JP2004290491A - 吸入式投薬器 - Google Patents
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Abstract
【課題】空気の吸入開始後に手動操作によって通気路に大流量の空気を一気に流入させることにより、薬粉収容室内の薬粉を拡散して肺内に確実に投与する。
【解決手段】投薬器本体1のキャップ8側には、常時は空気取入れ口8Dを弁部17Aにより閉塞し、吸入口5から空気の吸入を開始した後に開弁ボタン17Cを手動操作して空気取入れ口8Dを開口する吸入開始弁16を設ける。従って、吸入開始弁16は、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口8Dから流入し、凝集したままの薬粉が吸入口5、口腔内等に落下するのを防止することができる。そして、吸入開始弁16は、各通路12,13等が負圧状態になったときに手動操作で開弁させることにより、このときの負圧を利用して空気取入れ口8Dから一気に大流量の空気を流入させ、薬粉を十分に拡散、微粒化して患者に投与することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】投薬器本体1のキャップ8側には、常時は空気取入れ口8Dを弁部17Aにより閉塞し、吸入口5から空気の吸入を開始した後に開弁ボタン17Cを手動操作して空気取入れ口8Dを開口する吸入開始弁16を設ける。従って、吸入開始弁16は、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口8Dから流入し、凝集したままの薬粉が吸入口5、口腔内等に落下するのを防止することができる。そして、吸入開始弁16は、各通路12,13等が負圧状態になったときに手動操作で開弁させることにより、このときの負圧を利用して空気取入れ口8Dから一気に大流量の空気を流入させ、薬粉を十分に拡散、微粒化して患者に投与することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、患者の息の吸込みによって粉体状の薬品(薬粉)を肺内に投与するのに用いて好適な吸入式投薬器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、喘息患者等の肺に薬品を投与する方法としては、専用の投薬器を用い、薬粉収容室に充填された粉体状の薬品(以下、薬粉という)を吸入する方法が知られている。
【0003】
また、吸入式投薬器は、軸方向の一側が空気取入れ口となると共に他側が空気と一緒に薬粉を吸入する吸入口となり、途中に薬粉収容室が設けられた投薬器本体と、該投薬器本体の空気取入れ口と吸入口との間を連通し、薬粉収容室内の薬粉を吸入口に供給する通気路とにより大略構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特表平8−509626号公報
【特許文献2】
特開平11−89935号公報
【0005】
そして、従来技術による吸入式投薬器により薬粉を吸入する場合には、薬粉収容室に薬粉を充填し、吸入口を口にくわえる。この状態で息を吸込むことにより、空気取入れ口から通気路に空気を取入れ、該通気路を流通する空気流によって薬粉収容室内の薬粉を吸入口内に放出し、該吸入口から肺内に吸入する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による吸入式投薬器では、吸入口をくわえて空気を吸入すると、吸入開始直後は空気取入れ口から吸込まれる空気の流量は少なく、徐々に流量が増大し安定する傾向にある。従って、吸入開始直後には、流量が少なく勢いの弱い空気流が通気路に流通する可能性がある。
【0007】
これにより、薬粉収容室内の薬粉は、勢いの弱い空気流により十分に拡散しない状態で吸入口側に流出させるから、凝集したままの薬粉が吸入口、口腔内等に落下して付着してしまう。この結果、従来技術による吸入式投薬器は、薬粉収容室内に充填された規定量の薬粉を肺内に投与することができなくなるという虞がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、空気の吸入開始後に手動操作によって通気路に大流量の空気を一気に流入させることにより、薬粉収容室内の薬粉を拡散して肺内に確実に投与できるようにした吸入式投薬器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、投薬器本体には、常時は空気取入れ口を閉塞し、空気の吸入を開始した後に手動操作により空気取入れ口を開口する吸入開始弁を設ける構成としている。
