JP4761436B2 - カーボンナノチューブ含有重合体、これからなる塗膜を有する複合体、およびそれらの製造方法 - Google Patents
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例えば、単層カーボンナノチューブを強酸中で超音波処理することにより単層カーボンナノチューブを短く切断して分散する方法が提案されている(R.E.Smalley等,Science,280,1253(1998))(非特許文献2)。しかしながら、強酸中で処理を実施するため、操作が煩雑となり、工業的には適した方法ではなく、その分散化の効果も十分とはいえない。
また、導電性ポリマー(a)は、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーであることが好ましく、または水溶性導電性ポリマーであることが望ましく、さらに水溶性導電性ポリマーの中では、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーであることが望ましい。
さらに、導電性ポリマー(a)、ポリビニルピロリドン類、アクリル樹脂、およびこれらの共重合体を構成する重合性モノマーから選択される重合性モノマー(i)、およびカーボンナノチューブ(c)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物に超音波を照射することを特徴とするカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法である。この超音波の処理によって効率よくカーボンナノチューブが重合性モノマーに分散化あるいは可溶化することができ、それによって得られた重合体中にもカーボンナノチューブが重合性モノマーに分散化あるいは可溶化することができる。
本発明の第2は、導電性ポリマー(a)、ポリビニルピロリドン類、アクリル樹脂、およびこれらの共重合体を構成する重合性モノマーから選択される重合性モノマー(i)、およびカーボンナノチューブ(c)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物中において、重合性モノマー(i)を重合反応させることによるカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法によって製造されたカーボンナノチューブ含有重合体である。
本発明の第3は、基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有重合体からなる塗膜を有することを特徴とする複合体である。
また、本発明の第5は、基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有重合体を塗工し、常温で放置あるいは加熱処理を行って塗膜を形成することを特徴とするカーボンナノチューブの導電性や分散化あるいは可溶化等の物性評価方法である。
本発明における導電性ポリマー(a)は、スルホン酸基のアンモニウム塩(−SO3 −M+)および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩(−COO−M+)を有するπ共役系高分子、或いはスルホン酸基および/またはカルボキシル基を有するπ共役系高分子が挙げられる。ここで、前記アンモニウム塩のアンモニウムイオン(M+)は、下記式(2)で示されるものである。
導電性ポリマー(a)は、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含むπ共役系高分子である。
中でも、有機溶剤等への溶媒への溶解性が特段に向上および導電性、成膜性の点で、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーが用いられ、水等への溶媒への溶解性が特段に向上および導電性、成膜性の点で、水溶性導電性ポリマーが本発明では好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーとは、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩、あるいはスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩で置換されたアルキル基またはエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーが挙げられる。この中でも特にチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、イソチアナフテンを含む骨格を有する導電性ポリマーが好ましく用いられる。また、水溶性導電性ポリマーとは、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、酸性基で置換されたアルキル基またはエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーである。
好ましいスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーは、下記式(3)〜(11)から選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含有する導電性ポリマーである。
いられる。スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する繰り返し単位の含有量は、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上、特
に好ましくは100%である。
また、スルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーは、アンモニウム塩類および/またはアミン類と反応させることにより、本発明に用いられるスルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを合成する際の原料として用いることができる。
スルホン酸および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとしては、例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報、特開平09−59376号公報、特開2000−172384号公報、特開平06−49183号公報、特開平10−60108号公報に示された水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。
