JP2004307598A - 水溶性樹脂組成物およびフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂とヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有する水溶性樹脂組成物およびかかる組成物から成形されるフィルムであり、該ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)系樹脂とヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有する水溶性樹脂組成物に関し、更に詳しくは、長期間放置してもフィルム同士の密着がなく、また、過硼酸ソーダを含有する薬剤を包装しても、不溶化することがなく、さらには、包装した薬剤が水に投入され、フィルムの一部が溶けて硼酸系水溶液に残りのフィルムがさらされても、それが不溶化することなく完全に溶解する性質を保有するフィルムの製造に有用な水溶性樹脂組成物及びそのフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、PVA系樹脂の水溶性を生かして、農薬や洗剤等の薬剤をPVA系樹脂のフィルムからなる袋に入れた薬剤の分包(ユニット包装)が提案され、幅広く用いられている。
かかるフィルムとしては、包装されている薬剤を水中にすばやく分散させ、しかも包装性、強度的に優れる点で、水不溶性の低置換度ヒドロキシアルキルセルロースと水溶性のPVAを主成分として含む水溶性フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、殺菌性や腐敗性を付与するための硼酸系物質を含む薬剤をPVA系フィルムで包装しても不溶化しないフィルムとして、PVA系樹脂100重量部に、4〜6価の多価アルコール1モルに対しアルキレンオキシド1〜4モルを付加反応して得られた化合物2〜100重量部を配合した組成物からなる水溶性フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−113023号公報
【特許文献2】
特開平9−272772号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、ユニット包装される薬剤(洗剤等)の中には、酸化漂白の効果を高めるために過硼酸ソーダ等が添加されることが多くなり、かかる過硼酸ソーダが含まれている薬剤を包装した状態でも水溶性の良好なPVA系フィルムが求められ、さらにはかかる薬剤をPVA系フィルムに包装して水中に投入した時に、かかる薬剤が水に溶けて硼酸系水溶液となってもフィルムが不溶化せず完全に溶解するという水溶性も求められ、しかも水溶性を高めても保管時に空気中の水分を吸収してフィルム同士が密着することのない性能が要求されている。従来の技術をこのような観点から見ると、特許文献1に開示の水溶性フィルムは、長期間保管してもフィルム同士が密着することはなく、水中で分散もするものの、本質的に水不溶性のヒドロキシアルキルセルロースを併用する以上、フィルムが完全に溶解しないという欠点を有するものであり、特に硼酸系水溶液中では、かかる現象が顕著に表れることが明らかとなった。
また、特許文献2に開示のフィルムは、硼酸と反応してゲル化したりすることはないが、水中に投入された包装フィルムの一部が溶解して系が硼酸水溶液となった状態の中では、該フィルムは外見上完全に溶解している様には見えるものの、かなりの不溶解残渣が残ることがあり、これが洗濯機のフィルターの目詰まりを起こす等の実用上のトラブルを引き起こしたり、さらに、長期間放置するとフィルム同士にベタツキを生じ、それらを重ねておくと密着してしまうという欠点があり、実用性には改良の余地があることが判明した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は上記の如き現況に鑑み鋭意研究した結果、PVA系樹脂とヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有する水溶性樹脂組成物およびそれから成形されるフィルムが、上記目的に合致することを見出し本発明を完成した。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂は、特に制限されるものではないが、20℃における4重量%水溶液粘度は、5〜60mPa・sが好ましく、さらには10〜35mPa・sである。かかる4重量%水溶液粘度が5mPa・s未満では得られるフィルムの機械強度が低下することがあり、60mPa・sを越えるとフィルム製膜時の水溶液粘度が高くなり作業性が悪くなることがあり好ましくない。
【0008】
また、かかるPVA系樹脂のケン化度も特に限定されないが、70〜99.9モル%であることが好ましく、さらには80〜99.9モル%である。かかるケン化度が70モル%未満では、製膜性が低下したり包装対象の薬剤のpHがアルカリ性になると経時的にフィルムの溶解性が悪くなったりすることがある。逆に99.9モル%を越えるとフィルム溶解性が低下することがあり好ましくない。