【0010】
このように構成したことにより、吸入口をくわえて空気を吸入すると、常時は吸入開始弁が空気取入れ口を閉塞しているから、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口から通気路に流入するのを防止でき、凝集したままの薬粉が吸入口側に流出するのを阻止することができる。
【0011】
そして、空気の吸入を開始して所定時間経過した後に、吸入開始弁を手動操作により開口させる。このときには空気取入れ口から通気路に大流量の空気を一気に流入させることができるから、薬粉収容室内の薬粉を十分に拡散することができる。これにより、微粒化した薬粉を吸入口側に供給することができ、薬粉収容室に充填された薬粉を例えば患者の肺等に効率よく投与することができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、吸入開始弁は、吸入口から空気の吸入を開始して通気路が負圧状態となった後に操作する構成としている。これにより、通気路が負圧状態となった状態で吸入開始弁を開口させると、この負圧を利用して大流量の空気を一気に薬粉収容室に流入させることができ、薬粉を十分に拡散し、効率よく投与することができる。
【0013】
さらに、請求項3の発明は、吸入開始弁は、空気取入れ口を開閉する弁部と投薬器本体の外部に配置され該弁部を開弁方向に操作する開弁ボタンとからなる弁部材と、該弁部材を閉弁方向に付勢するばね部材とによって構成している。
【0014】
このように構成したことにより、常時はばね部材によって弁部材を付勢し、該弁部材の弁部により空気取入れ口を閉塞することができる。また、外部に配置された開弁ボタンを指先で押動操作することにより、ばね部材に抗して弁部を開弁させることができる。これにより、指先の簡単な操作により空気取入れ口を開口させることができ、子供から高齢者まで容易に取扱うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る吸入式投薬器について図1ないし図7に従って詳細に説明する。
【0016】
図1において、1は吸入式投薬器の基部をなす投薬器本体で、該投薬器本体1は、後述するボディ2、吸入口5、カプセルホルダ6、カプセル収容室9等により大略構成されている。
【0017】
2は投薬器本体1の一側に位置して該投薬器本体1の外形をなすボディで、該ボディ2は、略円筒状に形成された筒状体2Aと、該筒状体2Aの外周から図1中の上向きに突設され、後述する穴あけ具15の支持部15Aを可動に支持する長円筒状の穴あけ具ガイド2Bとから構成されている。また、筒状体2A他側には、後述の吸入口5が螺着されている。さらに、筒状体2Aの内周側には後述のホルダ収容部3が形成されている。
【0018】
3はボディ2の筒状体2A内周側に形成されたホルダ収容部で、該ホルダ収容部3は、後述するカプセルホルダ6のカプセル保持部7を出入れ可能に収容するものである。また、ホルダ収容部3は、図2に示す如く、筒状体2Aの下側寄りに位置し、該筒状体2Aの軸方向に伸長した略T字状の貫通穴として形成されている。
【0019】
4はホルダ収容部3内の上面側に形成されたカプセル嵌合溝で、該カプセル嵌合溝4は、後述するカプセル保持部7のカプセル嵌合凹部7Bと共にカプセル収容室9を形成している。また、カプセル嵌合溝4は、カプセルKを上側から保持するもので、該カプセルKの外径寸法に応じた断面半円弧状の溝として形成されている。
【0020】
5は筒状体2Aの他側に着脱可能に取付けられた吸入口で、該吸入口5は略円筒状に形成され、その外周面は患者がくわえ易いように他側に向けて漸次縮径している。さらに、吸入口5内にはメッシュ部材5Aが設けられ、該メッシュ部材5Aは薬粉を微粒化し、かつカプセルKの破片を捕捉するもので、細い線材を編み込むことにより形成されている。
【0021】
6はボディ2に対して着脱可能に設けられたカプセルホルダで、該カプセルホルダ6は、前述したボディ2、吸入口5と共に投薬器本体1を構成している。また、カプセルホルダ6は、後述のカプセル保持部7とキャップ8とから大略構成されている。
【0022】
