JP2004300237A - 水産資源利用土壌改良資材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭酸カルシウムとこれを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む水産資源1を、炭酸カルシウムの有機基質からの分離を可能とする程度に有機基質の変質をもたらす焼成条件で焼成して焼成処理物2を得る焼成処理工程P1と、焼成処理工程P1により得られた焼成処理物2中の炭酸カルシウムの分離を行うための粉末化処理工程P2とを経て、水産資源利用土壌改良資材3を得る。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水産資源利用土壌改良資材およびその製造方法に係り、特に、貝殻に含まれる炭酸カルシウム分を高度に利用することのできる、速効性の水産資源利用土壌改良資材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、炭酸カルシウム資材は鉱物資源である石灰石から大量に生産され、その粉末化処理法や利用法の確立、および機能解析・研究が早くからなされ、農業用資材や工業用資材として広く社会生活全般に普及し利用されている。一方、生物資源である貝殻は主成分が炭酸カルシウムであり、利用の確立している石灰石と比べて炭酸カルシウムを高濃度に含有し、しかも不純物が少ないという利点を有し、現在の主要資源である石灰石よりも優れた点を有している。このため、貝殻からの炭酸カルシウム(以下、「貝殻炭酸カルシウム」という。)の分離・製造が従来からなされているが、通常は、生貝殻の状態でこれを直接微粉末化処理することにより製造がなされており、かかる処理により製造された貝殻微粉末が、農業用資材、特に緩やかな肥効を有する酸性土壌改良用の資材として使用されている。
【0003】
貝殻による酸性土壌改良は、従来から行われている方法であるが、近年さらに改良を加えた方法が特許出願等により提案されている。そのうち、特開2000−26182号公報に開示された「元肥用石灰資材」では、溶けにくい農業用石灰資材のカルシウム成分を溶け易くすることにより、従来大量に施用してきた農業用石灰資材を少量の施用でカルシウム成分を補えるようにすることを目的として、貝殻等から由来する農業用石灰資材を主成分とし、それにクエン酸などの食用有機酸を配合してなる構成によって、土壌中で生石灰化する石灰資材が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、特開2002−125582号公報に開示された「かき殻などの加工方法」では、肥料や土壌改良剤とするためのかき殻類の加工処理を容易に行うこと、および仕上がりを良くすることを目的に、かき殻類を、加湿雰囲気または乾燥雰囲気において、120〜150℃の温度で、2気圧以上に所定時間加圧した後、5秒以上かけて大気圧まで減圧し、その後粉砕する方法を提案している。それによれば、加圧および加熱処理によりかき殻類が軟らかくなり、容易に粉砕でき、粉末は鋭利な角を有することがなく仕上がりが良好で、取り扱いに際しても安全である、としている(特許文献2)。
【0005】
酸性土壌改良のための石灰資材には、アルカリ分が強い生石灰(CaO)や消石灰(CaOH2)、アルカリ分がそれほど強くない炭酸カルシウム(CaCO3)や苦土石灰(Mgを含む。)、および、上述のように炭酸カルシウムを豊富に含みながらその利用が充分になされていない粉末状貝殻がある。上記特許文献1は、粉末状貝殻の生石灰化における高溶出技術、特許文献2は、粉末状貝殻の粉砕容易化技術であるといえる。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−26182号公報「元肥用石灰資材」。特許請求の範囲、請求項1〜3。発明の詳細な説明、段落0004〜0009(発明が解決しようとする課題〜発明の実施の形態)、段落0014〜0021(実施例、表1〜3)。
【特許文献2】
特開2002−125582号公報「かき殻などの加工方法」。特許請求の範囲、請求項1〜3。発明の詳細な説明、段落0003〜0009(発明が解決しようとする課題〜発明の実施の形態)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
さて、現在土壌改良剤として使用する石灰石炭酸カルシウム資材は、植物根に影響を与えない特徴をもっているが、土壌中の有機物と相互分解反応し土壌改良が実現するには40日以上の時間経過を必要とするといわれている。したがって、石灰による障害の危険性はほとんどないものの、土壌改良効果が緩やかであるという欠点がある。一方、畑作の土壌改良に日常的に使用されている水酸化カルシウム(消石灰)の場合、アルカリ分が強いために散布量は少なくて済むが、その強アルカリ性のため散布してから1週間、場合によっては2〜3週間にもわたって、種まきや苗移植などの圃場作業ができない、という欠点がある。
【0008】
青森県をはじめ東北、北海道などのように、冬季間の積雪・低温によって年間の圃場作業可能日数が制限されている寒冷地や高冷地の圃場にとっては、かかる石灰散布から酸性土壌改良達成までにかかる日数を、できる限り短縮することが求められている。そのためには、従来技術で述べたような粉末状貝殻の生石灰化における高溶出技術や粉砕容易化技術といったアプローチではなく、植物の根に対する障害の問題が少ない炭酸カルシウムを用いて土壌改良効果を早める技術の提供が効果的である。上述のとおり貝殻には、石灰石よりも多く炭酸カルシウムが含有されているため、貝殻炭酸カルシウムを、土壌効果の早い石灰資材とする技術があればよい。
