JP2004296126A - 半導電性樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導電性樹脂成形体全体にわたって体積抵抗率や表面抵抗のバラツキが小さく、更に、そのような表面抵抗や体積抵抗が湿度、印加電圧によって実質的に変動することがない半導電性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】少なくとも、導電性高分子、導電性充填材及びバインダー樹脂を含む半導電性樹脂成形体であって、前記導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理されており、樹脂成型体が実質的に酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を含有しないことを特徴とする半導電性樹脂成形体。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも、導電性高分子、導電性充填材及びバインダー樹脂を含む半導電性樹脂成形体であって、前記導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理されており、樹脂成型体が実質的に酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を含有しないことを特徴とする半導電性樹脂成形体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性樹脂成形体に関する。このような半導電性樹脂成形体は、静電式複写コピー機、プリンタ等の感光部材、転写体、中間転写体、搬送ベルト、帯電防止部材、電子デバイスなどに用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
電子写真機器部品の感光部材、転写体、中間転写体、トナーの搬送部材においては、導電性が、表面抵抗値として、106〜1014Ω/□、好ましくは、108〜1013Ω/□の範囲にあることが電子写真構成要素として特に重要である。
所望の特性が得られない場合、コピー品質の低下、プリント障害等が発生する場合があるが、その多くは表面抵抗値が上記の範囲内にないことにともなう効果的でないトナーの放出によるものである。
【0003】
従来、半導電性樹脂成形体は、絶縁性の高分子材料に、カーボン粉末、黒鉛粉末、カーボン繊維、金属粉末、金属酸化物粉末等の導電性フィラーを分散させて成形する方法で作製されていた。
しかしながら、このように、導電性フィラーを高分子材料中に分散させ、これを成形して得られる導電性樹脂成形体は、その体積抵抗率や表面抵抗等の電気抵抗が成形体における導電性フィラーの分散状態に大きく依存し、所要の電気特性を精度、再現性よく、しかも、成形体全体にわたって均一に与えることが困難である。また、得られる成形体における体積抵抗率や表面抵抗等の電気抵抗が、印加電圧に大きく依存する欠点がある。
【0004】
そこで、上記のような問題のない方法として、導電性ポリアニリンを他の高分子材料と複合させて、導電性樹脂とする方法の提案がある(例えば、特許文献1参照。)。
この方法によれば、導電性充填材を高分子材料中に分散させる方法に比べて、所要の体積抵抗率や表面抵抗等の電気抵抗を、精度、再現性よく得ることができ、且つ、成形体全体にわたって均一とすることができる。
【0005】
また、導電性ポリアニリン、導電性充填材を絶縁性マトリックス高分子材料と複合させて、導電性樹脂成形体とする方法の提案もある(例えば、特許文献2参照。)。
この方法によれば、導電性ポリアニリンを絶縁性高分子材料中に分散させ、通常の高分子材料よりも電気抵抗が低い高分子樹脂材料が得られ、これに導電性充填材を混合させることにより成形体の体積抵抗及び表面抵抗を精度、再現性よく制御して、均一な抵抗値を与えることができる。導電性は導電性充填材に基づくため、環境の湿度による電気抵抗値の変動が殆どない。
【0006】
また、金属、炭素、無機酸化物、無機燐酸塩等の無機微粒子とπ共役二重結合からなる導電性高分子の複合体を用いる接着剤、塗料、処理剤、コーティング剤が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
この方法によれば、1.8nmの酸化珪素等の無機微粒子を水溶液中に混合させ、濃硫酸、アニリン、過硫酸アンモニウムの混合液中で攪拌し、緑黒色ポリアニリンーシリカ複合体が得られる。この複合体を樹脂や添加剤と兼用して導電性、帯電防止性、防食性付与の目的に使用することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−262991号公報
【特許文献2】
特開平9−176329号公報
【特許文献3】
特開平11−241021号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1記載の方法では、ポリアニリンは、そのドーピング状態でそれ自体の導電性が大きく変化するので、湿度によって、成形体の体積抵抗率や表面抵抗が大きく変動する問題がある。
また、特許文献2記載の方法では、ポリアニリンがイオン性導電体であるため、ポリアニリンのみを導電材料として使用する成形体に比べて、湿度の影響を受けにくいとはいっても、導電性充填材のみの成形体と比べると、湿度の影響があり、しかも、電気伝導は導電性充填材の接触に基づくものであるため、導電体量が多量に必要となると共に、体積抵抗及び表面抵抗が印加電圧によって大きく変動するという問題がある。
また、特許文献3記載の方法では、無機微粒子と導電性高分子の複合体は、粒子表面に導電性高分子を重合する時に使われる酸化剤、触媒等が粒子中に残留し、これらが残留すると、残留酸化剤、触媒の析出による腐食等といった問題が生ずる。しかしこれらの残留物を取り除くのは非常に困難であり、最終的に高価なものになる問題がある。
【0009】
本発明は、従来の半導電性樹脂成形体における上述のような問題を解決するためになされたものであって、精度及び再現性共によく制御しつつ、しかも、半導電性樹脂成形体全体にわたって体積抵抗率や表面抵抗のバラツキが小さく、更に、そのような表面抵抗や体積抵抗が周囲の環境の湿度(水分)、印加電圧によって実質的に変動することがない半導電性樹脂成形体を提供することを目的とする。特に、表面抵抗が106〜1014Ω/□の範囲にある上述したような半導電性樹脂成形体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の半導電性樹脂成形体は、少なくとも、導電性高分子、導電性充填材及び絶縁性の高分子材料を含む半導電性樹脂成形体であって、前記導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及びハロゲン化処理から選ばれる1種以上で処理されており、樹脂成型体が実質的に酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を含有しないことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、導電性高分子につき、説明する。
本発明において、導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子を使用することができる。このような高分子としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類及びこれらの共重合体等が挙げられる。
これらの中では、分散性、取り扱い性、および樹脂への分散及び相溶性の観点から有機溶媒可溶であることを考慮すると、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びこれらの共重合体等が好ましい。
このような高分子としては、下記式Iで表される単位からなる高分子、あるいは下記式Iで表される単位と、下記式IIで表される単位とからなる高分子を好ましい例として例示できる。
【0012】
【化2】
【0013】
[式I及び式IIにおいて、X、YはNR(Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)またはSであり、XとYとでRが互いに同一であっても異なっていてもよく、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、水素、水酸基、アルキルカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基またはアリールオキシスルホニル基を表し、R1、R2、R3、R4は同一または互いに異なっていてもよい。]
【0014】
前記式I、式IIにおけるR1、R2、R3、R4の具体例を以下に示す。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基を例示できる。これらの中では、導電性、溶媒溶解性、及び分子立体障害の少ないことなどの点からメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基がより好ましい。
カルボニル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等のアルキルカルボニル基を示すことができる。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等を例示できる。
アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等を例示できる。これらの中では、フェニル基、トリル基、ビフェニル基が好ましい。
アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基またはアリールオキシスルホニル基におけるアルキル基、アリール基としては、上述のアルキル基、アリール基で例示したものをそのまま用いることができる。
導電性高分子における式Iで表される単位、式IIで表される単位の繰り返し数は2〜10000が好ましく、導電性充填材との付着性、配位、ドーピング及び絶縁性の高分子材料への均一分散性の点から、10〜3000がより好ましい。
【0015】
更に、ポリピロール類、ポリチオフェン類、及びこれらの共重合体の中でも、溶媒に溶解させるため、芳香族複素環の3及びまたは4位に官能基を有するものは好ましい、これらの例示として上記式Iにおいて、R3が−COOR5で示される基であり、上記式IIにおいて、R4が−COOR6で示される基である高分子を好ましい例として例示できる。
(R5、R6は水素、アルキル基またはアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記式I、式IIにおけるR5、R6の具体例としては、式Iおよび式IIのR1、R2、R3、R4の具体例で説明したアルキル基、アリール基を用いることができる。
【0016】
好適なポリピロール類の例としては、上記式IにおけるXがNHで、R3が−COOR5で示される基であり、上記式IIにおけるYがNHで、R4が−COOR6で示される基である高分子を示すことができる。
その具体例としては、R2、R4が水素であるポリピロール誘導体、R2、R4がメチル基であるポリピロール誘導体、R2、R4がエチル基であるポリピロール誘導体、R2、R4がブチル基であるポリピロール誘導体、R2、R4の一方がエチル基で他方がブチル基であり、R1、R3はメチル基であるポリピロールの共重合体(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)等を例示できる。
【0017】
好適なポリチオフェン類の例としては、上記式IにおけるXがSで、R3が−COOR5で示される基であり、上記式IIにおけるYがSで、R4が−COOR6で示される基である高分子を示すことができる。
その具体例としては、R2、R4が水素であるポリチオフェン誘導体、R2、R4がメチル基であるポリチオフェン誘導体、R2、R4がエチル基であるポリチオフェン誘導体、R2、R4がブチル基であるポリチオフェン誘導体、R2、R4の一方がエチル基で他方がブチル基であり、R1、R3はメチル基等のアルキル基であるポリチオフェンの共重合体等を例示できる。
【0018】
なお、導電性高分子には、酸化剤等の重合触媒が残存していないことが好ましい。この重合触媒は重合後、蒸留水充分洗浄することで除去できる。また、導電性高分子の重合時においては、酸化剤等の重合触媒によって化学ドープされる。このドープ状態を還元剤を用いて脱ドープすることによって未ドープ導電性高分子を得ることができる。
【0019】
次に、導電性充填材につき、説明する。
本発明における導電性充填材は、導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理されていることが特徴としている。
本発明における導電性充填材の粒径は、平均粒径が5nm〜5μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。粒径が5μmより大きくなると分散性が低下し、成形体表面が粗くなる傾向にあり、5nmより小さくなると比較的そろった粒径のものを製造することが困難になる傾向にあると共に、2次凝集が起きやすくなる。
【0020】
導電性充填材としては特に、限定されるものではなく、従来より知られているものが適宜に用いられる。例えば、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボン短繊維、グラファイト等の炭素粒子、金属粒子、金属酸化物等の金属酸化物粒子等を挙げることができる。絶縁性の高分子材料への分散の点から、絶縁性の高分子材料の比重に近い炭素系粒子が好ましい。この炭素粒子としては、例えば、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボン繊維、グラファイト等が挙げられる。具体的に、東海カーボン株式会社製「商品名:トーカブラック#8500/F」、電気化学工業株式会社製「商品名:デンカブラック」、旭カーボン株式会社製「商品名:#15、F―200、HS−500」、デグサジャパン株式会社製「商品名:Special Black 4、Special Black 4A」等が挙げられる。
【0021】
導電性充填材は酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理されているので、導電性充填材表面に、導電性高分子と導電性充填材との配位及びドーピング効果を有する官能基が導入されている。
酸化処理は、導電性充填材を気相または液相において、酸化剤、酸素、オゾン、過酸化水素等を用いて処理すると導入することができる。この処理により、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等の官能基を導電性充填材表面に導入することができる。
スルホン酸化処理は、導電性充填材を気相または液相において、SO3、濃硫酸、過硫酸化物等で処理することによって導入することができる。
ハロゲン化は一般的なハロゲン化剤を用いて処理すればよい。
上記官能基の導入量として、表面含酸素率及び/または表面含硫率は、導電性充填材の表面元素に対して、0.1〜50%の範囲であれば良好な効果が得られる。0.1%以下の含有率では、導電性充填材の導電性がよいが、導電性高分子との配位、ドーピング効果が小さく、導電性充填材及び導電性高分子の分散性、電気特性が悪くなり好ましくない。50%以上の含有率では、導電性高分子との配位、ドーピング効果が大きくなるが、導電性充填材自体の導電性が低下し、導電性充填材が大量に必要であると共に半導電性成形体の環境特性の低下をもたらすので好ましくない。好適な含有率としては、表面含酸素率及び/または表面含硫率は、導電性充填材の表面元素に対して、1〜30%の範囲である。
【0022】
導電性充填材の表面に導入された官能基の同定方法としては、光電子分光法(ESCA)によって測定可能である。また、水酸化カリウム、CH3MgI、CH2N2等を用いた同定法も有効である。
【0023】
導電性充填材は上記の官能基を有するので、これを導電性高分子に添加すると導電性高分子へのドープ効果を生じ、導電性高分子が高い導電性を示すようになると共に、隣接する導電性充填材同士の間に導電性高分子が配位され、導電性充填材間の直接接触がなくても成形体全体に高い電気伝導性が得られる。なお、成形体全体の電気伝導性は、導電性充填材と導電性充填材との間に配位された導電性高分子に支配されるため、導電性高分子の電気特性、耐環境特性を示す。
【0024】
本発明の半導電性樹脂成形体は酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を実質的に含有しない。この「実質的に含有しない」とは、成形体中の成分を酸化、スルホン酸化あるいはハロゲン化できる量を含有しないことを意味し、50ppm以上含有しないことを意味する。本発明においては導電性充填材の酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理にあたって用いた酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤のいずれも残存しないように、導電性高分子、あるいは絶縁性の高分子材料に添加する前に、導電性充填材から酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を除去しておく必要がある。この除去処理は、水性の処理剤を用いた場合は多量の水で洗浄し、乾燥すればよく、気体を用いた場合は排気、空気との置換を行えばよい。
【0025】
導電性高分子と導電性充填材との比率は、導電性充填材100質量部に対して0.1〜1000質量部以下であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。導電性高分子が0.1質量部未満の含有率では、成形体の電気伝導性は導電性充填材の接触による電気伝導に支配され、導電性充填材の電気特性が示され、体積抵抗率や表面抵抗が印加電圧により変化する傾向が生じ好ましくない。一方、導電性高分子量が1000質量部を超えると、絶縁性の高分子材料への相溶性または分散性が悪くなり好ましくない。
【0026】
次に、バインダー樹脂について説明する。
バインダー樹脂は本発明の半導電性樹脂成形体に適度の機械的強度と可撓性を付与するために用いられる。
バインダー樹脂としては公知の樹脂を用いることができるが、本発明の半導電性樹脂成形体を電子写真機器の中間転写用樹脂成形体として用いる場合は、複数のロールに懸架されて使用されるので、充分な機械的強度と可撓性を有する材料を選択する必要があり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリル系樹脂等から選ばれる1種類以上の樹脂成分を用いることができる。
【0027】
