JP2004073570A - 肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル - Google Patents
肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル Download PDFInfo
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Abstract
【課題】安全に使用でき、かつ肺静脈口でのアブレーションが容易なバルーン付アブレーションカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテルシャフトと該カテーテルシャフトに付設されているバルーンと肺静脈電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルであって、該バルーンを伸張させるための芯材を備えることを特徴とする肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【選択図】図1
【解決手段】カテーテルシャフトと該カテーテルシャフトに付設されているバルーンと肺静脈電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルであって、該バルーンを伸張させるための芯材を備えることを特徴とする肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルに係り、心臓不整脈、特に心房細動を治療するためにバルーンを膨張させバルーンを標的病変部に密着させ周辺組織を改変させることにより病変部を電気的に隔離し治療する肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、不整脈の発生源に対して、4mm大のチップからなる金属製電極のカテーテルを接触させ、高周波通電することにより、不整脈の発生源を電気凝固する治療方法が普及している。しかしながら、この手法は、WPW症候群や発作性心室頻拍等のように発生源が局所的である場合は比較的良いが、心房細動や心房粗動を治療するには広範囲の点状あるいは線状に焼灼(アブレーション)を繰り返し、数十回の通電を行うがカテーテル操作が難しく、技術的に極めて難しく不成功で終わることがほとんどであった。
【0003】
従来の高周波加温用電極と温度センサーを設置したバルーンカテーテル(特開平2−68073号公報、特許第2574119号)は高周波通電を行い加温させたバルーン全体で治療を行っていた。特許第2574119号公報には肺静脈の血管壁を幅広く焼灼できるバルーンカテーテルの例と、右心房全体を占める大きなバルーンで4つの肺静脈口の全てを同時にバルーンに接触させて同時に焼灼できるバルーンの例が示されているが、肺静脈の血管壁を幅広く焼灼すると、肺静脈内の狭窄をきたし肺高血圧症の原因となる恐れがあり、また右心房全体を占める大きなバルーンを用いて焼灼するには、心臓を一時停止さ、人工心肺を用いた体外循環を行う必要ある。
【0004】
高周波ホットバルーンカテーテル(カズシ・タナカら、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー」、38(7):2079−86(2001))は、肺静脈口周囲を容易に且つ短時間で輪状焼灼可能なカテーテルである。また特表2001−509415号には、肺静脈口の組織の周辺部領域を切除するための周辺部切除装置組立体が示されている。これらのカテーテルもしくは装置は、肺静脈口を輪状に焼灼できるため、金属製電極カテーテルのように焼灼を何度も行う必要がなく、特許2574119号公報に記載のカテーテルのように、肺静脈を幅広く焼灼しないために、再狭窄をきたすおそれもなく、肺静脈口を一つだけ焼灼するために心臓を停止させる必要がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】該高周波バルーンカテーテルを心房細動の治療に用いる場合、バルーン先端部を下大静脈から挿入し、右房を経て、経中隔的に心房中隔を穿刺して左房内に導き、肺静脈口へと誘導され、患部を焼灼することとなる。該バルーンカテーテルは上記のように優れた性能を持つものではあるが、該バルーンカテーテルはカテーテル操作を補助する治具が不足していたり、該バルーンカテーテルはバルーンや電極を構成する素材や形状が必ずしも本目的に合致したものではなかったために、患部への誘導時に血管分岐部や心房内の意図しない部位にひっかかってしまったし、目的部位へのバルーンの誘導が困難なときもあり、またバルーン形状が肺静脈口にフィットしないために輪状の焼灼が成功しないこともあった。シャフト素材の比誘電率が高く、絶縁性が低いために、冷却水循環を行いカテーテル内の冷却を行うも、高周波通電に起因する過熱によってシャフトが軟らかくなり変形し、肺静脈口へ押しつけていたバルーンが肺静脈圧に負けバルーンが肺静脈口から滑落したり、また、加熱を抑えるために高周波出力を抑えると病変部の焼灼が不十分な結果になり、幾度の焼灼を繰り返すといった望ましくない効果が生じることもあった。また、バルーン内に設けた温度センサーがバルーン内の様々な部分に接触することによりバルーン内の温度を正確に測定できないなどの障害も生じていた。また、該高周波バルーンカテーテルは、バルーン内の冷却のために冷却水を潅流することが必要であり、冷却水を循環させるためのチューブをシャフト内蔵させたために、シャフトが太くなり、カテーテルの操作性を低下させていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を達成するため、以下の構成を有する。
【0007】
(1)カテーテルシャフトと該カテーテルシャフトに付設されているバルーンと肺静脈電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルであって、該バルーンを伸張させるための芯材を備えることを特徴とする肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0008】
(2)該芯材が当接すべきストッパーを備えることを特徴とする(1)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0009】
(3)該芯材がバルーンを肺静脈口の所定の位置に導き、固定保持させる機能を備えていることを特徴とする(1)または(2)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0010】
(4)該芯材の手元部を回転させることによって該バルーンの向きが変更出来る機構を備えていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0011】
(5)該芯材が先端側20mm〜150mmの間で角度15度〜70度に湾曲していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0012】
(6)該カテーテルシャフトが、互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されているカテーテル外筒シャフトとカテーテル内筒シャフトからなる二重管式カテーテルシャフトであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0013】
(7)該バルーンの先端が該カテーテル内筒シャフトの先端部に固定され、該バルーンの後端がカテーテル外筒シャフトの先端に固定され、該カテーテルシャフトの摺動によりバルーンを変形できることを特徴とする(6)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0014】
(8)該アブレーション機構が該バルーン内部にあることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0015】
(9)該アブレーション機構が電磁波、超音波、放射線、光、熱からなる群より1つ以上選ばれるエネルギーを放出する機構であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0016】
(10)該アブレーション機構がアブレーション時に該バルーン内部を摂氏50度以上80度以下の液体で満たしめることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0017】
(11)該アブレーション機構が肺静脈を冷却する機構であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0018】
(12)該アブレーション機構が標的組織にアブレーション用の流体を注入する機構であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0019】
(13)該アブレーション機構がバルーン内に配設された高周波通電用電極であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0020】
(14)該アブレーション機構が肺静脈組織の性質を実質的に改変する機構であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0021】
(15)該バルーンが膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有することを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0022】
(16)該バルーンが膨張した状態で単一の肺静脈口の所定の部位に輪状に接触可能な形状を有することを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0023】
(17)該アブレーション機構に電気的に接続されるリード線具備し、該リード線の保護被覆材の比誘電率がポリ塩化ビニルより小さいことを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0024】
(18)該アブレーション機構が温度センサーを具備することを特徴とする(1)〜(17)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0025】
(19)該芯材が中空であることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0026】
(20)該芯材が該カテーテルから手元部より分離可能であることを特徴とする(1)〜(19)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0027】
(21)該カテーテルシャフトがポリ塩化ビニルより小さい比誘電率を有するプラスチック材料からなる(1)〜(20)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0028】
(22)該バルーンが、ポリウレタン系高分子材料で、バルーン厚みが100μm〜300μmの範囲である(1)〜(21)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0029】
(23)該バルーンが、膨張した状態でバルーン長さが20mm〜40mmの範囲である(1)〜(22)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0030】
(24)該バルーンが、膨張した状態でバルーン大径部の直径とバルーン先端側の小径部の直径との比が5〜12の範囲である(1)〜(23)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0031】
(25)該アブレーション機構に、該バルーンの温度を調節する機構を備えることを特徴とする(1)〜(24)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0032】
(26)該カテーテルシャフトに放射線遮蔽性金属パイプが嵌着されていることを特徴とする(1)〜(25)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0033】
【発明の実施の形態】本発明のいう肺静脈電気的隔離とは、肺静脈内に存在する心房細動の発生源からの興奮波が左心房に伝達しないように隔離することをいい、隔離のために電気的な装置等を用いて隔離することを必ずしも意味しない。
【0034】
本発明のいう組織の性質を実質的に改変するとは、組織の機械的、電気的、化学的あるいは他の構造的な性質の実質的な改変を意味し、改変された組織を介しての電気信号の伝導を実質的に阻止するような組織の性質の十分な改変を同時に意味する。
【0035】
本発明を構成するアブレーション機構は、肺静脈内に存在する心房細動の発生源からの興奮波が左心房に伝達しないように隔離(電気的隔離)することができるものであればよく、熱、高周波、超音波、マイクロ波、レーザーなどのエネルギーを放出する機構や、バルーン内に高温の液体を満たす機構や、肺静脈組織の性質を実質的に改変し電気的隔離できるまで組織を十分に冷却するような冷却機構や、肺静脈組織の性質を実質的に改変するように肺静脈組織にアブレーション用の流体を注入するような機構などが考えられる。本発明でいうアブレーション用の流体は、肺静脈組織の性質を実質的に改変することができ、かつ人体に投与できる安全性を有するものであるならばよく、たとえばエタノールなどを好ましく用いることができる。
