JP2004305250A - 心臓不整脈治療のための装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルにおいて、バルーンを標的病変部に配置させることができる心臓不整脈治療のための装置及び方法を提供する。
【解決手段】剛性が高く、形状記憶性の良い放射線遮蔽性金属製のコアワイヤーと先端コイルからなり、前記コイルに予備成形部を有し、且つ手元側にストッパーとハンドルを有するスタイレットを、カテーテル外筒シャフト先端部に剛性の調節が可能な柔軟部を有するバルーンカテーテルにスライド可能に配置することで、前記カテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を付与した心臓不整脈治療のための装置及び方法。
【選択図】 図7
【解決手段】剛性が高く、形状記憶性の良い放射線遮蔽性金属製のコアワイヤーと先端コイルからなり、前記コイルに予備成形部を有し、且つ手元側にストッパーとハンドルを有するスタイレットを、カテーテル外筒シャフト先端部に剛性の調節が可能な柔軟部を有するバルーンカテーテルにスライド可能に配置することで、前記カテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を付与した心臓不整脈治療のための装置及び方法。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波加温を行うことにより心臓不整脈の発生源となる部位を局所的に治療するためのバルーンカテーテルを有し、バルーンを標的病変部に配置させるためにバルーンカテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を与える心臓不整脈治療のための装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、不整脈の発生源に対して、4mm大のチップからなる金属製電極のカテーテルを接触させ、高周波通電することにより、不整脈の発生源を電気凝固する治療方法が普及している。しかしながら、この手法は、WPW症候群や発作性心室頻拍等のように発生源が局所的である場合は比較的効果があるが、心房細動や心房粗動を治療するには広範囲の点状あるいは線状の焼灼(アブレーション)を繰り返す、すなわち数十回の通電を行う必要があってカテーテル操作が難しく、技術的に極めて難しく不成功で終わることがほとんどであった。
【0003】
従来の高周波加温用電極と温度センサーを設置したバルーンカテーテル(例えば、特許文献1及び2参照)は高周波通電を行い加温させたバルーン全体で治療を行っていた。特許文献2(特許第2574119号公報)には肺静脈の血管壁を幅広く焼灼できるバルーンカテーテルの例と、右心房全体を占める大きなバルーンで4つの肺静脈口の全てを同時にバルーンに接触させて同時に焼灼できるバルーンの例が示されているが、肺静脈の血管壁を幅広く焼灼すると、肺静脈内の狭窄をきたし肺高血圧症の原因となるおそれが考えられ、また右心房全体を占める大きなバルーンを用いて焼灼するには、心臓を一時停止させ、人工心肺を用いた体外循環を行う必要がある。
【0004】
特許文献3(特表2001−525695号公報)にはスタイレットを使用したアブレーション用カテーテルが開示されている。特許文献3によると、アブレーション用カテーテルを左心房内のより遠隔解剖学的構造内に配置するために、アブレーション用カテーテル中間部分の補強及び形状付与材として、スタイレットをアブレーション用カテーテル内にスライド可能に挿入して使用している。このような方法により、スタイレットよりもより遠位部のアブレーション用カテーテルの切除要素を含む表面部分を左心房内の所定の位置に配置することができると共に、スタイレットにより形状付与された部分のアブレーション用カテーテルの切除要素を含む表面部分をも心房壁の組織に接触させることができる。また、先端部にはバルーンが配設されているが、その使用目的はアブレーション用カテーテル先端部の固定である。更に、アブレーション用カテーテルには局所的な柔軟部が設定されていないため、予備成形されたスタイレットのスライド挿入により何れの部分でも湾曲部が生じ、そのため左心房に到達するまでの血管壁等の損傷が考えられる。以上から、特許文献3にはアブレーション装置としてのバルーンを有するバルーンカテーテルとスタイレットを用いたアブレーション方法が開示されていない。
【0005】
高周波ホットバルーンカテーテル(非特許文献1参照)は、肺静脈口周囲を容易に且つ短時間で輪状焼灼可能なカテーテルである。肺静脈口を輪状に焼灼できるため、金属製電極カテーテルのように焼灼を何度も行う必要がなく、特許文献1(特許第2574119号公報)に記載のカテーテルのように、肺静脈を幅広く焼灼しないために、再狭窄をきたすおそれもなく、肺静脈口を1つだけ焼灼するために心臓を停止させる必要がない。
【0006】
このような焼灼術では、高周波ホットバルーンカテーテル内にスライド可能に配設されたガイドワイヤーを1つの肺静脈内に先行させて留置した後、前記ガイドワイヤーに追従させて高周波ホットバルーンカテーテルを進めることで、肺静脈口へ高周波ホットバルーンカテーテル先端部のバルーン部分を誘導、配置している。特許文献4(特開平10−146390号公報)にあるようにガイドワイヤーは、血管への挿入時に血管壁の損傷を防止するためまた血管の選択性を向上させるため、柔軟な超弾性素材からなり、先端部ほどより柔軟な構造となっており、且つ最先端部はJ型やアングル型に予備成形されている場合がある。また、X線による体内での視認性を向上させるため放射線遮蔽性の材料が使用されている。また、カテーテル内、及び血管内での易滑性を向上させるためガイドワイヤー表面には親水性潤滑層を有している。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−68073号公報
【0008】
【特許文献2】
特許第2574119号公報
【0009】
【特許文献3】
特表2001−525695号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平10−146390号公報
【0011】
【非特許文献1】
カズシ・タナカら、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー」,2001年,38(7),p2079−2086
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の様にガイドワイヤーを心臓内の標的病変部に向かって先行させて留置した後、前記ガイドワイヤーに追従させてバルーンカテーテルを進めることで、標的病変部へバルーンカテーテル先端部のバルーンを誘導、配置した場合、ガイドワイヤー全体が柔軟な超弾性素材で剛性がないため、バルーンカテーテルに十分な剛性を付与できなかった。そのため、バルーンを標的病変部へ十分に押し当てることができず、密着が不十分になることがあり、その結果目的とする焼灼状態が得られないことがあった。
【0013】
また、特に左または右下肺静脈口を焼灼しようとする場合には、左心房内でバルーンカテーテル先端部を湾曲させ、バルーンを各下肺静脈口へ方向付けすることが前記部分へのバルーンの密着性を向上させるために必要となる。しかし、ガイドワイヤーは先端部ほどより柔軟な構造となっているため、特許文献3にあるように手指による形状付け(リシェイプ)ではカテーテルに形状を付与することができず、密着が不十分になることがあり、その結果目的とする輪状の焼灼状態が得られないことがあった。また、肺静脈内に湾曲して留置されたガイドワイヤーの剛性がバルーンカテーテルの剛性よりも小さいため、ガイドワイヤーに追従して肺静脈口に配置されたバルーンカテーテルが反跳し、肺静脈口から外れることがあった。
【0014】
また、心臓内で標的病変部を選択する際、ガイドワイヤーの先端部柔軟性ではバルーンカテーテル先端部に形状を付与することができず、従ってバルーンカテーテル手元側でガイドワイヤーにトルクをかけても左心房内でバルーンの方向を変えることができなかった。
【0015】
更に、バルーンカテーテルの剛性が均一であったため、予備成形されたスタイレットの挿入を考えた場合、バルーンカテーテルの何れの部分でも湾曲部が生じる、あるいは何れの部分でも十分な湾曲が得られないことが推察できた。
【0016】
本発明の目的は、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルの少なくとも一部に柔軟部を設け、前記バルーンカテーテル内に予備成形されたスタイレットをスライド可能に配置することで、カテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を与え、バルーンを標的病変部に配置させることができる心臓不整脈治療のための装置及び方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
【0018】
(1)形状記憶性且つ放射線遮蔽性の金属製コアワイヤーとコアワイヤーの先端側外周に配設した放射線遮蔽性金属製コイルからなり、コイルがバルーンカテーテルに所定の形状を与えるように適合した予備成形部を有し、且つ電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル遠位部内にスライド可能に配置したときに、バルーンカテーテルの剛性を高めることを特徴とするスタイレット。
【0019】
(2)コアワイヤーがステンレス鋼により構成されることを特徴とする(1)に記載のスタイレット。
【0020】
(3)コアワイヤー及びコイルの外径が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする(1)または(2)に記載のスタイレット。
【0021】
(4)コアワイヤーの手元側に、バルーンカテーテル内への配設長さを規制するためのストッパーがあることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスタイレット。
【0022】
(5)コアワイヤーの手元側に、コアワイヤーを回転させるハンドルが配設されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスタイレット。
【0023】
(6)少なくとも一部に柔軟部を有するバルーンカテーテルと予備成形されたスタイレットからなり、スタイレットをバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することで、バルーンカテーテルの柔軟部のみに40°〜140°の湾曲部が形成可能なことを特徴とする心臓不整脈治療装置。
【0024】
(7)スタイレットのハンドル操作によりバルーンの方向変化が可能なことを特徴とする(6)に記載の心臓不整脈治療装置。
【0025】
(8)バルーンカテーテル内腔とスタイレットのクリアランスを通して、バルーンカテーテルの先端孔から粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸引または注入可能なことを特徴とする(6)または(7)に記載の心臓不整脈治療装置。
【0026】
(9)(1)〜(5)のいずれかに記載のスタイレットを電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することによりバルーンカテーテルの剛性を高め、前記スタイレットの予備成形部がバルーンカテーテル遠位部内に配置されたときに、バルーンカテーテルに所定の形状を与えることでバルーンを標的病変部に配置する方法。