これらの樹脂の中では、機械的強度、可撓性、自己消火性、耐熱性等を考慮すると、ポリイミド系樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。特に、ポリイミド系樹脂は、その芳香環のπ電子と導電性高分子のπ共役電子との相互作用により相溶性を高め、良好な機械的特性、電気的安定性、高い耐環境特性を備えるので特に好ましい。絶縁性の高分子材料がポリイミド系樹脂である場合、導電性高分子がバインダー樹脂に均一に分散させることを可能にするためには、有機溶媒可溶性ポリイミド系樹脂であることが好ましい。このポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂を示すことができる。
【0028】
バインダー樹脂を溶解する有機溶媒は、バインダー樹脂溶解能を有する限り、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。必要に応じて、これらの溶剤も、単独で、あるいはこれらの2種以上の混合物、又は他の有機溶媒との混合物として用いられる。有機溶媒としては、導電性高分子のバインダー樹脂への相溶及び分散性の点から導電性高分子とバインダー樹脂の双方を溶解または分散可能な有機溶媒であることが好ましく、導電性高分子もバインダー樹脂も同種の溶媒で溶解することが好ましく、同一の溶媒で溶解することがより好ましい。
【0029】
導電性高分子のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂100質量部あたり、0.001〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。また、機能性導電性充填材のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。
導電性高分子と機能性導電性充填材の合計添加量はバインダー樹脂に対して、絶縁性の高分子材料100質量部あたり、1〜20質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがより好ましい。添加量を1質量部以上とすることにより、樹脂成形体として使用しうる103〜1013Ω・cmの体積抵抗率とすることができる。また、添加量を20質量部以下にすることにより、樹脂成形体の機械的特性を良好な範囲に維持できる。
この導電性高分子と、バインダー樹脂とを含有する樹脂成形体の体積抵抗率は103〜1013Ω・cmであることが好ましい。1013Ω・cm以下にすることにより除電効果を維持でき、103Ω・cm以上とすることで静電気の保持が可能となる。より高度の静電気の保持性能と除電性能を維持する観点からは、105〜1012Ω・cmであることがより好ましい。
【0030】
本発明における導電性高分子、機能性導電性充填材及び絶縁性の高分子材料の混合組成物のみでも、導電性高分子と機能性導電性充填材との付着、配位及びドーピング効果により、充分な電気特性が得られるが、必要に応じて、電気抵抗を調節するためには、導電性高分子へのドーパントをドープして使用することができる。
このドーパントは、導電性高分子100質量部あたり、1〜50質量部用いることが好ましい。
ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等が使用できる。
ハロゲン化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等を挙げることができる。
ルイス酸としては、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素、無水硫酸等を挙げることができる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼フッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、有機カルボン酸、スルホン酸等の有機酸を挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボニル基が一つまたは二つ以上を含むものが使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸等を挙げることができる。
【0031】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホン酸基が一つまたは二つ以上を含むものが使用できる。例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に一つのスルホン酸基を含むスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸基を複数個含むスルホン酸化合物を挙げることができる。
また、本発明においるドーパントとして、有機酸はポリマー酸であってもよい。ポリマー酸としては例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等を例示できる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物を使用できる。このような化合物としては、例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げることができる。
【0032】
有機金属化合物の例としては、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、ビス(テトラ−n−ブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛錯体、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)ニッケル(III)錯体等が挙げられる。
【0033】
本発明の半導電性樹脂成形体は、導電性充填材の表面に機能性置換基を導入しているので、導電性高分子と導電性充填材との間には付着のみではなく、イオン結合、配位結合などの化学的結合を形成し、ドーピングと同様の効果を示すことにより、電気抵抗、環境特性にも安定したものとなる。
本発明の実施形態によれば、導電性高分子単体または導電性充填材単体を用いる場合と比べて、表面抵抗及び体積抵抗率を高精度で制御でき、更に、該樹脂成形体の面方向及び厚み方向ともバラツキがなく、耐環境性がよく、電圧安定性に優れ、所望の半導電性を安定して得ることができる。
【0034】
本発明における半導電性樹脂成形体は、導電性高分子、導電性充填材及びバインダー樹脂を含む組成物を成形してなる。その成形法としては、押出成形、遠心成形、注型法などを採用可能であるが、厚み精度、電気抵抗精度、表面平滑性等に優れることから、遠心成形法を採用することが好ましい。上記の導電性高分子、機能性導電性充填材及びバインダー樹脂を有機溶剤に溶解、分散させて成形用混合樹脂溶液を調整し、遠心成形法により均質な成形体を安定して作製できる。
遠心成形法とは、流動性を有する成形用混合樹脂溶液を円筒状の金型の内側に注入し、金型を一定速度で回転させると、成形用混合樹脂溶液が遠心力の作用により金型の内壁に付着するので、これを加熱するなどにより樹脂膜を金型の内側に形成して、形成された樹脂膜を取り出して所望の成形品を作製する方法である。使用される金型の材質は特に限定されるものではないが、耐久性、形状安定性から、金属製が好ましい。また金型の内面に鏡面加工、フッ素処理、シリコーン処理等を施してもよい。
【0035】
成形用混合樹脂溶液の成形時の粘度は50,000Pa・s以下であることが好ましい。粘度を50,000Pa・s以下にすることにより、回転による遠心力に対する樹脂内部の抵抗応力が高くなり過ぎることがなく、成形用混合樹脂溶液を金型の内壁に均一に付着させることができる。また、付着させた樹脂層のレベリングも充分で、均質な成形膜を得ることができる。
樹脂の成形は適切な温度下に置いて、金型を必要な回転数で回転させながら行う。成形温度には特に制限はなく、均一な加熱系で成形用樹脂溶液に含まれる溶媒を蒸発させる温度であればよいが、成形用混合樹脂の分解温度以下で行うことが好ましい。成形時の金型の回転数は、成形用混合樹脂溶液の粘度によって異なる場合があるが、成形用混合樹脂溶液を均一に金型内壁に付着させる遠心力を発生する回転数以上であればよい。成形用樹脂材料の成形・乾燥条件は適宜選択することができる。
成形・乾燥後の成形樹脂膜を金型ごと冷却すると、半導電性樹脂成形体と金型との熱膨張率の差によって、半導電性樹脂成形体は金型から剥離し、これを所定の幅にカットすることにより、半導電性樹脂成形体が得られる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例においては、半導電性樹脂成形体として、電子写真機器部品の感光部材、転写体、中間転写体、トナーの搬送部材に使用可能な無端ベルトの例で説明する。
なお、実施例、比較例で得た無端ベルトの評価は以下のようにして行った。
【0037】
(表面抵抗率)
表面抵抗率は、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURSプローブを用いて、23℃/50%RH環境下で、無端ベルトに500Vの電圧を印加し、10秒後の電流値により算出した。
(表面抵抗率の面内バラツキ)
表面抵抗率の面内バラツキは、無端ベルトを周方向に5分割、幅方向に3分割し、ベルト面内15点について表面抵抗率を測定し、表面抵抗率の対数値の最大値と最小値の差を求め、表面抵抗率の面内バラツキの指標とした。
