JP2004292115A - エレベータのかごドア装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】停電等によりエレベータ運転用の電源が遮断されて乗りかごが非常停止したときに、乗りかごのドアパネルを所定の安全な範囲だけ自動的に開いて乗りかご内の換気を図ることができるエレベータのかごドア装置を提供する。
【解決手段】エレベータの乗りかご1の出入口2を開閉する一対のドアパネル4a,4bと、これらドアパネル4a,4bを電力で駆動して開閉動作させるドア駆動装置5と、エレベータ運転用の電源15の遮断でかごが非常停止したときに、二次電池16で前記ドア駆動装置5を起動して前記ドアパネル4a,4bを戸開方向に所定の距離だけ移動させて両ドアパネル4a,4b間に所定の隙間を生じさせるドア開放機構とを具備する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エレベータの乗りかごに備えられるかごドア装置に係り、特に気密性を有する乗りかごの非常時の換気構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベータの乗りかごは、乗客を乗せて建屋の昇降路内を昇降するが、その昇降の高低差が300mを超えると、乗りかご内の乗客が昇降中の気圧の変化を不快に感じるようになる。そして昇降速度が非常に高速になると、聴覚機能に生理的な影響が生じてくる。
【0003】
このような影響を緩和するために、乗りかご内の気圧を調整制御する気圧制御装置が乗りかごに設けられる場合がある。この場合の乗りかごにおいては、乗りかご内に空気を圧送して加圧するための加圧ブロアと、乗りかご内の空気を排出して減圧する排気ブロアとを備え、これら加圧ブロアおよび排気ブロアを適宜駆動することにより、乗りかご内の気圧を外部の気圧の変化に応じて調整するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような気圧制御装置を備える乗りかごにおいては、乗りかごの気密性を高める必要がある。しかしながら、乗りかごの気密性を高めると、停電等によりエレベータ運転用の電源が遮断されて乗りかご内に乗客が閉じ込められた状態で乗りかごが非常停止したような場合に問題が生じる。
【0005】
すなわち、乗りかごに電源が供給されていれば、気圧制御装置の加圧ブロアおよび排気ブロアにより乗りかご内の給排気が可能であるが、停電等で電源が遮断され、気圧制御装置の駆動が不能となった状態で乗りかごが非常停止した場合には、乗りかご内の換気を行なえず、乗りかご内の酸素濃度が低下し、乗客に不快感を与えるばかりでなく、その状態が長時間続けば安全性の点でも問題となってくる。
【0006】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、停電等によりエレベータ運転用の電源が遮断されて乗りかごが非常停止したときに、乗りかごのドアパネルを所定の安全な範囲だけ自動的に開いて乗りかご内の換気を図ることができるエレベータのかごドア装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、エレベータの乗りかごの出入口を開閉するドアパネルと、前記ドアパネルを電力で駆動して開閉動作させるドア駆動装置と、エレベータ運転用の電源の遮断でかごが非常停止したときに、二次電池で前記ドア駆動装置を起動して前記ドアパネルを戸開方向に所定の距離だけ移動させるドア開放機構とを具備することを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、エレベータの乗りかごの出入口を開閉する一対のドアパネルと、これらドアパネルを電力で駆動して開閉動作させるドア駆動装置と、エレベータ運転用の電源の遮断でかごが非常停止したときに、二次電池で前記ドア駆動装置を起動して前記各ドアパネルを戸開方向に所定の距離だけ移動させて両ドアパネル間に所定の隙間Lを生じさせるドア開放機構とを具備することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、前記ドアパネルが、前記乗りかごに設けられたドアレールに沿って移動し、そのドアレールの途中には傾斜部により区分けされた段差部が設けられ、戸閉状態にあるドアパネルはその段差部の下側の区間から前記傾斜部を乗り上げて上側の区間に移動することにより