また、芳香環に付加する置換基は、導電性および溶解性の面からアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等が好ましく、特にアルコキシ基を有する水溶性導電性ポリマーが最も好ましい。これらの組み合わせの中で最も好ましい水溶性導電性ポリマーを下記式(27)に示す。
ここで、R133は、少なくともその一部が、遊離酸型のスルホン酸基および/またはカルボキシル基であることが導電性向上の点から好ましい。
本発明における導電性ポリマーとしては、その質量平均分子量が、GPCのポリエチレングリコール換算で、2000以上、300万以下のものが導電性、成膜性および膜強度に優れており好ましく用いられ、質量平均分子量3000以上、100万以下のものがより好ましく、5000以上、50万以下のものが最も好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の必須構成成分である重合性モノマー(i)はラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、イオン重合、開環重合、脱離重合、重付加反応、重縮合反応等による重合反応に用いられる重合性モノマーなら特に限定されるものではない。
本発明に用いられる重合性モノマー(i)は、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール類;ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸などのポリアクリルアマイド類;ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸およびそのソーダ塩類、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂およびこれらの共重合体を構成する重合性モノマー(i)である。
フルオロメチルアクリレートメトキシメチルエステル、α−(トリ)フルオロメチルアクリレートエトキシエチルエステル、α−(トリ)フルオロメチルアクリレート−n−プロポキシエチルエステル、α−(トリ)フルオロメチルアクリレート−iso−プロポキシエチルエステル、α−(トリ)フルオロメチルアクリレートn−ブトキシエチルエステル、α−(トリ)フルオロメチルアクリレート−iso−ブトキシエチルエステル、α−(トリ)フルオロメチルアクリレートtert−ブトキシエチルエステル等の直鎖または分岐骨格構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシスチレン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシスチレン、p−tert−パーフルオロブチルスチレン、p−(2−ヒドロキシ−iso−プロピル)スチレン等の芳香族アルケニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらは、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称
である。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物のもう一つの必須構成成分であるカーボンナノチューブ(c)は、特に限定されるものではなく、カーボンナノチューブ(c)としては、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったものを用いることができる。
以上の製造方法によって得られるカーボンナノチューブ(c)としては、好ましくは単層カーボンナノチューブであり、更に洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現することから、好ましく用いられる。
本発明のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法においては、重合性モノマー(i)だけども重合反応を実施することができるが、溶媒(b)を加えることにより、カーボンナノチューブ(c)の分散性あるは可溶化が向上したり、重合性モノマー(i)の重合性が向上したりする。
溶媒(b)は、導電性ポリマー(a)、重合性モノマー(i)、カーボンナノチューブ(c)、高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)、シランカップリング剤(g)、およびコロイダルシリカ(h)を溶解または分散するものであれば特に限定されない。また、重合反応に用いられる重合開始剤と連鎖移動剤が溶解するものが好ましく用いられる。
溶媒(b)としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、 N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、m−クレゾール、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサンが好ましく用いられる。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物において、高分子化合物(d)を用いることにより塗膜の基材密着性、強度は更に向上する。
本発明における高分子化合物(d)としては、本発明に用いる溶媒(b)に溶解または分散(エマルション形成)可能であれば特に限定されるものではなく、具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール類;ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸などのポリアクリルアマイド類;ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸およびそのソーダ塩類、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂およびこれらの共重合体などが用いられる。また、これらの高分子化合物(d)は2種以上を任意の割合で混合したものであってもよい。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物を構成する塩基性化合物(e)は、カーボンナノチューブ含有組成物中に添加することにより導電性ポリマーを脱ドープし、溶媒(b)への溶解性をより向上させる効果がある。また、フリーのスルホン酸基およびカルボキシル基と塩を形成することにより溶媒への溶解性が特段に向上するとともに、カーボンナノチューブ(c)の溶媒(b)への可溶化あるいは分散化が促進される。
