JP2004308002A - 伸び及び耐水素脆化特性に優れた超高強度鋼板、その製造方法、並びに該超高強度鋼板を用いた超高強度プレス成形部品の製造方法 - Google Patents

伸び及び耐水素脆化特性に優れた超高強度鋼板、その製造方法、並びに該超高強度鋼板を用いた超高強度プレス成形部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 1180MPa級以上の超高強度域において、優れた伸び、および耐水素脆化特性を兼ね備えた超高強度鋼板、並びにこの様な超高強度鋼板を効率よく製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、
C :0.06〜0.6%、
Si+Al:0.5〜3%、
Mn:0.5〜3%、
P :0.15%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含む)
を含有し、且つ、
組織は、全組織に対する占積率で、
焼戻マルテンサイトを15〜60%、
フェライトを5〜50%、
残留オーステナイトを5%以上、及び
アスペクト比が3以下の塊状マルテンサイトを15〜45%含有しており、該塊状マルテンサイト中、平均粒径が5μm以下の微細マルテンサイトの占める占積率は30%以上
である超高強度鋼板である。

Description

本発明は、1180MPa級以上の超高強度域において、伸び(全伸びのこと)及び耐水素脆化特性に優れた超高強度鋼板、当該超高強度鋼板を効率よく製造することのできる方法、並びに当該超高強度鋼板を用いた超高強度プレス成形部品の製造方法に関するものである。
自動車や産業用機械等にプレス成形して使用される鋼板は、優れた強度と延性を兼ね備えていることが要求されており、近年では特に1180MPa級以上の超高強度鋼板に対するニーズが高まっている。
この様な超高強度鋼板は、これまではバンパー、ドアのインパクトバー、ビーム等の如く、単純な曲げ成形を施して得られる補強部材に利用されることが多かった。しかしながら、最近は、衝突安全性と環境問題の両立を図る為に車体を軽量化するという観点から、フロンサイドメンバー、リヤサイドメンバー、ロッカー、ピラー類等、複雑なプレス成形が必要となる部材へ適用しようとする試みが高まっており、当該超高強度域鋼板における延性の向上が切望されている。
ところが1180MPa級以上の超高強度域になると、水素脆化による遅れ破壊(割れ等)という新たな弊害が生じることが知られている。遅れ破壊は、高強度鋼において、腐食環境または雰囲気から発生した水素が、転位、空孔、粒界などの欠陥部へ拡散して材料を脆化させ、応力が付与された状態で破壊を生じる現象のことであり、その結果、金属材料の延性や靭性が低下する等の弊害をもたらしている。
従って、1180MPa級以上の超高強度鋼板においても、大気環境下の腐食反応によって発生する水素により、鋼板が突然破壊することは充分懸念される事項である。
そこで、超高強度鋼板における耐水素脆化特性を高めるべく、特許文献1には、Caを添加してオーステナイト結晶粒の結合力を高めたり、Tiを添加して結晶粒の微細化と結晶粒の成長を抑制する等した超高強度鋼板の製造方法が開示されている。この方法により、耐水素脆化特性は改善されるものの、陰極チャージ試験による割れ発生時間は1000秒以下となっており、更なる改善が要請されている。また、上記方法で得られる鋼板は、焼戻マルテンサイトが主体の組織である為、実施例のなかには、伸びが10%程度に止まっているものもあり、超高強度鋼板における更なる耐水素脆化特性の向上、及び優れた延性との両立が切望されている。
一方、伸びと耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼板として、TRIP(TRansformation Induced Plasticity;変態誘起塑性)鋼板が注目されている。TRIP鋼板は、オーステナイト組織が残留しており、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)以上の温度で加工変形させると、応力によって残留オーステナイト(γR)がマルテンサイトに誘起変態して大きな伸びが得られる鋼板であり、例えば特許文献2には、微細なフェライト(ポリゴナルフェライト)と、微細なマルテンサイトと、3〜20%の残留オーステナイト(γR)を有する高張力冷延鋼板が開示されている。これは、フェライト及びマルテンサイトの微細化によって耐遅れ破壊性の向上を図ると共に、γRの生成によって誘起変態に起因する伸び向上作用を狙ったものである。しかしながら、上記公報では、γRは水素吸収能が高くて耐遅れ破壊特性を著しく劣化させるという理由に基づき、その上限を20%と定めている為、γRによる伸び向上作用が有効に発揮されず、1180MPa級の超高強度鋼板における伸び特性は17%に止まっている。この様にポリゴナルフェライトを母相とするTRIP鋼板(PF鋼板)において、γRが耐遅れ破壊特性を劣化させる理由としては、γRが粒界の三重点に存在する為に安定性が悪く、上述した歪み誘起変態によって容易にマルテンサイト変態することが考えられる。
このγRが遅れ破壊特性に悪影響を及ぼすことは、非特許文献1にも記載されている。これによれば、超高強度冷延鋼板は、γRが多い程、また歪が大きい程、遅れ破壊を起こし易いと報告されており、加工による影響も指摘されている。γRは加工によりマルテンサイトに変態するが、マルテンサイト相の水素の固溶量はオーステナイト相よりも小さいので、オーステナイト相とマルテンサイト相の界面に水素が集積・分子化して内圧を高めたり、或いは集積等した水素が加工誘起変態を促進する等して遅れ破壊が発生するものと推察されている。
ところが最近になって、γRは、必ずしも遅れ破壊特性を劣化させる因子であるとは言えないことが指摘されている。例えば非特許文献2には、焼戻マルテンサイトを母相とするTRIP鋼板(TAM鋼板)の破面を観察したところ、水素吸蔵による擬へき開破壊が抑えられていること;上記TAM鋼板は、γRを含まないマルテンサイト単相鋼板に比べ、水素吸蔵後の全伸びの低減が小さく抑えられていることが報告されている。上記TAM鋼板は、ラス間に微細なγRが生成されており、PF鋼板に存在するγRに比べ、歪み誘起変態に対する安定性が高まり、靭性が向上する結果、遅れ破壊特性の劣化を有効に阻止できると考えられる。更に上述した微細なγRの生成により、従来のPF鋼板に比べ、延性も著しく向上している。
しかしながら、本発明は、1180MPa級以上の超高強度域における耐遅れ破壊性の改善を目指すものであるのに対し、上記非特許文献2に記載されたTAM鋼板の強度は1030MPaと低く、当該TAM鋼板にしても、未だ本発明の要求特性を満足させるものではない。
特開平8−134549号公報(特許請求の範囲、[0011]、[0013]等) 特開2001−81533号公報(特許請求の範囲、[0020]〜[0024]、表3等) 山崎一正、水山弥一郎,「超高強度冷延鋼板の遅れ破壊特性に及ぼす残留オーステナイトと歪の影響」,鉄と鋼,1997年,Vol.83,No.11,p.66-71 北條智彦、外5名,「超高強度低合金TRIP鋼の水素脆性(第1報 水素吸蔵特性と延性)」,日本材料学会第51期 学術講演会講演論文集,2002年,第8巻,p.17-18
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、1180MPa級以上の超高強度域において、優れた伸びおよび耐水素脆化特性を兼ね備えた超高強度鋼板、この様な超高強度鋼板を効率よく製造することのできる方法、並びに当該超高強度鋼板を用いた超高強度プレス成形部品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た引張強度が1180MPa以上の超高強度域における伸びおよび耐水素脆化特性に優れた本発明の超高強度鋼板とは、質量%で、
C :0.06〜0.6%、
Si+Al:0.5〜3%、
Mn:0.5〜3%、
P :0.15%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含む)
を含有し、且つ、
組織は、全組織に対する占積率で、
焼戻マルテンサイトを15〜60%、
フェライトを5〜50%、
残留オーステナイトを5%以上、及び
