JP2004180892A - アブレーション用カテーテル - Google Patents

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Motonori Takaoka
元紀 高岡
Zenji Yamazaki
善治 山崎
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Abstract

【課題】体内の所望の位置で高温部を発生させ、且つ加温効率の高いアブレーション用カテーテルを提供する。
【解決手段】体表面に配設される対極との間で高周波電力を伝送可能な体内に埋設あるいは挿入された高周波通電用電極をもつカテーテルにおいて、100MHz以上の周波数により高周波通電を行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アブレーション用カテーテルに係り、特に、心臓不整脈を治療するためにバルーンの形状を変化させバルーンを標的病変部に密着させ高周波加温を行うことにより病変を局所的に治療するアブレーション用カテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、不整脈の発生源に対して、4mm大のチップからなる金属製電極のカテーテルを接触させ、高周波通電することにより、不整脈の発生源を電気凝固する治療方法が普及している。しかしながら、この手法は、WPW症候群や発作性心室頻拍等のように発生源が局所的である場合は比較的効果があるが、心房細動や心房粗動を治療するには広範囲の点状あるいは線状の焼灼(アブレーション)を繰り返す、すなわち数十回の通電を行う必要があるがカテーテル操作が難しく、技術的に極めて難しく不成功で終わることがほとんどであった。
【0003】
従来の高周波加温用電極と温度センサーを設置したバルーンカテーテル(例えば、特許文献1および2参照)は高周波通電を行い加温させたバルーン全体で治療を行っていた。特許文献2(特許第2574119号公報)には肺静脈の血管壁を幅広く焼灼できるバルーンカテーテルの例と、右心房全体を占める大きなバルーンで4つの肺静脈口の全てを同時にバルーンに接触させて同時に焼灼できるバルーンの例が示されているが、肺静脈の血管壁を幅広く焼灼すると、肺静脈内の狭窄をきたし肺高血圧症の原因となる恐れが考えられ、また右心房全体を占める大きなバルーンを用いて焼灼するには、心臓を一時停止させ、人工心肺を用いた体外循環を行う必要がある。
【0004】
高周波ホットバルーンカテーテル(非特許文献1参照)は、肺静脈口周囲を容易に且つ短時間で輪状焼灼可能なカテーテルである。肺静脈口を輪状に焼灼できるため、金属製電極カテーテルのように焼灼を何度も行う必要が無く、特許文献1(特許第2574119号公報)に記載のカテーテルのように、肺静脈を幅広く焼灼しないために、再狭窄をきたすおそれもなく、肺静脈口を一つだけ焼灼するために心臓を停止させる必要がない。
【0005】
このような焼灼術には、患者体表面に密着した状態で配設した対極板と体内の標的病変部近傍に配置した高周波通電用電極との間にこれまで電波法にて医療用途に使用が認められている周波数のうち短波領域に属する13.56MHzの周波数がもっぱら用いられている。この周波数は、体内に挿入した金属製電極カテーテルのチップに効率よく通電させることが可能であるため、深部での加温が可能である。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−68073号公報
【0007】
【特許文献2】
特許第2574119号公報
【0008】
【非特許文献1】
カズシ・タナカら、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー」,2001年,38(7),p2079−2086
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような13.56MHzの周波数を使用した誘電加温方法によるアブレーションカテーテルでは、その周波数において高い抵抗的性質を示す脂肪層等で発熱し易いという性質があり、体内の所望の位置以外に高温部が生じるという問題点があった。また、直進性が低いため指向性が低くなり、加温効率が低下し、昇温に時間がかかるという性質があった。
【0010】
本発明の目的は体内の所望の位置で高温部を発生させ、且つ加温効率の高いアブレーション用カテーテルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
対極との間で高周波電力を伝送可能な高周波通電用電極をもつカテーテルであって、100MHz以上の周波数による高周波通電手段を有することを特徴とするアブレーション用カテーテル。
【0013】
また、カテーテル先端に、膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーンが付設され、該バルーン内に高周波通電用電極が配設されていることを特徴とするアブレーション用カテーテル。
【0014】
また、バルーン内または高周波通電用電極に、バルーン内の温度をモニターできる温度センサーが配設されていることを特徴とするアブレーション用カテーテル。
【0015】