塩基性化合物(e)として用いられるアミン類の構造式を下記式(29)に示す。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリンおよびこれらの骨格を有する誘導体およびこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが好ましく用いられる。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物塩が好ましく用いられる。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、前記導電性ポリマー(a)、溶媒(b)、カーボンナノチューブ(c)、高分子化合物(d)および塩基性化合物(e)のみでもカーボンナノチューブ(c)が可溶化あるは分散化して、重合性モノマー(i)の重合反応後の重合体中に、長期保存においても分離や凝集せず、性能の良い膜、複合体を形成することが可能であるが、界面活性剤(f)を加えると更に可溶化あるは分散化が促進するとともに、平坦性、塗布性および導電性などが向上する。
ボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。なお、界面活性剤は二種以上用いても何らさしつかえない。
本発明においては、導電性ポリマー(a)、溶媒(b)、カーボンナノチューブ(c)、高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)の成分を含むカーボンナノチューブ含有組成物に、更にシランカップリング剤(g)を併用することができる。シランカップリング剤(g)を併用したカーボンナノチューブ含有重合体から得られる塗膜の耐水性は著しく向上する。シランカップリング剤(g)としては、下記式(1)で示されるシランカップリング剤(g)が用いられる。
アミノ基を持つものとしては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロポキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チオール基を持つものとしては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
水酸基を持つものとしてはβ−ヒドロキシエトキシエチルトリエトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシクロヘキシル基を持つものとしては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
本発明においては、導電性ポリマー(a)、溶媒(b)、カーボンナノチューブ(c)、高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)、シランカップリング剤(g)の成分を含む架橋性カーボンナノチューブ含有組成物に、更にコロイダルシリカ(h)を併用することができる。コロイダルシリカ(h)を併用したカーボンナノチューブ含有重合体から得られる塗膜は、表面硬度や耐候性が著しく向上する。
前記導電性ポリマー(a)と重合性モノマー(i)と溶媒(b)との合計との使用割合は、重合性モノマー(i)と溶媒(b)との合計100質量部に対して導電性ポリマー(a)が0.001〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜30質量部である。導電性ポリマー(a)が0.001質量部未満では、導電性が劣ったり、カーボンナノチューブ(c)の可溶化あるは分散化の効率が低くなったりする。一方、50質量部を超えると導電性はピークに達して大きく増加しないし、高粘度化して、カーボンナノチューブ(c)の可溶化あるは分散化の効率が低くなったりする。
塩基性化合物(e)がこの範囲にあるとき、水溶性導電性ポリマーの溶解性が良くなり、カーボンナノチューブ(c)の溶媒(b)への可溶化あるいは分散化が促進され、導電性が向上する。
これらの構成成分を混合する際、超音波、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサーなどの撹拌又は混練装置が用いられる。特に、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマー(a)、溶媒(b)、カーボンナノチューブ(c)、および他の成分を混合し、これに超音波を照射することが好ましく、この際、超音波照射とホモジナイザーを併用(超音波ホモジナイザー)して処理をすることが好ましい。
重合開始剤を使用する重合では、重合開始剤のラジカル体が反応溶液中に生じ、このラジカル体を起点として重合性モノマー(i)の逐次重合が進行する。本発明のカーボンナノチューブ含有重合体の製造に用いられる重合開始剤は、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル等の有機化酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
本発明において、カーボンナノチューブ含有重合体を塗工し塗膜を形成する基材としては、高分子化合物、プラスチック、木材、紙材、セラミックス、繊維、不織布、炭素繊維、炭素繊維紙、およびこれらのフィルム、発泡体、多孔質膜、エラストマー、そしてガラス板などが用いられる。
例えば、高分子化合物、プラスチックおよびフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、これらのフィルム、発泡体およびエラストマーなどが挙げられる。これらのフィルムは、少なくともその一つの面上に塗膜を形成させるため、該塗膜の密着性を向上させる目的で、その表面をコロナ表面処理またはプラズマ処理することが好ましい。
本発明の複合体は、このままでも優れた導電性を有するものであるが、基材の少なくとも一つの面上に、カーボンナノチューブ含有重合体を塗工して塗膜を形成した後に、酸によりドーピング処理を行い、次いで常温で放置あるいは加熱処理をすることにより、さらに導電性を向上させることができる。
