JP2004301743A - 磁気検出装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】MREチップ1には、それぞれ中心軸に対して45°傾いた2本の磁気抵抗素子2a,2b及び2c,2dからなるセンサが2対配置されている。MREチップ1は、断面U字状のフェライトマグネット4の底部に接着固定されている。フェライトマグネット4は、MREチップのケースの役割も果たす。出力端子3a,3b,3cが、フェライトマグネット4にインサート成形され、MREチップ1は、ワイヤボンディングにより端子3a,3b,3cに接続されている。また、保護用電子部品5a,5bが端子3a,3b及び3b,3c間に接着固定されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁界の変化に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子を用いた磁気検出装置に関し、例えば、磁性材料からなる部材の回転等を検出する回転検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば車両用のシャフト等の回転を検出するための装置として、磁気抵抗素子を用いて回転を検出する回転検出装置が用いられている。
【0003】
従来の回転検出装置を図10及び図11に示す(特許文献1参照)。
【0004】
図に示すように、従来の回転検出装置90は、例えば磁性材料から成る多数の歯車92を有するギヤ91に対向して配置され、ギヤの回転を検出するために使用されている。回転検出装置90は、歯車の端面に対してそれぞれ45°の角度をもって配置された磁気抵抗素子93,94を備えるセンサチップ(MRE(Magnetic Resistance Element)チップ)95を有している。センサチップ95は、長方形の棒状に形成されたモールド材96によりモールドされ、円柱形状のバイアス磁石97の中央部に設けられた長方形状の貫通孔に挿入固定されている。なお、右端部には所要数のリード98が引き出されている。
【0005】
すなわち、従来の回転等を検出する磁気検出装置は、センサチップを一旦モールドICに成形し、磁気バイアス用中空永久磁石と組付けることで検出対象である回転体の回転を検出するものである。
【0006】
【特許文献1】
特許第3102268号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、磁気検出装置の検出感度は、センサチップと永久磁石との位置関係に影響されるから、従来のものでは、各部品の位置精度(例えば、リードフレームへのダイボンディングやモールド成形時の合わせ精度、永久磁石とモールドICの組付け精度等)を厳しく管理する必要があった。
【0008】
また外部へ信号を取り出すには、専用コネクタとの接続が必要であった。
【0009】
さらに、接合個所が増えることで信頼性の面でリスクが増えるという問題もあった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、センサをICモールドに成形せず、バイアス用永久磁石に直接固定するようにしたことを特徴とする。
【0011】
これにより、位置精度を上げることができ、部品点数を少なくすることができ、信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、バイアス用磁石を、断面略U字形状に形成すれば、センサを側壁とに近接配置することができ、さらに感度を向上させることができる。
【0013】
また、バイアス用磁石は、信号伝達用端子を備えることができ、専用コネクタを省略することができる。信号伝達用端子はバイアス用磁石にインサート成形により容易に形成することができる。
【0014】
さらに、センサは、信号伝達用端子に接続配置されることができる。また、信号伝達用端子間には電子部品が接続配置される。
【0015】
さらに、バイアス用磁石に凹部を設け、この凹部にセンサを配置してセンサの上面を端子上面とほぼ同じ高さにすると、ワイヤボンディングの性能を高めることができる。
【0016】
本発明は、さらに、略U字状の磁石の底部にインサート成形により信号伝達用端子を形成し、磁気抵抗素子を有するセンサを前記磁石の底部に固定して磁気検出装置を製造する製造方法を提供する。この場合、センサを固定するステップで、電子部品を信号伝達用端子間に固定することができ、製造効率を高めることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態である磁気検出装置の概略を示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図である。
