JP2004291944A - 車両のスライドドア構造 - Google Patents
車両のスライドドア構造 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004291944A JP2004291944A JP2003091069A JP2003091069A JP2004291944A JP 2004291944 A JP2004291944 A JP 2004291944A JP 2003091069 A JP2003091069 A JP 2003091069A JP 2003091069 A JP2003091069 A JP 2003091069A JP 2004291944 A JP2004291944 A JP 2004291944A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- door
- rear door
- vehicle
- opening
- guide rail
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Abandoned
Links
Images
Landscapes
- Body Structure For Vehicles (AREA)
Abstract
【課題】車両の駐車時に車両後方にスペースが確保できなくても、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大することができ、よってリアドア開口部を介した乗員の乗降や荷物の積み下ろしを容易に行なうことが可能となる車両のスライドドア構造を提供することにある。
【解決手段】フロントドア開口部の前方の車体1にヒンジを介して軸支され、フロントドア開口部を開閉自在に覆うフロントドア6と、リアドア開口部5を開閉自在に覆うリアドア10と、リアドア10を車体1に対して車両前後方向にスライド可能に支持すると共に、リアドア10の閉鎖時にはリアドア10にリアドア開口部5を閉鎖させる一方で、リアドア10の開放時には前方にスライドさせて、フロントドア開口部の車幅方向外側に位置するように支持するリアドア支持手段14、15、16を備える。
【選択図】 図2
【解決手段】フロントドア開口部の前方の車体1にヒンジを介して軸支され、フロントドア開口部を開閉自在に覆うフロントドア6と、リアドア開口部5を開閉自在に覆うリアドア10と、リアドア10を車体1に対して車両前後方向にスライド可能に支持すると共に、リアドア10の閉鎖時にはリアドア10にリアドア開口部5を閉鎖させる一方で、リアドア10の開放時には前方にスライドさせて、フロントドア開口部の車幅方向外側に位置するように支持するリアドア支持手段14、15、16を備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の側面に設けられるスライドドア構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の側面に設けられたリアドア開口部を開閉自在に覆うリアドアを、その閉鎖状態から車両後方にスライドさせることで開放状態となるスライドドアとして設けることは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−160933号公報
【0004】
このように構成することにより、リアドアが車体に対して軸支される所謂ヒンジドアにより構成されたものに比べて、リアドアの開放時に車幅方向外側へのそのリアドアの張り出し量を抑えることができるとともに、開放状態にあるリアドアは車両後方にスライドされた状態にあるため乗員の乗降や荷物の積み下ろしの邪魔になることもない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、車室内後部に座席あるいは荷室が設けられた自動車においては、その車室内後部に対する乗員の乗降や荷物の積み下ろしは、上述のリアドア開口部を介して行われるのが一般的である。
ここで、リアドア開口部から車室内後部までの距離が短ければ短いほど、車室内後部に対する乗員の乗降性や荷物の荷役性が向上するため、リアドア開口部をできるだけ車両後方に拡大させたいという要望がある。
ところが、リアドアはその開放時にリアドア開口部に対して車両後方にスライドされるため、リアドア開口部を車両後方に拡大させると、開放状態にあるリアドアはさらに車両後方にスライドされることから、開放状態にあるリアドアの後端は車両後端よりも突出してしまうことになる。
その結果、車両後方に障害物が存在する場合には、リアドアの開放動作時にリアドアの後端がその障害物に当接してしまい、リアドアが破損してしまうという懸念がある。
その結果、現実的にはこの懸念を未然に防止することができず、リアドア開口部が小さくなり乗員の乗降や荷物の積み下ろしをする際の使い勝手を向上させることができていなかった。
【0006】
本発明は以上のような問題点に勘案してなされたものであって、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大でき、リアドア開口部を介した乗員の乗降や荷物の積み下ろしを容易に行なうことが可能な車両のスライドドア構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の問題点を解決するため、本発明にあっては下記の通り構成される。
本願の請求項1に係わる発明は、車体の側面にフロントドア開口部とリアドア開口部とを車両前後方向に設けた車両において、前記フロントドア開口部の前方の車体にヒンジを介して軸支され、前記フロントドア開口部を開閉自在に覆うフロントドアと、前記リアドア開口部を開閉自在に覆うリアドアと、前記リアドアを、車体に対して車両前後方向にスライド可能に支持すると共に、前記リアドアの閉鎖時には前記リアドアに前記リアドア開口部を閉鎖させる一方で、前記リアドアの開放時には車両前方にスライドさせて、前記フロントドア開口部の車幅方向外側に位置するように支持するリアドア支持手段を備えて構成される。
【0008】
前記構成によれば、リアドアがその開放時に車両前方にスライドするようになっているため、リアドア開口部をいくら車両後方に拡大しても開放状態にあるリアドアが車両後方に突出することがない。よって、車両の駐車時に車両後方にスペースが確保できなくても、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大することができる。
【0009】
本願の請求項2に係わる発明は、前記リアドア支持手段は、前記リアドアの上下方向中間部であってその前部に設けられたセンタースライドローラーと、前記フロントドアの外面に車両前後に亘って設けられるとともに該センタースライドローラーが摺動可能に係合する凹部形状のセンターガイドレールとからなるセンターガイド手段を備え、前記センターガイドレールは、フロントドア内に設けられたドア補強部材に取付けられており、車幅方向外方から入力される荷重を前記ドア補強部材に伝達するように構成される。
【0010】
前記構成によれば、センターガイドレールをフロントドアに設けることにより、リアドアの開放時においてリアドアの上下方向中間部の前部をフロントドアのセンターガイドレールが支持するとともに、そのセンターガイドレールが車両側方から入力される荷重をドア補強部材に伝達する。その結果、このセンターガイドレールが車両側突時の側突荷重吸収機能を分担して有することができ、フロントドアの側突荷重吸収性能を向上させることができる。
【0011】
本願の請求項3に係わる発明は、前記センターガイド手段は、前記リアドアの閉鎖時に前記凹部形状のセンターガイドレールを前記フロントドアとフラットになるよう覆う一方で、前記センタースライドローラーが前記センターガイドレールを摺動する時に前記センタースライドローラーと前記センターガイドレールとの係合を許容するよう変位するカバー部材を備えて構成される。
【0012】
前記構成によれば、リアドアの閉鎖時には、フロントドアに設けられたカバー部材が凹部形状のセンターガイドレールをフラットに覆うので、車外から乗員がフロントドアを開閉する際に、そのフロントドアの側に立つ乗員の身体や衣服等が凹部形状のセンターガイドレールに挟まれてしまうことを防止できる。一方で、リアドアを開放する際には、そのカバー部材が本来のセンターガイドレールの機能を阻害することがない。
【0013】
本願の請求項4に係わる発明は、前記リアドア及び前記リアドア開口部は、リアタイヤの配置空間に対応する後方下部が切り欠かれた形状に構成されて、その下辺の長さが上辺の長さよりも短くなっており、前記リアドア支持手段は、前記リアドアの後方上部に設けられたアッパースライドローラーと、前記リアドア開口部の上辺に沿って車体に車両前後に亘って設けられるとともに該アッパースライドローラーが摺動可能に係合するアッパーガイドレールとからなるアッパーガイド手段と、前記リアドアの下辺近傍の後部に設けられたロアスライドローラーと、前記リアドア開口部の下辺に沿って車体に車両前後に亘って設けられるとともに該ロアスライドローラーが摺動可能に係合する凹部形状のロアガイドレールとからなるロアガイド手段とを備え、前記ロアガイドレールと前記アッパーガイドレールとは略同一長に形成され、前記ロアガイドレールは、前記リアドア開口部の下辺よりも車両前方に向けて、前記フロントドア開口部の下辺に沿って延設されて構成される。
【0014】
前記構成によれば、まず、リアドア開口部の上辺及び下辺に沿って設けられたアッパーガイドレール及びロアガイドレールが、リアドアをその上部及び下部にて支持しているため、リアドアの支持剛性を向上させることができる。その上で、リアタイヤの配置空間に対応してリアドア開口部の下辺の長さが上辺の長さよりも短くなっていることに起因して、リアドア開口部の下辺の長さだけしかリアドアが前方にスライドしないということがないように、ロアガイドレールをフロントドア開口部の下辺に沿って前方に延設して配置されているので、開放時にリアドアを大きく開口させることができ、乗員の乗降や荷物の積み下ろしをする際の使い勝手を向上させることができる。
【0015】
本願の請求項5に係わる発明は、前記ロアガイド手段は、前記リアドアの閉鎖時に、前記フロントドア開口部の下辺に沿って延設された前記凹部形状のロアガイドレールを車体とフラットになるよう覆う一方で、前記ロアスライドローラーが前記ロアガイドレールを摺動する時に前記ロアスライドローラーと前記ロアガイドレールとの係合を許容するよう変位するカバー部材を備えて構成される。
【0016】
前記構成によれば、ロアガイドレールがフロントドア開口部の下辺近傍という低い位置に設けられるため、車両の走行中にその凹部形状のロアスライドレール内に小石等がはまってしまい、リアドアが開放不可能になるという懸念に対して、少なくともリアドアの閉鎖時にはカバー部材がロアスライドレールをフラットに覆うのでそのような懸念を未然に防止できる。一方で、リアドアを開放する際には、そのカバー部材が本来のロアガイドレールの機能を阻害することがない。
【0017】
本願の請求項6に係わる発明は、前記リアドア支持手段は、前記フロントドアの開放時には前記リアドアの開放動作を禁止するとともに、前記フロントドアの閉鎖時には前記開放動作を許容するリアドア開放動作禁止手段を備えて構成される。
【0018】
前記構成によれば、フロントドアの開放時という乗員がフロントドア開口部を介して乗降している可能性がある状況ではリアドアの開放動作が禁止されるため、リアドアの開放により乗員の乗降が遮られることが未然に防止され、その乗員にとって利便性が良い。一方で、フロントドアの閉鎖時には、リアドアの開放動作が許容されるので、リアドア開口部を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0019】