酸によるドーピング処理方法は、特に限定されるものではなく公知の方法を用いることができる。例えば、酸性溶液中に導電体を浸漬させるなどの処理をすることによりドーピング処理を行うことができる。酸性溶液は、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸や、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、安息香酸およびこれらの骨格を有する誘導体などの有機酸や、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン)スルホン酸、ポリビニル硫酸およびこれらの骨格を有する誘導体などの高分子酸を含む水溶液、あるいは、水−有機溶媒の混合溶液である。なお、これらの無機酸、有機酸、高分子酸はそれぞれ単独で用いても、また2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有重合体にあっては、導電性ポリマー(a)とカーボンナノチューブ(c)とを併用しているので、導電性、成膜性、成形性に優れている。
基材の少なくとも一つの面上に、本発明のカーボンナノチューブ含有重合体を塗工し、常温で放置あるいは加熱処理を行って塗膜を形成した後、塗膜の導電性を公知の方法で測定することによって使用したカーボンナノチューブ自体の導電性、凝集の度合い、バンドル化の度合いを簡易に評価することが可能である。
(実施例)
(製造例1、水溶性導電性ポリマー(A−1))
ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に攪拌溶解し、これにペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、ポリマー粉末15gを得た。この導電性ポリマー(A−1)の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。
水溶性導電性ポリマー(A−1)5gを水95gに攪拌溶解し、水溶性導電性ポリマー
水溶液を調製した。得られた水溶性導電性ポリマー水溶液に塩化ベンザルコニウム 10gを水95に攪拌溶解した塩化ベンザルコニウム水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で1時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、スルホン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマー(A−2)10gを得た。
カーボンナノチューブ含有組成物1:
上記製造例1の導電性ポリマー(A−1)5質量部、ビニルピロリドン 20質量部、カーボンナノチューブ(ILJIN社製、CVD法により製造された多層カーボンナノチューブ)1.0質量部を水80質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物1を調製した。
上記製造例1の導電性ポリマー(A−1)5質量部、ビニルピロリドン 20質量部、カーボンナノチューブ1.0質量部、アンモニア0.1質量部を水80質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物2を調製した。
上記製造例1の導電性ポリマー(A−1)5質量部、ビニルピロリドン 20質量部、カーボンナノチューブ1.0質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部を水80質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物3を調製した。
上記製造例1の導電性ポリマー(A−1)5質量部、ビニルピロリドン 10質量部、カーボンナノチューブ1.0質量部、ポリビニルアルコール10質量部を水80質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物4を調製した。
上記製造例2の導電性ポリマー(A−2)5質量部、メチルメタアクリレート25質量部、カーボンナノチューブ0.4質量部をジメチルアセトアミド75質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物5を調製した。
上記製造例2の導電性ポリマー(A−2)5質量部、メチルメタアクリレート25質量部、カーボンナノチューブ0.4質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1質量部をジメチルアセトアミド75質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物6を調製した。
上記製造例2の導電性ポリマー(A−2)5質量部、メチルメタアクリレート25質量部、カーボンナノチューブ0.4質量部、コロイダルシリカ(粒子径:10nm)5質量部をジメチルアセトアミド75質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物7を調製した。
ビニルピロリドン 20質量部、カーボンナノチューブ1.0質量部を水80質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物8を調製した。
メチルメタアクリレート25質量部、カーボンナノチューブ0.4質量部をジメチルアセトアミド75質量部に室温にて混合してカーボンナノチューブ含有組成物9を調製した。
上記製造例2の導電性ポリマー(A−2)5質量部、メチルメタアクリレート25質量部をジメチルアセトアミド100質量部に室温にて混合して導電性組成物1を調製した。
実施例1〜4、比較例1
(超音波処理なし)
上記カーボンナノチューブ含有組成物1〜4、8の5gに窒素バブリング(200cc、1Hr)を実施した後、100℃で10時間重合反応を実施し、カーボンナノチューブ含有重合体を得た。
(超音波処理あり)
上記カーボンナノチューブ含有組成物1〜4、8の5gに超音波ホモジナイザー処理(SONICS社製 vibra cell 20KHz)を1時間実施した。該組成物に窒素バブリング(200cc、1Hr)を実施した後、100℃で10時間重合反応を実施し、カーボンナノチューブ含有重合体を得た。
(超音波処理なし)
上記カーボンナノチューブ含有組成物5〜7、9の5gに2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.1025gを添加して攪拌溶解した。その後、該組成物に窒素バブリング(200cc、1.5min)を実施した後、80℃で6時間重合反応を実施し、重合体を得た。
(超音波処理あり)
