JP2004126372A - シームレスベルトおよびその製造方法 - Google Patents

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川口 利行
Hiromichi Nei
寧 太陸
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Abstract

【課題】環境の変化、印加電圧の変化に抵抗が影響されない導電性ポリマーを用い、腐食性のある触媒やドーパントを使用せずに、機械的強度が高く、抵抗のバラツキが少なく、耐久性があって、非汚染性で非腐食性の半導電性シームレスベルトおよびその製造方法を提供する
【解決手段】基体となる非晶性熱可塑性樹脂と、電子共役系の5員複素環化合物の酸化重合物と、キノン化合物と、ドーパントとしてのカーボン化合物とを含む半導電性シームレスベルト、及び非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に電子共役系の5員複素環化合物を溶解し、オゾンまたは酸素と、キノン化合物を用いて該5員複素環化合物を非水系で酸化重合し、これにドーパントとしてカーボン化合物を加え、キャスティング法によりシームレスベルトを賦形することを特徴とする半導電性シームレスベルトの製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シームレスベルトおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機、レーザープリンター、ファクシミリ、あるいはこれらを複合したOA機器には、トナーや紙などを搬送し、所定の位置で転写または離脱させるために半導電性のシームレスベルトが用いられている。これは、シームレスベルトに数百ボルトの電圧を印加して、トナーや紙などを静電的に付着させ、それぞれを搬送し、所定の位置で電圧を解除して転写や離脱を行わせるものである。
【0003】
前記したOA機器などに用いる、半導電性シームレスベルトは、熱可塑性樹脂にカーボンブラック、金属粉などの固体フィラーを分散させたもの、あるいは界面活性剤などのイオン導電剤を混合したものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、これら導電性フィラーを分散させたものは、求める体積抵抗あるいは表面抵抗が、10〜1014Ω・cmと高く、また、その抵抗をコントロールすることは、フィラーが凝集しやすいため難しく、さらにベルトの回転による機械的なストレス、あるいは印加される高電圧による放電などでフィラーの移動が起こりやすく抵抗が安定しないと言う問題があった。また、導電性フィラーを分散させたものは電子電導性であるため、印加する電圧の変化によっても抵抗が変化することから、印刷画像が安定しないという問題もあった。イオン導電性のものは、抵抗が湿度に影響されるため、同じく抵抗が安定しないという問題があり、経時の使用においてイオン導電剤がブリードし、感光ドラムなどを汚染するという問題があった。
【0004】
これに対し、導電性付与成分に導電性ポリマーを用い、抵抗値を環境変化に対して安定させる提案がある。(例えば、特許文献3参照)
ここには、導電性ポリマーであるポリアニリンそのものを、ベルトの基体表面に薄く密着させたものが提案されている。しかし、この方法では、電子写真複写機などで求められる抵抗水準に合わせる事が難しく、また本来接着性のない導電性ポリマーの基体表面への密着に問題があり、耐久性に劣っている。
【0005】
また、ポリアニリンを、必要であれば、アルキル基変性化やその他の変性、あるいはスルホン化された樹脂を相溶化剤として用い、バインダー樹脂溶液と混合し、該導電性ポリマーインクを基体表面に設ける提案がなされている。(例えば、特許文献4参照)
このような変性物、あるいは添加物を加えた、導電性ポリマー混合物を表層に設けたものは、基材との密着性は改良されているものの、導電性ポリマーによる改良は表面部分だけで、ベルトとして機能する十分な機械物性を持つ基体自体は、依然として前記した導電性フィラーを混合したものが用いられており、完全に抵抗の安定が図られているものではない。
【0006】
これに対し、ベルト基体そのものの中に、導電性ポリマーを混合する提案がなされている。ポリカーボネートを加熱溶融し、固体のポリアニリンを強制的に混練するもの(例えば、特許文献5参照)、ポリイミド前駆体のポリアミック酸に固体ポリアニリンを溶媒に溶かして混合したもの(例えば、特許文献6参照)が挙げられる。
【0007】
また、導電性ポリマーの化学酸化重合には、触媒として、過硫酸、過硫酸塩類、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸類、過マンガン酸塩類、ハロゲン類、硝酸銀、遷移金属塩化物類、金属酸化物類、クロム酸類、次亜塩素酸類、次亜塩素酸塩類などの強酸やその塩が用いられ、さらには、ドーパントとしてハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸類、遷移金属塩化物類などの無機電子受容体やテトラシアノキノジメタンなどの有機電子受容体が用いられている。
この場合、酸あるいは塩類は、非水溶液には難溶であるため、重合系が水系に限られており、使用可能な樹脂は、極性の高い物に制限させられている。
また、フラーレン類をドーパントとして使用する公知文献としては、非特許文献1などがある。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−155990号公報
【特許文献2】
特開2002−196591号公報