【0036】
熱を放出する機構としては、直流電流源あるいは無線周波電流源のような交流電流源に接続された電極などを好ましく用いることができ、マイクロ波エネルギー源により励起されるアンテナや、電流の流れによる抵抗加熱あるいは光による光学的加熱によりバルーン内部に対流を生じせしめる機構や、伝導的伝熱による熱を放出する金属素子や他の熱的な導体のような加熱機構などが好ましく用いられる。バルーン内部を加熱された液体で満たしめることによるアブレーションを行なう場合、バルーン内部の液体の温度は摂氏50度以上80度以下が好ましく、摂氏55度以上75度以下がより好ましく、摂氏60度以上70度以下がいっそう好ましい。光、レーザーをアブレーション機構のエネルギーとして用いる場合は、光源に結合されたときに組織を改変するのに十分な光を送出する光ファイバーのような光放出機構なども好ましく用いられ、超音波を用いる場合は、適切な励振源に接続されたときに組織を改変するのに十分な超音波を放出するように調節された超音波水晶なども好ましく用いられうる。本発明を構成するアブレーション機構として、高周波通電用電極を用いる場合、該高周波通電用電極は、患部を焼灼するときに高周波を発し、バルーン内を加熱する目的で用いられうるものであれば特に限定されない。バルーンアブレーション(焼灼)時に用いられる高周波は、1MHzから40MHzが好ましく、医療用として13.56MHzが特に好ましく用いられ、高周波通電用電極も使用する高周波を発することが可能な材料および形状のものが好ましい。
【0037】
前記のアブレーション機構は、バルーンに接触した肺静脈口近傍で肺静脈を電気的に隔離するためにはバルーン近傍に備えられることが好ましく、バルーン内部に備えられることがより好ましいが、バルーンの外側表面、内側表面にあってもよく、バルーンを構成する樹脂の内部に埋め込まれてもよい。本発明におけるバルーン内部とは、バルーンの内腔を意味し、バルーンを構成する樹脂そのものを意味しない。
【0038】
本発明を構成するバルーンは、抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されないが、ポリウレタン系の高分子材料が好ましく用いられる。具体的には熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタンウレア、フッ素ポリエーテルポリウレタンウレア、ポリエーテルポリウレタンウレア樹脂、ポリエーテルポリウレタンウレアアミドなども好ましく用いることができるがこれらに限定されない。またバルーンの形状は、ヒト肺静脈口に輪状に接触できるものであり、さらに収縮時には下大静脈を経由し、右房から経中隔的に左房へ穿刺し、肺静脈へ誘導する際に、血管内での操作が容易であるものが好ましい。特に、その先端側に小径部を備え、且つバルーンを膨張した状態ではバルーン先端は内筒シャフト先端より遠位に有り、バルーンは小径部からバルーン後端にかけて直径が徐々に太くなる直円錐体状になるような形状が好ましく用いられる。バルーン先端を内筒シャフト先端よりもさらに遠位側にすることで、カテーテル先端部で血管内壁表面あるいは心臓内壁表面を傷つけないようにすることができる。また、バルーンが直円錐状になっていると、例えば肺静脈と左房壁の接合部位の病変部が肺静脈口に輪状に存在している場合、直円錐状のバルーンならば肺静脈から外れることなく病変部に接触可能だからである。バルーンが、膨張した状態で、バルーン大径部の直径(図2のr1)と、バルーン先端部の小径部の直径(図2のr2)との比が5〜12であるものが、すり鉢状になっている病変への対応のためにも好ましい。またバルーンの長さについては、操作性などを考慮すると20〜40mmのものが、心房および心室内での操作上好ましい。該バルーンの厚みは、血管内での誘導および肺静脈での膨張および焼灼を容易に行うことができ、さらに膨張時の形状が一定のものとなるものであれば特に限定しないが、バルーンの形状保持のためにもバルーンの厚さは100μm以上が好ましく、バルーンの伸縮性を充分なものとするために厚さが300μm以下であるものが好ましい。
【0039】
本発明を構成するカテーテルシャフトは、血管内での抗血栓性が高い材質のものであれば特に限定されないが、比誘電率が小さいプラスチック材料が好ましい。比誘電率は、以下の方法で測定することができる。
【0040】
ε=Cx/Co
ε:比誘電率
Cx:ブリッジが平衡になったときの測定用コンデンサーCsの容量
Co:主電極の面積及び試験片の厚さから算出したε=1の静電容量で次式によって算出する。
【0041】
Co=r2 /3.6t
r:主電極の半径(cm)
t:試験片の厚さ(cm)
血管内に挿入されるカテーテルシャフトは、高周波通電用電極からのに高周波に起因する過熱を緩和するために、比誘電率の低いものを用いることが好ましく、周波数1MHzでの比誘電率の測定値が3以下のものが特に好ましい。比誘電率の低い材料を用いることにより従来品において必要であった冷却手段を省くことができ、カテーテルシャフト全体を細いものとすることができるため、カテーテルの操作性が向上する。比誘電率が低いエンジニアリングプラスチック材料としては、フッ素樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性エラストマー(ポリアミド系、スチレン系、ポリエステル系、オレフィン系)、ポリプロピレン、メチルペンテンなどが好ましいが、それらの材料に限定されるものではない。図1に示されたように、カテーテルシャフトの先端には膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーンが付設されており、前記カテーテルシャフトは、互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されている二重管式カテーテルシャフトであるのが好ましい態様である。二重管式カテーテルシャフトは、内筒シャフトと外筒シャフトからなり、内筒シャフトの先端部にバルーンの先端が固定され、外筒シャフト先端部にバルーンの後端が固定された構造とするのが好ましい。互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されている二重管式カテーテルシャフトを摺動させることによって先端部に取り付けられたバルーンの形状を多様に変化させることができる。
【0042】
またカテーテルシャフトの先端部分には放射線遮蔽性金属パイプが嵌着されているのが好ましく、バルーンの各端がそれぞれ該金属パイプの上に取り付けられていることが好ましく、該金属パイプを具備することにより、X線による透視撮影画像上に、バルーンの両端に対応する金属パイプを明瞭に映し出すことができる。ここでいう放射線遮蔽性金属パイプとは、各種の電離放射線の透過性が低いものであればよく、具体的には金、プラチナ、ステンレス、TI−NI合金などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明を構成するリード線は、高周波通電用電極等のアブレーション機構に接続されて、該電極に高周波を送達させる目的で用いられうるものであれば特に限定されないが、高周波信号を通電させた時に発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材料で構成されたものが好ましい。また、該リード線は、保護被覆材で被覆され、該保護被覆材は、比誘電率が低いものが好ましく、1MHzで測定したときの値が2.5以下であることがさらに好ましい。比誘電率が高い被覆材であると高周波通電用電極に起因する過熱を抑制するには、カテーテル内冷却水を潅流させる必要が生じ、潅流用の流路が必要になり、さらにカテーテルシャフト全体が太いものとなってカテーテルの操作性が低下する。また、該保護被覆材は、絶縁性の高いものが電気特性を安定させるためにも特に好ましい。該保護被覆材としてフッ素樹脂(PTFE、FEP、PFA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタンなどの材料を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
本発明を構成する温度センサーは、バルーン内の温度を測定する目的で用いられうるものであれば、特に限定しないが、熱電対のようなものが好ましく、該温度センサーからの測定データーをモニターし、高周波通電用電極に電力を供給する高周波発生器の出力を温度データとしてフィードバックさせることができる。
【0045】
本発明を構成する温度センサーに接続するリード線は、バルーン内の温度をモニターするための信号をバルーン外へ送達するために用いられうる導体であれば特に限定しないが、白金、タングステン、銅、合金、クロメルのようなものが好ましい。また該温度センサーに接続するリード線は、カテーテルシャフト内の高周波通電用電極に接続するリード線とのショートを防ぐなどのためにも保護被覆材で被覆されていることが好ましく、該保護被覆材は、比誘電率が低いものがより好ましく、1MHzの値が2.5以下であることがさらに好ましい。比誘電率が高い保護被覆材であると高周波通電用電極に起因する過熱を抑制するために、カテーテル内冷却水を潅流させる必要が生じ、潅流用の流路が必要になり、さらにカテーテルシャフト全体が太いものとなってカテーテルの操作性が低下する。また、該保護被覆材は、絶縁性の高いものが電気特性を安定させるためにも特に好ましい。該保護被覆材としてフッ素樹脂(PTFE、FEP、PFA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタンなどの材料を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
本発明を構成する芯材は、バルーンを伸長させるとき、バルーンの伸長抵抗力に十分に耐え得る強度の持つ材質のものであれば特に限定されないが、好ましくは硬質で且つある程度曲がりやすいもの、たとえば弾性のある金属Ti−Ni合金、ステンレス、アルミニウム合金、タングステン−チタン合金などが好ましく用いられるがこれらに限定されない。
【0047】
また、該芯材は、バルーンカテーテルが軟らかいため、ガイドワイヤーだけではバルーンを軸方向に十分に伸長できなかった欠点を改良するもので、前記内筒シャフト内に該芯材を挿入し、該芯材をカテーテル先端に向けて押すことによって前記バルーン部分を軸方向に確実に伸長し、前記バルーン外径を確実十分に細くすることができることで、心房中隔を通過させる時の患者への侵襲度が低くなり、心房中隔欠損症などの合併症の軽減ができる。また、該芯材は、前記バルーンカテーテルを股静脈へ挿入させるとき、および心房中隔を通過させる時バルーン自体の方向性を定め、バルーン挿入操作がスムースに行なわせるため、あるいは左房内に入ったバルーンを目的の肺静脈口に簡単に所定の位置に導入させ、肺静脈血液の流れに逆らってバルーンを肺静脈口に固定保持させることが可能にし、さらには肺静脈口にバルーンが輪状に接触可能にするため、前記芯材先端側の20mm〜150mmの間が湾曲していることが好ましく、特に該湾曲が15〜70度であることが好ましい。
【0048】
また、バルーンカテーテル内に芯材を挿入した状態でガイドワイヤー操作を行う必要があり、また芯材手元から薬液あるいは造影剤を体内に注入、バルーン操作中にカテーテル先端から血液等を採取するため等により該芯材は中空であるとともに、外径は1.3mm以下、好ましくは1.1mm以下、1.0mm〜0.85mmがさらに好ましい。外径が1.3mm以上になると該芯材を挿入する内筒シャフトが太くなり、それに伴い外筒シャフトも太くなり、カテーテル操作が低下するばかりでなく心房中隔欠損症を引き起こす可能性が高くなる。また、外径を0.85mm以下にすると、バルーン伸長抵抗力に芯材が押負け、芯材そのものが折れ曲がり芯材の機能を果たさず、カテーテル全体の操作性を低下させてしまう。
【0049】
本発明を構成するストッパーは前記芯材先端がバルーン先端から突き出さない形状であれば特に限定しないが、前記内筒シャフト先端に嵌着されている前記放射線遮蔽性金属パイプに該芯材の外径より小径のコルセット(例えば図3の金属パイプ5のような形状のもの)、あるいは前記パイプの一部を芯材より細くなるように絞り込みをするか(例えば図3の金属パイプ5’のような形状のもの)、パイプを二重管にすればよい。
【0050】
また、本発明を構成する芯材は左房内に挿入された前記バルーンを芯材手元部を回転させることによって、左房内でバルーン先端側が自由に向きを変えることができるように該芯材先端側20mm〜150mmの間に15度〜70度の湾曲を設けるとともに、バルーンカテーテル自体のスティラブル機能を損なわないように、該芯材はカテーテル本体から取り外せることが可能な機構になっている。
【0051】