アスペクト比が3以下の塊状マルテンサイトを15〜45%含有しており、該塊状マルテンサイト中、平均粒径が5μm以下の微細マルテンサイトの占める占積率は30%以上
であるところに要旨を有するものである。
更に本発明において、質量%で、
(i)Mo:1%以下(0%を含まない),Ni:0.5%以下(0%を含まない),Cu:0.5%以下(0%を含まない),Cr:1%以下(0%を含まない)の少なくとも一種を含有するもの;
(ii)Ti:0.1%以下(0%を含まない),Nb:0.1%以下(0%を含まない),V:0.1%以下(0%を含まない)の少なくとも一種を含有するもの;
(iii)Ca:0.003%以下(0%を含まない)、及び/又はREM:0.003%以下(0%を含まない)を含有するもの:
(iv)残留オーステナイト中の固溶炭素量が0.85%以上であるもの
は、いずれも好ましい態様である。
更に上記課題を解決し得た本発明に係る超高強度鋼板の製造方法は、
(i)上記成分を満足する鋼をA3点以上1100℃以下の温度に10秒間以上加熱保持した後、30℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以下の温度まで冷却する工程を少なくとも2回包含する工程、及び
(ii)(A3点−25℃)〜A3点の温度で120〜600秒加熱保持した後、3℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以上Bs点以下の温度まで冷却し、該温度域で1秒間以上保持する工程
を包含するところに要旨を有するものである。
尚、上記超高強度鋼板において、特に残留オーステナイト中の固溶炭素量が0.85%以上を満足する鋼板を製造する場合には、上記(ii)の工程において、Ms点以上Bs点以下の温度まで冷却し、該温度域における保持時間を200秒以上とすることが推奨される。
また、本発明には、残留オーステナイト中の固溶炭素量が0.85%以上の超高強度鋼板を温間プレス成形して超強度プレス成形部品を製造する方法も包含される。
本発明は上記の様に構成されているので、1180MPa級以上の超高強度域において、優れた伸びおよび耐水素脆化特性を兼ね備えた超高強度鋼板、及び当該超高強度鋼板をプレス成形した超高強度プレス成形品を効率よく製造することができた。特に残留オーステナイト中の固溶炭素量が0.85%以上を満足する鋼板を温間プレス成形した超高強度プレス成形部品は、残留オーステナイトが安定化している為、優れた耐遅れ破壊性を確保することができる。
本発明者らは、「1180MPa級以上の超高強度域において、優れた伸び、および耐水素脆化特性を兼ね備えた超高強度鋼板は、未だ得られていない」という実情に鑑み、この様な超高強度鋼板を効率よく製造することのできる方法について、前述したTAM鋼板をベースとして鋭意検討してきた。このTAM鋼板は、本発明者らが開発した新規なTRIP鋼板の一つであり、高い伸びフランジ性を維持したまま、しかも大きな全伸びを有する低合金TRIP鋼板として、先に出願を済ませている(特願2002−54595、以下、先願発明と呼ぶ場合がある)。
上記TAM鋼板の詳細は、先願発明の明細書に記載した通りであるが、要約すれば、
(i)転位密度の低い軟質ラス組織からなる焼戻マルテンサイトとフェライトの混合組織を母相とし、加工性(伸びフランジ性及び全伸び)を向上させると共に、
(ii)第2相として、C濃度(CγR)が高く、好ましくはラス状を有する残留オーステナイト(γR)組織に制御することにより、特に全伸びの向上を図る
というものであり、更にその後の研究により、当該鋼板は、耐遅れ破壊性にも優れることを見出し、非特許文献2に発表したものである。
この様に上記TAM鋼板は、伸び、及び伸びフランジ性に優れるのみならず、1030MPa程度の高強度域における耐遅れ破壊性にも優れている点で非常に有用である。しかしながら、先願発明に開示された上記TAM鋼板は実質的に、本発明で対象とする超高強度鋼板の提供まで意図するものではなく、1180MPa級以上の超高強度域において、伸び特性と耐遅れ破壊性の双方に優れた超高強度の提供が切望されている。
そこで本発明者らは、所望の特性を全て兼ね備えた超高強度鋼板を提供するに当たり、先願発明で開示している「焼戻マルテンサイト、フェライト及びγRの組合わせによる伸び向上作用」はそのまま踏襲しつつ、所望の超高強度域における耐遅れ破壊性を確保する為に、先願発明では考慮していなかったマルテンサイトに着目し、特にアスペクト比及び粒径を変化させて検討を重ねてきた。先願発明のマルテンサイト組織に着目して基礎実験を行なったところ、平均粒径が5μmを超える粗大なマルテンサイトが生成すると、超高強度域における優れた耐遅れ破壊性を確保することは困難であることが判明したからである。
その結果、1180MPa級以上の超高強度域における耐遅れ破壊性を確保する為には、微細な塊状マルテンサイトを多量に生成させることが必要であることが明らかになった。具体的には、
(i)所望の超高強度レベルを確保する為に、二相域での焼鈍処理を高温且つ長時間実施して塊状のマルテンサイト(硬質マルテンサイト)を生成させると共に、
(ii)当該超高強度域における良好な耐遅れ破壊性を確保する為に、所定の急熱急冷処理を少なくとも2回繰返すという、独自の焼入工程を実施して微細なマルテンサイトを生成させることにより、
所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
換言すれば、本発明の超高強度鋼板は、先願発明に開示された組織のうち、
(i)「転位密度の低い軟質ラス組織からなる焼戻マルテンサイトと、フェライトと、C濃度(CγR)が高くて好ましくはラス状を有するγRを所定量生成させる」ことにより、1180MPa級以上の超高強度域における優れた伸び特性を確保すると共に、
(ii)先願発明では実質的に到達できていなかった「1180MPa級以上の超高強度レベル」を確保し、且つ、「当該超高強度域における優れた耐遅れ破壊性」を確保する為に、先願発明の方法では得られなかった「微細な塊状マルテンサイト」を多数生成させたところに最重要ポイントが存在するものである。
この様に本発明は、鋼板の分野では未だ達成されていなかった「1180MPa級以上の超高強度域における、伸び特性(全伸びで18%以上)と耐水素脆化特性(後記する方法で測定した場合における陰極CH寿命が1000秒以上)の双方に優れた超高強度鋼板を提供する」という独自の解決課題に基づいてなされたものであり、上述した独自の熱処理方法を採用することによって、上記課題を達成するのに有用な組織を生成させたところに最大の特徴を有するものである。
以下、本発明の超高強度鋼板について説明する。
まず、本発明を最も特徴付ける組織について説明する。
焼戻マルテンサイトを全組織に対して占積率で15〜60%
本発明における「焼戻マルテンサイト」は、以下の特徴を有するものである。
第一に、本発明における「焼戻マルテンサイト」は、転位密度が少なく軟質であり、しかも、ラス状組織を有するものを意味する。これに対し、マルテンサイトは転位密度の多い硬質組織である点で、上記焼戻マルテンサイトとは相違し、両者は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)観察などによって区別することができる。また、従来のγR鋼板は、転位密度の少ない軟質のブロック状フェライト組織を有する点で、上記焼戻マルテンサイトを母相とする本発明鋼板とはやはり相違するものである。
第二に、上記焼戻マルテンサイトは、同一成分系(基本成分であるC,Si,Mnを同じにした系)におけるポリゴナルフェライトに比べ、ビッカース硬さ(Hv)が概して高いという傾向を有する。図1は、同一成分の鋼種(C:0.1〜0.3%、Mn:1.0〜2.0%、Si:1.0〜2.0%の範囲)における焼戻マルテンサイト及び焼戻ベイナイトの硬度(縦軸)と、ポリゴナルフェライトの硬度(横軸)とを対比したグラフである。尚、ビッカース硬さは、レペラー腐食による光学顕微鏡観察を行い、母相(灰色)部のビッカース硬さ(Hv)を測定したものである(荷重1g)。参考までに、同図に、y=xの直線を点線で示したが、これにより、焼戻マルテンサイトの硬度は、ポリゴナルフェライトに比べて高いこと;この様な傾向は硬度が高くなるにつれ、顕著に見られることが分かる。
