JP2004292303A - Mn−Zn系フェライト、トランス用磁心およびトランス - Google Patents

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Abstract

【課題】 スイッチング電源などの電源トランス等に用いられる磁心として、広温度帯域においてコアロスが小さく、さらに高温度下(高温貯蔵試験)においてもコアロスの劣化が少なく磁気的安定性に優れた高信頼性のMn−Zn系フェライト、トランス用磁心およびトランスを提供すること。
【解決手段】 Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、前記フェライト中の式(1)の値αがα≧0.93である。α=((Fe2+−Mn3+−Co3+)×(4.29×A+1.91×B+2.19×C+2.01×D))/((A−B−C−D)×100) …式(1)但し、式(1)中、(Fe2+−Mn3+−Co3+):[wt%]、A:Fe[mol%]、B:MnO[mol%]、C:ZnO[mol%]、D:CoO[mol%]、である。
【選択図】 無し

Description

本発明は、Mn−Zn系フェライト、トランス用磁心およびトランスに係り、さらに詳しくは、スイッチング電源などの電源トランス等の磁心に用いられ、特に広温度帯域において電力損失(コアロス)が小さく、さらに高温度下(高温貯蔵試験)においてもコアロスの劣化が少なく磁気的安定性に優れた高信頼性のMn−Zn系フェライト、トランス用磁心およびトランスに関する。
近年、各種電子機器には、小型化、薄型化、高性能化などの要求が高まっている。スイッチング電源などにおいても、電源トランス等の小型化、薄型化などが求められており、トランスを小型化、薄型化するためには、磁心のコアロスの低減が不可欠となってくる。さらに電源等の動作環境を考慮すると、広温度帯域においてコアロスが小さく、さらに電子回路の熱暴走を防止するなどのために高温度下(高温貯蔵試験)においてもコアロスの劣化が少なく磁気的安定性に優れた高信頼性の磁心が要求される。
このような要求のもと、これまでMn−Zn系フェライトにCoを適量固溶させることにより、広温度帯域においてコアロスを小さくするための提案がいくつかなされている(特許文献1〜13参照)。
特開平6−290925号公報 特開平6−310320号公報 特開平8−191011号公報 特開平9−2866号公報 特開平9−134815号公報 特開平13−80952号公報 特開平13−220146号公報 特開2002−231520号公報 特公昭61−11892号公報 特公昭61−43291号公報 特公平4−33755号公報 特公平5−21859号公報 特公平8−1844号公報 ここで、Coを固溶させることによりコアロスを広温度帯域で小さくできる理由について述べる。コアロスを支配する因子として結晶磁気異方性定数K1があるが、コアロスの温度特性はK1の温度変化にともない変化し、K1=0となる温度でコアロスは極小値となる。コアロスを広温度帯域で小さくするためには、広温度帯域でK1を0に近づけなければならない。この定数K1はフェライトの主相であるスピネル化合物の構成元素により異なるが、Mn−Zn系フェライトの場合、Coイオンを固溶させることによりK1の温度依存性を小さくし、磁気損失温度係数の絶対値を小さくすることができると考えられる。
上記の公報のように、Mn−Zn系フェライトにCoを適量固溶させることにより、広温度帯域においてコアロスを小さくする提案がいくつか成されている。
しかしながら、さらに電源等の動作環境を考慮したときの電子回路の熱暴走を防止するなどのために、高温度下(高温貯蔵試験)においてのコアロス特性の安定性や信頼性を高めるための手段については述べられていない。
本発明は、このような課題を解決するために、スイッチング電源などの電源トランス等に用いられる磁心として、広温度帯域においてコアロスが小さく、さらに高温度下(高温貯蔵試験)においてもコアロスの劣化が少なく磁気的安定性に優れた高信頼性のMn−Zn系フェライト、トランス用磁心およびトランスを提供することを目的とする。
本発明者等は、Coを含むMn−Zn系フェライト中の陽イオンに着目し、フェライトにおける下記式(1)の値αを所定の値にすることで、高温度下(高温貯蔵試験)においてのコアロス特性の安定性や信頼性を高めることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の観点に係るMn−Zn系フェライトは、
Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、
前記フェライトにおける下記式(1)の値αが、α≧0.93であることを特徴とする。
α=((Fe2+−Mn3+−Co3+)×(4.29×A+1.91×B+2.19×C+2.01×D))/((A−B−C−D)×100) …式(1)
但し、式(1)中、(Fe2+−Mn3+−Co3+):[wt%]、A:Fe[mol%]、B:MnO[mol%]、C:ZnO[mol%]、D:CoO[mol%]、である。
本発明の第2の観点に係るMn−Zn系フェライトは、
Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、
