JP2004299997A - 高配向性ダイヤモンド膜及びその製造方法 - Google Patents

高配向性ダイヤモンド膜及びその製造方法 Download PDF

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和志 林
Yoshihiro Yokota
嘉宏 横田
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Abstract

【課題】高性能な紫外線センサー、放射線センサー及びヒートシンク等の電子部材、特にダイヤモンドの膜厚方向(縦方向)の性質を利用した電子部材に使用される高配向性ダイヤモンド膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板1に所定時間バイアス電圧を印加することにより基板に対して一定方向に配向したダイヤモンド粒子3を形成する。基板1に対してダイヤモンド結晶粒の(001)面を選択的に残す成長条件の化学気相成長法により結晶方位が配向した高配向性ダイヤモンド膜を形成する。この高配向性ダイヤモンド膜の形成工程は、少なくとも2段階の(001)面選択成長条件による高配向性ダイヤモンド膜合成工程を有し、第1段階のダイヤモンド膜4の合成工程の成膜速度が、それ以降に行われる第2段階のダイヤモンド膜5の合成工程の成膜速度の10分の1以下である。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高配向性ダイヤモンド膜及びその製造方法に関し、特に紫外線センサー、放射線センサー、放熱部材等の電子素子等に使用される高配向性ダイヤモンド膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドは、大きなバンドギャップ、高い飽和速度及び高い絶縁破壊電圧等の優れた電気的特性を有すると共に、化学的不活性及び耐放射線性等の耐環境性を兼ね備えた材料である。通常、ダイヤモンドは絶縁性を示すが、ホウ素等の不純物を添加することにより半導体特性を示す。また、化学気相成長法(以下、CVD(Chemical Vapor Deposition)という)により合成されるダイヤモンド薄膜は任意の異種基板上に形成できる。これらの理由により、真性及び半導体ダイヤモンド薄膜は、高温下、酸雰囲気又は原子炉内等で使用され、また高電界が必要とされる耐環境性素子又は高周波用素子等の電子部品、電子センサー及び電子デバイス用の材料として極めて有用である。
【0003】
しかしながら、従来のCVDにより形成された多結晶ダイヤモンド膜は、欠陥を多く含む結晶粒界を有するために、キャリア(電子又は正孔)の移動度及び降伏電界の低下並びに漏れ電流の増大等、電子デバイス応用において多くの問題点を有する。例えば、放射線の検知においては、これまで一般に使用されてきたCVDダイヤモンドは、細かな結晶粒が集まった多結晶体であり、隣り合う結晶粒の境界において、電子及び正孔の損失が生じるため、放射線のエネルギーを正確に測定することは困難である。図3は多結晶ダイヤモンドを使用した放射線検出器の内部を示す模式図である。電極10間に、多結晶ダイヤモンド膜11が設けられている。結晶粒12は数十乃至数百μmの大きさであり、各結晶粒12内においては、ダイヤモンドを構成する炭素原子が規則正しく並んでおり、領域100のように、結晶粒内においては、正孔8及び電子9はスムーズに流れる。しかし、電極10間に粒界が存在するような場合は、この粒界において、原子の並び方の規則性が崩れているために、正孔8及び電子9はこの結晶粒の境界で捕獲され、損失が生じる。
【0004】
また、単結晶ダイヤモンドはコストが高く、更に十分な大きさのものを製造できず、更に含有不純物の影響のため、その使用は一般的ではない。
【0005】
このため、近年、電気的及び物理的な諸特性を改善するために高配向性ダイヤモンド膜が開発された。高配向性ダイヤモンド薄膜は、広義には多結晶膜に分類されるが、成長粒子が成長方向、面内方向とも基板に配向し、表面は平坦な(001)ファセットが並ぶというように、特徴的な表面形態を示す。このため、この膜の表面近傍での結晶欠陥密度は通常の多結晶膜に比べて小さく、表面付近でのキャリア移動度は多結晶膜と比べて2桁程度大きくなることが知られており、横方向のキャリア移動を利用する電界効果トランジスタなどの電子デバイス用ダイヤモンド膜として好適であると考えられる。
【0006】
ところで、高配向性ダイヤモンド膜は一般的に、以下の工程で製造される。先ず、シリコン又はシリコンカーバイド等の単結晶基板の表面をクリーニングした後、当該単結晶基板の表面を炭素含有プラズマで処理することにより単結晶表面を炭化し、引き続き、前記基板とプラズマとの間に電界を印加することにより、電流を一定時間流してダイヤモンド薄膜合成のための核形成を行い、最後に前記基板に対して結晶方位が配向した高配向性ダイヤモンド粒子又は薄膜を合成する。なお、更に平坦化成長を行うことも一般的に行われている(非特許文献1参照)。