上記カーボンナノチューブ含有組成物5〜7、9の5gに超音波ホモジナイザー処理(SONICS社製 vibra cell 20KHz)を1時間実施した。該組成物に2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.1025gを添加して攪拌溶解した。その後、該組成物に窒素バブリング(200cc、1.5min)を実施した後、80℃で6時間重合反応を実施し、カーボンナノチューブ含有重合体を得た。
(超音波処理なし)
上記導電性組成物1の5gに2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.1025gを添加して攪拌溶解した。その後、該組成物に窒素バブリング(200cc、1.5min)を実施した後、80℃で6時間重合反応を実施し、カーボンナノチューブ含有重合体を得た。
(超音波処理あり)
上記導電性組成物1の5gに超音波ホモジナイザー処理(SONICS社製 vibra cell 20KHz)を1時間実施した。該組成物に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.1025gを添加して攪拌溶解した。その後、該組成物に窒素バブリング(200cc、1.5min)を実施した後、80℃で6時間重合反応を実施し重合体を得た。
上記実施例1〜7、比較例1,2で得られたカーボンナノチューブ含有重合体の溶液の状態を目視で観察した後、該重合体をガラス基板にバーコーター法(バーコートNo.5使用)により塗布し、150℃で5分間乾燥させ、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
カーボンナノチューブ含有重合体の調製後、24時間経過した溶液状態を目視により観察した。
○:均一に分散あるいは溶解
×:不均一に分散
(表面抵抗値)
25℃、15%RHの条件下で表面抵抗値の測定には、表面抵抗値が108Ω以上の場合は二探針法(電極間距離:20mm)を用い、表面抵抗値が107Ω以下の場合は四探針法(各電極間距離:5mm)を用いた。
(塗膜面外観)
目視により塗膜の状態を観察した。
○:均一な塗膜が形成された。
×:カーボンナノチューブが不均一に存在する塗膜が観察された。
Claims (16)
- 導電性ポリマー(a)、ポリビニルピロリドン類、アクリル樹脂、およびこれらの共重合体を構成する重合性モノマーから選択される重合性モノマー(i)、およびカーボンナノチューブ(c)を含有するカーボンナノチューブ含有組成物中において、重合性モノマー(i)を重合反応させることを特徴とするカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- カーボンナノチューブ含有組成物が、溶媒(b)をさらに含有することを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- カーボンナノチューブ含有組成物が、高分子化合物(d)をさらに含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- カーボンナノチューブ含有組成物が、塩基性化合物(e)をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- 導電性ポリマー(a)が、スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーであり、前記アンモニウム塩のアンモニウムイオンが下記式(2)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーが、下記式(3)〜(11)から選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含有する導電性ポリマーであることを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーが、下記式(12)で表される繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含むことを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- スルホン酸基のアンモニウム塩および/またはカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーが、下記式(13)で表されるものであることを特徴とする請求項5記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- 導電性ポリマー(a)が、水溶性導電性ポリマーであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- 水溶性導電性ポリマーが、スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーであることを特徴とする請求項9記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーが、下記式(17)〜(25)から選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含有する水溶性導電性ポリマーであることを特徴とする請求項10記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーが、下記式(26)で表される繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含むことを特徴とする請求項10記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- スルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーが、下記式(27)で表されるものであることを特徴とする請求項10記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- カーボンナノチューブ含有組成物に超音波を照射することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法。
- 請求項1ないし14のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ含有重合体の製造方法によって製造されたカーボンナノチューブ含有重合体。
- 基材の少なくとも一つの面上に、請求項15に記載のカーボンナノチューブ含有重合体からなる塗膜を有することを特徴とする複合体。
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