本願の請求項7に係わる発明は、前記リアドア開放動作禁止手段が前記開放動作を禁止した際に、操作者によるリアドアの開放動作の操作に応じて報知する報知手段を備えて構成される。
【0020】
前記構成によれば、フロントドアの開放時にはリアドアの開放動作が禁止されるが、この際にリアドアを開放動作させる操作を行った操作者が、リアドアが故障していると思い違いすることが未然に防止でき、操作者にとって利便性が良い。
【0021】
本願の請求項8に係わる発明は、前記リアドア支持手段は、前記リアドアを、その開放時には、閉鎖状態にある前記フロントドアの車幅方向外側に位置するように支持するとともに、前記リアドアの開放時には閉鎖状態にある前記フロントドアの開放動作を禁止するとともに、前記リアドアの閉鎖時には前記開放動作を許容するフロントドア開放動作禁止手段を備えて構成される。
【0022】
前記構成によれば、リアドアの開放時というフロントドア開口部の車幅方向外側にリアドアが位置した状況では閉鎖状態にあるフロントドアの開放動作が禁止されるため、フロントドアとリアドアとが物理的に干渉してしまい、少なくともいずれか一方のドアが破損してしまうことが未然に防止できる。一方で、リアドアの閉鎖時には、フロントドアの開放動作が許容されるので、フロントドア開口部を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0023】
本願の請求項9に係わる発明は、前記リアドアを車外から開閉操作するための開閉操作部は、前記リアドアの車両前後方向略中央部の外面に設けられて構成される。
【0024】
前記構成によれば、リアドア開口部を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしを行なう場合、リアドア開口部の前部にて車室内に対する乗降や積み下ろしを行なうべく、リアドア開口部の前部の車幅方向外側に乗員が立ってリアドア開放操作をする場合と、リアドア開口部の後部にて車室内に対する乗降や積み下ろしを行なうべく、リアドア開口部の後部の車幅方向外側に乗員が立ってリアドア開放操作をする場合とが考えられるが、いずれの場合でも、リアドアを開閉操作するための開閉操作部が操作しやすい位置に配置されており、利便性が良い。
【0025】
本願の請求項10に係わる発明は、前記リアドアを車内から開放操作するための開放操作部が前記リアドアの車室内面の前部に設けられ、前記リアドアを車内から閉鎖操作するための閉鎖操作部が前記リアドアの車室内面の後部に設けられ、前記リアドアの開放時には前記閉鎖操作部が車室内から操作可能に構成される。
【0026】
前記構成によれば、例えばリアドア開口部の側方の車室内に車両前方に向いて着座している乗員にとって、リアドアの閉鎖時には、開放操作部はその乗員から操作しやすい斜め前方に位置するため、その乗員にとって利便性が良い。
また、リアドアの開放時には、リアドアの車室内面の前部に備えられた開放操作部は、その乗員にとって実質的に操作が不可能な車両前方に変位するものの、閉鎖操作部はその乗員から操作しやすい斜め前方に位置するため、その乗員にとって利便性が良い。
【0027】
【発明の効果】
リアドアがその開放時に車両前方にスライドするようになっているため、車両駐車時に車両後方にスペースが確保できなくても、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大することができる。
よって、リアドア開口部を車両後方に拡大できるため、リアドア開口部を介した乗員の乗降や荷物の積み下ろしを容易に行なうことが可能となる。
また、開放状態のリアドアはフロントドア開口部の車幅方向外側に位置するため、開放状態のリアドアが車両前端から車両前方に突出することも未然に防止できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態を示す車両の側面図を示す。なお、図1及び図2においては左側が車両進行方向である。
【0029】
車体1の側面には、フロントシート2の側方に位置するフロントドア開口部3と、フロントドア開口部3の車両進行方向後側に設けられセカンドシート4の側方に位置するリアドア開口部5とが車両前後方向に隣接して設けられている。
【0030】
フロントドア6は、フロントドア開口部3の車両進行方向前方の車体2に対して、垂直な回転軸を形成するヒンジ7を介して軸支されており、フロントドア開口部3を開閉自在に覆っている。
フロントドア6は、通常は、フロントドアラッチ機構(図示せず)によりフロントドア開口部3を閉鎖した閉鎖状態に保持されている。ところが、車外にいる人がフロントドア6の外面に設けられたフロントドアアウターハンドル8を操作したとき、あるいは、車室内にいる乗員がフロントドア6の車室内面に設けられたフロントドアインナーハンドル9を操作したときには、フロントドアラッチ機構がフロントドア6を閉鎖状態に保持するのを解除し、フロントドア6はその閉鎖状態からフロントドア開口部3の車幅外側に回動した開放状態に変位可能となっている。
【0031】
リアドア開口部5は、リアタイヤ21の車両進行方向前方からリアタイヤ21の真上を経て車両略最後端に亘って、あるいはセカンドシート4の後方に位置する荷室部(図示せず)あるいはサードシート(図示せず)の側方に亘って、図1及び図2に示すリアドア開口部後部22の範囲まで開口するように設けられている。
【0032】
リアドア10は、後述するリアドア支持機構(図示せず)を介して車体1に対して車両前後方向にスライド可能に支持されており、リアタイヤ21の車両進行方向前方からリアタイヤ21の真上を経て車両略最後端に亘って、あるいはセカンドシート4の後方に位置する荷室部(図示せず)あるいはサードシート(図示せず)の側方に亘って、リアドア開口部5と対応して、リアドア開口部5を開閉可能に覆っている。
すなわち、リアドア10及び前記リアドア開口部5は、リアタイヤ21の配置空間に対応する後方下部が切り欠かれた形状に構成されて、その上辺の長さが下辺の長さよりも長くなるように形成されているのである。
【0033】
リアドア10は、通常は、図1に示されるように、リアドアラッチ機構によりリアドア開口部5を閉鎖する閉鎖状態にて保持されている。ところが、車外にいる人がリアドア10の外面に設けられたリアドアアウターハンドル(開閉操作部)11を操作したとき、あるいは、車室内にいる乗員がリアドアの車室内面の車両進行方向前部に設けられたリアドア開放用インナーハンドル(開放操作部)12を操作したときには、リアドアラッチ機構がリアドア10を閉鎖状態に保持するのを解除する。その結果、リアドア10は、その閉鎖状態(図1参照)からリアドア開口部5の車両進行方向前方であって閉鎖状態にあるフロントドア6及びフロントドア開口部3の車幅方向外側にスライドした開放状態(図2参照)に、電動で自動的に変位する、あるいは、手動により変位可能になっている。
このため、車室内後部の側方にもリアドア開口部5が位置することになり、リアドア10の開放時には車室内後部に対して直接車両側方から乗員が乗降したり、あるいは、荷物を積み降ろししたりできるので、車室内後部に対する乗員の乗降性あるいは荷物の荷役性が向上する。
【0034】
また、その場合にリアドア10は車両前方にスライドし、フロントドア6及びフロントドア開口部3の車幅方向外側に位置しているために、リアドア10が車両後端よりも車両後方に突出することもない。さらにフロントドア6及びフロントドア開口部3が存在することにより、車両前端より車両前方にリアドア10が突出することも防止できる。
【0035】
なお、車室内後部というのは、リアドア開口部5の真横に位置する乗員シート4の後方、車室内最後端、あるいはリアタイヤ21の真横に位置し、一般的にリアドア開口部5の真横に位置するセカンドシート4の後方の荷室部(図示せず)あるいはサードシート(図示せず)として利用されている部分のことである。
【0036】
図2に示されるリアドア10の開放状態においては、車両進行方向に上り坂となっている坂道においてリアドア10が自重で自動的に閉鎖状態に変位しないように、リアドア開放状態保持機構(図示せず)がリアドア10を開放状態に保持している。ところが、車外にいる人がリアドア10の外面に設けられたリアドアアウターハンドル11を操作したとき、あるいは、車室内にいる乗員がリアドア10の車室内面の車両進行方向後部に設けられ、リアドアの開放時に車室内から操作可能なリアドア閉鎖用インナーハンドル(閉鎖操作部)13を操作したときには、リアドア開放状態保持機構がリアドア10を開放状態に保持するのを解除する。その結果、リアドア10は、その開放状態(図2参照)から閉鎖状態(図1参照)に、電動で自動的に変位する、あるいは、手動により変位可能になっている。
【0037】
なお、リアドア10の開閉動作を車外から操作するためのリアドアアウターハンドル11は、リアドア10の車両前後方向略中央部の外面に設けられている。したがって、例えば、セカンドシート4への乗車を行なおうとしてリアドア開口部5の車幅方向外側前部に立った乗員が、リアドア10を開放動作させるべくリアドアアウターハンドル11を操作する場合にも、あるいは、車室内後部の荷室部への荷物の積み込みを行なおうとしてリアドア開口部5の車幅方向外側後部に立った荷物運搬者が、リアドア10を開放動作させるべくリアドアアウターハンドル11を操作する場合にも、車外からリアドア10を開放動作させるためのリアドアアウターハンドル11の位置が最適配置されているので、各操作者にとって利便性が良い。
【0038】
また、リアドア10の開放動作を車内から操作するためのリアドア開放用インナーハンドル12はリアドア10の車室内面の車両進行方向前部に設けられている。したがって、車室内前後方向中間部に位置するセカンドシート4に車両前後方向前方に向いて着座する乗員が、閉鎖状態にあるリアドア10(図1参照)を開放操作する際には、その乗員の斜め前方に存在するリアドア開放用インナーハンドル12を操作すれば良いので、乗員が無理な体勢を取ることなく、リアドア10の開放操作を行うことができ、乗員にとって利便性が向上する。
【0039】
一方で、リアドア10の閉鎖動作を車内から操作するためのリアドア閉鎖用インナーハンドル13はリアドア10の車室内面の車両進行方向後部に設けられている。リアドア10の開放時においては、リアドア10はフロントドア6及びフロントドア開口部3の車幅方向外側に車両前方にスライドすることになる。すると、フロントドア6の車室内面の前部に設けられたリアドア開放用インナーハンドル12はセカンドシート4に着座した乗員による車内からの操作が実質的に不可能な位置に変位してしまう。そこで、このようなリアドア開放用インナーハンドル12とは別に、リアドア10が開放状態であっても車内から操作可能な場所(すなわちリアドア10の車室内面の後部)に、リアドア閉鎖用インナーハンドル13を備えているので、乗員が開放状態にあるリアドア10を閉鎖動作させるための車内からの操作が容易に行なえ、乗員にとっての利便性が向上する。
【0040】
以下、図1及び図2を用いて、リアドア支持機構(リアドア支持手段)について説明する。
リアドア支持機構はリアドア10を、アッパースライダー(アッパーガイド手段)14、センタースライダー(センターガイド手段)15、ロアスライダー(ロアガイド手段)16という3つのスライダーにより車体1あるいはフロントドア6に対して支持している。
【0041】
アッパースライダー14は、リアドア10の上部であってその車両進行方向後端に設けられたアッパースライドローラー14aと、リアドア開口部5の上辺に沿って車体1に車両前後方向に亘って設けられるとともにアッパースライドローラー14aが摺動可能に係合するアッパーガイドレール14bとから構成される。
【0042】