【特許文献3】
特開2002−99152号公報
【特許文献4】
特開2000−182235号公報
【特許文献5】
特開平5−262991号公報
【特許文献6】
特開2001−109277号公報
【非特許文献1】
J.Phys.Chem.B 1998,102,4049−4053
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリアニリンを始めとする多くの導電性ポリマーは、可溶化の変性を施しても、ポリカーボネートなどの極性の高くない樹脂と混合すると、導電性ポリマーの凝集が生じやすい。導電性シームレスベルトに求められる導電性が比較的低い(抵抗が高い)と言えども、凝集が生じると混合物の導電性が低下するため、多量の導電性ポリマーを添加しなければならなくなる。導電性ポリマーは基材樹脂に比べて柔軟性や機械的強度に劣るため、導電性ポリマーの増加により機械的な欠陥部分が増える。このような状況になると、基体樹脂の持つ強度を十分に発揮できていない。また、ほぼ最高の強度を有する極性樹脂のポリイミド前駆体は、混合には都合が良いが、イミド環の閉環反応には、300℃ほどの高温が必要で、導電性ポリマーあるいはドーパントに影響し、劣化や分解が起こり、抵抗が高く、不安定になるという問題がある。
【0010】
また、前記の触媒あるいはドーパントとしてのこれらの強酸あるいは塩は、基体の樹脂の量あるいはバインダー樹脂の量から比べると、少量と言えども、ベルト基体に含まれたまま、感光ドラムや金属ロール等に長時間接触するので、ベルト全体としてのpHは強い酸性にならないが、金属イオンや陰イオンを含むものであるから、接触物表面を変質あるいは腐食させる恐れがある。
さらに、これらを除去するべく、成型体を水洗したり、イオン交換法によって、導電性ポリマー水溶液から陽イオンや陰イオンを除去することも可能であるが、完全ではなく、これらの処理や設備のメンテナンスなどの手間がかかり、ベルト基体に導電性ポリマーを設ける際には、溶媒を適当な溶剤に置換しなければならず、導電性ポリマーの凝集が起こり、十分な分散体を得る事が出来ないという問題がある。
前記公知文献に記載のものはフラーレンをスルホン化したものであって、従来の酸を用いたドーピングとなんら変わることはなく、同様の問題を有している。
【0011】
本発明は、従来の上記したような問題を解決するためのものであって、湿度や温度の環境の変化、印加電圧の変化に抵抗が影響されない導電性ポリマーを用い、腐食性のある触媒やドーパントを使用せずに、機械的強度が高く、抵抗のバラツキが少なく、耐久性があって、非汚染性で非腐食性の半導電性シームレスベルトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の半導電性シームレスベルトは、基体となる非晶性熱可塑性樹脂と、電子共役系の5員複素環化合物の酸化重合物と、キノン化合物と、ドーパントとしてのカーボン化合物とを含むことを特徴とする。
また、本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法は、非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に電子共役系の5員複素環化合物を溶解し、オゾンまたは酸素と、キノン化合物を用いて該5員複素環化合物を非水系で酸化重合し、これにドーパントとしてカーボン化合物を加え、キャスティング法によりシームレスベルトを賦形することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
基体となる非晶性熱可塑性樹脂としては、ベルトとして必要な強度、伸度、弾性率を備えるシームレスベルトが得られる樹脂であればどのような非晶性熱可塑性樹脂も用いることができるが、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよび可溶性ポリイミド樹脂などが挙げられ、単一あるいは混合あるいは複合して使用することができる。可溶性ポリイミドとは、イミド環の閉環処理を終えていて、溶媒に可溶なものであって、ポリアミック酸を経由せずに、ブロック共重合法により直接合成するもので、米国特許5,502,143号などに詳しく記載されている。
これらの中では、ポリエーテルサルホンはクリープ率が低い点で好ましく、またポリアリレートは弾性範囲が広い点で本使用には適している。また、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよび可溶性ポリイミド樹脂は、比較的極性が高く、後述する導電性ポリマーとの相溶性や相性が良く、導電性ポリマーの溶解や分散には好都合である点で好ましい。
【0014】
5員複素環化合物としては、ピロール、チオフェン、フラン、インドールまたはこれらの誘導体を示すことができ、例えばN−メチルピロール、N−エチルピロール、3−メチルピロール、3−メトキシピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3−ヘキシルピロール、3−メチル−4−ピロールカルボン酸メチル、3−メチルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ブチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−チオフェン−β−エタンスルフォネール、2,3−ジハイドロチエノ(3,4−b)−1,4−ジオキシン、3−メチルフラン、3−メチルインドールが挙げられるが、これらに限定されるものでなく、単一あるいは複数のモノマーを共重合して用いることができる。
【0015】
