JP2004303838A - 有機絶縁膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温硬化可能でかつ低比誘電率、低吸水率、高耐熱、低リーク電流ならびに高機械的強度を有する有機絶縁膜の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体を溶解したコーティングワニスを、塗布して、塗膜を形成し、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、前記反応性オリゴマーからなる部位を分解させることを特徴とする有機絶縁膜の製造方法。
【化1】
[式中、Xは少なくとも1種の4価の基を、Yは少なくとも1種の2価の基を示す。R1、R2は水素原子または1価の有機基を示し、mは1以上1000以下の整数である。]
【解決手段】一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体を溶解したコーティングワニスを、塗布して、塗膜を形成し、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、前記反応性オリゴマーからなる部位を分解させることを特徴とする有機絶縁膜の製造方法。
【化1】
[式中、Xは少なくとも1種の4価の基を、Yは少なくとも1種の2価の基を示す。R1、R2は水素原子または1価の有機基を示し、mは1以上1000以下の整数である。]
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機絶縁膜の製造方法に関するものである。更に詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として、誘電率特性、機械的特性、電気特性などに優れ、かつ空隙サイズが小さく、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)耐性が良好な有機絶縁膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体用の層間絶縁膜用材料としては、化学気相成長法などで形成した2酸化シリコンを用いた、無機絶縁膜材料が主に使用されているが、比誘電率が高く、また高い平坦性を必要とする多層配線構造の層間絶縁膜としての性能は、充分であるとは言えなかった。
【0003】
一方、有機絶縁膜は高い平坦性を有し、比誘電率も低い。この有機絶縁膜用材料としては、耐熱性、電気特性、機械特性などに優れたポリイミド樹脂が挙げられ、ソルダーレジスト、カバーレイ、液晶配向膜などに用いられている。しかしながら、一般に有機絶縁膜は化学気相成長法などではなく、溶液塗布されて皮膜形成されるため、密着性に劣ることが指摘されている。塗布後の硬化時に剥離を生じる場合や、その後の加熱工程を有する多層配線工程中にも、剥離が生じることが多い。更に、多層配線工程後は各層形成毎に重なる熱処理を受けて、下層部分程剥離が著しくなってしまう場合が多い。種々のプライマー処理により、密着性を向上させる検討が行われているが、比誘電率の上昇を招くなどの短所が発生している。
【0004】
比誘電率を低下させる手法として空気の比誘電率は1であることを利用して、膜中に微細孔を空けることにより、膜中に空気を導入して、比誘電率を低減させる方法が検討されており、サブマイクロメーターオーダーの微細孔を得る技術については、ブロックコポリマーを加熱処理して、サブマイクロメーターオーダーの微細孔を有する樹脂を生成させる技術が開示されている(米国特許第5,776,990号)。ブロックコポリマーがサブマイクロメーターオーダーで相分離することは、公知のことであり[T.Hashimoto,M.Shibayama,M.Fujimura and H.Kawai,”Microphase Separation and the Polymer−Polymer Interphase in Block Polymers” in ”Block Copolymers−Science and Technology”,p.63,Ed.by D.J.Meier(Academic Pub.,1983)]、天井温度の低いポリマー類が容易に分解することも、高分子化学の分野では、一般に良く知られていることである。しかしながら、単純に微細孔を空けただけでは、特に多層構造の半導体用層間絶縁膜として用いた場合は、各層形成毎に重なる熱処理を受けて、下層部分程微細孔が消失して、比誘電率が上昇してしまうことが多く、満足できるものは得られていない。また、このようにして得られた層間絶縁膜は機械的強度が低いことが問題として取り上げられており、低誘電率化と機械的強度の両立は困難を極めている。
【0005】
機械的強度を向上するための技術としては、さまざまな報告がなされているが、電子線を照射して、熱処理とは異なるネットワークを層間絶縁膜中に形成させることにより、機械的強度を向上させるという報告がなされている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このようにネットワークを再構築するだけでは機械的強度は向上されても低誘電率化は困難である。
【0006】
一方、多層配線工程において、配線の微細化および多層化に伴い、絶縁膜中に配線用の溝を形成後、導電膜を溝内部に埋め込むことにより配線を形成する、いわゆるダマシン技術が検討されている。上記導電膜には銅が用いられるが、銅は、アルミニウムやタングステン等の金属と比較して、絶縁膜中を拡散しやすいという性質を有する。多層配線工程おける熱処理は銅配線の拡散を促進しボイド発生の原因となり、配線の断裂、歩留まりの低下をまねくため、層間絶縁膜の焼成温度はなるべく低くすることが求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−359239号公報(第4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、低温硬化可能でかつ低比誘電率ならび、低リーク電流、高耐熱性、低吸水率、高機械的強度を有する有機絶縁膜の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
1. 一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体を溶解したコーティングワニスを、塗布して、塗膜を形成し、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、前記反応性オリゴマーからなる部位を分解させることを特徴とする有機絶縁膜の製造方法、
【化2】
[式中、Xは少なくとも1種の4価の基を、Yは少なくとも1種の2価の基を示す。R1、R2は水素原子または1価の有機基を示し、mは1以上1000以下の整数である。]
2. 反応性オリゴマーが、ポリオキシアルキレン、ポリメチルメタクリレート、ポリα−メチルスチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボナートまたはポリウレタンである第1項または第2項に記載の製造方法の形成方法、
3. 反応性オリゴマーが、ポリオキシアルキレンである第2項記載の有機絶縁膜の製造方法、
4. 電子線の照射が、400Torr以下、室温以上で行われる第1項〜第3項のいずれかに記載の有機絶縁膜の製造方法、
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
【0011】
本発明に用いる一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体は、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、該共重合体中のオリゴマーユニットを分解させて揮散させることにより、堅固な樹脂膜中に微細孔を形成させて、高耐熱性と低収縮及び低比誘電率を両立された多孔質絶縁膜を得ることが出来る。
【0012】
本発明に用いる前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、式(2)で表される化合物の少なくとも1種と、式(3)で表される化合物の少なくとも1種とを用いて、従来の酸クロリド法、活性化エステル法、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応等の方法により得ることが出来る。一般式(1)におけるmは1以上1000以下の整数であり、好ましくは5以上100以下である。ここでmは1であっても、成膜は可能であるが、5未満であると成膜性が低下する傾向がある。また、1000を越えると分子量が大きくなりすぎて、溶剤に溶けにくくなったり、溶解しても粘調なワニスとなり、実用的でなくなる恐れがあり、100以下が好適である。
【0013】
【化3】
[式中、Xは少なくとも1種の4価の基を、R1およびR2は水素原子または1価の有機基を示す。]
【0014】
【化4】
[式中、Yは少なくとも1種の2価の基を示す。]
【0015】
本発明で用いる、式(2)で表される化合物としては、2,4−ジアミノレゾルシノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、9,9−ビス(4−((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル)フルオレン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシフェニルエーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、9,9−ビス(4−((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェノキシ)−3−フェニル−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェノキシ)−3−フェニル−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((2−アミノ−3−ヒドロキシ−4−フェニル)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((2−ヒドロキシ−3−アミノ−4−フェニル)−フェニル)−フルオレン、及びこれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0016】