尚、PVA系樹脂の粘度の測定は、JIS K 6726 5.8、ケン化度の測定は、JIS K 6726 5.2に準じて行われる。
【0009】
上記のPVA系樹脂としては未変性のPVA系樹脂や変性PVA系樹脂が挙げられ、まず、未変性のPVA系樹脂について述べる。
かかる未変性のPVA系樹脂は公知の方法で製造することができる。即ち、ビニルエステル系化合物を重合し、ケン化して製造されるものである。
かかるビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が単独又は併用で用いられるが、実用上は酢酸ビニルが好ましい。
【0010】
ビニルエステル系化合物の重合は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の公知のラジカル重合触媒を用いて行われる。又、反応温度は50℃〜沸点程度の範囲から選択される。
ケン化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができる。尚、場合によっては、酸触媒によりケン化することも可能である。
【0011】
本発明においては、上記の未変性のPVA系樹脂以外にも上記のビニルエステル系化合物の重合時にビニルエステル系化合物と共重合可能な単量体を共重合させた変性PVA系樹脂も使用でき、特にアニオン性基変性PVA系樹脂を用いると、得られたフィルムを長期間保管しても冷水溶解性を維持できる点で好ましく、かかる変性PVA系樹脂について説明する。
かかるアニオン性基変性PVA系樹脂のアニオン性基の種類としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
まずカルボキシル基変性PVA系樹脂の製造方法について説明する。
【0012】
かかる変性PVA系樹脂は、任意の方法で製造することができ、例えば、カルボキシル基を有する単量体と上記のビニルエステル系化合物を共重合した後にケン化する方法等を挙げることができる。なお、共重合時に必要に応じてその他の単量体や連鎖移動剤を併用してもよい。
【0013】
カルボキシル基を有する単量体としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等)〔但し、これらのジエステルは共重合体のケン化時に加水分解によりカルボキシル基に変化することが必要である〕、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、あるいはエチレン性不飽和モノカルボン酸〔(メタ)アクリル酸、クロトン酸等〕等の単量体、及びそれらの塩が挙げられ、その中でも特にマレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸が好ましく、更にはマレイン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
【0014】
その他の単量体としては、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、オレイン酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、ステアリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ヤシ油脂肪酸アリル、オクチル酸アリル、酪酸アリル等の飽和カルボン酸のアリルエーテル、エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン、α−ドデセン、α−ヘキサデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン性基を有する単量体が挙げられる。
【0015】
連鎖移動剤としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトステアリン酸等が挙げられる。
【0016】
共重合は、通常メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、乳化重合、懸濁重合も可能である。かかる溶液重合において単量体の仕込み方法としては、まずビニルエステル系化合物の全量と前記のカルボキシル基を有する単量体の一部を仕込み、重合を開始し、残りの単量体を重合期間中に連続的に又は分割的に添加する方法、前者を一括仕込みする方法等任意の手段を用いて良い。
【0017】
かかる共重合は、上記の未変性のPVA系樹脂の重合のところで述べた触媒の存在下、50℃〜沸点程度で実施される。また、ケン化にあたっては、得られた共重合体をアルコールに溶解して上記で述べたケン化触媒の存在下に行なわれる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。
【0018】
次にスルホン酸基変性PVAについて述べる。
スルホン酸基で変性されたスルホン酸変性PVAは、スルホン酸基を有する単量体と前記ビニルエステル系化合物を、上記カルボキシル基変性PVA系樹脂の共重合のところで述べた方法と同様の方法で共重合した後、ケン化すればよい。かかるスルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のナトリウム、カリウム塩等が挙げられる。