また、図2は、図1のデータを、C量:0.1%、0.2%、0.3%の各場合に分けて整理したものであり、焼戻マルテンサイト、焼戻ベイナイト、及びポリゴナルフェライトの硬度に及ぼすC量の影響を表したものである。図2より、C量が同一のとき、焼戻マルテンサイトの硬度はポリゴナルフェライトに比べて高くなる傾向があること:この様な傾向は、C量が高くなるにつれ、顕著に見られることが分かる。
これらの結果に基づき、焼戻マルテンサイト及び焼戻ベイナイト、並びにポリゴナルフェライトにおける硬度を、C,Mn,Siの基本成分との関係で表すと、概ね、下記の関係式が得られる。
焼戻マルテンサイト及び焼戻ベイナイトの硬度(Hv)
≧500[C]+30[Si]+3[Mn]+50
ポリゴナルフェライトの硬度(Hv)≒200[C]+30[Si]+3[Mn]+50
式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。
ちなみに、上記関係式により得られる硬度(計算値)は、実測値をほぼ反映したものとなっていることを確認している。
また、上記関係式により得られる硬度は、C量が0.1〜0.3%の場合のみならず、0.3〜0.6%の場合、更には0.06〜0.1%の場合においても同様に実測値を反映したものであることを確認している。
尚、焼戻マルテンサイト硬度の上限は、成分組成等によっても変化し得るが、概ね、500[C]+30[Si]+3[Mn]+200、好ましくは500[C]+30[Si]+3[Mn]+150とすることが推奨される。
上記焼戻マルテンサイトによる伸び向上作用を有効に発揮させる為には、全組織に対して占積率で焼戻マルテンサイトを15%以上有することが必要である。具体的な焼戻マルテンサイトの占積率は、後記するフェライト及びγRとのバランスによって定められるものであり、所望の特性を発揮し得る様、適切に制御することが推奨される。但し、焼戻マルテンサイトの占積率が60%を超えると、所望の強度が得られない為、その上限を60%とする。好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。
フェライトを全組織に対して占積率で5〜50%
本発明における「フェライト」とは、ポリゴナルフェライト、即ち、転位密度の少ないフェライトを意味する。
本発明による作用を有効に発揮させる為には、フェライトは5%以上存在することが推奨される。好ましくは10%以上である。特に伸び特性の向上という観点からすれば、フェライトは多いことが好ましく、30%以上、より好ましくは40%以上とすることが推奨される。但し、50%を超えると、必要な超高強度を確保するのが困難となる為、その上限を50%とする。好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
残留オーステナイト(γ R )を全組織に対して占積率で5%以上
γRは全伸びの向上に有用であり、この様な作用を有効に発揮させる為には、全組織に対して占積率で5%以上(好ましくは7%以上)存在することが必要である。一方、多量に存在すると所望の超高強度を確保できない為、その上限を30%とすることが推奨される。より好ましくは25%である。
尚、本発明におけるγRの形態は、ラス状であることが好ましい。ここで、「形態がラス状である」とは、平均軸比(長軸/短軸)が2以上(好ましくは4以上、より好ましくは6以上である)のものを意味する。この様なラス状のγRは、従来のγRと同様のTRIP効果を奏するのみならず、更に顕著な伸びフランジ性向上効果を奏する点で極めて有用である。尚、上記平均軸比の上限は特に規定されないが、TRIPの効果を有効に発揮させる為には、γRの厚さが或る程度必要であること等を考慮すると、好ましい上限は30、より好ましくは20である。
また、上記ラス状γRによる効果を有効に発揮させる為には、γR中に占めるラス状γRの占積率は多ければ多い程良い。具体的には、上述した焼戻マルテンサイトやフェライトとのバランスによって定められるものであり、所望の特性を発揮し得る様、適切に制御することが推奨されるが、強度の向上という観点からすれば、ラス状γRの占積率を50%以上、より好ましくは60%以上、更により好ましくは70%以上、更に一層好ましくは80%以上、更により一層好ましくは85%以上とすることが推奨される。尚、γRのすべてがラス状γRで構成されていても良いが、加熱設備や冷却設備の制約等を考慮すると、実用レベルで、その上限を95%程度とすることが推奨される。
更に上記γR中の固溶炭素濃度(CγR)は0.8%以上であることが推奨される。このCγRは、TRIP(歪誘起変態加工)の特性に大きく影響し、0.8%以上に制御すると、特に、伸び等の向上に有効である。好ましくは1%以上、より好ましくは1.2%以上である。尚、上記CγRの含有量は多い程好ましいが、実操業上、調整可能な上限は、概ね1.6%と考えられる。
尚、本発明の超高強度鋼板をプレス成形して超高強度プレス成形部品とする場合には、特にCγRの範囲を0.85%以上(好ましくは0.87%以上、より好ましくは0.89%以上)に制御してγRを安定化させる(γRからマルテンサイトへの変態を極力抑える)ことが推奨される。これにより、超高強度プレス成形部品とした場合であっても、優れた耐遅れ破壊性を確保できるからである。尚、上記CγRの含有量は多い程好ましいが、実操業上、調整可能な上限は、概ね1.6%と考えられる。
この点について、もう少し詳しく説明すると、前述の非特許文献1等にも報告されている通り、γRは遅れ破壊を起こし易く、歪が大きい程遅れ破壊が発生することが知られている。本発明鋼板は、耐遅れ破壊性の向上に有効な「微細な塊状マルテンサイト」を多量に含有しているので、鋼板の段階では、上述したγRに起因する問題は回避されているが、プレス加工により成形部品(成形部材)とした場合には、上記の問題点が顕在化し、加工によりγRがマルテンサイトに変態(加工誘起変態)して耐水素脆化特性が劣化してしまう恐れがある。そこで本発明では、CγRの量を0.85%以上と高くしてγRを安定化させることとした。更に、加工の段階では、この様にγRを安定化した鋼板を、特に温間(約50〜400℃)にてプレス成形する(温間加工)ことが推奨される。一般に温間加工は、室温加工に比べてγRの変態を抑制し易いと言われていることから、鋼板段階のみならず加工段階においても、γRを一層安定化させる手段を施すことが有用であり、これらの併用により、γRのマルテンサイト変態が最小限に抑えられる結果、耐水素脆化特性が更に改善された超高強度プレス成形部品が得られることを後記する実施例によって確認している。
塊状マルテンサイト(アスペクト比が3以下)を全組織に対して占積率で15〜45%含有し、該塊状マルテンサイト中、微細マルテンサイト(平均粒径が5μm以下)の占める占積率は30%以上
上記の要件は、要するに微細な塊状マルテンサイトを多量に生成させるというものであり、これにより、1180MPa級以上の超高強度域における優れた耐遅れ破壊性を確保するものである。本発明を最も特徴付ける上記マルテンサイトの作用は、「塊状」であるか「微細」であるかによって相違する為、以下、個別に説明する。
まず、本発明における「塊状マルテンサイト」は、アスペクト比(長径/短径)が3以下のものを意味しており、所望の超高強度レベル(1180MPa級以上)を確保するのに有用な組織である。アスペクト比が小さくなって1に近づく程、マルテンサイトの形状はブロック状となり、高強度化作用は一層有効に発揮される。好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下である。
上記塊状マルテンサイトによる超高強度化作用を有効に発揮させる為には、全組織に対して占積率で15%含有することが必要である。好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。但し、上記塊状マルテンサイトの占積率が45%を超えると、所望の伸び特性、更には所望の陰極CH寿命も得られない為、その上限を45%とする。好ましくは40%以下、より好ましくは38%以下である。
更に本発明では、上記塊状マルテンサイト中、微細マルテンサイト(平均粒径が5μm以下)の占める占積率は30%以上とする。微細マルテンサイトの生成により、超高強度域における水素脆化を阻止することができ、耐遅れ破壊特性が向上するからである。この様な微細マルテンサイトによる耐遅れ破壊特性向上作用を有効に発揮させる為には、塊状マルテンサイトに対する占積率を好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上とする。尚、その上限は特に限定されず、微細マルテンサイトの占積率は多ければ多い程良い。