本発明で用いる、式(3)で表される化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(2−カルボキシ)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ジカルボキシシクロプロパン、2,2−ジカルボキシシクロプロパン、1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)ベンゼンの構造異性体、5−フェノキシイソフタル酸、2−フェノキシテレフタル酸、2−フェノキシテレフタル酸、5−フェニルイソフタル酸、2−フェニルテレフタル酸、更にはこれらの置換体である、5−エチニルイソフタル酸、5−フェニルエチニルイソフタル酸、3−ヘキシニルフタル酸、4−へキシニルフタル酸、2−へキシニルイソフタル酸、4−へキシニルイソフタル酸、5−へキシニルイソフタル酸、2−へキシニルテレフタル酸、3−へキシニルテレフタル酸、2−へキシニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸、3−へキシニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸、4−へキシニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸、1−へキシニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−へキシニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、4−へキシニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、3−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、4−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、5−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、7−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、8−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、3,3’−ジへキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジへキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、5,5’−ジヘキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、6,6’−ジへキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、5,5’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、6,6’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジへキシニル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジへキシニル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(2−カルボキシ−3−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−4−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−5−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−6−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−2−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−4−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−5−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−6−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−2−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−3−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−4−へキシニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−5−へキシニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−2−へキシニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−へキシニル−1,3−ジカルボキシシクロプロパン、5−ヘキシニル−2,2−ジカルボキシシクロプロパン、1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)−5−ヘキシニル−ベンゼンの構造異性体、1,3−ビス(4−カルボキシ−フェニル)−5−ヘキシニル−ベンゼンの構造異性体、5−(3−ヘキシニル−フェノキシ)−イソフタル酸、5−(1−ヘキシニル−フェノキシ)−イソフタル酸、5−(2−ヘキシニル−フェノキシ)イソフタル酸、2−(1−ヘキシニル−フェノキシ)テレフタル酸、2−(2−ヘキシニル−フェノキシ)テレフタル酸、2−(3−ヘキシニル−フェノキシ)テレフタル酸、5−(1−ヘキシニル−フェニル)−イソフタル酸、5−(2−ヘキシニル−フェニル)−イソフタル酸、5−(3−ヘキシニル−フェニル)−イソフタル酸、2−(1−ヘキシニル−フェニル)−テレフタル酸、2−(2−ヘキシニル−フェニル)−テレフタル酸、2−(3−ヘキシニル−フェニル)−テレフタル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体におけるオリゴマーユニットは、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物と反応可能な官能基を有する反応性オリゴマーを、予め、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物と反応させておくことで、あるいは式(1)で表される構造を有する化合物と反応させることにより導入される。例えば、該反応性オリゴマーは、その構造中に、カルボキシル基、アミノ基又はヒドロキシル基の官能基を有し、式(1)で表される構造を有する化合物、(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物のカルボキシル基、アミノ基、又はヒドロキシル基と反応して導入される。そして、該オリゴマーユニットは、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び該化合物を閉環して得られる樹脂のよりも分解されやすく、かつ分解物が気化するオリゴマーユニットでなければならない。
【0018】
本発明の用いる反応性オリゴマーとしては、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシメチレン−オキシエチレン共重合体、ポリオキシメチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリテトラヒドロフラン等のポリオキシアルキレンや、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリα−メチルスチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボナート、ポリカプロラクトン等の主骨格を有するオリゴマーが好適に挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応する官能基を有する反応性オリゴマーとしては、側鎖もしくは主鎖の片末端または両末端に、官能基を導入したものを用いることができる。工業的に入手が容易であるのは、主鎖の末端を修飾した反応性オリゴマーである。より具体的には、4−アミノ安息香酸エステル化末端スチレンオリゴマー、4−アミノ安息香酸エステル化末端ポリ(プロピレングリコール)オリゴマー、両ヒドロキシ末端ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)などが挙げられる。
【0020】
前記反応性オリゴマーとしては、数平均分子量が100〜40,000の範囲のものが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が100〜20,000であり、更に好ましくは、100〜10,000の範囲のものである。分子量が100未満であると、分解・気化した後の空隙が小さく潰れやすいため、比誘電率の低減効果が得られにくい。また、分子量が40,000を越えると、空隙が大きくなりすぎて絶縁膜の機械特性が極端に低下し、実用に供すことができなくなるといった問題が発生する恐れがある。
【0021】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物中の前記反応性オリゴマーユニットの導入量は、5〜70重量%が好ましい。より好ましくは5〜50重量%であり、さらに好ましくは5〜40重量%である。この導入量が、5重量%未満であると絶縁膜中の空隙率が小さく、比誘電率を低減させることが不十分であり、また、70重量%を越えると膜中の空隙率が大きくなり、膜の機械強度が極端に低下したり、空隙が連続し不均一となり、比誘電率が場所により異なる等の問題が発生することがある。従って、反応性オリゴマーユニットの導入量が上記範囲になるように、調整することが好ましい。