7はカプセルホルダ6の本体をなし、ホルダ収容部3に出入れ可能に設けられたカプセル保持部を示している。具体的に、カプセル保持部7は、図3、図4に示す如く、ホルダ収容部3内の上側位置で軸方向に延びて形成された引出し部7Aと、該引出し部7Aの上面側に軸方向に長尺な断面半円弧状の凹溝として形成さたカプセル嵌合凹部7Bと、前記引出し部7Aから下側に突出したガイド部7Cと、前記引出し部7Aの一端部を取囲む円環状に形成された環状部7Dと、該環状部7Dの外周面側に刻設されたねじ部7Eと、前記環状部7Dを引出し部7Aに連結するために放射状に形成された複数本、例えば4本の脚部7Fと、該各脚部7F間にそれぞれ形成された通気路の一部をなす開口7Gと、前記各脚部7Fの中央部分を一側に向け切欠いて形成された凹陥部7Hとにより大略構成されている。
【0023】
8はカプセル保持部7の環状部7D等を覆うように該カプセル保持部7に取付けられたキャップで、該キャップ8は、筒部8Aと蓋部8Bとから有蓋筒状に形成され、筒部8Aの内周側には、カプセル保持部7のねじ部7Eに螺着するねじ部8Cが形成されている。また、蓋部8Bの中央には例えば円形状の空気取入れ口8Dが設けられ、該空気取入れ口8Dは、外部の空気を取入れ、この空気をカプセル保持部7の各開口7G、流入側通路12に向け供給するものである。
【0024】
9はカプセル保持部7をホルダ収容部3内に押込んだときに、カプセル嵌合溝4とカプセル嵌合凹部7Bと間に形成される薬粉収容室としてのカプセル収容室(図1、図7中に図示)で、該カプセル収容室9は、カプセルKを収容して保持するものである。
【0025】
このように形成されたカプセルホルダ6は、キャップ8外周側を把持してカプセル保持部7を引出すことにより、該カプセル保持部7を引出し位置に配置することができる。そして、この引出し位置では、引出し部7Aに形成されたカプセル嵌合凹部7Bに薬粉が充填されたカプセルKを嵌合させたり、カプセル嵌合凹部7Bから使用済みのカプセルKを取出したりすることができる。
【0026】
また、カプセル嵌合凹部7BにカプセルKを嵌合させた状態で、引出し部7Aをホルダ収容部3内に押込むことにより、図7に示す如く、カプセル保持部7を押込み位置に配置し、カプセルKをカプセル収容室9で保持することができる。
【0027】
次に、図1において、10はカプセル収容室9の一側寄りに位置して設けられた流入側のピン挿入穴で、該ピン挿入穴10は、カプセル収容室9を径方向に貫通するようにボディ2に形成されたボディ側挿入穴10Aと、カプセルホルダ6に形成されたホルダ側挿入穴10Bとにより構成されている。
【0028】
また、11はカプセル収容室9の他側寄りに位置して設けられた流出側のピン挿入穴で、該ピン挿入穴11は、流入側のピン挿入穴10と平行にカプセル収容室9を貫通したボディ側挿入穴11Aとホルダ側挿入穴11Bとにより構成されている。
【0029】
12はカプセル収容室9(カプセルK)に空気を流入する流入側通路で、該流入側通路12は、流入側のピン挿入穴10に連通したボディ側通路12Aと、該ボディ側通路12Aとは別にホルダ収容部3とカプセル保持部7との間に設けられたホルダ側通路12Bとにより構成されている。そして、流入側通路12は、カプセル保持部7の各開口7G、キャップ8の空気取入れ口8Dを介して大気側に連通可能となっている。
【0030】
13はカプセル収容室9(カプセルK)から薬粉を含んだ空気を吸入口5側に流出する流出側通路で、該流出側通路13は、流出側のピン挿入穴11に連通したボディ側通路13Aと、該ボディ側通路13Aとは別にホルダ収容部3とカプセル保持部7との間に設けられたホルダ側通路13Bとにより構成されている。
【0031】
そして、前述したピン挿入穴10と流入側通路12とにより流入側の通気路を構成し、ピン挿入穴11と流出側通路13とにより流出側の通気路を構成している。このように、ピン挿入穴10,11、流入側通路12、流出側通路13およびカプセル保持部7の各開口7Gにより、空気取入れ口8Dと吸入口5との間を連通している。
【0032】
一方、14は各通路12,13と90度ずらした位置でボディ2の筒状体2Aを軸方向に貫通するように穿設された2本の補助通気路(図2中に図示)で、該各補助通気路14は、息を吸込むときに流通する空気の流量を増やすことで、このときの息苦しさを解消している。
【0033】
さらに、15はボディ2に設けられた穴あけ具で、該穴あけ具15は、カプセル収容室9に収容されたカプセルKに穴あけを施すものである。また、穴あけ具15は、図1に示す如く、ボディ2の穴あけ具ガイド2B内に可動に支持された支持部15Aと、該支持部15Aからピン挿入穴10,11に向けて延びたピン15B,15Bと、前記支持部15Aと筒状体2Aとの間に設けられた戻しばね15Cとにより大略構成されている。
【0034】