また、バルーンより先端部に配設されたチューブに1個または複数の側孔が有り、該側孔より造影剤を吐出することを特徴とするアブレーション用カテーテル。
【0016】
また、バルーン両端に放射線遮蔽性金属を具備することを特徴とするアブレーション用カテーテル。
【0017】
上述の発明において、100MHz以上の周波数を有する高周波は、高周波通電用電極への指向性が高くなるため、効率よく、短時間でバルーン内を加温でき、また、所望の位置以外での高温部の発生を低減することが可能になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明による好ましい実施の形態を図によって説明する。
【0019】
図1に示すように、アブレーション用カテーテル17は互いに軸方向にスライド可能なカテーテル外筒シャフト11とカテーテル内筒シャフト4とからなる二重管式カテーテルシャフトであることが好ましい。前記カテーテル外筒シャフト11の外径は3〜5mmが好ましく、内径は2〜4mmが好ましい。また前記カテーテル内筒シャフト4の外径は1〜3mmが好ましく、内径は0.5〜2mmが好ましい。前記二重管式カテーテルシャフトは経皮的に血管に挿入され心房あるいは心室内に誘導できるように十分柔軟であり、抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定はされないが、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが好ましく用いられる。
【0020】
膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーン1は、直径の最も大きい大径部18からバルーン先端にかけて直径が徐々に小さくなる直円錐体状あるいは円筒状になるような形状が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。前記バルーン1のバルーン全長部31の長さについては心房および心室内での操作性を考慮すると、20〜40mmであることが好ましく、外径については10〜40mmであることが好ましい。前記バルーン1の厚みは、血管内での誘導および肺静脈での膨張および焼灼を容易に行うことができ、更に膨張時の形状が一定のものとなるものであれば特に限定はしないが、バルーン1の形状保持性や耐圧性を得るためには100μm以上が好ましく、バルーン1の伸縮性を十分なものとするためには300μm以下が好ましい。前記バルーン1の材質はポリウレタン系の高分子材料が用いられるが、平滑な表面を有する抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されない。
【0021】
前記バルーン1は前記カテーテル外筒シャフト11の先端部にバルーン1の後端が固定され、前記カテーテル内筒シャフト4の先端部にバルーン1の先端が固定され、前記カテーテル外筒シャフト11と前記カテーテル内筒シャフト4を摺動させることによって、収縮膨張可能となっていることが好ましい。また、前記カテーテル外筒シャフト11およびカテーテル内筒シャフト4の先端部分には放射線遮蔽性金属パイプ8および3が嵌合されていることが好ましく、バルーン1の各端がそれぞれ前記金属パイプ8および3上に取り付けられていることが好ましく、前記金属パイプ8および3を具備することによりX線による透視撮影画像上にバルーン1の両端に対応する金属パイプ8および3を明瞭に映し出すことができる。すなわち、バルーンの両端に放射線遮蔽性金属を具備することが好ましく、このような態様とすることにより、バルーンの位置をより正確に把握することができるという効果を有する。ここでいう放射線遮蔽性金属とは、各種の電離放射線の透過性が低い金属であればよく、具体的には金、プラチナ、ステンレス、Ti−Ni合金などがあるが、これに限定されるものではない。
【0022】
前記内筒シャフト4の先端部に嵌合された放射線遮蔽性金属パイプ3の先端には血管および心臓内壁の損傷を防止するため柔軟な先端チューブ2が取り付けられている。その材質はポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましく用いられるが、抗血栓性の高い材質のものであれば特に限定されない。前記先端チューブ2の長さは10cm以下であることが好ましく、3cm以下であることが特に好ましい。また、先端チューブ2の外径は外筒シャフトよりも細いことが好ましく、1〜3mmが特に好ましい。また、前記先端チューブ2の放射線遮蔽性金属パイプ3取り付け部付近には1個または複数の側孔19を設けることで、前記バルーン1先端部近傍で造影剤が噴出され、肺静脈口等への密着性を確認することができる。
【0023】
