の部分はソース領域1とドレイン領域3である。ソース領域1とドレイン領域3はスイッチング動作には関与しない。しかし、ソース領域1ではソース電極とゲート電極とが互いに接触しないようにするため、両者の間隔を0.1〜10μm程度に維持する必要がある。なお、かかる間隔はフォトリソグラフィ技術における転写精度や加工方法の精度等により決定される。また、ドレイン電圧は用途によって異なるが0〜10kV程度の電圧値となる。よって、動作電圧が破壊耐圧を超えないようにするため、ゲート電極とドレイン電極の間隔を1〜1000μm程度に設定する必要がある。したがって、ドレイン領域3の抵抗は2次元電子ガス濃度で決まる。高速でスイッチング動作する電界効果トランジスタにおいては、ソース/ドレイン電極間に電流が流れるオン状態ではドレイン領域3の抵抗値は低い方が望ましい。
【0007】
【非特許文献1】
G.Hanington 他,”P/He ion implant isolation technology for AlGaN/GaN HEMT、HEMT: High Electron Mobility Transistor”, Electronics Letters,イギリス,1998年,34巻,2号, 193−195ページ
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
電界効果トランジスタのしきい値電圧をVthとすると、
Vth=φ−ΔEc−qd1N2/(2ε)−qPd2/ε (1)
となる。なお、(1)式中、φはショットキー障壁高さ、ΔEcは伝導帯側のバンド不連続、qは電荷量、Nはキャリア供給層のドーピング濃度、d1はキャリア供給層中のドーピング膜厚、εは誘電率、Pは分極率、d2はキャリア供給層の層厚をそれぞれ表す。(1)式中、第3項がキャリア供給層のドーピングによる項、第4項が分極による項を表す。第3項はGaAs系材料と共通の値となるが、第4項の分極による項がGaN等の窒化物半導体系特有の大きな値となっている。よって、窒化物半導体系電界効果トランジスタではしきい値電圧Vthに対する第3項の寄与は殆ど無い一方、第4項からの寄与が大半を占める。従って、窒化物半導体系電界効果トランジスタではしきい値電圧Vth制御のファクターとして、キャリア供給層の層厚d2が非常に重要である。
【0009】
しきい値電圧VthとGaNチャネル層の抵抗をAlGaNキャリア供給層の層厚の関数として図12、13に示す。なお、GaNチャネル層の抵抗がAlGaNキャリア供給層の層厚に依存する理由は、上述したようにAlGaNキャリア供給層側からGaNチャネル層へと供給される電子濃度がAlGaNキャリア供給層の層厚に依存しているからである。しきい値電圧Vthは図12に示すようにAlGaNキャリア供給層の層厚が増加することで比例的に減少する。したがって、しきい値電圧Vthを正とするには、AlGaNキャリア供給層の層厚を小さくする方が良いことがわかる。図12の例によると、しきい値電圧Vthを正とするにはAlGaNキャリア供給層を6nm程度以下とする必要があることがわかる。また、シート抵抗は、図13に示すようにAlGaNキャリア供給層の層厚の増加とともに急激に減少した後、あまり変化しなくなる。図13の例では、層厚9nm以下ではGaNチャネル層の抵抗が非常に高くなる。
【0010】
従来の窒化物半導体系電界効果トランジスタでは、AlGaNキャリア供給層の層厚は各領域において一定である。したがって、図12、13からしきい値電圧Vthを正とするためAlGaNキャリア供給層の層厚を薄くすると、ゲート/ドレイン間抵抗、ソース/ゲート間抵抗はそれぞれ大きくなる。一方、AlGaNキャリア供給層の層厚を厚くして各抵抗を低減しようとすると、しきい値電圧Vthは負となってしまう。要するに、しきい値電圧Vthが正で、かつゲート/ドレイン間およびソース/ゲート間抵抗が低いという相反する両条件を満足しないと、高周波でスイッチング動作可能な電界効果トランジスタは得られなかった。
【0011】
ゲート電極を構成する金属のショットキー障壁を一層高くして、しきい値電圧Vthが正となるようなAlGaNキャリア供給層の層厚を実効的に増加させることも可能であるが、AlGaNキャリア供給層はその禁制帯幅が3.4eV以上と広いため、ショットキー障壁の高いゲート電極を構成する金属を形成するのは困難である。
【0012】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、しきい値電圧Vthを正にすると同時にゲート/ドレイン間およびゲート/ソース間抵抗が低減され高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタを得ることを目的とし、さらにかかる窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る窒化物半導体系電界効果トランジスタは、基板と、上記基板上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層と、上記チャネル層上に形成され上記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層と、上記キャリア供給層上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極と、上記ソースおよびドレイン電極間の上記キャリア供給層に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域と、上記絶縁膜領域上に設けられたゲート電極と、を備えた。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子構造を図1に示す。なお、図1は窒化物半導体系電界効果トランジスタのゲート長方向における素子断面図である。