【0027】
(10)(1)〜(5)のいずれかに記載のスタイレットを電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することにより、バルーンカテーテルの柔軟部のみに40°から140°の湾曲部を形成する(9)に記載の方法。
【0028】
上述の発明において、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルの少なくとも一部に柔軟部を設け、バルーンカテーテル内に予備成形されたスタイレットをスライド可能に配置することで、バルーンカテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を与え、バルーンを標的病変部に配置させることができる心臓不整脈治療のための装置及び方法を提供することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図によって説明する。
【0030】
まず、本発明におけるバルーンカテーテルについて説明する。図1は本発明のバルーンカテーテルの1例を示す図であり、図2はそのA−A’断面を示す図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル1は互いに軸方向にスライド可能なカテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3とからなる二重管式カテーテルシャフトであることが好ましい。カテーテル外筒シャフト2の外径は3〜5mmが好ましく、内径は2〜4mmが好ましい。またカテーテル内筒シャフト3の外径は1〜3mmが好ましく、内径は0.5〜2mmが好ましく、図8に示すようにスタイレット4が配設されたときにそのクリアランスA5を通してバルーンカテーテル1の先端孔6及び側孔7から、生理食塩液、ブドウ糖液及び一般的な血液粘度である粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸引または注入できることがより好ましい。二重管式カテーテルシャフトは経皮的に血管に挿入され、心房あるいは心室内に誘導できるように十分柔軟であり、バルーンの向きを変化させられるようにカテーテル外筒シャフト2の少なくとも一部、好ましくは先端から100mmまでの部分により柔軟な柔軟部8を有している。カテーテル外筒シャフト2の柔軟部8は、有機溶剤によるカテーテル外筒シャフト2の部分的抽出あるいは剛性の異なる2種類のチューブの接合によって得られるが、これらに限定されるものではない。二重管式カテーテルシャフトの材質は抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定はされないが、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが好ましく用いられる。
【0032】
膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーン9は、直径の最も大きい大径部10からバルーン先端にかけて直径が徐々に小さくなる直円錐体状あるいは円筒状になるような形状が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。バルーンのバルーン全長部11の長さについては心房及び心室内での操作性を考慮すると、20〜40mmであることが好ましく、大径部10については10〜40mmであることが好ましい。バルーン9の材質はポリウレタン系の高分子材料が用いられるが、平滑な表面を有する抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されない。
【0033】
バルーン9はカテーテル外筒シャフト2の先端部にバルーンの後端が固定され、カテーテル内筒シャフト3の先端部にバルーンの先端が固定され、カテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3を摺動させることによって、収縮膨張可能となっていることが好ましい。
【0034】
カテーテル内筒シャフト3の先端部にはさらに、血管及び心臓内壁の損傷を防止するため柔軟な先端チューブ12が取り付けられていることが好ましい。その材質はポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましく用いられるが、抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されない。先端チューブ12の長さは100mm以下であることが好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。また、先端チューブ12の外径はカテーテル外筒シャフト2よりも細いことが好ましく、1〜3mmが特に好ましい。また、先端チューブ12には1個または複数の側孔7を設けることで、バルーン先端部近傍で造影剤が噴出され、肺静脈口等への密着性を確認することができる。
【0035】
電気的隔離のためのアブレーションを行うためには、一般的に体内に配設される電極と体表面に配設される対極との間で、高周波電力を伝送する方法が行われる。体表面に配設される対極(図示せず)は、体表面に密着できるように銅あるいはアルミニウム等の金属をフィルム状にしたものが用いられるが、高周波電力を伝送可能な材質のものであれば特に限定されない。対極との間で高周波電力を伝送可能なバルーン9内に配設された高周波通電用電極13には銅線等が用いられるが、高周波を通電させたときに発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材質で構成されたものであれば特に限定されない。高周波通電用電極13は、操作時にバルーン9を損傷しないようにカテーテル内筒シャフト3に巻き付けられていることが好ましく、このカテーテル内筒シャフト3が高周波通電用電極13中をスライド可能なように巻き付けられていることがより好ましい。高周波通電用電極13に電気的に接続されるリード線13aには銅線等が用いられるが、高周波通電用電極13に高周波を送達させる目的で用いられうるものであれば特に限定されず、高周波を通電させたときに発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材質で構成されたものが好ましい。また、リード線13aは保護被膜A13bで被覆され、保護被膜A13bは高周波通電時の発熱を抑制するため比誘電率が低く、絶縁性の高いものが好ましい。保護被膜A13bにはフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
バルーン9内の温度をモニター可能な温度センサー14は操作時にバルーン9を損傷しないように、そしてバルーン9内の温度測定部位を特定できるようにバルーン9内もしくは高周波通電用電極13に固定されていることが好ましい。また、温度センサー14には熱電対等が用いられ、温度センサー14からの測定データをモニターしながらバルーン9の温度が所定温度になるように、高周波発生器(図示せず)から高周波電力が供給される。温度センサー14に接続するリード線14aは、バルーン9内の温度をモニターするための信号をバルーン9外に送達するために用いられうる導体であれば特に限定されないが、白金、タングステン、銅、合金、クロメルのようなものが好ましい。また、温度センサー14に接続するリード線14aは、カテーテル外筒シャフト2内の高周波通電用電極13に接続するリード線13aとの接触を防ぐ等のためにも保護被膜B14bで被覆されていることが好ましい。保護被膜B14bは高周波通電時の発熱を抑制するため比誘電率が低く、絶縁性の高いものが良く、例えばフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0037】
図1及び図2に示すように、高周波通電用電極13に電気的に接続されたリード線13a及び温度センサー14に電気的に接続されたリード線14aはカテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3のクリアランスB15を通り、バルーンカテーテル1内に挿通されている。
【0038】
そして、高周波通電用電極13に接続された電極リード線14aは、例えば13.56MHzの高周波電力を供給可能な高周波発生器(図示せず)に接続される。また、患者の体表面に設置された対極もリード線を介して高周波発生器に接続され、高周波発生器によって、高周波通電用電極13と対極との間に高周波電力が供給される。例えば、バルーン9の大径部10が約2・5cmの場合には50W〜200Wの高周波電力が供給される。この結果、いわゆる高周波誘導型加熱の原理に従って異なる誘電率を有する誘電体が接触する部分が加熱され、バルーン9と接触する接合部(標的病変部)を輪状に加熱し焼灼することができる。
【0039】
次に本発明のスタイレットについて説明する。図3および図5は本発明のスタイレットの例であって、図3はコイルを配設した部分がコアワイヤーより太い態様であり、図5はコイルを配設した部分とコアワイヤーが同じ外径の態様である。図4および図6はそれぞれの部分拡大断面図である。
【0040】
図3に示すようにスタイレット4は剛性が高く、形状記憶性の良い放射線遮蔽性金属からなるコアワイヤー16、コアワイヤー16の先端予備成形部外周にコイル状に配設した放射線遮蔽性金属製コイル17からなり、さらにスタイレット4全体を覆う被膜部材24、ストッパー18部及びハンドル19部を有することが好ましい。
【0041】
コアワイヤー16にはステンレス鋼が好ましく用いられるが、剛性が高く、形状記憶性の良い放射線遮蔽性金属であればこれに限定されるものではない。なかでも、SUS302、SUS304及びSUS316等を使用することが好ましく、その引張強さはJISG4314に表示されたA種〜C種であることが好ましく、B種であることがより好ましい。コアワイヤー16の基端部外径は0.5〜1.5mmであることが好ましく、図4に示すようにコアワイヤー16のコイル17配設部分では先端部を柔軟とするために、縮径していることが好ましい。
【0042】
コイル17を形成するコイル線20にはステンレス鋼やプラチナが好ましく用いられるが、放射線遮蔽性の金属であればこれに限定されるものではない。コイル線20の径は約0.1mmであり、図4に示すようにコアワイヤー16の縮径部25にコイル状に密着して設けられるが、このときこのコイル17の外径は0.5〜1.5mmであることが好ましく、図6に示すようにコアワイヤー16の基端部外径と同サイズであることがより好ましい。コイル17のコイル線先端部21とコイル線基端部22ではコアワイヤー16に溶接され、コイル線先端部21は血管壁等への接触時の損傷を低減するため球状に成形されている。コイル17の長さはコアワイヤー16の縮径部25を覆うように決められるが、その長さは50mmから150mmであることが好ましい。コイル17には少なくとも1つの予備成形された湾曲部23が設けられる。湾曲部23はL型あるいはJ型の形状であることが好ましいが、バルーンカテーテル1のカテーテル外筒シャフト2の柔軟部8に配置されたときに、柔軟部8でバルーンカテーテル1が40°から140°の範囲に湾曲、すなわち図7におけるαを40°〜140°とすることができるものであれば、これらに限定されない。この湾曲部の形状を適宜選択することによって、また柔軟部8の柔軟性を適宜選択することによって角度αを自由に設定でき、それによりバルーン9を標的病変部にしっかりと接触させることができるようになる。