本発明を構成する固定保持具は、前記温度センサーをバルーン内所定位置に固定するために用いられうるものであれば特に限定しないが、クリップ、バンド形状でプラスチック、アラミド繊維を素材とするものが軽量・小型化の理由で好ましい。該固定保持具を備えることにより、バルーンを伸長あるいは膨張収縮の繰り返しが行われても高周波通電用電極および温度センサーの初期設定位置から移動することなく正確な加熱、温度モニターが可能となる。
【0052】
本発明にかかるバルーン付アブレーションカテーテルの一実施態様例を図1(バルーンの全体図)に示す。
【0053】
図1に示すように、バルーンカテーテルは、外筒シャフト4と内筒シャフト3とからなる二重式カテーテルシャフトと、外筒シャフト4の先端部と内筒シャフト3の先端部近傍との間に設置された収縮膨張可能なバルーン1と、バルーン1内に配設され高周波通電用電極8と、高周波通電用電極8に電気的に接続される電極リード線8aと、バルーン1内の温度をモニターするためにバルーン1内に配設された温度センサー9と、温度センサー9に電気的に接続される温度センサーリード線9aを備えている。バルーン1は平滑な表面を有する抗血栓性のポリウレタン系高分子材料で形成されている。また、図1に示すように、バルーン1は、外筒シャフト4に近い側を上側とする直円錐型の断面を有し、膨張した状態で単一の肺静脈口20の所定部位、例えば肺静脈22と左房壁24の接合部26に輪状に接触可能な形状を有する。バルーン4における内筒シャフト3の外周にはコイル状に高周波通電用電極8が巻設されている。外筒シャフト4は、X線不透過性で平滑な表面を有する抗血栓性のポリウレタン系高分子材料で形成されている(使用しているのはポリアミド系)。
【0054】
図3に示すように、高周波通電用電極8に接続された電極リード線8aは、外筒シャフト4の内側と内筒シャフト3の外側との間を通り、例えば13.56MHzの高周波電力を供給可能な高周波発生装置30に接続されている。また、患者の体表面、例えば背中の位置に設置された対極板がリード線を介して高周波発生装置30に接続されている。高周波発生装置30によって、高周波通電用電極8と対極板との間に高周波電カが供給される。例えば、バルーン1の直径が約2・5cmの場合には50W乃至200Wの高周波電カが供給される
この結果、いわゆる高周波誘導型加熱の原理に従って異なる誘電率を有する誘電体が接触する部分が加熱され、図1に示すようにバルーン1と接触する接合部26が輪状に加熱され焼灼される。灼熱された輸状の接合部26によって、単一の肺静脈22の肺静脈口20のみが選択的に左房47(図5)から電気的に隔離される。ここで、大出カの高周波発生装置30で高周波通電するにもかかわらず、電極リード線8aによる発熱は、電極リード線の保護被覆材の比誘電率を低いものとすることによって軽減できる。
【0055】
温度センサー9によってバルーン1内の温度が温度計を介してモニターされ、高周波発生装置30によって供給される高周波電力は、バルーン1内の温度が60℃〜70℃になるように、フィードハック回路を介して調整される。これによって、接合部26の温度は60℃〜70℃に維持され、組織の炭化蒸散や血栓形成を防ぐことができる。
【0056】
また、高周波発生装置30は、高周波通電用電極8と対極板との間のインピーダンスをモニターする機能を有し、高周波通電用電極8と対極板との間のインピーダンスの個が所定範囲にあるように高周波電力の印加時間が制御される。これによって、接合部26の灼熱される領域範囲を制御することができる。また、このインピ一ダンスが急上昇したときには、高周波電カの供給が瞬時に停止するように高周波発生装置30は安全装置を備えている。
【0057】
【実施例】
(バルーンカテーテル(1)の作製) バルーン1の大径部(1a)30mm、バルーン1の先端部(1b)の直径3mm、バルーン長さが30mmのバルーン成形型に濃度13%の調製されたポリウレタン溶液を浸漬し、熱をかけて溶媒を蒸発させて、成形型表面にウレタンポリマー皮膜を形成するディッピング法によりバルーン1を製造した。得られたバルーン1は図2に示すようにr1が30mm、r2が3mmで大径部と小径部の直径の比が10で、バルーン高さhは30mmであり成形型通りの寸法であった。またバルーン厚みdは160μmの均一な厚みの膜であった。なお、ポリウレタン溶液中のポリウレタンは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15%、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)70%、エチレンジアミン15%という配合のものである。
【0058】
一方、内筒シャフト3として4.5Fr・全長900mmのポリアミド製チューブを用い、直径1.4mm、長さ6mmで中央部に内径0.9mmになるコルセットを設けたサンドブラスト仕上げの外表面を有する金属パイプ5としてステンレスパイプを先端に内挿嵌着後0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定するとともに、後端に16G・長さ90mmの針基付ステンレスパイプ(吸上げ針)13を内挿嵌着し0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定した。
【0059】
他方、外筒シャフト4として、12Fr・800mmの硫酸バリウム30%含有のポリアミドエラストマー(商品名;ペバックス グレード;6333)製チューブを用い、直径2.8mm、長さ7mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有するステンレスパイプを金属パイプ6として先端に内挿嵌着後0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定するとともに、後端にWコネクター12を内挿執着し0.1mmのナイロン製糸Tで縛り固定した。
【0060】
そして内筒シャフト3をWコネクター12を介して挿入してからWコネクターキャップ14を締め付けることにより二重管式カテーテルシャフト2を得た。
【0061】
また、銀メッキ厚0.1μm以上施した0.5mm電気用軟銅線を内径1.6mm、長さ10mmのコイル状にするとともに、長さ1000mmにわたり4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)を被覆し電極コイル8と電極リード線8aを作製した。
【0062】
また、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)で被覆された極細熱電対ダブル(銅−コンスタンタン)線を温度センサー9として電極コイル8に埋設した後、電極コイル8と温度センサーは内筒シャフト3の先端部挿入し、リード線8a,9aはWコネクター12より引っぱり出し、リード線8a,9aはアラミド繊維で作られた固定保持具10で金属パイプ6に接合することで電極コイル8、温度センサーの位置決めをした。
【0063】
次に、バルーン1の先端部1Aと先端チップ7としてのポリウレタン細管とを金属パイプ5の先に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定するとともに、バルーン1の後端部1Bを金属パイプ6の先に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定した後、それぞれエポキシ樹脂系の接着剤Hで滑らかに仕上げてバルーン付アブレーションカテーテル(バルーンカテーテル(1))を作製した。このバルーンカテーテル(1)に外径1.0mm(内径0.7mm)で先端側40mmのところで角度45度に湾曲したステンレス製芯材を挿入したものを実施例1とし、ステンレス製芯材を挿入しないものを比較例1とした。
【0064】
ついで実施例1および比較例1におけるアブレーションカテーテルの機能を以下のようにしてチェックした。先ずWコネクター12に接続されている二方活栓15及び三方活栓17コックを開の状態にし、二方活栓15から希釈造影剤を注入しバルーン1の大径部直径が30mmになるよう希釈造影剤の充填を行い二方活栓15及び三方活栓17コックを閉じた。高周波発生装置30にYコネクター16からでている高周波通電用電極リード線8a端子と温度センサーリード線9aの端子を接続、ファントム(疑似生体)として直径20mmの穴を貫通させた豚肉ブロックに、大径部直径を30mmに膨張させたバルーン1を20mm穴に挿入フィットすることを確認した後、バルーン内温度設定を60℃にし出力10Wで高周波通電を開始した。1分経過後出力を徐々にあげ1分20秒後にバルーン内温度は60℃に達するとともに20W〜40Wの間で出力も制御に入った。高周波通電5分経過後通電をストップし、バルーン1からファントムを外しバルーン1に接触していた部位を観察したところ赤色素が輪状に白色化されアブレーションが十分に行われていた。
【0065】
続いて、本発明に係る芯材を備えない従来のバルーンカテーテル(比較例1)を用いてガイドワイヤー単独で肺静脈口アブレーションした場合と芯材を備えたバルーンカテーテル(実施例1)で肺静脈口をアブレーションした場合の比較試験を行った。
【0066】
麻酔下で体重46kgの豚の大腿部静脈を切開後、心エコーで心房中隔部位を確認しながら心房中隔穿刺針で心房中隔41を穿刺、心房中隔穿刺用カテーテルを残し心房中隔穿刺針を抜き取った。心房中隔穿刺用カテーテルを通してピッグテール型ガイドワイヤーを左房47内へ導入した。これを通して14Fr(内径4.67mm)ダイレーター付シースを左房47内へ導入し、ダイレーター及びピックテール型ガイドワイヤーをシース内から引き抜いた。別の0.025インチガイドワイヤーを左上肺静脈49内に挿入、留置した。
【0067】
(実施例1を用いたアブレーション)
芯材を備えたカテーテル(実施例1)を用いて左上肺静脈49のアブレーションを以下のような手順で行った。
【0068】
上で作製したバルーンカテーテル(1)のバルーン1内のエアー抜きを予めしておき、カテーテル内筒シャフトに、外径1.0mm(内径0.7mm)で先端側40mmのところで角度45度に湾曲したステンレス製芯材11を挿入し、吸上げ針13にロック固定した。吸上げ針13にロックされた芯材11をカテーテル先端側に向けて押し込みながら、吸上げ針13をWコネクター14にねじ込みロックした。芯材11を用いてバルーン長を59mmまで伸ばした後、0.025インチガイドワイヤーを介してカテーテルをシースに沿って左房47まで押し進めたが、芯材の効果によりバルーンが細くなったばかりでなくカテーテル自体のプッシャビリティー効果とバルーンの方向性が付けられたことにより、シースに無駄な力を与えず無理なく心房中隔41を通過進められた。シースから出たバルーン1は、X線透視撮影により金属パイプ5,6の像を目安に芯材11手元部ハブを操作することでバルーン先端は容易に左上肺静脈口へ正確に位置あわせを行うことができた。このように金属パイプ5,6はX線遮蔽性があってX線透視撮影の時に明瞭に映るので、バルーン1の位置を正確に把握する際の目印となるとともに、方向性を持たすために角度を付けた芯材11のおかげでバルーンは心房壁に接触、刺激を与えず肺静脈口へ正確に進められた。目的の左上肺静脈口にバルーン1が到達したことを確認したら、吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込んでいたロックを解除した。
【0069】
三方活栓17より造影剤を注入しバルーン1を膨らました。X線透視撮影によりバルーンが肺静脈口に接触していることを確認した後、0.025インチガイドワイヤーを引き抜き、芯材11より造影剤を流しバルーン1によって肺静脈口とバルーン1が完全に密着し肺静脈血が左房47へ漏れていないことをX線透視下で確認をした。
【0070】
肺静脈血の漏れがないことを確認した後、カテーテル手元部Yコネクター16からでている電極リード線8a端子と温度センサーリード線9a端子を高周波発生装置30に接続した。対極板を豚背中に張り付け、高周波発生装置30を作動させ、出力30〜60Wでバルーン1内温度60℃を5分間制御し続け、左上肺静脈口を焼灼後通電を停止した。バルーン1は造影剤で拡張から5分間の通電中芯材のプッシャビリティ効果で肺静脈口から離脱することもなく、固定維持が容易であった。
【0071】
ついで、バルーン1の造影剤を三方活栓17より抜きだしバルーン1を収縮させ、0.025インチガイドワイヤーをカテーテル内に挿入した。0.025インチガイドワイヤーがカテーテル先端からでたら、吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込みロックした。バルーン1が伸張されたらカテーテルを体外に抜去し、吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込んでいたロックを解除するとともに芯材11を内筒チューブ3から引き抜き、使用後カテーテル2,およびバルーン1の状態観察を行った。バルーン1は血栓形成もみられず、カテーテル2も実験前と同じ形状を維持し、高周波通電による発熱での変形は全くなく、十分に肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルとして使用できることが実証できた。
(比較例1を用いたアブレーション)
芯材を備えないバルーンカテーテル(比較例1)を用いた右上肺静脈のアブレーションを以下の手順により行った。