そして、戻しばね15Cは、各ピン15BがカプセルKから離間する方向に支持部15Aを付勢し、カプセルKの穴あけ後に支持部15A、各ピン15Bを初期位置まで戻すものである。また、各ピン15Bの先端部は傾斜面によって鋭利な針先形状をなしている。
【0035】
このように穴あけ具15は、支持部15Aを戻しばね15Cに抗して穴あけ具ガイド2B内に押込み、ピン15B,15Bをピン挿入穴10,11に挿入することにより、図7に示す如く、各ピン15Bの先端をカプセル収容室9内のカプセルKに突き刺し、該カプセルKに径方向に貫通する4個の穴Hをあけるものである。
【0036】
次に、16は投薬器本体1を構成するカプセルホルダ6のキャップ8側に設けられた吸入開始弁で、該吸入開始弁16は、常時は空気取入れ口8Dを閉塞し、空気の吸入を開始した後に手動操作により空気取入れ口8Dを開口するものである。そして、吸入開始弁16は、後述の弁部材17、コイルばね18により構成されている。
【0037】
17はカプセルホルダ6のキャップ8を貫通して設けられた弁部材で、該弁部材17は、例えば可撓性を有する樹脂材料、ゴム材料等を用いて一体形成されている。また、弁部材17は、図3、図6に示す如く、カプセル保持部7の凹陥部7Hとキャップ8の蓋部8Bとの間に設けられ、空気取入れ口8Dを開閉する円板状の弁部17Aと、該弁部17Aの中央部から空気取入れ口8Dを通って外部に延びた軸部17Bと、蓋部8Bの外側に位置して該軸部17Bの先端側に設けられ、指先等により押動操作される円板状の開弁ボタン17Cと、該開弁ボタン17Cの外周側に位置して蓋部8B側に突出した複数個、例えば4個の突起17Dとにより構成されている。
【0038】
ここで、開弁ボタン17Cは、指先でキャップ8側に押動操作することにより、後述するコイルばね18の付勢力に抗して弁部17Aを開弁し、空気取入れ口8Dを開口するものである。
【0039】
また、各突起17Dは、キャップ8の空気取入れ口8Dよりも径方向の外側に配置されている。これにより、各突起17Dは、開弁ボタン17Cを押動したときにキャップ8の蓋部8Bに当接し、該蓋部8Bと開弁ボタン17Cとの間に空気が流通する隙間を確保することができる。
【0040】
18はカプセル保持部7の凹陥部7H底面と弁部材17の弁部17Aとの間に配設されたばね部材としてのコイルばねで、該コイルばね18は、弁部17Aを閉弁方向、即ちキャップ8の蓋部8Bに押付けるように付勢するものである。また、コイルばね18の付勢力は、吸入口5から息を吸込んだ場合でも弁部17Aが開弁せず、開弁ボタン17Cを指先で押動したときに弁部17Aの開弁を許すように設定されている。
【0041】
そして、吸入開始弁16は、図1、図3に示す如く、常時はコイルばね18の付勢力により弁部材17の弁部17Aをキャップ8の蓋部8Bに押付け、空気取入れ口8Dを閉塞している。一方、開弁ボタン17Cを指先で押動したときには、図6、図7に示す如く、コイルばね18に抗して弁部17Aを開弁させ、各開口7Gとキャップ8の空気取入れ口8Dとを連通し、外気の吸込みを許すものである。
【0042】
また、開弁ボタン17Cは、吸入口5をくわえて空気の吸入を開始し、通気路を構成するピン挿入穴10,11、流入側通路12、流出側通路13等が負圧状態となった後に押動操作することにより、この負圧を利用して大流量の空気を一気に流入させるものである。
【0043】
本実施の形態による吸入式投薬器は上述の如き構成を有するもので、次に、患者が薬粉を吸入するときの動作について説明する。
【0044】
まず、キャップ8を把持してカプセルホルダ6をホルダ収容部3から引出し、カプセル保持部7のカプセル嵌合凹部7BにカプセルKを嵌合させる。この状態で、カプセル保持部7をホルダ収容部3内に押込み、カプセル収容室9にカプセルKをセットする。次に、穴あけ具15の支持部15Aを穴あけ具ガイド2Bに沿って押込むことにより、各ピン15BによりカプセルKに4個の穴Hを形成する。
【0045】
このようにカプセル収容室9内のカプセルKに各穴Hをあけたら、患者は吸入口5の他側を口にくわえ、この状態で息を吸込む。このときには、吸入開始弁16を構成する弁部材17の弁部17Aがキャップ8の空気取入れ口8Dを閉塞しているから、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口8Dから流入するのを防止している。
【0046】
そして、空気の吸入を開始して所定時間経過し、通気路を構成するピン挿入穴10,11、流入側通路12、流出側通路13等が負圧状態になったら、図7に示すように吸入開始弁16の開弁ボタン17Cを手動操作により押動し、空気取入れ口8Dを開口させる。