【0009】
しかし貝殻炭酸カルシウムは、貝殻の組成物質の一つである貝殻有機基質の中に超微粒子状で存在しており、その大きさはおよそ数百nm〜数μmレベルである。したがって、石灰石と同じ処理法を生貝殻粉末化処理に適用して製造される従来の粉末状貝殻資材の場合、ほとんどの炭酸カルシウムは難分解性、難溶解性の貝殻有機基質の中に閉じ込められたままの状態であり、かかる状態のままで土壌散布がなされることになる。貝殻有機基質は土壌中でほとんど溶解も分解もしないため、微粉末化処理過程でたまたま貝殻有機基質の構造中から飛び出した少量の炭酸カルシウムが、土壌改良の作用をなし得るのみである。これが、貝殻の農業用土壌改良資材(粉末状貝殻)としての活用・評価が低い根本的な要因であり、かつその利用が進まない大きな原因である。すなわち、従来の方法によっては、圃場作業可能日数の拡大をもたらすような、貝殻炭酸カルシウムによる速効性の土壌改良資材を得ることはできない。
【0010】
本発明の課題はかかる従来技術の欠点を克服し、貝殻等水産資源を利用して、速効性の酸性土壌改良資材たる、水産資源利用土壌改良資材およびその製造方法を提供することである。さらにそのために本発明の課題は、貝殻炭酸カルシウムを高度に利用することのできる、水産資源利用土壌改良資材の製造方法を提供することである。また、植物体の根などへの障害がなく、散布した当日からでも播種が可能となるような水産資源利用土壌改良資材を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は上記課題につき鋭意検討し、その解決手段に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1)炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む水産資源を、炭酸カルシウムの有機基質からの分離を可能とする程度に有機基質の変質をもたらす焼成条件で焼成する焼成処理工程と、該焼成処理工程により得られた焼成処理物中の炭酸カルシウムの分離を行うための粉末化処理工程と、を経ることによって、炭酸カルシウムが有機基質から分離された状態で存在する水産資源利用土壌改良資材を得ることのできる、水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0012】
(2) 前記水産資源が、ホタテ、カキ、シジミ等貝類の貝殻であることを特徴とする、(1)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0013】
(3) 前記焼成処理工程が、前記有機基質を炭化し得る焼成条件で行われ、該工程により、未分解の炭酸カルシウムおよび炭化した有機基質を組成とする焼成処理物を得ることができることを特徴とする、(1)または(2)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0014】
(4) 前記焼成条件が、焼成温度560℃以上740℃以下、焼成時間3分以上25分以下、であることを特徴とする、(3)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0015】
(5) 前記焼成条件が、焼成温度600℃以上700℃以下、焼成時間5分以上20分以下、であることを特徴とする、(3)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0016】
(6) 前記焼成処理工程が、前記有機基質を灰化し得る焼成条件で行われ、該工程により、未分解の炭酸カルシウムおよび灰化した有機基質を組成とする焼成処理物を得ることができることを特徴とする、(1)または(2)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0017】
(7) 前記焼成条件が、焼成温度720℃以上900℃以下、焼成時間25分以上45分以下、であることを特徴とする、(6)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0018】
(8) 前記焼成条件が、焼成温度750℃以上850℃以下、焼成時間25分以上45分以下、であることを特徴とする、(6)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0019】
(9) 前記焼成条件が、焼成温度770℃以上830℃以下、焼成時間25分以上45分以下、であることを特徴とする、(6)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0020】
(10) 前記焼成条件が、前記焼成処理工程において生成する酸化カルシウムを分解することのできる燃料および焼成炉を用いるものであることを特徴とする、(6)ないし(9)のいずれかに記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0021】
(11) 前記燃料が天然ガスであり、前記焼成炉が輻射熱型焼成炉であることを特徴とする、(10)に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0022】
(12) 前記粉末化処理工程は、前記焼成処理物を機械的に破砕処理し、得られた破砕処理物を60メッシュ(250μm)ないし80メッシュ(177μm)の網篩を通す工程であることを特徴とする、(1)ないし(11)のいずれかに記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