【0022】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物の製造方法の例としては、従来の酸クロリド法、活性化エステル法、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応などの方法を用いることができる。例えば、酸クロリド法ではまず、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒存在下で、式(3)で表される化合物と、過剰量の塩化チオニルとを、室温ないし130℃程度の温度で反応させ、過剰の塩化チオニルを、加熱及び減圧により留去した後、残査をヘキサン等の溶媒で再結晶することにより、式(3)で表される化合物の酸クロリドを得ることができる。
【0023】
このようにして製造した式(3)で表される化合物の酸クロリドと、前記他の式(3)で表される化合物を併用する場合は、同様にして得られる酸クロリドとを、式(2)で表される化合物と共に、通常、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒に溶解し、トリエチルアミン等の酸受容剤存在下に、室温ないし−30℃程度の温度で反応させて、一般式(1)で表される構造を有する化合物を合成することができる。
本発明に用いる共重合体は、上記で得られた一般式(1)で表される構造を有する化合物の反応液に、予め、反応性オリゴマーをγ−ブチロラクトンなどに溶解したものを加えて反応させ、次いで、反応液を、水とイソプロピルアルコールの混合溶液などに加え、沈殿物を集め、乾燥することにより、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させた共重合体を得ることができる。また、極性溶媒中、式(3)で表される化合物の酸クロリド、式(2)で表される化合物、反応性オリゴマーを同時に反応させて、ランダムに共重合体を合成することも可能である。
【0024】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとの共重合体を得る場合、式(3)で表される化合物の酸クロリドと式(2)で表される化合物の仕込みモル比は、得られる重合物の分子量に大きく影響し、また重合物の末端基構造を制御するのに重要である。すなわち、反応性オリゴマーと共重合反応させるには、重合物の末端をオリゴマーの反応性基と反応し得るようにしなければならない。即ち、式(3)で表される化合物の酸クロリド/式(2)で表される化合物のモル比を、1未満とすると、得られる一般式(1)で表される構造を有する化合物の末端は、アミノ基とヒドロキシル基を有し、カルボキシル基を有する反応性オリゴマーとの共重合が可能となる。また、式(3)で表される化合物の酸クロリド/式(2)で表される化合物のモル比を、1より大きくすると、得られる重合体の末端はカルボキシル基を有し、アミノ基またはヒドロキシル基を有する反応性オリゴマーとの共重合が可能となる。この場合、反応性オリゴマーの末端反応基は、求核性の強いアミノ基の方が、より好ましい。
【0025】
この際、反応性オリゴマーの末端水酸基をアミノ基に変換する例としては、水酸基末端反応性オリゴマーと4−ニトロ安息香酸クロリドを、通常、テトラヒドロフランなどの溶媒中において、ピリジン等の酸受容剤存在下で、室温ないし−30℃程度の温度で反応させることにより、4−ニトロ安息香酸エステル末端オリゴマーを得ることができる。その後、この末端オリゴマーをテトラヒドロフランなどの溶媒に溶解し、パラジウム炭素などの還元触媒存在下、水素ガス雰囲気下で反応させ、その反応液から触媒を取り除いた後、溶媒を濃縮して除去することにより、4−アミノ安息香酸エステル末端の反応性オリゴマーを得て、これをアミノ基末端反応性オリゴマーとして使用することができる。また、一般式(1)で表される構造を有する化合物の主鎖構造中の水酸基に、カルボキシル基やイソシアネート基を有する反応性オリゴマーと反応させてグラフト共重合体を合成し用いることも可能であるが、水酸基と反応する反応性オリゴマーであれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明に用いるコーティングワニスは、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとの共重合体を、適当な有機溶媒に溶解させるか又は均一に分散させて得られる。
【0027】
本発明に用いる前記共重合体を溶解又は分散させる有機溶媒としては、固形分を完全に溶解することの出来る溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
ワニスを調製する場合の溶媒使用量としては、前記共重合体を完全に溶解し得る量であればよく、特に制限されず、その用途に応じて適宜調整することができるが、一般的にはワニス中の溶媒含有量は、70〜95重量%程度が好ましい。
【0029】
本発明に用いる共重合体のコーティングワニスには、目的に応じて各種添加剤を含有させることができる。各種添加剤としては、界面活性剤、シラン系に代表されるカップリング剤、酸素ラジカルやイオウラジカルを加熱により発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類などの触媒等が挙げられる。
【0030】
また、本発明における一般式(1)で表される構造を有する化合物は、式(1)におけるR1及びR2が、水素原子である場合は、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物と一緒に用いることで、ポジ型の感光性樹脂材料として、また、R1及びR2が、メタクリロイル基のような光架橋性基を有する基である場合は、光開始剤を用いることでネガ型感光性樹脂材料として用いることが可能である。
【0031】
本発明における有機絶縁膜の製造方法としては、まず、上記で得たコーティングワニスを、適当な支持体、例えば、ガラス、繊維、金属、シリコンウエーハー、セラミック基板等に塗布して塗膜を形成する。塗布方法としては、浸漬、スクリーン印刷、スプレー、回転塗布、ロールコーティングなどの方法が挙げられる。次いで、前記塗膜を、通常、80〜200℃の範囲の温度で、溶媒を蒸発させ、乾燥する。
次いで、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、前記反応性オリゴマーからなる部位を分解し、揮散させて、ポリベンゾオキサゾールを主構造とする樹脂の層からなり、微細孔を有してなる絶縁膜を得ることができる。
【0032】
電子線の照射は、真空チャンバー内にホットプレートを備えている装置を用いるのが好ましく、ホットプレート上で熱処理を行いながら照射するのが好ましい。
この際の塗膜への電子線の照射量は、3μC/cm2以上、500μC/cm2以下が好ましい。3μC/cm2未満では絶縁膜の膜質は変化せず、500μC/cm2以上を超える照射量ではマトリクスの樹脂が分解してしまい、絶縁膜が脆くなる場合がある。
【0033】
前記加熱減圧雰囲気の条件としては、室温以上350℃以下が好ましく、10−1Torr以上400Torr以下が好ましい。温度が、室温以下では分解された反応性オリゴマーの分解物の拡散が遅く微細孔の形成に長時間要し、350℃以上ではマトリクス樹脂が分解し、絶縁膜が脆くなってしまう場合がある。圧力が、10−1Torr以下でも照射可能であるが、10−1Torrで照射は十分であり、400Torr以上では電子線が膜に到達する前に減衰してしまい、照射することができない場合がある。
【0034】
また、前記加熱処理は、酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブン或いはファーネス炉で加熱処理することが好ましく、加熱処理した後に、電子線を照射することも可能であり、電子線を照射した後に加熱処理することも可能である。
【0035】
本発明の製造方法で得られる有機絶縁膜における微細孔の大きさは、絶縁膜の用途や膜の厚みにもよるが、一般的には、1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下であり、半導体用層間絶縁膜等の用途においては、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは5nm以下であり、これらの微細孔を製造できる。
【0036】
また、本発明の製造方法で得られる有機絶縁膜の空隙率としては、その範囲に制限は無いが、得られる有機絶縁膜の特性としては、5〜70%が好ましく、より好ましくは5〜50%、さらに好ましくは5〜40%である。空隙率が5%より小さいと十分な比誘電率の低下が発現されないことがあり、70%よりも大きいと膜の機械強度が低下し、接着性に悪影響が出る等の問題が発生するおそれがある。
【0037】
本発明の製造方法に適用される有機絶縁膜の厚みとしては、その使用目的に応じて異なるが、通常0.05〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.05〜20μmの範囲である。
【0038】
本発明の製造方法により得られる有機絶縁膜は、特に近年の高集積化された半導体素子は、線幅が微細であり且つ多層構造を有するために均質微細で発生応力の小さな素材が用いられ、更に電気信号の遅延を防止して高速作動させるために低誘電率の素材が用いられており、本発明の絶縁膜は好適である。
【0039】
本発明の製造方法により得られる有機絶縁膜を半導体装置の多層配線用層間絶縁膜に用いる場合の例としては、まず、接着性を向上させる場合、接着性コーティング剤を半導体基板上に、塗布して、塗膜を形成する。塗布の方法としては、スピンナーによる回転塗布、スプレーコーターによる噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等が挙げられる。その後、有機溶剤の沸点以上の温度でプリベークして有機溶剤を蒸発乾燥させることにより、接着性コーティング膜を形成する。次に、前記接着性コーティング膜の上に、本発明の方法により、有機絶縁膜用コーティングワニス(前記共重合体のコーティングワニス)を、積層するように塗布して、塗膜を形成する。次いで、塗膜を前記の条件でプリベークして有機溶剤を蒸発乾燥し、更に、加熱処理と電子線照射を組み合わせて処理することにより、微細孔を有する樹脂膜とし、層間絶縁膜を形成することができる。同様にして、樹脂膜を形成して表面保護膜とすることもできる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した電子線照射装置はウシオ電機社製Min−EBを用いた。また作製したコーティング用ワニス及びフィルムについて、特性評価のため、下記の方法により膜厚、比誘電率、リーク電流を測定した。評価結果は、まとめて表1に示した。