これらの中では、入手の容易なピロール系、チオフェン系が好ましい。このうち、3位または3位および4位に置換基を有するものは、重合位置が2と5位に確定し易く、すなわち、導電性ポリマーとして共役をとり易く、2次元方向に成長するものであるから、周囲の溶剤あるいは樹脂と、少々極性が異なっても、凝集に対する抵抗力があるため、分散性が良く、少ない含有量でも所望の抵抗の発現が見られる。この置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;メトキシ基等のアルコキシ基を例示できる。
また、チオフェン系は、分極しているイオウ原子が、ピロールに見られるようなN位に水素原子はなく、立体障害がないので、後述する界面活性剤との親和性が高くなり、好ましい。
【0016】
5員複素環化合物の酸化重合物は、例えば、前記5員複素環化合物を酸化重合して得られるが、前記非晶性熱可塑性樹脂存在下で酸化重合して得られる。該酸化重合物の含有量は、前記非晶性熱可塑性樹脂との相溶性や酸化重合時の溶媒や樹脂との溶解性、の観点から、前記非晶性熱可塑性樹脂と酸化重合物の合計に対して、約0.1〜25質量%が好ましく、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%以上加えることにより適度の半導電性をシームレスベルトに付与できる。25質量%以下とすることにより、シームレスベルトとして好ましい破断強度、引張弾性率、伸び率のものとすることができる。
【0017】
キノン化合物としては、p−ベンゾキノン、m−ベンゾキノン、o−ベンゾキノン、α−ナフトキノン、β−ナフトキノン、アントラキノン、2,5−ジフェニルベンゾキノンなどが挙げられる。
キノン化合物は触媒として作用するので少ない量を用いるだけでよく、その量は、5員複素環化合物に対して、1〜20質量%である。
ドーパントとして用いられるカーボン化合物は、その特異的な分子構造から、電子を分子あたり6個吸引する高い能力を有するC60やC70、C36やその他低次、高次フラーレンのほか、C60とC70などのミクスチャー、フラーレンを含有するスートあるいは、シングルウォールナノチューブ、ダブルウォールナノチューブ、ナノホーンなどが挙げられる。また、溶解性、分散性を高める目的で、これらのカーボン化合物の一部にアルコキシル基などの置換基を導入したものでも良い。
フラーレン類をドーパントとして使用する公知文献のように、スルホン化されたフラーレンでなくとも、ドーパントとして機能することを確認した。即ち、本発明で用いるカーボン化合物は極性基で置換されていないカーボン化合物である。前記のカーボン化合物は、汚染性や腐食性のないドーパントとして非常に有益である。
カーボン化合物の添加量は導電性ポリマーの構造単位1モルに対して1/500〜1/2モル%であることが好ましい。添加量を1/500モル%以上とすることにより適度の半導電性を付与でき、1/2モル%を超えて用いても、それ以上のカーボン化合物添加による効果の向上は少なく、1/20以下とすることが効率的である。
【0018】
本発明のシームレスベルトは、以上の構成を基本とするが、トナーの密着、剥離向上などのために、ベルト表面の粗さをサンドブラストや金型内面の転写により、あるいは化学的にエッチングしてもよく、また、フッ素やシリコーン変性物をシームレスベルト表面に設けてもよい。また、帯電した電荷の減衰をコントロールするため、互いに異なる電気抵抗を有する複数の層で構成することも可能である。この場合、各層は充分な接着をしていなければならないため、同種あるいは同類の樹脂で、導電性ポリマーの含有量を変えたものであることが好ましい。
【0019】
シームレスベルトの大きさの範囲の一例を示すと、厚さは約0.03〜1.0mm程度で、外径200〜400mmφで、長さは250〜350mmのものを挙げることができるが、対象となるOA機器等の大きさ、種類によっては、この範囲に限定されるものでないことは明らかである。
また、その使用目的に耐えるという観点から、そのJIS−K7161に規定する引張弾性率は100kg/mm以上、破断強度は5kg/mm以上、伸びは10%以上であることが好ましく、吸水率は1%以下であることが好ましい。
なお、湿度変化により寸法が狂わないためには、湿度膨張係数が100ppm/%RH以下であることが望ましい。
【0020】
次に、本発明のシームレスベルトの製造方法につき説明する。
本発明の製造方法で用いられる非晶性熱可塑性樹脂、5員複素環化合物、カーボン化合物としては、前述のものが用いられる。
【0021】
本発明の製造方法においては、まず、非晶性熱可塑性樹脂を溶媒に溶解して非晶性熱可塑性樹脂非水溶液を調製する。
非晶性熱可塑性樹脂を溶解する非水系溶媒としては、BTX、アセトン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、メチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルカルビトール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、フルフラール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトフェノン、ジメチルスルホオキシド、スルホラン、ジオキソラン、シクロペンタノンなどの単一溶剤あるいは混合溶剤として用いることが出来る。
シームレスベルトに適した非晶性熱可塑性樹脂溶液は、溶媒に溶けやすいといっても限界があり、溶媒が水と容易に混合できる極性溶媒の場合は、非晶性熱可塑性樹脂溶液のゲル化を防止するために、極力水分の少ないものを使用することが好ましい。