たとえばBHアナライザーを用い、前記フェライトに対して、100kHz、200mTの正弦波交流磁界を印加し、75℃と120℃とでそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv1とし、該Pcv1の測定後のフェライトを、高温貯蔵(175℃の雰囲気中に96時間貯蔵)した後に、Pcv1の測定と同一条件でそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv2としたとき、下記式(2)で示されるコアロス劣化率が、75℃において3%以下または120℃において5%以下であることを特徴とする。
コアロス劣化率(%)=((Pcv1−Pcv2)/Pcv1)×100 …式(2)
本発明の第3の観点に係るMn−Zn系フェライトは、
Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、
たとえばBHアナライザーを用い、前記フェライトに対して、100kHz、200mTの正弦波交流磁界を印加し、75℃と120℃とでそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv1とし、該Pcv1の測定後のフェライトを、高温貯蔵(200℃の雰囲気中に96時間貯蔵)した後に、Pcv1の測定と同一条件でそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv3としたとき、下記式(3)で示されるコアロス劣化率が、75℃において27%以下または120℃において30%以下であることを特徴とする。
コアロス劣化率(%)=((Pcv1−Pcv3)/Pcv1)×100 …式(3)
フェライトにおける式(1)の値αを0.93以上にすると、高温試験(175℃中で96時間)後のコアロスの劣化を、かなり抑制することができる。
具体的には、BHアナライザーを用い、前記フェライトに対して、100kHz、200mTの正弦波交流磁界を印加し、75℃と120℃とでそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv1とし、該Pcv1の測定後のフェライトを、高温貯蔵(175℃の雰囲気中に96時間貯蔵)した後に、Pcv1の測定と同一条件でそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv2としたとき、下記式(2)で示されるコアロス劣化率を、75℃において3%以下または120℃において5%以下とすることができる。
コアロス劣化率(%)=((Pcv1−Pcv2)/Pcv1)×100 …式(2)
また、BHアナライザーを用い、前記フェライトに対して、100kHz、200mTの正弦波交流磁界を印加し、75℃と120℃とでそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv1とし、該Pcv1の測定後のフェライトを、高温貯蔵(200℃の雰囲気中に96時間貯蔵)した後に、Pcv1の測定と同一条件でそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv3としたとき、下記式(3)で示されるコアロス劣化率を、75℃において27%以下または120℃において30%以下とすることができる。
コアロス劣化率(%)=((Pcv1−Pcv3)/Pcv1)×100 …式(3)
以上のようにコアロスの劣化を少なくできる理由は、必ずしも明らかではないが、本発明者等の実験により裏付けられ、以下のように推測される。
高温貯蔵下でのコアロスの劣化の原因については、陽イオン欠陥を介したCoイオンの移動による磁気異方性の増大などが考えられる。しかしながら、Coを固溶させたMn−Zn系フェライトの場合では、Fe2+,Fe3+,Co2+,Co3+のそれぞれの量を正確に分離して定量することが困難である。そのために陽イオン欠陥量(非化学量論的酸素量)を直接的に定量することが困難である。そこで、本発明では、現在の測定器でも計量が可能な式(1)の値αと言うパラメータを考え出し、その値を制御することで、高温試験後のコアロスの劣化を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、本発明に係るフェライトを、スイッチング電源などの電源トランス等に用いられるトランス用磁心、あるいはトランス(磁心の回りにコイルを巻回したもの)として用いることにより、25〜120℃の広温度帯域においてコアロスが小さくなる。また、高温貯蔵試験(175℃中で96時間)後のコアロスの劣化率も小さくなり、磁気的安定性に優れた高信頼性の磁心およびトランスとすることができる。このため、スイッチング電源および電源トランスにおいて、損失の低減、小型化、熱暴走の防止および信頼性の向上などを図ることができる。
次に、本発明の数値範囲の限定理由について説明する。