【0007】
ここでバイアス印加法により配向核の形成を行うと、従来のダイヤモンド合成の際に行われてきたダイヤモンドペースト等による傷付け処理等の核発生促進処理に比べて、核発生密度が2桁以上高く、1cmあたり10個以上に達する。高配向性ダイヤモンドはこのように高密度に得られた結晶核のうち、配向度が優れた核を選択的に成長させ、大きな(001)ファセットを得る。このため、結晶成長初期では、種々の方向を向いた極めて小さな結晶粒子がある確率で存在し、その結果、結晶粒界が多く存在することになる。
【0008】
【非特許文献1】
末定 剛.中村 直文.河原田 洋、NEW DIAMOND VOL.11,No2、p.13
【非特許文献2】
T.Tachibana et al.、 Appl.Phys.Lett.、Vol.68、No.11(1996)、p.1491
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、このようなダイヤモンドを膜厚方向(縦方向)に対する電気又は熱の流れを利用した電子材料として応用する場合には、欠陥を多く含む粒界をパスが横切るために、キャリアの移動度及び降伏電界の低下並びに漏れ電流の増大等、大きな影響を受けるという問題点がある。また、このような特性劣化は熱伝導率等の機械的な性質にも影響を与える。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、高性能な紫外線センサー、放射線センサー及びヒートシンク等の電子部材、特にダイヤモンドの膜厚方向(縦方向)の性質を利用した電子部材用材料そして使用される高配向性ダイヤモンド膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高配向性ダイヤモンド膜は、シリコン基板又はシリコンカーバイド基板に所定時間バイアス電圧を印加することにより前記基板に対して一定方向に配向したダイヤモンド粒子を形成する工程と、前記基板に対してダイヤモンド結晶粒の(001)面を選択的に残す成長条件の化学気相成長法により結晶方位が配向した高配向性ダイヤモンド膜を形成する工程と、を有し、前記高配向性ダイヤモンド膜の形成工程は、少なくとも2段階の(001)面選択成長条件による高配向性ダイヤモンド膜合成工程を有し、第1段階の前記ダイヤモンド膜合成工程の成膜速度が、それ以降に行われる第2段階のダイヤモンド膜合成工程の成膜速度の10分の1以下であることを特徴とする。
【0012】
この高配向性ダイヤモンド膜の製造方法において、前記第1段階のダイヤモンド膜合成工程により合成されるダイヤモンド膜の厚さが、全てのダイヤモンド膜合成工程により合成されるダイヤモンド膜の総厚の10分の1以下であることが好ましい。
【0013】
また、全ての高配向性ダイヤモンド膜の合成工程が終了した後に、第1段階の高配向ダイヤモンド膜合成工程により得られた高配向性ダイヤモンド膜を研磨により取り除くことができる。
【0014】
更に、前記ダイヤモンド膜合成工程の少なくとも1つがマイクロ波プラズマ化学気相成長法によるものであることが好ましい。更にまた、前記ダイヤモンド膜合成工程の少なくとも1つが熱フィラメント化学気相成長法によるものであることが好ましい。
【0015】
本発明に係る高配向性ダイヤモンド膜は、前述の各方法により形成されたものであることを特徴とする。この場合に、例えば、その両面が研磨されている。また、基板面側の(001)ファセットの大きさが成長面側の(001)ファセットの大きさの10分の1以上であることが好ましい。
【0016】
更に、基板面側の(001)ファセットの大きさが30μm以上、好ましくは100μm以上であることが好ましい。
【0017】
本発明者等は、高配向性ダイヤモンド膜の合成実験を鋭意実施し、一旦、第1段階で、数μmのファセットを持つ高配向性ダイヤモンド膜を合成した後、得られた高配向ダイヤモンド膜を基板として、第2段階で、成膜速度が大きく異なる高い速度で高配向ダイヤモンド膜を積層成長させることにより、あたかも低い核発生密度を持つ結晶基板から成長させたかのごとく、結晶粒界の影響の少ない高品位のダイヤモンド膜を高速度で得ることができることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものであり、少なくとも2段階の(001)面選択成長条件による高配向性ダイヤモンド膜合成工程を有し、第1段階の前記ダイヤモンド膜合成工程の成膜速度が、それ以降に行われる第2段階のダイヤモンド膜合成工程の成膜速度の10分の1以下であるようにすることにより、結晶粒界の影響が少ない高品位の高配向性ダイヤモンド膜を形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法を示すフローチャートであり、図2(a)乃至(h)はこの高配向性ダイヤモンド膜の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0019】