【0041】
(1)膜厚測定
n&kアナライザー(n&kテクノロジー社製)を用いて、シリコンウエーハー上の膜厚を測定した。
【0042】
(2)フーリエ変換赤外分光スペクトル
SHIMADZU社製FT−IR8900を用いてKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
【0043】
(2)比誘電率、リーク電流
エス・エス・エム社製SSM495を用いた。誘電率は周波数は1MHzで、−20V〜20Vまで電圧を送印し、得られたキャパシタンスから算出した。リーク電流は0〜500Vまで5Vステップ毎の電流値を測定し、1MV/cmの電流値を元に算出した。
【0044】
(3)耐熱性
セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA6200を用いて、窒素ガス200mK/分フロー下、昇温速度10℃/分の条件により、重量減少5%の際の温度を測定した。
【0045】
(4)吸水率
5cm角、厚み10μmの試験フィルムを、23℃の純水に24時間浸漬した後の、重量変化率を算出した。
【0046】
(5)フィルム断面観察
フィルムの断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微細孔の有無とその孔径を観察した。
【0047】
(6)弾性率
エリオニクス社製ENT―2100を用いて弾性率を測定した。
【0048】
「実施例1」
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒロドキシビフェニル8.64g(0.04mol)と4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル10.80g(0.05mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン514mLに溶解し、この溶液に、乾燥窒素下5℃以下にて、5−エチニルイソフタル酸ジクロリド9.08g(0.04mol)を添加した。次いで、同じく乾燥窒素下5℃以下にて、5−フェニルエチニルイソフタル酸ジクロリド18.18g(0.060mol)を添加した。添加後、10℃で1時間、続いて、20℃で1時間撹拌した。5℃以下にした後、γ−ブチロラクトン100mLに、アルドリッチ社製ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)56.00g(0.014mol、数平均分子量4,000)を溶解した溶液を、乾燥窒素下で添加した。次いで、トリエチルアミン22.26g(0.22mol)を添加後、10℃で1時間、続いて、20℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過して、トリエチルアミン塩酸塩を除去し、ろ過した液を、イオン交換水12Lとイソプロパノール5Lの混合溶液に滴下再沈し、析出沈殿物を集めて乾燥することにより、共重合体85.48gを得た。得られた共重合体の分子量は、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、重量平均分子量23,000、分子量分布2.20であった。また、1H−NMRにより測定のところ、反応性オリゴマー成分の導入率は51.0重量%であった。
【0049】
得られた共重合体5.00gを、N−メチル−2−ピロリドン20.00gに溶解し、孔径0.2μmのテフロン(R)フィルターでろ過して、ワニスを得た。
このワニスにおいて、室温で35日間析出物は見られなかった。このワニスを用いて、スピンコーターにより、シリコンウエーハー上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約1μmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、120℃のホットプレート上で240秒間乾燥することで、ポリベンゾオキサゾール樹脂の前駆体の皮膜1を得た。
【0050】
さらに、窒素を流入して、酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、350℃で60分間加熱することで、ポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜2を得た。加熱処理時間は6時間を要した。
【0051】
さらに、この皮膜2を、10Torrのアルゴン雰囲気下、350℃のホットプレート上で、電子線を、90μC/cm2照射することで、細孔を有するポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜3を得た。得た皮膜3の膜厚を測定したところ、1.0μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.0であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。皮膜の照射装置への設置から取出しまでに要した時間は10分であった。
【0052】
上記で得られた皮膜2と皮膜3をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりスペクトルを比較すると、皮膜2では、反応性オリゴマーであるポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)のメチルC−H結合の対称変角に基づく1372cm−1のピークと、C−O−C逆対称伸縮に基づく1093cm−1のピークが観測されたが、皮膜3では完全に消失していた。
【0053】
「実施例2」
実施例1における皮膜1を、オーブンにより、300℃で60分間加熱乾燥することにより皮膜4を得た。300℃のホットプレート上で、電子線を10μC/cm2照射することにより皮膜5を得た。それ以外は同様にして実験を行った。
上記で得た皮膜5の膜厚を測定したところ、1.1μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.1であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜4と皮膜5をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりスペクトルを比較することにより、反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0054】
「実施例3」
実施例1における皮膜1を、オーブンにより、250℃で60分間加熱乾燥、皮膜6を得た。250℃のホットプレート上で、電子線を180μC/cm2照射することにより皮膜7を得た。それ以外は同様にして実験を行った。
上記で得た皮膜7の膜厚を測定したところ、1.0μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.0であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜6と皮膜7をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりスペクトルを比較することにより、反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0055】
「実施例4」
実施例1において、皮膜1を10Torrのアルゴン雰囲気下、350℃のホットプレート上10分間熱処理した後、電子線を180μC/cm2照射し、細孔を有するポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜9を得たこと以外は同様にして、実験を行った。皮膜の照射装置への設置から取出しまでに要した時間は25分であった。
上記で得た皮膜9の膜厚を測定したところ、1.0μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.1であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜9をフーリエ変換赤外分光法(FT―IR)により反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0056】
「比較例1」
実施例1において、皮膜1を、オーブンにより、400℃で60分間加熱乾燥を行うことにより、細孔を有するポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜10を得た。処理時間は7時間を要した。
上記で得た皮膜10の膜厚を測定したところ、0.9μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.1であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜10をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0057】
「比較例2」
実施例1における皮膜2と同様にして皮膜を得た。
ここで得た皮膜2の膜厚を測定したところ、1.1μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.56であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜2をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、反応性オリゴマーが残留していることを確認した。
【0058】
表1に実施例および比較例の結果をまとめた。
【表1】
【0059】