【0072】
実施例1のバルーンカテーテルを用いて左上肺静脈のアブレーションを行った同一の豚を用い、比較例1のバルーンカテーテルを用いて右上肺静脈のアブレーションを行った。
【0073】
左房47内にある0.025インチガイドワイヤーを右上肺静脈50内に挿入、留置した。一度体外に取り出した該カテーテル2を0.025インチガイドワイヤーに挿入し、カテーテル全体がガイドワイヤーに入ったら吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込みロックした(バルーン部は伸張される)。バルーン部伸張後、カテーテルは14Fr(内径4.67mm)シースに沿って左房47まで押し進めるようとしたが、バルーンがシース入り口で引っかかり挿入不可になった。引っかかったバルーン部分を観察するとバルーンがタック状になり皺発生でシース通過不能になったことがわかった。バルーン長を測ると伸長前の1.3倍しか伸長されておらず、バルーン径が5mmφ(芯材を使用するとバルーン長が伸長前の1.8倍で、バルーン径は3.8mmφ)であった。14Frシースを股静脈から引き抜き、新たに16Fr(内径5.33mm)ダイレーター付シースと交換し、シースが左房47へ挿入後ダイレーターを引き抜き再度カテーテル2を該シースに沿わせて左房47へと押し進めた。この操作時に、カテーテル2はシース内でかなりの抵抗がありこれはカテーテル自体のプッシャビリティが弱いと考えられた(芯材を備えたカテーテルを使用したときとは別のカテーテルであるという感触であった)。シースから出たバルーン1は、X線透視撮影により金属パイプ5,6の像を目安に右上肺静脈口へ押し進めたが、肺静脈内に留置しているガイドワイヤーがカテーテル押し込む方向と向きが少し異なるため、カテーテルに引きずられガイドワイヤーが肺静脈内から抜けそうになり、カテーテルを引き戻し−ガイドワイヤーを再留置の操作を繰り返し漸くバルーン1を右上肺静脈口に導いた。芯材11を備えたバルーンは芯材手元部ハブを操作することでバルーンの方向を変えることができ、且つプッシャビリティがあるのでそのまま押し進められたが、ガイドワイヤーだけでのガイドではバルーン1を一回のトライで肺静脈へ誘導するのは困難であった。バルーン1に三方活栓17より造影剤を注入し、該バルーンを膨らます。X線透視撮影でバルーンが肺静脈口に接触していることを確認したら、ガイドワイヤー保持と造影剤注入のため吸上げ針13にYコネクターを取付、取付たYコネクターから造影剤をカテーテル先端から肺静脈へ流し、バルーン1によって肺静脈口とバルーン1が密着し、肺静脈血が左房47へ漏れていないことをX線透視下で確認した。内筒チューブ3にガイドワイヤーを入れたまま造影剤を流さなければいけないため造影剤が少量しか流れず透視が不鮮明で2度、3度の造影透視を行うので放射線被曝量が増える傾向になった。肺静脈血の漏れがないことを確認した後、左上肺静脈口を実施例1のバルーンカテーテルを用いた場合と同様の手順で焼灼を行った。左上肺静脈口焼灼同様、出力30〜60Wでバルーン1内温度60℃を5分間制御し続け、右上肺静脈口を焼灼後高周波通電を停止した。
【0074】
体外に取り出した比較例1のバルーンカテーテルの使用後性能チェックしたが、二重管カテーテルシャフト2は軟らかくやや蛇行をおび、バルーン手元部は約40度に折れ癖がついた状態であった。カテーテルシャフトの蛇行やバルーン手元部の折れ癖は、高周波通電による発熱での影響と見られた。
【0075】
また、実験に使用した豚の死体を解剖し、心臓の剖検を行い左右の肺静脈と左心房の接合部が輪状に焼灼されていることが確認できた。組織学的には、肺静脈心筋部を染色し、肺静脈口壁内凝固壊死が観察され、バルーンを介して高周波通電されることにより、肺静脈口を輪状焼灼が行われていた。以上より、比較例1のバルーンカテーテルによっても実施例1を用いた場合と同様の焼灼が行われていたが、比較例1のバルーンカテーテルは実施例1のものと比較して著しく操作性が劣っており、実施例1のバルーンカテーテルで手技を行えば、操作がスムースで、患者への侵襲度も少なくてすむことが示唆された。
【0076】
(実施例2)
バルーン1の大径部(1a)の直径が25mm、バルーン1の先端部(1b)直径が3mm、バルーン高さ(h)が25mmであってバルーン1の厚さ(d)が150μmで、カテーテルシャフト2、芯材11等、他の材料は実施例1同様のものを用いバルーンカテーテル(実施例2)を作製し、臨床試験を行った。
【0077】
臨床試験のため、予め患者の肺静脈口の大きさを心エコー、造影で調べた結果に基づいて、バルーン1の大径部直径を25mmと決めた。
【0078】
先ず、局部麻酔下で大伏在静脈を切開後、心エコーで心房中隔穿刺部位を確認し、心房中隔穿刺針で心房中隔41を穿刺、心房中隔穿刺用カテーテルを残し心房中隔穿刺針を抜き取った。心房中隔穿刺用カテーテルを通してピッグテール型ガイドワイヤーを左房47に導入後、該ガイドワイヤーを通して13Frダイレーター付シースを左房47内に挿入、ダイレーター及びピッグテール型ガイドワイヤーを13Frシースから引き抜いた。次いで、8Frシース付電極カテーテルを13Frシース内を通し左上肺静脈49まで挿入し、該電極カテーテルで左上肺静脈49内の電位測定と、マッピングを行う。マッピング後電位変化がないことを確認したら、電極カテーテルのみを体外に取り出し、0.025インチガイドワイヤーを左房47内にそして肺静脈内へ進め肺静脈内で留置した。8Frシースを引き抜き、予めバルーン1内のエアー抜きをしていたカテーテル内筒シャフト3内に外径1.0mm(内径0.7mm)で、先端側より60mmから角度35度に湾曲されたステンレス製芯材11を挿入し、吸上げ針13にロック固定した。吸上げ針13にロック取付られた芯材11をカテーテル先端側に向けて押し込みながら、吸上げ針13をWコネクター14にねじ込みロックした。芯材11によりバルーンは48mmまで伸長された後、0.025インチガイドワイヤーを介してカテーテルをシースに沿って左房47まで押し進めた。芯材11の効果でバルーンの伸長度が向上、カテーテル2のプッシャビリティが向上し13Frシース内も無抵抗で通過し、心房中隔41の穴も従来品(ガイドワイヤー単独でアブレーションする方法)に対し3Frも小さい13Frで対応でき、芯材11の効果は十分にあることが確認できた。
【0079】
シースを出たバルーン1はX線透視撮影により金属パイプ5,6の像を目安に芯材11手元部ハブ操作をすることでバルーン先端は容易に左上肺静脈口へ正確に位置あわせを行った。
【0080】
目的の左上肺静脈口にバルーン1が到達したことを確認したら、Wコネクターキャップ14にロックしていた吸上げ針13のロックを外し吸上げ針13を引き戻した。次いで三方活栓17より造影剤を注入しバルーン1を膨らませながらX線透視撮影を行い、バルーン1が肺静脈口20に接触するようにカテーテル2を肺静脈口に押しつけた。従来品はこの操作時に強く押しつけるとバルーン1がバルーン手元部で折れ曲がり肺静脈口から外れることが多々見受けられたが、実施例2の芯材11をバルーン固定保持機能として用いたことによって、内筒シャフト3が金属と同じ働きをし一回の操作でバルーン1を肺静脈口へ密着させることが出来た。0.025インチガイドワイヤーを抜去後、芯材11手元部よりカテーテル先端に造影剤を流し、バルーン1によって肺静脈口20とバルーン1が完全に密着し、肺静脈血が左房47へ漏れていないことをX線透視下で確認した。
【0081】
肺静脈血の漏れがないことを確認した後、Yコネクター16からでている電極リード線8a端子と温度センサーリード線9a端子及び患者の背中に張り付けられている対極板を高周波発生装置30に接続した。高周波発生装置30を作動させ、出力50Wからスタートし40秒で設定温度67℃到達、出力40〜80Wで温度制御開始、67℃到達後3分間焼灼(アブレーション)を行い通電を停止した。
【0082】
バルーン1内の造影剤を抜き出しカテーテル2を体外に抜去し、8Frシース付電極カテーテルを焼灼した肺静脈内へ挿入、該電極カテーテルでaf(心房細動)電位を測定した。電位消失が1/2であったので再度同上手法でバルーンカテーテルを左上肺静脈口20に押し進め、造影剤で25mmφまで膨らませたバルーン1と肺静脈口20を接触させて、高周波通電を67℃到達後2分30秒行い焼灼を終了した。カテーテルを抜去し、電極カテーテルにて左上肺静脈49内の電位を測定したら完全に電位が消失していたので、該カテーテルを用いて左上肺静脈焼灼同様の手法で右上肺静脈口の焼灼を行った。焼灼温度・時間も左上肺静脈49と同じ67℃/3分間行った後、電極カテーテルで電位を測定したところ電位は残っているものの完全に電位解離でaf(心房細動)の治療は成功した。今回使用した肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルは従来品と比較して、心臓内外の出し入れ操作も楽になり、高周波通電中及び通電後のカテーテル2の変形も無く、肺静脈口への密着・固定維持が容易であった。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成によれば、バルーン付アブレーションカテーテルを用いた肺静脈の電気的隔離治療において、従来品になかった芯材を備えることによってバルーンの伸長、誘導、方向性を決める機能がついたことで、従来品より数段バルーン伸張時の直径を細くすることが可能となったため、治療時の操作性が格段に向上し、肺静脈電気的治療に起因する合併症が非常に少なくなった。また、バルーンの形状を本発明の構成とすることによって、カテーテル先端部で血管内壁表面あるいは心臓内壁表面を傷つけないようにすることができ、肺静脈から外れることなく病変部に接触可能で、すり鉢状になっている病変にも対応できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバルーン付アブレーションカテーテルの使用態様を示し、バルーンを膨張させた状態を示す断面図である。
【図2】バルーン膨張時の形状を示す図面である。
【図3】バルーン操作部分の一態様を示す図面である。
【図4】バルーン伸張時の一態様を示す図面である。
【図5】本発明の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルの概略図
【符号の説明】
1 バルーン
1A バルーン先端部
1B バルーン後端部
1a 大径部
1b 小径部
2 二重管式カテーテルシャフト
3 内筒シャフト
4 外筒シャフト
5 金属チューブ
6 金属チューブ
7 先端チップ
8 高周波通電用電極
8a 電極リード線
9 温度センサー
9a 温度センサーリード線
10 固定保持具
11 芯材
12 Wコネクター
13 吸上げ針
14 Wコネクターキャップ
15 二方活栓
16 Yコネクター
17 三方活栓
20 肺静脈口
22 肺静脈
24 左房壁
26 接合部
30 高周波発生装置
31 対極板
41 心房中隔
42 右房
43 右室
44 下大静脈
45 心室中隔
46 左室
47 左房
48 左下肺静脈
49 左上肺静脈
50 右上肺静脈
d バルーン厚み
r1 大径部の直径
r2 小径部の直径
h バルーンの高さ
H 接着剤
T ナイロン製糸
【発明の属する技術分野】
本発明は、肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルに係り、心臓不整脈、特に心房細動を治療するためにバルーンを膨張させバルーンを標的病変部に密着させ周辺組織を改変させることにより病変部を電気的に隔離し治療する肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、不整脈の発生源に対して、4mm大のチップからなる金属製電極のカテーテルを接触させ、高周波通電することにより、不整脈の発生源を電気凝固する治療方法が普及している。しかしながら、この手法は、WPW症候群や発作性心室頻拍等のように発生源が局所的である場合は比較的良いが、心房細動や心房粗動を治療するには広範囲の点状あるいは線状に焼灼(アブレーション)を繰り返し、数十回の通電を行うがカテーテル操作が難しく、技術的に極めて難しく不成功で終わることがほとんどであった。
【0003】
従来の高周波加温用電極と温度センサーを設置したバルーンカテーテル(特開平2−68073号公報、特許第2574119号)は高周波通電を行い加温させたバルーン全体で治療を行っていた。特許第2574119号公報には肺静脈の血管壁を幅広く焼灼できるバルーンカテーテルの例と、右心房全体を占める大きなバルーンで4つの肺静脈口の全てを同時にバルーンに接触させて同時に焼灼できるバルーンの例が示されているが、肺静脈の血管壁を幅広く焼灼すると、肺静脈内の狭窄をきたし肺高血圧症の原因となる恐れがあり、また右心房全体を占める大きなバルーンを用いて焼灼するには、心臓を一時停止さ、人工心肺を用いた体外循環を行う必要ある。
【0004】