【0023】
(13) 炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む、ホタテ、カキ、シジミ等の貝類の貝殻を原料とし、これを焼成処理することによって得られる、炭酸カルシウム含量が98重量%以上、アルカリ分が50%以上60%以下であることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
【0024】
(14) (2)ないし(12)のいずれかに記載の製造方法を用いて得られ、炭酸カルシウム含量が98%以上、アルカリ分が50%以上60%以下であることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
【0025】
(15) 炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む、ホタテ、カキ、シジミ等の貝類の貝殻を原料としこれを焼成処理して得られる水産資源利用土壌改良資材であって、粒径250μm以下の粒子が全体の90重量%以上100重量%以下を占めることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
【0026】
(16) (2)ないし(12)のいずれかに記載の製造方法を用いて得られ、粒径250μm以下の粒子が全体の90重量%以上100重量%以下を占めることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
【0027】
すなわち本願は、酸性土壌改良用として植物の根に障害を与えない石灰資材である炭酸カルシウムが、水産資源たる貝殻中に高濃度に含まれながらも従来はこれを充分利用できなかったことに着目して、これを高度に利用し得る技術を提供し、併せて、植物の根に対する障害の危険がなく、かつ速効性を有する酸性土壌改良資材およびその製造技術をも提供するものである。
【0028】
本願はまた、貝殻炭酸カルシウムの超微粒子性により発揮される、従来の石灰石由来の炭酸カルシウムとは顕著に相違した有利な機能・性能に基づく、新規かつ有用な土壌改良資材を提供し、その利用・活用法および利便性を明らかにするものである。
【0029】
本願においては、本発明の水産資源利用土壌改良資材の原料となる水産資源として、貝殻を特に取り上げて説明するが、本発明はこれに限定されるのではなく、炭酸カルシウムを相当量含有し、本発明の製造法を適用できる公知の資源であれば、すべて本発明に係る原料である水産資源に該当する。たとえば、ウニ殻、魚の骨なども該当し、また、貝では、ホタテ、カキ、シジミ、その他の貝がすべて該当する。また、本発明水産資源利用土壌改良資材は、酸性土壌改良のための炭酸カルシウム剤としての機能を有するため、「土壌改良剤」の語を、説明中にて適宜使用する。
【0030】
貝殻を組成している炭酸カルシウム(炭酸カルシウムを成分として構成されている物質のことをいう。以下も適宜、この意で使用する。)は難分解、難溶解性で硬質の貝殻有機基質に包み込まれている。この貝殻有機基質を壁にして隣の炭酸カルシウムが存在している。ちょうどコンクリートブロックのコンクリートの部分が貝殻有機基質、ブロックの空隙の部分に超微粒子状炭酸カルシウムが隠れている。これら二つの貝殻組成物質「炭酸カルシウム」と「貝殻有機基質」は加熱焼成温度に対する変質反応が全く異なっている。炭酸カルシウムは900℃を越えると分解して二酸化炭素が抜け、酸化カルシウムが生成することが知られている。一方、貝殻有機基質は560℃で炭化が始まり、700℃を越えると徐々に灰化が始まる。この様な焼成温度に対する変質反応の違いに着目し、貝殻有機基質を炭化、または灰化焼成処理することによって、貝殻有機基質と炭酸カルシウムとの分離が可能な状態にする。また、貝殻有機基質は炭化および灰化焼成処理を経ることによって軟質性を帯びるため、分離抽出の微粉末化処理が一層容易になる。
【0031】
焼成貝殻の微粉末化処理は機械的に行って、炭酸カルシウムと貝殻有機基質との分離抽出を実現する。特に、貝殻有機基質をすべて焼成灰化処理することによってその硬質性は完全に劣化し、特段の処理を施さなくても自然環境下で微粉末化に進行する性質がある。貝殻の粉末粒状レベルは、圃場における土壌改良効果の迅速性の確保、および散布作業における農業用資材としての実用性を考慮して、60メッシュ(250μm)〜80メッシュ(177μm)の網篩いを通したレベルとすることが望ましい。
【0032】
上述のように、土壌改良剤として中心的に用いられている石灰石炭酸カルシウム資材は、植物根に影響を与えない特徴をもっているが、土壌改良効果が得られるには40日以上の時間経過が必要であり、また、水酸化カルシウム(消石灰)の場合は散布後1週間もしくはそれ以上の期間種まきや苗移植などの圃場作業が出来ない。ところが、本発明により貝殻有機基質を炭化または灰化処理した貝殻炭酸カルシウムは、植物根への影響なしに速効性の土壌改良が可能であるため、従来のように長期の畑作休止期間が発生することがない。
【0033】