【0015】
基板1上に、バッファ層2、GaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4が形成され、素子周辺部には素子分離領域5が設けられている。AlGaNキャリア供給層4上にはソース電極6とドレイン電極7が形成され、さらに、ソースおよびドレイン電極間のAlGaNキャリア供給層4中に、一部がAlGaNキャリア供給層4表面に露出し、AlGaNキャリア供給層4の構成原子の少なくとも一種類の原子および酸素からなる酸化物で構成された絶縁膜領域8が形成され、かかる絶縁膜領域8上にゲート電極9が設けられている。GaNチャネル層3およびAlGaNキャリア供給層4の導電型は同一であり、N型あるいはP型のどちらの導電型でも同様に機能するが、以下、各層はN型として説明を進める。
【0016】
本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法を図2ないし7の各工程における素子構造断面図に基づき説明する。まず、基板1上にバッファ層2、GaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4を順次結晶成長する(図2)。基板1の材料としては、サファイア、シリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、炭化珪素(SiC)等が適用可能である。また、結晶成長法としては、有機金属を用いた化学的気相成長法(MOCVD: Metalorganic Chemical Vapor Deposition)、分子線エピタキシー法(MBE: Molecular Beam Epitaxy)が好適であるが、他の結晶成長法を用いても良い。
【0017】
バッファ層2は基板1と上層の窒化物半導体からなる各層の格子定数が大きく異なる場合に、高品質なGaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4を形成させるために必要となるが、結晶成長条件等によって高品質な窒化物半導体系結晶が得られる場合は無くてもかまわない。
【0018】
なお、ピエゾ効果が発現する窒素化物半導体から構成され、かつ、バンドギャップエネルギーが異なる材料であればチャネル層3とキャリア供給層4は他の材料と置換可能である。例えばGaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4を、それぞれInGaNとAlGaN、InGaAlNとAlGaN、AlGaNとAlN等の材料の組合せに置換可能である。また、GaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4は不純物が導入されていてもあるいはされていなくてもいずれでも良い。層厚はGaNチャネル層3で40〜5000nmの範囲、AlGaNキャリア供給層4で2〜100nmの範囲が好適である。
【0019】
続いて、AlGaNキャリア供給層4上で後工程において絶縁膜領域8を形成する部分以外の領域に窒化膜(酸化マスク用絶縁膜)10を形成する(図3)。かかる窒化膜10は後述の酸化工程において酸化マスク用絶縁膜として機能する。なお、絶縁膜領域8を形成する領域に相当する部位には、開口部10aが設けられている。かかる開口部10aは以下の方法で得られる。まず、窒化膜10をウエハ全面に堆積した後、さらにレジストを被覆させ、フォトリソグラフィ技術によって開口部10aに相当する部分のレジストを除去し、ドライエッチング等の方法によりレジスト開口部底面の窒化膜10を取り除いた後、レジストを除去する。この結果、図3に示すような開口部10aが形成される。上述の窒化膜10はAlGaNキャリア供給層4の酸化防止を目的としているため、上記窒化膜10の膜厚としては2〜1000nm程度であれば良い。なお、酸化方法にも依存するが要するに後工程におけるAlGaNキャリア供給層4の酸化が防止できれば良く、上述の窒化膜10以外に例えば酸化膜、レジスト、金属等の材料も同様に適用可能である。
【0020】
次に、ソースおよびドレイン電極6,7間のAlGaNキャリア供給層4に一部が表面に露出し、AlGaNキャリア供給層4の構成原子の少なくとも一種類の原子および酸素からなる酸化物で構成された絶縁膜領域8を形成する(図4)。絶縁膜領域8形成を目的としたAlGaNキャリア供給層4の酸化は、例えば酸素が0.1〜10L/分程度で流れている石英管中にウエハを設置し、500〜1500℃の温度で5〜500分間、熱酸化させる方法が好適である。かかる方法でAlGaNキャリア供給層4を約25nm程度酸化する場合は、800〜1100℃の温度で10〜60分程度の熱処理時間の条件を適用すれば容易に実現できる。
【0021】
AlGaNキャリア供給層4の酸化を行うには雰囲気ガス中に酸素があれば良く、酸素以外にオゾン、水(水蒸気)、酸化窒素等の雰囲気ガスも使用可能である。熱酸化の際、AlGaNキャリア供給層4表面から窒素が抜けるのを防止するために、雰囲気ガス中に窒素、アンモニアガス等を混合する方法も高品質な結晶を維持する上で有効である。また、雰囲気ガスをプラズマ励起し、ウエハに当てることでAlGaNキャリア供給層4の酸化が促進され、処理時間を短縮することが可能となる。