高周波ホットバルーンカテーテル(カズシ・タナカら、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー」、38(7):2079−86(2001))は、肺静脈口周囲を容易に且つ短時間で輪状焼灼可能なカテーテルである。また特表2001−509415号には、肺静脈口の組織の周辺部領域を切除するための周辺部切除装置組立体が示されている。これらのカテーテルもしくは装置は、肺静脈口を輪状に焼灼できるため、金属製電極カテーテルのように焼灼を何度も行う必要がなく、特許2574119号公報に記載のカテーテルのように、肺静脈を幅広く焼灼しないために、再狭窄をきたすおそれもなく、肺静脈口を一つだけ焼灼するために心臓を停止させる必要がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】該高周波バルーンカテーテルを心房細動の治療に用いる場合、バルーン先端部を下大静脈から挿入し、右房を経て、経中隔的に心房中隔を穿刺して左房内に導き、肺静脈口へと誘導され、患部を焼灼することとなる。該バルーンカテーテルは上記のように優れた性能を持つものではあるが、該バルーンカテーテルはカテーテル操作を補助する治具が不足していたり、該バルーンカテーテルはバルーンや電極を構成する素材や形状が必ずしも本目的に合致したものではなかったために、患部への誘導時に血管分岐部や心房内の意図しない部位にひっかかってしまったし、目的部位へのバルーンの誘導が困難なときもあり、またバルーン形状が肺静脈口にフィットしないために輪状の焼灼が成功しないこともあった。シャフト素材の比誘電率が高く、絶縁性が低いために、冷却水循環を行いカテーテル内の冷却を行うも、高周波通電に起因する過熱によってシャフトが軟らかくなり変形し、肺静脈口へ押しつけていたバルーンが肺静脈圧に負けバルーンが肺静脈口から滑落したり、また、加熱を抑えるために高周波出力を抑えると病変部の焼灼が不十分な結果になり、幾度の焼灼を繰り返すといった望ましくない効果が生じることもあった。また、バルーン内に設けた温度センサーがバルーン内の様々な部分に接触することによりバルーン内の温度を正確に測定できないなどの障害も生じていた。また、該高周波バルーンカテーテルは、バルーン内の冷却のために冷却水を潅流することが必要であり、冷却水を循環させるためのチューブをシャフト内蔵させたために、シャフトが太くなり、カテーテルの操作性を低下させていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を達成するため、以下の構成を有する。
【0007】
(1)カテーテルシャフトと該カテーテルシャフトに付設されているバルーンと肺静脈電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルであって、該バルーンを伸張させるための芯材を備えることを特徴とする肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0008】
(2)該芯材が当接すべきストッパーを備えることを特徴とする(1)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0009】
(3)該芯材がバルーンを肺静脈口の所定の位置に導き、固定保持させる機能を備えていることを特徴とする(1)または(2)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0010】
(4)該芯材の手元部を回転させることによって該バルーンの向きが変更出来る機構を備えていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0011】
(5)該芯材が先端側20mm〜150mmの間で角度15度〜70度に湾曲していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0012】
(6)該カテーテルシャフトが、互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されているカテーテル外筒シャフトとカテーテル内筒シャフトからなる二重管式カテーテルシャフトであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0013】
(7)該バルーンの先端が該カテーテル内筒シャフトの先端部に固定され、該バルーンの後端がカテーテル外筒シャフトの先端に固定され、該カテーテルシャフトの摺動によりバルーンを変形できることを特徴とする(6)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0014】
(8)該アブレーション機構が該バルーン内部にあることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0015】
(9)該アブレーション機構が電磁波、超音波、放射線、光、熱からなる群より1つ以上選ばれるエネルギーを放出する機構であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0016】
(10)該アブレーション機構がアブレーション時に該バルーン内部を摂氏50度以上80度以下の液体で満たしめることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0017】
(11)該アブレーション機構が肺静脈を冷却する機構であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0018】
(12)該アブレーション機構が標的組織にアブレーション用の流体を注入する機構であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0019】
(13)該アブレーション機構がバルーン内に配設された高周波通電用電極であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0020】
(14)該アブレーション機構が肺静脈組織の性質を実質的に改変する機構であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0021】
(15)該バルーンが膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有することを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0022】
(16)該バルーンが膨張した状態で単一の肺静脈口の所定の部位に輪状に接触可能な形状を有することを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0023】
(17)該アブレーション機構に電気的に接続されるリード線具備し、該リード線の保護被覆材の比誘電率がポリ塩化ビニルより小さいことを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0024】
(18)該アブレーション機構が温度センサーを具備することを特徴とする(1)〜(17)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0025】
(19)該芯材が中空であることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0026】
(20)該芯材が該カテーテルから手元部より分離可能であることを特徴とする(1)〜(19)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0027】
(21)該カテーテルシャフトがポリ塩化ビニルより小さい比誘電率を有するプラスチック材料からなる(1)〜(20)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0028】
(22)該バルーンが、ポリウレタン系高分子材料で、バルーン厚みが100μm〜300μmの範囲である(1)〜(21)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0029】
(23)該バルーンが、膨張した状態でバルーン長さが20mm〜40mmの範囲である(1)〜(22)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0030】
(24)該バルーンが、膨張した状態でバルーン大径部の直径とバルーン先端側の小径部の直径との比が5〜12の範囲である(1)〜(23)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0031】
(25)該アブレーション機構に、該バルーンの温度を調節する機構を備えることを特徴とする(1)〜(24)に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0032】
(26)該カテーテルシャフトに放射線遮蔽性金属パイプが嵌着されていることを特徴とする(1)〜(25)のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
【0033】
【発明の実施の形態】本発明のいう肺静脈電気的隔離とは、肺静脈内に存在する心房細動の発生源からの興奮波が左心房に伝達しないように隔離することをいい、隔離のために電気的な装置等を用いて隔離することを必ずしも意味しない。
【0034】
本発明のいう組織の性質を実質的に改変するとは、組織の機械的、電気的、化学的あるいは他の構造的な性質の実質的な改変を意味し、改変された組織を介しての電気信号の伝導を実質的に阻止するような組織の性質の十分な改変を同時に意味する。
【0035】
本発明を構成するアブレーション機構は、肺静脈内に存在する心房細動の発生源からの興奮波が左心房に伝達しないように隔離(電気的隔離)することができるものであればよく、熱、高周波、超音波、マイクロ波、レーザーなどのエネルギーを放出する機構や、バルーン内に高温の液体を満たす機構や、肺静脈組織の性質を実質的に改変し電気的隔離できるまで組織を十分に冷却するような冷却機構や、肺静脈組織の性質を実質的に改変するように肺静脈組織にアブレーション用の流体を注入するような機構などが考えられる。本発明でいうアブレーション用の流体は、肺静脈組織の性質を実質的に改変することができ、かつ人体に投与できる安全性を有するものであるならばよく、たとえばエタノールなどを好ましく用いることができる。
【0036】
熱を放出する機構としては、直流電流源あるいは無線周波電流源のような交流電流源に接続された電極などを好ましく用いることができ、マイクロ波エネルギー源により励起されるアンテナや、電流の流れによる抵抗加熱あるいは光による光学的加熱によりバルーン内部に対流を生じせしめる機構や、伝導的伝熱による熱を放出する金属素子や他の熱的な導体のような加熱機構などが好ましく用いられる。バルーン内部を加熱された液体で満たしめることによるアブレーションを行なう場合、バルーン内部の液体の温度は摂氏50度以上80度以下が好ましく、摂氏55度以上75度以下がより好ましく、摂氏60度以上70度以下がいっそう好ましい。光、レーザーをアブレーション機構のエネルギーとして用いる場合は、光源に結合されたときに組織を改変するのに十分な光を送出する光ファイバーのような光放出機構なども好ましく用いられ、超音波を用いる場合は、適切な励振源に接続されたときに組織を改変するのに十分な超音波を放出するように調節された超音波水晶なども好ましく用いられうる。本発明を構成するアブレーション機構として、高周波通電用電極を用いる場合、該高周波通電用電極は、患部を焼灼するときに高周波を発し、バルーン内を加熱する目的で用いられうるものであれば特に限定されない。バルーンアブレーション(焼灼)時に用いられる高周波は、1MHzから40MHzが好ましく、医療用として13.56MHzが特に好ましく用いられ、高周波通電用電極も使用する高周波を発することが可能な材料および形状のものが好ましい。
【0037】
前記のアブレーション機構は、バルーンに接触した肺静脈口近傍で肺静脈を電気的に隔離するためにはバルーン近傍に備えられることが好ましく、バルーン内部に備えられることがより好ましいが、バルーンの外側表面、内側表面にあってもよく、バルーンを構成する樹脂の内部に埋め込まれてもよい。本発明におけるバルーン内部とは、バルーンの内腔を意味し、バルーンを構成する樹脂そのものを意味しない。
【0038】
本発明を構成するバルーンは、抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されないが、ポリウレタン系の高分子材料が好ましく用いられる。具体的には熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタンウレア、フッ素ポリエーテルポリウレタンウレア、ポリエーテルポリウレタンウレア樹脂、ポリエーテルポリウレタンウレアアミドなども好ましく用いることができるがこれらに限定されない。またバルーンの形状は、ヒト肺静脈口に輪状に接触できるものであり、さらに収縮時には下大静脈を経由し、右房から経中隔的に左房へ穿刺し、肺静脈へ誘導する際に、血管内での操作が容易であるものが好ましい。特に、その先端側に小径部を備え、且つバルーンを膨張した状態ではバルーン先端は内筒シャフト先端より遠位に有り、バルーンは小径部からバルーン後端にかけて直径が徐々に太くなる直円錐体状になるような形状が好ましく用いられる。バルーン先端を内筒シャフト先端よりもさらに遠位側にすることで、カテーテル先端部で血管内壁表面あるいは心臓内壁表面を傷つけないようにすることができる。また、バルーンが直円錐状になっていると、例えば肺静脈と左房壁の接合部位の病変部が肺静脈口に輪状に存在している場合、直円錐状のバルーンならば肺静脈から外れることなく病変部に接触可能だからである。バルーンが、膨張した状態で、バルーン大径部の直径(図2のr1)と、バルーン先端部の小径部の直径(図2のr2)との比が5〜12であるものが、すり鉢状になっている病変への対応のためにも好ましい。またバルーンの長さについては、操作性などを考慮すると20〜40mmのものが、心房および心室内での操作上好ましい。該バルーンの厚みは、血管内での誘導および肺静脈での膨張および焼灼を容易に行うことができ、さらに膨張時の形状が一定のものとなるものであれば特に限定しないが、バルーンの形状保持のためにもバルーンの厚さは100μm以上が好ましく、バルーンの伸縮性を充分なものとするために厚さが300μm以下であるものが好ましい。