(表面抵抗率の環境依存性)
表面抵抗率の環境依存性は、低温低湿(L/L)(10℃/15%RH)環境と高温高湿(H/H)(27℃/80%RH)環境において測定した表面抵抗率の対数値の差を求め、表面抵抗率の環境依存性の指標とした。
(表面抵抗率の電圧依存性)
表面抵抗率の電圧依存性は、印加電圧100Vと印加電圧1000Vとの条件下で測定した表面抵抗率の対数値の差を求め、表面抵抗率の電圧依存性の指標とした。
【0038】
(表面抵抗率の耐久性)
本実施例における表面抵抗率の耐久性試験は、無端ベルトをφ25mmのアルミニウム製ローラ(2本)に、荷重5kgfで懸架し、回転スピードが15rpmで10万回回転させ、10万回転前後での500V印加電圧における表面抵抗値の差で評価した。
【0039】
(体積抵抗率)
体積抵抗率の測定は、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURSプローブを用いて、23℃/50%RH環境下で、無端ベルトに100Vの電圧を印加し、10秒後の電流値により算出した。
(体積抵抗率の環境依存性)
体積抵抗率の環境依存性は、低温低湿(L/L)(10℃/15%RH)環境と高温高湿(H/H)(27℃/80%RH)環境において測定した体積抵抗率の対数値の差を求め、体積抵抗率の環境依存性の指標とした。
(体積抵抗率の電圧依存性)
体積抵抗率の電圧依存性は、印加電圧100Vと印加電圧500Vとの条件下で測定した体積抵抗率の対数値の差を求め、体積抵抗率の電圧依存性の指標とした。
【0040】
(実施例1)
[表面に官能基を有する導電性充填材の作製]
水にカーボンブラック(商品名:Special Black4、デグザジャパン社製)を加え、所定ボールミルで2時間室温で混合し、カーボンブラック分散水溶液を作製した。そして、このカーボンブラック分散水溶液を攪拌しながら、所定量過酸化水素添加溶液を加え、80℃で加熱しながら6時間混合した。得られた混合液中の水を減圧除去して官能基(水酸基)含有カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックの表面の表面含酸素率をESCAで測定したところ、導電性充填材の表面元素数100個に対して1個(官能基含有率1%)であった。得られたカーボンブラックには過酸化水素の残留は認められなかった。
【0041】
[無端ベルトの作製]
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)85質量部に得られた官能基含有率1個のカーボンブラック15質量部を添加してボールミルで6時間室温で混合し、官能基含有カーボンDMAc分散液を作製した。このカーボンDMAc分散液(カーボン換算9質量部)にポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)の15wt%DMAc分散液(ポリピロール換算1質量部)を添加し、ホモジナイザーを用いて6000rpmで3時間攪拌し、固形分が15wt%濃度の導電材料分散DMAc溶液を得た。
次に、ポリアミドイミド樹脂の15質量%DMAc溶液(商品名:バイロマックスHR−100、東洋紡績社製)(樹脂換算90質量部)に固形分換算10質量部の導電材料分散DMAc溶液を添加し、三本ロールを用いて分散させ、固形分が15wt%濃度の成形用混合樹脂溶液を得た。
前記成形用混合樹脂溶液300gを円筒型金型に入れ、溶液が金型の内壁に均一に広がるように金型を回転速度1500rpmで回転させて成形膜を形成し、金型を100℃雰囲気下に60分間置いた後、250℃雰囲気下で120分間加熱し、溶剤を揮発させた。金型を冷やし、周長680mm、幅200mm、厚み150μmの無端ポリアミドイミドベルトを得た。
得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2、実施例3)
表1に記載の官能基(水酸基)含有率のカーボンブラックを用いて実施例1と同様の方法により実施例1で得たと同様のベルト寸法の無端ポリアミドイミドベルトを得た。得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
濃硫酸にカーボンブラック(商品名:Special Black4、デグザジャパン社製)を加え、攪拌しながら12時間60℃で混合した。カーボンブラック混合溶液をろ過し、余剰硫酸を多量の水で洗い固形物を乾燥し、スルホン酸基含有カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックの表面の表面含硫率をESCAで測定したところ、導電性充填材の表面元素数100個に対して7個(官能基含有率7%)であった。また、得られたカーボンブラックには硫酸の残留は認められなかった。
【0044】
[無端ベルトの作製]
DMAc85質量部に得られた官能基含有率7個のカーボンブラック15質量部を添加してボールミルで6時間室温で混合し、官能基含有カーボンDMAc分散液を作製した。このカーボンDMAc分散液(カーボン換算9質量部)にポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)の15wt%DMAc分散液(ポリピロール換算1質量部)を添加し、ホモジナイザーを用いて6000rpmで3時間攪拌し、固形分が15wt%濃度の導電材料分散DMAc溶液を得た。
次に、ポリアミドイミド樹脂の15質量%DMAc溶液(商品名:バイロマックスHR−100、東洋紡績社製)(樹脂換算90質量部)に固形分換算10質量部の導電材料分散DMAc溶液を添加し、三本ロールを用いて分散させ、固形分が15wt%濃度の成形用混合樹脂溶液を得た。
前記成形用混合樹脂溶液300gを円筒型金型に入れ、溶液が金型の内壁に均一に広がるように金型を回転速度1500rpmで回転させて成形膜を形成し、金型を100℃雰囲気下に60分間置いた後、250℃雰囲気下で120分間加熱し溶剤を揮発させた。金型を冷やし、周長680mm、幅200mm、厚み150μmの無端ポリアミドイミドベルトを得た。
得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
(実施例5)
表1に記載の官能基(スルホン酸基)含有率のカーボンブラックを用いて実施例4と同様の方法により無端ポリアミドイミドベルトを得た。得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例6)
カーボンブラック(商品名:Special Black4、デグザジャパン社製)を容器に入れ、容器ごと40℃に保ちながら塩素ガスを0.05L/min.の流量で2時間流入させた。得られた塩素ガス処理カーボンブラックを蒸留水に分散させ、多量の水で洗った後、乾燥して塩素基含有カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックの表面の表面含塩素基率をESCAで測定したところ、導電性充填材の表面元素数100個に対して20個(官能基含有率20%)であった。また、得られたカーボンブラックには塩素の残留は認められなかった。
【0047】
[無端ベルトの作製]
DMAc85質量部に得られた塩素基含有率20個のカーボンブラック15質量部を添加してボールミルで6時間室温で混合し、塩素基含有カーボンDMAc分散液を作製した。このカーボンDMAc分散液(カーボン換算9質量部)にポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)の15wt%DMAc分散液(ポリピロール換算1質量部)を添加し、ホモジナイザーを用いて6000rpmで3時間攪拌し、固形分が15wt%濃度の導電材料分散DMAc溶液を得た。
次に、ポリアミドイミド樹脂の15質量%DMAc溶液(商品名:バイロマックスHR−100、東洋紡績社製)(樹脂換算90質量部)に固形分換算10質量部の導電材料分散DMAc溶液を添加し、三本ロールを用いて分散させ、固形分が15wt%濃度の成形用混合樹脂溶液を得た。
前記成形用混合樹脂溶液300gを円筒型金型に入れ、溶液が金型の内壁に均一に広がるように金型を回転速度1500rpmで回転させて成形膜を形成し、金型を100℃雰囲気下に60分間置いた後、250℃雰囲気下で120分間加熱し溶剤を揮発させた。金型を冷やし、周長680mm、幅200mm、厚み150μmの無端ポリアミドイミドベルトを得た。
得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
官能基含有カーボンブラックの代わりに、官能基含有処理前のカーボンブラックを同量用いた以外は実施例1と同様にして無端ポリアミドイミドベルトを作製した。得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から、官能基を含まないカーボンブラックを用いて作製した無端ベルトは表面抵抗率の面内のばらつき、表面抵抗率の環境依存性、電圧依存性、体積抵抗率の環境依存性、電圧依存性が大きく、耐久性試験前後での表面抵抗率の増加が大きいのに対し、各実施例とも、表面抵抗率の面内のばらつき、表面抵抗率の環境依存性、電圧依存性、体積抵抗率の環境依存性、電解依存性のいずれも小さく、耐久性試験前後での表面抵抗率の変化も小さいことがわかる。
【0051】
【発明の効果】