【0022】
AlGaNキャリア供給層4の酸化方法としては、上述のガスを用いる方法以外に溶液に浸漬させて酸化する方法もまた簡便かつ有効である。水酸化カリウム(KOH)やリン酸(H3PO4)等のアルカリあるいは酸溶液中(水との混合液)にウエハと白金(Pt)電極を浸漬し、ウエハとPt電極間に電流を流すことでAlGaNキャリア供給層4を酸化できる。酸化を促進させるためにウエハ表面にHgランプやHeCdレーザで紫外光を照射しても良い。KOH溶液を8〜12pHとし、電流密度を0.1〜20mA/cm2とすることで、10秒から60分程度でAlGaNキャリア供給層4中に25nm程度の酸化膜が形成できる。
【0023】
絶縁膜領域8の形成後、プラズマエッチングや熱リン酸等のウエットエッチングによって窒化膜10を除去する(図5)。
【0024】
続いて、AlGaNキャリア供給層4上にソースおよびドレイン電極6,7を形成する(図6)。形成方法は以下の通りである。ソースおよびドレイン電極6,7となる以外の部分をレジストで被覆し、ソースおよびドレイン電極を構成する金属、つまり、オーミック特性が得られる金属を真空蒸着やスパッタ法等により成膜する。かかる金属材料としては、例えばTi/Al、Ti/Al/Ti/Mo/Au、Ti/WSi等の組合せが挙げられる。レジストのパターニングは通常のリソグラフィ技術によって行う。ソースおよびドレイン電極6,7の膜厚は材料にも依存するものの、それぞれの金属材料において2〜1000nmの範囲が好適である。いわゆるリフトオフ法を用いれば、容易にソースとドレイン領域に金属パターンが形成される。
【0025】
ソースおよびドレイン電極6,7において良好なオーミック特性を得るために、通常、リフトオフ後に熱処理を行う。熱処理はランプによる加熱、炉による加熱等が用いられ、窒素やアルゴンの不活性ガス、または水素や酸素雰囲気中で500〜1000℃、10〜300秒程度で熱処理される。これにより、ソース電極6からAlGaNキャリア供給層4直下のGaNチャネル層3、そしてドレイン電極7に達する電流の通路が確保される。
【0026】
続いて、素子周辺部に素子分離領域5を形成する(図7)。まず、ソース電極6からドレイン電極7に通じる電流を流す領域(活性領域)をレジストで被覆する。この状態で結晶に損傷を与えるようなイオン、例えばP/He、N、Zn、Ar等のイオンを注入する。イオンはGaNチャネル層3である低抵抗領域を越えるまで注入する必要がある。つまり、ウエハ表面から5〜5000nm程度の深さ以上にイオン注入する必要がある。一方、ドーズ量としては1012〜1015cm−2の範囲が好適である。レジスト被覆領域へのイオン注入を防止するため、レジストの厚さは1〜10μm程度とする。イオン注入後、レジストを除去するとウエハは図7に示すような断面形状を呈する。この後、素子分離領域5の抵抗を増大させるための熱処理を行っても良い。熱処理はオーミック電極形成の場合と同様、ランプ加熱や炉加熱で300〜800℃の温度で1〜10分程度、不活性ガス、あるいは水素や酸素雰囲気中で行う。
【0027】
続いて、ソースおよびドレイン電極6,7を形成した場合と同様のリフトオフ方法によって、絶縁膜領域8上にゲート電極9形成用の金属膜を形成する。すなわち、レジストでゲート領域以外にパターンを形成後、ゲート金属を蒸着し、レジストを除去する。ゲート電極9としてはショットキー特性を示す金属、例えばNi、Pt、Ir、Pd、PtSi等を適用する。かかる金属を1〜500nm程度成膜する。また、ゲート金属上に、さらに金(Au)やアルミニウム(Al)を積層しても良い。
【0028】
ゲート電極9を形成することにより、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの主要部分が完成する(図1)。なお、実際はこの後、表面を保護する保護膜、回路を作製する配線等の工程があるが、公知の構造および工程なので省略する。
【0029】
以下、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタの動作を説明する。一般に、窒化物半導体系電界効果トランジスタではGaNチャネル層3のバンドギャップエネルギーがAlGaNキャリア供給層4より小さく、かつ窒化物半導体ではピエゾ効果が顕著であるため、GaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4の界面のGaNチャネル層3側に電子が蓄積され、低抵抗領域(2次元電子ガス領域)が形成される。
【0030】
本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタによれば、図1に示すようにゲート電極9直下では絶縁膜領域8が形成されている分、他の領域に比べてAlGaNキャリア供給層4の層厚は相対的に薄い。言い換えれば、ゲート領域以外のAlGaNキャリア供給層4の層厚はゲート電極9直下に比べて相対的に厚い。つまり、絶縁膜領域8の膜厚制御と結晶成長時に決まる結晶層厚の制御によって各領域のAlGaNキャリア供給層4の実効的な層厚を別個に設定できる。このように、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタではAlGaNキャリア供給層4の層厚をゲート領域とそれ以外の領域で変えることが可能となるので、スイッチング動作する部位に相当するゲート電極9直下のAlGaNキャリア供給層4の層厚を酸化による絶縁膜領域8の形成により実効的に薄層化してしきい値電圧Vthを正に保ちつつ、ゲート電極9近傍以外の領域のAlGaNキャリア供給層4の層厚を予め厚くすることによりソース/ゲート間およびゲート/ドレイン間抵抗が低減される結果、高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタが容易に得られる。