その他:ベイナイト(0%を含む)
本発明の鋼板は、上記組織のみ(即ち、焼戻マルテンサイトと、フェライトと、γRと、塊状マルテンサイトの混合組織)からなっていても良いが、本発明の作用を損なわない範囲で、ベイナイトを有していても良い。ベイナイトは本発明の製造過程で必然的に残存し得るものであるが、少なければ少ない程、好ましい。
次に、本発明鋼板を構成する基本成分について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
C:0.06〜0.6%
Cは、高強度を確保し、且つ、γRを確保するために必須の元素である。詳細には、γ相中に充分なC量を含み、室温でも所望のγ相を残留させる為に重要な元素であり、強度−伸びのバランスを高めるのに有用である。特にC量を0.25%以上添加すると、γR量が増加し、更にγRへのC濃縮が高くなるので、極めて高い強度−伸びを得ることができる。
但し、0.6%を超えて添加すると、その効果が飽和するのみならず、鋳造中への中心偏析などによる欠陥などが見られる。また、0.25%以上添加すると溶接性が劣化する。
従って、溶接性を主に考慮すれば、C:0.06〜0.25%(より好ましくは0.2%以下、更により好ましくは0.15%以下)に制御することが好ましく、一方、点溶接を必要とせず高い伸び等が要求される場合には、C:0.25〜0.6%(より好ましくは0.3%以上)に制御することが推奨される。
Si+Al:0.5〜3%
Si及びAlは、γRが分解して炭化物が生成するのを有効に抑える元素である。特にSiは、固溶強化元素としても有用である。この様な作用を有効に発揮させる為には、Si及びAlを合計で0.5%以上添加することが必要である。好ましくは0.7%以上、より好ましくは1%以上である。但し、上記元素を合計で、3%を超えて添加しても上記効果は飽和してしまい、経済的に無駄である他、多量に添加すると、熱間脆性を起こす為、その上限を3%とする。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
Mn:0.5〜3%
Mnは、γを安定化し、所望のγRを得る為に必要な元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、0.5%以上添加することが必要である。好ましくは0.7%以上、より好ましくは1%以上である。但し、3%を超えて添加すると、鋳片割れが生じる等の悪影響が見られる。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
P:0.15%以下(0%を含まない)
Pは、所望のγRを確保するのに有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、0.03%以上(より好ましくは0.05%以上)添加することが推奨される。但し、0.1%を超えて添加すると二次加工性が劣化する。より好ましくは0.1%以下である。
S:0.02%以下(0%を含む)
SはMnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となって加工性を劣化させる元素である。好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下である。尚、Sの低減化による加工性劣化の抑制作用は、Sを0.003%以下まで低減すると飽和してしまい、逆にSを低減する為のコストが高くつくことを考慮すると、下限は0.003%超、より好ましくは0.005%以上にすることが推奨される。
本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、残部:実質的に鉄及び不純物であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加することができる。
Mo:1%以下(0%を含まない),Ni:0.5%以下(0%を含まない),Cu:0.5%以下(0%を含まない),Cr:1%以下(0%を含まない)の少なくとも一種
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であると共に、γRの安定化や所定量の確保に有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、Mo:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Ni:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Cu:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Cr:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)を、夫々添加することが推奨される。但し、Mo及びCrは1%、Ni及びCuは0.5%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはMo:0.8%以下、Ni:0.4%以下、Cu:0.4%以下、Cr:0.8%以下である。
Ti:0.1%以下(0%を含まない),Nb:0.1%以下(0%を含まない),V:0.1%以下(0%を含まない)の少なくとも一種
これらの元素は、析出強化及び組織微細化効果があり、高強度化に有用な元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、Ti:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、Nb:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、V:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)を、夫々添加することが推奨される。但し、いずれの元素も0.1%を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはTi:0.08%以下、Nb:0.08%以下、V:0.08%以下である。
Ca:0.003%以下、及び/又はREM:0.003%以下
(0%を含まない)
Ca及びREM(希土類元素)は、鋼中硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素である。ここで、本発明に用いられる希土類元素としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させる為には、夫々、0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)添加することが推奨される。但し、0.003%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくは0.0025%以下である。
次に、本発明鋼板を製造する方法について説明する。
本発明鋼板の製造方法は、上記成分を満足する鋼をA3点以上1100℃以下の温度に10秒間以上加熱保持した後、30℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以下の温度まで冷却する工程を少なくとも2回包含する工程、及び(A3点−25℃)〜A3点の温度で120〜600秒加熱保持した後、3℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以上Bs点以下の温度まで冷却し、該温度域で1秒間以上(特に好ましくは200秒間以上)保持する工程を包含するところに特徴がある。
前述した通り、本発明の超高強度鋼板は、先願発明に開示された組織のうち、
(i)「転位密度の低い軟質ラス組織からなる焼戻マルテンサイトと、フェライトと、C濃度(CγR)が高くて好ましくはラス状を有するγRを所定量生成させる」ことにより、1180MPa級以上の超高強度域における優れた伸び特性を確保すると共に、