【0043】
被膜部材24は、スタイレット4をバルーンカテーテル1のカテーテル内筒シャフト3にスライド可能に配置する際の挿入抵抗軽減、及び標的病変部を選択する際の操作性向上、且つアブレーション時の高周波等によるスタイレット4への通電を低減するため一部あるいは全長に施されることが好ましい。被膜部材24には比誘電率の低いフッ素樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン、メチルペンテンなどが好ましいが、これらに限定されるものではない。また被膜部材24に低摩擦性を付与するため、−OH、−CONH2、−COOH、−NH2等の親水性基を含む親水性材料等を固定することもできる。
【0044】
コアワイヤー16の手元側には、湾曲部23がバルーンカテーテル1のカテーテル外筒シャフト2の柔軟部8に配置できるためにストッパー18を設けている。ストッパー18はコアワイヤー16に固定されており、Y型コネクターB34の挿入口よりも大きくすることで、スタイレット4の挿入長さを規定すると共に、過剰な挿入を防止する。ストッパー18の形状は棒状あるいは円盤状が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、ストッパー18の材質は、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂あるいはステンレス鋼等の金属を用いることができるが、カテーテル内筒シャフト3の挿入口に接触したときに破損せず、形状を保持できるようなものであれば、これらに限定されない。
【0045】
コアワイヤー16のストッパー18よりも手元側には、コアワイヤー16に固定され、コアワイヤー16と同時に回転可能なハンドル19を設けている。ハンドル19はストッパー18と同一とすることもできる。スタイレット4がバルーンカテーテル1内のカテーテル内筒シャフト3内に配設され、バルーンカテーテル1の柔軟部8に形状を付与し、ハンドル19にトルクを加えたとき、その回転角度に応じてバルーン9の方向を変えることができる。これによりバルーン9を標的病変部にしっかりと接触させることができる。ハンドル19の形状は板状あるいは円筒状のものが好ましいが、トルクを加えたときに滑らず、操作しやすいものであればこれに限定されない。また、ハンドル19の材質は、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂あるいはステンレス鋼等の金属を用いることができるが、トルクを加えたときに滑らず、操作しやすいものであればこれに限定されない。
【0046】
なお、本発明のスタイレットはバルーンカテーテルにスライド可能に配置されたときバルーンカテーテルのシャフト部分の剛性を高める機能を有するが、本発明において剛性は曲げモーメントにより評価し、曲げモーメントの数値が大きい程、剛性が高いと判断する。曲げモーメントの測定方法は、ティニアス オルセン スティッフネス テスター(TINIUS OLSEN STIFFNESTESTER)を用いてスパン長を12mm、ウエイトを295gまたは995gにして、バルーンカテーテル1のカテーテルシャフト38部分の約20mmを回転式試料バイスに固定し、加重目盛り、角度指針のゼロ点調整後、モーターかみ合わせレバーをONにして、40℃の環境下で自動運転する。自動運転中に角度指針を5°毎に目視で確認すると同時に加重目盛りを測定し続け、45°まで記録をとる。更に異なる条件、例えば有機溶剤による抽出時間の異なる条件にて作製したカテーテルシャフト38部分で同様に測定する。また、図8、図10に示したようにスタイレット4またはガイドワイヤー37が挿入された状態のカテーテルシャフト38部分で同様に測定する。
【0047】
曲げモーメントは、
295×加重目盛り指示値(%)÷100 (g−cm) または
995×加重目盛り指示値(%)÷100 (g−cm)
にて求められる。
【0048】
ここで得られた曲げモーメントの値を角度指針の指示値に対してグラフ化し、剛性の比較を行う。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
<バルーンカテーテルの作製>
バルーン9の大径部10が30mm、バルーン全長部11が30mmのガラス製バルーン成形型を濃度13%の調製されたポリウレタン溶液に浸漬し、熱をかけて溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド)を蒸発させて、成形型表面にウレタンポリマー被膜を形成するディッピング法によりバルーンを製造した。得られたバルーン9は大径部10が30mm、バルーン全長部11が30mmであり成形通りの寸法であった。また、ウレタンポリマーの被膜は160μmのほぼ均一な厚みの膜であった。なお、ポリウレタン溶液中のポリウレタンは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15%、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)70%、エチレンジアミン(H2NCH2CH2NH2)15%という配合のものを用いた。
【0051】
一方、カテーテル内筒シャフト3として外径4.5Fr(フレンチ)、内径1.1mm、全長900mmのナイロン製チューブを用い、直径1.2mm、長さ6mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有するステンレスパイプA29を先端に内挿嵌合後、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定すると共に、後端には16G(ゲージ)、長さ90mmの吸い上げ針31を内挿嵌合し、0.lmmのナイロン製の糸で縛り固定した。
【0052】
他方、カテーテル外筒シャフト2として、12Fr、800mmの硫酸バリウム30%含有のポリ塩化ビニル製チューブの手元側730mmをメタノールにより12時間抽出し、先端側70mmを抽出せずに柔軟部8としたものをカテーテル外筒シャフト(A)とし、先端側70mmをメタノールで3時間抽出し柔軟部8としたものをカテーテル外筒シャフト(B)とした。以下の作業はカテーテル外筒シャフト(A)及び(B)に対し実施した。前記各カテーテル外筒シャフト2に直径2.8mm、長さ7mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有するステンレスパイプB30を先端に内挿嵌合後、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定すると共に、後端に四方コネクター26を内挿嵌合し、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定した。四方コネクター26は4カ所の接続口を有するコネクターで、そのうち3方から挿入または注入されたリード線及び造影剤等を残りの1方に集約することができるものである。
【0053】
そして、カテーテル内筒シャフト3を四方コネクター26を介して挿入してから四方コネクターキャップ27を締め付けることにより二重管式カテーテルシャフトを得た。
【0054】
また、高周波通電用電極13として銀メッキを0.1μm施した直径0.5mm電気用軟銅線を内径1.6mm、長さ10mmのコイル状にし、カテーテル内筒シャフト3先端部のバルーン9内に配設した。この高周波通電用電極13に電気的に接続したリード線13aを接続し、長さ1000mmに渡って保護被膜A13bとして4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)を被覆した。
【0055】
更に、保護被膜B14bとしてポリ4フッ化エチレン(PTFE)で被覆された極細熱電対ダブル(銅−コンスタンタン)線を温度センサー14としてコイル状の高周波通電用電極13に固定した後、カテーテル内筒シャフト3先端をコイルの中心に挿通した。高周波通電用電極13のリード線13aと温度センサー14のリード線14aの先端部を四方コネクター26より引っ張り出した後、前記2本のリード線はアラミド繊維で作られた固定具でステンレスパイプB30に接合することで、高周波通電用電極13と温度センサー14の位置を決定した。更に、四方コネクター26にY型コネクターA28を取り付け、前記2本のリード線をY型コネクターA28に挿通した。
【0056】
次にバルーン9の先端部と先端チューブ12をカテーテル内筒シャフト3のステンレスパイプA29に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定するとともに、バルーン9の後端部をカテーテル外筒シャフト2のステンレスパイプB30の先端に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定した後、エポキシ樹脂系の接着剤で滑らかに仕上げて、バルーンカテーテル1を作製した。
<スタイレットの作製>
外径0.64mm、長さ1300mmのSUS304WPB製コアワイヤー16の先端90mmを縮径し、前記縮径部25にコイル線径0.1mmのSUS304WPB製コイル線20を隙間無く巻き付けることで、コイル17の外径を0.81mmとした。コイル17のコイル線先端部21とコイル線基端部22をコアワイヤーに溶接して固定し、最先端部を球状に成形した。
【0057】
コイル17の予備成形は、先端から40mmを未成形のままとし、それに続く約30mmを半径10mmの半円周状とし、更にそれに続く20mmを未成形とし、全体としてJ型とした。前記予備成形は、その形状を刻んだ金属製の型枠にコイル17をはめ込んで固定したあと炉に封入し、真空乾燥後、アルゴンガス置換を経て、約600℃で140分加熱し、室温にて120分冷却することにより行った。その後、更に全体をPTFEにて被覆した。
【0058】
次に、先端から1010mmの位置に外径10mm、厚さ3mmの塩化ビニル製の円盤状のストッパー18を接着剤により固定し、更に先端から1100mmの位置に外径10mm、長さ50mmの塩化ビニル製の円筒状のハンドル19を接着剤により固定し、スタイレット4を作製した。
<心臓不整脈治療への適用性評価>
図7及び図9に示したように、本実施例の心臓不整脈治療のための装置及び方法を以下のようにして確認した。
【0059】
例えば、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル1による心臓不整脈治療では、バルーン9を肺静脈口に密着させることにより、肺静脈口を輪状に焼灼する方法が行われる。このとき、バルーンカテーテル1は下大静脈から挿入し、右心房を経て経中隔的に心房中隔を穿刺して左心房内に挿入される。その後、造影剤等により膨張させたバルーン9で肺静脈口の標的病変部を選択する。
【0060】
この場合ブロッケンブロー法により心房中隔を通過したバルーンカテーテル1のバルーン9が、例えば、左あるいは右下肺静脈口を選択しようとする場合、左心房内で90°から120°湾曲させる必要があることがこれまでに確認されている。
【0061】