【0039】
本発明を構成するカテーテルシャフトは、血管内での抗血栓性が高い材質のものであれば特に限定されないが、比誘電率が小さいプラスチック材料が好ましい。比誘電率は、以下の方法で測定することができる。
【0040】
ε=Cx/Co
ε:比誘電率
Cx:ブリッジが平衡になったときの測定用コンデンサーCsの容量
Co:主電極の面積及び試験片の厚さから算出したε=1の静電容量で次式によって算出する。
【0041】
Co=r2 /3.6t
r:主電極の半径(cm)
t:試験片の厚さ(cm)
血管内に挿入されるカテーテルシャフトは、高周波通電用電極からのに高周波に起因する過熱を緩和するために、比誘電率の低いものを用いることが好ましく、周波数1MHzでの比誘電率の測定値が3以下のものが特に好ましい。比誘電率の低い材料を用いることにより従来品において必要であった冷却手段を省くことができ、カテーテルシャフト全体を細いものとすることができるため、カテーテルの操作性が向上する。比誘電率が低いエンジニアリングプラスチック材料としては、フッ素樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性エラストマー(ポリアミド系、スチレン系、ポリエステル系、オレフィン系)、ポリプロピレン、メチルペンテンなどが好ましいが、それらの材料に限定されるものではない。図1に示されたように、カテーテルシャフトの先端には膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーンが付設されており、前記カテーテルシャフトは、互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されている二重管式カテーテルシャフトであるのが好ましい態様である。二重管式カテーテルシャフトは、内筒シャフトと外筒シャフトからなり、内筒シャフトの先端部にバルーンの先端が固定され、外筒シャフト先端部にバルーンの後端が固定された構造とするのが好ましい。互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されている二重管式カテーテルシャフトを摺動させることによって先端部に取り付けられたバルーンの形状を多様に変化させることができる。
【0042】
またカテーテルシャフトの先端部分には放射線遮蔽性金属パイプが嵌着されているのが好ましく、バルーンの各端がそれぞれ該金属パイプの上に取り付けられていることが好ましく、該金属パイプを具備することにより、X線による透視撮影画像上に、バルーンの両端に対応する金属パイプを明瞭に映し出すことができる。ここでいう放射線遮蔽性金属パイプとは、各種の電離放射線の透過性が低いものであればよく、具体的には金、プラチナ、ステンレス、TI−NI合金などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明を構成するリード線は、高周波通電用電極等のアブレーション機構に接続されて、該電極に高周波を送達させる目的で用いられうるものであれば特に限定されないが、高周波信号を通電させた時に発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材料で構成されたものが好ましい。また、該リード線は、保護被覆材で被覆され、該保護被覆材は、比誘電率が低いものが好ましく、1MHzで測定したときの値が2.5以下であることがさらに好ましい。比誘電率が高い被覆材であると高周波通電用電極に起因する過熱を抑制するには、カテーテル内冷却水を潅流させる必要が生じ、潅流用の流路が必要になり、さらにカテーテルシャフト全体が太いものとなってカテーテルの操作性が低下する。また、該保護被覆材は、絶縁性の高いものが電気特性を安定させるためにも特に好ましい。該保護被覆材としてフッ素樹脂(PTFE、FEP、PFA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタンなどの材料を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
本発明を構成する温度センサーは、バルーン内の温度を測定する目的で用いられうるものであれば、特に限定しないが、熱電対のようなものが好ましく、該温度センサーからの測定データーをモニターし、高周波通電用電極に電力を供給する高周波発生器の出力を温度データとしてフィードバックさせることができる。
【0045】
本発明を構成する温度センサーに接続するリード線は、バルーン内の温度をモニターするための信号をバルーン外へ送達するために用いられうる導体であれば特に限定しないが、白金、タングステン、銅、合金、クロメルのようなものが好ましい。また該温度センサーに接続するリード線は、カテーテルシャフト内の高周波通電用電極に接続するリード線とのショートを防ぐなどのためにも保護被覆材で被覆されていることが好ましく、該保護被覆材は、比誘電率が低いものがより好ましく、1MHzの値が2.5以下であることがさらに好ましい。比誘電率が高い保護被覆材であると高周波通電用電極に起因する過熱を抑制するために、カテーテル内冷却水を潅流させる必要が生じ、潅流用の流路が必要になり、さらにカテーテルシャフト全体が太いものとなってカテーテルの操作性が低下する。また、該保護被覆材は、絶縁性の高いものが電気特性を安定させるためにも特に好ましい。該保護被覆材としてフッ素樹脂(PTFE、FEP、PFA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタンなどの材料を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
本発明を構成する芯材は、バルーンを伸長させるとき、バルーンの伸長抵抗力に十分に耐え得る強度の持つ材質のものであれば特に限定されないが、好ましくは硬質で且つある程度曲がりやすいもの、たとえば弾性のある金属Ti−Ni合金、ステンレス、アルミニウム合金、タングステン−チタン合金などが好ましく用いられるがこれらに限定されない。
【0047】
また、該芯材は、バルーンカテーテルが軟らかいため、ガイドワイヤーだけではバルーンを軸方向に十分に伸長できなかった欠点を改良するもので、前記内筒シャフト内に該芯材を挿入し、該芯材をカテーテル先端に向けて押すことによって前記バルーン部分を軸方向に確実に伸長し、前記バルーン外径を確実十分に細くすることができることで、心房中隔を通過させる時の患者への侵襲度が低くなり、心房中隔欠損症などの合併症の軽減ができる。また、該芯材は、前記バルーンカテーテルを股静脈へ挿入させるとき、および心房中隔を通過させる時バルーン自体の方向性を定め、バルーン挿入操作がスムースに行なわせるため、あるいは左房内に入ったバルーンを目的の肺静脈口に簡単に所定の位置に導入させ、肺静脈血液の流れに逆らってバルーンを肺静脈口に固定保持させることが可能にし、さらには肺静脈口にバルーンが輪状に接触可能にするため、前記芯材先端側の20mm〜150mmの間が湾曲していることが好ましく、特に該湾曲が15〜70度であることが好ましい。
【0048】
また、バルーンカテーテル内に芯材を挿入した状態でガイドワイヤー操作を行う必要があり、また芯材手元から薬液あるいは造影剤を体内に注入、バルーン操作中にカテーテル先端から血液等を採取するため等により該芯材は中空であるとともに、外径は1.3mm以下、好ましくは1.1mm以下、1.0mm〜0.85mmがさらに好ましい。外径が1.3mm以上になると該芯材を挿入する内筒シャフトが太くなり、それに伴い外筒シャフトも太くなり、カテーテル操作が低下するばかりでなく心房中隔欠損症を引き起こす可能性が高くなる。また、外径を0.85mm以下にすると、バルーン伸長抵抗力に芯材が押負け、芯材そのものが折れ曲がり芯材の機能を果たさず、カテーテル全体の操作性を低下させてしまう。
【0049】
本発明を構成するストッパーは前記芯材先端がバルーン先端から突き出さない形状であれば特に限定しないが、前記内筒シャフト先端に嵌着されている前記放射線遮蔽性金属パイプに該芯材の外径より小径のコルセット(例えば図3の金属パイプ5のような形状のもの)、あるいは前記パイプの一部を芯材より細くなるように絞り込みをするか(例えば図3の金属パイプ5’のような形状のもの)、パイプを二重管にすればよい。
【0050】
また、本発明を構成する芯材は左房内に挿入された前記バルーンを芯材手元部を回転させることによって、左房内でバルーン先端側が自由に向きを変えることができるように該芯材先端側20mm〜150mmの間に15度〜70度の湾曲を設けるとともに、バルーンカテーテル自体のスティラブル機能を損なわないように、該芯材はカテーテル本体から取り外せることが可能な機構になっている。
【0051】
本発明を構成する固定保持具は、前記温度センサーをバルーン内所定位置に固定するために用いられうるものであれば特に限定しないが、クリップ、バンド形状でプラスチック、アラミド繊維を素材とするものが軽量・小型化の理由で好ましい。該固定保持具を備えることにより、バルーンを伸長あるいは膨張収縮の繰り返しが行われても高周波通電用電極および温度センサーの初期設定位置から移動することなく正確な加熱、温度モニターが可能となる。
【0052】
本発明にかかるバルーン付アブレーションカテーテルの一実施態様例を図1(バルーンの全体図)に示す。
【0053】
図1に示すように、バルーンカテーテルは、外筒シャフト4と内筒シャフト3とからなる二重式カテーテルシャフトと、外筒シャフト4の先端部と内筒シャフト3の先端部近傍との間に設置された収縮膨張可能なバルーン1と、バルーン1内に配設され高周波通電用電極8と、高周波通電用電極8に電気的に接続される電極リード線8aと、バルーン1内の温度をモニターするためにバルーン1内に配設された温度センサー9と、温度センサー9に電気的に接続される温度センサーリード線9aを備えている。バルーン1は平滑な表面を有する抗血栓性のポリウレタン系高分子材料で形成されている。また、図1に示すように、バルーン1は、外筒シャフト4に近い側を上側とする直円錐型の断面を有し、膨張した状態で単一の肺静脈口20の所定部位、例えば肺静脈22と左房壁24の接合部26に輪状に接触可能な形状を有する。バルーン4における内筒シャフト3の外周にはコイル状に高周波通電用電極8が巻設されている。外筒シャフト4は、X線不透過性で平滑な表面を有する抗血栓性のポリウレタン系高分子材料で形成されている(使用しているのはポリアミド系)。
【0054】
図3に示すように、高周波通電用電極8に接続された電極リード線8aは、外筒シャフト4の内側と内筒シャフト3の外側との間を通り、例えば13.56MHzの高周波電力を供給可能な高周波発生装置30に接続されている。また、患者の体表面、例えば背中の位置に設置された対極板がリード線を介して高周波発生装置30に接続されている。高周波発生装置30によって、高周波通電用電極8と対極板との間に高周波電カが供給される。例えば、バルーン1の直径が約2・5cmの場合には50W乃至200Wの高周波電カが供給される
この結果、いわゆる高周波誘導型加熱の原理に従って異なる誘電率を有する誘電体が接触する部分が加熱され、図1に示すようにバルーン1と接触する接合部26が輪状に加熱され焼灼される。灼熱された輸状の接合部26によって、単一の肺静脈22の肺静脈口20のみが選択的に左房47(図5)から電気的に隔離される。ここで、大出カの高周波発生装置30で高周波通電するにもかかわらず、電極リード線8aによる発熱は、電極リード線の保護被覆材の比誘電率を低いものとすることによって軽減できる。
【0055】
温度センサー9によってバルーン1内の温度が温度計を介してモニターされ、高周波発生装置30によって供給される高周波電力は、バルーン1内の温度が60℃〜70℃になるように、フィードハック回路を介して調整される。これによって、接合部26の温度は60℃〜70℃に維持され、組織の炭化蒸散や血栓形成を防ぐことができる。
【0056】
また、高周波発生装置30は、高周波通電用電極8と対極板との間のインピーダンスをモニターする機能を有し、高周波通電用電極8と対極板との間のインピーダンスの個が所定範囲にあるように高周波電力の印加時間が制御される。これによって、接合部26の灼熱される領域範囲を制御することができる。また、このインピ一ダンスが急上昇したときには、高周波電カの供給が瞬時に停止するように高周波発生装置30は安全装置を備えている。
【0057】