センタースライダー15は、リアドア10の上下方向略中央部であってその車両進行方向前端に設けられたセンタースライドローラー15aと、フロントドア6の車幅方向外側面に車両前後方向に亘って設けられるとともにセンタースライドローラー15aが摺動可能に係合する凹部15b(図3及び図4参照)を備えたセンターガイドレール15cとから構成される。
【0043】
ロアスライダー16は、リアドア10の下辺近傍であってその車両進行方向後端に設けられたロアスライドローラー16aと、フロントドア開口部3の下辺における車両進行方向後半部及びリアドア開口部5の下辺に沿って車体1に車両前後方向に亘って設けられるとともにロアスライドローラー16aが摺動可能に係合する凹部16b(図5参照)を備えたロアガイドレール16cとから構成される。
これらアッパーガイドレール14bとセンターガイドレール15cとロアガイドレール16cとはほぼ同一の長さに形成され、各々略同じ距離だけリアドア10を車両前方にスライド可能に構成されている。
【0044】
なお、図1に示されるように、リアドア10の閉鎖状態においては、リアドア開口部5の上辺に沿って設けられたアッパースライダー14の全部分(すなわち、アッパースライドローラー14aとアッパーガイドレール14bの全て)はリアドア10により覆われるように構成され、リアドア開口部5の下辺に沿って設けられたロアスライダー16のリアドア開口部5に沿った部分(すなわち、ロアスライドローラー16aと、凹部16bとロアガイドレール16cの車両進行方向後半部)はリアドア10により覆われるように構成されている。
【0045】
以上のように、リアドア開口部5の上辺及び下辺に沿って設けられたアッパーガイドレール14b及びロアガイドレール16cが、リアドア10をその上部及び下部にて支持しているため、リアドア10の支持剛性を向上させることができる。その上で、リアタイヤ21の配置空間に対応してリアドア開口部5の下辺の長さが上辺の長さよりも短くなっていることに起因して、リアドア開口部5の下辺の長さだけしかリアドア10が前方にスライドしないということがないように、ロアガイドレール16cをフロントドア開口部3の下辺に沿って前方に延設して配置されているので、開放時にリアドア10を大きく開口させることができ、乗員の乗降や荷物の積み下ろしをする際の使い勝手を向上させることができる。
【0046】
以下、図3及び図4を用いて、センタースライダー15について説明する。図3は図1におけるA−A断面図であり、図4は図2におけるA−A断面図である。
リアドア10の閉鎖状態においては、図3に示されるように、センタースライダー15のセンターガイドレール15cの凹部15bをその長手方向全般に亘って覆うセンターカバー部材15dが設けられる。このセンターカバー部材15dは、凹部15bの内部に設けられたスプリング15eにより車幅方向外側に付勢されており、センターガイドレール15cの端部15fに当接することで、フロントドア6とフラットになる位置に保持されている。
このセンターカバー部材15dにより、リアドア10が閉鎖状態の時には、センターカバー部材15dが凹部15bを覆うので、車外から乗員がフロントドア6を開閉する際に、そのフロントドア6の側に立つ乗員の身体や衣服等が凹部形状のセンターガイドレール15cの凹部15bに挟まれてしまうことを防止できる。
【0047】
一方、リアドア10の開放状態においては、図4に示されるように、センターカバー部材15dが凹部15b内で車幅方向内側に変位することで、凹部15bとセンタースライドローラー15aとの係合が許容され、センターカバー部材15dが本来のセンターガイドレール15cの機能を阻害することが防止される。
より詳細に述べると、センタースライドローラー15aは、互いに車両進行方向前後に近接して設けられた第1ローラー15a1と第2ローラー15a2とから構成される。第1ローラー15a1は、車幅方向に軸支されており、凹部15bに対して上下に当接することでリアドア10の重量を支えている。第2ローラー15a2は、鉛直方向に軸支されており、センターカバー部材15dをスプリング15eの付勢に反して車幅方向内側に変位させて第1ローラー15a1と凹部15bとの係合を許容させつつ、それ自身がリアドア10の車幅方向の位置を規制している。なお、第2ローラー15a2は、リアドア10のスライドに応じて凹部15bの中を通過していき、順次センターカバー部材15dを押圧して車幅方向内側に変位させるようになっている。
【0048】
なお、フロントドア6内には、車両前後方向に延び、車幅方向外側から入力された荷重をフロントドア6の前後の車体1に対して伝達するサイドインパクトバー(ドア補強部材)23が設けられている。車両の側突時にフロントドア6に入力された衝突荷重は、このサイドインパクトバー23を介して車体1に対して伝達されるため、フロントドア6の側突荷重吸収性能を向上することができる。
このサイドインパクトバー23に対して、センターガイドレール15cは車両前後の複数箇所にてボルト等の締結部材(図示せず)により取付けられる。この構成により、車両の側突時にフロントドア6に入力される側突荷重は、凹部形状のセンターガイドレール15cからサイドインパクトバー23を介しても車体1に対して伝達されるため、センターガイドレール15cも車両側突時の側突荷重吸収機能を分担して有しており、フロントドア6の側突荷重吸収性能を更に向上させることができる。
【0049】
なお、センターガイドレール15cが取付けられるものとして、ここではサイドインパクトバー23を例示したが、フロントドア6を補強する部材であれば、サイドインパクトバー23でなくても良い。例えば、フロントドア6を補強する機能を有し、フロントドア6内で上下方向に延びるパワーウィンドウ用ウィンドレギュレータ(図示せず)に対して取り付けられても、上述したようなフロントドア6の側突荷重吸収性能を向上させる効果を奏することができる。
【0050】
以下、図5を用いて、ロアスライダー16について説明する。図5は図2におけるB−B断面図である。
リアドア10のロアスライダー16としては、図5に示されるように、ロアスライダー16のロアガイドレール16cの凹部16bをその長手方向全般に亘って覆うロアカバー部材16dが設けられる。このロアカバー部材16dは、凹部16bの内部に設けられたスプリング16eにより車幅方向外側に付勢されており、図示はしないが前述の端部15fと同一機能を有する端部をロアガイドレール16cにも設けることで、図示しないリアドアの閉鎖状態においては車体1とフラットになる位置に保持されるように構成されている。
ここで、ロアガイドレール16cはフロントドア開口部3の下辺近傍という低い位置に設けられるため、車両の走行中にロアスライドレール16cの凹部16b内に小石等がはまってしまい、リアドア10が開放不可能になるという懸念が生じてしまう。ところが、本実施例では、少なくともリアドアの閉鎖時にはロアカバー部材16dがロアスライドレール16cの凹部16bをフラットに覆うのでそのような懸念を未然に防止できる。
【0051】
一方、リアドア10の開放状態においては、図5に示されるように、ロアカバー部材16dが凹部16b内で車幅方向内側に変位することで、凹部16bとロアスライドローラー16aとの係合が許容され、ロアカバー部材16dが本来のロアガイドレール16cの機能を阻害することが防止される。
より詳細に述べると、ロアスライドローラー16aは、車幅方向に軸支されており、ロアカバー部材16dをスプリング16eの付勢に反して車幅方向内側に変位させて凹部16bとの係合を許容させつつ、凹部16bに対して上下に当接することでリアドア10の重量を支えている。なお、ロアスライダー16自体には、リアドア10の車幅方向の位置を規制する機能は有していない。なお、ロアスライドローラー16aは、リアドア10のスライドに応じて凹部16bの中を通過していき、順次ロアカバー部材16dを押圧して車幅方向内側に変位させるようになっている。
【0052】
このロアカバー部材16dは、フロントドア開口部3に沿って設けられたロアガイドレール16cの凹部16bには設けられるものの、リアドア開口部5に沿って設けられたロアガイドレール16cの凹部16bには設けられていない。これは、リアドア10の閉鎖時には、リアドア開口部5に沿って設けられたロアガイドレール16cの凹部16bはそのリアドア10により覆い隠され、ロアカバー部材16dを設ける必要性がないためである。
【0053】
以下、図6及び図7を用いて、フロントドア6の開閉動作とリアドア10の開閉動作との関係について説明する。図6は本発明の実施形態を示すブロック図であり、図7は本発明の実施形態を示す制御装置101における制御のフローチャートである。
【0054】
図6に示されるように、制御装置101に対して、様々なセンサやスイッチや機構が接続されている。図1及び図2に示されたフロントドアアウターハンドル8やフロントドアインナーハンドル9により検出された乗員のフロントドア6の開放動作や閉鎖動作を検出するフロントドア操作スイッチ102が制御装置101に接続されており、図1及び図2に示されたリアドアアウターハンドル11やリアドア開放用インナーハンドル12やリアドア閉鎖用インナーハンドル13により検出された乗員のリアドア10の開放動作や閉鎖動作を検出するリアドア操作スイッチ104が制御装置101に接続されており、制御装置101はフロントドア6及びリアドア10の乗員による開閉操作及びその種別(開放操作と閉鎖操作のいずれか)が判定可能になっている。また、フロントドア6が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検出するフロントドア開閉検出センサ103と、リアドア10が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検出するリアドア開閉検出センサ105が制御装置101に接続されており、制御装置101はフロントドア6及びリアドア10の開閉状態が判定可能になっている(ちなみに、完全に閉鎖状態でなければ開放状態と判定している)。
【0055】
一方で、フロントドア6及びリアドアを電動等の駆動力により開閉可能に駆動するフロントドア駆動機構106及びリアドア駆動機構108が制御装置101に接続されており、制御装置101はフロントドア6及びリアドア10の各々を開放状態と閉鎖状態との間で駆動制御可能になっている。また、車内外の乗員に対して音声や光等で報知する報知機構(報知手段)107も制御装置101に接続されており、制御装置101は報知機構107を用いることで乗員に報知が行なえるようになっている。
【0056】
上述の構成を前提として、制御装置101の制御について、図7を用いて説明する。
まず、スタートしたときに、S1ではフロントドア6に対して乗員により開閉操作があったかどうかを判定する。開閉操作がなければS7へ進むが、開閉操作があればS2にて操作の種別を判定する。
【0057】
操作の種別が閉鎖操作であれば、S3にてフロントドア6が閉鎖状態となるように駆動制御する一方で、操作の種別が開放操作であれば、S4にてリアドア10が開閉状態のいずれにあるかを判定する。リアドア10が閉鎖状態であればS6にてフロントドア6が開放状態となるように駆動制御する一方で、リアドア10が開放状態であればS5にてフロントドア6を開放状態に駆動制御することなく、車内外の乗員に対して報知を行なう。なお、S3,S5,S6に引き続いてはS7へ移行する。
【0058】
S7ではリアドア10に対して乗員により開閉操作があったかどうかを判定する。
開閉操作がなければスタートにリターンさせるが、開閉操作があればS8にて操作の種別を判定する。操作の種別が閉鎖操作であれば、S9にてリアドア10が閉鎖状態となるように駆動制御する一方で、操作の種別が開放操作であれば、S10にてフロントドア6が開閉状態のいずれにあるかを判定する。フロントドア6が閉鎖状態であればS12にてリアドア10が開放状態となるように駆動制御する一方で、フロントドア6が開放状態であればS11にてリアドア10を開放状態に駆動制御することなく、車内外の乗員に対して報知を行なう。なお、S9,S11,S12に引き続いてはS7へ移行する。