従って、本実施例ではバルーンカテーテル1にスタイレット4を挿入して組み合わせた心臓不整脈治療のための装置32により、左心房内に到達するまでの血管壁の損傷を防止するため湾曲部23がバルーンカテーテル1に設けた柔軟部8でのみ得ることができ、且つバルーンカテーテル1全体の剛性を高めることができるかを確認した。
【0062】
また、左心房内留置状態と同等のバルーンカテーテル1の湾曲状態において、手元のハンドル19操作に応答して、バルーン9の方向を任意に変えることができること、及び心臓不整脈治療のための装置32のカテーテル内筒シャフト3とスタイレット4のクリアランスA5を通してバルーンカテーテル1の先端孔6から一般的な血液粘度である粘度3.4mPa・sの液体が平均的に12ml/分程度吸引できることを確認した。
【0063】
前記吸引を実施するため、吸い上げ芯31にはY型コネクターB34を取り付けた。このY型コネクターB34を介してスタイレット4あるいはガイドワイヤー37を挿入し、サイドポートには吸引に用いる20mlシリンジ36を取り付けた。
(実施例1、比較例1)
抽出時間の異なる条件で作製した剛性の異なるカテーテル外筒シャフト2で3種類のカテーテルシャフト38を作製した。実施例1−1として上記カテーテル外筒シャフト(A)の柔軟部8と同条件、即ち抽出を実施しないカテーテルシャフト38、実施例1−2として上記カテーテル外筒シャフト(B)の柔軟部8と同条件、即ち3時間のメタノール抽出を実施したカテーテルシャフト38、比較例1として、上記カテーテル外筒シャフト(A)または(B)の柔軟部8を除く部分と同条件、即ち12時間のメタノール抽出を実施したカテーテルシャフト38を作製した。
【0064】
これらの曲げモーメントの測定方法を、ティニアス オルセン スティッフネス テスター(TINIUS OLSEN STIFFNES TESTER)を用いて、前記した条件にて測定し、その結果を表1及び図11に示した。表1及び図11から、曲げモーメントの大きい比較例1は剛性が高いと判断でき、これに比較して曲げモーメントの小さい実施例1−1、及び実施例1−2は剛性が低いと判断できる。従って、バルーンカテーテル1のカテーテルシャフト38は、実施例1−1、及び実施例1−2と同等の柔軟部8が、比較例1と同等のそれ以外の部分よりも柔軟であることが確認できた。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例2、比較例2)
更に、カテーテル外筒シャフト(A)の柔軟部8と同条件、即ち抽出を実施しないカテーテルシャフト38を用い、スタイレット4、あるいはガイドワイヤー37として超弾性材質のテルモ社製ラジフォーカスガイドワイヤーM0.038インチサイズを挿入した場合の剛性を比較した。実施例2としてスタイレット4と前記カテーテルシャフト38を組み合わせた場合、比較例2−1としてガイドワイヤー37と前記カテーテルシャフト38を組み合わせた場合、比較例2−2として前記カテーテルシャフト38のみの場合とした。
【0067】
これらの曲げモーメントの測定方法を、ティニアス オルセン スティッフネス テスター(TINIUS OLSEN STIFFNES TESTER)を用いて、前記した条件にて測定し、その結果を表2及び図12に示した。表2及び図12から、曲げモーメントの大きい実施例2−1は剛性が高いと判断でき、これに比較して曲げモーメントの小さい比較例2−1、及び比較例2−2は剛性が低いと判断できる。従って、スタイレット4を使用することで、剛性の高いカテーテルシャフト38が得られた。
【0068】
【表2】
【0069】
(実施例3)
実施例3の実験状態を図7及び図8に示した。バルーンカテーテル1の有効長を、一般的な血液粘度に調製した粘度3.4mPa/sの37℃グリセリン水溶液に浸漬した。
【0070】
四方コネクター26に取り付けられた二方活栓33を介して、カテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3のクリアランスB15を通して造影剤(イオキサグル酸注射液:商品名ヘキサブリックス320)をバルーン9内に注入し、バルーン大径部10を30mmに膨張させた。
【0071】
続いて、バルーンカテーテル1の吸い上げ芯31の手元側にY型コネクターB34を取り付けた。その挿入口よりスタイレット4を挿入し、スタイレット4のストッパー18がY型コネクターB34の挿入口に接触するまで押し進めた。
【0072】
このとき、バルーンカテーテル1の手元側ではバルーンカテーテル1の剛性がスタイレット4の湾曲部23の剛性よりも大きいため、バルーンカテーテル1は変形しなかったが、バルーンカテーテル1の柔軟部8では十分変形し、その曲がり角度αはカテーテル外筒シャフト(A)を使用した場合100°であり、カテーテル外筒シャフト(B)を使用した場合70°であった。更に、ストッパー18により前記両バルーンカテーテルとも所定の位置にのみカテーテル湾曲部35が得られた。
【0073】
続いて、手元側のハンドル19にトルクをかけたところ、バルーン9の方向がそれに応答し、その回転角とほぼ同程度の回転角が得られた。
【0074】
続いて、先端孔6が前記グリセリン水溶液に浸漬した状態で、吸い上げ芯31に取り付けたY型コネクターB34のサイドポートの20mlシリンジ36で、約2Kgfの力で手動吸引したところ、約12ml/分の吸引が可能であった。
【0075】
(比較例3)
比較例3の実験状態を図9及び図10に示した。バルーンカテーテル1の有効長を、一般的な血液粘度に調製した粘度3.4mPa/sの37℃グリセリン水溶液に浸漬した。
【0076】
四方コネクター26に取り付けられた二方活栓33を介して、カテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3のクリアランスB15を通して造影剤(イオキサグル酸注射液:商品名ヘキサブリックス320)をバルーン9内に注入し、バルーン大径部10を30mmに膨張させた。
【0077】
続いて、バルーンカテーテル1の吸い上げ芯31の手元側にY型コネクターB34を取り付けた。その挿入口よりJ型に予備成形した0.038インチサイズの超弾性材質のガイドワイヤー37(テルモ社製ラジフォーカスガイドワイヤーM)を挿入した。
【0078】
このとき、ガイドワイヤー37の予備成形部(図示せず)が柔軟すぎたため、カテーテル外筒シャフト2(A)及び(B)の何れを用いたバルーンカテーテル1でも図7に示すようなカテーテル湾曲部35を作ることができなかった。
【0079】
続いて、ガイドワイヤー37の手元側でトルクをかけたが、図7に示すようなカテーテル湾曲部35がないためバルーン9の方向を操作することができなかった。
【0080】
続いて、カテーテル先端孔6がグリセリン水溶液に浸漬した状態で、吸い上げ芯31の手元側に取り付けたY型コネクターB34のサイドポートに20mlシリンジ36を取り付け、約2Kgfの力で手動吸引したところ、3ml/分の吸引が可能であった。
【0081】
【発明の効果】
本請求項1に係る発明によれば、バルーンカテーテルにスライド可能に配置することで所定の湾曲部を与え、その剛性を高めることが可能なスタイレットが得られる。
【0082】
本請求項2に係る発明によれば、超弾性合金よりも剛性の高いスタイレットが得られる。
【0083】
本請求項3に係る発明によれば、バルーンカテーテル内にスライド可能に配設でき、バルーンカテーテルの先端柔軟部にのみ湾曲部を形成でき、且つバルーンカテーテルの先端孔から粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸飲または注入可能なスタイレットが得られる。
【0084】
本請求項4に係る発明によれば、バルーンカテーテルに常に一定の長さを挿入でき、予備成形部を特定の位置に配置することができるスタイレットが得られる。
【0085】
本請求項5に係る発明によれば、回転操作を容易にし、手元のハンドル部でのトルクを先端に伝達しやすいスタイレットが得られる。
【0086】
本請求項6に係る発明によれば、挿入過程での血管壁損傷を防止し、所望の位置でのみ40°から140°に湾曲でき、心臓内の種々の部位にある標的病変部を選択できる心臓不整脈治療装置が得られる。
【0087】
本請求項7に係る発明によれば、体外にあるハンドルにトルクをかけることにより、体内にあるバルーンの方向を変えることができ、これにより心臓内の種々の部位にある標的病変部を選択できる心臓不整脈治療装置が得られる。
【0088】
本請求項8に係る発明によれば、手技中のカテーテル内血液の滞留を無くすことで血栓の生成を防止し、スタイレットの操作性を維持できる心臓不整脈治療装置が得られる。
【0089】
本請求項9に係る発明によれば、標的病変部のみを確実に治療することでアブレーションによる治療時間を短縮でき、患者負担を軽減できる方法が得られる。
【0090】
本請求項10に係る発明によれば、標的病変部の選択性を向上できる方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバルーンカテーテルの1例を示す図である。
【図2】図1のバルーンカテーテルの1例のA−A’断面を示す図である。
【図3】本発明のスタイレットの1例を示す図である。
【図4】図3のスタイレットの1例の縮径部断面(B部)を示す図である。
【図5】本発明のスタイレットの1例を示す図である。
【図6】図5のスタイレットの1例の縮径部断面(B’部)を示す図である。
【図7】実施例1の実験状態を示す図である。
【図8】実施例1の実験状態でのバルーンカテーテルのC−C’断面を示す図である。
【図9】比較例1の実験状態を示す図である。
【図10】比較例1の実験状態でのバルーンカテーテルのD−D’断面を示す図である。
【図11】本発明のカテーテルシャフト部の剛性を比較した図である。
【図12】本発明のカテーテルの剛性の1例と従来技術との比較を示す図である。
【符号の説明】
1:バルーンカテーテル
2:カテーテル外筒シャフト
3:カテーテル内筒シャフト
4:スタイレット
5:クリアランスA
6:先端孔
7:側孔
8:柔軟部
9:バルーン
10:大径部
11:バルーン全長部
12:先端チューブ
13:高周波通電用電極
13a:リード線
13b:保護被膜A
14:温度センサー
14a:リード線
14b:保護被膜B
15:クリアランスB
16:コアワイヤー
17:コイル
18:ストッパー
19:ハンドル
20:コイル線
21:コイル線先端部
22:コイル線基端部
23:湾曲部
24:被膜部材
25:縮径部
26:四方コネクター
27:コネクターキャップ
28:Y型コネクターA
29:ステンレスパイプA
30:ステンレスパイプB
31:吸い上げ芯
32:心臓不整脈治療のための装置
33:二方活栓
34:Y型コネクターB
35:カテーテル湾曲部
36:20mlシリンジ
37:ガイドワイヤー
38:カテーテルシャフト
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波加温を行うことにより心臓不整脈の発生源となる部位を局所的に治療するためのバルーンカテーテルを有し、バルーンを標的病変部に配置させるためにバルーンカテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を与える心臓不整脈治療のための装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、不整脈の発生源に対して、4mm大のチップからなる金属製電極のカテーテルを接触させ、高周波通電することにより、不整脈の発生源を電気凝固する治療方法が普及している。しかしながら、この手法は、WPW症候群や発作性心室頻拍等のように発生源が局所的である場合は比較的効果があるが、心房細動や心房粗動を治療するには広範囲の点状あるいは線状の焼灼(アブレーション)を繰り返す、すなわち数十回の通電を行う必要があってカテーテル操作が難しく、技術的に極めて難しく不成功で終わることがほとんどであった。
