JP2004301671A - 回転機の軸受診断システム、回転機の軸受診断装置及び回転機のスタッド - Google Patents
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Abstract
【課題】診断対象機器のデータを簡単に選択することが可能となる回転機の軸受診断システムを提供する。
【解決手段】診断対象となる電動機1や軸受2について必要な情報をQRコード52に記録して、電動機1のハウジング14に配置されているスタッド50に貼付する。そして、PDA17は、QRコード52に記録されている情報をCCDカメラ55により読取って取得し、軸受2の振動測定及び診断を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】診断対象となる電動機1や軸受2について必要な情報をQRコード52に記録して、電動機1のハウジング14に配置されているスタッド50に貼付する。そして、PDA17は、QRコード52に記録されている情報をCCDカメラ55により読取って取得し、軸受2の振動測定及び診断を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転機の軸受の振動を検出して軸受の異常を診断する回転機の軸受診断システム、及びその軸受診断システムに使用される回転機の軸受診断装置、又はそのシステムに使用される回転機のスタッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば電動機などの回転機器については、振動や騒音を測定して解析することにより、機器に機械的な異常が発生している否かを診断することが行なわれている。そして、電動機等を用いて構成される生産設備において、生産性の向上を図るためには、予防保全が非常に重要となる。特に、電動機等を構成する軸受けに機械的損傷が発生すると、機器に大きなダメージを与えることになり、設備稼働率を大幅に低下させる場合がある。そこで、軸受については、定期的に上記の診断を行なうことが好ましい。
【0003】
上記の診断は、例えば、振動ピックアップや集音マイクなどを用いて機器に発生する振動を音響的な電気信号に変換して増幅した後、A/D変換してコンピュータに取り込み、その信号波形を解析することで行なっている。
【0004】
また、本発明の発明者らは、振動センサによる測定及び診断に必要とされる機能を、例えばPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯端末に内蔵した構成を提案した(特願2003−73821)。斯様な構成によれば、軸受の振動測定及び診断をより容易に行うことが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、軸受の診断を行なうためには、診断対象機器に関する機構的なデータや、測定、診断を行うために用いる情報が必要である。そして、特願2003−73821で提案した携帯端末においてそのデータを得るには、例えばPDA側に複数の機器に対応するデータを予め内蔵しておき、それらの中から対象となるデータを選択して読み出したり、或いは、通信機能を利用して外部のデーベースサーバにアクセスを行うことで、必要なデータをダウンロードするようにしている。
【0006】
しかしながら、斯様な方式では、診断対象機器数が増加するほどデータの選択が困難となることは明らかである。例えば、複数の診断対象機器が設置されている工場などにおいて、それらを巡回しながら順次測定を行う場合を想定すると、対象となるデータを夫々正しく選択しなければならない。この場合、測定を誤る要因としては作業者が巡回ルートを間違えることも考えられ、本来の順序では正しくデータを選択したとしても、意味がなくなってしまう。
また、上記の例に限らず、一つの診断対象機器に対応するデータを選択する場合でも、データの総数が多くなれば選択が困難となることは言うまでも無い。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、診断対象機器のデータを簡単に選択することが可能となる回転機の軸受診断システム、回転機の軸受診断装置、又はそのシステムに使用される回転機のスタッドを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の回転機の軸受診断システムは、回転機の軸受部分において発生する振動を測定し、診断を行うものであって、
前記測定及び診断に関する情報が空中伝搬信号を用いて読み出し可能な形式で記録され、回転機の筐体若しくはその近傍に配置されている情報記録媒体と、
前記軸受の振動を検出する振動センサと、
前記情報記録媒体に記録されている情報を読取るための情報読取手段と、前記振動センサによって検出された振動データを記憶する記憶手段と、前記情報読取手段によって読み取られた回転機に関する情報と前記振動データとに基づいて軸受の診断を行なう診断手段とを備える軸受診断装置とで構成されることを特徴とする。
【0009】
斯様に構成すれば、軸受診断装置は、診断対象となる回転機や軸受について必要な情報を情報読取手段により読取り取得することができ、従来とは異なり、診断対象機器数が多い場合でもデータの選択を簡単に行うことができる。そして、情報記録媒体は回転機の筐体若しくはその近傍に配置されているので、例えば、複数の診断対象機器が設置されている場所を巡回しながら順次測定を行う場合でも、対象となるデータを容易に正しく選択できる。
尚、ここでの「情報記録媒体」は、記憶内容を保持するためやその記憶内容を読み出すための電源を媒体側に内蔵していないものを言う。
【0010】
この場合、請求項2に記載したように、軸受診断装置を、機能拡張用カードが接続可能に構成される携帯端末を利用して構成し、
前記機能拡張用カードを、
回転機の軸受の振動を検出する振動センサが接続可能であり、
前記携帯端末側より供給される電源に基づいて前記振動センサの駆動用電源を生成する電源回路と、
前記振動センサによって検出された振動信号をデジタルデータに変換するA/D変換手段と、
このA/D変換手段により変換されたデータを前記携帯端末側に転送するためのデータ転送手段とを内蔵して構成し、
前記携帯端末を、
情報読取手段,記憶手段及び診断手段を備え、
前記記憶手段に、前記機能拡張用カード側より転送されたデータを記憶させ、
前記診断手段は、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて軸受の異常を診断するように構成すると良い。
【0011】
斯様に構成すれば、振動センサの駆動アンプに相当する電源回路を携帯端末に接続される機能拡張用カードの内部に配置して、振動センサもその機能拡張用カードに接続されるので、作業者は、非常に小型の携帯端末を持ち歩いて回転機の軸受に発生する振動を容易に測定し、診断まで行うことが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載したように、診断手段を、記憶手段に記憶されたデータを周波数分析処理することにより回転機の実回転数を求め、この実回転数に基づいて軸受の特徴周波数を求め、この特徴周波数と前記周波数分析処理された結果とを比較することに基づいて軸受の異常を診断するように構成すると良い。斯様に構成すれば、回転機の回転軸の実回転数に基づいて軸受の特徴周波数を算出し、この特徴周波数と周波数分析処理された音声信号の周波数成分とを比較して軸受の異常を正確に診断することができる。
【0013】
更に、請求項4に記載したように、軸受診断装置に、記憶手段に記憶されたデータをアナログ信号に変換するためのD/A変換手段と、このD/A変換手段によって変換されたアナログ信号を音声信号として出力するための音声信号出力手段とを備えて構成するのが好ましい。斯様に構成すれば、軸受診断装置を所持する作業者は測定した振動データをその場で音声として聞くことが可能となるので、それによって回転機に異常が発生しているか否かの凡その判断を行なうこともできる。
【0014】
そして、この場合、請求項5に記載したように、記憶手段に記憶されるデータを、ウェーブ形式で記憶されるように構成すると良い。斯様に構成すれば、診断装置がオペレーティングシステムとしてWINDOWS(登録商標)を使用している場合に、そのオペレーティングシステムに準拠した音声データとして取り扱うことができる。従って、その音声データの処理をより容易に行なうことができる。
【0015】
また、以上の場合において、請求項6に記載したように、軸受診断装置において取り扱うデータを、情報記録媒体に記録させるための情報記録手段を備えると良い。斯様に構成すれば、例えば、今回測定を行い診断した結果を、情報記録媒体に記録させることが可能となる。従って、その履歴データを情報記録媒体から読み出すことで、診断結果の傾向分析等を行なうことも可能となる。
【0016】
更に、請求項7に記載したように、情報記録媒体の情報記録形式を2次元コードにすると良い。即ち、2次元コードは限られたスペースに非常に多くの情報を記録することができるので、本発明に好適である。
【0017】
この場合、請求項8に記載したように、軸受診断装置において取り扱うデータを2次元コードにエンコードするエンコード手段と、
このエンコード手段によってエンコードされた2次元コードを媒体に印刷して出力する印刷手段とを備えると良い。斯様に構成すれば、請求項6と同様に、今回測定を行い診断した結果を、情報記録媒体たる2次元コードに記録させることが可能となる。そして、印刷出力された新たな2次元コードを例えば回転機の筐体に貼付し、その2次元コードに記録された履歴データを読み出せば、診断結果の傾向分析等を行なうこともできる。
【0018】
また、請求項9に記載したように、情報記録媒体を、RF(Radio Frequency)−IDタグとしても良い。即ち、RF−IDタグは、電磁結合方式や静電結合方式、或いは電磁誘導方式やマイクロ波方式などによって情報の読み取りが可能である。そして、内部の不揮発性メモリに多くの情報を記録することができるので、本発明に好適である。また、情報の書換えも容易に行うことができる。
【0019】
加えて、請求項10に記載したように、振動センサを機械的に固定するためのスタッドを回転機の筐体側に備え、
情報記録媒体を、前記スタッドに貼付すると良い。即ち、振動センサをスタッドに固定することで、軸受部分において発生する振動を振動センサに確実に伝達することができる。また、測定が毎回同じポイントで行われるので、測定精度を向上させることができる。更に、そのスタッドに情報記録媒体が貼付されるので、情報の読み取りを容易に行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図15を参照して説明する。図1は、軸受診断装置たるPDAによって電動機の軸受の振動測定を行う状態を示すものである。この図1に示すように、電動機(例えば誘導電動機)1の回転軸7の先端部、及び、負荷装置9の回転軸10の先端部には、円柱状の接合板11及び12が固定して装着されており、夫々の接合板11及び12が接合され、図示しないボルトで固定されることによって、電動機1と負荷装置9とが接合されている。
【0021】
また、電動機フレーム13の両端には、回転軸7を支えるためのころがり軸受2が装着されており、このころがり軸受(以下、単に軸受と称す)2は電動機フレーム13のハウジング14内に収容されている。
【0022】