【0059】
上述したように、制御装置101は、フロントドア6の開放時にはリアドア10のリアドア開放動作を禁止し、フロントドア6の閉鎖時にはリアドア開放動作を許容するようになっている。したがって、フロントドア6の開放時という乗員がフロントドア6から乗降している状況ではリアドア10の開放動作が禁止するため、フロントドア開口部を介した乗員の乗降動作がリアドア10により遮られることが未然に防止できる。また、フロントドア6の開放時というリアドア10との物理的な干渉が発生してしまう懸念がある状況ではリアドア10の開放動作を禁止するため、フロントドア6とリアドア10との間の物理的な干渉によって、フロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのも未然に防止できる。一方で、フロントドア6の閉鎖時には、リアドア10の開放動作を許容するので、リアドア開口部5を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0060】
また、制御装置101は、リアドア10のリアドア開放動作を禁止したときには、報知機構107により乗員に報知するようになっている。したがって、この場合において、リアドア10を開放動作させるための操作を行った乗員が(リアドア10の開放動作ができないために)リアドア10が故障していると思い違いすることが未然に防止できる。
【0061】
さらに、制御装置101は、リアドア10の開放時にはフロントドア6のフロントドア開放動作を禁止し、リアドア10の閉鎖時にはフロントドア開放動作を許容するようになっている。したがって、リアドア10の開放時というフロントドア6との物理的な干渉が発生してしまう懸念がある状況ではフロントドア6の開放動作が禁止されるため、フロントドア6とリアドア10との間の物理的な干渉によって、フロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのが未然に防止できる。一方で、リアドア10の閉鎖時には、フロントドア6の開放動作が許容されるので、フロントドア開口部3を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0062】
なお、図6及び図7においては、フロントドア駆動機構106とリアドア駆動機構108を用いて、フロントドア6とリアドア10とが開閉可能に自動駆動される例を挙げたが、制御装置101によりフロントドア6とリアドア10の施解錠が制御可能なフロントドアロック機構106とリアドアロック機構108を用いることで、自動駆動でなくても本発明の実現は可能である。
【0063】
すなわち、フロントドアロック機構106とリアドアロック機構108を用いた場合には、S3やS6やS9やS12ではフロントドア6あるいはリアドア10を解錠状態にしてドアの開閉を許容すると共に、S5やS11では乗員への報知と同時に即座にフロントドア6あるいはリアドア10を施錠状態にすることにより、閉鎖状態にあるフロントドア6あるいはリアドア10の開放動作を禁止させるようになる。このように、フロントドア6あるいはリアドア10を施錠状態にすることにより、フロントドアアウターハンドル8やフロントドアインナーハンドル9やリアドアアウターハンドル11やリアドア開放用インナーハンドル12の操作を受付けないようになり、リアドア10とフロントドア6とが物理的に干渉することがなくなり、フロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのが未然に防止できる。
【0064】
フロントドア6の開放状態のときにはリアドア10を閉鎖状態から開放状態に動作するリアドア開放動作を禁止する点については、ハード構成による解決も可能であるので、以下、図8乃至図10を用いて説明する。図8はフロントドア6が開放状態にあるときの図1におけるB−B断面図であり、図9はフロントドア6が閉鎖状態にあるときの図1におけるB−B断面図であり、図10は図2におけるC−C断面図である。
【0065】
図8乃至図10において、6はフロントドア、10はリアドア、17はフロントドア開口部3とリアドア開口部5との間に位置するセンターピラー17である。センターピラー17の車幅外側には後述するレバーに係合する第1係合部17aが設けられている。
【0066】
一方、リアドア10の車両進行方向前部にはブラケット18が固定されており、そのブラケット18に対して支持部材19が鉛直方向に軸支されており、さらにその支持部材19に対して前述したセンタースライドローラー15aの第1ローラー15a1と第2ローラー15a2が支持されており、第1ローラー15a1と第2ローラー15a2はリアドア10の車両進行方向前方に位置している。
【0067】
更に、ブラケット18に対してはレバー20が鉛直方向に軸支されている。レバー20は略L字形状に構成されており、第1係合部17aに係合可能な第2係合部20aと、フロントドア6に当接して変位可能な当接部20bとを備えている。なお、支持部材19とレバー20とが同じ軸支点によりブラケット18に軸支されていることにより、部品点数の減少を図っている。
【0068】
まず、図8においてはフロントドア6が開放状態にあるため、レバー20の当接部20bはフロントドア6と当接していない。よって、図示しない付勢部材により、レバー20はその当接部20bが車幅外側に変位している。その結果、レバー20の第2係合部20aは車両進行方向に変位し、センターピラー17の第1係合部17aに対して係合している。この係合により閉鎖状態にあるリアドア10を開放状態に移行させる開放動作は禁止される。すなわち、フロントドア6の開放時という乗員がフロントドア6から乗降している状況ではリアドア10の開放動作が禁止するため、フロントドア開口部を介した乗員の乗降動作がリアドア10により遮られることや、フロントドア6とリアドア10との間での物理的な干渉によってフロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのが未然に防止できる。
【0069】
一方、図9のようにフロントドア6が閉鎖状態にあるときには、レバー20の当接部20bはフロントドア6に当接かつ押圧され、図示しない付勢部材に抗して車幅内側に変位している。その結果、レバー20の第2係合部20aは車両進行反対方向に変位し、センターピラー17の第1係合部17aとの係合は解除されている。この係合解除により閉鎖状態にあるリアドア10を開放状態に移行させる開放動作は許容される。すなわち、フロントドア6の閉鎖時にはリアドア10のリアドア開放動作は許容され、図10に示すように、リアドア10を開放動作することができるのである。
【0070】
なお、リアドア10の閉鎖状態(図8乃至図9)においては、支持部材9は軸支点を中心に反時計回りに回転し、リアドアの閉鎖に支障がないように第1ローラー15a1と第2ローラー15a2を格納している。一方、リアドア10の開放状態(図10)においては、支持部材9は軸支点を中心に時計回りに回転し、図4に示されるように第1ローラー15a1と第2ローラー15a2を機能させている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す車両の側面図(リアドア閉鎖時)。
【図2】本発明の実施形態を示す車両の側面図(リアドア開放時)。
【図3】図1におけるA−A断面図。
【図4】図2におけるA−A断面図。
【図5】図2におけるB−B断面図。
【図6】本発明の実施形態を示すブロック図。
【図7】本発明の実施形態を示す制御のフローチャート。
【図8】図1におけるB−B断面図(フロントドア開放時)。
【図9】図1におけるB−B断面図(フロントドア閉鎖時)。
【図10】図2におけるC−C断面図。
【符号の説明】
1.車体
3.フロントドア開口部
5.リアドア開口部
6.フロントドア
7.ヒンジ
10.リアドア
14.アッパースライダー(リアドア支持手段)
15.センタースライダー(リアドア支持手段)
16.ロアスライダー(リアドア支持手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の側面に設けられるスライドドア構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の側面に設けられたリアドア開口部を開閉自在に覆うリアドアを、その閉鎖状態から車両後方にスライドさせることで開放状態となるスライドドアとして設けることは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−160933号公報
【0004】
このように構成することにより、リアドアが車体に対して軸支される所謂ヒンジドアにより構成されたものに比べて、リアドアの開放時に車幅方向外側へのそのリアドアの張り出し量を抑えることができるとともに、開放状態にあるリアドアは車両後方にスライドされた状態にあるため乗員の乗降や荷物の積み下ろしの邪魔になることもない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、車室内後部に座席あるいは荷室が設けられた自動車においては、その車室内後部に対する乗員の乗降や荷物の積み下ろしは、上述のリアドア開口部を介して行われるのが一般的である。
ここで、リアドア開口部から車室内後部までの距離が短ければ短いほど、車室内後部に対する乗員の乗降性や荷物の荷役性が向上するため、リアドア開口部をできるだけ車両後方に拡大させたいという要望がある。
ところが、リアドアはその開放時にリアドア開口部に対して車両後方にスライドされるため、リアドア開口部を車両後方に拡大させると、開放状態にあるリアドアはさらに車両後方にスライドされることから、開放状態にあるリアドアの後端は車両後端よりも突出してしまうことになる。
その結果、車両後方に障害物が存在する場合には、リアドアの開放動作時にリアドアの後端がその障害物に当接してしまい、リアドアが破損してしまうという懸念がある。
その結果、現実的にはこの懸念を未然に防止することができず、リアドア開口部が小さくなり乗員の乗降や荷物の積み下ろしをする際の使い勝手を向上させることができていなかった。
【0006】
本発明は以上のような問題点に勘案してなされたものであって、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大でき、リアドア開口部を介した乗員の乗降や荷物の積み下ろしを容易に行なうことが可能な車両のスライドドア構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の問題点を解決するため、本発明にあっては下記の通り構成される。
本願の請求項1に係わる発明は、車体の側面にフロントドア開口部とリアドア開口部とを車両前後方向に設けた車両において、前記フロントドア開口部の前方の車体にヒンジを介して軸支され、前記フロントドア開口部を開閉自在に覆うフロントドアと、前記リアドア開口部を開閉自在に覆うリアドアと、前記リアドアを、車体に対して車両前後方向にスライド可能に支持すると共に、前記リアドアの閉鎖時には前記リアドアに前記リアドア開口部を閉鎖させる一方で、前記リアドアの開放時には車両前方にスライドさせて、前記フロントドア開口部の車幅方向外側に位置するように支持するリアドア支持手段を備えて構成される。
【0008】
前記構成によれば、リアドアがその開放時に車両前方にスライドするようになっているため、リアドア開口部をいくら車両後方に拡大しても開放状態にあるリアドアが車両後方に突出することがない。よって、車両の駐車時に車両後方にスペースが確保できなくても、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大することができる。
【0009】