戸開し、前記ドア開放機構におけるドア駆動力が、前記ドアパネルが前記傾斜部を乗り上げる力より小さい値となっていることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2における前記隙間Lの幅が、50〜200mmの範囲であることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、前記ドア開放機構によりドアパネルが戸開方向に所定の距離だけ移動したときに、そのドアパネルのそれ以上の戸開方向への移動を規制する規制装置を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、前記規制装置が、電磁アクチュエータにより駆動される規制ピンを備え、この規制ピンは電磁アクチュエータの通電時には上方に引き上げられ、非通電時には自重または付勢部材による付勢力で下方に移動し、その下方位置においてドアパネルの移動範囲を規制することを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、前記ドアパネルが前記ドア駆動装置により駆動されるときには、前記規制装置の電磁アクチュエータが通電され、前記規制ピンが上方位置に保持されてドアパネルの移動の規制が解除されることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1ないし図5には第1の実施形態を示してある。図1(A),(B)は、それぞれ乗りかご1の出入口2を開閉するかごドア装置3を乗りかご1の正面側から見た正面図であり、このかごドア装置3は両開き式の一対のドアパネル4a,4bを備え、これらドアパネル4a,4bがドア駆動装置5による駆動で左右に移動し、その移動で出入口2が開閉されるようになっている。
【0015】
乗りかご1の前面上部には支持板6が取り付けられ、この支持板6の前面に上下にかつ前後に位置をずらして第1および第2のドアレール8,9が平行に設けられている。
【0016】
前記各ドアパネル4a,4bは、上端部に前記支持板6に対向するハンガー11a,11bを有し、これらハンガー11a,11bの内側にそれぞれハンガーローラ12a,13a,12b,13bが上下左右にかつ前後に位置をずらしてそれぞれ回転自在に取り付けられている。
【0017】
そして、前記ハンガーローラ12a,12bが前記第1のドアレール8の上に転動自在に載置され、前記ハンガーローラ13a,13bが前記第2のドアレール9の上に転動自在に載置され、これによりドアパネル4a,4bがドアレール8,9に沿って移動するように支持板6の下方に移動自在に懸架されている。また、乗りかご1の前面下部には、前記各ドアパネル4a,4bの下端部を支持してそのドアパネル4a,4bの移動をガイドする敷居14が設けられている。
【0018】
第1および第2のドアレール8,9の上端縁は、前記ハンガーローラ12a,12b,13a,13bが転動する転動路17となっており、これら転動路17の中間部には所定区間に亘って延びる深さの浅い凹部18が形成され、これら凹部18の長手方向の両端側が斜めに傾斜する傾斜部18aとなっている。
【0019】
すなわち、ドアレール8,9には、傾斜部18aにより区分される段差部が形成され、その段差部の下側の区間が前記凹部18となっている。
【0020】
図1(A)に示すように、ドアパネル4a,4bがその戸当り縁が互いに密着して乗りかご1内を密閉する戸閉状態にあるときには、ハンガーローラ12a,12b,13a,13bがドアレール8,9における凹部18の区間内に配置している。
【0021】
そして、この状態からドアパネル4a,4bがドア駆動装置5により駆動されて左右側にそれぞれ例えば40mm程度移動したときに、つまり開きつつあるドアパネル4a,4b間に80mm程度の隙間が生じたときに、ハンガーローラ12a,12b,13a,13bがそれぞれ凹部18の両側の傾斜部18aに達し、さらに移動することによりハンガーローラ12a,12b,13a,13bがその傾斜部18aを乗り越えて段差部の上側の区間に移行するようになっている。
【0022】
ドア駆動装置5には、エレベータ運転用の通常電源(商用電源)15が接続されているとともに、非常用電源としての二次電池(バッテリー)16が接続されている。そしてこのドア駆動装置5には、通常時には通常電源15による電力が供給され、停電の発生時にその停電の検出に応じて電力の供給系統が二次電池16に自動的に切り換えられ、その二次電池16による電力がドア駆動装置5に供給されるようになっている。