本発明の製造方法による絶縁膜である実施例1から3は、従来よりも低温で焼成でき、しかも低い比誘電率、高い耐熱性、低吸水率、低リーク電流を示した。また実施例4は25分という短時間でも、低い比誘電率、高い耐熱性、低吸水率、低リーク電流を示した。これに対し、比較例1は比誘電率、耐熱性、は同等であったが、吸水性、機械的強度は悪い結果を示した。比較例2は350℃の低温で焼成を行ったが低い比誘電率は得られなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた低比誘電率、高い耐熱性、低吸水率、低リーク電流、高機械的強度を有する絶縁膜が提供でき、半導体用の層間絶縁膜、保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等の用途に、好適に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機絶縁膜の製造方法に関するものである。更に詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として、誘電率特性、機械的特性、電気特性などに優れ、かつ空隙サイズが小さく、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)耐性が良好な有機絶縁膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体用の層間絶縁膜用材料としては、化学気相成長法などで形成した2酸化シリコンを用いた、無機絶縁膜材料が主に使用されているが、比誘電率が高く、また高い平坦性を必要とする多層配線構造の層間絶縁膜としての性能は、充分であるとは言えなかった。
【0003】
一方、有機絶縁膜は高い平坦性を有し、比誘電率も低い。この有機絶縁膜用材料としては、耐熱性、電気特性、機械特性などに優れたポリイミド樹脂が挙げられ、ソルダーレジスト、カバーレイ、液晶配向膜などに用いられている。しかしながら、一般に有機絶縁膜は化学気相成長法などではなく、溶液塗布されて皮膜形成されるため、密着性に劣ることが指摘されている。塗布後の硬化時に剥離を生じる場合や、その後の加熱工程を有する多層配線工程中にも、剥離が生じることが多い。更に、多層配線工程後は各層形成毎に重なる熱処理を受けて、下層部分程剥離が著しくなってしまう場合が多い。種々のプライマー処理により、密着性を向上させる検討が行われているが、比誘電率の上昇を招くなどの短所が発生している。
【0004】
比誘電率を低下させる手法として空気の比誘電率は1であることを利用して、膜中に微細孔を空けることにより、膜中に空気を導入して、比誘電率を低減させる方法が検討されており、サブマイクロメーターオーダーの微細孔を得る技術については、ブロックコポリマーを加熱処理して、サブマイクロメーターオーダーの微細孔を有する樹脂を生成させる技術が開示されている(米国特許第5,776,990号)。ブロックコポリマーがサブマイクロメーターオーダーで相分離することは、公知のことであり[T.Hashimoto,M.Shibayama,M.Fujimura and H.Kawai,”Microphase Separation and the Polymer−Polymer Interphase in Block Polymers” in ”Block Copolymers−Science and Technology”,p.63,Ed.by D.J.Meier(Academic Pub.,1983)]、天井温度の低いポリマー類が容易に分解することも、高分子化学の分野では、一般に良く知られていることである。しかしながら、単純に微細孔を空けただけでは、特に多層構造の半導体用層間絶縁膜として用いた場合は、各層形成毎に重なる熱処理を受けて、下層部分程微細孔が消失して、比誘電率が上昇してしまうことが多く、満足できるものは得られていない。また、このようにして得られた層間絶縁膜は機械的強度が低いことが問題として取り上げられており、低誘電率化と機械的強度の両立は困難を極めている。
【0005】
機械的強度を向上するための技術としては、さまざまな報告がなされているが、電子線を照射して、熱処理とは異なるネットワークを層間絶縁膜中に形成させることにより、機械的強度を向上させるという報告がなされている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このようにネットワークを再構築するだけでは機械的強度は向上されても低誘電率化は困難である。
【0006】
一方、多層配線工程において、配線の微細化および多層化に伴い、絶縁膜中に配線用の溝を形成後、導電膜を溝内部に埋め込むことにより配線を形成する、いわゆるダマシン技術が検討されている。上記導電膜には銅が用いられるが、銅は、アルミニウムやタングステン等の金属と比較して、絶縁膜中を拡散しやすいという性質を有する。多層配線工程おける熱処理は銅配線の拡散を促進しボイド発生の原因となり、配線の断裂、歩留まりの低下をまねくため、層間絶縁膜の焼成温度はなるべく低くすることが求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−359239号公報(第4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、低温硬化可能でかつ低比誘電率ならび、低リーク電流、高耐熱性、低吸水率、高機械的強度を有する有機絶縁膜の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
1. 一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体を溶解したコーティングワニスを、塗布して、塗膜を形成し、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、前記反応性オリゴマーからなる部位を分解させることを特徴とする有機絶縁膜の製造方法、
【化2】
[式中、Xは少なくとも1種の4価の基を、Yは少なくとも1種の2価の基を示す。R1、R2は水素原子または1価の有機基を示し、mは1以上1000以下の整数である。]
2. 反応性オリゴマーが、ポリオキシアルキレン、ポリメチルメタクリレート、ポリα−メチルスチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボナートまたはポリウレタンである第1項または第2項に記載の製造方法の形成方法、
3. 反応性オリゴマーが、ポリオキシアルキレンである第2項記載の有機絶縁膜の製造方法、
4. 電子線の照射が、400Torr以下、室温以上で行われる第1項〜第3項のいずれかに記載の有機絶縁膜の製造方法、
を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
【0011】
本発明に用いる一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体は、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、該共重合体中のオリゴマーユニットを分解させて揮散させることにより、堅固な樹脂膜中に微細孔を形成させて、高耐熱性と低収縮及び低比誘電率を両立された多孔質絶縁膜を得ることが出来る。
【0012】
本発明に用いる前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、式(2)で表される化合物の少なくとも1種と、式(3)で表される化合物の少なくとも1種とを用いて、従来の酸クロリド法、活性化エステル法、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応等の方法により得ることが出来る。一般式(1)におけるmは1以上1000以下の整数であり、好ましくは5以上100以下である。ここでmは1であっても、成膜は可能であるが、5未満であると成膜性が低下する傾向がある。また、1000を越えると分子量が大きくなりすぎて、溶剤に溶けにくくなったり、溶解しても粘調なワニスとなり、実用的でなくなる恐れがあり、100以下が好適である。
【0013】
【化3】
[式中、Xは少なくとも1種の4価の基を、R1およびR2は水素原子または1価の有機基を示す。]
【0014】
【化4】
[式中、Yは少なくとも1種の2価の基を示す。]
【0015】
本発明で用いる、式(2)で表される化合物としては、2,4−ジアミノレゾルシノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、9,9−ビス(4−((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル)フルオレン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシフェニルエーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、9,9−ビス(4−((4−アミノ−3−ヒドロキシ)フェノキシ)−3−フェニル−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス(4−((3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェノキシ)−3−フェニル−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((2−アミノ−3−ヒドロキシ−4−フェニル)−フェニル)−フルオレン、9,9−ビス((2−ヒドロキシ−3−アミノ−4−フェニル)−フェニル)−フルオレン、及びこれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0016】