このような本発明の有利な効果が得られるのは、散布後、土壌中において、超微粒子状となった貝殻炭酸カルシウム(以下、「超微粒子状貝殻炭酸カルシウム」ともいう。)と有機物との相互分解反応が速やかに進行し、植物根に害を与えずに土壌改良が速やかに実現するからであると考えられる。したがって、土壌に散布混合した翌日にはもう既に、土壌改良効果が大きく現れ、かつ植物根を傷めない特質を本来備えているため、種まきや苗移植等の農作業を行うことができる。このように貝殻炭酸カルシウムは、散布後の畑作作業制限が発生しないため、圃場利用日数の拡大が確保され、寒冷地や高冷地の圃場にとって畑作作業期間延長効果が極めて大きい土壌改良剤である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明に係る水産資源利用土壌改良資材の製造方法の構成を示すフロー図である。図において本製造方法は、炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む水産資源1を、炭酸カルシウムの有機基質からの分離を可能とする程度に有機基質の変質をもたらす焼成条件で焼成して焼成処理物2を得る焼成処理工程P1と、該焼成処理工程P1により得られた焼成処理物2中の炭酸カルシウムの分離を行うための粉末化処理工程P2と、から構成され、各工程を経ることによって最終的に、炭酸カルシウムが有機基質から分離された状態で存在する水産資源利用土壌改良資材3を得ることができる(請求項1)。本製造方法が処理対象(原料)とする水産資源の例としては、ホタテ、カキ、シジミ等貝類の貝殻が挙げられる(請求項2)。
【0035】
【作用】
図1において本製造方法は上述のように構成されているため、炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む水産資源1は、焼成処理工程P1において、適宜条件での焼成処理がなされて炭酸カルシウムの有機基質からの分離を可能とする程度の変質が生じた焼成処理物2が得られ、ついで粉末化処理工程P2において、該焼成処理工程P1により得られた焼成処理物2は粉末化処理がなされて、中の炭酸カルシウムの分離が行われ、最終的に、炭酸カルシウムが有機基質から分離された状態で存在する水産資源利用土壌改良資材3が得られる。
【0036】
図2は、本発明に係る水産資源利用土壌改良資材の製造方法であって、炭化工程を含む構成を示すフロー図である。図において本製造方法は、図1に示したフローにおいて、前記焼成処理工程(図1のP1)を、前記有機基質を炭化し得る焼成条件で行われる炭化処理工程P31とする構成である。該工程P31により、未分解の炭酸カルシウムおよび炭化した有機基質を組成とする焼成処理物32を得ることができ、最終的に、炭酸カルシウムが有機基質から分離された状態で存在する水産資源利用土壌改良資材3が得られる。(請求項3)。
【0037】
図において前記焼成条件は、望ましくは、焼成温度560℃以上740℃以下で焼成時間3分以上25分以下(請求項4)、より望ましくは、焼成温度600℃以上700℃以下で焼成時間5分以上20分以下(請求項5)とすることができる。かかる条件設定によって、包み込まれた炭酸カルシウムを分離するための貝殻有機基質の炭化を行うことができる。
【0038】
炭化処理工程P31について、より詳細に説明する。
貝殻の組成物質は「炭酸カルシウム」と「貝殻有機基質」である。貝殻の炭酸カルシウムの含有量は90〜92%、貝殻有機基質は10%以下といわれている。本工程P31では、貝殻有機基質に包み込まれた微小炭酸カルシウムを分離抽出しやすくするために貝殻有機基質を炭化焼成する。炭化焼成温度は、望ましくは、焼成温度560℃以上740℃以下で焼成時間3分以上25分以下、より望ましくは、焼成温度600℃以上700℃以下で焼成時間5分以上20分以下加熱処理する。炭酸カルシウムは、900℃以上で加熱すると二酸化炭素(CO2)が分離して、酸化カルシウム (CaO 生石灰)が生成してしまう。したがって上記温度条件下では酸化カルシウムの生成は抑制され、貝殻炭酸カルシウムはほとんど保持されている。しかも、本炭化処理工程P31によって、破砕を困難にしていた貝殻有機基質の硬度は大幅に低下する。すっかり柔軟性を帯びた貝殻有機基質の炭化部位は、その粉砕と粉末処理が一層容易になり、後工程である粉末化処理工程P32における炭酸カルシウムの分離抽出を容易なものとすることができる。
【0039】
図3は、本発明に係る水産資源利用土壌改良資材の製造方法であって、灰化工程を含む構成を示すフロー図である。図において本製造方法は、図1に示したフローにおいて、前記焼成処理工程(図1のP1)を、前記有機基質を灰化し得る焼成条件で行われる灰化処理工程P61とする構成である。該工程P61により、未分解の炭酸カルシウムおよび灰化した有機基質を組成とする焼成処理物62を得ることができ、最終的に、炭酸カルシウムが有機基質から分離された状態で存在する水産資源利用土壌改良資材63が得られる。(請求項6)。
【0040】
図において前記焼成条件は、焼成温度720℃以上900℃以下で焼成時間25分以上45分以下(請求項7)、望ましくは、焼成温度750℃以上850℃以下で焼成時間25分以上45分以下(請求項8)、より望ましくは、焼成温度770℃以上830℃以下で焼成時間25分以上45分以下(請求項9)とすることができる。かかる条件設定によって、包み込まれた炭酸カルシウムを分離するための貝殻有機基質の灰化を行うことができる。
【0041】
灰化処理工程P61について、より詳細に説明する。
貝殻組成物質「炭酸カルシウム」と「貝殻有機基質」の分離状態をより確実に、より大きくするため、本工程P61において、貝殻有機基質を炭化焼成状態からさらに焼成温度を上げた状態の灰化状態に変質させる。灰化した貝殻有機基質は硬質性が完全に劣化した状態となる。灰化貝殻は特段の処理を施さなくても、焼成炉外の自然環境下で破砕し、やがて微粉末化へ進行する特質がある。
【0042】