【0023】
乗りかご1の前面上部には、図2〜図5に示すように、規制装置30が設けられている。なお、図1においては、規制装置30の図示が省略されている。
【0024】
規制装置30は、前記支持板6に取り付けられたフレーム31を備え、このフレーム31に電磁アクチュエータ32が設けられている。フレーム31は水平な支持ベース35および端板36を有し、これら支持ベース35および端板36を貫通するように規制ピン37が設けられている。規制ピン37の上端部は、前記電磁アクチュエータ32により駆動されるプランジャ38に連結されている。
【0025】
規制ピン37の中間部には鍔部材40が設けられ、この鍔部材40と前記支持ベース35との間に付勢部材としてスプリング41が設けられ、このスプリング41により規制ピン37が下方に弾性的に付勢されている。
【0026】
規制ピン37には位置検出棒44が取り付けられ、また前記支持ベース35にはプレート45が取り付けられている。規制ピン37の位置検出棒44は、前記プレート45に形成された上下に長い切込み溝46を貫通してその前面側に突出している。
【0027】
プレート45の前面には、位置検出手段として、前記切込み溝46に沿って上下に並ぶ一対の例えば光センサ48a,48bが設けられ、これら光センサ48a,48bにより位置検出棒44の位置、つまり規制ピン37の位置が検出されるようになっている。
【0028】
各ドアパネル4a,4bに設けられたハンガー11a,11bには、規制板50a,50bがそれぞれ取り付けられている。これら規制板50a,50bは乗りかご1の前方側に突出し、かつ互いに上下に位置をずらすように設けられている。
【0029】
そして、図1(A)および図2に示すように、ドアパネル4a,4bがその先端側の戸当り縁を互いに当接させる戸閉状態にあるときに、図4に示すように一方のドアパネル4aの規制板50aが他方のドアパネル4bの配置側に突出し、他方のドアパネル4bの規制板50bが一方のドアパネル4aの配置側に突出する状態にあり、したがってドアパネル4a,4bが互いに離間する方向に移動する戸開時には、まず一方の規制板50aと他方の規制板50bが図4に矢印で示すように互いに接近する方向に移動する。
【0030】
そして、一定距離だけ移動して一方の規制板50aと他方の規制板50bとがすれ違った後に一方の規制板50aと他方の規制板50bとが互いに離間する方向に移動する。
【0031】
前記規制ピン37は、通常時には、端板36の下方に大きく突出し、戸閉状態にある一方のドアパネル4aの規制板50aと他方のドアパネル4bの規制板50bとの間に進入している。そして、このときの規制ピン37と一方の規制板50aの側縁との距離L、および規制ピン37と他方の規制板50bの側縁との距離Lがそれぞれ例えば50mmとなっている。
【0032】
次に、作用について説明する。
【0033】
エレベータの通常走行中においては、図1(A)に示すように、乗りかご1の出入口2はドアパネル4a,4bにより密閉されている。また、規制装置30の電磁アクチュエータ32への通電は行なわれておらず、規制ピン37は自重およびスプリング41の付勢力で下方に下がり、図2〜図5に示すように、戸閉状態にある一方のドアパネル4aの規制板50aと他方のドアパネル4bの規制板50bとの間に進入している。このときの規制ピン37の位置は、位置検出棒44が光センサ48bにより検出されることによって認識されている。
【0034】
そして、走行中の乗りかご1が所定の着床ゾーンに入ったところで、電磁アクチュエータ32が通電される。電磁アクチュエータ32の通電によりその電磁力でプランジャ38が上方に吸引され、このプランジャ38と一体に規制ピン37が上方に移動して規制板50a,50b間から離脱し、規制解除状態となる。このときの規制ピン37の位置は、位置検出棒44が光センサ48aにより検出されることによって認識される。
【0035】
乗りかご1が所定のフロアに着床したときには、図1(B)に示すように、ドア駆動装置5によりドアパネル4a,4bが左右に移動するように駆動されて乗りかご1の出入口2が開放される。そして乗りかご1に対する乗客の乗り降りが終了した後に、再び駆動装置5によりドアパネル4a,4bが駆動されて出入口2が閉合され、この閉合後に電磁アクチュエータ32の通電が切られ、プランジャ38と一体に規制ピン37が自重およびスプリング41の付勢力で下降し、ドアパネル4a,4bの規制板50a,50b間に進入し、ドアパネル4a,4bの戸閉状態が保持され、この状態で乗りかご1の走行が再開する。