樹脂溶液濃度は、非晶性熱可塑性樹脂と溶媒の種類によって異なるが、約5〜50質量%であることが、後述の5員複素環化合物の重合操作、シームレスベルトのキャスティング操作に都合が良い。
【0022】
次に、非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に電子共役系の5員複素環化合物を溶解する。この5員複素環化合物の量は、反応率を勘案して、前述のような重合物の含有量になるように、前記非晶性熱可塑性樹脂と5員複素環化合物の合計に対して、約1〜40質量%用いることが好ましい。
【0023】
次いで、非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に電子共役系の5員複素環化合物を溶解した状態で、5員複素環化合物の酸化重合を行う。
重合触媒としてオゾンまたは酸素と、キノン化合物を用いる。
まず、キノン化合物を非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に溶解する。キノン化合物としては、前述のものが用いられる。キノン化合物はラジカル化し、5員複素環化合物より水素を引き抜き、重合させるものと思われる。キノン化合物自体は、酸化も還元もバランスよく行われるもので、オゾンまたは酸素により、再度活性化されて、再び、5員複素環化合物より水素を引き抜き、重合させるものと思われ、触媒的に、すなわち、少ない量を用いるだけでよく、その量は、5員複素環化合物に対して、前述の量でよい。
【0024】
酸素またはオゾンはキノン化合物を再活性するために、少なくとも5員複素環化合物の当量と同じ当量が必要であるが、キノンと反応せずに系外へ排出されてしまい、不足するため、連続的に供給することがよい。過剰に加えられても、ガス状態であり、樹脂の非水溶液中では容易に分離され系外へ排出され、残らないという大きなメリットがある。
酸素やオゾンの代わりに、同様の酸化剤である過酸化水素の場合は、これを過剰に加えると、樹脂溶液中の溶媒が吸水し、樹脂の溶解能力が低下して樹脂をゲル化させ分離させてしまうおそれがある。本製造方法においても、水は、副反応物として生成されるが、その量は少なく、反応中に系外へ揮発するため、上記した不具合は発生しない。
また、その他の過酸化物、例えばジアシルパーオキサイド系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系などは分解残渣として酸を生成したりする。ジアルキルパーオキサイド系、ハイドロパーオキサイド系などは半減期温度が高く、生成ラジカルがモノマーと反応するなどの重合を阻害するおそれがある。これらの観点から、オゾンまたは酸素を用いることが好ましい。
【0025】
図1に本発明の製造方法を実施するための装置の一例の模式図を示す。
オゾンや酸素は、直ちに系外に放出されてしまうので、連続的に供給することが好ましい。例えば、図1に示すように酸素ボンベ1から酸素を送り込むことができる。あるいは酸素ボンベからの酸素とアルゴンなどの不活性ガスとを混合して送り込むこともできる。
オゾンを用いる場合は、送り込まれた酸素などを、オゾン発生器2において、放電あるいは紫外線ランプでオゾンを発生させ、生成したオゾンを酸素ガス等で移送し、反応容器3に供給すればよい。
【0026】
反応容器3中には非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に電子共役系の5員複素環化合物を溶解した溶液4が仕込まれている。
オゾン供給に先だって、反応容器3中の溶液4に超音波を当てながら減圧にするなどすることにより、溶液4中に溶解しているオゾンを失効させる気体を除去することが好ましい。
なお、送気管5の先端部6は溶液4内に挿入されており、オゾンまたは酸素を含む気泡7を溶液4内に生成させることが好ましい。
次いで、常温で、あるいは必要により加熱し、オゾンまたは酸素を溶液4中でバブリングさせ、導電性ポリマーを重合する。重合反応が進むにつれて、着色が見られる。モノマーが消費されるのに十分な時間が経過した後、しばらく攪拌を続け、不要の低揮発性不純物を除去する。加熱により、溶媒の蒸発が起こる場合には、常法で用いられる冷却還流装置や分離還流装置(図示せず)を用いることができる。
オゾン発生器2から溶液4までは、送気速度にもよるが約1m以内であることが好ましい。使用するガス中の水分は、非晶性熱可塑性樹脂溶液をゲル化させるので、注意することが好ましいのは言うまでもない。
溶液4中で発生された気泡7は細かいほど、触媒となるキノン化合物とオゾンまたは酸素との接触確率が増えるため、重合反応は早くなる。重合時間は、使用する溶媒の種類によって異なるが、約30分から6時間程である。N−メチルピロリドンなどの窒素系非プロトン性溶剤を用いた場合は、比較的反応が遅くなる傾向にある。
【0027】
この他、オゾンの供給方法は、非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液溶液中に対向する電極を設け、電極間に微小な酸素の泡を発生させ、その泡内で放電して発生させる液中微小気泡内放電なども採用することができる。この液中微小気泡内放電を採用すると、オゾン発生源と反応場が近いことから、生成したオゾンを消失する前に、効率よく反応に用いられることから、反応時間の短縮等に有効である。
【0028】