【0031】
また、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタではゲート電極9の直下に酸化膜(絶縁膜領域8)が形成される構成となっているため、ゲート電極9からAlGaNキャリア供給層4へのリーク電流が減少するので、消費電力も低減できる。
【0032】
上述の製造方法では、ゲート電極9は従来の素子構造と同様の金属等が用いられるが、しきい値電圧Vthを正にするにはショットキー障壁高さが大きい材料を用いる程有利であるため、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)等の金属がゲート電極9の構成材料として好適である。さらに、GaNチャネル層3とAlGaNキャリア供給層4の導電型がN型の場合は、GaN、AlGaN、AlN等のp型半導体もゲート電極9の構成材料として適用可能である。一方、絶縁膜領域8を構成する酸化膜の膜厚はしきい値電圧Vthが正となる程度であれば良い。すなわち、AlGaNキャリア供給層4を1〜50nm程度残存するように酸化膜で構成された絶縁膜領域8を形成する。よって、酸化膜厚としては2〜100nm程度が好適である。
【0033】
上述の製造方法以外に図5で示された工程において窒化膜10を残存させた状態で絶縁膜領域8を形成しても良い。この場合、ゲート電極9のゲート長は窒化膜10の開口部10aより広くしてもあるいは狭くしても良いが、広い方が好適である。ゲート電極9のゲート長を窒化膜10の開口部10aより広くすれば、ゲート抵抗が一層低減され、動作周波数の改善が可能となるからである。また、窒化膜10の開口部10aにテーパを形成した後、開口部10aより広いゲート長を有するゲート電極9を形成することでゲート電極9からドレイン電極7に伸長する電界が緩和され、耐圧の改善が図れる。この際、テーパはドレイン電極7側にのみ形成しておいても同様な効果が得られる。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子構造を図8に示す。実施の形態1では絶縁膜領域8を構成する酸化膜の膜厚はAlGaNキャリア供給層4中で酸化される部分の厚さで決定される。但し、この場合、酸化後の工程による酸化膜の目減りは考えない。酸化膜が厚い場合、ゲート容量が増加して動作周波数を制限するため、より一層動作周波数を向上させたい場合、かかるゲート容量の存在が動作特性向上の制限となるおそれがある。そこで、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタでは、AlGaNキャリア供給層4で絶縁膜領域を形成する部分を予めエッチングで薄層化してAlGaNキャリア供給層の層厚を減少させて、必要とされる酸化膜の膜厚、つまり絶縁膜領域の厚さを相対的に低減することを特徴とする。すなわち、図8の素子構造断面図に示すように、ゲート電極10は絶縁膜領域12を介してAlGaNキャリア供給層4上に形成されたエッチング溝11上に設けられる。
【0035】
以下、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法を図9〜11に基づき説明する。基板1上へバッファ層2、GaNチャネル層3、AlGaNキャリア供給層4を結晶成長する工程、AlGaNキャリア供給層4上に窒化膜10を形成した後、開口部10aを設ける工程までは実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
窒化膜10をエッチングマスクとして開口部10aの底面のAlGaNキャリア供給層4をエッチングして、エッチング溝11を形成する(図9)。AlGaNキャリア供給層4中へのエッチング溝11形成には、塩素ガスを含んだエッチングガスによるドライエッチングや紫外光照射下でのKOHやNaOH溶液中でのウエットエッチングが好適である。エッチング量はAlGaNキャリア供給層4および酸化膜19の厚さの総和によって決定され、1〜100nm程度のエッチング深さが好適である。例えば、AlGaNキャリア供給層4の層厚が20〜40nm程度であれば、AlGaNキャリア供給層4を10〜30nm程度エッチングして、エッチング溝11上に5〜10nmの酸化膜を成膜して絶縁膜領域12を形成する。
【0037】
この後、開口部10aを通してエッチング溝11の内面を上述の膜厚程度に酸化する(図11)。酸化方法は実施の形態1と同様の方法が適用可能である。この後、実施の形態1と同様にソースおよびドレイン電極6,7、素子分離領域5、ゲート電極9をそれぞれ形成して、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの主要部が完成する(図8)。
【0038】