本発明で用いる、式(3)で表される化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(2−カルボキシ)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ジカルボキシシクロプロパン、2,2−ジカルボキシシクロプロパン、1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)ベンゼンの構造異性体、5−フェノキシイソフタル酸、2−フェノキシテレフタル酸、2−フェノキシテレフタル酸、5−フェニルイソフタル酸、2−フェニルテレフタル酸、更にはこれらの置換体である、5−エチニルイソフタル酸、5−フェニルエチニルイソフタル酸、3−ヘキシニルフタル酸、4−へキシニルフタル酸、2−へキシニルイソフタル酸、4−へキシニルイソフタル酸、5−へキシニルイソフタル酸、2−へキシニルテレフタル酸、3−へキシニルテレフタル酸、2−へキシニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸、3−へキシニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸、4−へキシニル−1,5−ナフタレンジカルボン酸、1−へキシニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−へキシニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、4−へキシニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、3−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、4−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、5−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、7−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、8−へキシニル−1,6−ナフタレンジカルボン酸、3,3’−ジへキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジへキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、5,5’−ジヘキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、6,6’−ジへキシニル−2,2’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、5,5’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、6,6’−ジへキシニル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジへキシニル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジへキシニル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(2−カルボキシ−3−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−4−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−5−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−6−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−2−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−4−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−5−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−6−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−2−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−3−へキシニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−カルボキシ−4−へキシニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシ−5−へキシニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−2−へキシニルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−へキシニル−1,3−ジカルボキシシクロプロパン、5−ヘキシニル−2,2−ジカルボキシシクロプロパン、1,3−ビス(4−カルボキシ−フェノキシ)−5−ヘキシニル−ベンゼンの構造異性体、1,3−ビス(4−カルボキシ−フェニル)−5−ヘキシニル−ベンゼンの構造異性体、5−(3−ヘキシニル−フェノキシ)−イソフタル酸、5−(1−ヘキシニル−フェノキシ)−イソフタル酸、5−(2−ヘキシニル−フェノキシ)イソフタル酸、2−(1−ヘキシニル−フェノキシ)テレフタル酸、2−(2−ヘキシニル−フェノキシ)テレフタル酸、2−(3−ヘキシニル−フェノキシ)テレフタル酸、5−(1−ヘキシニル−フェニル)−イソフタル酸、5−(2−ヘキシニル−フェニル)−イソフタル酸、5−(3−ヘキシニル−フェニル)−イソフタル酸、2−(1−ヘキシニル−フェニル)−テレフタル酸、2−(2−ヘキシニル−フェニル)−テレフタル酸、2−(3−ヘキシニル−フェニル)−テレフタル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させて得られる共重合体におけるオリゴマーユニットは、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物と反応可能な官能基を有する反応性オリゴマーを、予め、式(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物と反応させておくことで、あるいは式(1)で表される構造を有する化合物と反応させることにより導入される。例えば、該反応性オリゴマーは、その構造中に、カルボキシル基、アミノ基又はヒドロキシル基の官能基を有し、式(1)で表される構造を有する化合物、(2)で表される化合物や式(3)で表される化合物のカルボキシル基、アミノ基、又はヒドロキシル基と反応して導入される。そして、該オリゴマーユニットは、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び該化合物を閉環して得られる樹脂のよりも分解されやすく、かつ分解物が気化するオリゴマーユニットでなければならない。
【0018】
本発明の用いる反応性オリゴマーとしては、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシメチレン−オキシエチレン共重合体、ポリオキシメチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリテトラヒドロフラン等のポリオキシアルキレンや、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリα−メチルスチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボナート、ポリカプロラクトン等の主骨格を有するオリゴマーが好適に挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応する官能基を有する反応性オリゴマーとしては、側鎖もしくは主鎖の片末端または両末端に、官能基を導入したものを用いることができる。工業的に入手が容易であるのは、主鎖の末端を修飾した反応性オリゴマーである。より具体的には、4−アミノ安息香酸エステル化末端スチレンオリゴマー、4−アミノ安息香酸エステル化末端ポリ(プロピレングリコール)オリゴマー、両ヒドロキシ末端ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)などが挙げられる。
【0020】
前記反応性オリゴマーとしては、数平均分子量が100〜40,000の範囲のものが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が100〜20,000であり、更に好ましくは、100〜10,000の範囲のものである。分子量が100未満であると、分解・気化した後の空隙が小さく潰れやすいため、比誘電率の低減効果が得られにくい。また、分子量が40,000を越えると、空隙が大きくなりすぎて絶縁膜の機械特性が極端に低下し、実用に供すことができなくなるといった問題が発生する恐れがある。
【0021】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物中の前記反応性オリゴマーユニットの導入量は、5〜70重量%が好ましい。より好ましくは5〜50重量%であり、さらに好ましくは5〜40重量%である。この導入量が、5重量%未満であると絶縁膜中の空隙率が小さく、比誘電率を低減させることが不十分であり、また、70重量%を越えると膜中の空隙率が大きくなり、膜の機械強度が極端に低下したり、空隙が連続し不均一となり、比誘電率が場所により異なる等の問題が発生することがある。従って、反応性オリゴマーユニットの導入量が上記範囲になるように、調整することが好ましい。
【0022】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物の製造方法の例としては、従来の酸クロリド法、活性化エステル法、ポリリン酸やジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下での縮合反応などの方法を用いることができる。例えば、酸クロリド法ではまず、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒存在下で、式(3)で表される化合物と、過剰量の塩化チオニルとを、室温ないし130℃程度の温度で反応させ、過剰の塩化チオニルを、加熱及び減圧により留去した後、残査をヘキサン等の溶媒で再結晶することにより、式(3)で表される化合物の酸クロリドを得ることができる。
【0023】
このようにして製造した式(3)で表される化合物の酸クロリドと、前記他の式(3)で表される化合物を併用する場合は、同様にして得られる酸クロリドとを、式(2)で表される化合物と共に、通常、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒に溶解し、トリエチルアミン等の酸受容剤存在下に、室温ないし−30℃程度の温度で反応させて、一般式(1)で表される構造を有する化合物を合成することができる。