このように非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液中で重合を行うと、その理由は明らかではないが、樹脂のない溶媒中のものと比較して、生成する導電性ポリマーの重合度は小さく、最大でも約500、一般には、100以下程度のものと推察され、重合中に導電性ポリマーと非晶性熱可塑性樹脂との親和性が生じて、導電性ポリマーの分離、沈降が生じ難くなっているものと思われる。しかし、導電性ポリマーの極性と離れた中極性の樹脂例えばポリカーボネートなどにおいては、この親和性だけでは分散状態は維持することができなくなる場合があり、導電性ポリマーは溶媒乾燥後において、凝集してしまい、十分な抵抗値を得るためには、導電性ポリマーの含有量を高める必要が出てくる。
【0029】
なお、導電性ポリマーの含有量の高い、マスターバッチを作り、これを非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液で希釈してシームレスベルトの導電性を調整することは現実的である。
【0030】
次に、こうして得られた非晶性熱可塑性樹脂と導電性ポリマーの混合溶液に前記カーボン化合物を添加する。カーボン化合物として、フラーレン類を用いると、フラーレン類はトルエン、ナフタレン、テトラリン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、二硫化炭素、2−メチルチオフェン等の溶媒に溶解するので、この混合溶液中にカーボン化合物を簡単に均一分散させることができる。即ち、使用するカーボン化合物が、前記混合溶媒に用いた溶媒と相溶性を有する溶剤に溶解する場合は、その溶剤に溶解した溶液を前記混合溶液に添加、混合すればよい。また、フラーレン類の溶剤溶解性にも限度があるので、その場合は、ホモジナイザー、湿式ジェットミルなどにより、溶剤にフラーレン類を分散させた分散液を前記混合溶媒に添加してもよい。
分散されたカーボン化合物が、ベルトの表面の平滑性を損なうような場合は、カーボン化合物の添加量を削減し、その代わりに、相溶性のあるテトラシアノキノジメタン、テトラシアノベンゼン、テトラシアノエチレンなどの有機電子受容体を補うことができる。
カーボン化合物の添加量は前述の範囲とする。
【0031】
前述のように、導電性ポリマーと非晶性熱可塑性樹脂との組み合わせの場合、及び、溶媒が乾燥揮発した場合に導電性ポリマーの凝集が生じやすいが、界面活性剤を添加すると、親和性の不充分な組み合わせの場合や、溶媒乾燥後においても、導電性ポリマーの凝集を防止できる。従って、導電性ポリマー分子が拡がって、連鎖をもたらすため、導電性が低下することはない。
シームレスベルト汚染を防止する観点から、界面活性剤としても、溶媒、重合触媒と同様にキャスティングが終了した段階あるいは後述の二次乾燥が終了した段階では、系外に排出されているものが好ましい。従って、キャスティング時の熱等で、系外に排出されるものが好ましい。このような界面活性剤として、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、4−エチル−1−オクチル−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールなどのアセチレンアルコール類が挙げられる。これらの中では、沸点が160〜200℃にある1−エチニルシクロヘキサノール、4−エチル−1−オクチル−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオールが好ましい。
【0032】
樹脂溶液中で重合した直後は、系に溶媒が残っており、溶解性あるいは分散性が保たれているものの、溶媒が蒸発すると共に系内の樹脂濃度が高まり、極性が変化するので、界面活性剤が残っていないと、導電性ポリマーが凝集しやすくなる。従って、界面活性剤を添加する場合は、界面活性剤が樹脂の溶媒よりも遅く蒸発することが好ましい。即ち、界面活性剤の沸点は、前記樹脂の溶剤の沸点よりも高いことが好ましい。このような界面活性剤を選ぶと、乾燥の最終段階でこの界面活性剤が蒸発する。
この界面活性剤を添加する場合は、予め非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に加え、その後、5員複素環化合物を加え、酸化重合を施すことが良い。これとは違って、酸化重合の終了した非晶性熱可塑性樹脂と導電性ポリマーの混合溶液に加えた場合は、その添加効果は薄いものとなる。
【0033】
この他、酸化重合前に予め非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に添加してもよいものとして、導電性ポリマーの分極している原子、例えば、チオフェン系のイオウ原子に配位あるいは会合する化合物を挙げることができる。この化合物は、前記した界面活性剤よりは分極度合は弱いが、同様の機能を有するもので、乾燥の際に揮発するものである。このような化合物としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルグライム、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのグライム類、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、アセチルアセトンなどが挙げられる。
【0034】
次にシームレスベルトのキャスティング方法について説明する。図2はキャスティング方法の一例を示す概略図である。本発明に使用する金型11は、鉄鋼、ステンレス、アルミニウム合金等からなる円筒状で、例えば、内周面に、研磨加工、硬質クロムメッキ等の処理を施したもの等が用いられる。さらに各種離型剤により内周面を処理することも可能である。また、内周面に、シームレスベルトを成形する際の軸方向の寸法を整え、カット工程を省略するための、樹脂材料の流れを規制する堰を設けることもできる。金型の外周面は、回転時の横ぶれ等を防ぐための溝、突条等(図示せず)の加工を施すことは任意である。また、シームレスベルトを作製する際の加熱方式として、ランプヒータを使用する場合、エネルギーの吸収効率を高めるためにつや消し黒の耐熱塗装を施すことが望ましい。金型11の両端部には流動状態の材料の漏れを防止するリング状プレート(図示せず)が設けられている。