【0036】
一方、乗りかご1の走行中に、停電等によりエレベータ運転用の電源15が遮断されて乗りかご1が非常停止した場合には、ドア駆動装置5に対する電力の供給系統が非常用電源としての二次電池16に自動的に切り換えられる。
【0037】
そしてこの二次電池16による電力でドア駆動装置5が起動し、ドアパネル4a,4bが戸開方向に駆動され、ドアパネル4a,4bの戸当り縁の相互間に隙間が生じる。
【0038】
そして、ドアパネル4a,4bが互いに離間する戸開方向にそれぞれ例えば40mm程度移動したときに、各ハンガーローラ12a,12b,13a,13bがそれぞれドアレール8,9における傾斜部18aに到達する。
【0039】
この際、各ハンガーローラ12a,12b,13a,13bが前記傾斜部18aを重力に逆らって乗り越えるためには力Fが必要となるが、二次電池16を電源として起動する前記駆動装置5の駆動力は、前記力Fより小さい値となるように予め設定されており、したがってドアパネル4a,4bはそれぞれ開放方向に40mm程度移動して傾斜部18aに達し、その相互間に80mm程度の隙間が生じたときにその移動が停止する。
【0040】
このように、乗りかご1の走行中に停電等による電源の遮断でその乗りかご1が非常停止したときには、自動的にドアパネル4a,4bが所定の距離(40mm)だけ開いてそのドアパネル4a,4b間に所定の隙間(80mm)が生じ、したがって乗りかご1内の空気がその隙間を通して外部の空気と充分に循環し、このため適正な換気が図られ、乗りかご1内が酸素不足となるようなことがなく、乗りかご1内の乗客に不快感を与えるようなことがない。
【0041】
また、乗りかご1内の乗客は、ドアパネル4a,4bの相互間に所定の幅の隙間が生じることから、その隙間を通して外部の様子を知ることができ、密室に閉じ込まれたような恐怖感が和らぐ。
【0042】
一方、乗りかご1内の乗客が前記隙間に手を差し込んでドアパネル4a,4bをこじ開けようとしたときには、ドアパネル4a,4bが10mm程度開放方向に移動した際にそのドアパネル4a,4bの規制板50a,50bが規制ピン37に当接してそれ以上の移動が規制され、したがってドアパネル4a,4bの相互間の隙間は100mm以下に規制されて大きく開くことがなく、このため乗りかご1内の乗客がその隙間から転落するような危険がなく、安全性を確保することができる。
【0043】
また、ドア駆動装置5に前記力Fを上回るような駆動力が生じ、その駆動力で各ハンガーローラ12a,12b,13a,13bが前記傾斜部18aを乗り越え、ドアパネル4a,4bがさらに戸開方向に移動した際にも、そのドアパネル4a,4bの規制板50a,50bが規制ピン37に当接してそれ以上の移動が規制され、したがってドアパネル4a,4bが大きく開くことがなく、このため乗りかご1内の乗客がその隙間から転落するような危険がなく、安全性を確保することができる。
【0044】
なお、乗りかご1の非常停止時に二次電池16の故障等でドアパネル4a,4Bを開くことができなかったときには、別の二次電池で駆動される音声アナウンス装置を用いて乗りかご1内の乗客に手動でドアパネル4a,4bを開くよう促すアナウンスを放送するように構成することも可能である。
【0045】
図6には第2の実施形態を示してある。この実施形態においては、駆動装置5には通常電源が接続されているだけで、非常用の電源は接続されていない。
【0046】
そして前記支持板6の両端部にそれぞれ付勢機構としての巻取り装置20a,20bが設けられている。これら巻取り装置20a,20bは、支持板6に回転自在に取り付けられたリール21と、このリール21を一回転方向に弾性的に付勢したスプリング22と、前記リール21に一端部が巻き掛けられ、他端部が前記ドアパネル4a,4bのハンガー11a,11bに連結されたワイヤー等の線材23とで構成されている。
【0047】
そして前記スプリング22の弾性力で線材23を介してドアパネル4a,4bが互い離間する方向つまり戸開方向に弾性的に付勢されている。この付勢力は、戸閉状態にあるドアパネル4a,4bを前記凹部18の区間において戸開方向に移動させることが可能な力であって、かつハンガーローラ12a,12b,13a,13bがドアレール8,9の傾斜部18aを乗り上げるときの力より小さい力に設定されている。