(ii)先願発明では実質的に到達できていなかった「1180MPa級以上の超高強度レベル」を確保し、且つ、「当該超高強度域における優れた耐遅れ破壊性」を確保する為に、先願発明の方法では得られなかった「微細な塊状マルテンサイト」を多数生成させたところに最重要ポイントが存在するものであり、この様な超高強度鋼板を得る為に当たっては、基本的には、先願発明に記載した代表的な二つの方法;即ち、
(1)[熱延工程]→[冷延工程]→[第一の連続焼鈍工程]
→[第二の連続焼鈍工程またはめっき工程]
(2)[熱延工程]、及び[連続焼鈍工程またはめっき工程]
をベースとしつつ、更に下記(イ)及び(ロ)の改変を行なうというものである。
(イ)先願発明の方法では得られなかった塊状マルテンサイト(硬質マルテンサイト)を所定量生成させる為に、上記(1)の[第二の連続焼鈍工程]、若しくは上記(2)の[連続焼鈍工程またはめっき工程]において、二相域での焼鈍処理を、先願発明に比べて、実質的に高温且つ長時間行なうと共に
(ロ)上記塊状マルテンサイトを微細化させて微細マルテンサイトを所定量生成させる為に、上記(1)の[第一の連続焼鈍工程]を、急熱急冷処理を少なくとも2回繰返す工程とするか;若しくは、上記(2)の[熱延工程]にて急熱急冷処理を1回行なった後、必要に応じて冷延してから、更に当該(2)の[連続焼鈍工程またはめっき工程]にて急熱急冷処理を少なくとも1回行なう。
以下、場合に分けて説明する。
(1)[熱延工程]→[冷延工程]→[第一の連続焼鈍工程]→[第二の連続焼鈍工程またはめっき工程]
上記(1)の方法は、熱延工程、冷延工程、第一の連続焼鈍工程、および第二の連続焼鈍工程またはめっき工程を経て、所望の鋼板を製造する方法である。
まず、熱延工程、および冷延工程を実施するが、これらの工程は特に限定されず、通常、実施される条件を適宜選択して採用することができる。上記(1)の方法では、これら熱延工程や冷延工程により、所望の組織を確保するものではなく、その後に実施する第一の連続焼鈍工程、および第二の連続焼鈍工程またはめっき工程を制御して所望の組織を得るところに特徴があるからである。
具体的には、上記熱延工程としては、Ar3点以上で熱延終了後、平均冷却速度約30℃/sで冷却し、約500〜600℃の温度で巻取る等の条件を採用することができる。また、冷延工程では、約30〜70%の冷延率の冷間圧延を施すことが推奨される。勿論、これに限定する趣旨では決してない。
次に、上記(1)の方法を特徴付ける(1-1)第一の連続焼鈍工程、および(1-2)第二の連続焼鈍工程またはめっき工程について、図3を参照しつつ説明する。図3は、第一の連続焼鈍工程において所定の急熱急冷処理を2回行なった工程図を示しているが、勿論、これに限定する趣旨では決してない。
(1-1)第一の連続焼鈍工程
上記工程は、「A3点以上1100℃以下の温度(図3中、T1)に10秒間以上加熱保持(図3中、t1)した後、30℃/s以上の平均冷却速度(図3中、CR1)で、Ms点以下の温度(図3中、T2)まで冷却する」という工程(以下、これら一連の方法を「急熱急冷処理」と呼ぶ場合がある)を少なくとも2回処理する工程を包含する。上記工程により、パーライト変態を避けながら冷却後にはマルテンサイトを確保し得、旧γ粒径を20μm以下と微細化することが可能となる為、最終的に、耐遅れ破壊特性の向上に有用な微細マルテンサイトが得られるからである。
ここで、T1の加熱温度は、A3点以上1100℃以下とする。上記範囲とすることにより、オーステナイトの粒成長を防止し得、旧γ粒径を微細化させることができるからである。好ましい加熱温度の下限は、鋼中成分によっても変動し得るが、概ね、880℃以上とすることが好ましい。A3点以上に制御したとしても、加熱温度が低いと未固溶の炭化物が生じてしまい、旧γ粒を微細化することがやや困難となるからである。一方、上記加熱温度が1100℃を超えると、γの粒成長を招いて旧γ粒を微細化させることができない。また、加熱温度が高くなると、それに伴って設備も大型化する必要がある等、経済性が損なわれること等を考慮すると、980℃以下に制御することが推奨される。
また、上記加熱温度での均熱時間t1は、10〜300秒間とする。均熱時間が短いとオーステナイト化が充分行なわれずにセメンタイトやその他の合金炭化物が残る為、旧γ粒を細かくすることが困難だからである。上記均熱時間t1は長ければ長い程よく、好ましくは60秒以上、より好ましくは120秒以上である。但し、あまり長すぎると旧γ粒の成長を招く他、製造効率も悪くなるので、上限を300秒とすることが推奨される。
上記加熱後の平均冷却速度CR1は、所定量のマルテンサイトを生成させ、且つ、旧γ粒径を微細化させる為に特に重要であり、本発明では30℃/s以上の急冷処理とする。更に上記平均冷却速度CR1は、最後のγRの形態にも影響を与え、平均冷却速度が速ければラス状を呈することになる。好ましくは50℃/s以上である。尚、平均冷却速度の上限は特に限定されず、所望の微細なマルテンサイトを得る為には大きければ大きい程良いが、実操業レベルとの関係で、適切に制御することが推奨される。
上記の平均冷却速度でMs点以下の温度T2まで冷却する。これにより、所望の微細なマルテンサイトが得られるからである。尚、T2は小さければ小さい程好ましいが、実操業レベルとの関係を考慮すると、概ね、室温程度にすることが推奨される。
本発明では、上述した一連の急熱急冷処理を少なくとも2回(複数回)処理するところに特徴がある。これにより、所望の微細な旧γが得られるからである。ちなみに図3では前述した通り、急熱急冷処理を2回行なっており、1回目の急熱急冷処理は前述した通りであるが、2回目の急熱急冷処理は、「A3点以上1100℃以下の温度(図3中、T3)に10秒間以上加熱保持(図3中、t3)した後、30℃/s以上の平均冷却速度(図3中、CR2)で、Ms点以下の温度(図3中、T4)まで冷却する」という工程を包含している。
尚、急熱急冷処理を複数回処理するに当たっては、各急熱急冷処理は前述した条件を満足する限り、全く同一の工程を施しても良いし、当該条件の範囲内で異なる工程を施しても良い。また、上記「急熱急冷処理」の処理回数は、少なくとも2回であれば特に制限されず、処理回数が多いほど、微細化作用も高まるが、製造効率等を考慮すると、好ましくは4回以下、より好ましくは3回以下、最も好ましくは2回とすることが推奨される。
この様に複数回の「急熱急冷処理」により、旧γの粒径が微細化する理由は詳細には不明であるが、前組織をマルテンサイトとしたとき、γの核生成サイトが多くなる為、上述した「急熱急冷処理」を繰返すことにより、マルテンサイトが微細化されるものと思料される。
ちなみにAc3点直上に急熱急冷を繰返すことにより旧γの粒径を微細化する方法自体は、例えばGrangeらによって既に報告されている(「鋼の熱処理 改訂5版」、第80〜81頁、昭和56年8月20日発行、日本鉄鋼協会編)。しかしながら、Grangeらは、旧γ粒の微細化技術を一般的に開示しているに過ぎず、本発明で対象とするTRIP鋼板において当該旧γ粒の微細化技術を適用できることまでは、具体的に開示するものではない。勿論、上記公報を精査しても、「1180MPa級以上の超高強度域において、優れた伸びと耐遅れ破壊性を兼ね備えた超高強度鋼板を提供するに当たり、耐遅れ破壊性の向上に有用な微細マルテンサイトを得るには上記方法を適用することが有効である」という本発明の技術的思想については示唆すらされていない。従って、旧γ粒の一般的な微細化技術が開示されているに過ぎない上記公報に基づき、本発明を直ちに導き出すことは到底できない。
(1-2)第二の連続焼鈍工程(後の連続焼鈍工程)またはめっき工程
上記工程は、(A3点−25℃)〜A3点の温度(図3中、T5)で120〜600秒(図3中、t5)加熱保持した後、3℃/s以上の平均冷却速度(図3中、CR3)で、Ms点以上Bs点以下の温度(図3中、T6)まで冷却し、当該温度域で1秒間以上(図3中、t6)保持する工程を包含する。これらの条件は、前述した第一の連続焼鈍工程で主に生成したマルテンサイトを焼戻して所望の焼戻マルテンサイトを得ると共に、所定量のフェライト、γR及び塊状のマルテンサイトを得る為に設定されたものである。特に本発明では、先願発明の方法に比べて、当該二相域での焼鈍処理を、実質的に高温且つ長時間行なっており(即ち、先願発明に比べてT5及びt5が、実質的に大きい)、これにより、先願発明では得られなかった塊状マルテンサイト(硬質マルテンサイト)を所定量生成させるところに特徴がある。