また、かかる変性PVA系樹脂は、PVAにビニルスルホン酸もしくはその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩等をマイケル付加(後反応)させる方法により製造してもよい。
【0019】
上記のカルボキシル基やスルホン酸基で変性されたアニオン性基変性PVA系樹脂の変性量は、0.5〜10モル%から選ぶのが実用的であって、更には2〜6モル%、特には3〜5モル%が好ましい。かかる変性量が0.5モル%未満では、得られたフィルムを長期間保管すると冷水溶解性が低下することがあり、10モル%を越えると、得られたフィルムが着色することがあり実用的でない。
【0020】
本発明で用いるヒドロキシアルキルセルロースは、水溶性であってヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上であることが必要であり、好ましくは40〜70モル%である。かかるヒドロキシアルキルセルロースの含有量が20モル%未満ではかかるフィルムの水溶性が低下し、本発明の効果を発揮するに至らず不適当である。
なお、ヒドロキシアルキル基の含有量とは、セルロースを構成するグルコース中の5つのヒドロキシル基の内、隣のグルコ−スの結合に関与しない3つのヒドロキシル基がヒドロキシアルキル基で置換された平均のモル%を意味する。
また、ヒドロキシアルキルセルロース中のヒドロキシアルキル基に更にヒドロキシアルキル基が付加してもよい。
ヒドロキシアルキルセルロースとして具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられるが、水中での安定性が良好な点でヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0021】
また、かかるヒドロキシアルキルセルロースの20℃における2重量%水溶液粘度が3〜2000mPa・sであることもフィルムの製膜性が良好な点で好ましく、更には8〜1000mPa・sである。かかる粘度が3mPa・s未満では得られるフィルムの機械物性が劣り、2000mPa・sを越えると組成物溶液の粘度が高くなり製膜時の作業性が低下することがあり好ましくない。なお、粘度の測定は、JIS K 7117に準拠して行われる。
【0022】
かかるヒドロキシアルキルセルロースの製造法は特に制限されないが、セルロースを水酸化ナトリウム等でアルカリセルロースとした後、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の酸化アルキルと反応させたり、アルカリセルロースとエチレンクロロヒドリンを反応させたりして製造される。
【0023】
本発明の水溶性樹脂組成物においてかかるヒドロキシアルキルセルロースの配合量は、PVA系樹脂100重量部に対して、25〜400重量部が好ましく、更には40〜240重量部である。かかる配合量が25重量部未満では、硼酸系物質との反応性が大きくなり、得られるフィルムの硼酸水溶液への溶解性が低下することがあり、400重量部を越えると製膜時の作業性が低下することがあり好ましくない。
【0024】
上記の水溶性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、可塑剤、滑剤、本発明で使用する以外の水溶性高分子(澱粉、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース等)、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を含有させることも可能である。
【0025】
該界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。
【0026】
該可塑剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、N−メチルピロリドン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、還元麦芽糖水あめ類、還元乳糖、還元水あめ(還元澱粉糖化物)等が挙げられ、これらは単独又は併用して用いられる。
【0027】
かくして本発明の水溶性樹脂組成物が得られるのであるが、かかる組成物は薬剤包装等に用いられる水溶性フィルムとして有用であり、かかるフィルムについて以下に説明する。
かかるフィルムを得るに当っては、フィルムにピンホールが生じないことやフィルムの膜厚が一定にできる点で流延法やキャスト法を採用することが好ましい。
【0028】
これらの方法を行うにあたってはまず、上記の水溶性樹脂組成物に適宜水を加えて固形分濃度が10〜50重量%(好ましくは15〜35重量%)の水溶液を得る。
上記樹脂組成物の固形分濃度が10重量%未満ではフィルムの生産性が低下し、50重量%を越えると高粘度となって水溶液の脱泡に時間を要することがあり、またフィルム製膜時にダイラインが発生し好ましくない。
【0029】