体表面に配設される対極(図示せず)は、体表面に密着できるように銅あるいはアルミニウム等の金属をフィルム状にしたものが用いられるが、高周波電力を伝送可能な材質のものであれば特に限定されない。前記対極との間で高周波電力を伝送可能な前記バルーン1内に配設された高周波通電用電極7には銅線等が用いられるが、高周波を通電させたときに発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材質で構成されたものであれば特に限定されない。高周波通電用電極7は、操作時にバルーン1を損傷しないように内筒シャフト4に固定されていることが好ましく、この内筒シャフト4がその中をスライド可能なように巻き付けられていることがより好ましい。前記高周波通電用電極7に電気的に接続されるリード線7aには銅線等が用いられるが、前記高周波通電用電極7に高周波を送達させる目的で用いられうるものであれば特に限定されず、高周波を通電させたときに発熱せず、エネルギーの損失を伴わない材質で構成されたものが好ましい。また、前記リード線7aは保護皮膜で被覆され、前記保護皮膜は高周波通電時の発熱を抑制するため比誘電率が低く、絶縁性の高いものが好ましい。前記保護被膜にはフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
前記バルーン1内の温度をモニター可能な温度センサー6は操作時に前記バルーン1を損傷しないように、そして前記バルーン1内の温度測定部位を特定できるようにバルーン内もしくは前記高周波通電用電極7に固定されていることが好ましい。また、前記温度センサー6には熱電対等が用いられ、前記温度センサー6からの測定データをモニターしながら前記バルーン1の温度が所定温度になるように、高周波発生器21から高周波電力が供給される。前記温度センサー6に接続するリード線6aは、前記バルーン1内の温度をモニターするための信号を前記バルーン1外に送達するために用いられうる導体であれば特に限定されないが、白金、タングステン、銅、合金、クロメルのようなものが好ましい。また、前記温度センサー6に接続するリード線6aは、外筒シャフト11内の高周波通電用電極7に接続するリード線7aとの接触を防ぐ等のためにも保護被覆材で被覆されていることが好ましい。前記保護皮膜は高周波通電時の発熱を抑制するため比誘電率が低く、絶縁性の高いものが良く、例えばフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
図1に示すように、前記高周波通電用電極7に電気的に接続されたリード線7aは前記外筒シャフト11と前記内筒シャフト4のクリアランス26を通り高周波発生器21に接続されている。体表面に配設される対極はリード線22を介して前記高周波発生器21に接続されている。この高周波発生器21により高周波通電用電極7と対極との間に1〜50Wの高周波電力が供給されるが、その周波数は100MHz以上である必要があり、915MHz〜2450MHzであることがより好ましく、915MHzあるいは2450MHzであることが特に好ましい。この結果、前記バルーン1と接触する部分、例えば肺静脈口付近が加熱され、焼灼されることで、該部分での電気的信号が遮断され、電気的に隔離することができる。前記温度センサー6に接続されたリード線6aは、前記外筒シャフト11と前記内筒シャフト4のクリアランス26を通り高周波発生器21に接続されており、温度センサー6からの測定データをモニターしながら、前記バルーン1の温度が60℃〜70℃になるように、前記高周波発生器21から供給される高周波電力を調整することができる。これにより、前記バルーン1内温度は60℃〜70℃に常に維持され、組織の炭化蒸散や血栓形成を防ぐことができる。
【0026】
バルーン内を高周波によって加熱する際には、バルーン内および外筒シャフトと内筒シャフトの間を造影剤等の液体によって充填することが行われる。前記外筒シャフト11と前記内筒シャフト4のクリアランス26を通過し、そのクリアランス26と前記バルーン1内に充填された造影剤等の液体は、ローラーポンプの吸引側チューブを封止し吐出側だけを解放することで液体が振動することを応用した振動装置(図示せず)に接続され、一定の周期で加圧と減圧を繰り返すことで高周波電力の供給中は常に振動されている。これにより、前記バルーン内の造影剤等の液体はバルーン内では均一に加温されることができるが、循環していないため焼灼の必要のないシャフト部分では加温されない状態となる。また前記高周波発生器21は高周波通電用電極7と対極との間のインピーダンスをモニターする機能を有し、高周波通電用電極7と対極との間のインピーダンスが所定範囲にあるように高周波電力の印加時間が制御される。これによって、焼灼される領域範囲を制御することができる。また、このインピーダンスが急上昇したときには、高周波電力の供給が瞬時に停止するように前記高周波発生器21は安全装置を備えている。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
<アブレーション用カテーテルの作製>
バルーンの大径部が30mm、バルーン長さが30mmのガラス製バルーン成形型を濃度13%の調製されたポリウレタン溶液に浸漬し、熱をかけて溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド)を蒸発させて、成形型表面にウレタンポリマー皮膜を形成するディッピング法によりバルーン1を製造した。得られたバルーン1は大径部18が30mm、長さが30mmであり成形通りの寸法であった。また、ウレタンポリマーの皮膜は160μmのほぼ均一な厚みの膜であった。なお、ポリウレタン溶液中のポリウレタンは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15%、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)70%、エチレンジアミン(HNCHCHNH)15%という配合のものを用いた。