窒化膜10を残存させた状態でゲート電極9を形成することは実施の形態1と同様可能である。また、ソースおよびドレイン電極6,7を形成した後、図9から11の工程により絶縁膜領域12を構成する酸化膜を形成し、その後、素子分離領域5やゲート電極9を形成することもできる。同様に、図9〜11の酸化膜形成の工程は素子分離領域5の形成後でも良い。この場合、ソースおよびドレイン電極6,7や素子分離領域5は絶縁膜領域12を構成する酸化膜形成時の熱処理により特性が劣化する場合があるので、より低温での酸化方法、例えば、オゾンやプラズマを用いる方法や溶液中での酸化方法等が望ましい。
【0039】
酸化は酸素がAlGaNキャリア供給層4中に侵入することで起きる反応であるため、絶縁膜領域12は窒化膜10の開口部10aより広がる。しかしながら、ゲート電極9からの電界もゲート端から周辺に広がっているため、結果的に、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタは正常に動作する。絶縁膜領域12の広がりはほぼ酸化膜の膜厚と等しい。通常、ソース/ゲート電極間、ゲート/ドレイン電極間は0.1μm以上あるので、酸化膜の膜厚がかかる間隔以下であれば問題はない。また、この広がりを予め考慮し、各電極間の距離を決めておくことも可能である。
【0040】
実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタによれば、図8に示すようにゲート電極9直下ではエッチング溝11が形成されている分、他の領域に比べてAlGaNキャリア供給層4の層厚は相対的に薄い。言い換えれば、ゲート領域以外のAlGaNキャリア供給層4の層厚はゲート電極9直下に比べて相対的に厚い。つまり、結晶成長時のAlGaNキャリア供給層4の層厚およびエッチング溝11形成時のエッチング量で決まる厚さに任意かつ別個に設定できる。このように、実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタでは実施の形態1と同様、AlGaNキャリア供給層4の層厚をゲート領域とそれ以外の領域で変えることが可能となるので、スイッチング動作する部分のAlGaNキャリア供給層4の層厚をエッチングによって薄層化することによりしきい値電圧Vthを正に保ちつつ、AlGaNキャリア供給層4の層厚を予め厚くすることによりソース/ゲート間およびゲート/ドレイン間抵抗が低減され、またゲート容量を発生させる絶縁膜領域12の膜厚も低減できる結果、しきい値電圧Vthが正でかつ一層高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタが容易に得られる。
【0041】
また、本実施の形態の窒化物半導体系電界効果トランジスタではゲート電極9の直下に酸化膜(絶縁膜領域12)が形成される構成となっているため、ゲート電極9からAlGaNキャリア供給層4へのリーク電流が減少するので、消費電力も低減できる。さらに、ゲート電極9部分のAlGaNキャリア供給層4にエッチング溝11を形成した後に酸化することで絶縁膜領域12を構成する酸化膜の膜厚と、絶縁膜領域12直下のAlGaNキャリア供給層4の層厚を別個に制御することができる利点もある。
【0042】
なお、以上の各実施の形態の説明では、しきい値電圧Vthは正が望ましいとしたが、上述の素子構造を適用した結果、しきい値電圧Vthが負電圧でもゼロに近い場合は同様の効果、つまりリーク電流の低減効果を奏することは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る窒化物半導体系電界効果トランジスタは、基板と、上記基板上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層と、上記チャネル層上に形成され上記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層と、上記キャリア供給層上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極と、上記ソースおよびドレイン電極間の上記キャリア供給層に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域と、上記絶縁膜領域上に設けられたゲート電極と、を備えたので、しきい値電圧Vthを正に保ちつつ高周波でスイッチング動作可能な窒化物半導体系電界効果トランジスタが容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子断面図である。
【図2】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図3】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図4】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図5】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図6】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図7】実施の形態1の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図8】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの素子断面図である。