まず、(A3点−25℃)〜A3点の温度T5にて120〜600秒間均熱することにより、所望の焼戻マルテンサイト及びフェライトを生成させる(2相域焼鈍)。上記温度を超えると、すべてγとなってしまい、一方、上記温度を下回ると所望の塊状マルテンサイトが得られないからである。上記の加熱温度T5に加えて上記加熱保持時間t5の制御は、所望の組織を得る為に極めて重要である。120秒未満ではγの生成量が少なく、所望の塊状マルテンサイト及びγRが得られないからである。好ましくは130秒以上、より好ましくは140秒以上である。尚、600秒を超えると、焼戻マルテンサイトの特徴であるラス状組織が維持できなくなり、機械的特性が劣化する。好ましくは500秒以下、より好ましくは400秒以下である。
次いで、平均冷却速度CR3を、3℃/s以上(好ましくは5℃/s以上)に制御し、パーライト変態を避けながら、Ms点以上(好ましくは350℃以上)Bs点以下(好ましくは450℃以下)の温度T6まで冷却し、更に、この温度域で1秒以上(好ましくは5秒以上)保持する(オーステンパ処理)。これにより、γRへのC濃縮を、多量に且つ極めて短時間に得ることができる。特にCγRを0.85%以上にする為には、該保持時間を200秒以上(好ましくは220秒以上、より好ましくは240秒以上)とすることが推奨される。
ここで、平均冷却速度CR3が上記範囲を下回ると、所望の焼戻マルテンサイトが得られず、パーライト等が生成する。尚、その上限は特に規定されず、大きければ大きい程良いが、実操業レベルとの関係で、適切に制御することが推奨される。
上記の如く冷却してオーステンパ処理するが、特にオーステンパ処理温度T6は、所望の組織を確保して本発明の作用を発揮させるのに重要である。上記温度範囲に制御すれば、安定且つ多量のγRが得られ、これにより、γRによるTRIP効果が発揮される。Ms点未満の温度では所望のγRが得られず、Bs点を超えるとパーライトが多量に生成する。
尚、上記温度T6での保持時間t6の上限は特に限定されないが、オーステナイトがベイナイトに変態する時間を考慮すると、3000秒以下、好ましくは2000秒以下に制御することが推奨される。
また、上記工程では、所望の混合組織及びγRの他、本発明の作用を損なわない範囲で、更にベイナイト組織が生成していても構わない。また、所望の組織を著しく分解させることなく、本発明の作用を損なわない範囲で、めっき、更には合金化処理しても良い。
(2)[熱延工程]→[連続焼鈍工程またはめっき工程]
この方法は、(2-1)熱延工程、必要に応じて冷延してから(2-2)連続焼鈍工程またはめっき工程を経由して所望の鋼板を製造する方法である。このうち(2-1)熱延工程は、前述した(1)の(1-1)第一の連続焼鈍工程における第1回目の急熱急冷処理を包含するものであり、(2-2)連続焼鈍工程またはめっき工程は、前述した(1)の(1-1)第一の連続焼鈍工程(最初の連続焼鈍工程)における第2回目以降の急熱急冷処理、及び上記(1)の(1-2)第二の連続焼鈍工程(最後の連続焼鈍工程)の両方を包含するものである。即ち、上記(2)の方法では、本発明法の特徴部分である「所定の急熱急冷処理を少なくとも2回繰返す」工程を、上記(2-1)の熱延工程と、上記(2-2)の連続焼鈍工程またはめっき工程の各工程で、少なくとも1回ずつ行なうものであり、具体的な処理方法は前記(1)に詳述した通りである。
尚、上記(2-1)の熱延に引続き、(2-2)の連続焼鈍またはめっきを行うが、熱延後の形状が悪いときには形状修正の目的で、上記(2-1)の熱延を行った後、当該(2-2)の連続焼鈍またはめっきを行う前に、冷延処理しても良い。ここで、冷延率は1〜30%とすることが推奨される。30%を超えて冷間圧延すると、圧延荷重が増大し、冷間圧延が困難となるからである。
以上、本発明鋼板を製造する方法について詳述した。この様にして得られる鋼板のうち特にCγRが0.85%以上の鋼板は、とりわけプレス成形加工用鋼板として好適であり、これにより、伸び及び耐水素脆化特性が共に著しく高められた超高強度プレス成形部品が得られる。
とりわけ、耐水素脆化特性に極めて優れた超高強度プレス成形部品を製造するに当たっては、上述した通り、鋼板製造段階で、オーステンパ処理時間を200秒以上と長くしてCγRを0.85%以上とし、γRを安定化させることが有用であり、更に加工段階では、この様にγRを安定化した鋼板を、特に温間(約50〜400℃)にてプレス成形する(温間加工)ことが推奨される。従って、本発明によれば、自動車部品等をプレス成形する際に実施される温間加工に適した超高強度鋼板を提供できる点で、非常に有用である。ここで本発明における温間加工とは、50〜400℃(好ましくは100℃以上、300℃以下;最も好ましくは約200℃付近)で成形することを意味し、鋼板全体が当該温度域になる様、適宜、均熱すればよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳述する。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。
実施例1:鋼板としての特性(成分組成の検討)
本実施例では、表1に記載の成分組成からなる供試鋼No.A〜O(残部は鉄及び不純物であり、表中の単位は質量%)を真空溶製し、実験用スラブとしてから、下記工程からなる本発明法(熱延→冷延→第一の連続焼鈍→第二の連続焼鈍)に従って、板厚3.2mmの熱延鋼板を得た後、酸洗により表面スケールを除去し、1.2mm厚まで冷間圧延した。
熱延工程:開始温度(SRT)1150℃、仕上温度(FDT)850℃、冷却速度40℃/s、巻取温度550℃
冷延工程:冷延率50%
第一の連続焼鈍工程:「930℃で120秒間保持した後、平均冷却速度50℃/sで室温まで冷却する(水冷)」という工程を2回繰返した。
第二の連続焼鈍工程:850℃で180秒間保持した後、平均冷却速度25℃/sにて420℃まで冷却した(水冷)後、420℃で120秒間保持した。
この様にして得られた各鋼板について、引張強度(TS)、伸び[全伸びのこと(EI)]、及び耐水素脆化特性(陰極CH寿命)を下記要領で夫々測定した。
[引張強度(TS)、及び伸びの測定]
引張試験はJIS5号試験片を用い、引張強度(TS)及び伸び(EI)を測定した。尚、引張試験の歪速度は1mm/secとした。
[耐水素脆化特性の測定]
耐水素脆化特性を測定するに当たっては、上記の各鋼板を15mm×65mmのサイズに調整した短冊試験片を用いた。この短冊試験片に対し、四点曲げにより980MPaの応力を負荷し、(0.5mol硫酸+0.01molのKSCN)の混合溶液中にて、ポテンショスタットを用いて自然電位よりも卑な−80mVの電位を与えたときに割れが発生する時間を測定することにより、耐水素脆化特性[陰極チャージ(CH)寿命]を評価した。尚、本発明では、上記方法による測定時間が1000秒以上のものを、「耐水素脆化特性に優れる鋼板」と評価している。
[組織の占積率の測定]
記鋼板における組織(γRを除く)の占積率(面積率)は、鋼板をレペラー腐食し、圧延方向断面の板厚中心位置を光学顕微鏡(倍率1000倍)で観察することにより組織を同定した後、測定した。尚、γRの占積率(体積率)及びγRのC濃度(CγR)は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した(ISIJ Int.Vol.33.(1933),No.7,P.776)。
また、本発明で対象とする「微細な塊状マルテンサイトの占積率」は、以下の要領で測定した。
まず、上述した通り、鋼板をレペラー腐食し、圧延方向断面の板厚中心位置を光学顕微鏡(×1000)で観察した鋼板組織写真を2枚準備する。夫々の写真から、50μm×50μmの領域を任意に選択し、切り出す。切り出した2枚の写真について、総面積(50μm×50μm×2)に占める塊状マルテンサイト(アスペクト比が3以下)の面積率及び当該マルテンサイトの平均粒径を求めた後、上記塊状マルテンサイト中に占める、平均粒径が5μm以下の微細なマルテンサイトの面積率を算出し、「微細な塊状マルテンサイトの占積率」とする。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2004308002
Figure 2004308002
これらの結果より、以下の様に考察することができる(以下のNo.はすべて、表2中の実験No.を意味する)。