【0019】
本実施形態の磁気検出装置は、MREチップ1が、信号出力端子3a,3b,3cを備えたバイアス用永久磁石4に直接固定されているものである。
【0020】
本例のMREチップ1には、それぞれ中心軸に対して45°傾いた2本の磁気抵抗素子2a,2b及び2c,2dからなるセンサが2対配置され、差動動作が可能なように構成されている。もちろん、差動動作させない場合は、1対の磁気抵抗素子を配置すればよい。
【0021】
バイアス用永久磁石であるフェライトマグネット4は、断面略U字状に形成され、U字状の底部には、端子3a,3b,3cがインサート成形されている。そして、本例では、フェライトマグネット4の底部に設けられた端子3bに接続する電極上に、MREチップ1が導電性接着剤で接着固定されている。すなわち、MREチップ1は、フェライトマグネット4にベアチップ実装されている。フェライトマグネット4は、MREチップ1のケースとしての役割も果たしている。
【0022】
さらに、MREチップ1は、ワイヤボンディングにより端子3a,3b,3cに接続されている。また、保護用チップコンデンサ5a,5bが端子3a,3b及び3b,3c間に配置されている。
【0023】
本実施形態の製造は次のようにして行われる。
【0024】
まず、U字状のフェライトマグネット4に、インサート成形等を利用して、外部への信号伝達用の端子3a,3b,3c(例えば0.64コネクタ端子)を形成する。次に、MREチップ1は端子3bに接続する電極上に導電性接着剤で接着固定され、同時にチップコンデンサ5a,5bが、それぞれ端子3a,3b及び端子3b,3c間に導電性接着剤で接着固定される。その後、MREチップ1と端子3a,3b,3cとをワイヤボンディング接続し、全体を保護材でオーバーコートする。
【0025】
このように、フェライトマグネット4へMREチップ1を直接実装することでMREチップ1をフェライトマグネット4上に精度良く搭載することができ、センサとバイアス用マグネットとの位置ずれを少なくできる。また他の部品を介して組付けるものではないから、他の部品との位置ずれの影響を受けることもない。
【0026】
従来はICモールド中に保護用チップコンデンサを導電性接着剤により接着固定していたので、ワイヤボンディング時に外力によってこの導電性接着剤の剥離が懸念されることから、MREチップの接着とコンデンサの接着とを別々の工程で行っていた。しかしながら、本例の場合、センサチップ1を搭載する筐体となるのはフェライト4で、フェライト4は剛性があり熱的変形にも強いので、MREチップ1とコンデンサ5a,5bの接着固定を同時に行うことができる。また、外部出力端子3a,3b,3cがフェライトに直接形成されているので、従来のようなモールドICと外部端子との接合は必要がない。
【0027】
図2は、本実施形態の磁気検出装置が、実際の組立体に組み込まれた状態を示す断面図である。図1と共通する部材には同一の符号を付した。この組立体は、第1〜第3のケース10,20,30からなっている。第3のケース30が、本例のMREチップ1を直接搭載したフェライトマグネット4である。この第3のケース30が、第1のケース10で保護され、さらに第2のケース20が第1のケース10と一体的に第3のケース30を保護している。第1〜第3のケース10〜30で構成される組立体は公知のもので、本例のものは、従来のものと同様の組立工程により組み立てられるものである。
【0028】
また、従来のICモールドに代わり、本例を第3のケース30として標準形状とすることで、コストダウンを実現できる。なお、第2のケース20は成形加工を行うことなく、防水コネクタで封止することにより、別に形成された第2のケース20を用いて、第3のケース30及び第1のケース10を第2のケース20に圧入して組み立てることも可能である。
【0029】
図3(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態を示す。図1に示した第1の実施形態と共通する部材には、同一の符号を付した。図3(a)は、磁気検出装置の第2の実施形態の概略を示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A’断面図、図3(c)は、図3(a)のB−B’断面図である。