炭酸カルシウム状態を保持して貝殻有機基質を灰化させるため、焼成温度は、おおむね800℃前後を保って30〜35分間焼成する。この場合、灰化レベルは98%以上である。しかし、微粒子炭酸カルシウムの一部から二酸化炭素(CO2)が抜けて酸化カルシウム(CaO)が生成する可能性がある。これを避けるため、本発明の灰化処理工程P61では、天然ガス燃料を使用する輻射熱型焼成炉を用いることが望ましい(請求項10、11)。この焼成炉は、燃焼炎が直接貝殻に当たらない特徴を備えている。また、天然ガスの燃焼反応では、空気中の酸素との反応により熱エネルギー、二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)が発生する。このような天然ガス燃焼特性と輻射熱型焼成炉の特長を最大限活用する。
【0043】
すなわち、熱エネルギーは輻射熱型焼成炉で炉内加熱エネルギーとして、生成水蒸気は、本工程P61において焼成炉内で生成した酸化カルシウムと再結合反応させて、酸化カルシウム(CaO)を水酸化カルシウム(CaOH2)に転換させる。このように貝殻有機基質の灰化処理を天然ガス燃料使用の輻射熱型焼成炉で行うことによって、加熱処理過程で生成する酸化カルシウム成分を、燃焼特性を利用した化学反応によって、分解除去することができる。
【0044】
灰化した貝殻有機基質は構造が劣化しているため、特段の処理を施さなくても自然環境下で時間経過とともに微粉末化し、後工程である粉末化処理工程P62において、炭酸カルシウムと貝殻有機基質の分離抽出が簡単確実に得られる。なお、高温加熱による副産物である酸化カルシウムが転換してなる水酸化カルシウムの生成量は、貝殻有機基質がほぼ完全に灰化処理された場合、16〜18重量%である。
【0045】
図1、2および3において、それぞれの粉末化処理工程P2、P32およびP62は、前記焼成処理物を機械的に破砕処理し、得られた破砕処理物を60メッシュ(250μm)ないし80メッシュ(177μm)の網篩を通す工程とすることができる(請求項12)。
【0046】
粉末化処理工程P2、P32およびP62について、より詳細に説明する。
図2の炭化処理工程P31を経た場合、微粒子状炭酸カルシウムを貝殻有機基質の中から確実に取り出すため、炭化処理した貝殻は機械的な粉末化処理を行う。貝殻有機基質が炭化されると、その難破砕性が解消し、軟質性を帯びた貝殻は微粉末化処理が容易となる。微粉末は60メッシュ(250μm)〜80メッシュ(177μm)の網篩を通す。これにより得られる粒子状レベルで、貝殻炭酸カルシウムは充分表面に露出した状態となっており、土壌改良機能が充分に発揮される。しかも、風の影響を受けやすい圃場であっても、従来同様の実用性をもって散布作業が可能である。
【0047】
図3の炭化処理工程P61を経た場合、貝殻有機基質は完全に灰化処理されて、貝殻の硬質性は失われている。構造が劣化した貝殻有機基質は、焼成炉の外部の自然環境下で、特段の処理を施さなくても、まず貝殻に自然に亀裂が生じる。これが全体に広がり貝殻の構造の分解が進み、やがて粉末化、そして約1ヶ月も経過すると、全体量の95%前後が60メッシュの網篩を通る程度にまで粉末化が進行する。しかし、炭酸カルシウムの分離抽出を確実にするため機械的な粉末化処理をすることが、より望ましい。本工程P61でも、図2のP31と同様に、微粉末は60メッシュ(250μm)〜80メッシュ(177μm)の網篩を通す。圃場での散布作業時は、炭化処理をした微粉末炭酸カルシウムと同様な取り扱いが可能である。土壌改良機能面でも炭化処理の資材と同等であり、散布量は少なく抑えることができる。
【0048】
以上説明した本発明の製造方法を経ることによって、ホタテ、カキ、シジミ等の貝類の貝殻を原料として、炭酸カルシウム含量が98重量%以上、アルカリ分が50重量%以上60重量%以下である特徴を有する、水産資源利用土壌改良資材を得ることができる(請求項13、14)。また、同じく、ホタテ、カキ、シジミ等の貝類の貝殻を原料として、粒径250μm以下の粒子が全体の90重量%以上100重量%以下である特徴を有する、水産資源利用土壌改良資材を得ることができる(請求項15、16)。
【0049】
貝殻有機基質を炭化または灰化処理して得られる炭酸カルシウムは、ともに同じ取り扱いが可能である。圃場散布後、超微粒子の貝殻炭酸カルシウムは土壌中の有機物との速やかな相互分解作用で自らも分解を始める。有機物分解による土壌肥沃化と、炭酸カルシウムの分解による土壌改良が同時進行する。この速効性が、生物資源たる貝殻が有する超微粒子炭酸カルシウムの最大の特徴である。
【0050】
また、炭酸カルシウムは植物根を傷めない特長を有することが知られている。それは、生石灰(CaO)のように土壌中で発熱を伴わないことや、消石灰(CaOH2)のような急激なイオン交換作用がないためである。炭化または灰化処理した貝殻炭酸カルシウムは、圃場散布したその日のうちに種まきや苗移植ができる。これが、本発明の水産資源利用土壌改良資材である超微粒子貝殻炭酸カルシウムの有する、最大の利点である。
【0051】
石灰石から生産される炭酸カルシウム公定規格は1.7mmの網篩いを全通し、かつ600μm(30メッシュ)の網篩いを85%以上通過することと規定されている。この炭酸カルシウムは土壌散布して40日以上の時間経過してから土壌改良が得られる。貝殻炭酸カルシウム粒子と比べると、約1000倍余りもの大きさを有する。公定規格による石灰石炭酸カルシウムにおいては、土壌散布して数ヶ月後であっても、分解されずに土壌中に残った粒子が目視確認されることがある。しかし、本発明の水産資源利用土壌改良資材に係る貝殻炭酸カルシウムは、上記公定規格の1000分の1サイズの超微粒子であり、かかる未利用状態を顕著に低減することができる。特に灰化処理を経る本発明製造方法は、微粒子炭酸カルシウムを抽出する効果が高い。
【0052】