半導電性樹脂成形体全体にわたって体積抵抗率や表面抵抗のバラツキが小さく、更に、そのような表面抵抗や体積抵抗が湿度、印加電圧によって実質的に変動することがない半導電性樹脂成形体を提供することができるという優れた効果を示すものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性樹脂成形体に関する。このような半導電性樹脂成形体は、静電式複写コピー機、プリンタ等の感光部材、転写体、中間転写体、搬送ベルト、帯電防止部材、電子デバイスなどに用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
電子写真機器部品の感光部材、転写体、中間転写体、トナーの搬送部材においては、導電性が、表面抵抗値として、106〜1014Ω/□、好ましくは、108〜1013Ω/□の範囲にあることが電子写真構成要素として特に重要である。
所望の特性が得られない場合、コピー品質の低下、プリント障害等が発生する場合があるが、その多くは表面抵抗値が上記の範囲内にないことにともなう効果的でないトナーの放出によるものである。
【0003】
従来、半導電性樹脂成形体は、絶縁性の高分子材料に、カーボン粉末、黒鉛粉末、カーボン繊維、金属粉末、金属酸化物粉末等の導電性フィラーを分散させて成形する方法で作製されていた。
しかしながら、このように、導電性フィラーを高分子材料中に分散させ、これを成形して得られる導電性樹脂成形体は、その体積抵抗率や表面抵抗等の電気抵抗が成形体における導電性フィラーの分散状態に大きく依存し、所要の電気特性を精度、再現性よく、しかも、成形体全体にわたって均一に与えることが困難である。また、得られる成形体における体積抵抗率や表面抵抗等の電気抵抗が、印加電圧に大きく依存する欠点がある。
【0004】
そこで、上記のような問題のない方法として、導電性ポリアニリンを他の高分子材料と複合させて、導電性樹脂とする方法の提案がある(例えば、特許文献1参照。)。
この方法によれば、導電性充填材を高分子材料中に分散させる方法に比べて、所要の体積抵抗率や表面抵抗等の電気抵抗を、精度、再現性よく得ることができ、且つ、成形体全体にわたって均一とすることができる。
【0005】
また、導電性ポリアニリン、導電性充填材を絶縁性マトリックス高分子材料と複合させて、導電性樹脂成形体とする方法の提案もある(例えば、特許文献2参照。)。
この方法によれば、導電性ポリアニリンを絶縁性高分子材料中に分散させ、通常の高分子材料よりも電気抵抗が低い高分子樹脂材料が得られ、これに導電性充填材を混合させることにより成形体の体積抵抗及び表面抵抗を精度、再現性よく制御して、均一な抵抗値を与えることができる。導電性は導電性充填材に基づくため、環境の湿度による電気抵抗値の変動が殆どない。
【0006】
また、金属、炭素、無機酸化物、無機燐酸塩等の無機微粒子とπ共役二重結合からなる導電性高分子の複合体を用いる接着剤、塗料、処理剤、コーティング剤が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
この方法によれば、1.8nmの酸化珪素等の無機微粒子を水溶液中に混合させ、濃硫酸、アニリン、過硫酸アンモニウムの混合液中で攪拌し、緑黒色ポリアニリンーシリカ複合体が得られる。この複合体を樹脂や添加剤と兼用して導電性、帯電防止性、防食性付与の目的に使用することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−262991号公報
【特許文献2】
特開平9−176329号公報
【特許文献3】
特開平11−241021号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1記載の方法では、ポリアニリンは、そのドーピング状態でそれ自体の導電性が大きく変化するので、湿度によって、成形体の体積抵抗率や表面抵抗が大きく変動する問題がある。
また、特許文献2記載の方法では、ポリアニリンがイオン性導電体であるため、ポリアニリンのみを導電材料として使用する成形体に比べて、湿度の影響を受けにくいとはいっても、導電性充填材のみの成形体と比べると、湿度の影響があり、しかも、電気伝導は導電性充填材の接触に基づくものであるため、導電体量が多量に必要となると共に、体積抵抗及び表面抵抗が印加電圧によって大きく変動するという問題がある。
また、特許文献3記載の方法では、無機微粒子と導電性高分子の複合体は、粒子表面に導電性高分子を重合する時に使われる酸化剤、触媒等が粒子中に残留し、これらが残留すると、残留酸化剤、触媒の析出による腐食等といった問題が生ずる。しかしこれらの残留物を取り除くのは非常に困難であり、最終的に高価なものになる問題がある。
【0009】
本発明は、従来の半導電性樹脂成形体における上述のような問題を解決するためになされたものであって、精度及び再現性共によく制御しつつ、しかも、半導電性樹脂成形体全体にわたって体積抵抗率や表面抵抗のバラツキが小さく、更に、そのような表面抵抗や体積抵抗が周囲の環境の湿度(水分)、印加電圧によって実質的に変動することがない半導電性樹脂成形体を提供することを目的とする。特に、表面抵抗が106〜1014Ω/□の範囲にある上述したような半導電性樹脂成形体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の半導電性樹脂成形体は、少なくとも、導電性高分子、導電性充填材及び絶縁性の高分子材料を含む半導電性樹脂成形体であって、前記導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及びハロゲン化処理から選ばれる1種以上で処理されており、樹脂成型体が実質的に酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を含有しないことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、導電性高分子につき、説明する。
本発明において、導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子を使用することができる。このような高分子としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類及びこれらの共重合体等が挙げられる。
これらの中では、分散性、取り扱い性、および樹脂への分散及び相溶性の観点から有機溶媒可溶であることを考慮すると、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びこれらの共重合体等が好ましい。
このような高分子としては、下記式Iで表される単位からなる高分子、あるいは下記式Iで表される単位と、下記式IIで表される単位とからなる高分子を好ましい例として例示できる。
【0012】
【化2】
【0013】
[式I及び式IIにおいて、X、YはNR(Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)またはSであり、XとYとでRが互いに同一であっても異なっていてもよく、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、水素、水酸基、アルキルカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基またはアリールオキシスルホニル基を表し、R1、R2、R3、R4は同一または互いに異なっていてもよい。]
【0014】
前記式I、式IIにおけるR1、R2、R3、R4の具体例を以下に示す。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基を例示できる。これらの中では、導電性、溶媒溶解性、及び分子立体障害の少ないことなどの点からメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基がより好ましい。
カルボニル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等のアルキルカルボニル基を示すことができる。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等を例示できる。
アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等を例示できる。これらの中では、フェニル基、トリル基、ビフェニル基が好ましい。
アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基またはアリールオキシスルホニル基におけるアルキル基、アリール基としては、上述のアルキル基、アリール基で例示したものをそのまま用いることができる。
導電性高分子における式Iで表される単位、式IIで表される単位の繰り返し数は2〜10000が好ましく、導電性充填材との付着性、配位、ドーピング及び絶縁性の高分子材料への均一分散性の点から、10〜3000がより好ましい。
【0015】
更に、ポリピロール類、ポリチオフェン類、及びこれらの共重合体の中でも、溶媒に溶解させるため、芳香族複素環の3及びまたは4位に官能基を有するものは好ましい、これらの例示として上記式Iにおいて、R3が−COOR5で示される基であり、上記式IIにおいて、R4が−COOR6で示される基である高分子を好ましい例として例示できる。
(R5、R6は水素、アルキル基またはアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記式I、式IIにおけるR5、R6の具体例としては、式Iおよび式IIのR1、R2、R3、R4の具体例で説明したアルキル基、アリール基を用いることができる。
【0016】