まず、No.2〜4、8〜15はいずれも、本発明の範囲を満足する鋼種(表1のNo.B〜D、H〜N)を用い、本発明法によって所定の組織を有する鋼板を製造した例であるが、1180MPa以上の超高強度域において、伸び、及び耐水素脆化特性の双方に優れていることが分かる。
これに対し、本発明の範囲を満足しない鋼種(表1のNo.A、E〜G)を用いた下記例は夫々、以下の不具合を有している。
まず、No.1はC量が少ない鋼種Aを用いた例であり、所定量の塊状マルテンサイト(硬質)が得られず、フェライトが過剰となる為、強度が低下している。尚、耐水素脆化特性は、四点曲げ応力を負荷し得ない程強度が低い為、測定しなかった。
また、No.5は、(Si+Al)の合計量が少ない鋼種Eを用いた例であり、所望のγRが得られない為、伸びが低い。
No.6は、Mn量が少ない鋼種Fを用いた例であり、所望のγRが得られない為、伸びが低い。
No.7は、Mn量が多い鋼種Gを用いた例であり、強度が高すぎる為に熱延時に熱間圧延割れを生じ、その後の焼鈍処理を実施できなかった。
実施例2:鋼板としての特性(製造条件の検討)
本実施例では、表1の鋼種B(本発明の成分組成を満足する鋼)を用いた実験用スラブを用い、実施例1と同じ条件で熱延及び冷延した後、表3に示す種々の条件にて第一の連続焼鈍(所定の急熱急冷処理を2回実施する)及び第二の連続焼鈍を施すことにより表4のNo.1〜22に示す冷延鋼板を得た。板厚はすべて1.2mmである。
次に、実施例1と同様の方法で、当該鋼板の組織及び種々の特性を調べた。これらの結果を表4に示す。
Figure 2004308002
Figure 2004308002
まず、No.1は、本発明に規定する条件で熱延→冷延→第一の連続焼鈍→第二の連続焼鈍を行い、所望の組織からなる冷延鋼板を製造した本発明例;及び、No.20は、上記工程を施した後、更に合金化処理(溶融亜鉛めっきに浸漬した後、合金化の目的で500℃にて熱処理)した本発明例であるが、いずれも1180MPa以上の超高強度を有しており、且つ、伸び及び耐水素脆化特性の双方に優れている。
これに対し、本発明で規定する条件のいずれかを満足しないNo.2〜22は夫々、以下の不具合を有している。
このうちNo.2〜6は、第一の連続焼純工程における1回目の急熱急冷処理のうち、いずれかの条件が本発明法の範囲を満足しない例である。
まず、No.2は、加熱温度T1が850℃とA3点未満の為、旧γ粒を細かくすることが出来ず、その為、塊状マルテンサイトが多量に生成してしまい、耐水素脆化特性が低下した。
No.3は、加熱時間t1が短すぎる為、オーステナイト化が充分進行せずにセメンタイトが残った為、旧γ粒を微細化させることが出来なかった。その結果、塊状マルテンサイトが多量に生成し、耐水素脆化特性が低下した。
No.4は、加熱温度T1が高過ぎる為、γの粒成長を招いて旧γ粒を細かくすることが出来なかった例であり、その結果、塊状マルテンサイトが多量に生成し、耐水素脆化特性が低下した。
No.5は冷却速度CR1が小さい例;No.6は、冷却後の加熱温度T2が400℃と、Ms点を超えている例であり、いずれも1回目の急熱急冷後にマルテンサイト組織が得られず、旧γ粒を細かくすることが出来なかった。その結果、塊状マルテンサイトが多量に発生し、耐水素脆化特性が低下した。
次にNo.7〜12は、第一の連続焼純工程における2回目の急熱急冷処理のうち、いずれかの条件が本発明法の範囲を満足しない例である。
まず、No.7は、加熱温度T3が930℃と、A3点を下回る例であり、旧γ粒を細かくすることが出来ず、その為、塊状マルテンサイトが多量に生成してしまい、耐水素脆化特性が低下した。
No.8は、加熱時間t3が短すぎる例であり、オーステナイト化が充分進行せずに冷却後にマルテンサイトが充分得られなかった。その結果、所定量の焼戻マルテンサイトが得られず、伸びが低下した。また、塊状の微細マルテンサイトが少量となり、耐水素脆化特性が低下した。
No.9は、加熱温度T3が高すぎる例であり、γの粒成長を招いて旧γ粒を細かくすることが出来ず、その結果、塊状マルテンサイトが多量に生成し、耐水素脆化特性が低下した。
No.10は、加熱時間t3が長過ぎる例であり、γの粒成長を招いて旧γ粒を細かくすることが出来なかった為、塊状マルテンサイトが多量に生成し、耐水素脆化特性が低下した。
No.11は冷却速度CR2が小さい例;No.12は、冷却後の温度T4が400℃と、Ms点を超えている例であり、いずれも2回目の急熱急冷後にマルテンサイト組織が得られなかった。その結果、所定量の焼戻マルテンサイトが得られず、伸びが低下した。また、塊状の微細マルテンサイトが少量となり、耐水素脆化特性が低下した。
次にNo.13〜19は、第二の連続焼純工程のうち、いずれかの条件が本発明法の範囲を満足しない例である。
まず、No.13は、加熱温度T5が930℃と、本発明で規定する加熱温度の上限を超える例であり、オーステナイト化によって所定のラス状構造が得られず、所望の焼戻マルテンサイト等は全く得られなかった為、伸びが低い。
No.14は、加熱温度T5が800℃と低過ぎる例であり、所定量の塊状マルテンサイトが得られず、TSが低くなる。
No.15は、加熱時間t5が長過ぎる例であり、所望の焼戻マルテンサイトが得られない為、伸びが低くなる。
No.16は、加熱時間t5が短過ぎる例であり、γの生成量が少ない為に所定量のγRが得られず、伸びが低くなる他、耐水素脆化特性も低下した。
No.17は、冷却速度CR3が小さい例であり、パーライトが多量に生成して所定量の塊状マルテンサイトが得られず、所望の強度を確保できなかった。
No.18は、冷却後の加熱温度T6が高過ぎる例であり、パーライトが多量に生成する為、最終的に得られるγRが少なくなり、伸びが低くなる他、耐水素脆化特性が低下した。
No.19は、冷却後の加熱温度T6が低過ぎる例であり、最終的に得られるγRが1%と非常に少なくなる為、ELが低くなる。また、γRが少なくなって塊状マルテンサイトが多量に生成する為、耐水素脆化特性が低下した。
更にNo.21は、第一の連続焼純工程における1回目の急熱急冷処理を省略した例であり、先願発明に相当するものである。本発明法の如く所定の急熱急冷処理を2回実施していない為、旧γ粒の微細化が行われず、所定量の微細マルテンサイトが生成しない為、所定の超高高度域における優れた伸びは確保できたが、耐水素脆化特性が低下した。
No.22は、第一の連続焼純工程を省略した例であり、従来のポリゴナルフェライト含有TRIP鋼板に相当するものである。本発明法の特徴である所定の第一の連続焼鈍工程を実施しない為、旧γ粒の微細化が行われず微細なマルテンサイトが全く生成しない為、耐水素脆化特性は著しく低下した。更に、延性向上に寄与する焼戻マルテンサイトも全く得られず、フェライトが過剰となる為、伸びが低下した。
参考までに図4に、本発明例(No.1)及び比較例(No.21)の光学顕微鏡写真(倍率1000倍)を夫々、示す。これらの図より、本発明法で製造したNo.1では、所望の微細な塊状マルテンサイトが生成されているのに対し、先願発明の方法で製造したNo.21では、粗大な塊状マルテンサイトが生成することが分かる。
実施例3(加工歪の模擬実験)
本実施例では、オーステンパ処理時間を種々変化させて得られた鋼板に、様々な加工歪を付与してプレス成形部品とした(加工歪の模擬実験)ときの耐水素脆化特性について調べた。
具体的には表1の鋼種B(本発明の成分組成を満足する鋼)を用い、実施例1において、第二の連続焼純工程を、420℃で120秒または360秒間保持したこと以外は実施例1と同様にして鋼板を得た。
この様にして得られた各鋼板について、加工による影響を調べる目的で、以下の実験を行った。
まず、上記鋼板から引張試験片(JIS5号)を採取し、室温または温間(100℃)にて種々の予歪(最大で10%)を加えた後、当該引張試験片の平行部から幅15mm、長さ65mmの試験片を採取した。この試験片について、JIS Z 2244に基づくビッカース硬さ試験(Hv;試験荷重9.807N)を実施すると共に、γR及びマルテンサイトの占積率、γRのC濃度(CγR)、並びに耐水素脆化特性(陰極CH寿命)を実施例1と同様にして測定した。