【0047】
このときには、負圧の作用により空気取入れ口8Dから大流量の空気が一気に流入してカプセルK内に供給されるから、該カプセルK内の薬粉は十分に拡散した状態で吸入口5側に流出する。これにより、カプセルKに充填された薬粉を微粒化することができ、この薬粉を吸入口5、口腔内等に落下させることなく、患者の肺等に効率よく投与することができる。
【0048】
かくして、本実施の形態によれば、投薬器本体1のキャップ8側には、通常は空気取入れ口8Dを弁部17Aにより閉塞し、吸入口5から空気の吸入を開始した後に開弁ボタン17Cを手動操作して空気取入れ口8Dを開口する吸入開始弁16を設ける構成としている。
【0049】
従って、吸入開始弁16は、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口8Dから流入し、凝集したままの薬粉が吸入口5、口腔内等に落下するのを防止することができる。そして、吸入開始弁16は、各通路12,13等が負圧状態になったときに手動操作で開弁させることにより、このときの負圧を利用して空気取入れ口8Dから一気に大流量の空気を流入させ、薬粉を十分に拡散、微粒化することができる。この結果、カプセルK内に充填された薬粉の規定量を肺内に効率よく投与することができるから、薬粉の効能を高めることができ、吸入式投薬器に対する信頼性を向上することができる。
【0050】
また、吸入開始弁16は、コイルばね18に抗して弁部材17の開弁ボタン17Cを指先で押動し、弁部17Aを開弁させるという簡単な操作により空気取入れ口8Dを開口させることができるから、子供から高齢者まで容易に操作することができる。
【0051】
さらに、弁部17A、開弁ボタン17C等を一体形成して弁部材17を構成しているから、該弁部材17の構成を簡略化でき、カプセルホルダ6への組付け作業も容易に行なうことができる。
【0052】
なお、実施の形態では、ボディ2からカプセルホルダ6を出し入れしてカプセルKを着脱する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、特開平9−253210号公報のように、カプセル収容室に対しカプセルを直接的に出し入れする構成としてもよい。
【0053】
また、実施の形態では、吸入口5内に薬粉を拡散するメッシュ部材5Aを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、メッシュ部材5Aを廃止してもよい。また、特開平11−221280号公報、特開2000−202028号公報のように、カプセル収容室と吸入口との間に薬粉拡散室を設ける構成としてもよい。
【0054】
また、実施の形態では、カプセル収容室9内に薬粉が充填されたカプセルKを収容する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、投薬器本体に薬粉収容室を設け、該薬粉収容室に薬粉を直接的に充填し、この薬粉を吸入する構成としてもよい。
【0055】
一方、実施の形態では、吸入開始弁16は、弁部17A、開弁ボタン17C等を一体形成して弁部材17を構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば弁部と開弁ボタンとを別々に設け、接着、ねじ止め等の手段を用いて固着する構成としてもよい。
【0056】
また、実施の形態では、ばね部材としてコイルばね18を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば皿ばね、ゴムばね等の他のばね部材を用いてもよい。また、ゴムばねを用いる場合には、このゴムばねを弁部材17と一体に形成する構成としてもよい。
【0057】
さらに、上記実施の形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその構成及び効果を記載する。
【0058】
(イ)請求項3に記載の吸入式投薬器において、弁部材の開弁ボタンには、該開弁ボタンを開弁方向に操作したときに投薬器本体に当接して空気取入れ口との間に空気が流通する隙間を確保する突起を設けたことを特徴とする吸入式投薬器。
【0059】
上記構成によると、開弁ボタンを開弁方向に操作したときには、突起が投薬器本体に当接して隙間を確保するから、この隙間を介して空気取入れ口から確実に空気を取入れることが出きる。
【0060】