好適なポリピロール類の例としては、上記式IにおけるXがNHで、R3が−COOR5で示される基であり、上記式IIにおけるYがNHで、R4が−COOR6で示される基である高分子を示すことができる。
その具体例としては、R2、R4が水素であるポリピロール誘導体、R2、R4がメチル基であるポリピロール誘導体、R2、R4がエチル基であるポリピロール誘導体、R2、R4がブチル基であるポリピロール誘導体、R2、R4の一方がエチル基で他方がブチル基であり、R1、R3はメチル基であるポリピロールの共重合体(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)等を例示できる。
【0017】
好適なポリチオフェン類の例としては、上記式IにおけるXがSで、R3が−COOR5で示される基であり、上記式IIにおけるYがSで、R4が−COOR6で示される基である高分子を示すことができる。
その具体例としては、R2、R4が水素であるポリチオフェン誘導体、R2、R4がメチル基であるポリチオフェン誘導体、R2、R4がエチル基であるポリチオフェン誘導体、R2、R4がブチル基であるポリチオフェン誘導体、R2、R4の一方がエチル基で他方がブチル基であり、R1、R3はメチル基等のアルキル基であるポリチオフェンの共重合体等を例示できる。
【0018】
なお、導電性高分子には、酸化剤等の重合触媒が残存していないことが好ましい。この重合触媒は重合後、蒸留水充分洗浄することで除去できる。また、導電性高分子の重合時においては、酸化剤等の重合触媒によって化学ドープされる。このドープ状態を還元剤を用いて脱ドープすることによって未ドープ導電性高分子を得ることができる。
【0019】
次に、導電性充填材につき、説明する。
本発明における導電性充填材は、導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理されていることが特徴としている。
本発明における導電性充填材の粒径は、平均粒径が5nm〜5μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。粒径が5μmより大きくなると分散性が低下し、成形体表面が粗くなる傾向にあり、5nmより小さくなると比較的そろった粒径のものを製造することが困難になる傾向にあると共に、2次凝集が起きやすくなる。
【0020】
導電性充填材としては特に、限定されるものではなく、従来より知られているものが適宜に用いられる。例えば、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボン短繊維、グラファイト等の炭素粒子、金属粒子、金属酸化物等の金属酸化物粒子等を挙げることができる。絶縁性の高分子材料への分散の点から、絶縁性の高分子材料の比重に近い炭素系粒子が好ましい。この炭素粒子としては、例えば、カーボン、カーボンナノチューブ、カーボン繊維、グラファイト等が挙げられる。具体的に、東海カーボン株式会社製「商品名:トーカブラック#8500/F」、電気化学工業株式会社製「商品名:デンカブラック」、旭カーボン株式会社製「商品名:#15、F―200、HS−500」、デグサジャパン株式会社製「商品名:Special Black 4、Special Black 4A」等が挙げられる。
【0021】
導電性充填材は酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理されているので、導電性充填材表面に、導電性高分子と導電性充填材との配位及びドーピング効果を有する官能基が導入されている。
酸化処理は、導電性充填材を気相または液相において、酸化剤、酸素、オゾン、過酸化水素等を用いて処理すると導入することができる。この処理により、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等の官能基を導電性充填材表面に導入することができる。
スルホン酸化処理は、導電性充填材を気相または液相において、SO3、濃硫酸、過硫酸化物等で処理することによって導入することができる。
ハロゲン化は一般的なハロゲン化剤を用いて処理すればよい。
上記官能基の導入量として、表面含酸素率及び/または表面含硫率は、導電性充填材の表面元素に対して、0.1〜50%の範囲であれば良好な効果が得られる。0.1%以下の含有率では、導電性充填材の導電性がよいが、導電性高分子との配位、ドーピング効果が小さく、導電性充填材及び導電性高分子の分散性、電気特性が悪くなり好ましくない。50%以上の含有率では、導電性高分子との配位、ドーピング効果が大きくなるが、導電性充填材自体の導電性が低下し、導電性充填材が大量に必要であると共に半導電性成形体の環境特性の低下をもたらすので好ましくない。好適な含有率としては、表面含酸素率及び/または表面含硫率は、導電性充填材の表面元素に対して、1〜30%の範囲である。
【0022】
導電性充填材の表面に導入された官能基の同定方法としては、光電子分光法(ESCA)によって測定可能である。また、水酸化カリウム、CH3MgI、CH2N2等を用いた同定法も有効である。
【0023】
導電性充填材は上記の官能基を有するので、これを導電性高分子に添加すると導電性高分子へのドープ効果を生じ、導電性高分子が高い導電性を示すようになると共に、隣接する導電性充填材同士の間に導電性高分子が配位され、導電性充填材間の直接接触がなくても成形体全体に高い電気伝導性が得られる。なお、成形体全体の電気伝導性は、導電性充填材と導電性充填材との間に配位された導電性高分子に支配されるため、導電性高分子の電気特性、耐環境特性を示す。
【0024】
本発明の半導電性樹脂成形体は酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を実質的に含有しない。この「実質的に含有しない」とは、成形体中の成分を酸化、スルホン酸化あるいはハロゲン化できる量を含有しないことを意味し、50ppm以上含有しないことを意味する。本発明においては導電性充填材の酸化処理、スルホン酸化処理及び/又はハロゲン化処理にあたって用いた酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤のいずれも残存しないように、導電性高分子、あるいは絶縁性の高分子材料に添加する前に、導電性充填材から酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を除去しておく必要がある。この除去処理は、水性の処理剤を用いた場合は多量の水で洗浄し、乾燥すればよく、気体を用いた場合は排気、空気との置換を行えばよい。
【0025】
導電性高分子と導電性充填材との比率は、導電性充填材100質量部に対して0.1〜1000質量部以下であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。導電性高分子が0.1質量部未満の含有率では、成形体の電気伝導性は導電性充填材の接触による電気伝導に支配され、導電性充填材の電気特性が示され、体積抵抗率や表面抵抗が印加電圧により変化する傾向が生じ好ましくない。一方、導電性高分子量が1000質量部を超えると、絶縁性の高分子材料への相溶性または分散性が悪くなり好ましくない。
【0026】
次に、バインダー樹脂について説明する。
バインダー樹脂は本発明の半導電性樹脂成形体に適度の機械的強度と可撓性を付与するために用いられる。
バインダー樹脂としては公知の樹脂を用いることができるが、本発明の半導電性樹脂成形体を電子写真機器の中間転写用樹脂成形体として用いる場合は、複数のロールに懸架されて使用されるので、充分な機械的強度と可撓性を有する材料を選択する必要があり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリル系樹脂等から選ばれる1種類以上の樹脂成分を用いることができる。
【0027】
これらの樹脂の中では、機械的強度、可撓性、自己消火性、耐熱性等を考慮すると、ポリイミド系樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。特に、ポリイミド系樹脂は、その芳香環のπ電子と導電性高分子のπ共役電子との相互作用により相溶性を高め、良好な機械的特性、電気的安定性、高い耐環境特性を備えるので特に好ましい。絶縁性の高分子材料がポリイミド系樹脂である場合、導電性高分子がバインダー樹脂に均一に分散させることを可能にするためには、有機溶媒可溶性ポリイミド系樹脂であることが好ましい。このポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂を示すことができる。
【0028】
バインダー樹脂を溶解する有機溶媒は、バインダー樹脂溶解能を有する限り、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。必要に応じて、これらの溶剤も、単独で、あるいはこれらの2種以上の混合物、又は他の有機溶媒との混合物として用いられる。有機溶媒としては、導電性高分子のバインダー樹脂への相溶及び分散性の点から導電性高分子とバインダー樹脂の双方を溶解または分散可能な有機溶媒であることが好ましく、導電性高分子もバインダー樹脂も同種の溶媒で溶解することが好ましく、同一の溶媒で溶解することがより好ましい。
【0029】
導電性高分子のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂100質量部あたり、0.001〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。また、機能性導電性充填材のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましい。