本発明に用いる共重合体は、上記で得られた一般式(1)で表される構造を有する化合物の反応液に、予め、反応性オリゴマーをγ−ブチロラクトンなどに溶解したものを加えて反応させ、次いで、反応液を、水とイソプロピルアルコールの混合溶液などに加え、沈殿物を集め、乾燥することにより、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとを反応させた共重合体を得ることができる。また、極性溶媒中、式(3)で表される化合物の酸クロリド、式(2)で表される化合物、反応性オリゴマーを同時に反応させて、ランダムに共重合体を合成することも可能である。
【0024】
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとの共重合体を得る場合、式(3)で表される化合物の酸クロリドと式(2)で表される化合物の仕込みモル比は、得られる重合物の分子量に大きく影響し、また重合物の末端基構造を制御するのに重要である。すなわち、反応性オリゴマーと共重合反応させるには、重合物の末端をオリゴマーの反応性基と反応し得るようにしなければならない。即ち、式(3)で表される化合物の酸クロリド/式(2)で表される化合物のモル比を、1未満とすると、得られる一般式(1)で表される構造を有する化合物の末端は、アミノ基とヒドロキシル基を有し、カルボキシル基を有する反応性オリゴマーとの共重合が可能となる。また、式(3)で表される化合物の酸クロリド/式(2)で表される化合物のモル比を、1より大きくすると、得られる重合体の末端はカルボキシル基を有し、アミノ基またはヒドロキシル基を有する反応性オリゴマーとの共重合が可能となる。この場合、反応性オリゴマーの末端反応基は、求核性の強いアミノ基の方が、より好ましい。
【0025】
この際、反応性オリゴマーの末端水酸基をアミノ基に変換する例としては、水酸基末端反応性オリゴマーと4−ニトロ安息香酸クロリドを、通常、テトラヒドロフランなどの溶媒中において、ピリジン等の酸受容剤存在下で、室温ないし−30℃程度の温度で反応させることにより、4−ニトロ安息香酸エステル末端オリゴマーを得ることができる。その後、この末端オリゴマーをテトラヒドロフランなどの溶媒に溶解し、パラジウム炭素などの還元触媒存在下、水素ガス雰囲気下で反応させ、その反応液から触媒を取り除いた後、溶媒を濃縮して除去することにより、4−アミノ安息香酸エステル末端の反応性オリゴマーを得て、これをアミノ基末端反応性オリゴマーとして使用することができる。また、一般式(1)で表される構造を有する化合物の主鎖構造中の水酸基に、カルボキシル基やイソシアネート基を有する反応性オリゴマーと反応させてグラフト共重合体を合成し用いることも可能であるが、水酸基と反応する反応性オリゴマーであれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明に用いるコーティングワニスは、一般式(1)で表される構造を有する化合物と反応性オリゴマーとの共重合体を、適当な有機溶媒に溶解させるか又は均一に分散させて得られる。
【0027】
本発明に用いる前記共重合体を溶解又は分散させる有機溶媒としては、固形分を完全に溶解することの出来る溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
ワニスを調製する場合の溶媒使用量としては、前記共重合体を完全に溶解し得る量であればよく、特に制限されず、その用途に応じて適宜調整することができるが、一般的にはワニス中の溶媒含有量は、70〜95重量%程度が好ましい。
【0029】
本発明に用いる共重合体のコーティングワニスには、目的に応じて各種添加剤を含有させることができる。各種添加剤としては、界面活性剤、シラン系に代表されるカップリング剤、酸素ラジカルやイオウラジカルを加熱により発生するラジカル開始剤、ジスルフィド類などの触媒等が挙げられる。
【0030】
また、本発明における一般式(1)で表される構造を有する化合物は、式(1)におけるR1及びR2が、水素原子である場合は、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物と一緒に用いることで、ポジ型の感光性樹脂材料として、また、R1及びR2が、メタクリロイル基のような光架橋性基を有する基である場合は、光開始剤を用いることでネガ型感光性樹脂材料として用いることが可能である。
【0031】
本発明における有機絶縁膜の製造方法としては、まず、上記で得たコーティングワニスを、適当な支持体、例えば、ガラス、繊維、金属、シリコンウエーハー、セラミック基板等に塗布して塗膜を形成する。塗布方法としては、浸漬、スクリーン印刷、スプレー、回転塗布、ロールコーティングなどの方法が挙げられる。次いで、前記塗膜を、通常、80〜200℃の範囲の温度で、溶媒を蒸発させ、乾燥する。
次いで、加熱減圧雰囲気下で、電子線を照射して、縮合反応および架橋反応させ、さらには、前記反応性オリゴマーからなる部位を分解し、揮散させて、ポリベンゾオキサゾールを主構造とする樹脂の層からなり、微細孔を有してなる絶縁膜を得ることができる。
【0032】
電子線の照射は、真空チャンバー内にホットプレートを備えている装置を用いるのが好ましく、ホットプレート上で熱処理を行いながら照射するのが好ましい。
この際の塗膜への電子線の照射量は、3μC/cm2以上、500μC/cm2以下が好ましい。3μC/cm2未満では絶縁膜の膜質は変化せず、500μC/cm2以上を超える照射量ではマトリクスの樹脂が分解してしまい、絶縁膜が脆くなる場合がある。
【0033】
前記加熱減圧雰囲気の条件としては、室温以上350℃以下が好ましく、10−1Torr以上400Torr以下が好ましい。温度が、室温以下では分解された反応性オリゴマーの分解物の拡散が遅く微細孔の形成に長時間要し、350℃以上ではマトリクス樹脂が分解し、絶縁膜が脆くなってしまう場合がある。圧力が、10−1Torr以下でも照射可能であるが、10−1Torrで照射は十分であり、400Torr以上では電子線が膜に到達する前に減衰してしまい、照射することができない場合がある。
【0034】
また、前記加熱処理は、酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブン或いはファーネス炉で加熱処理することが好ましく、加熱処理した後に、電子線を照射することも可能であり、電子線を照射した後に加熱処理することも可能である。
【0035】
本発明の製造方法で得られる有機絶縁膜における微細孔の大きさは、絶縁膜の用途や膜の厚みにもよるが、一般的には、1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下であり、半導体用層間絶縁膜等の用途においては、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは5nm以下であり、これらの微細孔を製造できる。
【0036】
また、本発明の製造方法で得られる有機絶縁膜の空隙率としては、その範囲に制限は無いが、得られる有機絶縁膜の特性としては、5〜70%が好ましく、より好ましくは5〜50%、さらに好ましくは5〜40%である。空隙率が5%より小さいと十分な比誘電率の低下が発現されないことがあり、70%よりも大きいと膜の機械強度が低下し、接着性に悪影響が出る等の問題が発生するおそれがある。
【0037】
本発明の製造方法に適用される有機絶縁膜の厚みとしては、その使用目的に応じて異なるが、通常0.05〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.05〜20μmの範囲である。
【0038】
本発明の製造方法により得られる有機絶縁膜は、特に近年の高集積化された半導体素子は、線幅が微細であり且つ多層構造を有するために均質微細で発生応力の小さな素材が用いられ、更に電気信号の遅延を防止して高速作動させるために低誘電率の素材が用いられており、本発明の絶縁膜は好適である。
【0039】
本発明の製造方法により得られる有機絶縁膜を半導体装置の多層配線用層間絶縁膜に用いる場合の例としては、まず、接着性を向上させる場合、接着性コーティング剤を半導体基板上に、塗布して、塗膜を形成する。塗布の方法としては、スピンナーによる回転塗布、スプレーコーターによる噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等が挙げられる。その後、有機溶剤の沸点以上の温度でプリベークして有機溶剤を蒸発乾燥させることにより、接着性コーティング膜を形成する。次に、前記接着性コーティング膜の上に、本発明の方法により、有機絶縁膜用コーティングワニス(前記共重合体のコーティングワニス)を、積層するように塗布して、塗膜を形成する。次いで、塗膜を前記の条件でプリベークして有機溶剤を蒸発乾燥し、更に、加熱処理と電子線照射を組み合わせて処理することにより、微細孔を有する樹脂膜とし、層間絶縁膜を形成することができる。同様にして、樹脂膜を形成して表面保護膜とすることもできる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した電子線照射装置はウシオ電機社製Min−EBを用いた。また作製したコーティング用ワニス及びフィルムについて、特性評価のため、下記の方法により膜厚、比誘電率、リーク電流を測定した。評価結果は、まとめて表1に示した。
【0041】
(1)膜厚測定
n&kアナライザー(n&kテクノロジー社製)を用いて、シリコンウエーハー上の膜厚を測定した。
【0042】
(2)フーリエ変換赤外分光スペクトル
SHIMADZU社製FT−IR8900を用いてKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
【0043】
(2)比誘電率、リーク電流
エス・エス・エム社製SSM495を用いた。誘電率は周波数は1MHzで、−20V〜20Vまで電圧を送印し、得られたキャパシタンスから算出した。リーク電流は0〜500Vまで5Vステップ毎の電流値を測定し、1MV/cmの電流値を元に算出した。
【0044】
(3)耐熱性
セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA6200を用いて、窒素ガス200mK/分フロー下、昇温速度10℃/分の条件により、重量減少5%の際の温度を測定した。