(ロ)請求項3に記載の吸入式投薬器において、弁部材は、可撓性を有する樹脂材料またはゴム材料により弁部と開弁ボタンとを一体形成する構成としたことを特徴とする吸入式投薬器。
【0061】
上記構成によると、弁部材の構成を簡略化でき、投薬器本体への組付け作業も容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る吸入式投薬器を示す縦断面図である。
【図2】カプセルホルダを取外した投薬器本体の右側面図である。
【図3】カプセルホルダと吸入開始弁とを拡大して示す拡大縦断面図である。
【図4】カプセルホルダを図3中の矢示IV−IV方向から示す横断面図である。
【図5】吸入開始弁の弁部材を示す外観斜視図である。
【図6】カプセルホルダと押動操作した吸入開始弁とを示す拡大縦断面図である。
【図7】吸入開始弁を開弁させて吸入口から薬粉を吸入している状態の吸入式投薬器を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 投薬器本体
2 ボディ
5 吸入口
6 カプセルホルダ
7 カプセル保持部
7A 引出し部
7G 開口(通気路)
7H 凹陥部
8 キャップ
8A 筒部
8B 蓋部
8D 空気取入れ口
9 カプセル収容室(薬粉収容室)
10,11 ピン挿入穴(通気路)
12 流入側通路(通気路)
13 流出側通路(通気路)
16 吸入開始弁
17 弁部材
17A 弁部
17B 軸部
17C 開弁ボタン
17D 突起
18 コイルばね(ばね部材)
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、患者の息の吸込みによって粉体状の薬品(薬粉)を肺内に投与するのに用いて好適な吸入式投薬器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、喘息患者等の肺に薬品を投与する方法としては、専用の投薬器を用い、薬粉収容室に充填された粉体状の薬品(以下、薬粉という)を吸入する方法が知られている。
【0003】
また、吸入式投薬器は、軸方向の一側が空気取入れ口となると共に他側が空気と一緒に薬粉を吸入する吸入口となり、途中に薬粉収容室が設けられた投薬器本体と、該投薬器本体の空気取入れ口と吸入口との間を連通し、薬粉収容室内の薬粉を吸入口に供給する通気路とにより大略構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特表平8−509626号公報
【特許文献2】
特開平11−89935号公報
【0005】
そして、従来技術による吸入式投薬器により薬粉を吸入する場合には、薬粉収容室に薬粉を充填し、吸入口を口にくわえる。この状態で息を吸込むことにより、空気取入れ口から通気路に空気を取入れ、該通気路を流通する空気流によって薬粉収容室内の薬粉を吸入口内に放出し、該吸入口から肺内に吸入する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による吸入式投薬器では、吸入口をくわえて空気を吸入すると、吸入開始直後は空気取入れ口から吸込まれる空気の流量は少なく、徐々に流量が増大し安定する傾向にある。従って、吸入開始直後には、流量が少なく勢いの弱い空気流が通気路に流通する可能性がある。
【0007】
これにより、薬粉収容室内の薬粉は、勢いの弱い空気流により十分に拡散しない状態で吸入口側に流出させるから、凝集したままの薬粉が吸入口、口腔内等に落下して付着してしまう。この結果、従来技術による吸入式投薬器は、薬粉収容室内に充填された規定量の薬粉を肺内に投与することができなくなるという虞がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、空気の吸入開始後に手動操作によって通気路に大流量の空気を一気に流入させることにより、薬粉収容室内の薬粉を拡散して肺内に確実に投与できるようにした吸入式投薬器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、投薬器本体には、常時は空気取入れ口を閉塞し、空気の吸入を開始した後に手動操作により空気取入れ口を開口する吸入開始弁を設ける構成としている。
【0010】
このように構成したことにより、吸入口をくわえて空気を吸入すると、常時は吸入開始弁が空気取入れ口を閉塞しているから、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口から通気路に流入するのを防止でき、凝集したままの薬粉が吸入口側に流出するのを阻止することができる。