図2(a)に示すように、基板1を用意する。この基板1は、シリコン又はシリコンカーバイドを材質とし、表面の結晶方位として(001)面をもつものであれば使用することができる(ステップS1)。例えば、1インチ径のp型低抵抗シリコン(001)ウエハを使用することができる。
【0020】
次いで、図2(b)に示すように、この基板1の表面を、メタン及び水素ガスのプラズマ中で炭化することにより、炭化層2を形成する(ステップS2)。この炭化処理の典型的な条件としては、例えば、ガスとして、体積比で0.1乃至10%の水素希釈した炭化水素ガスを使用し、バイアス印加時のガス圧を133乃至6650Pa、基板温度を650乃至1100℃にして形成したプラズマ中に、10乃至150分間曝すものがあり、これにより、基板1の表面を炭化することができる。
【0021】
その後、図2(c)に示すように、バイアス印加法によりダイヤモンド配向核3を形成する(ステップS3)。具体的には、メタン及び水素ガスのプラズマ中で、基板に負の直流バイアス電圧を印加する。
【0022】
次に、図2(d)に示すように、メタン、水素及び酸素の混合ガスを使用したCVD法により、(001)面選択成長により、ダイヤモンド薄膜を気相合成する(ステップS4)。成膜速度は例えば0.2μm/時の低速度であり、この(001)面選択成長により、膜厚が5乃至10μm、(001)面のファセットの大きさ(粒径)が3乃至5μmのダイヤモンド膜4が得られる。この高配向性ダイヤモンド膜4の成膜は、例えば、無機材研型マイクロ波プラズマCVD装置を使用すればよい(非特許文献2参照)。
【0023】
次に、図2(e)に示すように、このダイヤモンド膜4を基板として、ダイヤモンド膜5を高速度で成膜する(ステップS5)。このダイヤモンド膜5の高速度の成膜の際には、ダイヤモンド膜4が形成された基板1を、例えば、ステンレス製の反応容器を持つプラズマCVD装置に設置し、ステップS4の10倍以上の成膜速度、例えば約4μm/時の成膜速度で、ダイヤモンド膜5を合成する。ステンレス製の反応容器を持つCVD装置は、例えば最大出力5kWであるようにマイクロ波の投入電力を大きくすることが可能であるため、高い成膜速度を得ることができる。ステンレス製の反応容器にメタン、酸素及び水素の混合ガスを流し、4.5kWのマイクロ波を投入して、20時間の成長を行う。成長条件として、典型的には、例えば、メタンを0.3乃至10%、酸素を0乃至5%、混合ガスの全流量を400sccm(ミリリットル/秒)として、全圧を13.3乃至21.3kPaに保持するものである。この結果、高配向性ダイヤモンド膜5が積層され、例えば、全体として膜厚85μmの高配向ダイヤモンド膜が得られる。このときのファセットは30乃至50μmに達する。
【0024】
このように、第1の高配向ダイヤモンド膜4を基板として、第1の高配向ダイヤモンド膜4を生成する際の成膜速度よりも10倍以上の高速度で第2の高配向性ダイヤモンド膜5を積層することにより、実効的な核発生密度が下がり、合成開始直後から大きなファセットに成長する。
【0025】
次いで、図2(f)に示すように、高配向性ダイヤモンド膜5の表面を研磨し、平坦化する(ステップS6)。その後、図2(g)に示すように、シリコン基板1をフッ硝酸によるウエットエッチングにより除去し、ダイヤモンド膜5の自立膜を得る(ステップS7)。
【0026】
更に、図2(h)に示すように、得られたダイヤモンド膜5の裏面を研磨する(ステップS8)。この場合に、炭化層2と共に第1の高配向性ダイヤモンド膜4が存在するが、この基板側の第1の高配向性ダイヤモンド膜4は配向核3を含み、粒子が細かく、結晶粒界が多いため、比較的容易に研磨除去される。一方、第2の高配向性ダイヤモンド膜5は粒子が大きいため、長時間の研磨にかかわらず、研磨されにくく、その結果、両面とも高配向性ダイヤモンド膜5のみが露出するダイヤモンド膜が得られる(ステップS9)。
【0027】
なお、用途によっては、図2(f)に示す成長面側のダイヤモンド膜の表面研磨は行う必要がない。
【0028】
以上の工程により、最終的に得られるダイヤモンドは、例えば、膜厚が約70μm、表面のファセットの大きさが30乃至50μm、裏面のファセットの大きさが6乃至10μmである。
【0029】