【0048】
ドアパネル4a,4bを駆動するドア駆動装置5は、所定の電気信号が入力されたときに、戸閉状態にあるドアパネル4a,4bを電力に基づいて互いに離間する方向に移動させて戸開し、また戸開状態にあるドアパネル4a,4bを前記巻取り装置20a,20bによる付勢力に抗して互いに接近する方向に移動させて戸閉するようになっている。そして、戸閉状態のときのドアパネル4a,4bはドア駆動装置5に電力が供給されている限りその移動が拘束されて戸閉状態が維持され、ドア駆動装置5への電力の供給が絶たれたときにその拘束が解かれるようになっている。
【0049】
なお、この実施形態のかごドア装置3においても、図3〜図5に示す構成と同様の規制装置30が設けられているから、作用についてはその図2〜図5を参照して説明する。
【0050】
エレベータの通常走行中においては、図6(A)に示すように、乗りかご1の出入口2はドアパネル4a,4bにより密閉されている。
【0051】
また、規制装置30の電磁アクチュエータ32への通電は行なわれておらず、規制ピン37は自重およびスプリング41の付勢力で下方に下がり、図3〜図5に示すように、戸閉状態にある一方のドアパネル4aの規制板50aと他方のドアパネル4bの規制板50bとの間に進入している。このときの規制ピン37の位置は、位置検出棒44が光センサ48bにより検出されることによって認識されている。
【0052】
そして、走行中の乗りかご1が所定の着床ゾーンに入ったところで、電磁アクチュエータ32が通電される。電磁アクチュエータ32の通電によりその電磁力でプランジャ38が上方に吸引され、このプランジャ38と一体に規制ピン37が上方に移動して規制板50a,50b間から離脱し、規制解除状態となる。このときの規制ピン37の位置は、位置検出棒44が光センサ48aにより検出されることによって認識される。
【0053】
乗りかご1が所定のフロアに着床したときには、図6(B)に示すように、ドア駆動装置5によりドアパネル4a,4bが左右に移動するように駆動されて乗りかご1の出入口2が開放される。そして乗りかご1に対する乗客の乗り降りが終了した後に、再びドア駆動装置5によりドアパネル4a,4bが駆動されて出入口2が閉合され、この閉合後に電磁アクチュエータ32の通電が切られ、プランジャ38と一体に規制ピン37が自重およびスプリング41の付勢力で下降し、ドアパネル4a,4bの規制板50a,50b間に進入し、ドアパネル4a,4bの戸閉状態が保持され、この状態で乗りかご1の走行が再開する。
【0054】
なお、ドアパネル4a,4bが戸開方向に移動する際には、巻取り装置20a,20bの線材23はスプリング22の付勢力でリール21に巻き取られ、またドアパネル4a,4bが戸閉方向に移動する際には、巻取り装置20a,20bの線材23はスプリング22の付勢力に抗してリール21から繰り出される。
【0055】
一方、乗りかご1の走行中に、停電等による電源の遮断で乗りかご1が非常停止した場合には、その電源の遮断でドア駆動装置5によるドアパネル4a,4bの拘束が消失する。
【0056】
ドアパネル4a,4bは、巻取り装置20a,20bにより互いに離間する戸開方向に弾性的に付勢されており、したがってドアパネル4a,4bに対する駆動装置5による拘束が消失すると、これに応じて巻取り装置20a,20bによる付勢力でドアパネル4a,4bが戸開方向に移動し、ドアパネル4a,4bの戸当り縁の相互間に隙間が生じる。
【0057】
そして、ドアパネル4a,4bが互いに離間する戸開方向にそれぞれ例えば40mm程度移動したときに、各ハンガーローラ12a,12b,13a,13bがそれぞれドアレール8,9における傾斜部18aに到達する。
【0058】
この際、各ハンガーローラ12a,12b,13a,13bが前記傾斜部18aを重力に逆らって乗り越えるためには力Fが必要となるが、前記巻取り装置20a,20bによる弾性的な付勢力は前記力Fより小さい値に予め設定されており、したがってドアパネル4a,4bはそれぞれ開放方向に40mm程度移動して傾斜部18aに達し、その相互間に80mm程度の隙間が生じたときにその移動が停止する。
【0059】