Feの組成が51.5mol%より小さくなるか、またはZnOの組成が15mol%よりも大きくなると、高温貯蔵試験前初期のコアロスが大きく、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が困難となる。Feの組成が57.0mol%より大きくなると、高温貯蔵試験前初期のコアロスが大きく、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が困難となる。また、ZnOの組成が0mol%の場合では、焼結体の相対密度の低下が生じ、高温貯蔵試験前初期のコアロスが大きく、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が困難となる。
またCo換算でのCo酸化物の含有量が0ppmとなると、高温貯蔵試験前初期のコアロスが大きく、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が困難となる。またCo換算でのCo酸化物の含有量が5000ppmよりも大きくなると、特に高温側での高温貯蔵試験前初期のコアロスが大きく、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が困難となる。
本発明に係るフェライトは、好ましくは、その他の副成分として、SiO:50〜220ppm,CaO:120〜1400ppm を含有する。焼結性を向上させるとともに、結晶粒界に高抵抗層を形成させるためである。
SiOの含有量が50ppmより小さくなるか、またはCaOの含有量が120ppmより小さくなると、焼結が促進されにくくなるとともに、結晶粒界に充分な高抵抗層が形成されにくくなるため、SiOまたはCaOの含有量以外は同じ組成のものに比較して、高温貯蔵試験前初期のコアロス及び高温貯蔵試験後のコアロスが大きくなる傾向にある。
また、SiOの含有量が220ppmより大きくなるか、またはCaOの含有量が1400ppmより大きくなると、結晶の異常粒成長が起こりやすくなるとともに粒界層が過剰に形成されやすくなり、SiOまたはCaOの含有量以外は同じ組成のものに比較して、高温貯蔵試験前初期のコアロス及び高温貯蔵試験後のコアロスが大きくなる傾向にある。
本発明に係るフェライトは、好ましくは、さらにその他の副成分として、Nb:0〜500ppm(ただし、0は含まず),ZrO:0〜500pm(ただし、0は含まず),Ta:0〜1000ppm(ただし、0は含まず),V:0〜500ppm(ただし、0は含まず),HfO:0〜500ppm(ただし、0は含まず)のうちの1種以上を含有する。
これらの副成分を含有させることで、フェライトの結晶粒界に高抵抗層を形成して、コアロス(主としてヒステリシス損失と渦電流損失)中の特に渦電流損失を低減させることができる。そのため、これらの副成分を含有させることで、これらの副成分を含まない以外は同じ組成のものに比較して、高温貯蔵試験前初期のコアロスを小さくすることができ、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が容易になると共に、高温貯蔵試験後のコアロスの劣化を、さらに小さくすることができる。
Nb,ZrO,VおよびHfOの含有量が500ppmよりも大きくなるか、またはTaの含有量が1000ppmよりも大きくなると、粒界層が過剰に形成されやすくなり、本発明の効果が小さくなる傾向にある。
本発明に係るフェライトは、リン(P)およびホウ素(B)を含んでも良いが、好ましくは、フェライト中のPおよびBの含有量がP≦35ppmまたはB≦35ppmである。フェライト中のPおよびBの含有量は、少ない程良い。
Pの含有量が35ppm よりも大きくなるか、またはBの含有量が35ppmよりも大きくなると、結晶の異常粒成長が起こりやすくなり、本発明の効果が小さくなる傾向にある。
本発明において、好ましくは、前記フェライトにおける式(1)の値αがα≧0.94、さらに好ましくはα≧0.95であり、その上限は、特に限定されないが、好ましくは1.50以下、さらに好ましくは1.40以下、特に好ましくは1.20以下である。それ以上の値にすることは、製造が著しく困難になる傾向にある。
フェライトにおける式(1)の値αをα≧0.94とすることで、高温貯蔵試験後のコアロスの劣化率を、さらに小さくすることができる。また、α≧0.95とすることで、高温貯蔵試験後のコアロスの劣化率を、さらに小さくすることができる。
本発明において、式(1)の値αは、以下のようにして求める。式(1)の値αの算出は、組成分析と、(Fe2+−Co3+)量およびMn3+量の定量から算出することができる。すなわち組成分析については、Mn−Znフェライト焼結体を粉砕し粉末状にした後、蛍光X線分析装置(たとえばリガク(株)製、サイマルティック3530)を用いてFe,MnO,ZnOおよびCoO量を測定することができる。
(Fe2+−Co3+)量およびMn3+量は、Mn−Zn系フェライト焼結体を粉砕して粉末状にし、酸に溶解後、KCr溶液により電位差滴定を行い定量する。(Fe2+−Co3+)量についてであるが、Fe2+とCo3+とが反応するため、Coを固溶させたMn−Zn系フェライトの場合では、Fe2+,Fe3+,Co2+,Co3+のそれぞれの量を正確に分離して定量することが困難であり、(Fe2+−Co3+)量として定量する。
本発明に係るMn−Zn系フェライトは、たとえば以下のようにして製造されることが好ましい。
すなわち、本発明に係るMn−Zn系フェライトの製造方法は、