【0030】
本実施形態の磁気検出装置では、フェライトマグネット4のMREチップ搭載面が一段落とし込みになっている。すなわち、フェライトマグネット4のU字状底部に凹部6が設けられ、図3(c)に示されているように、MREチップ1が、凹部6に配設され、MREチップの上面が端子3a,3c,3dの高さとほぼ同じ高さにされている。また、MREチップの下面に伸びる端子3bに代えて、端子3a及び3cと同様の端子3dを備えている。第1の実施形態では、MREチップ1は、フェライトマグネット4の底部に設けられた端子3bに接続する電極上に接着固定されていたが、本実施形態では、MREチップ1は、他の部材を介することなく、フェライトマグネット4の凹部6に接着固定されることになる。
【0031】
本実施形態では、MREチップ1の上面が、端子3a,3b,3cの上面とほぼ同じ高さにそろえられているので、ワイヤボンディング工程が容易で、ボンディング後のワイヤループが緩やかになるため寿命が長くなる他、ワイヤタッチ等の発生を防ぐことができる効果を奏する。なお、本例では、MREチップ1の上面を端子3a,3b,3c上面とほぼ同じ高さとしたが、凹部6にMREチップを配置すれば、MREチップの高さが抑えられるという効果を有するので、場合によってはほぼ同じ高さとすることなく使用することもあり得る。
【0032】
図4は、本発明と磁気的作用において同等な先行例によるセンサ検出感度を示すグラフである。横軸は、被測定対象であるギヤの回転角を示し、縦軸は、出力電圧を示す。この先行例は、従来の円筒形のバイアス用マグネットを長手方向に沿って切断して形成したU字状マグネットに従来のICモールドしたMREチップを搭載したものである。図から明らかなように、先行例の出力電圧は、従来のものと同等な出力が得られることがわかる。
【0033】
次に、磁気抵抗素子センサの検出感度について、本発明の作用効果を説明する。
【0034】
磁気抵抗素子を用いるMREチップの検出感度は、MREチップとマグネットとの位置関係に大きく影響を受ける。図5及び図6は、磁気シミュレーションによる、MREチップとマグネットとの相対的な位置ずれとギヤ回転検出時の角度のずれを表わす図である。
【0035】
図5は、左右に配置されている2対のセンサの中心軸を基準として、MREチップが横方向すなわち左右にずれた場合の、ギヤ回転角度とセンサ感度との関係を示すもので、中心位置に配置されていてずれがない場合と、左右に0.05mm及び0.1mmずれた場合の感度がプロットされている。明らかに、ずれが大きくなると、ギヤの角度のずれも大きくなる。ギヤ−センサ間距離0.5mm時右方向に0.1mmずれた場合、センサ感度「0」の点は、15.97°から15.58°程度にずれ、約0.4°のずれがでることが分る。
【0036】
図6は、2対のセンサの前後方向の中点を基準として、MREチップが縦方向すなわち前後にずれた場合の、ギヤ回転角度とセンサ感度との関係を示す。基準位置に配置されていてずれがない場合と、前後に0.05mm及び0.1mmずれた場合の感度がプロットされている。この場合も、ずれが大きくなると、ギヤの角度のずれも大きくなる。ギヤ−センサ間距離1.5mm時前方向に0.1mmずれた場合、センサ感度「0」の点は、15.15°から14.36°程度にずれ、約0.8°のずれがでる。
【0037】
従来のものは、先に説明した構造によって、前後左右に少なくとも0.15mmのずれは避けられなかった。
【0038】
次に、MREチップを直接マグネットに搭載した本例の試作品についてみると、図7にしめすような結果が得られた。
【0039】
2ロット分の43個の試作品を対象に、実装精度を左右方向及び前後方向で測定したものである。図の白抜きの棒グラフは、横軸に示したチップマウント位置のずれ量だけ左右方向にずれて配置されたMREチップの個数を示し、斜線の棒グラフは、同様にその位置ずれ量だけ前後にずれて配置されたMREチップの個数を示す。左右方向のずれの平均値は、−2.26μmであり、3σは、46.5μmであり、前後方向のずれの平均値は、14.5μmで、3σは、40.5μmであった。
【0040】
これによれば、本例のものの実装精度は、−50μmから+50μmの範囲すなわち−0.05mmから+0.05mmにあるということができ、左右及び前後方向の実装精度が従来のものより格段に向上したことがわかる。
【0041】