前端側(図1(a)では右方側)の軸受2を収容するハウジング14の外周面の上側部には、スタッド50が配置されており、そのスタッド50には、振動センサたる圧電素子製の加速度センサ15がねじ止めによって固定されている(図1(b)参照)。加速度センサ15は、信号線16の先端部分に配置されるコネクタ51に接続されるようになっており(図3参照)、信号線16は、PDA(Personal Digital Assistants,携帯端末,軸受診断装置)17に接続されるPCカード(機能拡張用カード)18の入力端子に接続されている。
【0023】
尚、図1(a)に示すように、負荷装置9の軸受部分にも同様のスタッド50’を配置し、必要に応じて負荷装置9についても振動測定及び振動を行っても良い。
【0024】
加速度センサ15は、電動機1の回転軸7の回転によって振動を受けると、圧電素子によってその振動をアナログの電気信号(振動信号)に変換し、この電気信号が信号線16を介してPCカード18に出力される(図3参照)。
【0025】
また、図1(c)に示すように、スタッド50の上面側には、QR(Quick Responce)コード(登録商標、2次元コード、情報記録媒体)52が貼付されている。QRコード52には、軸受2の振動測定並びに診断を行うために必要な情報が記録されている。図2には、その情報の一例を示す。情報の大分類としては、「共通情報」、「電動機情報」、「軸受情報」、「演算情報」、「振動結果測定」などがある。
【0026】
「共通情報」は、対象機器の名称や、診断モードなどである。「電動機情報」は、測定対象が交流、直流電動機の何れであるかや、電動機のメーカなどを示す。「軸受情報」、軸受のメーカ名、型式や寸法などである。「演算情報」は、振動測定を行う場合に使用するフィルタのタイプや段数などである。「振動結果測定」は、測定結果として得られる振動のオーバーオール(OA)値、実効(RMS)値、ピーク値、標準偏差値、また、判定を行なうためのパラメータとしてのOA値や、過去の測定データなどからなる。
【0027】
ここで、図3には、PDA17の外観を示す。PDA17は、携帯可能に構成された小型のパーソナルコンピュータ(所謂、モバイルコンピュータ)である。ケースの上面には、LCDなどで表示を行うと共に、ペンタッチ入力も可能に構成される表示入力部19や、簡単な操作を行なうための操作キー20などが配置されている。
【0028】
また、PDA17には、PCMCIA規格(PC card standard)に準拠したPCカード18を中継して接続するためのジャケット21が装着されている。即ち、PDA17は、本体を極力小型に構成する必要があり、PCカード18を直接接続するためのスロットを備えていないものが一般的である。従って、具体的には図示しないが、PDA17側とPCカード18側との双方に対して接続を図るためのコネクタを有するジャケット21を介してPCカード18を接続する。
【0029】
図4には、PDA17及びPCカード18の電気的構成を機能ブロックで示す。PCカード18は、センサアンプ(電源回路)22,A/D変換器(A/D変換手段)23,PCカードコントローラ(データ転送手段)24,CPU25及びメモリ26などを備えて構成されている。CPU25は、A/D変換器23及びPCカードコントローラ24の制御を行うものである。尚、PCカード18に内蔵されるセンサアンプ22の詳細な構成は、特願2003−73821に開示されている。
【0030】
PCカードコントローラ24は、内部のデコーダ27によってCPU25より与えられる制御指令をデコードして動作し、PCカード18とPDA17との間でデータの転送を行なうように構成されるロジックである。また、PCカードコントローラ24は、A/D変換器23より出力されたデータをバッファ28で受けて、PDA17側に転送するようになっている.
尚、図3においては、図示の都合上ジャケット21を介した接続部分は省略しており、PDA17とPCカード18とは、コネクタ29,30を介して接続されるように示している。
【0031】
一方、PDA17側は、CPU31,メモリ(記憶手段)32,ISAバスインターフェイス(I/F)33等を備えて構成されている。ISAバスI/F33は、PCカード18との間におけるバス制御を行うものである。メモリ32には、オペレーティングシステム(OS)34としてWINDOWS CE(登録商標)がインストールされており、そのOS34上で動作するアプリケーションプログラムとして測定・診断プログラム(診断手段)35や、後述するように2次元コードをデコードするためのデコード・プログラム53が記憶されている。
【0032】
測定・診断プログラム35は、PCカード18より転送された振動データを、RIFF WAVE形式で診断データファイル36の一部としてメモリ32に記憶させるようになっている。また、アプリケーションプログラムとしてWINDOWSメディア・プレーヤ(登録商標)37も搭載されており、後述するようにWAVE形式の診断データファイル36に基づいて音声信号の再生出力も可能となっている。
【0033】
尚、音声信号は、D/A変換器(D/A変換手段)45を介してヘッドフォンジャック(音声信号出力手段)46より出力可能に構成されている。即ち、作業者は、ヘッドフォンジャック46に図示しないヘッドフォンを接続することで、出力される音声信号を聞くことができる。
【0034】
更に、PDA17には、ジャケット21を介して例えばBluetoothなどで無線通信を行うための通信用CF(Compact Flash)カード54と、CCDカメラ(情報読取り手段)55を接続するためのカメラ用CFカード56とが接続可能に構成されている。CCDカメラ55は、QRコード52のコードパターンを2次元画像として読み取るためのエリアセンサである。
【0035】
CCDカメラ55によって読取られたコードパターンデータは、カメラ用CFカード56を介してPDA17側に転送される。PDA17は、デコードプログラム53を起動することで、コードパターンデータをデコードし、必要な情報を得るようになっている。
【0036】
次に、本実施例の作用について図5乃至図15を参照して説明する。尚、転がり軸受2の詳細な構造とその異常診断方法の概要については、例えば特開2001−255241などに開示されているのでここでは省略する。また、振動データの測定及び診断の各処理についても、基本的な部分は特願2001−346201に記載されているものと同様である。
【0037】
PDA17において、軸受診断用の測定・診断プログラム35を起動すると、表示入力部19の画面上には、図示はしないがメインメニュー画面が表示される。このメインメニュー画面では、まず、使用する診断データファイル36の設定が行われる。これは、既存のものの中から選択するか、新規作成することにより行われる。続いて、以下の項目が選択可能に表示され、設定された診断データファイル36に対して各項目の処理が実行される。
≪初期設定≫,≪振動検出≫,≪軸受診断≫,≪振動音出力≫,≪QRコード生成≫,≪傾向分析≫
【0038】
尚、以下において診断情報とは、校正情報(原振動信号を校正するための校正用音声信号等)、測定情報(PCカード18内のセンサアンプ22のゲイン設定値,測定場所及び測定日時)、電動機情報(指令周波数,容量及び極数)、及び、識別情報(軸受2のメーカ名及び型式)で構成されているものとする。
【0039】
≪初期設定≫
メインメニュー画面から≪初期設定≫が選択されると、PDA17のCPU31は、図5に示すフローチャートを実行する。CPU31は、先ず、デコードプログラム53を起動する(ステップR1)。そして、CCDカメラ55によってQRコード52を読取り(ステップR2)、情報をデコードすると(ステップR3)、デコードした情報をメモリ32に記憶させる(ステップR4)。
デコードされた情報には、校正情報,測定情報,電動機情報及び識別情報などが含まれる。
【0040】
ここで、図6には、測定データファイル36のデータ領域構造を示す。測定データファイル36のデータ領域は、情報チャンク43とウェーブチャンク44とで形成されている。
【0041】
ウェーブチャンク44は音声用のデータを記録するためのデータ領域であり、記録された音声用のデータは、メディア・プレーヤ37により再生させてヘッドフォンジャック46より音声として出力可能である。そして、PDA17は、原振動信号をこのウェーブチャンク44に記録する。一方、情報チャンク43はユーザが任意のデータを記録可能なデータ領域であり、記録されたデータは、メディア・プレーヤ37等では自動的に読み飛ばされる。そして、PDA17は、診断情報をこの情報チャンク43に記録する。
【0042】
≪振動検出≫
メインメニュー画面から≪振動検出≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない振動検出画面が表示され、軸受2の振動検出が行われる。以下、図7のフローチャートを参照しながら振動検出の作用について説明する。
【0043】
先ず、ステップS1では、サンプリング周波数の設定が行われる。設定されるサンプリング周波数は、例えば50kHz及び25kHzである。続くステップS2では、検出開始操作の入力待ち状態となっている。このとき、作業者が、電動機1の軸受2に加速度センサ15が装着され、且つ、駆動装置(図示せず)に設定された指令周波数に基づき電動機1が定常状態で駆動されていることを確認して検出開始操作を行うと、ステップS3に移行する。
【0044】
ステップS3では、PCカード18において設定されたサンプリング周波数で振動信号のA/D変換が行われ、原振動信号が生成される。そして、続くステップS4では、原振動信号がウェーブ形式データに変換され、診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録される。
【0045】
≪軸受診断≫
メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われる。以下、図8のフローチャートを参照しながら診断の作用について説明する。
【0046】
ステップT1では、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、続くステップT2では、診断情報内の識別情報に基づいて、例えばメモリ32から診断に必要な形状データの読み出しが行われる。
【0047】
次のステップT3では、軸受2の異常を判定するための重力加速度の値(以下、異常判定用重力加速度と称す)がメモリ32より読み出される。続くステップT4では、診断情報内の校正用近似直線データに基づいて原振動信号の1サンプル毎の校正が行われ、校正済振動信号が生成される。校正済振動信号は、作業者の必要に応じて診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録可能である。
【0048】
ステップT5では、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行される。この簡易診断の詳細を、図9のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、校正済振動信号の全サンプル値を1サンプル毎に比較することで重力加速度のピーク値の検出が行われる(ステップU1)。
【0049】