上記本発明に係るMn−Zn系フェライトの組成範囲(Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有する)となるように原料を準備する原料準備工程と、
前記原料にバインダーを加えて所定形状に成形し、予備成形体を形成する成形工程と、
前記予備成形体を焼成する焼成工程とを、有し、
前記焼成工程が高温保持工程を有し、
該高温保持工程における保持温度が、1250℃〜1400℃であり、かつ
焼成雰囲気の酸素分圧をPO(%)とし、保持温度をT(K)としたとき、下記(4)式を満足するPOで焼成することを特徴とする。
Log(PO)=a−13000/T …式(4)
但し、式(4)中のaは、6.95≦a≦8.85である。
例えば保持温度が1300℃では、焼成雰囲気の酸素分圧は、0.05%〜3.80%である。
焼成工程は、昇温工程と、高温保持工程と、降温工程とを有することが好ましい。昇温工程では、焼成雰囲気中の酸素分圧は、3.0%以下であることが好ましい。高温保持工程では、保持温度が1250℃〜1400℃であり、例えば1300℃では酸素分圧は、0.05%〜3.80%であることが好ましい。酸素分圧は、従来よりも低めに設定することが好ましい。ただし、酸素分圧が0.05%よりも小さいと、高温貯蔵試験前初期のコアロスが悪くなる傾向にある。焼成時の保持温度が高いほど、酸素分圧も高めに設定することが好ましい。また、酸素分圧が低いほど、式(1)の値αが大きくなり、高温貯蔵試験後のコアロスの劣化が小さくなる傾向にある。
また、降温工程では、900℃〜1200℃において、窒素雰囲気に切り替えることが好ましい。窒素雰囲気に切り替えた後の冷却速度は、切換前の冷却速度の2〜10倍にすることが好ましい。
このような製造条件を選択することで、本発明に係るMn−Zn系フェライトを容易に製造することができる。
本発明によれば、スイッチング電源などの電源トランス等に用いられる磁心として、広温度帯域においてコアロスが小さく、さらに高温度下(高温貯蔵試験)においてもコアロスの劣化が少なく磁気的安定性に優れた高信頼性のMn−Zn系フェライト、トランス用磁心およびトランスを提供することができる。
以下、本発明を、実施形態に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係るMn−Zn系フェライトは、
Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有し、
その他の任意の副成分として、SiO:50〜220ppm,CaO:120〜1400ppmを含有し、
さらにその他の任意の副成分として、Nb:0〜500ppm(ただし、0は含まず),ZrO:0〜500ppm(ただし、0は含まず),Ta:0〜1000ppm(ただし、0は含まず),V:0〜500ppm(ただし、0は含まず),HfO:0〜500ppm(ただし、0は含まず)のうちの1種以上を含有するMn−Zn系フェライトであって、
前記フェライトにおける下記式(1)の値αが、α≧0.93であることを特徴とする。
α=((Fe2+−Mn3+−Co3+)×(4.29×A+1.91×B+2.19×C+2.01×D))/((A−B−C−D)×100) …式(1)
但し、式(1)中、(Fe2+−Mn3+−Co3+):[wt%]、A:Fe[mol%]、B:MnO[mol%]、C:ZnO[mol%]、D:CoO[mol%]、である。
本発明のフェライトには、リン(P)およびホウ素(B)を含んでも良いが、好ましくは、フェライト中のPおよびBの含有量がP≦35ppmまたはB≦35ppmである。
本発明の一実施形態に係るMn−Zn系フェライトを製造するには、まず、主成分および副成分の出発原料を準備する。主成分の出発原料としては、Fe、Mn、ZnO、あるいは焼成後にこれらの酸化物となる原料が用いられる。また、副成分の出発原料としては、Co、SiO、CaO、Nb、ZrO、Ta、V、HfO、あるいは焼成後にこれらの酸化物となる原料が用いられる。これらの出発原料は、焼成後の組成範囲が上記の範囲となるように秤量される。また、これらの出発原料には、PおよびBが含まれていても良いが、焼成後の最終的な組成において、上記の範囲と成るように調整される。
まず、主成分の出発原料を上記の組成範囲となるように秤量し、湿式混合して、その後乾燥させ、大気中で、約900℃で約2時間、仮焼成する。これにより得られた仮焼済み粉体に、副成分の出発原料を秤量して添加し、混合後に粉砕する。粉砕後の粉体の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは1〜10μm程度である。この粉体に、適当なバインダー、たとえばポリビニルアルコールなどを加え、スプレードライヤーなどにて造粒し、所定形状の予備成形体とする。
予備成形体の形状としては、特に限定されないが、たとえばトロイダル形状などが例示される。
次に、この予備成形体を、焼成後のフェライト焼結体における式(1)の値αがα≧0.93となるような条件で焼成する。焼成条件は、次の条件が好ましい。
焼成工程は、昇温工程と、高温保持工程と、降温工程とを有することが好ましい。
昇温工程では、焼成雰囲気中の酸素分圧は、3.0%以下であることが好ましい。