【0029】
一方、内筒シャフト4として4.5Fr(フレンチ)、全長900mmのナイロン11製チューブを用い、直径1.2mm、長さ6mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有する放射線遮蔽性金属パイプ3としてのステンレスパイプを先端に内挿嵌合後、0.1mmのナイロン製の糸24で縛り固定すると共に、後端に16G(ゲージ)、長さ90mmのステンレスパイプ(吸上げ針)4aを内挿嵌合し、0.lmmのナイロン製の糸で縛り固定した。
【0030】
他方、外筒シャフト11として、12Fr、800mmの硫酸バリウム30%含有のポリ塩化ビニル製チューブを用い、直径2.8mm、長さ7mmでサンドブラスト仕上げの外表面を有する放射線遮蔽性金属パイプ8としてのステンレスパイプを先端に内挿嵌合後、0.1mmのナイロン製の糸25で縛り固定すると共に、後端に四方コネクター13を内挿嵌合し、0.1mmのナイロン製の糸で縛り固定した。該四方コネクター13は4カ所の接続口を有するコネクターで、そのうち3方から挿入又は注入されたリード線及び造影剤等を残りの1方に集約することができるものである。
【0031】
そして、前記内筒シャフト4を四方コネクター13を介して挿入してから四方コネクターキャップ14を締め付けることにより二重管式カテーテルシャフトを得た。
【0032】
また、前記高周波通電用電極7として銀メッキを0.1μm施した直径0.5mm電気用軟銅線を内径1.6mm、長さ10mmのコイル状にし、前記内筒シャフト先端部の前記バルーン内に配設した。この高周波通電用電極7に電気的に接続したリード線7aを接続し、長さ1000mmに渡って4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)を被覆した。
【0033】
更に、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)で被覆された極細熱電対ダブル(銅−コンスタンタン)線を温度センサー6としてコイル状の高周波通電用電極7に固定した後、内筒シャフト4先端をコイルの中心に挿通した。高周波通電用電極7のリード線7aと温度センサー6のリード線6aの先端部を四方コネクター13より引っ張り出したあと、前記2本のリード線はアラミド繊維で作られた固定具9で金属パイプ8に接合することで、高周波通電用電極7と温度センサー6の位置を決定し、更に四方コネクター13にY型コネクター16を取り付け、前記2本のリード線をY型コネクター16に挿通した。
【0034】
次にバルーン1の先端部と先端チューブ2を内筒シャフト4の放射線遮蔽性金属パイプ3に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸24で縛り固定するとともに、バルーン1の後端部を外筒シャフト11の放射線遮蔽性金属パイプ8の先端に被せて太さ0.1mmのナイロン製の糸25で縛り固定した後、エポキシ樹脂10系の接着剤で滑らかに仕上げて、アブレーション用カテーテル17を作製した。
【0035】
図2に示したように、本実施例のアブレーション用カテーテル17における機能を以下のようにして確認した。二重管式カテーテルシャフトの手元側に接続された四方コネクター13に取り付けられた二方活栓15を介して、外筒シャフト11と内筒シャフト4の間を通して造影剤(イオキサグル酸注射液:商品名ヘキサブリックス320)をバルーン1内に注入し、バルーン大径部18を30mmに膨張させ、Y型コネクター16から耐圧チューブ30を介して液体の振動装置23に接続した。高周波発生器21にY型コネクター16から出ている高周波通電用電極7のリード線7aと温度センサー6のリード線6aを接続した。
【0036】
<擬似生体の作製>
前記アブレーション用カテーテル17が浸漬できるように、十分大きな水槽27に生理食塩水を満たし、撹拌機能付きのヒーターにて37℃に保持した。
【0037】
擬似生体28は、「高分子ゲルファントムによる加温領域の三次元的観察法−ジェランガムおよびポリアクリルアミドによるファントム」(保科紳一郎、宮川道夫、日本ハイパーサーミア誌9〔1〕:31−39(平成5年))に従って、ポリアクリルアミドゲルにて作成し、曇点は約42℃に設定した。前記擬似生体28は透明な半径30mm、長さ90mmの円筒状の容器内に作成した。ゲル化中は発熱し白濁するため、3時間以上室温(約25℃)にて十分放冷し、透明なポリアクリルアミドゲルの擬似生体28とした。この円筒状ゲルの端面部中心部に直径30mm、深さ30mmの膨張状態のバルーン1と同形状の直円錐体状の穴をあけた。更に前記直円錐体状の穴と同軸状で、その先端から40mm離れた部分に直径約10mmの豚から採取した球状脂肪29を埋設した。このようにして作成した擬似生体28を前記37℃に保持した水槽27内に穴が横向きになるように浸漬し、10分以上放置して均一な温度分布とした。37℃では擬似生体28は無色透明である。
【0038】