次に、前記全サンプル値について実効値を演算し(ステップU2)、また、その全サンプル値の絶対値の総和にπ/2を乗じてオーバーオール値を演算する(ステップU3)。更に、前記全サンプル値について標準偏差を求めると(ステップU4)、ステップU1で検出したピーク値をステップU2で演算した実効値で除すことによりクレスト・ファクタ(C.F.:Crest Factor)を演算する(ステップU5)。
【0050】
続いて、全サンプル値について遮断周波数1kHzでハイパスフィルタ処理を行なうと(ステップU6)、そのフィルタ処理後のサンプル値についてステップU1〜U5で行なったものと同一の演算を行なう(ステップU7)。即ち、以上に基づく振動成分は、比較的高域において顕著に現われるからである。
【0051】
そして、次のステップU8では異常判定が行なわれる。異常判定は、各ステップU1〜U5及びU7で求めた評価値(これらを兆候パラメータと称す)を、夫々の基準によって判定することで行なう。例えば、ステップU1で検出された校正済振動信号のピーク値については、図8のステップT3で入力された異常判定用重力加速度との比較が行われ、前者が後者よりも大きい場合は軸受2に「異常有り」と判定される。そして、図8のステップT6に移行する。
【0052】
ここで、図10には、(a)識別情報(機器情報)と(b)簡易診断による解析結果の一例(表示入力部19における画面表示例)を示す。即ち、(a)に示す機器情報としては、「点検No.」、「部署名」、「建屋No.」、「枠番」、「回転数」、「軸受メーカ」、「軸受型式」、「コメント」などが表示される。また、(b)に示す解析結果としては、例えば、図9のステップU1〜U5で演算された兆候パラメータが表示される。
【0053】
ステップT6では、簡易診断の結果により軸受2に「異常無し」と判定された場合はステップT8に移行し、「異常有り」と判定された場合はステップT7に移行して精密診断が行われる。この精密診断の詳細を図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0054】
まず、校正済振動信号(ハイパスフィルタ処理されたもの)について、帯域3kHz〜8kHzのバンドパスフィルタ処理を行ない(ステップV0)、続くステップV1では、校正済振動信号の高速フーリエ変換(FFT)処理が行われる。高速フーリエ変換処理は、校正済振動信号の連続した複数点のデータに基づいて行われる。校正済振動信号の周波数成分には、特定の周波数領域で重力加速度の振幅が大きな部分が複数現われる。以下、これらの周波数領域を極大領域と称する。これらの極大領域は、電動機1の実回転速度や、軸受2を構成する部品の特徴周波数、及びこれらの周波数の高調波成分である。
【0055】
続いて、ステップV2では、高速フーリエ変換処理の結果から、電動機1の実回転速度の検出が行われる。具体的には、複数の極大領域の中から、診断情報内の周波数指令の値に最も近い極大領域が検出され、この極大領域の極大値を示す周波数が電動機1の実運転周波数(実回転速度)として検出される。
【0056】
ステップV3では、検出された実回転速度及び図8のステップT2において読み出された形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出される。次のステップV4では、校正済振動信号の高調波ノイズ成分を除去するために校正済振動信号の包絡線処理が行われて、包絡線処理済音声信号が生成される。
【0057】
ステップV5では、包絡線処理済音声信号の高速フーリエ変換処理が行われる。この高速フーリエ変換処理により、低周波領域(例えば10[Hz]〜100[Hz]の周波数領域)に接近して現れる特徴周波数を明確に識別することが可能となる。
【0058】
続いて、ステップV6では、軸受2の特徴周波数と、包絡線処理済音声信号の周波数成分との比較が行われる。まず、包絡線処理済音声信号の周波数成分において、夫々の特徴周波数と一致する周波数での重力加速度の値の検出が行われる。次に、検出された重力加速度値の中で、一番大きな値を示す特徴周波数が検出される。そして、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定される。そして、図8のステップT8に移行する。
【0059】
ステップT8では、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる。また、作業者の必要に応じて、診断結果を診断データファイル36の情報チャンクに記録することも可能である。
【0060】
≪振動音出力≫
メインメニュー画面から≪振動音出力≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない振動音出力画面が表示される。ここでは、診断データファイル36に記録された原振動信号及び校正済振動信号と、校正済振動信号を帯域遮断フィルタ処理することで生成した帯域遮断振動信号を振動音として出力する処理が行われる。以下、図12のフローチャートを参照しながら振動音出力の作用について説明する。
【0061】
ステップW1では、原振動信号、校正済振動信号、又は、帯域遮断振動信号の中から振動音として出力するものの選択が行われる。ここから、夫々の選択に応じてステップW2〜W4に移行する。そして、ステップW2,W3では、原振動信号,校正済振動信号が夫々音声再生処理され、振動音としてヘッドフォンジャック46から出力される。また、ステップW4では、校正済振動信号の高速フーリエ変換処理が行われる。
【0062】
ステップW5では、作業者により、校正済振動信号の帯域遮断フィルタ処理を行うための周波数帯域の設定が行われる。ステップW6では、設定された周波数帯域に基づいて、高速フーリエ変換処理された校正済振動信号の帯域遮断フィルタ処理が行われる。ここでのフィルタ処理は、電動機1の運転に基づいて発生する振動音のレベルを低下させ、異常に基づいて発生する特徴的な振動音を聞き易くするために行なう。
【0063】
ステップW7では、帯域遮断フィルタ処理された校正済振動信号の逆高速フーリエ変換処理が行われ、再び、時間成分の校正済振動信号に変換される。ステップW8では、振動音出力時の音声の連続性を確保するため逆高速フーリエ変換処理された校正済振動信号の窓関数処理が行われ、これによって帯域遮断振動信号が生成される。ステップW9では、メディア・プレーヤ37が起動されることで帯域遮断振動信号が音声再生処理され、振動音としてヘッドフォンジャック46から出力される。
【0064】
≪QRコード生成≫
メインメニュー画面から≪QRコード生成≫が選択されると、新たなQRコードを生成するための処理が行なわれる。図13は、今回行った軸受2の振動測定並びに診断結果に基づいて、新たなQRコードを生成するためのシステム構成を示すもので、図14は、そのシーケンスを示すものである。
【0065】
PDA17は、通信用CFカード54によって外部のパーソナルコンピュータ(情報記録手段)57と通信が可能であり、診断結果データを、QRコード52より読み込んだ履歴データと共にパソコン57側に送信する(▲1▼)。パソコン57には、QRコードのエンコードプログラム(エンコード手段)58がインストールされている。
【0066】
そして、パソコン57は、PDA17より送信されたデータを受信するとエンコードプログラム58を起動し(▲2▼)、そのデータに基づいてQRコードパターンをエンコードして生成する(▲3▼)。それから、エンコードしたデータをプリンタ(情報記録手段,印刷手段)59に送信する(▲4▼)。すると、プリンタ59は、新たなQRコード52Nを例えばシールなどの媒体に印刷する(▲5▼)。
【0067】
印刷された新たなQRコード52Nは、最新の診断結果を含む履歴データを備えるものであり、作業者は、そのQRコード52Nをスタッド50に貼付されているQRコード52に代えて貼付する(▲6▼)。すると、その履歴データは、後述する傾向分析処理に利用される。
【0068】
≪傾向分析≫
傾向分析処理は、QRコード52より読み出されてPDA17のメモリ32に記憶されている履歴データ、及び今回の診断結果データをCPU31が読み出して、図15に示すように、表示入力部19にグラフィック表示させることで行う。即ち、作業者は、その表示を参照することで、診断結果が時系列的にどのような傾向を示しているかを分析することができる。また、PDA17に診断プログラムを備えておき、そのプログラムを起動することで分析を自動的に実行させても良い。尚、図15は、電動機1(RIGHT)と負荷装置9(LEFT)の夫々について、実効値(RMS)及び標準偏差(STD)を、運転時間を横軸にしてプロットしたものである。
【0069】
以上のように本実施例によれば、診断対象となる電動機1や軸受2について必要な情報をQRコード52に記録して、電動機1のハウジング14に配置されているスタッド50に貼付し、PDA17は、QRコード52に記録されている情報をCCDカメラ55により読取って取得し、軸受2の振動測定及び診断を行うようにした。従って、従来とは異なり、診断対象機器数が多い場合でも必要な情報の選択を簡単に行うことができる。
【0070】
そして、QRコード52は、軸受2部分のハウジング14に固定されているスタッド50に貼付されているので情報の読み取りを容易に行うことができ、例えば、複数の診断対象機器が設置されている場所を巡回しながら順次測定を行う場合でも、対象となるデータを容易に正しく選択できる。更に、QRコード52は、限られたスペースに非常に多くの情報を記録することができるので、本発明に好適である。
【0071】
加えて、スタッド50に振動センサ15を機械的に固定したので、軸受2部分において発生する振動を振動センサ15に確実に伝達することができる。また、測定が毎回同じポイントで行われるので、測定精度を向上させることができる。
【0072】
また、PDA17に接続されるPCカード18を、振動センサ15を接続可能とし、PDA17側より供給される電源に基づいて振動センサ15の駆動用電源を生成するセンサアンプ22と、振動センサ15によって検出された振動信号をデジタルデータに変換するA/D変換器23と、このA/D変換器23により変換されたデータをPDA17側に転送するためのPCカードコントローラ24とを内蔵して構成した。
【0073】
そして、PDA17は、PCカード18側より転送されたデータに基づいて兆候パラメータを演算して求めると共に、周波数分析処理して回転機1の実回転数を求めると共に軸受2の特徴周波数を求め、この特徴周波数と周波数分析処理された結果とを比較して軸受2の異常を診断する測定・診断プログラム35を備えて構成した。従って、作業者は、従来構成に比較して非常に小型のPDA17を持ち歩いて回転機1の軸受2に発生する振動を容易に測定し、診断まで行うことが可能となる。
【0074】
更に、PDA17に、メモリ32に記憶されたデータをアナログ信号に変換するためのD/A変換器45と、変換されたアナログ信号を音声信号として出力するためのヘッドホンジャック46とを備えたので、作業者は、測定した振動データをその場で(ヘッドホンを介して)音声として聞くことが可能となるので、それによって回転機1に異常が発生しているか否かの凡その判断を行なうこともできる。
【0075】
また、メモリ32にウェーブ形式でデータを記憶するので、PDA17がOS34としてWINDOWSを使用している場合に、そのOS34に準拠した音声データとして取り扱うことができる。従って、その音声データの処理をより容易に行なうことができる。
【0076】