【0003】
従来の高周波加温用電極と温度センサーを設置したバルーンカテーテル(例えば、特許文献1及び2参照)は高周波通電を行い加温させたバルーン全体で治療を行っていた。特許文献2(特許第2574119号公報)には肺静脈の血管壁を幅広く焼灼できるバルーンカテーテルの例と、右心房全体を占める大きなバルーンで4つの肺静脈口の全てを同時にバルーンに接触させて同時に焼灼できるバルーンの例が示されているが、肺静脈の血管壁を幅広く焼灼すると、肺静脈内の狭窄をきたし肺高血圧症の原因となるおそれが考えられ、また右心房全体を占める大きなバルーンを用いて焼灼するには、心臓を一時停止させ、人工心肺を用いた体外循環を行う必要がある。
【0004】
特許文献3(特表2001−525695号公報)にはスタイレットを使用したアブレーション用カテーテルが開示されている。特許文献3によると、アブレーション用カテーテルを左心房内のより遠隔解剖学的構造内に配置するために、アブレーション用カテーテル中間部分の補強及び形状付与材として、スタイレットをアブレーション用カテーテル内にスライド可能に挿入して使用している。このような方法により、スタイレットよりもより遠位部のアブレーション用カテーテルの切除要素を含む表面部分を左心房内の所定の位置に配置することができると共に、スタイレットにより形状付与された部分のアブレーション用カテーテルの切除要素を含む表面部分をも心房壁の組織に接触させることができる。また、先端部にはバルーンが配設されているが、その使用目的はアブレーション用カテーテル先端部の固定である。更に、アブレーション用カテーテルには局所的な柔軟部が設定されていないため、予備成形されたスタイレットのスライド挿入により何れの部分でも湾曲部が生じ、そのため左心房に到達するまでの血管壁等の損傷が考えられる。以上から、特許文献3にはアブレーション装置としてのバルーンを有するバルーンカテーテルとスタイレットを用いたアブレーション方法が開示されていない。
【0005】
高周波ホットバルーンカテーテル(非特許文献1参照)は、肺静脈口周囲を容易に且つ短時間で輪状焼灼可能なカテーテルである。肺静脈口を輪状に焼灼できるため、金属製電極カテーテルのように焼灼を何度も行う必要がなく、特許文献1(特許第2574119号公報)に記載のカテーテルのように、肺静脈を幅広く焼灼しないために、再狭窄をきたすおそれもなく、肺静脈口を1つだけ焼灼するために心臓を停止させる必要がない。
【0006】
このような焼灼術では、高周波ホットバルーンカテーテル内にスライド可能に配設されたガイドワイヤーを1つの肺静脈内に先行させて留置した後、前記ガイドワイヤーに追従させて高周波ホットバルーンカテーテルを進めることで、肺静脈口へ高周波ホットバルーンカテーテル先端部のバルーン部分を誘導、配置している。特許文献4(特開平10−146390号公報)にあるようにガイドワイヤーは、血管への挿入時に血管壁の損傷を防止するためまた血管の選択性を向上させるため、柔軟な超弾性素材からなり、先端部ほどより柔軟な構造となっており、且つ最先端部はJ型やアングル型に予備成形されている場合がある。また、X線による体内での視認性を向上させるため放射線遮蔽性の材料が使用されている。また、カテーテル内、及び血管内での易滑性を向上させるためガイドワイヤー表面には親水性潤滑層を有している。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−68073号公報
【0008】
【特許文献2】
特許第2574119号公報
【0009】
【特許文献3】
特表2001−525695号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平10−146390号公報
【0011】
【非特許文献1】
カズシ・タナカら、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー」,2001年,38(7),p2079−2086
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の様にガイドワイヤーを心臓内の標的病変部に向かって先行させて留置した後、前記ガイドワイヤーに追従させてバルーンカテーテルを進めることで、標的病変部へバルーンカテーテル先端部のバルーンを誘導、配置した場合、ガイドワイヤー全体が柔軟な超弾性素材で剛性がないため、バルーンカテーテルに十分な剛性を付与できなかった。そのため、バルーンを標的病変部へ十分に押し当てることができず、密着が不十分になることがあり、その結果目的とする焼灼状態が得られないことがあった。
【0013】
また、特に左または右下肺静脈口を焼灼しようとする場合には、左心房内でバルーンカテーテル先端部を湾曲させ、バルーンを各下肺静脈口へ方向付けすることが前記部分へのバルーンの密着性を向上させるために必要となる。しかし、ガイドワイヤーは先端部ほどより柔軟な構造となっているため、特許文献3にあるように手指による形状付け(リシェイプ)ではカテーテルに形状を付与することができず、密着が不十分になることがあり、その結果目的とする輪状の焼灼状態が得られないことがあった。また、肺静脈内に湾曲して留置されたガイドワイヤーの剛性がバルーンカテーテルの剛性よりも小さいため、ガイドワイヤーに追従して肺静脈口に配置されたバルーンカテーテルが反跳し、肺静脈口から外れることがあった。
【0014】
また、心臓内で標的病変部を選択する際、ガイドワイヤーの先端部柔軟性ではバルーンカテーテル先端部に形状を付与することができず、従ってバルーンカテーテル手元側でガイドワイヤーにトルクをかけても左心房内でバルーンの方向を変えることができなかった。
【0015】
更に、バルーンカテーテルの剛性が均一であったため、予備成形されたスタイレットの挿入を考えた場合、バルーンカテーテルの何れの部分でも湾曲部が生じる、あるいは何れの部分でも十分な湾曲が得られないことが推察できた。
【0016】
本発明の目的は、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルの少なくとも一部に柔軟部を設け、前記バルーンカテーテル内に予備成形されたスタイレットをスライド可能に配置することで、カテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を与え、バルーンを標的病変部に配置させることができる心臓不整脈治療のための装置及び方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
【0018】
(1)形状記憶性且つ放射線遮蔽性の金属製コアワイヤーとコアワイヤーの先端側外周に配設した放射線遮蔽性金属製コイルからなり、コイルがバルーンカテーテルに所定の形状を与えるように適合した予備成形部を有し、且つ電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル遠位部内にスライド可能に配置したときに、バルーンカテーテルの剛性を高めることを特徴とするスタイレット。
【0019】
(2)コアワイヤーがステンレス鋼により構成されることを特徴とする(1)に記載のスタイレット。
【0020】
(3)コアワイヤー及びコイルの外径が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする(1)または(2)に記載のスタイレット。
【0021】
(4)コアワイヤーの手元側に、バルーンカテーテル内への配設長さを規制するためのストッパーがあることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスタイレット。
【0022】
(5)コアワイヤーの手元側に、コアワイヤーを回転させるハンドルが配設されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスタイレット。
【0023】
(6)少なくとも一部に柔軟部を有するバルーンカテーテルと予備成形されたスタイレットからなり、スタイレットをバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することで、バルーンカテーテルの柔軟部のみに40°〜140°の湾曲部が形成可能なことを特徴とする心臓不整脈治療装置。
【0024】
(7)スタイレットのハンドル操作によりバルーンの方向変化が可能なことを特徴とする(6)に記載の心臓不整脈治療装置。
【0025】
(8)バルーンカテーテル内腔とスタイレットのクリアランスを通して、バルーンカテーテルの先端孔から粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸引または注入可能なことを特徴とする(6)または(7)に記載の心臓不整脈治療装置。
【0026】
(9)(1)〜(5)のいずれかに記載のスタイレットを電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することによりバルーンカテーテルの剛性を高め、前記スタイレットの予備成形部がバルーンカテーテル遠位部内に配置されたときに、バルーンカテーテルに所定の形状を与えることでバルーンを標的病変部に配置する方法。
【0027】
(10)(1)〜(5)のいずれかに記載のスタイレットを電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することにより、バルーンカテーテルの柔軟部のみに40°から140°の湾曲部を形成する(9)に記載の方法。
【0028】
上述の発明において、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルの少なくとも一部に柔軟部を設け、バルーンカテーテル内に予備成形されたスタイレットをスライド可能に配置することで、バルーンカテーテルに剛性、形状及び標的病変部選択性を与え、バルーンを標的病変部に配置させることができる心臓不整脈治療のための装置及び方法を提供することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図によって説明する。
【0030】
まず、本発明におけるバルーンカテーテルについて説明する。図1は本発明のバルーンカテーテルの1例を示す図であり、図2はそのA−A’断面を示す図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル1は互いに軸方向にスライド可能なカテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3とからなる二重管式カテーテルシャフトであることが好ましい。カテーテル外筒シャフト2の外径は3〜5mmが好ましく、内径は2〜4mmが好ましい。またカテーテル内筒シャフト3の外径は1〜3mmが好ましく、内径は0.5〜2mmが好ましく、図8に示すようにスタイレット4が配設されたときにそのクリアランスA5を通してバルーンカテーテル1の先端孔6及び側孔7から、生理食塩液、ブドウ糖液及び一般的な血液粘度である粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸引または注入できることがより好ましい。二重管式カテーテルシャフトは経皮的に血管に挿入され、心房あるいは心室内に誘導できるように十分柔軟であり、バルーンの向きを変化させられるようにカテーテル外筒シャフト2の少なくとも一部、好ましくは先端から100mmまでの部分により柔軟な柔軟部8を有している。カテーテル外筒シャフト2の柔軟部8は、有機溶剤によるカテーテル外筒シャフト2の部分的抽出あるいは剛性の異なる2種類のチューブの接合によって得られるが、これらに限定されるものではない。二重管式カテーテルシャフトの材質は抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定はされないが、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが好ましく用いられる。