【0035】
金型11はモーターにより回転する4つのローラー13上に置かれており、ローラー13の回転に伴ってローラー13の回転とは逆方向に回転している。
前記した混合溶液の注入は、回転する金型11の軸方向に移動可能な送り装置(図示せず)の上に設置された定量吐出装置14により行うことができる。
シームレスベルトのキャスティング法としては、所定量の混合溶液を注入後、200〜10,000rpmで回転させ、80〜150℃で5〜60分加熱して、溶媒や界面活性剤を蒸発させて、必要であれば、残存する溶媒等を効率よく除去するため、二次乾燥を行うことが好ましい。二次乾燥は、加熱を施したのちに、金型にシームレスベルトが内接する状態で、金型ごと、熱風乾燥機あるいは減圧乾燥機に入れて、シームレスベルトを賦形する方法を採用できる。界面活性剤が添加されている場合は、その界面活性剤の沸点は溶剤よりも高いものであるから、80〜200℃で30〜120分、必要であるならば、10〜500mmHgの減圧状態で乾燥することが好ましい。
シームレスベルト賦形後、金型全体を冷却すると、硬化収縮及び金型との線膨張係数の差により硬化した樹脂層が剥離するので、これを取り出し本発明のシームレスベルトを得ることができる。
【0036】
また、トナーの剥離などのために、サンドブラストや金型内面の転写により、あるいは化学的にエッチングするなどしてベルト表面の粗さを調整してもよく、フッ素やシリコーン変性物を賦形物にコートあるいは、金型内で予め薄膜を形成することも可能である。また、帯電した電荷の減衰をコントロールするため、電気抵抗の互いに異なる組成物の溶液のキャスティングを繰り返して複数の抵抗を持つ層からなるベルトを賦形してもよい。この場合各層は十分な接着をしていなければなならいため、同種の樹脂で、導電性ポリマーの含有量を変えることが好ましい。このとき、、外層をキャスティングした後、同種の樹脂の溶液を加えると先の層が溶融し、混合されてしまうような場合は、外層の成分にエポキシなどの硬化成分をIPN化することによって、擬似的に不溶状態にすることができ、これにより、層間での混合を防止することが可能である。
なお、添加される成分は、導電性ポリマーを凝集させないことを予め確認することは言うまでもない。
【0037】
次に本製造方法と従来法によるものとの識別のための、賦形物からの分析方法について述べる。まず、従来法によるものも含め、製造に用いた揮発物は、乾燥したとは言え、シームレスベルトには、0.1%ほど蒸発物が残るため、これをトラップし、分子量分析、定性分析を専用機器により分析することができる。酸化重合触媒やドーパントは、賦形物を細かく粉砕し、水にて抽出し、必要ならば濃縮しあるいはイオンクロマトで分離し、イオン濃度や原子吸光分析によりイオン種を特定できる。フラーレンの分析にはリキッドクロマロトグラフィーマススペクトロメトリー(LC/MS)により効率よく分析できる。この他公知の方法を用いても構わない。本発明では、定性分析を行うと、実質的に抽出されるイオンはなく、非晶性熱可塑性樹脂、キノン化合物、およびドーパントとしてのフラーレンなどのカーボン化合物が確認されるものである。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
(評価)
なお、体積抵抗及び、表面抵抗は測定装置として「ハイレスタUP」(商品名、ダイヤインスツルメンツ社製)を用い、プローブは「UR−100」を使用して測定した。
電圧依存性は、100、250、500、1000Vの測定電圧で表面抵抗を測定し、電圧変化による抵抗の変化を見た。体積抵抗及び、表面抵抗は、電圧変化の影響以外は、250Vで測定した。
湿度依存性は、試料を10%RH、80%RH(いずれも常温)に2時間放置後、その環境下、測定電圧250Vで表面抵抗を測定し、抵抗の変化を見た。
pH測定は、得られたベルトを細かく粉砕し、イオン交換水に浸し、pHメーターにて測定した。
フラーレンの検知にあたっては、まず、ベルトをN−メチルピロリドンに再溶解し、トルエンを加えてフラーレンをトルエン層に移行させた。次いでこの混合液に大量のトルエンを加えて生成した固形分を分離した。そして、固形分分離後のトルエンを濃縮して、LC/MSで分析してフラーレンの有無を検知した。
腐食テストは、ベルトのカット片を、光沢面を有するニッケル板と10g/cmの圧力で合わせ、60℃95%RHに72時間放置し、光沢の変化を目視で確認した。
【0039】
(実施例1)
ポリアミドイミドワニス(東洋紡績製、NX100)(固形分15質量%、閉環率100%、溶剤:ジメチルアセトアミド)にピロールを固形分に対し25質量%と、p−ベンゾキノンを7質量%となるよう溶解した。この溶液を図3に示す装置の反応容器3に仕込んだ。これに超音波をあてて、60分間400mmHgに減圧してオゾンを失効させる気体を除去した後、オゾン発生量500mg/H、酸素流量400cc/分でオゾンを吹き込み、常温、1時間で重合操作を行った(オゾン発生器2から溶液までの長さ約30cm、管5内径8mm、溶液はマグネチックスターラーで撹拌、管先端部6には無数の小穴を有する)。重合後、オゾンを含まない乾燥空気のみをバブリングさせてオゾンを系外に排除した。