加えて、機能拡張用カードをPCMCIA規格に準拠したPCカード18としたので、非常に一般的な規格として使用されているPCカード18を利用することができ、PDA17を低コストで構成することが可能となる。
【0077】
更に、PDA17が行った診断結果データを、通信用CFカード54を介してパソコン57に送信し、パソコン57がそのデータをQRコードパターンにエンコードしてプリンタ59に出力させ、新たなQRコード52Nを媒体に印刷して生成するようにした。従って、QRコード52Nに診断結果の履歴データを記憶させることができ、その履歴データをQRコード52Nから読み出すことで、診断結果の傾向分析等を行なうことも可能となる。
【0078】
(第2実施例)
図16は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。第2実施例では、図16(b)に示すように、QRコード52に代えて、スタッド50にバーコード(情報記録媒体)61を貼付するようにしたものである。
【0079】
バーコード61は、QRコード52に比較して記録可能な情報量は少ないが、振動測定及び診断に必要な最低限のデータを選別して記憶させることは可能である。そして、PDA17は、第1実施例と同様にCCDカメラ55を用いてバーコード61を読取ることができるが、この場合、CCDカメラ55に代えて、専用のバーコードリーダを備えるようにしても良い。
以上のように構成された第2実施例によれば、情報記録媒体としてバーコード61を用いるので、第1実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0080】
(第3実施例)
図17は本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。第3実施例では、図17(b)に示すように、QRコード52に代えて、スタッド50にRF−IDタグ(情報記録媒体)62を貼付するようにしたものである。そして、PDA17は、カメラ用CFカード56に代えて、IDタグリーダ/ライタの機能を有するリーダ/ライタ用CFカード(情報読取り手段、情報記録手段)63を備えている。
【0081】
次に、第3実施例の作用について説明する。PDA17は、リーダ/ライタ用CFカード63に内蔵されたアンテナ(図示せず)より電磁結合、静電結合、電磁誘導或いはマイクロ波などの各通信方式に応じた数100kHz〜数GHzの電波信号を送信し、RF−IDタグ62に給電を行なう。すると、RF−IDタグ62は、内部の送受信部及びメモリが動作可能となり、送受信部はメモリに記録されているデータを読み出し、アンテナ(何れも図示せず)を介してPDA17側のリーダ/ライタ用CFカード63に送信する。
また、RF−IDタグ62を用いた場合、PDA17は、リーダ/ライタ用CFカード63により診断結果データを書き込んで記録させることも可能となる。
【0082】
以上のように第3実施例によれば、情報記録媒体に、電波信号等により情報の読み取りが可能なRF−IDタグ62を用いたので、内部の不揮発性メモリに多くの情報を記録することができる。また、情報の書換えも容易に行うことができる。
【0083】
尚、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形、拡張が可能である。
上記実施例では、診断情報を情報チャンクに記録し音声信号をウェーブチャンクに記録するようにして診断データファイル36をウェーブ形式で記録するようにしたが、この機能は必要に応じて設ければよい。また、オペレーティングシステムはWINDOWSに限ることなく、その他Palm OS(登録商標), MacOS(登録商標)やLinux,TRON(登録商標)などでも良い。
機能拡張用カードはPCカードに限ることはなく、実際に設計可能なサイズに応じて異なる規格のカード(例えば、外形サイズがより小型のメモリカードなどに相当するもの)を用いても良い。
また、携帯端末は、機能拡張用カードを直接接続して収容可能な構成であっても良い。
【0084】
振動センサを圧電素子製の加速度センサとしたが、これに限定されるものではなく、要は振動を電気信号に変換するものであれば良い。
ころがり軸受の診断を行うものに限らず、例えばすべり軸受の診断を行うようにしてもよい。
振動センサを機能拡張用カードに2個接続可能に構成し、両者を電動機の前後端側に配置されている2つの軸受に取付けて、振動信号を2チャンネルで取り込むように構成しても良い。斯様に構成すれば、より精密な測定診断を行なうことができる。
PDA17に、音声信号出力手段としてスピーカを設けても良い。また、音声信号出力手段は必要に応じて設ければよい。
第1実施例においてPDA17が行なう診断は簡易診断のみとしても良い。また、簡易診断で求める兆候パラメータは、必要な評価値だけを適宜選択して求めるようにすれば良い。
第1実施例におけるPDA17は、外部との通信を行う機能(通信手段)は必ずしも備えていなくても良い。
また、エンコード・プログラム58をPDA17に搭載し、PDA17に小型のプリンタを接続してQRコード52Nを印刷させても良い。
通信手段は、Bluetoothを使用するものに限らず、その他無線LANやUSB(Universal Serial Bus)などの有線方式であっても良い。
【0085】
情報記録媒体を貼付する箇所は、スタッドの上面に限ることなく、スタッドの側面や回転機の筐体、銘板部分などでも良い。また、必ずしも回転機の筐体部分に貼付する必要はなく、回転機の近傍であれば、例えば、壁面や柱などに貼付しても良い。
スタッドは必要に応じて使用すれば良く、例えば、振動センサをマグネットにより固定するようにしても良い。
2次元コードはQRコード52に限ることなく、その他、マイクロQRコード、PDF417(登録商標),Data Matrix(登録商標),Maxi Code(登録商標)などでも良い。
誘導電動機の軸受診断を行うようにしたが、交流電動機や直流電動機など回転機全般の軸受診断に適用できる。
【0086】
【発明の効果】
本発明の回転機の軸受診断システムによれば、軸受診断装置は、診断対象となる回転機や軸受について必要な情報を、情報読取手段によって情報記録媒体から読取り取得することができるので、従来とは異なり、診断対象機器数が多い場合でもデータの選択を簡単に行うことができる。そして、情報記録媒体は回転機の筐体若しくはその近傍に配置されているので、例えば、複数の診断対象機器が設置されている場所を巡回しながら順次測定を行う場合でも、対象となるデータを容易に正しく選択できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例であり、(a)は軸受診断装置によって電動機の軸受の振動測定を行う状態を示す図、(b)は振動センサ及びスタッドを拡大して示す側面図、(c)はスタッドの平面図
【図2】QRコードに記録される情報の一例を示す図
【図3】PDAの外観を示す図
【図4】PDA及びPCカードの電気的構成を機能ブロック図
【図5】初期設定の作用を示すフローチャート
【図6】診断データファイルの構成図
【図7】振動検出の作用を示すフローチャート
【図8】軸受診断の作用を示すフローチャート
【図9】簡易診断の作用を示すフローチャート
【図10】(a)は識別情報(機器情報)、(b)は簡易診断による解析結果の一例を示す図
【図11】精密診断の作用を示すフローチャート
【図12】振動音出力の作用を示すフローチャート
【図13】今回行った軸受の振動測定並びに診断結果に基づいて、新たなQRコードを生成するためのシステム構成を示す図
【図14】同シーケンス図
【図15】傾向分析処理の一例を示す図
【図16】本発明の第2実施例を示す図1(b),(c)相当図
【図17】本発明の第3実施例を示す図1(b),(c)相当図
【符号の説明】
図面中、1は誘導電動機(回転機)、2はころがり軸受(軸受)、7は回転軸、15は加速度センサ(振動センサ)、17はPDA(携帯端末,軸受診断装置)、18はPCカード(信号変換手段)、22はセンサアンプ(電源回路)22、23はA/D変換器(A/D変換手段)、24はPCカードコントローラ(データ転送手段)、32はメモリ(記憶手段)、34はオペレーティングシステム、35は測定・診断プログラム(診断手段)、45はD/A変換器(D/A変換手段)、46はヘッドフォンジャック(音声信号出力手段)、50はスタッド、52,52Nは QRコード、54は通信用CFカード(通信手段)、55はCCDカメラ(情報読取り手段)、56はカメラ用CFカード、57はパーソナルコンピュータ(情報記録手段)、58はエンコードプログラム(エンコード手段)、59はプリンタ(情報記録手段,印刷手段)、61はバーコード(情報記録媒体)、62はRF−IDタグ(情報記録媒体)、63はリーダ/ライタ用CFカード(情報読取り手段、情報記録手段)を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転機の軸受の振動を検出して軸受の異常を診断する回転機の軸受診断システム、及びその軸受診断システムに使用される回転機の軸受診断装置、又はそのシステムに使用される回転機のスタッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば電動機などの回転機器については、振動や騒音を測定して解析することにより、機器に機械的な異常が発生している否かを診断することが行なわれている。そして、電動機等を用いて構成される生産設備において、生産性の向上を図るためには、予防保全が非常に重要となる。特に、電動機等を構成する軸受けに機械的損傷が発生すると、機器に大きなダメージを与えることになり、設備稼働率を大幅に低下させる場合がある。そこで、軸受については、定期的に上記の診断を行なうことが好ましい。
【0003】
上記の診断は、例えば、振動ピックアップや集音マイクなどを用いて機器に発生する振動を音響的な電気信号に変換して増幅した後、A/D変換してコンピュータに取り込み、その信号波形を解析することで行なっている。
【0004】
また、本発明の発明者らは、振動センサによる測定及び診断に必要とされる機能を、例えばPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯端末に内蔵した構成を提案した(特願2003−73821)。斯様な構成によれば、軸受の振動測定及び診断をより容易に行うことが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、軸受の診断を行なうためには、診断対象機器に関する機構的なデータや、測定、診断を行うために用いる情報が必要である。そして、特願2003−73821で提案した携帯端末においてそのデータを得るには、例えばPDA側に複数の機器に対応するデータを予め内蔵しておき、それらの中から対象となるデータを選択して読み出したり、或いは、通信機能を利用して外部のデーベースサーバにアクセスを行うことで、必要なデータをダウンロードするようにしている。
【0006】
しかしながら、斯様な方式では、診断対象機器数が増加するほどデータの選択が困難となることは明らかである。例えば、複数の診断対象機器が設置されている工場などにおいて、それらを巡回しながら順次測定を行う場合を想定すると、対象となるデータを夫々正しく選択しなければならない。この場合、測定を誤る要因としては作業者が巡回ルートを間違えることも考えられ、本来の順序では正しくデータを選択したとしても、意味がなくなってしまう。