【0011】
そして、空気の吸入を開始して所定時間経過した後に、吸入開始弁を手動操作により開口させる。このときには空気取入れ口から通気路に大流量の空気を一気に流入させることができるから、薬粉収容室内の薬粉を十分に拡散することができる。これにより、微粒化した薬粉を吸入口側に供給することができ、薬粉収容室に充填された薬粉を例えば患者の肺等に効率よく投与することができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、吸入開始弁は、吸入口から空気の吸入を開始して通気路が負圧状態となった後に操作する構成としている。これにより、通気路が負圧状態となった状態で吸入開始弁を開口させると、この負圧を利用して大流量の空気を一気に薬粉収容室に流入させることができ、薬粉を十分に拡散し、効率よく投与することができる。
【0013】
さらに、請求項3の発明は、吸入開始弁は、空気取入れ口を開閉する弁部と投薬器本体の外部に配置され該弁部を開弁方向に操作する開弁ボタンとからなる弁部材と、該弁部材を閉弁方向に付勢するばね部材とによって構成している。
【0014】
このように構成したことにより、常時はばね部材によって弁部材を付勢し、該弁部材の弁部により空気取入れ口を閉塞することができる。また、外部に配置された開弁ボタンを指先で押動操作することにより、ばね部材に抗して弁部を開弁させることができる。これにより、指先の簡単な操作により空気取入れ口を開口させることができ、子供から高齢者まで容易に取扱うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る吸入式投薬器について図1ないし図7に従って詳細に説明する。
【0016】
図1において、1は吸入式投薬器の基部をなす投薬器本体で、該投薬器本体1は、後述するボディ2、吸入口5、カプセルホルダ6、カプセル収容室9等により大略構成されている。
【0017】
2は投薬器本体1の一側に位置して該投薬器本体1の外形をなすボディで、該ボディ2は、略円筒状に形成された筒状体2Aと、該筒状体2Aの外周から図1中の上向きに突設され、後述する穴あけ具15の支持部15Aを可動に支持する長円筒状の穴あけ具ガイド2Bとから構成されている。また、筒状体2A他側には、後述の吸入口5が螺着されている。さらに、筒状体2Aの内周側には後述のホルダ収容部3が形成されている。
【0018】
3はボディ2の筒状体2A内周側に形成されたホルダ収容部で、該ホルダ収容部3は、後述するカプセルホルダ6のカプセル保持部7を出入れ可能に収容するものである。また、ホルダ収容部3は、図2に示す如く、筒状体2Aの下側寄りに位置し、該筒状体2Aの軸方向に伸長した略T字状の貫通穴として形成されている。
【0019】
4はホルダ収容部3内の上面側に形成されたカプセル嵌合溝で、該カプセル嵌合溝4は、後述するカプセル保持部7のカプセル嵌合凹部7Bと共にカプセル収容室9を形成している。また、カプセル嵌合溝4は、カプセルKを上側から保持するもので、該カプセルKの外径寸法に応じた断面半円弧状の溝として形成されている。
【0020】
5は筒状体2Aの他側に着脱可能に取付けられた吸入口で、該吸入口5は略円筒状に形成され、その外周面は患者がくわえ易いように他側に向けて漸次縮径している。さらに、吸入口5内にはメッシュ部材5Aが設けられ、該メッシュ部材5Aは薬粉を微粒化し、かつカプセルKの破片を捕捉するもので、細い線材を編み込むことにより形成されている。
【0021】
6はボディ2に対して着脱可能に設けられたカプセルホルダで、該カプセルホルダ6は、前述したボディ2、吸入口5と共に投薬器本体1を構成している。また、カプセルホルダ6は、後述のカプセル保持部7とキャップ8とから大略構成されている。
【0022】
7はカプセルホルダ6の本体をなし、ホルダ収容部3に出入れ可能に設けられたカプセル保持部を示している。具体的に、カプセル保持部7は、図3、図4に示す如く、ホルダ収容部3内の上側位置で軸方向に延びて形成された引出し部7Aと、該引出し部7Aの上面側に軸方向に長尺な断面半円弧状の凹溝として形成さたカプセル嵌合凹部7Bと、前記引出し部7Aから下側に突出したガイド部7Cと、前記引出し部7Aの一端部を取囲む円環状に形成された環状部7Dと、該環状部7Dの外周面側に刻設されたねじ部7Eと、前記環状部7Dを引出し部7Aに連結するために放射状に形成された複数本、例えば4本の脚部7Fと、該各脚部7F間にそれぞれ形成された通気路の一部をなす開口7Gと、前記各脚部7Fの中央部分を一側に向け切欠いて形成された凹陥部7Hとにより大略構成されている。