得られたポリピロール溶液は茶褐色透明で沈殿物は見られなかった。これに5質量%のフラーレンのトルエン分散液(C60とC70のミクスチャーフラーレン、C60は85質量%、C70は10質量%、残りは高次フラーレンからなる)をフラーレンがポリピロールの構造単位1モルに対して0.01モルになるように加え、撹拌した。この一部をとって乾燥させて形成させた皮膜の抵抗を測定したところ体積抵抗で5×10Ω・cmであった。
フラーレンを添加したポリピロール溶液に、ポリアミドイミドワニスを加え、固形分中のポリピロールの割合が4.3質量%となるように希釈して、調整液を得た。
得られた調整液を、直径15cmの円筒状の金型内面にそれぞれ適当量仕込み、150℃2時間、200回転/分で円筒状金型を回転させ、溶剤と未反応物を蒸発させた。次いで、170℃6時間で金型ごと、二次乾燥を行い、厚み0.12mmのベルトを得た。得られたベルトの評価結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
ピロールをジメチルアセトアミドに、固形分が25質量%となるように溶解し、過硫酸カリウムを5質量%となるように過硫酸カリウム水溶液を加えた。常温で良く撹拌し2時間後、溶液中に沈殿物があることを確認した。沈殿物をろ過し、ジメチルアセトアミドで洗浄した後、乾燥して、乾燥ポリピロールを得た。
ポリピロールのポリアミドイミド固形分に対する割合が8.6質量%となるように、実施例1で用いたと同様のポリアミドイミドワニスにポリピロールを混合した。次いで、得られたポリピロール入りポリアミドイミドワニスとp−トルエンスルホン酸(ポリピロールの構造単位に対して0.06モル%)を混合して、調整液を得た。以下、実施例1と同様にしてベルトを作成した。得られたベルトの評価結果を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
ピロールをジメチルアセチトアミドに、固形分が25質量%となるように溶解し、過硫酸カリウムを5wt%となるようにその水溶液を加えた。常温で良く撹拌し2時間後、溶液中に沈殿物があることを確認した。このものを強撹拌し分散させ、比較例1と同様にポリアミドイミドワニスとp−トルエンスルホン酸を混合し調整液を得た。ポリアミドワニスの分離と思われるゲル状物が見られたが、調整液を強撹拌した後、直ちに、金型に流し込み、以下実施例1と同様にベルトを作成した。該ベルトを静かにイオン交換水の流水中(流量100cc/分)に浸漬した。48時間浸積処理した後、風乾した。風乾後のベルトの評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 2004126372
【0043】
表1において、レンジオーバーは抵抗が高すぎて測定できなかったことを示す。
【0044】
(実施例2)
ポリエーテルサルフォン4800G(商品名、住友化学製)を、ジメチルフォルムアミドに溶解させ(固形分9質量%)、これに3−エチルピロールを固形分に対し、16質量%とp−ベンゾキノンを6質量%とを混合し、さらに界面活性剤と同様の機能を有する添加物として、トリエチレングリコールジメチルエーテルを3−エチルピロールの2倍量加え、重合時間を1時間とし、あとは実施例1と同様にオゾンを加えて重合した。
得られた重合液は茶褐色透明で沈殿物は見られなかった。実施例1と同様にフラーレンを3−エチルピロール1モルに対して0.005モル加え、さらにテトラシアノキノジメタンを0.1モル加えた。この一部を乾燥させた皮膜の抵抗を測定したところ体積抵抗で6×10Ω・cmであった。
フラーレンとテトラシアノキノジメタンを添加した重合液に、ポリエーテルサルフォン樹脂溶液を加え、固形分中の3−エチルピロールの割合が8.6質量%となるように希釈し調整液を得た。
得られた調整液を、直径15cmの円筒状の金型内面にそれぞれ適当量仕込み、150℃2時間、200回転/分で円筒状金型を回転させ、溶剤と未反応物を蒸発させた。次いで、170℃6時間で金型ごと、二次乾燥を行い、厚み0.12mmのベルトを得た。得られたベルトの評価結果を表2に示す。
【0045】
(比較例3)
オゾンも酸素も加えなかったこと以外、実施例2と同様に重合操作を行った。
重合反応を1時間行ったが、重合前とその外観は変わらなかった。これに実施例2と同様にフラーレンとテトラシアノキノジメタンを加え、ポリエーテルサルフォン樹脂溶液で希釈することなく、ベルトの成型を行った。得られたベルトの評価結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
Figure 2004126372
【0047】
(実施例3)
ポリアリレートU−100(商品名、ユニチカ製)を、シクロへキサノンに溶解させ(固形分8質量%)、これに3,4−ジメトキシチオフェンを固形分に対し12.6質量%とp−ベンゾキノンを5質量%とを混合し、さらに界面活性剤として1−エチニルシクロヘキサノール5質量%と、界面活性剤と同様の機能を有する添加物としてトリエチレングリコールジメチルエーテルを3,4−メトキシチオフェンの2倍量加え、重合時間を3時間とし、オゾンに代えて酸素を用いた以外は実施例1と同様に重合した。
得られた重合液は透明な濃青色で、沈殿物は見られなかった。実施例1と同様にフラーレンを3,4−メトキシチオフェン1モルに対して1/125モル加え、調整液を得た。
調整液を、直径15cmの円筒状の金型内面にそれぞれ適当量仕込み、140℃3時間、200回転/分で円筒状金型を回転させ、溶剤を蒸発させた。
次いで、180℃、300mmHg、6時間で金型ごと、二次の減圧乾燥を行い、厚み0.11mmのベルトを得た。このベルトの体積抵抗、表面抵抗を測定し、外観を観察した。その結果を表3に示す。
【0048】