以上の実施形態では、石英管を組み込んだプラズマCVD装置及びステンレス製の反応容器を持つCVD装置を使用したが、本発明はこれに限らず、例えば、熱フィラメントCVD等のように高配向性ダイヤモンド膜を形成できるものであれば使用することができる。また、より大きなファセットを持つダイヤモンドを形成する際は、第2段階の高配向性ダイヤモンド膜の成膜時間を、例えば80時間以上に延長することで、成長面側で100μm以上の大きさのファセットを持つ高配向性ダイヤモンドの形成が可能となる。
【0030】
また、基板面側の(001)ファセットの大きさが成長面側の(001)ファセットの大きさの10分の1以上であることが好ましい。通常、成長面側の(001)ファセットの大きさは基板面側の(001)ファセットの大きさよりも大きい。しかし、基板面側のファセットの大きさも、より大きい方が、ダイヤモンド膜の熱伝導性が高い。このため、基板面側の(001)ファセットの大きさが成長面側の(001)ファセットの大きさの10分の1以上であることが好ましい。更に、基板面側の(001)ファセットの大きさが30μm以上、好ましくは100μm以上であることが好ましい。
【0031】
【実施例】
次に、本発明の実施例について本発明の範囲から外れる比較例と比較して、その効果について説明する。基板として1インチ(2.54cm)のp型低抵抗シリコン(001)ウエハを用いた。
【0032】
実施例1
図1のフローチャートに従って、本発明のように2段階のCVD法により製造した高配向ダイヤモンド自立膜と、高配向性ダイヤモンド膜を成膜速度が一定な1段階の合成工程で成膜した比較例の高配向ダイヤモンド自立膜とを比較した。即ち、先ず、石英管の反応容器を持つ無機材研型マイクロ波プラズマCVD装置により、前述の段落0020乃至0022に示した条件で20時間成膜後、ステンレス製の反応容器を持つCVD装置により、段落0023に示す条件で50時間合成した。一方、比較例では、無機材研型マイクロ波プラズマCVD装置により20時間成膜した後、引き続き200時間成膜した。成長面側のファセットの大きさは平均40μm、基板側の基板との界面におけるダイヤモンド膜のファセットの平均の大きささは、本発明実施例では8μm、比較例では3μm以下であった。厚さは共に300μmであった。
【0033】
図4(a)、(b)に示すように、この自立性ダイヤモンド膜14の両面に、アルミニウムの電極13をスパッタリング法により形成した。そして、一方の電極13に電源16を接続し、他方の電極13に接地を接続して、電極間に直流電圧を印加した後、ダイヤモンド膜14の端面に、集光した紫外線レーザ17を電極13に平行に照射し、ダイヤモンド膜14内に発生した光電流を、電流計18により測定した。この光電流の変化をダイヤモンド膜14の厚さ方向の位置の関数として図5にプロットした。図5において、横軸はダイヤモンド膜の厚さ方向におけるレーザ照射位置を、基板とダイヤモンド膜との界面からの距離(μm)で示す。また、縦軸は得られた光電流をオペアンプにより増幅し、電圧に変換した値を示してある。
【0034】
図5に示すように、本発明実施例のダイヤモンド膜の場合は、膜厚方向の全ての領域で良好な光信号が得られたが、比較例の場合は、基板側(基板−ダイヤモンド膜の界面側)で信号が得られなかった(出力電圧が得られなかった)。
【0035】
実施例2
次に、図1のフローチャートに従って製造した本発明実施例の高配向性自立性ダイヤモンド膜と、図1のフローチャートに示す本発明の実施例方法により製造したものの、高配向性自立性ダイヤモンド膜より厚い基板側の第1高配向性ダイヤモンド膜4を持つ自立性高配向性ダイヤモンド膜との間で、熱伝導率の比較を行った。ダイヤモンド膜全体の厚さはいずれも300μmであり、試料Aでは基板側の第1ダイヤモンド膜4を全て除去し、試料Bでは第1ダイヤモンド膜4の厚さを30μm、試料Cでは第1ダイヤモンド膜4の厚さを50μmとした。なお、成長面側の(001)ファセットの大きさは80μmと100μmの2種類であった。また、ダイヤモンド膜の基板面側の(001)ファセットの大きさは、試料Aが40μm、試料Bが10μm、試料Cが6μmである。よって、試料Aは請求項8及び9を満足し、試料Bは請求項9から外れるが請求項8を満足し、試料Cはこれらの請求項8及び9を満足しないものである。得られた試料をシリコン基板にペーストで接着し、シリコン基板を局所的に加熱し、シリコン基板の温度分布を測定した。
【0036】