炭化または灰化処理した貝殻炭酸カルシウム微粉末は、畑作農作業に制約を与えない。東北、北海道などの寒冷地や高冷地では畑地耕作期間が冬期という季節要因で限定されるが、このような地域にとって耕作期間拡大、耕地活用期間延長効果をもたらすことができる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の実施例を述べるが、本発明の水産資源利用土壌改良資材およびその製造方法が、これらに限定されないことはいうまでもない。
<実施例1 貝殻の炭化処理>
貝殻有機基質に包み込まれた微小炭酸カルシウムを分離抽出するため貝殻有機基質を炭化焼成処理試験を行った。用いた貝殻はホタテ貝殻、焼成炉はスーパーキルンPSK型(日本キルン株式会社製)、炭化焼成温度は酸化カルシウム生成を防ぐため600℃〜700℃で20分〜5分間とした(炭酸カルシウム(CaCO3)は900℃以上で加熱すると二酸化炭素(CO2)が分離し酸化カルシウム(CaO)が生成することが知られている。)。得られた焼成処理物の試験成績は以下のとおりである。
炭酸カルシウム 98.43%
アルカリ分 54.42%
pH 10.2 (検定機関 日本肥糧検定協会)
【0054】
貝殻の組成物質は「炭酸カルシウム」と「貝殻有機基質」である。貝殻の炭酸カルシウムの含有量は90〜92%、貝殻有機基質は10%以下といわれている。したがって本発明に係る炭化処理では、貝殻炭酸カルシウムはほぼ保持されていることが示された。しかも、この炭化処理で破砕を困難にしていた貝殻有機基質の硬度は大幅に低下する。すっかり柔軟性を帯びた貝殻有機基質の炭化部位は粉砕と粉末処理が一層容易な状態となっており、炭酸カルシウムの分離抽出が充分可能な状態であった。
【0055】
<実施例2 貝殻の灰化処理>
貝殻組成物質である「炭酸カルシウム」と「貝殻有機基質」の分離状態をより大きく、確実にするため、貝殻有機基質を炭化焼成状態からさらに焼成温度を上げた灰化状態へ変質させる、灰化処理試験を行った。用いた貝殻はホタテ貝殻、焼成炉は実施例1と同じもの、灰化焼成条件は、炭酸カルシウムを保持して貝殻有機基質を灰化させるため、800℃前後を保って30〜35分間とした。また、高温により一部生成する酸化カルシウム(CaO)を水酸化カルシウム(Ca(OH)2)に転換させるため、天然ガス燃料を使用し、輻射熱型の焼成にて行った。 得られた焼成処理物の試験成績は以下のとおりである。
炭酸カルシウム 73.91%
アルカリ分 61.03%
pH 12.1 (検定機関 日本肥糧検定協会)
【0056】
灰化レベルは98%以上であった。灰化した貝殻有機基質は硬質性が完全に損なわれ、構造が劣化しており、灰化貝殻は焼成炉外の自然環境下で自然に破砕し、やがて微粉末化へ進行する状態であった。したがって、炭酸カルシウムと貝殻有機基質の分離抽出が簡単確実に得られる状態であった。また水酸化カルシウム生成量は、貝殻有機基質がほぼ完全に灰化処理された場合、16〜18重量%であった。
【0057】
以上の、炭化および灰化の各焼成処理試験における、貝殻変質状況の観察および破砕性の評価を、表1にまとめる。
【0058】
【表1】
【0059】
<実施例3 炭化処理貝殻による土壌改良剤の土壌改良性能試験>
炭化処理貝殻による土壌改良剤(以下「炭化貝殻炭酸カルシウム」という。)の酸性土壌改良効果を試験した。試験の仕様は以下のとおりである。以下、原料の貝殻は、特にことわりのない限り、ホタテ貝である。
試料の調製方法:下記のとおり、土壌と炭化貝殻炭酸カルシウムを混合した。
試料a:赤土(平地)+炭化貝殻炭酸カルシウム2g
試料b:赤土(平地)+炭化貝殻炭酸カルシウム2g+醗酵鶏糞200g
試料c:赤土(山新土)+炭化貝殻炭酸カルシウム2g+醗酵鶏糞200g
試料d:黒土(畑)+炭化貝殻炭酸カルシウム2g+醗酵鶏糞200g
試験用容器:ミニプランター 0.13m×0.26m×0.10m (容積0.0338m3)
赤土採取地:青森県青森市新城地区
黒土採取地:秋田県大館市有浦地区
試験場所:試料aは屋内。試料b、c、dは屋外。
灌水の有無:試料aは灌水なし。試料b、c、dは灌水あり。
測定機器:pH計 WM―22EP(東亜DDK.KK)
【0060】
表2に、試験結果を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表に示されるように、pH5.4〜6.0の各試験区土壌が、混合2日目すなわち炭化貝殻炭酸カルシウム混合の翌日には、pH6.4〜6.8に到達する速やかかつ充分な土壌改良がなされ、以後115日目までの間、その水準がほぼ維持された。すなわちいずれの試験区においても、本発明の炭化貝殻炭酸カルシウムが速効性の酸性土壌改良効果を有することが示された。
【0063】
<実施例4 灰化処理貝殻による土壌改良剤の土壌改良性能試験>
灰化処理貝殻による土壌改良剤(以下「灰化貝殻炭酸カルシウム」という。)の酸性土壌改良効果を試験した。試験の仕様は以下のとおりである。
試料の調製方法:下記のとおり、土壌と灰化貝殻炭酸カルシウムを混合した。
試料a:赤土(平地)+灰化貝殻炭酸カルシウム2g+醗酵鶏糞200g
試料b:赤土(山新土)+灰化貝殻炭酸カルシウム2g+醗酵鶏糞200g
試料c:黒土(畑)+灰化貝殻炭酸カルシウム2g+醗酵鶏糞200g
試験用容器:ミニプランター 0.13m×0.26m×0.10m (容積0.0338m3)
赤土採取地:青森県青森市新城地区
黒土採取地:秋田県大館市有浦地区
試験場所:試料a、b、cとも屋外。
灌水の有無:試料a、b、cとも灌水あり。
測定機器:pH計 WM―22EP(東亜DDK.KK)
【0064】