高温保持工程では、保持温度が1250℃〜1400℃、より好ましくは1260〜1370℃である。また、高温保持工程での雰囲気の酸素分圧をPO(%)とし、保持温度をT(K)としたとき、下記(4)式を満足するPOで焼成する。
Log(PO)=a−13000/T …式(4)
但し、式(4)中のaは、6.95≦a≦8.85、より好ましくは7.96≦a≦8.78である。aが6.95未満であると、コアロスが増加するなどの不都合を生じ、aが8.85を超えると、高温貯蔵試験におけるコアロスの劣化率が増加するなどの不都合を生じる。
例えば高温保持温度1300℃では、酸素分圧は、0.05%〜3.80%であることが好ましい。酸素分圧は、従来よりも低めに設定することが好ましい。ただし、酸素分圧が0.05%よりも小さいと、高温貯蔵試験前初期のコアロスが悪くなる傾向にある。焼成時の保持温度が高いほど、酸素分圧も高めに設定することが好ましい。また、酸素分圧が低いほど、式(1)の値αが大きくなり、高温貯蔵試験後のコアロスの劣化が小さくなる傾向にある。
また、降温工程では、900℃〜1200℃において、窒素雰囲気に切り替えることが好ましい。窒素雰囲気に切り替えた後の冷却速度は、切換前の冷却速度の2〜10倍にすることが好ましい。
このような製造条件を選択することで、本実施形態に係るMn−Zn系フェライトを容易に製造することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1〜14
主成分および副成分の出発原料を準備した。主成分の出発原料としては、Fe、Mn、ZnOを用いた。また、副成分の出発原料としては、Co、SiO、CaO、を用いた。これらの出発原料は、焼成後の組成範囲が下記の範囲となるように、秤量した。
すなわち、Fe:51.5〜57.0mol%、ZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOであり、Co:0〜5000ppm(ただし、0は含まず)、SiO:50〜220ppm、CaO:120〜1400ppmであった。
まず、主成分の出発原料を上記の組成範囲となるように秤量し、湿式混合して、その後乾燥させ、大気中で、900℃で2時間、仮焼成した。これにより得られた仮焼済み粉体に、副成分の出発原料を秤量して添加し、混合後に粉砕した。粉砕後の粉体の平均粒径は、2μm程度であった。この粉体に、バインダーとしてポリビニルアルコールを加え、スプレードライヤーなどにて造粒し、トロイダル形状の予備成形体とした。
次に、この予備成形体を、次に示す焼成条件の範囲内で焼成し、下記の表1に示すように、種々のα値を持つフェライト焼結体のサンプルを多数得た。この焼成工程は、昇温工程と、高温保持工程と、降温工程とを有し、昇温工程では、焼成雰囲気中の酸素分圧は、3.0%以下であった。高温保持工程では、保持温度が1250℃〜1400℃であり、例えば1300℃では酸素分圧は、0.05%〜3.80%であった。また、降温工程では、900℃〜1200℃において、窒素雰囲気に切り替えた。窒素雰囲気に切り替えた後の冷却速度は、切換前の冷却速度の2〜10倍に設定した。
表1に示すように、焼成後のフェライト焼結体における式(1)の値αがα≧0.93となることが確認できた。
なお、式(1)の値αの算出は、組成分析と、(Fe2+−Co3+)量およびMn3+量の定量とから算出した。すなわち、組成分析については、フェライト焼結体を粉砕し粉末状にした後、蛍光X線分析装置 (リガク(株)製、サイマルティック3530)を用いて、Fe,MnO,ZnOおよびCoO量(モル%)を測定した。(Fe2+−Co3+)量およびMn3+量(重量%)は、フェライト焼結体を粉砕して粉末状にし、酸に溶解後、KCr溶液により電位差滴定を行い定量した。(Fe2+−Co3+)量についてであるが、Fe2+とCo3+とが反応するため、Coを固溶させたMn−Zn系フェライトの場合では、Fe2+,Fe3+,Co2+,Co3+のそれぞれの量を正確に分離して定量することが困難であるので、(Fe2+−Co3+)量として定量した。なお、同一のフェライト焼結体においては、Fe=Fe2++Fe3+,Co=Co2++Co3+の式が成り立つ。
また、これらのMn−Zn系フェライト焼結体のサンプルについて、コアロス(Pcv)の測定を行った。Pcvは、BHアナライザーを用い、100kHz,200mTの正弦波交流磁界を印加し、25〜120℃の範囲(25,75,120℃)で測定した(Pcv1)。Pcv測定後さらに、175℃または200℃の雰囲気中に96時間サンプルを貯蔵しておき、同様に貯蔵後のPcv値を25〜120℃の範囲(25,75,120℃)で測定し(Pcv0、Pcv2、Pcv3)、これらの値から貯蔵後のPcvの劣化率を、それぞれの温度で算出した。
Pcvの劣化率(%)は、Pcvの劣化率(%)=((高温貯蔵試験前のコアロスPcv1−高温貯蔵試験後のコアロスPcv0またはPcv2またはPcv3)/高温貯蔵試験前のコアロスPcv1)×100、の関係式で算出することができる。
次に示す表1に、主成分の組成(モル%)と、副成分の含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを示す。Pcvの単位は、kW/mである。
Figure 2004292303
比較例1〜4