このように、乗りかご1の走行中に停電等による電源の遮断で乗りかご1が非常停止したときには、自動的にドアパネル4a,4bが所定の距離(40mm)だけ開いてそのドアパネル4a,4b間に所定の隙間(80mm)が生じ、したがって乗りかご1内の空気がその隙間を通して外部の空気と充分に循環し、このため適正な換気が図られ、乗りかご1内が酸素不足となるようなことがなく、乗りかご1内の乗客に不快感を与えるようなことがない。
【0060】
また、乗りかご1内の乗客は、ドアパネル4a,4bの相互間に所定の幅の隙間が生じることから、その隙間を通して外部の様子を知ることができ、密室に閉じ込まれたような恐怖感が和らぐ。
【0061】
一方、乗りかご1内の乗客が前記隙間に手を差し込んでドアパネル4a,4bをこじ開けようとしたときには、ドアパネル4a,4bが10mm程度開放方向に移動した際にそのドアパネル4a,4bの規制板50a,50bが前記規制ピン37に当接してそれ以上の移動が規制され、したがってドアパネル4a,4bの相互間の隙間は100mm以下に規制されて大きく開くことがなく、このため乗りかご1内の乗客がその隙間から転落するような危険がなく、安全性を確保することができる。
【0062】
巻取り装置20a,20bによりドアパネル4a,4bを戸開方向に水平に移動させる力は、線材23の水平に対する角度に応じて変化する。すなわち、線材23の水平に対する角度が小さいときには、ドアパネル4a,4bを移動させる水平分力が大きく、線材23の水平に対する角度が大きくなるにつれてドアパネル4a,4bを移動させる水平分力が小さくなる。
【0063】
ここで、ドアパネル4a,4bが戸閉状態にあるときには、巻取り装置20a,20bの線材23の水平に対する角度は小さく、ドアパネル4a,4bが戸開方向に移動するにつれてその角度が順次大きくなる。
【0064】
したがって、ドアパネル4a,4bは戸開開始時には大きな水平分力を受けて的確に戸開動作を開始する。そしてドアパネル4a,4bが戸開方向に移動すると水平分力が次第に小さくなり、このためハンガーローラ12a,12b,13a,13bがドアレール8,9における傾斜部18aに到達したときにドアパネル4a,4bが的確に停止する。
【0065】
図7には第3の実施形態を示してあり、この実施形態においては、ドア駆動装置5に対する電源の供給が絶たれたときに、戸閉状態にあるドアパネル4a,4bを戸開方向に所定の距離だけ移動させる付勢機構として、引張りばね60a,60bが用いられている。
【0066】
これら引張りばね60a,60bは、一端部が乗りかご1の前面の支持板6に係止され、他端部がドアパネル4a,4bのハンガー11a,11bに係止され、これら引張りばね60a,60bの弾性力でドアパネル4a,4bが互い離間する戸開方向に弾性的に付勢されている。この付勢力は、戸閉状態にあるドアパネル4a,4bを前記凹部18の区間において戸開方向に移動させることが可能な力であって、かつハンガーローラ12a,12b,13a,13bがドアレール8,9の傾斜部18aを乗り上げるときの力より小さい力に設定されている。
【0067】
したがって、この第3の実施形態においても、前記第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
図8には第4実施形態を示してあり、この実施形態においては、ドア駆動装置5に対する電源の供給が絶たれたときに、戸閉状態にあるドアパネル4a,4bを戸開方向に所定の距離だけ移動させる付勢機構として、ウエイト61a,61bが用いられている。
【0069】
すなわち、乗りかご1の前面の支持板6の両端部にそれぞれプーリ62が回転自在に設けられ、これらプーリ62にワイヤ等の線材63が巻き掛けられ、これら線材63の一端部がドアパネル4a,4bのハンガー11a,11bに係止され、線材63の他端部に前記ウエイト61a,61bが取り付けられ、これらウエイト61a,61bの重力でドアパネル4a,4bが互い離間する戸開方向に付勢されている。この付勢力は、戸閉状態にあるドアパネル4a,4bを前記凹部18の区間において戸開方向に移動させることが可能な力であって、かつハンガーローラ12a,12b,13a,13bがドアレール8,9の傾斜部18aを乗り上げるときの力より小さい力に設定されている。
【0070】
したがって、この第4の実施形態においても、前記第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0071】