【図9】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図10】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図11】実施の形態2の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造工程の一部を示す図である。
【図12】しきい値電圧とAlGaNキャリア供給層の層厚の関係を示すグラフである。
【図13】シート抵抗とAlGaNキャリア供給層の層厚の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板、 2 バッファ層、 3 GaNチャネル層、 4 AlGaNキャリア供給層、 5 素子分離領域、 6 ソース電極、 7 ドレイン電極、8 絶縁膜領域、 9 ゲート電極、 10 窒化膜(酸化マスク用絶縁膜)、 10a 窒化膜の開口部、 11 エッチング溝、 12 絶縁膜領域。
Claims (7)
- 基板と、
前記基板上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層上に形成され前記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層と、
前記キャリア供給層上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極と、
前記ソースおよびドレイン電極間の前記キャリア供給層に一部が表面に露出するように形成された絶縁膜領域と、
前記絶縁膜領域上に設けられたゲート電極と、
を備えたことを特徴とする窒化物半導体系電界効果トランジスタ。 - 基板と、
前記基板上に形成され窒化物半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層上に形成され前記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層と、
前記キャリア供給層上にそれぞれ設けられたソースおよびドレイン電極と、
前記ソースおよびドレイン電極間における前記キャリア供給層表面の一部に設けられたエッチング溝と、
前記エッチング溝の内面を被覆するように設けられ前記キャリア供給層を構成する原子の少なくとも一種類の原子および酸素からなる酸化物で構成された絶縁膜領域と、
前記絶縁膜領域上に設けられたゲート電極と、
を備えたことを特徴とする窒化物半導体系電界効果トランジスタ。 - 前記絶縁膜領域の膜厚が、2nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の窒化物半導体系電界効果トランジスタ。
- 窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法であって、基板上に窒化物半導体からなるチャネル層および前記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層を順次結晶成長する工程と、
前記キャリア供給層上に酸化マスク用絶縁膜を成膜する工程と、
前記酸化マスク用絶縁膜の一部に開口部を形成する工程と、
酸化によって前記開口部底面の前記キャリア供給層中に酸化膜で構成された絶縁膜領域を形成する工程と、
前記酸化マスク用絶縁膜をエッチングにより除去する工程と、
前記キャリア供給層上にソースおよびドレイン電極を形成する工程と、
前記絶縁膜領域上にゲート電極を形成する工程と、
を含んでなる窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法。 - 窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法であって、基板上に窒化物半導体からなるチャネル層および前記チャネル層よりバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体からなるキャリア供給層を順次結晶成長する工程と、
前記キャリア供給層上に酸化マスク用絶縁膜を成膜する工程と、
前記酸化マスク用絶縁膜の一部に開口部を形成する工程と、
前記開口部底面の前記キャリア供給層にエッチング溝を形成する工程と、
酸化によって前記エッチング溝の内面に酸化膜で構成された絶縁膜領域を形成する工程と、
前記酸化マスク用絶縁膜をエッチングにより除去する工程と、
前記キャリア供給層上にソースおよびドレイン電極を形成する工程と、
前記絶縁膜領域上にゲート電極を形成する工程と、
を含んでなる窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法。 - 前記酸化が、酸素を含む雰囲気ガス中で800℃以上1100℃以下の温度範囲で10分以上60分以下の時間熱処理する熱酸化法でなされることを特徴とする請求項4または5記載の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法。
- 前記酸化が、アルカリ溶液中でウエハと溶液中に設けられた電極金属の間に電流を流して前記キャリア供給層を酸化する方法でなされることを特徴とする請求項4または5記載の窒化物半導体系電界効果トランジスタの製造方法。
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