本願の請求項2に係わる発明は、前記リアドア支持手段は、前記リアドアの上下方向中間部であってその前部に設けられたセンタースライドローラーと、前記フロントドアの外面に車両前後に亘って設けられるとともに該センタースライドローラーが摺動可能に係合する凹部形状のセンターガイドレールとからなるセンターガイド手段を備え、前記センターガイドレールは、フロントドア内に設けられたドア補強部材に取付けられており、車幅方向外方から入力される荷重を前記ドア補強部材に伝達するように構成される。
【0010】
前記構成によれば、センターガイドレールをフロントドアに設けることにより、リアドアの開放時においてリアドアの上下方向中間部の前部をフロントドアのセンターガイドレールが支持するとともに、そのセンターガイドレールが車両側方から入力される荷重をドア補強部材に伝達する。その結果、このセンターガイドレールが車両側突時の側突荷重吸収機能を分担して有することができ、フロントドアの側突荷重吸収性能を向上させることができる。
【0011】
本願の請求項3に係わる発明は、前記センターガイド手段は、前記リアドアの閉鎖時に前記凹部形状のセンターガイドレールを前記フロントドアとフラットになるよう覆う一方で、前記センタースライドローラーが前記センターガイドレールを摺動する時に前記センタースライドローラーと前記センターガイドレールとの係合を許容するよう変位するカバー部材を備えて構成される。
【0012】
前記構成によれば、リアドアの閉鎖時には、フロントドアに設けられたカバー部材が凹部形状のセンターガイドレールをフラットに覆うので、車外から乗員がフロントドアを開閉する際に、そのフロントドアの側に立つ乗員の身体や衣服等が凹部形状のセンターガイドレールに挟まれてしまうことを防止できる。一方で、リアドアを開放する際には、そのカバー部材が本来のセンターガイドレールの機能を阻害することがない。
【0013】
本願の請求項4に係わる発明は、前記リアドア及び前記リアドア開口部は、リアタイヤの配置空間に対応する後方下部が切り欠かれた形状に構成されて、その下辺の長さが上辺の長さよりも短くなっており、前記リアドア支持手段は、前記リアドアの後方上部に設けられたアッパースライドローラーと、前記リアドア開口部の上辺に沿って車体に車両前後に亘って設けられるとともに該アッパースライドローラーが摺動可能に係合するアッパーガイドレールとからなるアッパーガイド手段と、前記リアドアの下辺近傍の後部に設けられたロアスライドローラーと、前記リアドア開口部の下辺に沿って車体に車両前後に亘って設けられるとともに該ロアスライドローラーが摺動可能に係合する凹部形状のロアガイドレールとからなるロアガイド手段とを備え、前記ロアガイドレールと前記アッパーガイドレールとは略同一長に形成され、前記ロアガイドレールは、前記リアドア開口部の下辺よりも車両前方に向けて、前記フロントドア開口部の下辺に沿って延設されて構成される。
【0014】
前記構成によれば、まず、リアドア開口部の上辺及び下辺に沿って設けられたアッパーガイドレール及びロアガイドレールが、リアドアをその上部及び下部にて支持しているため、リアドアの支持剛性を向上させることができる。その上で、リアタイヤの配置空間に対応してリアドア開口部の下辺の長さが上辺の長さよりも短くなっていることに起因して、リアドア開口部の下辺の長さだけしかリアドアが前方にスライドしないということがないように、ロアガイドレールをフロントドア開口部の下辺に沿って前方に延設して配置されているので、開放時にリアドアを大きく開口させることができ、乗員の乗降や荷物の積み下ろしをする際の使い勝手を向上させることができる。
【0015】
本願の請求項5に係わる発明は、前記ロアガイド手段は、前記リアドアの閉鎖時に、前記フロントドア開口部の下辺に沿って延設された前記凹部形状のロアガイドレールを車体とフラットになるよう覆う一方で、前記ロアスライドローラーが前記ロアガイドレールを摺動する時に前記ロアスライドローラーと前記ロアガイドレールとの係合を許容するよう変位するカバー部材を備えて構成される。
【0016】
前記構成によれば、ロアガイドレールがフロントドア開口部の下辺近傍という低い位置に設けられるため、車両の走行中にその凹部形状のロアスライドレール内に小石等がはまってしまい、リアドアが開放不可能になるという懸念に対して、少なくともリアドアの閉鎖時にはカバー部材がロアスライドレールをフラットに覆うのでそのような懸念を未然に防止できる。一方で、リアドアを開放する際には、そのカバー部材が本来のロアガイドレールの機能を阻害することがない。
【0017】
本願の請求項6に係わる発明は、前記リアドア支持手段は、前記フロントドアの開放時には前記リアドアの開放動作を禁止するとともに、前記フロントドアの閉鎖時には前記開放動作を許容するリアドア開放動作禁止手段を備えて構成される。
【0018】
前記構成によれば、フロントドアの開放時という乗員がフロントドア開口部を介して乗降している可能性がある状況ではリアドアの開放動作が禁止されるため、リアドアの開放により乗員の乗降が遮られることが未然に防止され、その乗員にとって利便性が良い。一方で、フロントドアの閉鎖時には、リアドアの開放動作が許容されるので、リアドア開口部を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0019】
本願の請求項7に係わる発明は、前記リアドア開放動作禁止手段が前記開放動作を禁止した際に、操作者によるリアドアの開放動作の操作に応じて報知する報知手段を備えて構成される。
【0020】
前記構成によれば、フロントドアの開放時にはリアドアの開放動作が禁止されるが、この際にリアドアを開放動作させる操作を行った操作者が、リアドアが故障していると思い違いすることが未然に防止でき、操作者にとって利便性が良い。
【0021】
本願の請求項8に係わる発明は、前記リアドア支持手段は、前記リアドアを、その開放時には、閉鎖状態にある前記フロントドアの車幅方向外側に位置するように支持するとともに、前記リアドアの開放時には閉鎖状態にある前記フロントドアの開放動作を禁止するとともに、前記リアドアの閉鎖時には前記開放動作を許容するフロントドア開放動作禁止手段を備えて構成される。
【0022】
前記構成によれば、リアドアの開放時というフロントドア開口部の車幅方向外側にリアドアが位置した状況では閉鎖状態にあるフロントドアの開放動作が禁止されるため、フロントドアとリアドアとが物理的に干渉してしまい、少なくともいずれか一方のドアが破損してしまうことが未然に防止できる。一方で、リアドアの閉鎖時には、フロントドアの開放動作が許容されるので、フロントドア開口部を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0023】
本願の請求項9に係わる発明は、前記リアドアを車外から開閉操作するための開閉操作部は、前記リアドアの車両前後方向略中央部の外面に設けられて構成される。
【0024】
前記構成によれば、リアドア開口部を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしを行なう場合、リアドア開口部の前部にて車室内に対する乗降や積み下ろしを行なうべく、リアドア開口部の前部の車幅方向外側に乗員が立ってリアドア開放操作をする場合と、リアドア開口部の後部にて車室内に対する乗降や積み下ろしを行なうべく、リアドア開口部の後部の車幅方向外側に乗員が立ってリアドア開放操作をする場合とが考えられるが、いずれの場合でも、リアドアを開閉操作するための開閉操作部が操作しやすい位置に配置されており、利便性が良い。
【0025】
本願の請求項10に係わる発明は、前記リアドアを車内から開放操作するための開放操作部が前記リアドアの車室内面の前部に設けられ、前記リアドアを車内から閉鎖操作するための閉鎖操作部が前記リアドアの車室内面の後部に設けられ、前記リアドアの開放時には前記閉鎖操作部が車室内から操作可能に構成される。
【0026】
前記構成によれば、例えばリアドア開口部の側方の車室内に車両前方に向いて着座している乗員にとって、リアドアの閉鎖時には、開放操作部はその乗員から操作しやすい斜め前方に位置するため、その乗員にとって利便性が良い。
また、リアドアの開放時には、リアドアの車室内面の前部に備えられた開放操作部は、その乗員にとって実質的に操作が不可能な車両前方に変位するものの、閉鎖操作部はその乗員から操作しやすい斜め前方に位置するため、その乗員にとって利便性が良い。
【0027】
【発明の効果】
リアドアがその開放時に車両前方にスライドするようになっているため、車両駐車時に車両後方にスペースが確保できなくても、車両後方に存在する障害物に開放状態のリアドアが当接してリアドアが破損するという懸念をなくしつつ、リアドア開口部を車両後方に拡大することができる。
よって、リアドア開口部を車両後方に拡大できるため、リアドア開口部を介した乗員の乗降や荷物の積み下ろしを容易に行なうことが可能となる。
また、開放状態のリアドアはフロントドア開口部の車幅方向外側に位置するため、開放状態のリアドアが車両前端から車両前方に突出することも未然に防止できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態を示す車両の側面図を示す。なお、図1及び図2においては左側が車両進行方向である。
【0029】
車体1の側面には、フロントシート2の側方に位置するフロントドア開口部3と、フロントドア開口部3の車両進行方向後側に設けられセカンドシート4の側方に位置するリアドア開口部5とが車両前後方向に隣接して設けられている。
【0030】
フロントドア6は、フロントドア開口部3の車両進行方向前方の車体2に対して、垂直な回転軸を形成するヒンジ7を介して軸支されており、フロントドア開口部3を開閉自在に覆っている。
フロントドア6は、通常は、フロントドアラッチ機構(図示せず)によりフロントドア開口部3を閉鎖した閉鎖状態に保持されている。ところが、車外にいる人がフロントドア6の外面に設けられたフロントドアアウターハンドル8を操作したとき、あるいは、車室内にいる乗員がフロントドア6の車室内面に設けられたフロントドアインナーハンドル9を操作したときには、フロントドアラッチ機構がフロントドア6を閉鎖状態に保持するのを解除し、フロントドア6はその閉鎖状態からフロントドア開口部3の車幅外側に回動した開放状態に変位可能となっている。
【0031】
リアドア開口部5は、リアタイヤ21の車両進行方向前方からリアタイヤ21の真上を経て車両略最後端に亘って、あるいはセカンドシート4の後方に位置する荷室部(図示せず)あるいはサードシート(図示せず)の側方に亘って、図1及び図2に示すリアドア開口部後部22の範囲まで開口するように設けられている。
【0032】
リアドア10は、後述するリアドア支持機構(図示せず)を介して車体1に対して車両前後方向にスライド可能に支持されており、リアタイヤ21の車両進行方向前方からリアタイヤ21の真上を経て車両略最後端に亘って、あるいはセカンドシート4の後方に位置する荷室部(図示せず)あるいはサードシート(図示せず)の側方に亘って、リアドア開口部5と対応して、リアドア開口部5を開閉可能に覆っている。
すなわち、リアドア10及び前記リアドア開口部5は、リアタイヤ21の配置空間に対応する後方下部が切り欠かれた形状に構成されて、その上辺の長さが下辺の長さよりも長くなるように形成されているのである。
【0033】
リアドア10は、通常は、図1に示されるように、リアドアラッチ機構によりリアドア開口部5を閉鎖する閉鎖状態にて保持されている。ところが、車外にいる人がリアドア10の外面に設けられたリアドアアウターハンドル(開閉操作部)11を操作したとき、あるいは、車室内にいる乗員がリアドアの車室内面の車両進行方向前部に設けられたリアドア開放用インナーハンドル(開放操作部)12を操作したときには、リアドアラッチ機構がリアドア10を閉鎖状態に保持するのを解除する。その結果、リアドア10は、その閉鎖状態(図1参照)からリアドア開口部5の車両進行方向前方であって閉鎖状態にあるフロントドア6及びフロントドア開口部3の車幅方向外側にスライドした開放状態(図2参照)に、電動で自動的に変位する、あるいは、手動により変位可能になっている。