これらの結果を表5(室温加工したときの結果)及び表6(温間加工したときの結果)に示す。尚、本実施例では前述の実施例1と異なり、上記方法による陰極CH寿命の測定時間が900秒以上のものを「耐水素脆化特性に優れるプレス成形部品」と評価した。本実施例では実施例1等と異なり、加工歪を付与しており、加工による耐水素脆化特性の劣化は或る程度避けられないという観点から、その評価基準を900秒以上と、実施例1に比べて若干低く設定した次第である。
また、これらの表には、マルテンサイト及びγR以外の他の組織(焼戻マルテンサイト及びフェライト)の占積率は記載していないが、当該他の組織の占積率はいずれも、本発明の範囲を満足していることを確認している。
Figure 2004308002
Figure 2004308002
これらの表より、以下の様に考察することができる。
このうち表5は、オーステンパ処理時間を120秒または360秒とし、室温にて歪量を0〜10%の範囲で変化させたときにおける、組織及び各種特性の結果をまとめたものである。
まず、オーステンパ処理時間が120秒の場合は、加工歪の上昇(高加工処理)に伴って耐水素脆化特性の低下が認められた。即ち、歪量が6%までは、塊状マルテンサイト、γR、CγRのいずれもが本発明の範囲を満足している為、所望の陰極CH寿命(900秒以上)が得られているが、歪量が8%以上の高加工になると塊状マルテンサイトが多量に生成し、残留オーステナイトが少なくなる為、陰極CH寿命が著しく低下し、耐水素脆化特性に劣っている。ちなみに、加工する前(即ち、歪量0%)の鋼板中のCγRは0.80%である。
これに対してオーステンパ処理時間を360秒とした場合は、歪量を10%まで高めたとしても、塊状マルテンサイト、γR、CγRのいずれもが本発明の範囲を満足している為、耐水素脆化特性に優れている。ちなみに、加工する前(即ち、歪量0%)の鋼板中のCγRは0.88%である。
これらの結果より、本発明鋼板を室温加工して超高強度プレス成形部品を製造する場合には、オーステンパ処理時間を長くしてCγRを0.85%以上とし、γRを安定化させる方法が有用であり、これにより、高加工処理しても耐水素脆化特性に優れたプレス成形部品を得ることができる。
次に表6は、オーステンパ処理時間を120秒または360秒とし、温間(100℃)にて歪量を0〜10%の範囲で変化させたときにおける、組織及び各種特性の結果をまとめたものである。
各オーステンパ処理時間(120秒/360秒)の結果を前述した表5の結果と対比してみると、室温加工に比べて温間加工の方が、加工に伴うγRの変態率(γRからマルテンサイトへと変態する程度)を抑制する傾向が強く認められており、その結果、耐水素脆化特性も改善されていることが分かる。
即ち、歪量を2%、4%、6%と高くしたときにおける、γRの低下率及び塊状マルテンサイトの増加率を夫々、比較してみると、オーステンパ処理時間が120秒の場合、歪量が2%、4%、6%と上昇するにつれ、γRは13%、8%、6%と低下し、逆に塊状マルテンサイトは36%、42%、44%と増加しているのに対し;オーステンパ処理時間が360秒の場合はオーステンパ処理時間が120秒の場合に比べて、歪量の増加に伴うγRの低下率及び塊状マルテンサイトの増加率が若干抑えられており、歪量が2%、4%、6%と上昇するにつれ、γRは14%、11%、8%と低下し、逆に塊状マルテンサイトは35%、39%、42%と増加しているが、これらの変化率は、オーステンパ処理時間が120秒の場合に比べて、やや鈍化傾向にある。
以上の結果より、耐水素脆化特性に優れた超高強度プレス成形部品を製造するに当たっては、鋼板製造段階において、オーステンパ処理時間を長くして鋼板中のCγRを0.85%以上としてγRを安定化させることが有用であること(表5の歪量0%の陰極CH寿命を対比すると、そんなに変わりませんが…);更に加工段階においては、室温加工に比べてγRの変態を抑制し易いと言われている温間加工を施すことにより、γRを一層安定化させることが有用であること:そして、これらの併用により、耐水素脆化特性が益々改善されることが分かる。
同一成分系における焼戻マルテンサイトの硬度と、ポリゴナルフェライトの硬度を対比したグラフである。 焼戻マルテンサイト及びポリゴナルフェライトの硬度に及ぼすC量の影響を示すグラフである。 本発明法の代表的な工程を説明した概略図(第一の連続焼鈍工程において急熱急冷処理を2回行なったもの)である。 実施例2における本発明例(No.1)及び比較例(No.21)の光学顕微鏡写真(倍率1000倍)である。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C :0.06〜0.6%、
    Si+Al:0.5〜3%、
    Mn:0.5〜3%、
    P :0.15%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含む)
    を含有し、且つ、
    組織は、全組織に対する占積率で、
    焼戻マルテンサイトを15〜60%、
    フェライトを5〜50%、
    残留オーステナイトを5%以上、及び
    アスペクト比が3以下の塊状マルテンサイトを15〜45%含有しており、該塊状マルテンサイト中、平均粒径が5μm以下の微細マルテンサイトの占める占積率は30%以上
    であることを特徴とする、引張強度が1180MPa以上の超高強度域における伸び、及び耐水素脆化特性に優れた超高強度鋼板。
  2. 更に、質量%で、
    Mo:1%以下 (0%を含まない),
    Ni:0.5%以下(0%を含まない),
    Cu:0.5%以下(0%を含まない),
    Cr:1%以下 (0%を含まない)
    の少なくとも一種を含有するものである請求項1に記載の超高強度鋼板。
  3. 更に、質量%で、
    Ti:0.1%以下(0%を含まない),
    Nb:0.1%以下(0%を含まない),
    V :0.1%以下(0%を含まない)
    の少なくとも一種を含有するものである請求項1または2に記載の超高強度鋼板。
  4. 更に、質量%で、
    Ca :0.003%以下(0%を含まない)、及び/又は
    REM:0.003%以下(0%を含まない)
    を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の超高強度鋼板。
  5. 前記残留オーステナイト中の固溶炭素量が0.85%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の超高強度鋼板。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の超高強度鋼板を製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれかに記載の成分を満足する鋼をA3点以上1100℃以下の温度に10秒間以上加熱保持した後、30℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以下の温度まで冷却する工程を少なくとも2回包含する工程、及び
    (A3点−25℃)〜A3点の温度で120〜600秒加熱保持した後、3℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以上Bs点以下の温度まで冷却し、該温度域で1秒間以上保持する工程
    を包含することを特徴とする超高強度鋼板の製造方法。
  7. 請求項5に記載の超高強度鋼板を製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれかに記載の成分を満足する鋼をA3点以上1100℃以下の温度に10秒間以上加熱保持した後、30℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以下の温度まで冷却する工程を少なくとも2回包含する工程、及び
    (A3点−25℃)〜A3点の温度で120〜600秒加熱保持した後、3℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以上Bs点以下の温度まで冷却し、該温度域で200秒以上保持する工程
    を包含することを特徴とする超高強度鋼板の製造方法。
  8. 請求項5に記載の超高強度鋼板を温間プレス成形することを特徴とする超高強度プレス成形部品の製造方法。
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