かかる水溶液を表面温度が50〜100℃、好ましくは70〜95℃のエンドレスベルトやドラムロールの金属表面に流延し、乾燥し、必要に応じて熱処理して水溶性フィルムを得ることができる。
上記金属表面の温度が50℃未満では乾燥に時間を要することがあり、100℃を越えると製膜時に発泡することがあり好ましくない。
【0030】
また、アプリケーターを用いて、上記水溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム等のプラスチック基材あるいは金属基材上にキャストして、乾燥させてフィルムを得ることもできる。
【0031】
かくして得られたフィルムの厚みは、用途により一概に言えないが、通常5〜100μm、特には10〜80μmであることが好ましく、かかる厚みが5μm未満ではフィルムの機械的強度が低下することがあり、逆に100μmを越えると冷水での溶解速度が遅くなることがあり、又製膜時の効率も低下することがあり好ましくない。
【0032】
該フィルムの表面はプレーンであってもよいが、該フィルムの片面或いは両面にエンボス模様や梨地模様等を施しておいても良い。
【0033】
かかるフィルムは各種の包装用途等に有用であるが、特に洗剤や農薬等の薬剤のユニット包装用途に有用である。
かかる薬剤としては、その使用形態が水に溶解又は分散させて用いる薬剤が対象とされ、アルカリ性、中性、酸性のいずれで有っても良い。更に、薬剤の形状も顆粒、錠剤、粉体、粉末、液状等いずれの形状でも良い。また、薬剤の含有成分として殺菌性を付与したり、腐敗防止の目的で硼酸系物質を配合してなる薬剤の場合に本発明の効果が充分発揮される。即ち、硼酸、硼酸ソーダ、硼酸カリウム、過硼酸ソーダ、過硼酸カリウム等の硼酸系物質、特に過硼酸ソーダを含有する薬剤を包装したフィルムは、薬剤が水に溶けて硼酸系水溶液となっても、フィルムがゲル化したり不溶化したりすることがなく完全に溶解し、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0034】
本発明のフィルムを用いて薬剤を包装するに当たっては、予め該フィルムを袋状にしておいてから薬剤を収納、包装する方法、フィルム上に薬剤を単位ごとに配置し、その間隙をヒートシール等に包装する方法等が挙げられる。
【0035】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
尚、例中「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
4%水溶液粘度22mPa・s(20℃)、ケン化度97モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量4.0モル%のカルボキシル基変性PVA100部に、ヒドロキシエチル基を50モル%含有し、20℃における2%水溶液粘度が60mPa・sのヒドロキシエチルセルロース40部、グリセリン10部及び界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル)2部、及び水617部を混合して固形分濃度20%の水溶性樹脂組成物の水溶液を得た。
得られた水溶液を表面温度が80℃のステンレス板上に流延し、105℃の熱風乾燥機中で15分間乾燥して、厚さ50μmのフィルムを得た。
【0036】
得られたフィルムについて、以下の評価を行った。
(フィルム同士の密着)
上記で得られたフィルム(10cm×10cm)5枚を重ねてフィルム全体に1cm2当り5gの荷重を掛けて23℃、50%RHで1週間放置後、フィルムを1枚1枚はがす時の状態を以下のように評価した。
○・・・5枚を容易にはがすことができる
△・・・やや密着しているもののゆっくりはがすとフィルムが伸びることなくはがすことができる
×・・・フィルムが完全に密着しており、はがすときにフィルムが伸びたりはがすことができない
【0037】
(溶解性)
▲1▼硼酸系水溶液への溶解性
得られたフィルムを、12cm×10cmのサイズにカットした後、ヒートシーラーを用いて二方向をシールして袋(6cm×10cmのサイズ)を作製し、かかる袋に、pH9.0、水分量1.5%の液体洗浄剤(ラウリン酸80%、ペンタエチレングリコール10%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル10%)を30g収納し、更に残りの一辺をヒートシールしてパケット状の薬剤包装体(6cm×10cmのサイズ)を製造した。
1リットルビーカーに25℃の硼酸系水溶液〔過硼酸ソーダを水に溶解し3%の水溶液として調製〕1リットルを入れ、スターラーにより撹拌(300rpm)しながら、上記一つの薬剤包装体を投入し、10分間撹拌をつづけ、薬剤及びフィルムを溶解させた。5分後及び10分後に該水溶液を42メッシュの篩いでろ過し、篩い上の残渣を観察、以下の通り評価した。
○・・・5分間撹拌後に残渣なし
△・・・5分間撹拌後には残渣が見られたものの10分間撹拌後には残渣なし
×・・・10分間撹拌後も残渣あり
【0038】
▲2▼過硼酸ソーダ含有薬剤を包装した包装体の水への溶解性