前記膨張したバルーン1を前記擬似生体28の直円錐体状の穴に密着するように挿入した。対極20はその中心がバルーン1内の高周波通電用電極7の位置に一致するように、前記水槽27の外壁面に設置し、前記対極20と電気的に接続したリード線22は前記高周波発生器21に接続した。
【0039】
(実施例1)
高周波発生器21の周波数を915MHzに設定した。バルーン1内の設定温度を70℃にし、20Wで3分間高周波を通電した。25秒でバルーン1接触部周辺の擬似生体28が白濁し始め、時間の経過と共にその白濁が徐々に拡大した。その後、40秒で70℃に到達し温度制御が始まった。3分間の高周波通電終了後、バルーン1周辺部の擬似生体28は十分に白濁していたが、球状脂肪29周辺部では白濁が無かった。この事は球状脂肪29部では発熱が無かったことを示している。
【0040】
(比較例1)
高周波発生器21の周波数を13.56MHzに設定した。バルーン1内の設定温度を70℃にし、150Wで3分間高周波を通電した。45秒でバルーン1接触部周辺の擬似生体28が白濁し始め、時間の経過と共にその白濁が徐々に拡大した。その後、60秒で70℃に到達し温度制御が始まった。80秒後に球状脂肪29周辺の擬似生体28が白濁し始め、時間の経過と共にその白濁が徐々に拡大した。3分間の高周波通電終了後、バルーン1周辺部の擬似生体28は十分に白濁し、球状脂肪29周辺部も白濁した。この事は球状脂肪29部が発熱したことを示している。
【0041】
【発明の効果】
本請求項1に係る発明により、従来の13.56MHzよりもより指向性の高い100MHz以上の高周波を通電することで、脂肪層のような高い抵抗的性質を示す部位での発熱を抑制すると同時に、体内の所望の位置で高温部を発生させ、且つ加温効率の高いアブレーション用カテーテルが得られる。
【0042】
本請求項2に係る発明によれば、カテーテル先端に、膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーンが付設され、該バルーン内に高周波通電用電極が配設されていることにより、選択的に1つの肺静脈口を輪状に焼灼できる。
【0043】
また、本請求項3に係る発明によれば、高周波通電用電極がバルーン内に配設され、高周波通電用電極に温度センサーが配設され、温度センサーをモニターしながらバルーンの温度が所定温度になるように高周波電力が供給されたことにより、バルーンが接触した擬似生体部分が一定温度に制御され、安全にかつ均一に焼灼できる。
【0044】
本請求項4に係る発明によれば、バルーンより先端部に配設されたチューブに1個又は複数の側孔が有り、該側孔より造影剤を吐出することにより、バルーンの肺静脈口への密着性を確認できる。
【0045】
さらに、本請求項5に係る発明によれば、バルーンの位置をより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアブレーション用カテーテルのバルーンを膨張させた状態の断面図と使用態様の1例を示す図である。
【図2】本発明のアブレーション用カテーテルの1例の全体を示す図である。
【図3】本発明による実施例の実験状態を示す図である。
【符号の説明】
1:バルーン
2:先端チューブ
3:放射線遮蔽性金属パイプ(内筒シャフト側)
4:内筒シャフト
4a:ステンレスパイプ
5:硬質芯材
6:温度センサー
6a:温度センサーリード線
7:高周波通電用電極
7a:高周波通電用電極リード線
8:放射線遮蔽性金属パイプ(外筒シャフト側)
9:固定具
10:エポキシ樹脂
11:外筒シャフト
12:ベントチューブ
13:四方コネクター
14:四方コネクターキャップ
15:二方活栓
16:Y型コネクター
17:アブレーション用カテーテル
18:バルーン大径部
19:側孔
20:対極
21:高周波発生器
22:対極リード線
23:振動装置
24:ナイロン製糸(内筒シャフト側)
25:ナイロン製糸(外筒シャフト側)
26:クリアランス
27:水槽
28:擬似生体
29:球状脂肪
30:耐圧チューブ
31:バルーン全長部

Claims (5)

  1. 対極との間で高周波電力を伝送可能な高周波通電用電極をもつカテーテルであって、100MHz以上の周波数による高周波通電手段を有することを特徴とするアブレーション用カテーテル。
  2. カテーテル先端に、膨張した状態で標的病変部に接触可能な形状を有するバルーンが付設され、該バルーン内に高周波通電用電極が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のアブレーション用カテーテル。
  3. バルーン内または高周波通電用電極に、バルーン内の温度をモニターできる温度センサーが配設されていることを特徴とする請求項2に記載のアブレーション用カテーテル。
  4. バルーンより先端部に配設されたチューブに1個または複数の側孔が有り、該側孔より造影剤を吐出することを特徴とする請求項2または3に記載のアブレーション用カテーテル。
  5. バルーン両端に放射線遮蔽性金属を具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアブレーション用カテーテル。
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