また、上記の例に限らず、一つの診断対象機器に対応するデータを選択する場合でも、データの総数が多くなれば選択が困難となることは言うまでも無い。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、診断対象機器のデータを簡単に選択することが可能となる回転機の軸受診断システム、回転機の軸受診断装置、又はそのシステムに使用される回転機のスタッドを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の回転機の軸受診断システムは、回転機の軸受部分において発生する振動を測定し、診断を行うものであって、
前記測定及び診断に関する情報が空中伝搬信号を用いて読み出し可能な形式で記録され、回転機の筐体若しくはその近傍に配置されている情報記録媒体と、
前記軸受の振動を検出する振動センサと、
前記情報記録媒体に記録されている情報を読取るための情報読取手段と、前記振動センサによって検出された振動データを記憶する記憶手段と、前記情報読取手段によって読み取られた回転機に関する情報と前記振動データとに基づいて軸受の診断を行なう診断手段とを備える軸受診断装置とで構成されることを特徴とする。
【0009】
斯様に構成すれば、軸受診断装置は、診断対象となる回転機や軸受について必要な情報を情報読取手段により読取り取得することができ、従来とは異なり、診断対象機器数が多い場合でもデータの選択を簡単に行うことができる。そして、情報記録媒体は回転機の筐体若しくはその近傍に配置されているので、例えば、複数の診断対象機器が設置されている場所を巡回しながら順次測定を行う場合でも、対象となるデータを容易に正しく選択できる。
尚、ここでの「情報記録媒体」は、記憶内容を保持するためやその記憶内容を読み出すための電源を媒体側に内蔵していないものを言う。
【0010】
この場合、請求項2に記載したように、軸受診断装置を、機能拡張用カードが接続可能に構成される携帯端末を利用して構成し、
前記機能拡張用カードを、
回転機の軸受の振動を検出する振動センサが接続可能であり、
前記携帯端末側より供給される電源に基づいて前記振動センサの駆動用電源を生成する電源回路と、
前記振動センサによって検出された振動信号をデジタルデータに変換するA/D変換手段と、
このA/D変換手段により変換されたデータを前記携帯端末側に転送するためのデータ転送手段とを内蔵して構成し、
前記携帯端末を、
情報読取手段,記憶手段及び診断手段を備え、
前記記憶手段に、前記機能拡張用カード側より転送されたデータを記憶させ、
前記診断手段は、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて軸受の異常を診断するように構成すると良い。
【0011】
斯様に構成すれば、振動センサの駆動アンプに相当する電源回路を携帯端末に接続される機能拡張用カードの内部に配置して、振動センサもその機能拡張用カードに接続されるので、作業者は、非常に小型の携帯端末を持ち歩いて回転機の軸受に発生する振動を容易に測定し、診断まで行うことが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載したように、診断手段を、記憶手段に記憶されたデータを周波数分析処理することにより回転機の実回転数を求め、この実回転数に基づいて軸受の特徴周波数を求め、この特徴周波数と前記周波数分析処理された結果とを比較することに基づいて軸受の異常を診断するように構成すると良い。斯様に構成すれば、回転機の回転軸の実回転数に基づいて軸受の特徴周波数を算出し、この特徴周波数と周波数分析処理された音声信号の周波数成分とを比較して軸受の異常を正確に診断することができる。
【0013】
更に、請求項4に記載したように、軸受診断装置に、記憶手段に記憶されたデータをアナログ信号に変換するためのD/A変換手段と、このD/A変換手段によって変換されたアナログ信号を音声信号として出力するための音声信号出力手段とを備えて構成するのが好ましい。斯様に構成すれば、軸受診断装置を所持する作業者は測定した振動データをその場で音声として聞くことが可能となるので、それによって回転機に異常が発生しているか否かの凡その判断を行なうこともできる。
【0014】
そして、この場合、請求項5に記載したように、記憶手段に記憶されるデータを、ウェーブ形式で記憶されるように構成すると良い。斯様に構成すれば、診断装置がオペレーティングシステムとしてWINDOWS(登録商標)を使用している場合に、そのオペレーティングシステムに準拠した音声データとして取り扱うことができる。従って、その音声データの処理をより容易に行なうことができる。
【0015】
また、以上の場合において、請求項6に記載したように、軸受診断装置において取り扱うデータを、情報記録媒体に記録させるための情報記録手段を備えると良い。斯様に構成すれば、例えば、今回測定を行い診断した結果を、情報記録媒体に記録させることが可能となる。従って、その履歴データを情報記録媒体から読み出すことで、診断結果の傾向分析等を行なうことも可能となる。
【0016】
更に、請求項7に記載したように、情報記録媒体の情報記録形式を2次元コードにすると良い。即ち、2次元コードは限られたスペースに非常に多くの情報を記録することができるので、本発明に好適である。
【0017】
この場合、請求項8に記載したように、軸受診断装置において取り扱うデータを2次元コードにエンコードするエンコード手段と、
このエンコード手段によってエンコードされた2次元コードを媒体に印刷して出力する印刷手段とを備えると良い。斯様に構成すれば、請求項6と同様に、今回測定を行い診断した結果を、情報記録媒体たる2次元コードに記録させることが可能となる。そして、印刷出力された新たな2次元コードを例えば回転機の筐体に貼付し、その2次元コードに記録された履歴データを読み出せば、診断結果の傾向分析等を行なうこともできる。
【0018】
また、請求項9に記載したように、情報記録媒体を、RF(Radio Frequency)−IDタグとしても良い。即ち、RF−IDタグは、電磁結合方式や静電結合方式、或いは電磁誘導方式やマイクロ波方式などによって情報の読み取りが可能である。そして、内部の不揮発性メモリに多くの情報を記録することができるので、本発明に好適である。また、情報の書換えも容易に行うことができる。
【0019】
加えて、請求項10に記載したように、振動センサを機械的に固定するためのスタッドを回転機の筐体側に備え、
情報記録媒体を、前記スタッドに貼付すると良い。即ち、振動センサをスタッドに固定することで、軸受部分において発生する振動を振動センサに確実に伝達することができる。また、測定が毎回同じポイントで行われるので、測定精度を向上させることができる。更に、そのスタッドに情報記録媒体が貼付されるので、情報の読み取りを容易に行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図15を参照して説明する。図1は、軸受診断装置たるPDAによって電動機の軸受の振動測定を行う状態を示すものである。この図1に示すように、電動機(例えば誘導電動機)1の回転軸7の先端部、及び、負荷装置9の回転軸10の先端部には、円柱状の接合板11及び12が固定して装着されており、夫々の接合板11及び12が接合され、図示しないボルトで固定されることによって、電動機1と負荷装置9とが接合されている。
【0021】
また、電動機フレーム13の両端には、回転軸7を支えるためのころがり軸受2が装着されており、このころがり軸受(以下、単に軸受と称す)2は電動機フレーム13のハウジング14内に収容されている。
【0022】
前端側(図1(a)では右方側)の軸受2を収容するハウジング14の外周面の上側部には、スタッド50が配置されており、そのスタッド50には、振動センサたる圧電素子製の加速度センサ15がねじ止めによって固定されている(図1(b)参照)。加速度センサ15は、信号線16の先端部分に配置されるコネクタ51に接続されるようになっており(図3参照)、信号線16は、PDA(Personal Digital Assistants,携帯端末,軸受診断装置)17に接続されるPCカード(機能拡張用カード)18の入力端子に接続されている。
【0023】
尚、図1(a)に示すように、負荷装置9の軸受部分にも同様のスタッド50’を配置し、必要に応じて負荷装置9についても振動測定及び振動を行っても良い。
【0024】
加速度センサ15は、電動機1の回転軸7の回転によって振動を受けると、圧電素子によってその振動をアナログの電気信号(振動信号)に変換し、この電気信号が信号線16を介してPCカード18に出力される(図3参照)。
【0025】
また、図1(c)に示すように、スタッド50の上面側には、QR(Quick Responce)コード(登録商標、2次元コード、情報記録媒体)52が貼付されている。QRコード52には、軸受2の振動測定並びに診断を行うために必要な情報が記録されている。図2には、その情報の一例を示す。情報の大分類としては、「共通情報」、「電動機情報」、「軸受情報」、「演算情報」、「振動結果測定」などがある。
【0026】
「共通情報」は、対象機器の名称や、診断モードなどである。「電動機情報」は、測定対象が交流、直流電動機の何れであるかや、電動機のメーカなどを示す。「軸受情報」、軸受のメーカ名、型式や寸法などである。「演算情報」は、振動測定を行う場合に使用するフィルタのタイプや段数などである。「振動結果測定」は、測定結果として得られる振動のオーバーオール(OA)値、実効(RMS)値、ピーク値、標準偏差値、また、判定を行なうためのパラメータとしてのOA値や、過去の測定データなどからなる。
【0027】
ここで、図3には、PDA17の外観を示す。PDA17は、携帯可能に構成された小型のパーソナルコンピュータ(所謂、モバイルコンピュータ)である。ケースの上面には、LCDなどで表示を行うと共に、ペンタッチ入力も可能に構成される表示入力部19や、簡単な操作を行なうための操作キー20などが配置されている。
【0028】
また、PDA17には、PCMCIA規格(PC card standard)に準拠したPCカード18を中継して接続するためのジャケット21が装着されている。即ち、PDA17は、本体を極力小型に構成する必要があり、PCカード18を直接接続するためのスロットを備えていないものが一般的である。従って、具体的には図示しないが、PDA17側とPCカード18側との双方に対して接続を図るためのコネクタを有するジャケット21を介してPCカード18を接続する。
【0029】
図4には、PDA17及びPCカード18の電気的構成を機能ブロックで示す。PCカード18は、センサアンプ(電源回路)22,A/D変換器(A/D変換手段)23,PCカードコントローラ(データ転送手段)24,CPU25及びメモリ26などを備えて構成されている。CPU25は、A/D変換器23及びPCカードコントローラ24の制御を行うものである。尚、PCカード18に内蔵されるセンサアンプ22の詳細な構成は、特願2003−73821に開示されている。
【0030】
PCカードコントローラ24は、内部のデコーダ27によってCPU25より与えられる制御指令をデコードして動作し、PCカード18とPDA17との間でデータの転送を行なうように構成されるロジックである。また、PCカードコントローラ24は、A/D変換器23より出力されたデータをバッファ28で受けて、PDA17側に転送するようになっている.