焼成条件を変化させ、組成範囲は実施例1または2と同じであるが、式(1)の値αが実施例1〜14の範囲から外れる以外は、前記の実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。比較例1〜4では、実施例1〜14に比べて、特に焼成時の高温保持工程における酸素分圧が、例えば1300℃では、3.80%よりも大きかった。
これらの比較例に係る複数のフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの比較例に係る主成分の組成(モル%)と、副成分の含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表1に示す。
比較例5,6
Fe:51.5〜57.0mol%、ZnO:0〜15mol%の範囲から外れる以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
これらの比較例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの比較例に係る主成分の組成(モル%)と、副成分の含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表1に示す。
比較例7,8
Co:0〜5000ppm(ただし、0は含まず)の範囲から外れる以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
これらの比較例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの比較例に係る主成分の組成(モル%)と、副成分の含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表1に示す。
実施例15〜18
SiO:50〜220ppm、CaO:120〜1400ppmの範囲から外れる以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
これらの比較例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの比較例に係る主成分の組成(モル%)と、副成分の含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表1に示す。
評価1
表1に示すように、
(イ)実施例1〜14と比較例1〜4とを比較することで、以下のことが確認できた。すなわち、Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず) を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトにおいて、前記フェライトにおける式(1)の値αをα≧0.93とすることで、高温貯蔵試験(175℃中で96時間)後のコアロスの劣化(75℃でのPcv劣化率)をたとえば3%以下程度に抑制することができ、さらに120℃でのPcv劣化率をたとえば5%以下(好ましくは4.5%以下)程度に抑制することができることが確認できた。これに対し、比較例1〜4では、α≧0.93を満足せず、75℃でのPcv劣化率が3%を超え、120℃でのPcv劣化率も5%を超えた。
また、より厳しい条件での高温貯蔵試験(200℃中で96時間)後のコアロスの劣化(75℃でのPcv劣化率)をたとえば27%以下程度に抑制することができ、さらに120℃でのPcv劣化率をたとえば30%以下程度に抑制することができることも確認できた。これに対し、比較例1〜4では、α≧0.93を満足せず、75℃でのPcv劣化率が27%を超え、120℃でのPcv劣化率も30%を超えた。
(ロ)実施例1〜14と比較例5〜8とを比較することで、以下のことが確認できた。すなわち、Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有させることで、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)を、広い温度範囲(25〜120℃)において、たとえば500kW/m以下程度に低く抑制することができることが確認できた。なお、比較例5〜8では、Pcv劣化率は実施例に近づけることはできるが、高温貯蔵試験前初期のコアロスが所定の温度で500kW/m以上に大きくなり、25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が困難となる。
(ハ)実施例1〜14と実施例15〜18とを比較することで、以下のことが確認できた。すなわち、SiOの含有量が50ppmより小さくなるか、またはCaOの含有量が120ppmより小さくなると、SiOまたはCaOの含有量以外は同じ組成のものに比較して、高温貯蔵試験前初期のコアロス及び高温貯蔵試験後のコアロスが大きくなる傾向にあることが確認された。
(ニ)実施例1〜14を相互に比較することで、次のことが確認できた。すなわち、式(1)の値αをα≧0.94とすることで、高温貯蔵試験(175℃/96時間)後のコアロスの劣化率(120℃)を4.0%以内と、さらに小さくすることができた。また、さらに厳しい条件の高温貯蔵試験(200℃/96時間)後のコアロスの劣化率(75℃)を25%以内と、さらに小さくすることができ、コアロスの劣化率(120℃)を27%以内と、さらに小さくすることができた。