表3に、試験結果を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表に示されるように、pH6.0〜6.1(表中のデータを四捨五入し、小数点第一位までの数値で表す。以下も同様。)各試験区土壌が、混合2日目すなわち炭化貝殻炭酸カルシウム混合の翌日には、pH6.8〜7.7に到達する速やかかつ充分な土壌改良がなされ、以後55日目までの間、試料aではその水準がほぼ維持され、試料b、cでは漸増する傾向であった。すなわちいずれの試験区においても、本発明の灰化貝殻炭酸カルシウムが速効性の酸性土壌改良効果を有することが示された。
【0067】
<実施例5 炭化貝殻炭酸カルシウムによる栽培試験(1)>
炭化貝殻炭酸カルシウムの土壌散布が農作物栽培に与える影響について試験した。試験の仕様は以下のとおりである。
【0068】
表4に、本試験に係る作業記録と生育記録を示す。なお、表中「ミネラル石灰」とは、本発明に係る貝殻炭酸カルシウムのことである。
【0069】
【表4】
【0070】
表に示すとおり、炭化貝殻炭酸カルシウムを土壌に混合した当日にホウレン草の播種を行ったが、その後のホウレン草の生育に特に支障はなく、通常の栽培条件と同等以上の順調な生育を示した。本試験結果より、本発明の土壌改良剤に係る貝殻炭酸カルシウムは、速効性の酸性土壌改良が可能であると同時に、これを散布投与した当日の野菜播種あっても、栽培する植物の根を傷める等の栽培上の障害が何ら生じない効果が示された。
【0071】
<実施例6 炭化貝殻炭酸カルシウムによる栽培試験(2)>
炭化貝殻炭酸カルシウムの土壌散布が農作物栽培に与える影響について試験した。試験の仕様は以下のとおりである。
【0072】
表5に、本試験に係る作業記録と生育記録を示す。なお、表中「ミネラル石灰」とは、本発明に係る貝殻炭酸カルシウムのことである。
【0073】
【表5】
【0074】
表に示すとおり、炭化貝殻炭酸カルシウムを土壌に混合した当日に小松菜の播種を行ったが、その後の小松菜の生育に特に支障はなく、通常の栽培条件よりも優れた順調な生育を示した。本試験結果より、本発明の土壌改良剤に係る貝殻炭酸カルシウムは、速効性の酸性土壌改良が可能であると同時に、これを散布投与した当日の野菜播種あっても、栽培する植物の根を傷める等の栽培上の障害が何ら生じない効果が示され、さらに植物の生育・成長を促進する効果も備えることが示唆された。
【0075】
<実施例7 炭化貝殻炭酸カルシウムによる栽培試験(3)>
炭化貝殻炭酸カルシウムの土壌散布が農作物栽培に与える影響について試験した。試験の仕様は以下のとおりである。
【0076】
図4は、炭化貝殻炭酸カルシウムを混合した土壌で栽培した小松菜の、試験最終日における生育状況を示す写真図である。
図5は、炭化貝殻炭酸カルシウムを混合しない比較土壌で栽培した小松菜の、試験最終日における生育状況を示す写真図である。
【0077】
図4、5に示す本試験結果より、本発明の土壌改良剤に係る貝殻炭酸カルシウムは、これを散布投与した当日の野菜播種あっても、栽培する植物の根を傷める等の栽培上の障害が何ら生じない効果が再度示され、さらに草丈、葉の大きさなど、植物の生育・成長を促進する効果も備えることが示された。
【0078】
<実施例8 貝殻炭酸カルシウムによる栽培試験(4)>
その他、下記の各農作物栽培試験において、本発明土壌改良材である貝殻炭酸カルシウムを元肥として散布し、同日に播種した場合、何ら栽培上植物体に悪影響がなく、しかも順調に生育することが確認されている。( )内表示は、特筆すべき栽培上の効果である。
【0079】
(I)葉菜類 白菜(収穫量増加)、たい菜(成長がよい。美味。)。
(II)豆類、穀類 枝豆(成長がよい。実のしまりがよい。美味。)、ささげ(収穫量増加)、小豆(収穫量増加)、とうもろこし(実のしまりがよい。)。
(III)いも類 じゃがいも(発芽良好。成長がよい。収穫量増加。)、こんにゃく(収穫量増加)。
(IV)根菜類 大根(成長がよい。)
(V)葉茎菜類 あさつき(発芽良好。美味。)、らっきょう(成長がよい。)。
(VI)山ぶどう(追肥として使用。成長がよい。)
【0080】
<実施例9 ホタテ貝以外の貝殻の焼成試験>
実施例1および2と同様の条件で、ホタテ貝以外の貝殻の焼成試験を行った。試験した貝は、カキおよびシジミである。結果を、表6および7に示す。表のとおり、貝の種類によって破砕性の相違があったが、いずれも本発明の炭化、灰化処理条件による所定の焼成処理物が得られ、ホタテ貝以外の貝にも本発明の製造方法が適用できる事が示された。
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【発明の効果】
本発明の水産資源利用土壌改良資材およびその製造方法は上述のように構成されているため、炭酸カルシウムによる速効性の酸性土壌改良を行える。しかも、植物体の根などへの障害がないため、散布した当日からでも播種が可能であり、特に寒冷地における圃場作業可能日数を大きく拡大することができる。
【0084】
さらに本発明の水産資源利用土壌改良資材によれば、植物の成長を促進し、品質を向上させる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水産資源利用土壌改良資材の製造方法の構成を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る水産資源利用土壌改良資材の製造方法であって、炭化工程を含む構成を示すフロー図である。
【図3】本発明に係る水産資源利用土壌改良資材の製造方法であって、灰化工程を含む構成を示すフロー図である。