【0032】
膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーン9は、直径の最も大きい大径部10からバルーン先端にかけて直径が徐々に小さくなる直円錐体状あるいは円筒状になるような形状が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。バルーンのバルーン全長部11の長さについては心房及び心室内での操作性を考慮すると、20〜40mmであることが好ましく、大径部10については10〜40mmであることが好ましい。バルーン9の材質はポリウレタン系の高分子材料が用いられるが、平滑な表面を有する抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されない。
【0033】
バルーン9はカテーテル外筒シャフト2の先端部にバルーンの後端が固定され、カテーテル内筒シャフト3の先端部にバルーンの先端が固定され、カテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3を摺動させることによって、収縮膨張可能となっていることが好ましい。
【0034】
カテーテル内筒シャフト3の先端部にはさらに、血管及び心臓内壁の損傷を防止するため柔軟な先端チューブ12が取り付けられていることが好ましい。その材質はポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましく用いられるが、抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されない。先端チューブ12の長さは100mm以下であることが好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。また、先端チューブ12の外径はカテーテル外筒シャフト2よりも細いことが好ましく、1〜3mmが特に好ましい。また、先端チューブ12には1個または複数の側孔7を設けることで、バルーン先端部近傍で造影剤が噴出され、肺静脈口等への密着性を確認することができる。
【0035】
電気的隔離のためのアブレーションを行うためには、一般的に体内に配設される電極と体表面に配設される対極との間で、高周波電力を伝送する方法が行われる。体表面に配設される対極(図示せず)は、体表面に密着できるように銅あるいはアルミニウム等の金属をフィルム状にしたものが用いられるが、高周波電力を伝送可能な材質のものであれば特に限定されない。対極との間で高周波電力を伝送可能なバルーン9内に配設された高周波通電用電極13には銅線等が用いられるが、高周波を通電させたときに発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材質で構成されたものであれば特に限定されない。高周波通電用電極13は、操作時にバルーン9を損傷しないようにカテーテル内筒シャフト3に巻き付けられていることが好ましく、このカテーテル内筒シャフト3が高周波通電用電極13中をスライド可能なように巻き付けられていることがより好ましい。高周波通電用電極13に電気的に接続されるリード線13aには銅線等が用いられるが、高周波通電用電極13に高周波を送達させる目的で用いられうるものであれば特に限定されず、高周波を通電させたときに発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材質で構成されたものが好ましい。また、リード線13aは保護被膜A13bで被覆され、保護被膜A13bは高周波通電時の発熱を抑制するため比誘電率が低く、絶縁性の高いものが好ましい。保護被膜A13bにはフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
バルーン9内の温度をモニター可能な温度センサー14は操作時にバルーン9を損傷しないように、そしてバルーン9内の温度測定部位を特定できるようにバルーン9内もしくは高周波通電用電極13に固定されていることが好ましい。また、温度センサー14には熱電対等が用いられ、温度センサー14からの測定データをモニターしながらバルーン9の温度が所定温度になるように、高周波発生器(図示せず)から高周波電力が供給される。温度センサー14に接続するリード線14aは、バルーン9内の温度をモニターするための信号をバルーン9外に送達するために用いられうる導体であれば特に限定されないが、白金、タングステン、銅、合金、クロメルのようなものが好ましい。また、温度センサー14に接続するリード線14aは、カテーテル外筒シャフト2内の高周波通電用電極13に接続するリード線13aとの接触を防ぐ等のためにも保護被膜B14bで被覆されていることが好ましい。保護被膜B14bは高周波通電時の発熱を抑制するため比誘電率が低く、絶縁性の高いものが良く、例えばフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0037】
図1及び図2に示すように、高周波通電用電極13に電気的に接続されたリード線13a及び温度センサー14に電気的に接続されたリード線14aはカテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3のクリアランスB15を通り、バルーンカテーテル1内に挿通されている。
【0038】
そして、高周波通電用電極13に接続された電極リード線14aは、例えば13.56MHzの高周波電力を供給可能な高周波発生器(図示せず)に接続される。また、患者の体表面に設置された対極もリード線を介して高周波発生器に接続され、高周波発生器によって、高周波通電用電極13と対極との間に高周波電力が供給される。例えば、バルーン9の大径部10が約2・5cmの場合には50W〜200Wの高周波電力が供給される。この結果、いわゆる高周波誘導型加熱の原理に従って異なる誘電率を有する誘電体が接触する部分が加熱され、バルーン9と接触する接合部(標的病変部)を輪状に加熱し焼灼することができる。
【0039】
次に本発明のスタイレットについて説明する。図3および図5は本発明のスタイレットの例であって、図3はコイルを配設した部分がコアワイヤーより太い態様であり、図5はコイルを配設した部分とコアワイヤーが同じ外径の態様である。図4および図6はそれぞれの部分拡大断面図である。
【0040】
図3に示すようにスタイレット4は剛性が高く、形状記憶性の良い放射線遮蔽性金属からなるコアワイヤー16、コアワイヤー16の先端予備成形部外周にコイル状に配設した放射線遮蔽性金属製コイル17からなり、さらにスタイレット4全体を覆う被膜部材24、ストッパー18部及びハンドル19部を有することが好ましい。
【0041】
コアワイヤー16にはステンレス鋼が好ましく用いられるが、剛性が高く、形状記憶性の良い放射線遮蔽性金属であればこれに限定されるものではない。なかでも、SUS302、SUS304及びSUS316等を使用することが好ましく、その引張強さはJISG4314に表示されたA種〜C種であることが好ましく、B種であることがより好ましい。コアワイヤー16の基端部外径は0.5〜1.5mmであることが好ましく、図4に示すようにコアワイヤー16のコイル17配設部分では先端部を柔軟とするために、縮径していることが好ましい。
【0042】
コイル17を形成するコイル線20にはステンレス鋼やプラチナが好ましく用いられるが、放射線遮蔽性の金属であればこれに限定されるものではない。コイル線20の径は約0.1mmであり、図4に示すようにコアワイヤー16の縮径部25にコイル状に密着して設けられるが、このときこのコイル17の外径は0.5〜1.5mmであることが好ましく、図6に示すようにコアワイヤー16の基端部外径と同サイズであることがより好ましい。コイル17のコイル線先端部21とコイル線基端部22ではコアワイヤー16に溶接され、コイル線先端部21は血管壁等への接触時の損傷を低減するため球状に成形されている。コイル17の長さはコアワイヤー16の縮径部25を覆うように決められるが、その長さは50mmから150mmであることが好ましい。コイル17には少なくとも1つの予備成形された湾曲部23が設けられる。湾曲部23はL型あるいはJ型の形状であることが好ましいが、バルーンカテーテル1のカテーテル外筒シャフト2の柔軟部8に配置されたときに、柔軟部8でバルーンカテーテル1が40°から140°の範囲に湾曲、すなわち図7におけるαを40°〜140°とすることができるものであれば、これらに限定されない。この湾曲部の形状を適宜選択することによって、また柔軟部8の柔軟性を適宜選択することによって角度αを自由に設定でき、それによりバルーン9を標的病変部にしっかりと接触させることができるようになる。
【0043】
被膜部材24は、スタイレット4をバルーンカテーテル1のカテーテル内筒シャフト3にスライド可能に配置する際の挿入抵抗軽減、及び標的病変部を選択する際の操作性向上、且つアブレーション時の高周波等によるスタイレット4への通電を低減するため一部あるいは全長に施されることが好ましい。被膜部材24には比誘電率の低いフッ素樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン、メチルペンテンなどが好ましいが、これらに限定されるものではない。また被膜部材24に低摩擦性を付与するため、−OH、−CONH2、−COOH、−NH2等の親水性基を含む親水性材料等を固定することもできる。
【0044】
コアワイヤー16の手元側には、湾曲部23がバルーンカテーテル1のカテーテル外筒シャフト2の柔軟部8に配置できるためにストッパー18を設けている。ストッパー18はコアワイヤー16に固定されており、Y型コネクターB34の挿入口よりも大きくすることで、スタイレット4の挿入長さを規定すると共に、過剰な挿入を防止する。ストッパー18の形状は棒状あるいは円盤状が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、ストッパー18の材質は、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂あるいはステンレス鋼等の金属を用いることができるが、カテーテル内筒シャフト3の挿入口に接触したときに破損せず、形状を保持できるようなものであれば、これらに限定されない。
【0045】