また、フェライトにおける式(1)の値αをα≧0.95とすることで、高温貯蔵試験(175℃/96時間)後のコアロスの劣化率(120℃)を3.5%以内と、さらに小さくすることができた。また、さらに厳しい条件の高温貯蔵試験(200℃/96時間)後のコアロスの劣化率(75℃)を23%以内と、さらに小さくすることができ、コアロスの劣化率(120℃)を25%以内と、さらに小さくすることができた。
実施例19〜33
前記の実施例5の組成(Fe:53.8mol%,MnO:35.9mol%,ZnO:10.3mol%,Co:3000ppm,SiO:100ppm,CaO:500ppm)をベースとして、下記に示す組成範囲で、Nb、ZrO、Ta、V 、HfO のいずれかを含有させた以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
すなわち、実施例5の組成に、Nb:0〜500ppm(ただし、0は含まず),ZrO:0〜500ppm(ただし、0は含まず),Ta:0〜1000ppm(ただし、0は含まず),V:0〜500ppm(ただし、0は含まず),HfO:0〜500ppm(ただし、0は含まず)のうちの1種以上を含有させた。
これらの実施例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの実施例に係るNb、ZrO、Ta、V 、HfO の含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表2に示す。
Figure 2004292303
実施例34〜38
前記の実施例5の組成(Fe:53.8mol%,MnO:35.9 mol%,ZnO:10.3mol%,Co:3000ppm,SiO:100ppm,CaO:500ppm)をベースとして、下記に示す組成範囲で、Nb、ZrO、Ta、V、HfOのいずれかを含有させた以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
すなわち、実施例5の組成に、Nb:600ppm,ZrO:600ppm,Ta:1100ppm,V:600ppm,HfO:600ppmのうちの1種以上を含有させた。
これらの実施例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの実施例に係るNb、ZrO、Ta、V、HfOの含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表2に示す。
評価2
実施例5と実施例19〜33とを比較することで、Nb、ZrO、Ta、V、HfOのいずれかを含有させることで、これらの副成分を含まない以外は同じ組成のものに比較して、Pcv劣化率を小さくすることができ、所望の25〜120℃の広温度帯域における低コアロス化が容易になると共に、高温貯蔵試験後のコアロスの劣化を、さらに小さくすることができることが確認された。
また、実施例19〜33と実施例34〜38を比較することで、Nb、ZrO、Ta、V、HfOの好ましい範囲は、以下の通りであることが確認できた。
すなわち、Nb:0〜500ppm(ただし、0は含まず),ZrO:0〜500ppm(ただし、0は含まず),Ta:0〜1000ppm(ただし、0は含まず),V:0〜500ppm(ただし、0は含まず), HfO:0〜500ppm(ただし、0は含まず)であることが好ましいことが確認できた。
実施例39〜44
前記の実施例20の組成(Fe:53.8mol%,MnO:35.9mol%,ZnO:10.3mol%,Co:3000ppm,SiO:100ppm,CaO:500ppm,Nb:200ppm)をベースとして、下記に示す組成範囲で、P,Bの双方を含有させた以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
すなわち、実施例20の組成に、P≦35ppmまたはB≦35ppmの範囲で、リン(P)およびホウ素(B)を含有させた。
これらの実施例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの実施例に係るP,Bの含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表3に示す。
Figure 2004292303
実施例45および46
前記の実施例20の組成(Fe:53.8mol%,MnO:35.9mol%,ZnO:10.3mol%,Co:3000ppm,SiO:100ppm,CaO:500ppm,Nb:200ppm)をベースとして、下記に示す組成範囲で、P,Bの双方を含有させた以外は、実施例1〜14と同様にして、複数のフェライト焼結体のサンプルを作製した。
すなわち、実施例20の組成に、P=45または7ppm およびB=8または45ppmの範囲で、リン(P)およびホウ素(B)を含有させた。
これらの実施例に係るフェライト焼結体のサンプルについて、実施例1〜14と同様な測定および試験を行った。これらの実施例に係るP,Bの含有量(ppm)と、式(1)の値αと、高温貯蔵試験前のコアロス(Pcv)と、高温貯蔵試験後のコアロス(Pcv)と、コアロスの劣化率(%)とを、表3に示す。