(比較例4)
ユニチカ製ポリアリレートU−100を、シクロへキサンノンに溶解させ(固形分8wt%)、これに3−メトキシチオフェンを固形分に対し14.6質量%を溶解した。反応容器を80℃に保ち、3−メトキシチオフェンと同量のモル数の過酸化水素(濃度30質量%の過酸化水素水を使用)を、水分を蒸発させ溶液がゲル化しないように、撹拌しながら、少量ずつ滴下して加えた。滴下終了後、1時間、撹拌し続けた。
得られた重合液は透明な部分と、黒色の粉末状の沈殿物とに分かれた。実施例3と同様にこの重合液に3−メトキシチオフェン1モルに対してフラーレンを1/125モル加え、調整液を得た。
調整液を、強撹拌後直ちに、実施例3と同様にして、ベルトを作製した。得られたベルトの評価結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
Figure 2004126372
【0050】
表1から明らかなように、比較例1では、重合触媒として過硫酸アンモニウムを用い、重合生成物に残る極性物質による腐食性を軽減するために重合後にポリピロールを洗浄、乾燥しているので、ポリピロール分子の凝縮が生じているためか、体積抵抗、表面抵抗とも高く、殆どがレンジオーバーになっている。比較例2では、ポリピロールを洗浄・乾燥することなく、そのままシームレスベルトを作製した後、流水で洗浄しているが、pHが低く、充分洗浄できていないことが分かる。また、腐蝕テストの結果から、比較例1、2とも腐食性の問題があることがわかる。
これに対して、実施例1では、オゾンを重合触媒に用い、残存オゾンは重合後に系外に排除しているので、ポリピロールを洗浄・乾燥させたり、シームレスベルトを洗浄しなくても中性に近いpHで、腐食性の問題もない。また、体積抵抗、表面抵抗とも、半導電性シームレスベルトとして適切な抵抗値の範囲内にあり、電圧、湿度の変化に対する抵抗の変化も少ないことが分かる。
表2から明らかなように、キノン化合物が添加されていても、オゾンも酸素も積極的には加えていない比較例3では重合が進んでいないのに対し、実施例2では3−エチルピロールが重合して、優れた半導電性を示すことがわかる。
また、表3から、酸化剤として過酸化水素を用いた比較例4では、溶媒が副生した水を吸水して、樹脂の溶解力が低下したためと考えられるが、得られた重合液にポリチオフェンが凝集した凝集物が認められた。また、この凝集のため、得られたシームレスベルトの抵抗が高くなった。これに対して実施例3では良好な半導電性を示し、ベルトとしての機械的強度を充分に有するシームレスベルトが得られたことがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の半導電性シームレスベルトは湿度変化等の環境変化や、印加電圧の変化に抵抗への影響が少なく、ドーパントとしてカーボン化合物を用いており、強酸やその塩を用いていないので、腐蝕の問題もない。
本発明のシームレスベルトの製造方法によれば、オゾンを5員複素環重合の触媒に用いているので、リニアーな重合体が得られ、しかも重合後は容易に系外に排出されるので従来の過酸化物や強酸のようにシームレスベルトに残存して腐食性を示す心配がない。また、同様の理由で、5員複素環化合物の重合を非晶性熱可塑性樹脂溶液の存在下で行えるので、5員複素環重合体が凝集することなく、良好な半導電性を示すシームレスベルトが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一実施態様の模式図である。
【図2】キャスティング方法の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:乾燥空気発生装置、 2:オゾン発生器、 3:オゾン発生器、
4:溶液、 5:オゾン送気管、 6:オゾン送気管の先端部、 7:気泡、
11:金型、 12:モーター、 13:ローラー、 14:定量吐出装置

Claims (7)

  1. 基体となる非晶性熱可塑性樹脂と、電子共役系の5員複素環化合物の酸化重合物と、キノン化合物と、ドーパントとしてのカーボン化合物とを含むことを特徴とする半導電性シームレスベルト。
  2. 前記カーボン化合物がフラーレン類、あるいはカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1記載の半導電性シームレスベルト。
  3. 5員複素環化合物の3位、または3位および4位に置換基を有することを特徴とする請求項1または2記載の半導電性シームレスベルト。
  4. 5員複素環化合物が、チオフェン系化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導電性シームレスベルト。
  5. 非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に電子共役系の5員複素環化合物を溶解し、オゾンまたは酸素と、キノン化合物を用いて該5員複素環化合物を非水系で酸化重合し、これにドーパントとしてカーボン化合物を加え、キャスティング法によりシームレスベルトを賦形することを特徴とする半導電性シームレスベルトの製造方法。
  6. キャスティング前に、5員複素環化合物またはその酸化重合物を含有していてもよい非晶性熱可塑性樹脂の非水溶液に、界面活性剤を添加することを特徴とする請求項5記載の半導電性シームレスベルトの製造方法。
  7. 前記界面活性剤の沸点が、前記非晶性熱可塑性樹脂溶媒の沸点より高いことを特徴とする請求項6記載の半導電性シームレスベルトの製造方法。
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