上記で作製した包装体に、市販の衣類用粉末洗剤(P&G社製、「アリエール」)100部と過硼酸ソーダ25部を配合した洗浄混合物12gを収納し、更に残りの一辺をヒートシールしてパケット状の薬剤包装体を製造した。
1リットルビーカーに25℃の水1リットルを入れ、スターラーにより撹拌(300rpm)しながら、上記薬剤包装体を投入し、10分間撹拌を行い、該洗剤混合物及びフィルムを溶解させた。5分後及び10分後に、該水溶液を42メッシュの篩いでろ過し、篩い上の残渣を観察し、以下の通り評価した。
○・・・5分間撹拌後に残渣なし
△・・・5分間撹拌後には残渣が見られたものの10分間撹拌後には残渣なし
×・・・10分間撹拌後も残渣あり
【0039】
実施例2
実施例1で用いたカルボキシル基変性PVAに替えて4%水溶液粘度30mPa・s(20℃)、ケン化度97モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量4.0モル%のカルボキシル基変性PVAを使用した以外は同様に実施して評価した。
【0040】
実施例3
実施例1で用いたカルボキシル基変性PVAに替えて4%水溶液粘度30mPa・s(20℃)、ケン化度90モル%、マレイン酸モノメチルエステルにより4.0モル%変性したカルボキシル基変性PVAを使用した以外は同様に実施して評価した。
【0041】
実施例4
実施例1で用いたヒドロキシエチルセルロースに替えてヒドロキシプロピル基を65モル%含有し、20℃における2%水溶液粘度が8mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース40部を用いた以外は同様に実施して評価した。
【0042】
実施例5
実施例1で用いたヒドロキシエチルセルロースに替えてヒドロキシエチル基を40モル%含有し、20℃における2%水溶液粘度が150mPa・sのヒドロキシエチルセルロースを同量用いた以外は同様に実施して評価した。
【0043】
実施例6
実施例1で用いたカルボキシル基変性PVAに替えて4%水溶液粘度14mPa・s(20℃)、ケン化度80モル%、未変性のPVAを用いた以外は同様に実施して評価した。
【0044】
実施例7
実施例1で用いたヒドロキシエチルセルロースに替えてヒドロキシエチル基を75モル%含有し、20℃における2%水溶液粘度が30mPa・sのヒドロキシエチルセルロースを同量用いた以外は同様に実施して評価した。
【0045】
比較例1
実施例1において、ヒドロキシエチル基の含有量が10モル%のヒドロキシエチルセルロースを使用した以外は同様に実施して評価した。
実施例1〜7、比較例1の評価結果を表1に示す。
【0046】
〔表1〕
【0047】
【発明の効果】
本発明の水溶性樹脂組成物は、ポリビニルアルコール系樹脂とヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有するため、かかる組成物から得られたフィルムは長期間保存してもフィルム同士が密着することもなく、硼酸系物質、特に過硼酸ソーダを含有する薬剤を包装しても、硼酸系水溶液中でも完全に溶解する。
Claims (7)
- ポリビニルアルコール系樹脂とヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースを含有することを特徴とする水溶性樹脂組成物。
- ヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースがヒドロキシエチルセルロースあるいはヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする請求項1記載の水溶性樹脂組成物。
- ヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースの20℃における2重量%水溶液粘度が3〜2000mPa・sであることを特徴とする請求項1あるいは2記載の水溶性樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂の20℃における4重量%水溶液粘度が5〜60mPa・s、ケン化度が70〜99.9モル%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の水溶性樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂がアニオン性基変性ポリビニルアルコールであり、かつアニオン性基変性量が2〜6モル%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の水溶性樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、ヒドロキシアルキル基の含有量が20モル%以上のヒドロキシアルキルセルロースを25〜400重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の水溶性樹脂組成物。
- 請求項1〜6いずれか記載の水溶性樹脂組成物から成形されることを特徴とするフィルム。
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