【0045】
(4)吸水率
5cm角、厚み10μmの試験フィルムを、23℃の純水に24時間浸漬した後の、重量変化率を算出した。
【0046】
(5)フィルム断面観察
フィルムの断面について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微細孔の有無とその孔径を観察した。
【0047】
(6)弾性率
エリオニクス社製ENT―2100を用いて弾性率を測定した。
【0048】
「実施例1」
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒロドキシビフェニル8.64g(0.04mol)と4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル10.80g(0.05mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン514mLに溶解し、この溶液に、乾燥窒素下5℃以下にて、5−エチニルイソフタル酸ジクロリド9.08g(0.04mol)を添加した。次いで、同じく乾燥窒素下5℃以下にて、5−フェニルエチニルイソフタル酸ジクロリド18.18g(0.060mol)を添加した。添加後、10℃で1時間、続いて、20℃で1時間撹拌した。5℃以下にした後、γ−ブチロラクトン100mLに、アルドリッチ社製ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)56.00g(0.014mol、数平均分子量4,000)を溶解した溶液を、乾燥窒素下で添加した。次いで、トリエチルアミン22.26g(0.22mol)を添加後、10℃で1時間、続いて、20℃で20時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過して、トリエチルアミン塩酸塩を除去し、ろ過した液を、イオン交換水12Lとイソプロパノール5Lの混合溶液に滴下再沈し、析出沈殿物を集めて乾燥することにより、共重合体85.48gを得た。得られた共重合体の分子量は、東ソー株式会社製GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、重量平均分子量23,000、分子量分布2.20であった。また、1H−NMRにより測定のところ、反応性オリゴマー成分の導入率は51.0重量%であった。
【0049】
得られた共重合体5.00gを、N−メチル−2−ピロリドン20.00gに溶解し、孔径0.2μmのテフロン(R)フィルターでろ過して、ワニスを得た。
このワニスにおいて、室温で35日間析出物は見られなかった。このワニスを用いて、スピンコーターにより、シリコンウエーハー上に塗布した。この際、熱処理後の膜厚が約1μmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。塗布後、120℃のホットプレート上で240秒間乾燥することで、ポリベンゾオキサゾール樹脂の前駆体の皮膜1を得た。
【0050】
さらに、窒素を流入して、酸素濃度を100ppm以下に制御したオーブンを用いて、350℃で60分間加熱することで、ポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜2を得た。加熱処理時間は6時間を要した。
【0051】
さらに、この皮膜2を、10Torrのアルゴン雰囲気下、350℃のホットプレート上で、電子線を、90μC/cm2照射することで、細孔を有するポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜3を得た。得た皮膜3の膜厚を測定したところ、1.0μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.0であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。皮膜の照射装置への設置から取出しまでに要した時間は10分であった。
【0052】
上記で得られた皮膜2と皮膜3をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりスペクトルを比較すると、皮膜2では、反応性オリゴマーであるポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)のメチルC−H結合の対称変角に基づく1372cm−1のピークと、C−O−C逆対称伸縮に基づく1093cm−1のピークが観測されたが、皮膜3では完全に消失していた。
【0053】
「実施例2」
実施例1における皮膜1を、オーブンにより、300℃で60分間加熱乾燥することにより皮膜4を得た。300℃のホットプレート上で、電子線を10μC/cm2照射することにより皮膜5を得た。それ以外は同様にして実験を行った。
上記で得た皮膜5の膜厚を測定したところ、1.1μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.1であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜4と皮膜5をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりスペクトルを比較することにより、反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0054】
「実施例3」
実施例1における皮膜1を、オーブンにより、250℃で60分間加熱乾燥、皮膜6を得た。250℃のホットプレート上で、電子線を180μC/cm2照射することにより皮膜7を得た。それ以外は同様にして実験を行った。
上記で得た皮膜7の膜厚を測定したところ、1.0μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.0であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜6と皮膜7をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によりスペクトルを比較することにより、反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0055】
「実施例4」
実施例1において、皮膜1を10Torrのアルゴン雰囲気下、350℃のホットプレート上10分間熱処理した後、電子線を180μC/cm2照射し、細孔を有するポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜9を得たこと以外は同様にして、実験を行った。皮膜の照射装置への設置から取出しまでに要した時間は25分であった。
上記で得た皮膜9の膜厚を測定したところ、1.0μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.1であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜9をフーリエ変換赤外分光法(FT―IR)により反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0056】
「比較例1」
実施例1において、皮膜1を、オーブンにより、400℃で60分間加熱乾燥を行うことにより、細孔を有するポリベンゾオキサゾール樹脂の皮膜10を得た。処理時間は7時間を要した。
上記で得た皮膜10の膜厚を測定したところ、0.9μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.1であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜10をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、反応性オリゴマーが消失していることを確認した。
【0057】
「比較例2」
実施例1における皮膜2と同様にして皮膜を得た。
ここで得た皮膜2の膜厚を測定したところ、1.1μmであった。周波数1MHzにおける比誘電率を算出したところ2.56であった。また、この皮膜について、断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、10nm以下の微細孔で非連続であり、被膜の剥離はなかった。
上記で得られた皮膜2をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、反応性オリゴマーが残留していることを確認した。
【0058】
表1に実施例および比較例の結果をまとめた。
【表1】
【0059】
本発明の製造方法による絶縁膜である実施例1から3は、従来よりも低温で焼成でき、しかも低い比誘電率、高い耐熱性、低吸水率、低リーク電流を示した。また実施例4は25分という短時間でも、低い比誘電率、高い耐熱性、低吸水率、低リーク電流を示した。これに対し、比較例1は比誘電率、耐熱性、は同等であったが、吸水性、機械的強度は悪い結果を示した。比較例2は350℃の低温で焼成を行ったが低い比誘電率は得られなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた低比誘電率、高い耐熱性、低吸水率、低リーク電流、高機械的強度を有する絶縁膜が提供でき、半導体用の層間絶縁膜、保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等の用途に、好適に使用することができる。
Claims (4)
- 反応性オリゴマーが、ポリオキシアルキレン、ポリメチルメタクリレート、ポリα−メチルスチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボナートまたはポリウレタンである請求項1または2に記載の有機絶縁膜の製造方法。
- 反応性オリゴマーが、ポリオキシアルキレンである請求項2記載の有機絶縁膜の製造方法。
- 電子線の照射が、400Torr以下、室温以上で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の有機絶縁膜の製造方法。
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