【図4】炭化貝殻炭酸カルシウムを混合した土壌で栽培した小松菜の、試験最終日における生育状況を示す写真図である。
【図5】炭化貝殻炭酸カルシウムを混合しない比較土壌で栽培した小松菜の、試験最終日における生育状況を示す写真図である。
【符号の説明】
1…水産資源(原料)、 2…焼成処理物(有機基質変質)、 3、33、63…土壌改良資材、 32…焼成処理物(有機基質炭化)、 62…焼成処理物(有機基質灰化)、 P1…焼成処理工程、 P2、P32、P62…粉末化処理工程、 P31…炭化処理工程、 P61…灰化処理工程
Claims (16)
- 炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む水産資源を、炭酸カルシウムの有機基質からの分離を可能とする程度に有機基質の変質をもたらす焼成条件で焼成する焼成処理工程と、該焼成処理工程により得られた焼成処理物中の炭酸カルシウムの分離を行うための粉末化処理工程と、を経ることによって、炭酸カルシウムが有機基質から分離された状態で存在する水産資源利用土壌改良資材を得ることのできる、水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記水産資源が、ホタテ、カキ、シジミ等貝類の貝殻であることを特徴とする、請求項1に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成処理工程が、前記有機基質を炭化し得る焼成条件で行われ、該工程により、未分解の炭酸カルシウムおよび炭化した有機基質を組成とする焼成処理物を得ることができることを特徴とする、請求項1または2に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成条件が、焼成温度560℃以上740℃以下、焼成時間3分以上25分以下、であることを特徴とする、請求項3に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成条件が、焼成温度600℃以上700℃以下、焼成時間5分以上20分以下、であることを特徴とする、請求項3に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成処理工程が、前記有機基質を灰化し得る焼成条件で行われ、該工程により、未分解の炭酸カルシウムおよび灰化した有機基質を組成とする焼成処理物を得ることができることを特徴とする、請求項1または2に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成条件が、焼成温度720℃以上900℃以下、焼成時間25分以上45分以下、であることを特徴とする、請求項6に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成条件が、焼成温度750℃以上850℃以下、焼成時間25分以上45分以下、であることを特徴とする、請求項6に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成条件が、焼成温度770℃以上830℃以下、焼成時間25分以上45分以下、であることを特徴とする、請求項6に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記焼成条件が、前記焼成処理工程において生成する酸化カルシウムを分解することのできる燃料および焼成炉を用いるものであることを特徴とする、請求項6ないし9のいずれかに記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記燃料が天然ガスであり、前記焼成炉が輻射熱型焼成炉であることを特徴とする、請求項10に記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 前記粉末化処理工程は、前記焼成処理物を機械的に破砕処理し、得られた破砕処理物を60メッシュ(250μm)ないし80メッシュ(177μm)の網篩を通す工程であることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれかに記載の水産資源利用土壌改良資材の製造方法。
- 炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む、ホタテ、カキ、シジミ等の貝類の貝殻を原料とし、これを焼成処理することによって得られる、炭酸カルシウム含量が98重量%以上、アルカリ分が50%以上60%以下であることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
- 請求項2ないし12のいずれかに記載の製造方法を用いて得られ、炭酸カルシウム含量が98%以上、アルカリ分が50%以上60%以下であることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
- 炭酸カルシウムと、これを包み込んで存在する有機基質とを主たる組成物質として含む、ホタテ、カキ、シジミ等の貝類の貝殻を原料としこれを焼成処理して得られる水産資源利用土壌改良資材であって、粒径250μm以下の粒子が全体の90重量%以上100重量%以下を占めることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
- 請求項2ないし12のいずれかに記載の製造方法を用いて得られ、粒径250μm以下の粒子が全体の90重量%以上100重量%以下を占めることを特徴とする、水産資源利用土壌改良資材。
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