このため、車室内後部の側方にもリアドア開口部5が位置することになり、リアドア10の開放時には車室内後部に対して直接車両側方から乗員が乗降したり、あるいは、荷物を積み降ろししたりできるので、車室内後部に対する乗員の乗降性あるいは荷物の荷役性が向上する。
【0034】
また、その場合にリアドア10は車両前方にスライドし、フロントドア6及びフロントドア開口部3の車幅方向外側に位置しているために、リアドア10が車両後端よりも車両後方に突出することもない。さらにフロントドア6及びフロントドア開口部3が存在することにより、車両前端より車両前方にリアドア10が突出することも防止できる。
【0035】
なお、車室内後部というのは、リアドア開口部5の真横に位置する乗員シート4の後方、車室内最後端、あるいはリアタイヤ21の真横に位置し、一般的にリアドア開口部5の真横に位置するセカンドシート4の後方の荷室部(図示せず)あるいはサードシート(図示せず)として利用されている部分のことである。
【0036】
図2に示されるリアドア10の開放状態においては、車両進行方向に上り坂となっている坂道においてリアドア10が自重で自動的に閉鎖状態に変位しないように、リアドア開放状態保持機構(図示せず)がリアドア10を開放状態に保持している。ところが、車外にいる人がリアドア10の外面に設けられたリアドアアウターハンドル11を操作したとき、あるいは、車室内にいる乗員がリアドア10の車室内面の車両進行方向後部に設けられ、リアドアの開放時に車室内から操作可能なリアドア閉鎖用インナーハンドル(閉鎖操作部)13を操作したときには、リアドア開放状態保持機構がリアドア10を開放状態に保持するのを解除する。その結果、リアドア10は、その開放状態(図2参照)から閉鎖状態(図1参照)に、電動で自動的に変位する、あるいは、手動により変位可能になっている。
【0037】
なお、リアドア10の開閉動作を車外から操作するためのリアドアアウターハンドル11は、リアドア10の車両前後方向略中央部の外面に設けられている。したがって、例えば、セカンドシート4への乗車を行なおうとしてリアドア開口部5の車幅方向外側前部に立った乗員が、リアドア10を開放動作させるべくリアドアアウターハンドル11を操作する場合にも、あるいは、車室内後部の荷室部への荷物の積み込みを行なおうとしてリアドア開口部5の車幅方向外側後部に立った荷物運搬者が、リアドア10を開放動作させるべくリアドアアウターハンドル11を操作する場合にも、車外からリアドア10を開放動作させるためのリアドアアウターハンドル11の位置が最適配置されているので、各操作者にとって利便性が良い。
【0038】
また、リアドア10の開放動作を車内から操作するためのリアドア開放用インナーハンドル12はリアドア10の車室内面の車両進行方向前部に設けられている。したがって、車室内前後方向中間部に位置するセカンドシート4に車両前後方向前方に向いて着座する乗員が、閉鎖状態にあるリアドア10(図1参照)を開放操作する際には、その乗員の斜め前方に存在するリアドア開放用インナーハンドル12を操作すれば良いので、乗員が無理な体勢を取ることなく、リアドア10の開放操作を行うことができ、乗員にとって利便性が向上する。
【0039】
一方で、リアドア10の閉鎖動作を車内から操作するためのリアドア閉鎖用インナーハンドル13はリアドア10の車室内面の車両進行方向後部に設けられている。リアドア10の開放時においては、リアドア10はフロントドア6及びフロントドア開口部3の車幅方向外側に車両前方にスライドすることになる。すると、フロントドア6の車室内面の前部に設けられたリアドア開放用インナーハンドル12はセカンドシート4に着座した乗員による車内からの操作が実質的に不可能な位置に変位してしまう。そこで、このようなリアドア開放用インナーハンドル12とは別に、リアドア10が開放状態であっても車内から操作可能な場所(すなわちリアドア10の車室内面の後部)に、リアドア閉鎖用インナーハンドル13を備えているので、乗員が開放状態にあるリアドア10を閉鎖動作させるための車内からの操作が容易に行なえ、乗員にとっての利便性が向上する。
【0040】
以下、図1及び図2を用いて、リアドア支持機構(リアドア支持手段)について説明する。
リアドア支持機構はリアドア10を、アッパースライダー(アッパーガイド手段)14、センタースライダー(センターガイド手段)15、ロアスライダー(ロアガイド手段)16という3つのスライダーにより車体1あるいはフロントドア6に対して支持している。
【0041】
アッパースライダー14は、リアドア10の上部であってその車両進行方向後端に設けられたアッパースライドローラー14aと、リアドア開口部5の上辺に沿って車体1に車両前後方向に亘って設けられるとともにアッパースライドローラー14aが摺動可能に係合するアッパーガイドレール14bとから構成される。
【0042】
センタースライダー15は、リアドア10の上下方向略中央部であってその車両進行方向前端に設けられたセンタースライドローラー15aと、フロントドア6の車幅方向外側面に車両前後方向に亘って設けられるとともにセンタースライドローラー15aが摺動可能に係合する凹部15b(図3及び図4参照)を備えたセンターガイドレール15cとから構成される。
【0043】
ロアスライダー16は、リアドア10の下辺近傍であってその車両進行方向後端に設けられたロアスライドローラー16aと、フロントドア開口部3の下辺における車両進行方向後半部及びリアドア開口部5の下辺に沿って車体1に車両前後方向に亘って設けられるとともにロアスライドローラー16aが摺動可能に係合する凹部16b(図5参照)を備えたロアガイドレール16cとから構成される。
これらアッパーガイドレール14bとセンターガイドレール15cとロアガイドレール16cとはほぼ同一の長さに形成され、各々略同じ距離だけリアドア10を車両前方にスライド可能に構成されている。
【0044】
なお、図1に示されるように、リアドア10の閉鎖状態においては、リアドア開口部5の上辺に沿って設けられたアッパースライダー14の全部分(すなわち、アッパースライドローラー14aとアッパーガイドレール14bの全て)はリアドア10により覆われるように構成され、リアドア開口部5の下辺に沿って設けられたロアスライダー16のリアドア開口部5に沿った部分(すなわち、ロアスライドローラー16aと、凹部16bとロアガイドレール16cの車両進行方向後半部)はリアドア10により覆われるように構成されている。
【0045】
以上のように、リアドア開口部5の上辺及び下辺に沿って設けられたアッパーガイドレール14b及びロアガイドレール16cが、リアドア10をその上部及び下部にて支持しているため、リアドア10の支持剛性を向上させることができる。その上で、リアタイヤ21の配置空間に対応してリアドア開口部5の下辺の長さが上辺の長さよりも短くなっていることに起因して、リアドア開口部5の下辺の長さだけしかリアドア10が前方にスライドしないということがないように、ロアガイドレール16cをフロントドア開口部3の下辺に沿って前方に延設して配置されているので、開放時にリアドア10を大きく開口させることができ、乗員の乗降や荷物の積み下ろしをする際の使い勝手を向上させることができる。
【0046】
以下、図3及び図4を用いて、センタースライダー15について説明する。図3は図1におけるA−A断面図であり、図4は図2におけるA−A断面図である。
リアドア10の閉鎖状態においては、図3に示されるように、センタースライダー15のセンターガイドレール15cの凹部15bをその長手方向全般に亘って覆うセンターカバー部材15dが設けられる。このセンターカバー部材15dは、凹部15bの内部に設けられたスプリング15eにより車幅方向外側に付勢されており、センターガイドレール15cの端部15fに当接することで、フロントドア6とフラットになる位置に保持されている。
このセンターカバー部材15dにより、リアドア10が閉鎖状態の時には、センターカバー部材15dが凹部15bを覆うので、車外から乗員がフロントドア6を開閉する際に、そのフロントドア6の側に立つ乗員の身体や衣服等が凹部形状のセンターガイドレール15cの凹部15bに挟まれてしまうことを防止できる。
【0047】
一方、リアドア10の開放状態においては、図4に示されるように、センターカバー部材15dが凹部15b内で車幅方向内側に変位することで、凹部15bとセンタースライドローラー15aとの係合が許容され、センターカバー部材15dが本来のセンターガイドレール15cの機能を阻害することが防止される。
より詳細に述べると、センタースライドローラー15aは、互いに車両進行方向前後に近接して設けられた第1ローラー15a1と第2ローラー15a2とから構成される。第1ローラー15a1は、車幅方向に軸支されており、凹部15bに対して上下に当接することでリアドア10の重量を支えている。第2ローラー15a2は、鉛直方向に軸支されており、センターカバー部材15dをスプリング15eの付勢に反して車幅方向内側に変位させて第1ローラー15a1と凹部15bとの係合を許容させつつ、それ自身がリアドア10の車幅方向の位置を規制している。なお、第2ローラー15a2は、リアドア10のスライドに応じて凹部15bの中を通過していき、順次センターカバー部材15dを押圧して車幅方向内側に変位させるようになっている。
【0048】
なお、フロントドア6内には、車両前後方向に延び、車幅方向外側から入力された荷重をフロントドア6の前後の車体1に対して伝達するサイドインパクトバー(ドア補強部材)23が設けられている。車両の側突時にフロントドア6に入力された衝突荷重は、このサイドインパクトバー23を介して車体1に対して伝達されるため、フロントドア6の側突荷重吸収性能を向上することができる。
このサイドインパクトバー23に対して、センターガイドレール15cは車両前後の複数箇所にてボルト等の締結部材(図示せず)により取付けられる。この構成により、車両の側突時にフロントドア6に入力される側突荷重は、凹部形状のセンターガイドレール15cからサイドインパクトバー23を介しても車体1に対して伝達されるため、センターガイドレール15cも車両側突時の側突荷重吸収機能を分担して有しており、フロントドア6の側突荷重吸収性能を更に向上させることができる。
【0049】
なお、センターガイドレール15cが取付けられるものとして、ここではサイドインパクトバー23を例示したが、フロントドア6を補強する部材であれば、サイドインパクトバー23でなくても良い。例えば、フロントドア6を補強する機能を有し、フロントドア6内で上下方向に延びるパワーウィンドウ用ウィンドレギュレータ(図示せず)に対して取り付けられても、上述したようなフロントドア6の側突荷重吸収性能を向上させる効果を奏することができる。
【0050】
以下、図5を用いて、ロアスライダー16について説明する。図5は図2におけるB−B断面図である。
リアドア10のロアスライダー16としては、図5に示されるように、ロアスライダー16のロアガイドレール16cの凹部16bをその長手方向全般に亘って覆うロアカバー部材16dが設けられる。このロアカバー部材16dは、凹部16bの内部に設けられたスプリング16eにより車幅方向外側に付勢されており、図示はしないが前述の端部15fと同一機能を有する端部をロアガイドレール16cにも設けることで、図示しないリアドアの閉鎖状態においては車体1とフラットになる位置に保持されるように構成されている。