導電性高分子と機能性導電性充填材の合計添加量はバインダー樹脂に対して、絶縁性の高分子材料100質量部あたり、1〜20質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがより好ましい。添加量を1質量部以上とすることにより、樹脂成形体として使用しうる103〜1013Ω・cmの体積抵抗率とすることができる。また、添加量を20質量部以下にすることにより、樹脂成形体の機械的特性を良好な範囲に維持できる。
この導電性高分子と、バインダー樹脂とを含有する樹脂成形体の体積抵抗率は103〜1013Ω・cmであることが好ましい。1013Ω・cm以下にすることにより除電効果を維持でき、103Ω・cm以上とすることで静電気の保持が可能となる。より高度の静電気の保持性能と除電性能を維持する観点からは、105〜1012Ω・cmであることがより好ましい。
【0030】
本発明における導電性高分子、機能性導電性充填材及び絶縁性の高分子材料の混合組成物のみでも、導電性高分子と機能性導電性充填材との付着、配位及びドーピング効果により、充分な電気特性が得られるが、必要に応じて、電気抵抗を調節するためには、導電性高分子へのドーパントをドープして使用することができる。
このドーパントは、導電性高分子100質量部あたり、1〜50質量部用いることが好ましい。
ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等が使用できる。
ハロゲン化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等を挙げることができる。
ルイス酸としては、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素、無水硫酸等を挙げることができる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼フッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、有機カルボン酸、スルホン酸等の有機酸を挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボニル基が一つまたは二つ以上を含むものが使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸等を挙げることができる。
【0031】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホン酸基が一つまたは二つ以上を含むものが使用できる。例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に一つのスルホン酸基を含むスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸基を複数個含むスルホン酸化合物を挙げることができる。
また、本発明においるドーパントとして、有機酸はポリマー酸であってもよい。ポリマー酸としては例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等を例示できる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物を使用できる。このような化合物としては、例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げることができる。
【0032】
有機金属化合物の例としては、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、ビス(テトラ−n−ブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛錯体、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)ニッケル(III)錯体等が挙げられる。
【0033】
本発明の半導電性樹脂成形体は、導電性充填材の表面に機能性置換基を導入しているので、導電性高分子と導電性充填材との間には付着のみではなく、イオン結合、配位結合などの化学的結合を形成し、ドーピングと同様の効果を示すことにより、電気抵抗、環境特性にも安定したものとなる。
本発明の実施形態によれば、導電性高分子単体または導電性充填材単体を用いる場合と比べて、表面抵抗及び体積抵抗率を高精度で制御でき、更に、該樹脂成形体の面方向及び厚み方向ともバラツキがなく、耐環境性がよく、電圧安定性に優れ、所望の半導電性を安定して得ることができる。
【0034】
本発明における半導電性樹脂成形体は、導電性高分子、導電性充填材及びバインダー樹脂を含む組成物を成形してなる。その成形法としては、押出成形、遠心成形、注型法などを採用可能であるが、厚み精度、電気抵抗精度、表面平滑性等に優れることから、遠心成形法を採用することが好ましい。上記の導電性高分子、機能性導電性充填材及びバインダー樹脂を有機溶剤に溶解、分散させて成形用混合樹脂溶液を調整し、遠心成形法により均質な成形体を安定して作製できる。
遠心成形法とは、流動性を有する成形用混合樹脂溶液を円筒状の金型の内側に注入し、金型を一定速度で回転させると、成形用混合樹脂溶液が遠心力の作用により金型の内壁に付着するので、これを加熱するなどにより樹脂膜を金型の内側に形成して、形成された樹脂膜を取り出して所望の成形品を作製する方法である。使用される金型の材質は特に限定されるものではないが、耐久性、形状安定性から、金属製が好ましい。また金型の内面に鏡面加工、フッ素処理、シリコーン処理等を施してもよい。
【0035】
成形用混合樹脂溶液の成形時の粘度は50,000Pa・s以下であることが好ましい。粘度を50,000Pa・s以下にすることにより、回転による遠心力に対する樹脂内部の抵抗応力が高くなり過ぎることがなく、成形用混合樹脂溶液を金型の内壁に均一に付着させることができる。また、付着させた樹脂層のレベリングも充分で、均質な成形膜を得ることができる。
樹脂の成形は適切な温度下に置いて、金型を必要な回転数で回転させながら行う。成形温度には特に制限はなく、均一な加熱系で成形用樹脂溶液に含まれる溶媒を蒸発させる温度であればよいが、成形用混合樹脂の分解温度以下で行うことが好ましい。成形時の金型の回転数は、成形用混合樹脂溶液の粘度によって異なる場合があるが、成形用混合樹脂溶液を均一に金型内壁に付着させる遠心力を発生する回転数以上であればよい。成形用樹脂材料の成形・乾燥条件は適宜選択することができる。
成形・乾燥後の成形樹脂膜を金型ごと冷却すると、半導電性樹脂成形体と金型との熱膨張率の差によって、半導電性樹脂成形体は金型から剥離し、これを所定の幅にカットすることにより、半導電性樹脂成形体が得られる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例においては、半導電性樹脂成形体として、電子写真機器部品の感光部材、転写体、中間転写体、トナーの搬送部材に使用可能な無端ベルトの例で説明する。
なお、実施例、比較例で得た無端ベルトの評価は以下のようにして行った。
【0037】
(表面抵抗率)
表面抵抗率は、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURSプローブを用いて、23℃/50%RH環境下で、無端ベルトに500Vの電圧を印加し、10秒後の電流値により算出した。
(表面抵抗率の面内バラツキ)
表面抵抗率の面内バラツキは、無端ベルトを周方向に5分割、幅方向に3分割し、ベルト面内15点について表面抵抗率を測定し、表面抵抗率の対数値の最大値と最小値の差を求め、表面抵抗率の面内バラツキの指標とした。
(表面抵抗率の環境依存性)
表面抵抗率の環境依存性は、低温低湿(L/L)(10℃/15%RH)環境と高温高湿(H/H)(27℃/80%RH)環境において測定した表面抵抗率の対数値の差を求め、表面抵抗率の環境依存性の指標とした。
(表面抵抗率の電圧依存性)
表面抵抗率の電圧依存性は、印加電圧100Vと印加電圧1000Vとの条件下で測定した表面抵抗率の対数値の差を求め、表面抵抗率の電圧依存性の指標とした。
【0038】
(表面抵抗率の耐久性)
本実施例における表面抵抗率の耐久性試験は、無端ベルトをφ25mmのアルミニウム製ローラ(2本)に、荷重5kgfで懸架し、回転スピードが15rpmで10万回回転させ、10万回転前後での500V印加電圧における表面抵抗値の差で評価した。
【0039】
(体積抵抗率)
体積抵抗率の測定は、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURSプローブを用いて、23℃/50%RH環境下で、無端ベルトに100Vの電圧を印加し、10秒後の電流値により算出した。
(体積抵抗率の環境依存性)
体積抵抗率の環境依存性は、低温低湿(L/L)(10℃/15%RH)環境と高温高湿(H/H)(27℃/80%RH)環境において測定した体積抵抗率の対数値の差を求め、体積抵抗率の環境依存性の指標とした。
(体積抵抗率の電圧依存性)
体積抵抗率の電圧依存性は、印加電圧100Vと印加電圧500Vとの条件下で測定した体積抵抗率の対数値の差を求め、体積抵抗率の電圧依存性の指標とした。
【0040】
(実施例1)
[表面に官能基を有する導電性充填材の作製]