ところで、図8は、MREチップ71のICモールド72を行った後、円筒形の永久磁石73に挿入して形成された従来の磁気検出器の、永久磁石とMREチップとの関係を説明する図である。
【0042】
従来のものは、図に示すように、MREチップ71を一旦ICモールド72にする必要から、MREチップ71からの引き出し電極を配置するスペースDがMREチップ71と永久磁石73との間に存在していた。したがって、1対の磁気抵抗素子の中心から永久磁石までの距離Lは、少なくとも2mm取らなければならず、これにより十分センサ感度を上げることができなかった。
【0043】
ところが、本発明によれば、ICモールドを行わない関係上、ICモールドによる制約はなくなり、1対の磁気抵抗素子の中心から永久磁石(U字形状の壁)までの距離Lは、約1mm程度に接近させることができる。この距離は、永久磁石にMREチップをマウントさせるためのマウントツールにより決定されるもので、原理的にはさらに小さくすることも可能である。
【0044】
図9に、磁気シミュレーションにより得た、MREチップと永久磁石間の距離Lによるセンサ感度の相違を示す。MREチップと永久磁石間の距離Lが2mm、1.5mm及び1mmのものの、ギヤ回転角度によるセンサ感度をプロットしたものである。図から明らかなように、MREチップと永久磁石間の距離Lが短くなるに伴い、センサ感度が向上する。本例のものは、距離Lを1mmとすることができるから、この点でだけでも従来のものに比して2倍程度のセンサ感度の向上が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態である磁気検出装置の概略を示す正面図であり、(b)は、(a)のA−A’断面図である。
【図2】本発明の1実施形態である磁気検出装置が組み込まれる組立体の断面図である。
【図3】(a)は、磁気検出装置の第2の実施形態の概略を示す正面図であり、(b)は、(a)のA−A’断面図であり、(c)は、(a)のB−B’断面図である。
【図4】本発明の先行例によるセンサ検出感度を示すグラフである。
【図5】2対のセンサの左右の位置ずれとギヤ回転検出時の角度のずれを示す図である。
【図6】2対のセンサの前後の位置ずれとギヤ回転検出時の角度のずれを示す図である。
【図7】本発明の1実施形態のMREチップの実装精度を示す図である。
【図8】従来の磁気検出器の、永久磁石とMREチップとの関係を説明する図である。
【図9】MREチップと永久磁石間の距離によるセンサ感度の相違を示す図である。
【図10】従来の磁気検出器を説明する平面図である。
【図11】従来の磁気検出器を説明する正面図である。
【符号の説明】
1…MREチップ
2a〜2d…磁気抵抗素子
3a〜3d…端子
4…フェライトマグネット
5a〜5b…チップコンデンサ
6…凹部
Claims (9)
- 磁気抵抗素子を有するセンサとバイアス用磁石を備えた磁気検出装置であって、前記センサは前記バイアス用磁石に直接固定されていることを特徴とする磁気検出装置。
- 前記バイアス用磁石は、断面略U字形状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気検出装置。
- 前記バイアス用磁石は、信号伝達用端子を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気検出装置。
- 前記信号伝達用端子は、前記バイアス用磁石にインサート成形されることを特徴とする請求項3に記載の磁気検出装置。
- 前記センサは、前記信号伝達用端子に接続配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気検出装置。
- 前記信号伝達用端子間に電子部品が接続配置されることを特徴とする請求項3〜5に記載の磁気検出装置。
- 前記バイアス用磁石には凹部が設けられ、該凹部に前記センサが固定され、前記センサの上面が前記信号伝達用端子の上面とほぼ同じ高さに構成されたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
- 略U字状の磁石の底部にインサート成形により信号伝達用端子を形成するステップと、
磁気抵抗素子を有するセンサを前記磁石の底部に固定するステップと、
を備えることを特徴とする磁気検出装置の製造方法。 - 前記センサを固定するステップにおいて、電子部品を前記信号伝達用端子間に固定することを特徴とする請求項8に記載の磁気検出装置の製造方法。
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