尚、図3においては、図示の都合上ジャケット21を介した接続部分は省略しており、PDA17とPCカード18とは、コネクタ29,30を介して接続されるように示している。
【0031】
一方、PDA17側は、CPU31,メモリ(記憶手段)32,ISAバスインターフェイス(I/F)33等を備えて構成されている。ISAバスI/F33は、PCカード18との間におけるバス制御を行うものである。メモリ32には、オペレーティングシステム(OS)34としてWINDOWS CE(登録商標)がインストールされており、そのOS34上で動作するアプリケーションプログラムとして測定・診断プログラム(診断手段)35や、後述するように2次元コードをデコードするためのデコード・プログラム53が記憶されている。
【0032】
測定・診断プログラム35は、PCカード18より転送された振動データを、RIFF WAVE形式で診断データファイル36の一部としてメモリ32に記憶させるようになっている。また、アプリケーションプログラムとしてWINDOWSメディア・プレーヤ(登録商標)37も搭載されており、後述するようにWAVE形式の診断データファイル36に基づいて音声信号の再生出力も可能となっている。
【0033】
尚、音声信号は、D/A変換器(D/A変換手段)45を介してヘッドフォンジャック(音声信号出力手段)46より出力可能に構成されている。即ち、作業者は、ヘッドフォンジャック46に図示しないヘッドフォンを接続することで、出力される音声信号を聞くことができる。
【0034】
更に、PDA17には、ジャケット21を介して例えばBluetoothなどで無線通信を行うための通信用CF(Compact Flash)カード54と、CCDカメラ(情報読取り手段)55を接続するためのカメラ用CFカード56とが接続可能に構成されている。CCDカメラ55は、QRコード52のコードパターンを2次元画像として読み取るためのエリアセンサである。
【0035】
CCDカメラ55によって読取られたコードパターンデータは、カメラ用CFカード56を介してPDA17側に転送される。PDA17は、デコードプログラム53を起動することで、コードパターンデータをデコードし、必要な情報を得るようになっている。
【0036】
次に、本実施例の作用について図5乃至図15を参照して説明する。尚、転がり軸受2の詳細な構造とその異常診断方法の概要については、例えば特開2001−255241などに開示されているのでここでは省略する。また、振動データの測定及び診断の各処理についても、基本的な部分は特願2001−346201に記載されているものと同様である。
【0037】
PDA17において、軸受診断用の測定・診断プログラム35を起動すると、表示入力部19の画面上には、図示はしないがメインメニュー画面が表示される。このメインメニュー画面では、まず、使用する診断データファイル36の設定が行われる。これは、既存のものの中から選択するか、新規作成することにより行われる。続いて、以下の項目が選択可能に表示され、設定された診断データファイル36に対して各項目の処理が実行される。
≪初期設定≫,≪振動検出≫,≪軸受診断≫,≪振動音出力≫,≪QRコード生成≫,≪傾向分析≫
【0038】
尚、以下において診断情報とは、校正情報(原振動信号を校正するための校正用音声信号等)、測定情報(PCカード18内のセンサアンプ22のゲイン設定値,測定場所及び測定日時)、電動機情報(指令周波数,容量及び極数)、及び、識別情報(軸受2のメーカ名及び型式)で構成されているものとする。
【0039】
≪初期設定≫
メインメニュー画面から≪初期設定≫が選択されると、PDA17のCPU31は、図5に示すフローチャートを実行する。CPU31は、先ず、デコードプログラム53を起動する(ステップR1)。そして、CCDカメラ55によってQRコード52を読取り(ステップR2)、情報をデコードすると(ステップR3)、デコードした情報をメモリ32に記憶させる(ステップR4)。
デコードされた情報には、校正情報,測定情報,電動機情報及び識別情報などが含まれる。
【0040】
ここで、図6には、測定データファイル36のデータ領域構造を示す。測定データファイル36のデータ領域は、情報チャンク43とウェーブチャンク44とで形成されている。
【0041】
ウェーブチャンク44は音声用のデータを記録するためのデータ領域であり、記録された音声用のデータは、メディア・プレーヤ37により再生させてヘッドフォンジャック46より音声として出力可能である。そして、PDA17は、原振動信号をこのウェーブチャンク44に記録する。一方、情報チャンク43はユーザが任意のデータを記録可能なデータ領域であり、記録されたデータは、メディア・プレーヤ37等では自動的に読み飛ばされる。そして、PDA17は、診断情報をこの情報チャンク43に記録する。
【0042】
≪振動検出≫
メインメニュー画面から≪振動検出≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない振動検出画面が表示され、軸受2の振動検出が行われる。以下、図7のフローチャートを参照しながら振動検出の作用について説明する。
【0043】
先ず、ステップS1では、サンプリング周波数の設定が行われる。設定されるサンプリング周波数は、例えば50kHz及び25kHzである。続くステップS2では、検出開始操作の入力待ち状態となっている。このとき、作業者が、電動機1の軸受2に加速度センサ15が装着され、且つ、駆動装置(図示せず)に設定された指令周波数に基づき電動機1が定常状態で駆動されていることを確認して検出開始操作を行うと、ステップS3に移行する。
【0044】
ステップS3では、PCカード18において設定されたサンプリング周波数で振動信号のA/D変換が行われ、原振動信号が生成される。そして、続くステップS4では、原振動信号がウェーブ形式データに変換され、診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録される。
【0045】
≪軸受診断≫
メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われる。以下、図8のフローチャートを参照しながら診断の作用について説明する。
【0046】
ステップT1では、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、続くステップT2では、診断情報内の識別情報に基づいて、例えばメモリ32から診断に必要な形状データの読み出しが行われる。
【0047】
次のステップT3では、軸受2の異常を判定するための重力加速度の値(以下、異常判定用重力加速度と称す)がメモリ32より読み出される。続くステップT4では、診断情報内の校正用近似直線データに基づいて原振動信号の1サンプル毎の校正が行われ、校正済振動信号が生成される。校正済振動信号は、作業者の必要に応じて診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録可能である。
【0048】
ステップT5では、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行される。この簡易診断の詳細を、図9のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、校正済振動信号の全サンプル値を1サンプル毎に比較することで重力加速度のピーク値の検出が行われる(ステップU1)。
【0049】
次に、前記全サンプル値について実効値を演算し(ステップU2)、また、その全サンプル値の絶対値の総和にπ/2を乗じてオーバーオール値を演算する(ステップU3)。更に、前記全サンプル値について標準偏差を求めると(ステップU4)、ステップU1で検出したピーク値をステップU2で演算した実効値で除すことによりクレスト・ファクタ(C.F.:Crest Factor)を演算する(ステップU5)。
【0050】
続いて、全サンプル値について遮断周波数1kHzでハイパスフィルタ処理を行なうと(ステップU6)、そのフィルタ処理後のサンプル値についてステップU1〜U5で行なったものと同一の演算を行なう(ステップU7)。即ち、以上に基づく振動成分は、比較的高域において顕著に現われるからである。
【0051】
そして、次のステップU8では異常判定が行なわれる。異常判定は、各ステップU1〜U5及びU7で求めた評価値(これらを兆候パラメータと称す)を、夫々の基準によって判定することで行なう。例えば、ステップU1で検出された校正済振動信号のピーク値については、図8のステップT3で入力された異常判定用重力加速度との比較が行われ、前者が後者よりも大きい場合は軸受2に「異常有り」と判定される。そして、図8のステップT6に移行する。
【0052】
ここで、図10には、(a)識別情報(機器情報)と(b)簡易診断による解析結果の一例(表示入力部19における画面表示例)を示す。即ち、(a)に示す機器情報としては、「点検No.」、「部署名」、「建屋No.」、「枠番」、「回転数」、「軸受メーカ」、「軸受型式」、「コメント」などが表示される。また、(b)に示す解析結果としては、例えば、図9のステップU1〜U5で演算された兆候パラメータが表示される。
【0053】
ステップT6では、簡易診断の結果により軸受2に「異常無し」と判定された場合はステップT8に移行し、「異常有り」と判定された場合はステップT7に移行して精密診断が行われる。この精密診断の詳細を図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0054】
まず、校正済振動信号(ハイパスフィルタ処理されたもの)について、帯域3kHz〜8kHzのバンドパスフィルタ処理を行ない(ステップV0)、続くステップV1では、校正済振動信号の高速フーリエ変換(FFT)処理が行われる。高速フーリエ変換処理は、校正済振動信号の連続した複数点のデータに基づいて行われる。校正済振動信号の周波数成分には、特定の周波数領域で重力加速度の振幅が大きな部分が複数現われる。以下、これらの周波数領域を極大領域と称する。これらの極大領域は、電動機1の実回転速度や、軸受2を構成する部品の特徴周波数、及びこれらの周波数の高調波成分である。
【0055】
続いて、ステップV2では、高速フーリエ変換処理の結果から、電動機1の実回転速度の検出が行われる。具体的には、複数の極大領域の中から、診断情報内の周波数指令の値に最も近い極大領域が検出され、この極大領域の極大値を示す周波数が電動機1の実運転周波数(実回転速度)として検出される。
【0056】