なお、いずれの実施形態の場合においても、乗りかご1の非常停止時に生じさせるドアパネル4a,4b間の隙間の幅は、乗りかご1内の換気を充分に図り、かつ乗客に対する安全性の観点から50〜200mmの範囲とすることが好ましい。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、停電等によりエレベータ運転用の電源が遮断されて乗りかごが非常停止したときに、乗りかごのドアパネルを所定の安全な範囲だけ自動的に開いて乗りかご内の換気を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア装置を示す正面図。
【図2】この発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア装置を示す斜視図。
【図3】この発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア装置における規制装置を示す正面図。
【図4】図3中のA−A線に沿う断面図。
【図5】この発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごドア装置における規制装置を示す側面図。
【図6】この発明の第2の実施形態に係るエレベータのかごドア装置を示す正面図。
【図7】この発明の第3の実施形態に係るエレベータのかごドア装置を示す正面図。
【図8】この発明の第4の実施形態に係るエレベータのかごドア装置を示す正面図。
【符号の説明】
1…乗りかご
2…出入口
3…ドア装置
4a,4b…ドアパネル
5…ドア駆動装置
8,9…ドアレール
11a,11b…ハンガー
12a,12b…ハンガーローラ
13a,13b…ハンガーローラ
15…通常電源
16…二次電池
18…凹部
18a…傾斜部
30…規制装置
32…電磁アクチュエータ
38…プランジャ
37…規制ピン
50a,50b…規制板

Claims (7)

  1. エレベータの乗りかごの出入口を開閉するドアパネルと、
    前記ドアパネルを電力で駆動して開閉動作させるドア駆動装置と、
    エレベータ運転用の電源の遮断でかごが非常停止したときに、二次電池で前記ドア駆動装置を起動して前記ドアパネルを戸開方向に所定の距離だけ移動させるドア開放機構と、
    を具備することを特徴とするエレベータのかごドア装置。
  2. エレベータの乗りかごの出入口を開閉する一対のドアパネルと、
    これらドアパネルを電力で駆動して開閉動作させるドア駆動装置と、
    エレベータ運転用の電源の遮断でかごが非常停止したときに、二次電池で前記ドア駆動装置を起動して前記各ドアパネルを戸開方向に所定の距離だけ移動させて両ドアパネル間に所定の隙間Lを生じさせるドア開放機構と、
    を具備することを特徴とするエレベータのかごドア装置。
  3. 前記ドアパネルは、前記乗りかごに設けられたドアレールに沿って移動し、そのドアレールの途中には傾斜部により区分けされた段差部が設けられ、戸閉状態にあるドアパネルはその段差部の下側の区間から前記傾斜部を乗り上げて上側の区間に移動することにより戸開し、前記ドア開放機構におけるドア駆動力は、前記ドアパネルが前記傾斜部を乗り上げる力より小さい値となっていることを特徴とする請求請1または2に記載のエレベータのかごドア装置。
  4. 請求項2における前記隙間Lの幅が、50〜200mmの範囲であることを特徴とするエレベータのかごドア装置。
  5. 前記ドア開放機構によりドアパネルが戸開方向に所定の距離だけ移動したときに、そのドアパネルのそれ以上の戸開方向への移動を規制する規制装置を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエレベータのかごドア装置。
  6. 前記規制装置は、電磁アクチュエータにより駆動される規制ピンを備え、この規制ピンは電磁アクチュエータの通電時には上方に引き上げられ、非通電時には自重または付勢部材による付勢力で下方に移動し、その下方位置においてドアパネルの移動範囲を規制することを特徴とする請求請5に記載のエレベータのかごドア装置。
  7. 前記ドアパネルが前記ドア駆動装置により駆動されるときには、前記規制装置の電磁アクチュエータが通電され、前記規制ピンが上方位置に保持されてドアパネルの移動の規制が解除されることを特徴とする請求項6に記載のエレベータのかごドア装置。
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