【実施例】
(バルーンカテーテル(1)の作製) バルーン1の大径部(1a)30mm、バルーン1の先端部(1b)の直径3mm、バルーン長さが30mmのバルーン成形型に濃度13%の調製されたポリウレタン溶液を浸漬し、熱をかけて溶媒を蒸発させて、成形型表面にウレタンポリマー皮膜を形成するディッピング法によりバルーン1を製造した。得られたバルーン1は図2に示すようにr1が30mm、r2が3mmで大径部と小径部の直径の比が10で、バルーン高さhは30mmであり成形型通りの寸法であった。またバルーン厚みdは160μmの均一な厚みの膜であった。なお、ポリウレタン溶液中のポリウレタンは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15%、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)70%、エチレンジアミン15%という配合のものである。
【0058】
一方、内筒シャフト3として4.5Fr・全長900mmのポリアミド製チューブを用い、直径1.4mm、長さ6mmで中央部に内径0.9mmになるコルセットを設けたサンドブラスト仕上げの外表面を有する金属パイプ5としてステンレスパイプを先端に内挿嵌着後0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定するとともに、後端に16G・長さ90mmの針基付ステンレスパイプ(吸上げ針)13を内挿嵌着し0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定した。
【0059】
他方、外筒シャフト4として、12Fr・800mmの硫酸バリウム30%含有のポリアミドエラストマー(商品名;ペバックス グレード;6333)製チューブを用い、直径2.8mm、長さ7mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有するステンレスパイプを金属パイプ6として先端に内挿嵌着後0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定するとともに、後端にWコネクター12を内挿執着し0.1mmのナイロン製糸Tで縛り固定した。
【0060】
そして内筒シャフト3をWコネクター12を介して挿入してからWコネクターキャップ14を締め付けることにより二重管式カテーテルシャフト2を得た。
【0061】
また、銀メッキ厚0.1μm以上施した0.5mm電気用軟銅線を内径1.6mm、長さ10mmのコイル状にするとともに、長さ1000mmにわたり4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)を被覆し電極コイル8と電極リード線8aを作製した。
【0062】
また、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)で被覆された極細熱電対ダブル(銅−コンスタンタン)線を温度センサー9として電極コイル8に埋設した後、電極コイル8と温度センサーは内筒シャフト3の先端部挿入し、リード線8a,9aはWコネクター12より引っぱり出し、リード線8a,9aはアラミド繊維で作られた固定保持具10で金属パイプ6に接合することで電極コイル8、温度センサーの位置決めをした。
【0063】
次に、バルーン1の先端部1Aと先端チップ7としてのポリウレタン細管とを金属パイプ5の先に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定するとともに、バルーン1の後端部1Bを金属パイプ6の先に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸Tで縛り固定した後、それぞれエポキシ樹脂系の接着剤Hで滑らかに仕上げてバルーン付アブレーションカテーテル(バルーンカテーテル(1))を作製した。このバルーンカテーテル(1)に外径1.0mm(内径0.7mm)で先端側40mmのところで角度45度に湾曲したステンレス製芯材を挿入したものを実施例1とし、ステンレス製芯材を挿入しないものを比較例1とした。
【0064】
ついで実施例1および比較例1におけるアブレーションカテーテルの機能を以下のようにしてチェックした。先ずWコネクター12に接続されている二方活栓15及び三方活栓17コックを開の状態にし、二方活栓15から希釈造影剤を注入しバルーン1の大径部直径が30mmになるよう希釈造影剤の充填を行い二方活栓15及び三方活栓17コックを閉じた。高周波発生装置30にYコネクター16からでている高周波通電用電極リード線8a端子と温度センサーリード線9aの端子を接続、ファントム(疑似生体)として直径20mmの穴を貫通させた豚肉ブロックに、大径部直径を30mmに膨張させたバルーン1を20mm穴に挿入フィットすることを確認した後、バルーン内温度設定を60℃にし出力10Wで高周波通電を開始した。1分経過後出力を徐々にあげ1分20秒後にバルーン内温度は60℃に達するとともに20W〜40Wの間で出力も制御に入った。高周波通電5分経過後通電をストップし、バルーン1からファントムを外しバルーン1に接触していた部位を観察したところ赤色素が輪状に白色化されアブレーションが十分に行われていた。
【0065】
続いて、本発明に係る芯材を備えない従来のバルーンカテーテル(比較例1)を用いてガイドワイヤー単独で肺静脈口アブレーションした場合と芯材を備えたバルーンカテーテル(実施例1)で肺静脈口をアブレーションした場合の比較試験を行った。
【0066】
麻酔下で体重46kgの豚の大腿部静脈を切開後、心エコーで心房中隔部位を確認しながら心房中隔穿刺針で心房中隔41を穿刺、心房中隔穿刺用カテーテルを残し心房中隔穿刺針を抜き取った。心房中隔穿刺用カテーテルを通してピッグテール型ガイドワイヤーを左房47内へ導入した。これを通して14Fr(内径4.67mm)ダイレーター付シースを左房47内へ導入し、ダイレーター及びピックテール型ガイドワイヤーをシース内から引き抜いた。別の0.025インチガイドワイヤーを左上肺静脈49内に挿入、留置した。
【0067】
(実施例1を用いたアブレーション)
芯材を備えたカテーテル(実施例1)を用いて左上肺静脈49のアブレーションを以下のような手順で行った。
【0068】
上で作製したバルーンカテーテル(1)のバルーン1内のエアー抜きを予めしておき、カテーテル内筒シャフトに、外径1.0mm(内径0.7mm)で先端側40mmのところで角度45度に湾曲したステンレス製芯材11を挿入し、吸上げ針13にロック固定した。吸上げ針13にロックされた芯材11をカテーテル先端側に向けて押し込みながら、吸上げ針13をWコネクター14にねじ込みロックした。芯材11を用いてバルーン長を59mmまで伸ばした後、0.025インチガイドワイヤーを介してカテーテルをシースに沿って左房47まで押し進めたが、芯材の効果によりバルーンが細くなったばかりでなくカテーテル自体のプッシャビリティー効果とバルーンの方向性が付けられたことにより、シースに無駄な力を与えず無理なく心房中隔41を通過進められた。シースから出たバルーン1は、X線透視撮影により金属パイプ5,6の像を目安に芯材11手元部ハブを操作することでバルーン先端は容易に左上肺静脈口へ正確に位置あわせを行うことができた。このように金属パイプ5,6はX線遮蔽性があってX線透視撮影の時に明瞭に映るので、バルーン1の位置を正確に把握する際の目印となるとともに、方向性を持たすために角度を付けた芯材11のおかげでバルーンは心房壁に接触、刺激を与えず肺静脈口へ正確に進められた。目的の左上肺静脈口にバルーン1が到達したことを確認したら、吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込んでいたロックを解除した。
【0069】
三方活栓17より造影剤を注入しバルーン1を膨らました。X線透視撮影によりバルーンが肺静脈口に接触していることを確認した後、0.025インチガイドワイヤーを引き抜き、芯材11より造影剤を流しバルーン1によって肺静脈口とバルーン1が完全に密着し肺静脈血が左房47へ漏れていないことをX線透視下で確認をした。
【0070】
肺静脈血の漏れがないことを確認した後、カテーテル手元部Yコネクター16からでている電極リード線8a端子と温度センサーリード線9a端子を高周波発生装置30に接続した。対極板を豚背中に張り付け、高周波発生装置30を作動させ、出力30〜60Wでバルーン1内温度60℃を5分間制御し続け、左上肺静脈口を焼灼後通電を停止した。バルーン1は造影剤で拡張から5分間の通電中芯材のプッシャビリティ効果で肺静脈口から離脱することもなく、固定維持が容易であった。
【0071】
ついで、バルーン1の造影剤を三方活栓17より抜きだしバルーン1を収縮させ、0.025インチガイドワイヤーをカテーテル内に挿入した。0.025インチガイドワイヤーがカテーテル先端からでたら、吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込みロックした。バルーン1が伸張されたらカテーテルを体外に抜去し、吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込んでいたロックを解除するとともに芯材11を内筒チューブ3から引き抜き、使用後カテーテル2,およびバルーン1の状態観察を行った。バルーン1は血栓形成もみられず、カテーテル2も実験前と同じ形状を維持し、高周波通電による発熱での変形は全くなく、十分に肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルとして使用できることが実証できた。
(比較例1を用いたアブレーション)
芯材を備えないバルーンカテーテル(比較例1)を用いた右上肺静脈のアブレーションを以下の手順により行った。
【0072】
実施例1のバルーンカテーテルを用いて左上肺静脈のアブレーションを行った同一の豚を用い、比較例1のバルーンカテーテルを用いて右上肺静脈のアブレーションを行った。
【0073】
左房47内にある0.025インチガイドワイヤーを右上肺静脈50内に挿入、留置した。一度体外に取り出した該カテーテル2を0.025インチガイドワイヤーに挿入し、カテーテル全体がガイドワイヤーに入ったら吸上げ針13をWコネクターキャップ14にねじ込みロックした(バルーン部は伸張される)。バルーン部伸張後、カテーテルは14Fr(内径4.67mm)シースに沿って左房47まで押し進めるようとしたが、バルーンがシース入り口で引っかかり挿入不可になった。引っかかったバルーン部分を観察するとバルーンがタック状になり皺発生でシース通過不能になったことがわかった。バルーン長を測ると伸長前の1.3倍しか伸長されておらず、バルーン径が5mmφ(芯材を使用するとバルーン長が伸長前の1.8倍で、バルーン径は3.8mmφ)であった。14Frシースを股静脈から引き抜き、新たに16Fr(内径5.33mm)ダイレーター付シースと交換し、シースが左房47へ挿入後ダイレーターを引き抜き再度カテーテル2を該シースに沿わせて左房47へと押し進めた。この操作時に、カテーテル2はシース内でかなりの抵抗がありこれはカテーテル自体のプッシャビリティが弱いと考えられた(芯材を備えたカテーテルを使用したときとは別のカテーテルであるという感触であった)。シースから出たバルーン1は、X線透視撮影により金属パイプ5,6の像を目安に右上肺静脈口へ押し進めたが、肺静脈内に留置しているガイドワイヤーがカテーテル押し込む方向と向きが少し異なるため、カテーテルに引きずられガイドワイヤーが肺静脈内から抜けそうになり、カテーテルを引き戻し−ガイドワイヤーを再留置の操作を繰り返し漸くバルーン1を右上肺静脈口に導いた。芯材11を備えたバルーンは芯材手元部ハブを操作することでバルーンの方向を変えることができ、且つプッシャビリティがあるのでそのまま押し進められたが、ガイドワイヤーだけでのガイドではバルーン1を一回のトライで肺静脈へ誘導するのは困難であった。バルーン1に三方活栓17より造影剤を注入し、該バルーンを膨らます。X線透視撮影でバルーンが肺静脈口に接触していることを確認したら、ガイドワイヤー保持と造影剤注入のため吸上げ針13にYコネクターを取付、取付たYコネクターから造影剤をカテーテル先端から肺静脈へ流し、バルーン1によって肺静脈口とバルーン1が密着し、肺静脈血が左房47へ漏れていないことをX線透視下で確認した。内筒チューブ3にガイドワイヤーを入れたまま造影剤を流さなければいけないため造影剤が少量しか流れず透視が不鮮明で2度、3度の造影透視を行うので放射線被曝量が増える傾向になった。肺静脈血の漏れがないことを確認した後、左上肺静脈口を実施例1のバルーンカテーテルを用いた場合と同様の手順で焼灼を行った。左上肺静脈口焼灼同様、出力30〜60Wでバルーン1内温度60℃を5分間制御し続け、右上肺静脈口を焼灼後高周波通電を停止した。
【0074】
体外に取り出した比較例1のバルーンカテーテルの使用後性能チェックしたが、二重管カテーテルシャフト2は軟らかくやや蛇行をおび、バルーン手元部は約40度に折れ癖がついた状態であった。カテーテルシャフトの蛇行やバルーン手元部の折れ癖は、高周波通電による発熱での影響と見られた。
【0075】