図6は成長面側のファセットの大きさが80μmのダイヤモンド膜を接着したシリコン基板の温度分布を示し、図7は成長面側のファセットの大きさが100μmのダイヤモンド膜を接着したシリコン基板の温度分布を示す。図6及び図7の横軸は、シリコン基板の厚さ方向の位置を示し、0μmとはダイヤモンド膜との境界の表面を示す。図6及び図7に示すように、試料A及びBではダイヤモンド膜からの熱伝導が良好で加熱されたシリコン基板の温度が平均化されているが、試料Cでは局部的に加熱されたのみであった。なお、試料Aは試料Bよりも基板温度が更に平均化されて熱伝導性が良いことがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、膜厚方向のキャリアの移動度が紫外線等の照射位置によらず均一であり、紫外線センサー、放射線センサー及び放熱部材等の電子部材、特にダイヤモンドの縦方向の性質を利用した電子素子に用いられる高配向性ダイヤモンド膜として、優れた特性を持つダイヤモンド膜を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る高配向性ダイヤモンド膜の製造工程を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の実施形態に係る高配向性ダイヤモンド膜の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】多結晶ダイヤモンド膜を使用した検出器の内部を示す模式図である。
【図4】(a)、(b)は紫外線レーザの検出装置を示す模式図である。
【図5】ダイヤモンド膜の端面に、電極に平行に紫外線レーザーを照射し、得られた光電流を、膜厚方向の位置の関数としてプロットした結果を示すグラフ図である。
【図6】成長面側のファセットの大きさが80μmのダイヤモンド膜を接着した基板の温度分布を示すグラフ図である。
【図7】成長面側のファセットの大きさが100μmのダイヤモンド膜を接着した基板の温度分布を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1;基板
2;炭化層
3;配向核
4;第1高配向性ダイヤモンド膜
5;第2高配向性ダイヤモンド膜
8;正孔
9;電子
10;電極
11;ダイヤモンド膜
12;ダイヤモンド結晶粒
13;アルミニウム電極
14;ダイヤモンド膜
17;紫外線レーザ光

Claims (10)

  1. シリコン基板又はシリコンカーバイド基板に所定時間バイアス電圧を印加することにより前記基板に対して一定方向に配向したダイヤモンド粒子を形成する工程と、前記基板に対してダイヤモンド結晶粒の(001)面を選択的に残す成長条件の化学気相成長法により結晶方位が配向した高配向性ダイヤモンド膜を形成する工程と、を有し、前記高配向性ダイヤモンド膜の形成工程は、少なくとも2段階の(001)面選択成長条件による高配向性ダイヤモンド膜合成工程を有し、第1段階の前記ダイヤモンド膜合成工程の成膜速度が、それ以降に行われる第2段階のダイヤモンド膜合成工程の成膜速度の10分の1以下であることを特徴とする高配向性ダイヤモンド膜の製造方法。
  2. 前記第1段階のダイヤモンド膜合成工程により合成されるダイヤモンド膜の厚さが、全てのダイヤモンド膜合成工程により合成されるダイヤモンド膜の総厚の10分の1以下であることを特徴とする請求項1に記載の高配向性ダイヤモンド膜の製造方法。
  3. 全ての高配向性ダイヤモンド膜の合成工程が終了した後に、第1段階の高配向性ダイヤモンド膜合成工程により得られた高配向性ダイヤモンド膜を研磨により取り除くことを特徴とする請求項1又は2に記載の高配向性ダイヤモンド膜の製造方法。
  4. 前記ダイヤモンド膜合成工程の少なくとも1つがマイクロ波プラズマ化学気相成長法によるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高配向性ダイヤモンド膜の製造方法。
  5. 前記ダイヤモンド膜合成工程の少なくとも1つが熱フィラメント化学気相成長法によるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高配向性ダイヤモンド膜の製造方法。
  6. 前記請求項1乃至5のいずれか1項に記載された方法により形成されることを特徴とする高配向性ダイヤモンド膜。
  7. 両面が研磨されていることを特徴とする請求項6に記載の高配向性ダイヤモンド膜。
  8. 基板面側の(001)ファセットの大きさが成長面側の(001)ファセットの大きさの10分の1以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の高配向性ダイヤモンド膜。
  9. 基板面側の(001)ファセットの大きさが30μm以上であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の高配向性ダイヤモンド膜。
  10. 基板面側の(001)ファセットの大きさが100μm以上であることを特徴とする請求項9に記載の高配向性ダイヤモンド膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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