ここで、ロアガイドレール16cはフロントドア開口部3の下辺近傍という低い位置に設けられるため、車両の走行中にロアスライドレール16cの凹部16b内に小石等がはまってしまい、リアドア10が開放不可能になるという懸念が生じてしまう。ところが、本実施例では、少なくともリアドアの閉鎖時にはロアカバー部材16dがロアスライドレール16cの凹部16bをフラットに覆うのでそのような懸念を未然に防止できる。
【0051】
一方、リアドア10の開放状態においては、図5に示されるように、ロアカバー部材16dが凹部16b内で車幅方向内側に変位することで、凹部16bとロアスライドローラー16aとの係合が許容され、ロアカバー部材16dが本来のロアガイドレール16cの機能を阻害することが防止される。
より詳細に述べると、ロアスライドローラー16aは、車幅方向に軸支されており、ロアカバー部材16dをスプリング16eの付勢に反して車幅方向内側に変位させて凹部16bとの係合を許容させつつ、凹部16bに対して上下に当接することでリアドア10の重量を支えている。なお、ロアスライダー16自体には、リアドア10の車幅方向の位置を規制する機能は有していない。なお、ロアスライドローラー16aは、リアドア10のスライドに応じて凹部16bの中を通過していき、順次ロアカバー部材16dを押圧して車幅方向内側に変位させるようになっている。
【0052】
このロアカバー部材16dは、フロントドア開口部3に沿って設けられたロアガイドレール16cの凹部16bには設けられるものの、リアドア開口部5に沿って設けられたロアガイドレール16cの凹部16bには設けられていない。これは、リアドア10の閉鎖時には、リアドア開口部5に沿って設けられたロアガイドレール16cの凹部16bはそのリアドア10により覆い隠され、ロアカバー部材16dを設ける必要性がないためである。
【0053】
以下、図6及び図7を用いて、フロントドア6の開閉動作とリアドア10の開閉動作との関係について説明する。図6は本発明の実施形態を示すブロック図であり、図7は本発明の実施形態を示す制御装置101における制御のフローチャートである。
【0054】
図6に示されるように、制御装置101に対して、様々なセンサやスイッチや機構が接続されている。図1及び図2に示されたフロントドアアウターハンドル8やフロントドアインナーハンドル9により検出された乗員のフロントドア6の開放動作や閉鎖動作を検出するフロントドア操作スイッチ102が制御装置101に接続されており、図1及び図2に示されたリアドアアウターハンドル11やリアドア開放用インナーハンドル12やリアドア閉鎖用インナーハンドル13により検出された乗員のリアドア10の開放動作や閉鎖動作を検出するリアドア操作スイッチ104が制御装置101に接続されており、制御装置101はフロントドア6及びリアドア10の乗員による開閉操作及びその種別(開放操作と閉鎖操作のいずれか)が判定可能になっている。また、フロントドア6が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検出するフロントドア開閉検出センサ103と、リアドア10が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検出するリアドア開閉検出センサ105が制御装置101に接続されており、制御装置101はフロントドア6及びリアドア10の開閉状態が判定可能になっている(ちなみに、完全に閉鎖状態でなければ開放状態と判定している)。
【0055】
一方で、フロントドア6及びリアドアを電動等の駆動力により開閉可能に駆動するフロントドア駆動機構106及びリアドア駆動機構108が制御装置101に接続されており、制御装置101はフロントドア6及びリアドア10の各々を開放状態と閉鎖状態との間で駆動制御可能になっている。また、車内外の乗員に対して音声や光等で報知する報知機構(報知手段)107も制御装置101に接続されており、制御装置101は報知機構107を用いることで乗員に報知が行なえるようになっている。
【0056】
上述の構成を前提として、制御装置101の制御について、図7を用いて説明する。
まず、スタートしたときに、S1ではフロントドア6に対して乗員により開閉操作があったかどうかを判定する。開閉操作がなければS7へ進むが、開閉操作があればS2にて操作の種別を判定する。
【0057】
操作の種別が閉鎖操作であれば、S3にてフロントドア6が閉鎖状態となるように駆動制御する一方で、操作の種別が開放操作であれば、S4にてリアドア10が開閉状態のいずれにあるかを判定する。リアドア10が閉鎖状態であればS6にてフロントドア6が開放状態となるように駆動制御する一方で、リアドア10が開放状態であればS5にてフロントドア6を開放状態に駆動制御することなく、車内外の乗員に対して報知を行なう。なお、S3,S5,S6に引き続いてはS7へ移行する。
【0058】
S7ではリアドア10に対して乗員により開閉操作があったかどうかを判定する。
開閉操作がなければスタートにリターンさせるが、開閉操作があればS8にて操作の種別を判定する。操作の種別が閉鎖操作であれば、S9にてリアドア10が閉鎖状態となるように駆動制御する一方で、操作の種別が開放操作であれば、S10にてフロントドア6が開閉状態のいずれにあるかを判定する。フロントドア6が閉鎖状態であればS12にてリアドア10が開放状態となるように駆動制御する一方で、フロントドア6が開放状態であればS11にてリアドア10を開放状態に駆動制御することなく、車内外の乗員に対して報知を行なう。なお、S9,S11,S12に引き続いてはS7へ移行する。
【0059】
上述したように、制御装置101は、フロントドア6の開放時にはリアドア10のリアドア開放動作を禁止し、フロントドア6の閉鎖時にはリアドア開放動作を許容するようになっている。したがって、フロントドア6の開放時という乗員がフロントドア6から乗降している状況ではリアドア10の開放動作が禁止するため、フロントドア開口部を介した乗員の乗降動作がリアドア10により遮られることが未然に防止できる。また、フロントドア6の開放時というリアドア10との物理的な干渉が発生してしまう懸念がある状況ではリアドア10の開放動作を禁止するため、フロントドア6とリアドア10との間の物理的な干渉によって、フロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのも未然に防止できる。一方で、フロントドア6の閉鎖時には、リアドア10の開放動作を許容するので、リアドア開口部5を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0060】
また、制御装置101は、リアドア10のリアドア開放動作を禁止したときには、報知機構107により乗員に報知するようになっている。したがって、この場合において、リアドア10を開放動作させるための操作を行った乗員が(リアドア10の開放動作ができないために)リアドア10が故障していると思い違いすることが未然に防止できる。
【0061】
さらに、制御装置101は、リアドア10の開放時にはフロントドア6のフロントドア開放動作を禁止し、リアドア10の閉鎖時にはフロントドア開放動作を許容するようになっている。したがって、リアドア10の開放時というフロントドア6との物理的な干渉が発生してしまう懸念がある状況ではフロントドア6の開放動作が禁止されるため、フロントドア6とリアドア10との間の物理的な干渉によって、フロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのが未然に防止できる。一方で、リアドア10の閉鎖時には、フロントドア6の開放動作が許容されるので、フロントドア開口部3を介して乗員の乗降や荷物の積み下ろしが可能となる。
【0062】
なお、図6及び図7においては、フロントドア駆動機構106とリアドア駆動機構108を用いて、フロントドア6とリアドア10とが開閉可能に自動駆動される例を挙げたが、制御装置101によりフロントドア6とリアドア10の施解錠が制御可能なフロントドアロック機構106とリアドアロック機構108を用いることで、自動駆動でなくても本発明の実現は可能である。
【0063】
すなわち、フロントドアロック機構106とリアドアロック機構108を用いた場合には、S3やS6やS9やS12ではフロントドア6あるいはリアドア10を解錠状態にしてドアの開閉を許容すると共に、S5やS11では乗員への報知と同時に即座にフロントドア6あるいはリアドア10を施錠状態にすることにより、閉鎖状態にあるフロントドア6あるいはリアドア10の開放動作を禁止させるようになる。このように、フロントドア6あるいはリアドア10を施錠状態にすることにより、フロントドアアウターハンドル8やフロントドアインナーハンドル9やリアドアアウターハンドル11やリアドア開放用インナーハンドル12の操作を受付けないようになり、リアドア10とフロントドア6とが物理的に干渉することがなくなり、フロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのが未然に防止できる。
【0064】
フロントドア6の開放状態のときにはリアドア10を閉鎖状態から開放状態に動作するリアドア開放動作を禁止する点については、ハード構成による解決も可能であるので、以下、図8乃至図10を用いて説明する。図8はフロントドア6が開放状態にあるときの図1におけるB−B断面図であり、図9はフロントドア6が閉鎖状態にあるときの図1におけるB−B断面図であり、図10は図2におけるC−C断面図である。
【0065】
図8乃至図10において、6はフロントドア、10はリアドア、17はフロントドア開口部3とリアドア開口部5との間に位置するセンターピラー17である。センターピラー17の車幅外側には後述するレバーに係合する第1係合部17aが設けられている。
【0066】
一方、リアドア10の車両進行方向前部にはブラケット18が固定されており、そのブラケット18に対して支持部材19が鉛直方向に軸支されており、さらにその支持部材19に対して前述したセンタースライドローラー15aの第1ローラー15a1と第2ローラー15a2が支持されており、第1ローラー15a1と第2ローラー15a2はリアドア10の車両進行方向前方に位置している。
【0067】
更に、ブラケット18に対してはレバー20が鉛直方向に軸支されている。レバー20は略L字形状に構成されており、第1係合部17aに係合可能な第2係合部20aと、フロントドア6に当接して変位可能な当接部20bとを備えている。なお、支持部材19とレバー20とが同じ軸支点によりブラケット18に軸支されていることにより、部品点数の減少を図っている。
【0068】
まず、図8においてはフロントドア6が開放状態にあるため、レバー20の当接部20bはフロントドア6と当接していない。よって、図示しない付勢部材により、レバー20はその当接部20bが車幅外側に変位している。その結果、レバー20の第2係合部20aは車両進行方向に変位し、センターピラー17の第1係合部17aに対して係合している。この係合により閉鎖状態にあるリアドア10を開放状態に移行させる開放動作は禁止される。すなわち、フロントドア6の開放時という乗員がフロントドア6から乗降している状況ではリアドア10の開放動作が禁止するため、フロントドア開口部を介した乗員の乗降動作がリアドア10により遮られることや、フロントドア6とリアドア10との間での物理的な干渉によってフロントドア6あるいはリアドア10に破損が生じてしまうのが未然に防止できる。
【0069】
一方、図9のようにフロントドア6が閉鎖状態にあるときには、レバー20の当接部20bはフロントドア6に当接かつ押圧され、図示しない付勢部材に抗して車幅内側に変位している。その結果、レバー20の第2係合部20aは車両進行反対方向に変位し、センターピラー17の第1係合部17aとの係合は解除されている。この係合解除により閉鎖状態にあるリアドア10を開放状態に移行させる開放動作は許容される。すなわち、フロントドア6の閉鎖時にはリアドア10のリアドア開放動作は許容され、図10に示すように、リアドア10を開放動作することができるのである。