コアワイヤー16のストッパー18よりも手元側には、コアワイヤー16に固定され、コアワイヤー16と同時に回転可能なハンドル19を設けている。ハンドル19はストッパー18と同一とすることもできる。スタイレット4がバルーンカテーテル1内のカテーテル内筒シャフト3内に配設され、バルーンカテーテル1の柔軟部8に形状を付与し、ハンドル19にトルクを加えたとき、その回転角度に応じてバルーン9の方向を変えることができる。これによりバルーン9を標的病変部にしっかりと接触させることができる。ハンドル19の形状は板状あるいは円筒状のものが好ましいが、トルクを加えたときに滑らず、操作しやすいものであればこれに限定されない。また、ハンドル19の材質は、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂あるいはステンレス鋼等の金属を用いることができるが、トルクを加えたときに滑らず、操作しやすいものであればこれに限定されない。
【0046】
なお、本発明のスタイレットはバルーンカテーテルにスライド可能に配置されたときバルーンカテーテルのシャフト部分の剛性を高める機能を有するが、本発明において剛性は曲げモーメントにより評価し、曲げモーメントの数値が大きい程、剛性が高いと判断する。曲げモーメントの測定方法は、ティニアス オルセン スティッフネス テスター(TINIUS OLSEN STIFFNESTESTER)を用いてスパン長を12mm、ウエイトを295gまたは995gにして、バルーンカテーテル1のカテーテルシャフト38部分の約20mmを回転式試料バイスに固定し、加重目盛り、角度指針のゼロ点調整後、モーターかみ合わせレバーをONにして、40℃の環境下で自動運転する。自動運転中に角度指針を5°毎に目視で確認すると同時に加重目盛りを測定し続け、45°まで記録をとる。更に異なる条件、例えば有機溶剤による抽出時間の異なる条件にて作製したカテーテルシャフト38部分で同様に測定する。また、図8、図10に示したようにスタイレット4またはガイドワイヤー37が挿入された状態のカテーテルシャフト38部分で同様に測定する。
【0047】
曲げモーメントは、
295×加重目盛り指示値(%)÷100 (g−cm) または
995×加重目盛り指示値(%)÷100 (g−cm)
にて求められる。
【0048】
ここで得られた曲げモーメントの値を角度指針の指示値に対してグラフ化し、剛性の比較を行う。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
<バルーンカテーテルの作製>
バルーン9の大径部10が30mm、バルーン全長部11が30mmのガラス製バルーン成形型を濃度13%の調製されたポリウレタン溶液に浸漬し、熱をかけて溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド)を蒸発させて、成形型表面にウレタンポリマー被膜を形成するディッピング法によりバルーンを製造した。得られたバルーン9は大径部10が30mm、バルーン全長部11が30mmであり成形通りの寸法であった。また、ウレタンポリマーの被膜は160μmのほぼ均一な厚みの膜であった。なお、ポリウレタン溶液中のポリウレタンは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15%、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)70%、エチレンジアミン(H2NCH2CH2NH2)15%という配合のものを用いた。
【0051】
一方、カテーテル内筒シャフト3として外径4.5Fr(フレンチ)、内径1.1mm、全長900mmのナイロン製チューブを用い、直径1.2mm、長さ6mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有するステンレスパイプA29を先端に内挿嵌合後、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定すると共に、後端には16G(ゲージ)、長さ90mmの吸い上げ針31を内挿嵌合し、0.lmmのナイロン製の糸で縛り固定した。
【0052】
他方、カテーテル外筒シャフト2として、12Fr、800mmの硫酸バリウム30%含有のポリ塩化ビニル製チューブの手元側730mmをメタノールにより12時間抽出し、先端側70mmを抽出せずに柔軟部8としたものをカテーテル外筒シャフト(A)とし、先端側70mmをメタノールで3時間抽出し柔軟部8としたものをカテーテル外筒シャフト(B)とした。以下の作業はカテーテル外筒シャフト(A)及び(B)に対し実施した。前記各カテーテル外筒シャフト2に直径2.8mm、長さ7mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有するステンレスパイプB30を先端に内挿嵌合後、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定すると共に、後端に四方コネクター26を内挿嵌合し、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定した。四方コネクター26は4カ所の接続口を有するコネクターで、そのうち3方から挿入または注入されたリード線及び造影剤等を残りの1方に集約することができるものである。
【0053】
そして、カテーテル内筒シャフト3を四方コネクター26を介して挿入してから四方コネクターキャップ27を締め付けることにより二重管式カテーテルシャフトを得た。
【0054】
また、高周波通電用電極13として銀メッキを0.1μm施した直径0.5mm電気用軟銅線を内径1.6mm、長さ10mmのコイル状にし、カテーテル内筒シャフト3先端部のバルーン9内に配設した。この高周波通電用電極13に電気的に接続したリード線13aを接続し、長さ1000mmに渡って保護被膜A13bとして4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)を被覆した。
【0055】
更に、保護被膜B14bとしてポリ4フッ化エチレン(PTFE)で被覆された極細熱電対ダブル(銅−コンスタンタン)線を温度センサー14としてコイル状の高周波通電用電極13に固定した後、カテーテル内筒シャフト3先端をコイルの中心に挿通した。高周波通電用電極13のリード線13aと温度センサー14のリード線14aの先端部を四方コネクター26より引っ張り出した後、前記2本のリード線はアラミド繊維で作られた固定具でステンレスパイプB30に接合することで、高周波通電用電極13と温度センサー14の位置を決定した。更に、四方コネクター26にY型コネクターA28を取り付け、前記2本のリード線をY型コネクターA28に挿通した。
【0056】
次にバルーン9の先端部と先端チューブ12をカテーテル内筒シャフト3のステンレスパイプA29に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定するとともに、バルーン9の後端部をカテーテル外筒シャフト2のステンレスパイプB30の先端に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定した後、エポキシ樹脂系の接着剤で滑らかに仕上げて、バルーンカテーテル1を作製した。
<スタイレットの作製>
外径0.64mm、長さ1300mmのSUS304WPB製コアワイヤー16の先端90mmを縮径し、前記縮径部25にコイル線径0.1mmのSUS304WPB製コイル線20を隙間無く巻き付けることで、コイル17の外径を0.81mmとした。コイル17のコイル線先端部21とコイル線基端部22をコアワイヤーに溶接して固定し、最先端部を球状に成形した。
【0057】
コイル17の予備成形は、先端から40mmを未成形のままとし、それに続く約30mmを半径10mmの半円周状とし、更にそれに続く20mmを未成形とし、全体としてJ型とした。前記予備成形は、その形状を刻んだ金属製の型枠にコイル17をはめ込んで固定したあと炉に封入し、真空乾燥後、アルゴンガス置換を経て、約600℃で140分加熱し、室温にて120分冷却することにより行った。その後、更に全体をPTFEにて被覆した。
【0058】
次に、先端から1010mmの位置に外径10mm、厚さ3mmの塩化ビニル製の円盤状のストッパー18を接着剤により固定し、更に先端から1100mmの位置に外径10mm、長さ50mmの塩化ビニル製の円筒状のハンドル19を接着剤により固定し、スタイレット4を作製した。
<心臓不整脈治療への適用性評価>
図7及び図9に示したように、本実施例の心臓不整脈治療のための装置及び方法を以下のようにして確認した。
【0059】
例えば、電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル1による心臓不整脈治療では、バルーン9を肺静脈口に密着させることにより、肺静脈口を輪状に焼灼する方法が行われる。このとき、バルーンカテーテル1は下大静脈から挿入し、右心房を経て経中隔的に心房中隔を穿刺して左心房内に挿入される。その後、造影剤等により膨張させたバルーン9で肺静脈口の標的病変部を選択する。
【0060】
この場合ブロッケンブロー法により心房中隔を通過したバルーンカテーテル1のバルーン9が、例えば、左あるいは右下肺静脈口を選択しようとする場合、左心房内で90°から120°湾曲させる必要があることがこれまでに確認されている。
【0061】
従って、本実施例ではバルーンカテーテル1にスタイレット4を挿入して組み合わせた心臓不整脈治療のための装置32により、左心房内に到達するまでの血管壁の損傷を防止するため湾曲部23がバルーンカテーテル1に設けた柔軟部8でのみ得ることができ、且つバルーンカテーテル1全体の剛性を高めることができるかを確認した。
【0062】
また、左心房内留置状態と同等のバルーンカテーテル1の湾曲状態において、手元のハンドル19操作に応答して、バルーン9の方向を任意に変えることができること、及び心臓不整脈治療のための装置32のカテーテル内筒シャフト3とスタイレット4のクリアランスA5を通してバルーンカテーテル1の先端孔6から一般的な血液粘度である粘度3.4mPa・sの液体が平均的に12ml/分程度吸引できることを確認した。
【0063】
前記吸引を実施するため、吸い上げ芯31にはY型コネクターB34を取り付けた。このY型コネクターB34を介してスタイレット4あるいはガイドワイヤー37を挿入し、サイドポートには吸引に用いる20mlシリンジ36を取り付けた。
(実施例1、比較例1)
抽出時間の異なる条件で作製した剛性の異なるカテーテル外筒シャフト2で3種類のカテーテルシャフト38を作製した。実施例1−1として上記カテーテル外筒シャフト(A)の柔軟部8と同条件、即ち抽出を実施しないカテーテルシャフト38、実施例1−2として上記カテーテル外筒シャフト(B)の柔軟部8と同条件、即ち3時間のメタノール抽出を実施したカテーテルシャフト38、比較例1として、上記カテーテル外筒シャフト(A)または(B)の柔軟部8を除く部分と同条件、即ち12時間のメタノール抽出を実施したカテーテルシャフト38を作製した。
【0064】
これらの曲げモーメントの測定方法を、ティニアス オルセン スティッフネス テスター(TINIUS OLSEN STIFFNES TESTER)を用いて、前記した条件にて測定し、その結果を表1及び図11に示した。表1及び図11から、曲げモーメントの大きい比較例1は剛性が高いと判断でき、これに比較して曲げモーメントの小さい実施例1−1、及び実施例1−2は剛性が低いと判断できる。従って、バルーンカテーテル1のカテーテルシャフト38は、実施例1−1、及び実施例1−2と同等の柔軟部8が、比較例1と同等のそれ以外の部分よりも柔軟であることが確認できた。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例2、比較例2)