評価3
実施例39〜44と実施例45,46とを比較することで、リン(P)およびホウ素(B)を含んでも良いが、好ましくは、フェライト中のPおよびBの含有量がP≦35ppmまたはB≦35ppmであることが確認できた。Pの含有量が35ppmよりも大きくなるか、またはBの含有量が35ppmよりも大きくなると、試験前のPcvの値が大きくなり、25〜120℃の広範囲の温度範囲にわたるPcvの低減作用が劣ることが確認された。

Claims (9)

  1. Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、
    前記フェライトにおける下記式(1)の値αが、α≧0.93であることを特徴とするMn−Zn系フェライト。
    α=((Fe2+−Mn3+−Co3+)×(4.29×A+1.91×B+2.19×C+2.01×D))/((A−B−C−D)×100) …式(1)
    但し、式(1)中、(Fe2+−Mn3+−Co3+):[wt%]、A:Fe[mol%]、B:MnO[mol%]、C:ZnO[mol%]、D:CoO[mol%]、である。
  2. Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、
    前記フェライトに対して、100kHz、200mTの正弦波交流磁界を印加し、75℃と120℃とでそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv1とし、該Pcv1の測定後のフェライトを、高温貯蔵(175℃の雰囲気中に96時間貯蔵)した後に、Pcv1の測定と同一条件でそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv2としたとき、下記式(2)で示されるコアロス劣化率が、75℃において3%以下または120℃において5%以下であることを特徴とするMn−Zn系フェライト。
    コアロス劣化率(%)=((Pcv1−Pcv2)/Pcv1)×100 …式(2)
  3. Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトであって、
    前記フェライトに対して、100kHz、200mTの正弦波交流磁界を印加し、75℃と120℃とでそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv1とし、該Pcv1の測定後のフェライトを、高温貯蔵(200℃の雰囲気中に96時間貯蔵)した後に、Pcv1の測定と同一条件でそれぞれ測定されたコアロスの値をPcv3としたとき、下記式(3)で示されるコアロス劣化率が、75℃において27%以下または120℃において30%以下であることを特徴とするMn−Zn系フェライト。
    コアロス劣化率(%)=((Pcv1−Pcv3)/Pcv1)×100 …式(3)
  4. その他の副成分として、SiO:50〜220ppm、CaO:120〜1400ppmを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のMn−Zn系フェライト。
  5. さらにその他の副成分として、Nb:0〜500ppm(ただし、0は含まず)、ZrO:0〜500ppm(ただし、0は含まず)、Ta:0〜1000ppm(ただし、0は含まず)、V:0〜500ppm(ただし、0は含まず)、HfO:0〜500ppm(ただし、0は含まず)のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のMn−Zn系フェライト。
  6. 前記フェライト中のPおよびBの含有量が、P≦35ppmまたはB≦35ppmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のMn−Zn系フェライト。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載のMn−Zn系フェライトで構成してあるトランス用磁心。
  8. 請求項7に記載のトランス用磁心の回りにコイルが巻回してあるトランス。
  9. Fe:51.5〜57.0mol%およびZnO:0〜15mol%(ただし、0は含まず)を含み、残部が実質的にMnOからなる基本成分中に、Co換算で0〜5000ppm(ただし、0は含まず)のCo酸化物を含有するMn−Zn系フェライトを製造する方法であって、
    前記組成範囲となるように原料を準備する原料準備工程と、
    前記原料にバインダーを加えて所定形状に成形し、予備成形体を形成する成形工程と、
    前記予備成形体を焼成する焼成工程とを、有し、
    前記焼成工程が高温保持工程を有し、
    該高温保持工程における保持温度が、1250℃〜1400℃であり、かつ
    焼成雰囲気の酸素分圧をPO(%)とし、保持温度をT(K)としたとき、下記(4)式を満足するPOで焼成することを特徴とするMn−Zn系フェライトの製造方法。
    Log(PO)=a−13000/T …式(4)
    但し、式(4)中のaは、6.95≦a≦8.85である。
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