ステップV3では、検出された実回転速度及び図8のステップT2において読み出された形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出される。次のステップV4では、校正済振動信号の高調波ノイズ成分を除去するために校正済振動信号の包絡線処理が行われて、包絡線処理済音声信号が生成される。
【0057】
ステップV5では、包絡線処理済音声信号の高速フーリエ変換処理が行われる。この高速フーリエ変換処理により、低周波領域(例えば10[Hz]〜100[Hz]の周波数領域)に接近して現れる特徴周波数を明確に識別することが可能となる。
【0058】
続いて、ステップV6では、軸受2の特徴周波数と、包絡線処理済音声信号の周波数成分との比較が行われる。まず、包絡線処理済音声信号の周波数成分において、夫々の特徴周波数と一致する周波数での重力加速度の値の検出が行われる。次に、検出された重力加速度値の中で、一番大きな値を示す特徴周波数が検出される。そして、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定される。そして、図8のステップT8に移行する。
【0059】
ステップT8では、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる。また、作業者の必要に応じて、診断結果を診断データファイル36の情報チャンクに記録することも可能である。
【0060】
≪振動音出力≫
メインメニュー画面から≪振動音出力≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない振動音出力画面が表示される。ここでは、診断データファイル36に記録された原振動信号及び校正済振動信号と、校正済振動信号を帯域遮断フィルタ処理することで生成した帯域遮断振動信号を振動音として出力する処理が行われる。以下、図12のフローチャートを参照しながら振動音出力の作用について説明する。
【0061】
ステップW1では、原振動信号、校正済振動信号、又は、帯域遮断振動信号の中から振動音として出力するものの選択が行われる。ここから、夫々の選択に応じてステップW2〜W4に移行する。そして、ステップW2,W3では、原振動信号,校正済振動信号が夫々音声再生処理され、振動音としてヘッドフォンジャック46から出力される。また、ステップW4では、校正済振動信号の高速フーリエ変換処理が行われる。
【0062】
ステップW5では、作業者により、校正済振動信号の帯域遮断フィルタ処理を行うための周波数帯域の設定が行われる。ステップW6では、設定された周波数帯域に基づいて、高速フーリエ変換処理された校正済振動信号の帯域遮断フィルタ処理が行われる。ここでのフィルタ処理は、電動機1の運転に基づいて発生する振動音のレベルを低下させ、異常に基づいて発生する特徴的な振動音を聞き易くするために行なう。
【0063】
ステップW7では、帯域遮断フィルタ処理された校正済振動信号の逆高速フーリエ変換処理が行われ、再び、時間成分の校正済振動信号に変換される。ステップW8では、振動音出力時の音声の連続性を確保するため逆高速フーリエ変換処理された校正済振動信号の窓関数処理が行われ、これによって帯域遮断振動信号が生成される。ステップW9では、メディア・プレーヤ37が起動されることで帯域遮断振動信号が音声再生処理され、振動音としてヘッドフォンジャック46から出力される。
【0064】
≪QRコード生成≫
メインメニュー画面から≪QRコード生成≫が選択されると、新たなQRコードを生成するための処理が行なわれる。図13は、今回行った軸受2の振動測定並びに診断結果に基づいて、新たなQRコードを生成するためのシステム構成を示すもので、図14は、そのシーケンスを示すものである。
【0065】
PDA17は、通信用CFカード54によって外部のパーソナルコンピュータ(情報記録手段)57と通信が可能であり、診断結果データを、QRコード52より読み込んだ履歴データと共にパソコン57側に送信する(▲1▼)。パソコン57には、QRコードのエンコードプログラム(エンコード手段)58がインストールされている。
【0066】
そして、パソコン57は、PDA17より送信されたデータを受信するとエンコードプログラム58を起動し(▲2▼)、そのデータに基づいてQRコードパターンをエンコードして生成する(▲3▼)。それから、エンコードしたデータをプリンタ(情報記録手段,印刷手段)59に送信する(▲4▼)。すると、プリンタ59は、新たなQRコード52Nを例えばシールなどの媒体に印刷する(▲5▼)。
【0067】
印刷された新たなQRコード52Nは、最新の診断結果を含む履歴データを備えるものであり、作業者は、そのQRコード52Nをスタッド50に貼付されているQRコード52に代えて貼付する(▲6▼)。すると、その履歴データは、後述する傾向分析処理に利用される。
【0068】
≪傾向分析≫
傾向分析処理は、QRコード52より読み出されてPDA17のメモリ32に記憶されている履歴データ、及び今回の診断結果データをCPU31が読み出して、図15に示すように、表示入力部19にグラフィック表示させることで行う。即ち、作業者は、その表示を参照することで、診断結果が時系列的にどのような傾向を示しているかを分析することができる。また、PDA17に診断プログラムを備えておき、そのプログラムを起動することで分析を自動的に実行させても良い。尚、図15は、電動機1(RIGHT)と負荷装置9(LEFT)の夫々について、実効値(RMS)及び標準偏差(STD)を、運転時間を横軸にしてプロットしたものである。
【0069】
以上のように本実施例によれば、診断対象となる電動機1や軸受2について必要な情報をQRコード52に記録して、電動機1のハウジング14に配置されているスタッド50に貼付し、PDA17は、QRコード52に記録されている情報をCCDカメラ55により読取って取得し、軸受2の振動測定及び診断を行うようにした。従って、従来とは異なり、診断対象機器数が多い場合でも必要な情報の選択を簡単に行うことができる。
【0070】
そして、QRコード52は、軸受2部分のハウジング14に固定されているスタッド50に貼付されているので情報の読み取りを容易に行うことができ、例えば、複数の診断対象機器が設置されている場所を巡回しながら順次測定を行う場合でも、対象となるデータを容易に正しく選択できる。更に、QRコード52は、限られたスペースに非常に多くの情報を記録することができるので、本発明に好適である。
【0071】
加えて、スタッド50に振動センサ15を機械的に固定したので、軸受2部分において発生する振動を振動センサ15に確実に伝達することができる。また、測定が毎回同じポイントで行われるので、測定精度を向上させることができる。
【0072】
また、PDA17に接続されるPCカード18を、振動センサ15を接続可能とし、PDA17側より供給される電源に基づいて振動センサ15の駆動用電源を生成するセンサアンプ22と、振動センサ15によって検出された振動信号をデジタルデータに変換するA/D変換器23と、このA/D変換器23により変換されたデータをPDA17側に転送するためのPCカードコントローラ24とを内蔵して構成した。
【0073】
そして、PDA17は、PCカード18側より転送されたデータに基づいて兆候パラメータを演算して求めると共に、周波数分析処理して回転機1の実回転数を求めると共に軸受2の特徴周波数を求め、この特徴周波数と周波数分析処理された結果とを比較して軸受2の異常を診断する測定・診断プログラム35を備えて構成した。従って、作業者は、従来構成に比較して非常に小型のPDA17を持ち歩いて回転機1の軸受2に発生する振動を容易に測定し、診断まで行うことが可能となる。
【0074】
更に、PDA17に、メモリ32に記憶されたデータをアナログ信号に変換するためのD/A変換器45と、変換されたアナログ信号を音声信号として出力するためのヘッドホンジャック46とを備えたので、作業者は、測定した振動データをその場で(ヘッドホンを介して)音声として聞くことが可能となるので、それによって回転機1に異常が発生しているか否かの凡その判断を行なうこともできる。
【0075】
また、メモリ32にウェーブ形式でデータを記憶するので、PDA17がOS34としてWINDOWSを使用している場合に、そのOS34に準拠した音声データとして取り扱うことができる。従って、その音声データの処理をより容易に行なうことができる。
【0076】
加えて、機能拡張用カードをPCMCIA規格に準拠したPCカード18としたので、非常に一般的な規格として使用されているPCカード18を利用することができ、PDA17を低コストで構成することが可能となる。
【0077】
更に、PDA17が行った診断結果データを、通信用CFカード54を介してパソコン57に送信し、パソコン57がそのデータをQRコードパターンにエンコードしてプリンタ59に出力させ、新たなQRコード52Nを媒体に印刷して生成するようにした。従って、QRコード52Nに診断結果の履歴データを記憶させることができ、その履歴データをQRコード52Nから読み出すことで、診断結果の傾向分析等を行なうことも可能となる。
【0078】
(第2実施例)
図16は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。第2実施例では、図16(b)に示すように、QRコード52に代えて、スタッド50にバーコード(情報記録媒体)61を貼付するようにしたものである。
【0079】
バーコード61は、QRコード52に比較して記録可能な情報量は少ないが、振動測定及び診断に必要な最低限のデータを選別して記憶させることは可能である。そして、PDA17は、第1実施例と同様にCCDカメラ55を用いてバーコード61を読取ることができるが、この場合、CCDカメラ55に代えて、専用のバーコードリーダを備えるようにしても良い。
以上のように構成された第2実施例によれば、情報記録媒体としてバーコード61を用いるので、第1実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0080】
(第3実施例)
図17は本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。第3実施例では、図17(b)に示すように、QRコード52に代えて、スタッド50にRF−IDタグ(情報記録媒体)62を貼付するようにしたものである。そして、PDA17は、カメラ用CFカード56に代えて、IDタグリーダ/ライタの機能を有するリーダ/ライタ用CFカード(情報読取り手段、情報記録手段)63を備えている。
【0081】