水にカーボンブラック(商品名:Special Black4、デグザジャパン社製)を加え、所定ボールミルで2時間室温で混合し、カーボンブラック分散水溶液を作製した。そして、このカーボンブラック分散水溶液を攪拌しながら、所定量過酸化水素添加溶液を加え、80℃で加熱しながら6時間混合した。得られた混合液中の水を減圧除去して官能基(水酸基)含有カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックの表面の表面含酸素率をESCAで測定したところ、導電性充填材の表面元素数100個に対して1個(官能基含有率1%)であった。得られたカーボンブラックには過酸化水素の残留は認められなかった。
【0041】
[無端ベルトの作製]
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)85質量部に得られた官能基含有率1個のカーボンブラック15質量部を添加してボールミルで6時間室温で混合し、官能基含有カーボンDMAc分散液を作製した。このカーボンDMAc分散液(カーボン換算9質量部)にポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)の15wt%DMAc分散液(ポリピロール換算1質量部)を添加し、ホモジナイザーを用いて6000rpmで3時間攪拌し、固形分が15wt%濃度の導電材料分散DMAc溶液を得た。
次に、ポリアミドイミド樹脂の15質量%DMAc溶液(商品名:バイロマックスHR−100、東洋紡績社製)(樹脂換算90質量部)に固形分換算10質量部の導電材料分散DMAc溶液を添加し、三本ロールを用いて分散させ、固形分が15wt%濃度の成形用混合樹脂溶液を得た。
前記成形用混合樹脂溶液300gを円筒型金型に入れ、溶液が金型の内壁に均一に広がるように金型を回転速度1500rpmで回転させて成形膜を形成し、金型を100℃雰囲気下に60分間置いた後、250℃雰囲気下で120分間加熱し、溶剤を揮発させた。金型を冷やし、周長680mm、幅200mm、厚み150μmの無端ポリアミドイミドベルトを得た。
得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2、実施例3)
表1に記載の官能基(水酸基)含有率のカーボンブラックを用いて実施例1と同様の方法により実施例1で得たと同様のベルト寸法の無端ポリアミドイミドベルトを得た。得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
濃硫酸にカーボンブラック(商品名:Special Black4、デグザジャパン社製)を加え、攪拌しながら12時間60℃で混合した。カーボンブラック混合溶液をろ過し、余剰硫酸を多量の水で洗い固形物を乾燥し、スルホン酸基含有カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックの表面の表面含硫率をESCAで測定したところ、導電性充填材の表面元素数100個に対して7個(官能基含有率7%)であった。また、得られたカーボンブラックには硫酸の残留は認められなかった。
【0044】
[無端ベルトの作製]
DMAc85質量部に得られた官能基含有率7個のカーボンブラック15質量部を添加してボールミルで6時間室温で混合し、官能基含有カーボンDMAc分散液を作製した。このカーボンDMAc分散液(カーボン換算9質量部)にポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)の15wt%DMAc分散液(ポリピロール換算1質量部)を添加し、ホモジナイザーを用いて6000rpmで3時間攪拌し、固形分が15wt%濃度の導電材料分散DMAc溶液を得た。
次に、ポリアミドイミド樹脂の15質量%DMAc溶液(商品名:バイロマックスHR−100、東洋紡績社製)(樹脂換算90質量部)に固形分換算10質量部の導電材料分散DMAc溶液を添加し、三本ロールを用いて分散させ、固形分が15wt%濃度の成形用混合樹脂溶液を得た。
前記成形用混合樹脂溶液300gを円筒型金型に入れ、溶液が金型の内壁に均一に広がるように金型を回転速度1500rpmで回転させて成形膜を形成し、金型を100℃雰囲気下に60分間置いた後、250℃雰囲気下で120分間加熱し溶剤を揮発させた。金型を冷やし、周長680mm、幅200mm、厚み150μmの無端ポリアミドイミドベルトを得た。
得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
(実施例5)
表1に記載の官能基(スルホン酸基)含有率のカーボンブラックを用いて実施例4と同様の方法により無端ポリアミドイミドベルトを得た。得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例6)
カーボンブラック(商品名:Special Black4、デグザジャパン社製)を容器に入れ、容器ごと40℃に保ちながら塩素ガスを0.05L/min.の流量で2時間流入させた。得られた塩素ガス処理カーボンブラックを蒸留水に分散させ、多量の水で洗った後、乾燥して塩素基含有カーボンブラックを得た。得られたカーボンブラックの表面の表面含塩素基率をESCAで測定したところ、導電性充填材の表面元素数100個に対して20個(官能基含有率20%)であった。また、得られたカーボンブラックには塩素の残留は認められなかった。
【0047】
[無端ベルトの作製]
DMAc85質量部に得られた塩素基含有率20個のカーボンブラック15質量部を添加してボールミルで6時間室温で混合し、塩素基含有カーボンDMAc分散液を作製した。このカーボンDMAc分散液(カーボン換算9質量部)にポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)の15wt%DMAc分散液(ポリピロール換算1質量部)を添加し、ホモジナイザーを用いて6000rpmで3時間攪拌し、固形分が15wt%濃度の導電材料分散DMAc溶液を得た。
次に、ポリアミドイミド樹脂の15質量%DMAc溶液(商品名:バイロマックスHR−100、東洋紡績社製)(樹脂換算90質量部)に固形分換算10質量部の導電材料分散DMAc溶液を添加し、三本ロールを用いて分散させ、固形分が15wt%濃度の成形用混合樹脂溶液を得た。
前記成形用混合樹脂溶液300gを円筒型金型に入れ、溶液が金型の内壁に均一に広がるように金型を回転速度1500rpmで回転させて成形膜を形成し、金型を100℃雰囲気下に60分間置いた後、250℃雰囲気下で120分間加熱し溶剤を揮発させた。金型を冷やし、周長680mm、幅200mm、厚み150μmの無端ポリアミドイミドベルトを得た。
得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
官能基含有カーボンブラックの代わりに、官能基含有処理前のカーボンブラックを同量用いた以外は実施例1と同様にして無端ポリアミドイミドベルトを作製した。得られた無端ポリアミドイミドベルトの電気特性及び荷重耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から、官能基を含まないカーボンブラックを用いて作製した無端ベルトは表面抵抗率の面内のばらつき、表面抵抗率の環境依存性、電圧依存性、体積抵抗率の環境依存性、電圧依存性が大きく、耐久性試験前後での表面抵抗率の増加が大きいのに対し、各実施例とも、表面抵抗率の面内のばらつき、表面抵抗率の環境依存性、電圧依存性、体積抵抗率の環境依存性、電解依存性のいずれも小さく、耐久性試験前後での表面抵抗率の変化も小さいことがわかる。
【0051】
【発明の効果】
半導電性樹脂成形体全体にわたって体積抵抗率や表面抵抗のバラツキが小さく、更に、そのような表面抵抗や体積抵抗が湿度、印加電圧によって実質的に変動することがない半導電性樹脂成形体を提供することができるという優れた効果を示すものである。
Claims (6)
- 少なくとも、導電性高分子、導電性充填材及びバインダー樹脂を含む半導電性樹脂成形体であって、前記導電性充填材が酸化処理、スルホン酸化処理及びハロゲン化処理から選ばれる1種以上で処理されており、樹脂成型体が実質的に酸化処理剤、スルホン酸化処理剤、ハロゲン化処理剤を含有しないことを特徴とする半導電性樹脂成形体。
- 前記導電性高分子が、下記式Iで表される単位からなる、あるいは下記式Iで表される単位と、下記式IIで表される単位とからなる高分子であることを特徴とする請求項1記載の半導電性樹脂成形体。
- R3が−COOR5で示される基であり、R4が−COOR6で示される基であることを特徴とする請求項2記載の半導電性樹脂成形体。
(R5、R6は水素、アルキル基またはアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。) - 前記導電性充填材の表面含酸素率と表面含硫黄率との合計が、表面元素原子に対し0.1〜50%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導電性樹脂成形体。
- 前記導電性充填材が炭素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導電性樹脂成形体。
- 前記バインダー樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導電性樹脂成形体。
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