更に、カテーテル外筒シャフト(A)の柔軟部8と同条件、即ち抽出を実施しないカテーテルシャフト38を用い、スタイレット4、あるいはガイドワイヤー37として超弾性材質のテルモ社製ラジフォーカスガイドワイヤーM0.038インチサイズを挿入した場合の剛性を比較した。実施例2としてスタイレット4と前記カテーテルシャフト38を組み合わせた場合、比較例2−1としてガイドワイヤー37と前記カテーテルシャフト38を組み合わせた場合、比較例2−2として前記カテーテルシャフト38のみの場合とした。
【0067】
これらの曲げモーメントの測定方法を、ティニアス オルセン スティッフネス テスター(TINIUS OLSEN STIFFNES TESTER)を用いて、前記した条件にて測定し、その結果を表2及び図12に示した。表2及び図12から、曲げモーメントの大きい実施例2−1は剛性が高いと判断でき、これに比較して曲げモーメントの小さい比較例2−1、及び比較例2−2は剛性が低いと判断できる。従って、スタイレット4を使用することで、剛性の高いカテーテルシャフト38が得られた。
【0068】
【表2】
【0069】
(実施例3)
実施例3の実験状態を図7及び図8に示した。バルーンカテーテル1の有効長を、一般的な血液粘度に調製した粘度3.4mPa/sの37℃グリセリン水溶液に浸漬した。
【0070】
四方コネクター26に取り付けられた二方活栓33を介して、カテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3のクリアランスB15を通して造影剤(イオキサグル酸注射液:商品名ヘキサブリックス320)をバルーン9内に注入し、バルーン大径部10を30mmに膨張させた。
【0071】
続いて、バルーンカテーテル1の吸い上げ芯31の手元側にY型コネクターB34を取り付けた。その挿入口よりスタイレット4を挿入し、スタイレット4のストッパー18がY型コネクターB34の挿入口に接触するまで押し進めた。
【0072】
このとき、バルーンカテーテル1の手元側ではバルーンカテーテル1の剛性がスタイレット4の湾曲部23の剛性よりも大きいため、バルーンカテーテル1は変形しなかったが、バルーンカテーテル1の柔軟部8では十分変形し、その曲がり角度αはカテーテル外筒シャフト(A)を使用した場合100°であり、カテーテル外筒シャフト(B)を使用した場合70°であった。更に、ストッパー18により前記両バルーンカテーテルとも所定の位置にのみカテーテル湾曲部35が得られた。
【0073】
続いて、手元側のハンドル19にトルクをかけたところ、バルーン9の方向がそれに応答し、その回転角とほぼ同程度の回転角が得られた。
【0074】
続いて、先端孔6が前記グリセリン水溶液に浸漬した状態で、吸い上げ芯31に取り付けたY型コネクターB34のサイドポートの20mlシリンジ36で、約2Kgfの力で手動吸引したところ、約12ml/分の吸引が可能であった。
【0075】
(比較例3)
比較例3の実験状態を図9及び図10に示した。バルーンカテーテル1の有効長を、一般的な血液粘度に調製した粘度3.4mPa/sの37℃グリセリン水溶液に浸漬した。
【0076】
四方コネクター26に取り付けられた二方活栓33を介して、カテーテル外筒シャフト2とカテーテル内筒シャフト3のクリアランスB15を通して造影剤(イオキサグル酸注射液:商品名ヘキサブリックス320)をバルーン9内に注入し、バルーン大径部10を30mmに膨張させた。
【0077】
続いて、バルーンカテーテル1の吸い上げ芯31の手元側にY型コネクターB34を取り付けた。その挿入口よりJ型に予備成形した0.038インチサイズの超弾性材質のガイドワイヤー37(テルモ社製ラジフォーカスガイドワイヤーM)を挿入した。
【0078】
このとき、ガイドワイヤー37の予備成形部(図示せず)が柔軟すぎたため、カテーテル外筒シャフト2(A)及び(B)の何れを用いたバルーンカテーテル1でも図7に示すようなカテーテル湾曲部35を作ることができなかった。
【0079】
続いて、ガイドワイヤー37の手元側でトルクをかけたが、図7に示すようなカテーテル湾曲部35がないためバルーン9の方向を操作することができなかった。
【0080】
続いて、カテーテル先端孔6がグリセリン水溶液に浸漬した状態で、吸い上げ芯31の手元側に取り付けたY型コネクターB34のサイドポートに20mlシリンジ36を取り付け、約2Kgfの力で手動吸引したところ、3ml/分の吸引が可能であった。
【0081】
【発明の効果】
本請求項1に係る発明によれば、バルーンカテーテルにスライド可能に配置することで所定の湾曲部を与え、その剛性を高めることが可能なスタイレットが得られる。
【0082】
本請求項2に係る発明によれば、超弾性合金よりも剛性の高いスタイレットが得られる。
【0083】
本請求項3に係る発明によれば、バルーンカテーテル内にスライド可能に配設でき、バルーンカテーテルの先端柔軟部にのみ湾曲部を形成でき、且つバルーンカテーテルの先端孔から粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸飲または注入可能なスタイレットが得られる。
【0084】
本請求項4に係る発明によれば、バルーンカテーテルに常に一定の長さを挿入でき、予備成形部を特定の位置に配置することができるスタイレットが得られる。
【0085】
本請求項5に係る発明によれば、回転操作を容易にし、手元のハンドル部でのトルクを先端に伝達しやすいスタイレットが得られる。
【0086】
本請求項6に係る発明によれば、挿入過程での血管壁損傷を防止し、所望の位置でのみ40°から140°に湾曲でき、心臓内の種々の部位にある標的病変部を選択できる心臓不整脈治療装置が得られる。
【0087】
本請求項7に係る発明によれば、体外にあるハンドルにトルクをかけることにより、体内にあるバルーンの方向を変えることができ、これにより心臓内の種々の部位にある標的病変部を選択できる心臓不整脈治療装置が得られる。
【0088】
本請求項8に係る発明によれば、手技中のカテーテル内血液の滞留を無くすことで血栓の生成を防止し、スタイレットの操作性を維持できる心臓不整脈治療装置が得られる。
【0089】
本請求項9に係る発明によれば、標的病変部のみを確実に治療することでアブレーションによる治療時間を短縮でき、患者負担を軽減できる方法が得られる。
【0090】
本請求項10に係る発明によれば、標的病変部の選択性を向上できる方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバルーンカテーテルの1例を示す図である。
【図2】図1のバルーンカテーテルの1例のA−A’断面を示す図である。
【図3】本発明のスタイレットの1例を示す図である。
【図4】図3のスタイレットの1例の縮径部断面(B部)を示す図である。
【図5】本発明のスタイレットの1例を示す図である。
【図6】図5のスタイレットの1例の縮径部断面(B’部)を示す図である。
【図7】実施例1の実験状態を示す図である。
【図8】実施例1の実験状態でのバルーンカテーテルのC−C’断面を示す図である。
【図9】比較例1の実験状態を示す図である。
【図10】比較例1の実験状態でのバルーンカテーテルのD−D’断面を示す図である。
【図11】本発明のカテーテルシャフト部の剛性を比較した図である。
【図12】本発明のカテーテルの剛性の1例と従来技術との比較を示す図である。
【符号の説明】
1:バルーンカテーテル
2:カテーテル外筒シャフト
3:カテーテル内筒シャフト
4:スタイレット
5:クリアランスA
6:先端孔
7:側孔
8:柔軟部
9:バルーン
10:大径部
11:バルーン全長部
12:先端チューブ
13:高周波通電用電極
13a:リード線
13b:保護被膜A
14:温度センサー
14a:リード線
14b:保護被膜B
15:クリアランスB
16:コアワイヤー
17:コイル
18:ストッパー
19:ハンドル
20:コイル線
21:コイル線先端部
22:コイル線基端部
23:湾曲部
24:被膜部材
25:縮径部
26:四方コネクター
27:コネクターキャップ
28:Y型コネクターA
29:ステンレスパイプA
30:ステンレスパイプB
31:吸い上げ芯
32:心臓不整脈治療のための装置
33:二方活栓
34:Y型コネクターB
35:カテーテル湾曲部
36:20mlシリンジ
37:ガイドワイヤー
38:カテーテルシャフト
Claims (10)
- 形状記憶性且つ放射線遮蔽性の金属製コアワイヤーとコアワイヤーの先端側外周に配設した放射線遮蔽性金属製コイルからなり、コイル部分が電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルに所定の形状を与えるように適合した予備成形部を有し、且つバルーンカテーテルにスライド可能に配置したときに、バルーンカテーテルの剛性を高めることを特徴とするスタイレット。
- コアワイヤーがステンレス鋼により構成されることを特徴とする請求項1に記載のスタイレット。
- コアワイヤー及びコイルの外径が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のスタイレット。
- コアワイヤーの手元側に、バルーンカテーテル内への配設長さを規制するためのストッパーがあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスタイレット。
- コアワイヤーの手元側に、コアワイヤーを回転させるハンドルが配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスタイレット。
- 少なくとも一部に柔軟部を有するバルーンカテーテルと予備成形されたスタイレットからなり、スタイレットをバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することで、バルーンカテーテルの柔軟部のみに40°〜140°の湾曲部が形成可能なことを特徴とする心臓不整脈治療装置。
- スタイレットのハンドル操作によりバルーンの方向変化が可能なことを特徴とする請求項6に記載の心臓不整脈治療装置。
- バルーンカテーテル内腔とスタイレットのクリアランスを通して、バルーンカテーテルの先端孔から粘度5mPa・s以下の液体が5〜15ml/分程度吸引または注入可能なことを特徴とする請求項6または7に記載の心臓不整脈治療装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のスタイレットを電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することによりバルーンカテーテルの剛性を高め、前記スタイレットの予備成形部がバルーンカテーテル遠位部内に配置されたときに、バルーンカテーテルに所定の形状を与えることでバルーンを標的病変部に配置する方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のスタイレットを電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテル内にスライド可能に配置することにより、バルーンカテーテルの柔軟部のみに40°から140°の湾曲部を形成する請求項9に記載の方法。
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