次に、第3実施例の作用について説明する。PDA17は、リーダ/ライタ用CFカード63に内蔵されたアンテナ(図示せず)より電磁結合、静電結合、電磁誘導或いはマイクロ波などの各通信方式に応じた数100kHz〜数GHzの電波信号を送信し、RF−IDタグ62に給電を行なう。すると、RF−IDタグ62は、内部の送受信部及びメモリが動作可能となり、送受信部はメモリに記録されているデータを読み出し、アンテナ(何れも図示せず)を介してPDA17側のリーダ/ライタ用CFカード63に送信する。
また、RF−IDタグ62を用いた場合、PDA17は、リーダ/ライタ用CFカード63により診断結果データを書き込んで記録させることも可能となる。
【0082】
以上のように第3実施例によれば、情報記録媒体に、電波信号等により情報の読み取りが可能なRF−IDタグ62を用いたので、内部の不揮発性メモリに多くの情報を記録することができる。また、情報の書換えも容易に行うことができる。
【0083】
尚、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形、拡張が可能である。
上記実施例では、診断情報を情報チャンクに記録し音声信号をウェーブチャンクに記録するようにして診断データファイル36をウェーブ形式で記録するようにしたが、この機能は必要に応じて設ければよい。また、オペレーティングシステムはWINDOWSに限ることなく、その他Palm OS(登録商標), MacOS(登録商標)やLinux,TRON(登録商標)などでも良い。
機能拡張用カードはPCカードに限ることはなく、実際に設計可能なサイズに応じて異なる規格のカード(例えば、外形サイズがより小型のメモリカードなどに相当するもの)を用いても良い。
また、携帯端末は、機能拡張用カードを直接接続して収容可能な構成であっても良い。
【0084】
振動センサを圧電素子製の加速度センサとしたが、これに限定されるものではなく、要は振動を電気信号に変換するものであれば良い。
ころがり軸受の診断を行うものに限らず、例えばすべり軸受の診断を行うようにしてもよい。
振動センサを機能拡張用カードに2個接続可能に構成し、両者を電動機の前後端側に配置されている2つの軸受に取付けて、振動信号を2チャンネルで取り込むように構成しても良い。斯様に構成すれば、より精密な測定診断を行なうことができる。
PDA17に、音声信号出力手段としてスピーカを設けても良い。また、音声信号出力手段は必要に応じて設ければよい。
第1実施例においてPDA17が行なう診断は簡易診断のみとしても良い。また、簡易診断で求める兆候パラメータは、必要な評価値だけを適宜選択して求めるようにすれば良い。
第1実施例におけるPDA17は、外部との通信を行う機能(通信手段)は必ずしも備えていなくても良い。
また、エンコード・プログラム58をPDA17に搭載し、PDA17に小型のプリンタを接続してQRコード52Nを印刷させても良い。
通信手段は、Bluetoothを使用するものに限らず、その他無線LANやUSB(Universal Serial Bus)などの有線方式であっても良い。
【0085】
情報記録媒体を貼付する箇所は、スタッドの上面に限ることなく、スタッドの側面や回転機の筐体、銘板部分などでも良い。また、必ずしも回転機の筐体部分に貼付する必要はなく、回転機の近傍であれば、例えば、壁面や柱などに貼付しても良い。
スタッドは必要に応じて使用すれば良く、例えば、振動センサをマグネットにより固定するようにしても良い。
2次元コードはQRコード52に限ることなく、その他、マイクロQRコード、PDF417(登録商標),Data Matrix(登録商標),Maxi Code(登録商標)などでも良い。
誘導電動機の軸受診断を行うようにしたが、交流電動機や直流電動機など回転機全般の軸受診断に適用できる。
【0086】
【発明の効果】
本発明の回転機の軸受診断システムによれば、軸受診断装置は、診断対象となる回転機や軸受について必要な情報を、情報読取手段によって情報記録媒体から読取り取得することができるので、従来とは異なり、診断対象機器数が多い場合でもデータの選択を簡単に行うことができる。そして、情報記録媒体は回転機の筐体若しくはその近傍に配置されているので、例えば、複数の診断対象機器が設置されている場所を巡回しながら順次測定を行う場合でも、対象となるデータを容易に正しく選択できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例であり、(a)は軸受診断装置によって電動機の軸受の振動測定を行う状態を示す図、(b)は振動センサ及びスタッドを拡大して示す側面図、(c)はスタッドの平面図
【図2】QRコードに記録される情報の一例を示す図
【図3】PDAの外観を示す図
【図4】PDA及びPCカードの電気的構成を機能ブロック図
【図5】初期設定の作用を示すフローチャート
【図6】診断データファイルの構成図
【図7】振動検出の作用を示すフローチャート
【図8】軸受診断の作用を示すフローチャート
【図9】簡易診断の作用を示すフローチャート
【図10】(a)は識別情報(機器情報)、(b)は簡易診断による解析結果の一例を示す図
【図11】精密診断の作用を示すフローチャート
【図12】振動音出力の作用を示すフローチャート
【図13】今回行った軸受の振動測定並びに診断結果に基づいて、新たなQRコードを生成するためのシステム構成を示す図
【図14】同シーケンス図
【図15】傾向分析処理の一例を示す図
【図16】本発明の第2実施例を示す図1(b),(c)相当図
【図17】本発明の第3実施例を示す図1(b),(c)相当図
【符号の説明】
図面中、1は誘導電動機(回転機)、2はころがり軸受(軸受)、7は回転軸、15は加速度センサ(振動センサ)、17はPDA(携帯端末,軸受診断装置)、18はPCカード(信号変換手段)、22はセンサアンプ(電源回路)22、23はA/D変換器(A/D変換手段)、24はPCカードコントローラ(データ転送手段)、32はメモリ(記憶手段)、34はオペレーティングシステム、35は測定・診断プログラム(診断手段)、45はD/A変換器(D/A変換手段)、46はヘッドフォンジャック(音声信号出力手段)、50はスタッド、52,52Nは QRコード、54は通信用CFカード(通信手段)、55はCCDカメラ(情報読取り手段)、56はカメラ用CFカード、57はパーソナルコンピュータ(情報記録手段)、58はエンコードプログラム(エンコード手段)、59はプリンタ(情報記録手段,印刷手段)、61はバーコード(情報記録媒体)、62はRF−IDタグ(情報記録媒体)、63はリーダ/ライタ用CFカード(情報読取り手段、情報記録手段)を示す。
Claims (12)
- 回転機の軸受部分において発生する振動を測定し、診断を行う回転機の軸受診断システムであって、
前記測定及び診断に関する情報が空中伝搬信号を用いて読み出し可能な形式で記録され、回転機の筐体若しくはその近傍に配置される情報記録媒体と、
前記軸受の振動を検出する振動センサと、
前記情報記録媒体に記録されている情報を読取るための情報読取手段と、前記振動センサによって検出された振動データを記憶する記憶手段と、前記情報読取手段によって読み取られた回転機に関する情報と前記振動データとに基づいて軸受の診断を行なう診断手段とを備える軸受診断装置とで構成されることを特徴とする回転機の軸受診断システム。 - 軸受診断装置は、機能拡張用カードが接続可能に構成される携帯端末を利用して構成され、
前記機能拡張用カードは、
回転機の軸受の振動を検出する振動センサが接続可能であり、
前記携帯端末側より供給される電源に基づいて前記振動センサの駆動用電源を生成する電源回路と、
前記振動センサによって検出された振動信号をデジタルデータに変換するA/D変換手段と、
このA/D変換手段により変換されたデータを前記携帯端末側に転送するためのデータ転送手段とを内蔵して構成され、
前記携帯端末は、
情報読取手段,記憶手段及び診断手段を備え、
前記記憶手段に、前記機能拡張用カード側より転送されたデータを記憶させ、
前記診断手段は、前記記憶手段に記憶されたデータに基づいて軸受の異常を診断することを特徴とする請求項1記載の回転機の軸受診断システム。 - 診断手段は、記憶手段に記憶されたデータを周波数分析処理することにより回転機の実回転数を求め、この実回転数に基づいて軸受の特徴周波数を求め、この特徴周波数と前記周波数分析処理された結果とを比較することに基づいて軸受の異常を診断することを特徴とする請求項1または2記載の回転機の軸受診断システム。
- 軸受診断装置において取り扱うデータを、情報記録媒体に記録させるための情報記録手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の回転機の軸受診断システム。
- 軸受診断装置は、記憶手段に記憶されたデータをアナログ信号に変換するためのD/A変換手段と、このD/A変換手段によって変換されたアナログ信号を音声信号として出力するための音声信号出力手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の回転機の軸受診断システム。
- 記憶手段に記憶されるデータは、ウェーブ形式で記憶されるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の回転機の軸受診断システム。
- 情報記録媒体の情報記録形式は、2次元コードであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の回転機の軸受診断システム。
- 軸受診断装置において取り扱うデータを2次元コードにエンコードするエンコード手段と、
このエンコード手段によってエンコードされた2次元コードを媒体に印刷して出力する印刷手段とを備えることを特徴とする請求項7記載の回転機の軸受診断システム。 - 情報記録媒体は、RF−IDタグであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の回転機の軸受診断システム。
- 振動センサを機械的に固定するためのスタッドを回転機の筐体側に備え、
情報記録媒体は、前記スタッドに貼付されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の回転機の軸受診断システム。 - 請求項1乃至10の何れかに記載の回転機の軸受診断システムに使用されることを特徴とする回転機の軸受診断装置。
- 請求項10記載の回転機の軸受診断システムに使用されることを特徴とする回転機のスタッド。
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