【0070】
なお、リアドア10の閉鎖状態(図8乃至図9)においては、支持部材9は軸支点を中心に反時計回りに回転し、リアドアの閉鎖に支障がないように第1ローラー15a1と第2ローラー15a2を格納している。一方、リアドア10の開放状態(図10)においては、支持部材9は軸支点を中心に時計回りに回転し、図4に示されるように第1ローラー15a1と第2ローラー15a2を機能させている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す車両の側面図(リアドア閉鎖時)。
【図2】本発明の実施形態を示す車両の側面図(リアドア開放時)。
【図3】図1におけるA−A断面図。
【図4】図2におけるA−A断面図。
【図5】図2におけるB−B断面図。
【図6】本発明の実施形態を示すブロック図。
【図7】本発明の実施形態を示す制御のフローチャート。
【図8】図1におけるB−B断面図(フロントドア開放時)。
【図9】図1におけるB−B断面図(フロントドア閉鎖時)。
【図10】図2におけるC−C断面図。
【符号の説明】
1.車体
3.フロントドア開口部
5.リアドア開口部
6.フロントドア
7.ヒンジ
10.リアドア
14.アッパースライダー(リアドア支持手段)
15.センタースライダー(リアドア支持手段)
16.ロアスライダー(リアドア支持手段)
Claims (10)
- 車体の側面にフロントドア開口部とリアドア開口部とを車両前後方向に設けた車両において、
前記フロントドア開口部の前方の車体にヒンジを介して軸支され、前記フロントドア開口部を開閉自在に覆うフロントドアと、
前記リアドア開口部を開閉自在に覆うリアドアと、
前記リアドアを、車体に対して車両前後方向にスライド可能に支持すると共に、前記リアドアの閉鎖時には前記リアドアに前記リアドア開口部を閉鎖させる一方で、前記リアドアの開放時には車両前方にスライドさせて、前記フロントドア開口部の車幅方向外側に位置するように支持するリアドア支持手段を備えたことを特徴とする車両のスライドドア構造。 - 前記リアドア支持手段は、前記リアドアの上下方向中間部であってその前部に設けられたセンタースライドローラーと、前記フロントドアの外面に車両前後に亘って設けられるとともに該センタースライドローラーが摺動可能に係合する凹部形状のセンターガイドレールとからなるセンターガイド手段を備え、
前記センターガイドレールは、フロントドア内に設けられたドア補強部材に取付けられており、車幅方向外方から入力される荷重を前記ドア補強部材に伝達することを特徴とする請求項1に記載の車両のスライドドア構造。 - 前記センターガイド手段は、前記リアドアの閉鎖時に前記凹部形状のセンターガイドレールを前記フロントドアとフラットになるよう覆う一方で、前記センタースライドローラーが前記センターガイドレールを摺動する時に前記センタースライドローラーと前記センターガイドレールとの係合を許容するよう変位するカバー部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両のスライドドア構造。
- 前記リアドア及び前記リアドア開口部は、リアタイヤの配置空間に対応する後方下部が切り欠かれた形状に構成されて、その上辺の長さが下辺の長さよりも長くなっており、
前記リアドア支持手段は、
前記リアドアの後方上部に設けられたアッパースライドローラーと、前記リアドア開口部の上辺に沿って車体に車両前後に亘って設けられるとともに該アッパースライドローラーが摺動可能に係合するアッパーガイドレールとからなるアッパーガイド手段と、
前記リアドアの下辺近傍の後部に設けられたロアスライドローラーと、前記リアドア開口部の下辺に沿って車体に車両前後に亘って設けられるとともに該ロアスライドローラーが摺動可能に係合する凹部形状のロアガイドレールとからなるロアガイド手段とを備え、
前記ロアガイドレールと前記アッパーガイドレールとは略同一長に形成され、
前記ロアガイドレールは、前記リアドア開口部の下辺よりも車両前方に向けて、前記フロントドア開口部の下辺に沿って延設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のスライドドア構造。 - 前記ロアガイド手段は、前記リアドアの閉鎖時に、前記フロントドア開口部の下辺に沿って延設された前記凹部形状のロアガイドレールを車体とフラットになるよう覆う一方で、前記ロアスライドローラーが前記ロアガイドレールを摺動する時に前記ロアスライドローラーと前記ロアガイドレールとの係合を許容するよう変位するカバー部材を備えていることを特徴とする請求項4に記載の車両のスライドドア構造。
- 前記リアドア支持手段は、前記フロントドアの開放時には前記リアドアの開放動作を禁止するとともに、前記フロントドアの閉鎖時には前記開放動作を許容するリアドア開放動作禁止手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両のスライドドア構造。
- 前記リアドア開放動作禁止手段が前記開放動作を禁止した際に、操作者によるリアドアの開放動作の操作に応じて報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両のスライドドア構造。
- 前記リアドア支持手段は、前記リアドアを、その開放時には、閉鎖状態にある前記フロントドアの車幅方向外側に位置するように支持するとともに、
前記リアドアの開放時には閉鎖状態にある前記フロントドアの開放動作を禁止するとともに、前記リアドアの閉鎖時には前記開放動作を許容するフロントドア開放動作禁止手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両のスライドドア構造。 - 前記リアドアを車外から開閉操作するための開閉操作部は、前記リアドアの車両前後方向略中央部の外面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両のスライドドア構造。
- 前記リアドアを車内から開放操作するための開放操作部が前記リアドアの車室内面の前部に設けられ、前記リアドアを車内から閉鎖操作するための閉鎖操作部が前記リアドアの車室内面の後部に設けられ、前記リアドアの開放時には前記閉鎖操作部が車室内から操作可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のスライドドア構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003091069A JP2004291944A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 車両のスライドドア構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003091069A JP2004291944A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 車両のスライドドア構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004291944A true JP2004291944A (ja) | 2004-10-21 |
Family
ID=33404537
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003091069A Abandoned JP2004291944A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 車両のスライドドア構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004291944A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019043548A (ja) * | 2018-10-29 | 2019-03-22 | 株式会社ホンダアクセス | 車両用ドア開閉装置 |
CN110259310A (zh) * | 2019-05-13 | 2019-09-20 | 杭州傲拓迈科技有限公司 | 滑移式电控车门 |
-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003091069A patent/JP2004291944A/ja not_active Abandoned
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019043548A (ja) * | 2018-10-29 | 2019-03-22 | 株式会社ホンダアクセス | 車両用ドア開閉装置 |
CN110259310A (zh) * | 2019-05-13 | 2019-09-20 | 杭州傲拓迈科技有限公司 | 滑移式电控车门 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN113738202A (zh) | 闩锁 | |
US9938762B2 (en) | Vehicle with tailgate | |
JP2003285719A (ja) | 自動車のシートベルト装置 | |
JP6215918B2 (ja) | 車両 | |
EP1285824B1 (en) | Seat belt system for a vehicle | |
US9815434B2 (en) | Vehicle | |
US20060285957A1 (en) | Loading floor for a cargo space of a vehicle | |
JP6225177B2 (ja) | 車両 | |
JP2004291944A (ja) | 車両のスライドドア構造 | |
JP2005053315A (ja) | 車両の後部開閉構造 | |
JP2001322501A (ja) | 車両の後部荷室構造 | |
JP6095772B2 (ja) | 車両 | |
JP2009227192A (ja) | 自動車の側壁構造 | |
JP2002046472A (ja) | 2ウェイスライド方式の車両用バックドア装置 | |
JP4353028B2 (ja) | 車両乗降用開口部の開閉装置 | |
JP4985596B2 (ja) | スライドドアのカバー構造 | |
JP7018861B2 (ja) | スライドドア付き車両 | |
JP5491158B2 (ja) | 自動車の照明装置 | |
JP3858483B2 (ja) | 車両のスライドドア装置 | |
JP6104219B2 (ja) | 車両 | |
JP4058944B2 (ja) | 側部車体構造 | |
JP3417627B2 (ja) | オープンカーのドアロック装置 | |
JP4120901B2 (ja) | 車両用ドア機構 | |
JP2020117142A (ja) | 車両の駐車装置 | |
JPS6040338Y2 (ja) | キヤブオ−バ−型自動車のシ−ト構造 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20051222 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Effective date: 20051222 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 |
|
A762 | Written abandonment of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A762 Effective date: 20070709 |