また、実験に使用した豚の死体を解剖し、心臓の剖検を行い左右の肺静脈と左心房の接合部が輪状に焼灼されていることが確認できた。組織学的には、肺静脈心筋部を染色し、肺静脈口壁内凝固壊死が観察され、バルーンを介して高周波通電されることにより、肺静脈口を輪状焼灼が行われていた。以上より、比較例1のバルーンカテーテルによっても実施例1を用いた場合と同様の焼灼が行われていたが、比較例1のバルーンカテーテルは実施例1のものと比較して著しく操作性が劣っており、実施例1のバルーンカテーテルで手技を行えば、操作がスムースで、患者への侵襲度も少なくてすむことが示唆された。
【0076】
(実施例2)
バルーン1の大径部(1a)の直径が25mm、バルーン1の先端部(1b)直径が3mm、バルーン高さ(h)が25mmであってバルーン1の厚さ(d)が150μmで、カテーテルシャフト2、芯材11等、他の材料は実施例1同様のものを用いバルーンカテーテル(実施例2)を作製し、臨床試験を行った。
【0077】
臨床試験のため、予め患者の肺静脈口の大きさを心エコー、造影で調べた結果に基づいて、バルーン1の大径部直径を25mmと決めた。
【0078】
先ず、局部麻酔下で大伏在静脈を切開後、心エコーで心房中隔穿刺部位を確認し、心房中隔穿刺針で心房中隔41を穿刺、心房中隔穿刺用カテーテルを残し心房中隔穿刺針を抜き取った。心房中隔穿刺用カテーテルを通してピッグテール型ガイドワイヤーを左房47に導入後、該ガイドワイヤーを通して13Frダイレーター付シースを左房47内に挿入、ダイレーター及びピッグテール型ガイドワイヤーを13Frシースから引き抜いた。次いで、8Frシース付電極カテーテルを13Frシース内を通し左上肺静脈49まで挿入し、該電極カテーテルで左上肺静脈49内の電位測定と、マッピングを行う。マッピング後電位変化がないことを確認したら、電極カテーテルのみを体外に取り出し、0.025インチガイドワイヤーを左房47内にそして肺静脈内へ進め肺静脈内で留置した。8Frシースを引き抜き、予めバルーン1内のエアー抜きをしていたカテーテル内筒シャフト3内に外径1.0mm(内径0.7mm)で、先端側より60mmから角度35度に湾曲されたステンレス製芯材11を挿入し、吸上げ針13にロック固定した。吸上げ針13にロック取付られた芯材11をカテーテル先端側に向けて押し込みながら、吸上げ針13をWコネクター14にねじ込みロックした。芯材11によりバルーンは48mmまで伸長された後、0.025インチガイドワイヤーを介してカテーテルをシースに沿って左房47まで押し進めた。芯材11の効果でバルーンの伸長度が向上、カテーテル2のプッシャビリティが向上し13Frシース内も無抵抗で通過し、心房中隔41の穴も従来品(ガイドワイヤー単独でアブレーションする方法)に対し3Frも小さい13Frで対応でき、芯材11の効果は十分にあることが確認できた。
【0079】
シースを出たバルーン1はX線透視撮影により金属パイプ5,6の像を目安に芯材11手元部ハブ操作をすることでバルーン先端は容易に左上肺静脈口へ正確に位置あわせを行った。
【0080】
目的の左上肺静脈口にバルーン1が到達したことを確認したら、Wコネクターキャップ14にロックしていた吸上げ針13のロックを外し吸上げ針13を引き戻した。次いで三方活栓17より造影剤を注入しバルーン1を膨らませながらX線透視撮影を行い、バルーン1が肺静脈口20に接触するようにカテーテル2を肺静脈口に押しつけた。従来品はこの操作時に強く押しつけるとバルーン1がバルーン手元部で折れ曲がり肺静脈口から外れることが多々見受けられたが、実施例2の芯材11をバルーン固定保持機能として用いたことによって、内筒シャフト3が金属と同じ働きをし一回の操作でバルーン1を肺静脈口へ密着させることが出来た。0.025インチガイドワイヤーを抜去後、芯材11手元部よりカテーテル先端に造影剤を流し、バルーン1によって肺静脈口20とバルーン1が完全に密着し、肺静脈血が左房47へ漏れていないことをX線透視下で確認した。
【0081】
肺静脈血の漏れがないことを確認した後、Yコネクター16からでている電極リード線8a端子と温度センサーリード線9a端子及び患者の背中に張り付けられている対極板を高周波発生装置30に接続した。高周波発生装置30を作動させ、出力50Wからスタートし40秒で設定温度67℃到達、出力40〜80Wで温度制御開始、67℃到達後3分間焼灼(アブレーション)を行い通電を停止した。
【0082】
バルーン1内の造影剤を抜き出しカテーテル2を体外に抜去し、8Frシース付電極カテーテルを焼灼した肺静脈内へ挿入、該電極カテーテルでaf(心房細動)電位を測定した。電位消失が1/2であったので再度同上手法でバルーンカテーテルを左上肺静脈口20に押し進め、造影剤で25mmφまで膨らませたバルーン1と肺静脈口20を接触させて、高周波通電を67℃到達後2分30秒行い焼灼を終了した。カテーテルを抜去し、電極カテーテルにて左上肺静脈49内の電位を測定したら完全に電位が消失していたので、該カテーテルを用いて左上肺静脈焼灼同様の手法で右上肺静脈口の焼灼を行った。焼灼温度・時間も左上肺静脈49と同じ67℃/3分間行った後、電極カテーテルで電位を測定したところ電位は残っているものの完全に電位解離でaf(心房細動)の治療は成功した。今回使用した肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルは従来品と比較して、心臓内外の出し入れ操作も楽になり、高周波通電中及び通電後のカテーテル2の変形も無く、肺静脈口への密着・固定維持が容易であった。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構成によれば、バルーン付アブレーションカテーテルを用いた肺静脈の電気的隔離治療において、従来品になかった芯材を備えることによってバルーンの伸長、誘導、方向性を決める機能がついたことで、従来品より数段バルーン伸張時の直径を細くすることが可能となったため、治療時の操作性が格段に向上し、肺静脈電気的治療に起因する合併症が非常に少なくなった。また、バルーンの形状を本発明の構成とすることによって、カテーテル先端部で血管内壁表面あるいは心臓内壁表面を傷つけないようにすることができ、肺静脈から外れることなく病変部に接触可能で、すり鉢状になっている病変にも対応できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバルーン付アブレーションカテーテルの使用態様を示し、バルーンを膨張させた状態を示す断面図である。
【図2】バルーン膨張時の形状を示す図面である。
【図3】バルーン操作部分の一態様を示す図面である。
【図4】バルーン伸張時の一態様を示す図面である。
【図5】本発明の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテルの概略図
【符号の説明】
1 バルーン
1A バルーン先端部
1B バルーン後端部
1a 大径部
1b 小径部
2 二重管式カテーテルシャフト
3 内筒シャフト
4 外筒シャフト
5 金属チューブ
6 金属チューブ
7 先端チップ
8 高周波通電用電極
8a 電極リード線
9 温度センサー
9a 温度センサーリード線
10 固定保持具
11 芯材
12 Wコネクター
13 吸上げ針
14 Wコネクターキャップ
15 二方活栓
16 Yコネクター
17 三方活栓
20 肺静脈口
22 肺静脈
24 左房壁
26 接合部
30 高周波発生装置
31 対極板
41 心房中隔
42 右房
43 右室
44 下大静脈
45 心室中隔
46 左室
47 左房
48 左下肺静脈
49 左上肺静脈
50 右上肺静脈
d バルーン厚み
r1 大径部の直径
r2 小径部の直径
h バルーンの高さ
H 接着剤
T ナイロン製糸
Claims (26)
- カテーテルシャフトと該カテーテルシャフトに付設されているバルーンと肺静脈電気的隔離のためのアブレーション機構を備えるバルーンカテーテルであって、該バルーンを伸張させるための芯材を備えることを特徴とする肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該芯材が当接すべきストッパーを備えることを特徴とする請求項1に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該芯材がバルーンを肺静脈口の所定の位置に導き、固定保持させる機能を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該芯材の手元部を回転させることによって該バルーンの向きが変更出来る機構を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該芯材が先端側20mm〜150mmの間で角度15度〜70度に湾曲していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該カテーテルシャフトが、互いに軸方向に摺動可能なようにして同心的に押し通されているカテーテル外筒シャフトとカテーテル内筒シャフトからなる二重管式カテーテルシャフトであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該バルーンの先端が該カテーテル内筒シャフトの先端部に固定され、該バルーンの後端がカテーテル外筒シャフトの先端に固定され、該カテーテルシャフトの摺動によりバルーンを変形できることを特徴とする請求項6に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構が該バルーン内部にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構が電磁波、超音波、放射線、光、熱からなる群より1つ以上選ばれるエネルギーを放出する機構であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構がアブレーション時に該バルーン内部を摂氏50度以上80度以下の液体で満たしめることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構が肺静脈を冷却する機構であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構が標的組織にアブレーション用の流体を注入する機構であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構がバルーン内に配設された高周波通電用電極であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構が肺静脈組織の性質を実質的に改変する機構であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該バルーンが膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該バルーンが膨張した状態で単一の肺静脈口の所定の部位に輪状に接触可能な形状を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構に電気的に接続されるリード線具備し、該リード線の保護被覆材の比誘電率がポリ塩化ビニルより小さいことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構が温度センサーを具備することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該芯材が中空であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該芯材が該カテーテルから手元部より分離可能であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該カテーテルシャフトがポリ塩化ビニルより小さい比誘電率を有するプラスチック材料からなる請求項1〜20のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該バルーンが、ポリウレタン系高分子材料で、バルーン厚みが100μm〜300μmの範囲である請求項1〜21のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該バルーンが、膨張した状態でバルーン長さが20mm〜40mmの範囲である請求項1〜22のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該バルーンが、膨張した状態でバルーン大径部の直径とバルーン先端側の小径部の直径との比が5〜12の範囲である請求項1〜23のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該アブレーション機構に、該バルーンの温度を調節する機構を備えることを特徴とする請求項1〜24に記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
- 該カテーテルシャフトに放射線遮蔽性金属パイプが嵌着されていることを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の肺静脈電気的隔離用バルーンカテーテル。
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