【0023】
8はカプセル保持部7の環状部7D等を覆うように該カプセル保持部7に取付けられたキャップで、該キャップ8は、筒部8Aと蓋部8Bとから有蓋筒状に形成され、筒部8Aの内周側には、カプセル保持部7のねじ部7Eに螺着するねじ部8Cが形成されている。また、蓋部8Bの中央には例えば円形状の空気取入れ口8Dが設けられ、該空気取入れ口8Dは、外部の空気を取入れ、この空気をカプセル保持部7の各開口7G、流入側通路12に向け供給するものである。
【0024】
9はカプセル保持部7をホルダ収容部3内に押込んだときに、カプセル嵌合溝4とカプセル嵌合凹部7Bと間に形成される薬粉収容室としてのカプセル収容室(図1、図7中に図示)で、該カプセル収容室9は、カプセルKを収容して保持するものである。
【0025】
このように形成されたカプセルホルダ6は、キャップ8外周側を把持してカプセル保持部7を引出すことにより、該カプセル保持部7を引出し位置に配置することができる。そして、この引出し位置では、引出し部7Aに形成されたカプセル嵌合凹部7Bに薬粉が充填されたカプセルKを嵌合させたり、カプセル嵌合凹部7Bから使用済みのカプセルKを取出したりすることができる。
【0026】
また、カプセル嵌合凹部7BにカプセルKを嵌合させた状態で、引出し部7Aをホルダ収容部3内に押込むことにより、図7に示す如く、カプセル保持部7を押込み位置に配置し、カプセルKをカプセル収容室9で保持することができる。
【0027】
次に、図1において、10はカプセル収容室9の一側寄りに位置して設けられた流入側のピン挿入穴で、該ピン挿入穴10は、カプセル収容室9を径方向に貫通するようにボディ2に形成されたボディ側挿入穴10Aと、カプセルホルダ6に形成されたホルダ側挿入穴10Bとにより構成されている。
【0028】
また、11はカプセル収容室9の他側寄りに位置して設けられた流出側のピン挿入穴で、該ピン挿入穴11は、流入側のピン挿入穴10と平行にカプセル収容室9を貫通したボディ側挿入穴11Aとホルダ側挿入穴11Bとにより構成されている。
【0029】
12はカプセル収容室9(カプセルK)に空気を流入する流入側通路で、該流入側通路12は、流入側のピン挿入穴10に連通したボディ側通路12Aと、該ボディ側通路12Aとは別にホルダ収容部3とカプセル保持部7との間に設けられたホルダ側通路12Bとにより構成されている。そして、流入側通路12は、カプセル保持部7の各開口7G、キャップ8の空気取入れ口8Dを介して大気側に連通可能となっている。
【0030】
13はカプセル収容室9(カプセルK)から薬粉を含んだ空気を吸入口5側に流出する流出側通路で、該流出側通路13は、流出側のピン挿入穴11に連通したボディ側通路13Aと、該ボディ側通路13Aとは別にホルダ収容部3とカプセル保持部7との間に設けられたホルダ側通路13Bとにより構成されている。
【0031】
そして、前述したピン挿入穴10と流入側通路12とにより流入側の通気路を構成し、ピン挿入穴11と流出側通路13とにより流出側の通気路を構成している。このように、ピン挿入穴10,11、流入側通路12、流出側通路13およびカプセル保持部7の各開口7Gにより、空気取入れ口8Dと吸入口5との間を連通している。
【0032】
一方、14は各通路12,13と90度ずらした位置でボディ2の筒状体2Aを軸方向に貫通するように穿設された2本の補助通気路(図2中に図示)で、該各補助通気路14は、息を吸込むときに流通する空気の流量を増やすことで、このときの息苦しさを解消している。
【0033】
さらに、15はボディ2に設けられた穴あけ具で、該穴あけ具15は、カプセル収容室9に収容されたカプセルKに穴あけを施すものである。また、穴あけ具15は、図1に示す如く、ボディ2の穴あけ具ガイド2B内に可動に支持された支持部15Aと、該支持部15Aからピン挿入穴10,11に向けて延びたピン15B,15Bと、前記支持部15Aと筒状体2Aとの間に設けられた戻しばね15Cとにより大略構成されている。
【0034】
そして、戻しばね15Cは、各ピン15BがカプセルKから離間する方向に支持部15Aを付勢し、カプセルKの穴あけ後に支持部15A、各ピン15Bを初期位置まで戻すものである。また、各ピン15Bの先端部は傾斜面によって鋭利な針先形状をなしている。
【0035】
このように穴あけ具15は、支持部15Aを戻しばね15Cに抗して穴あけ具ガイド2B内に押込み、ピン15B,15Bをピン挿入穴10,11に挿入することにより、図7に示す如く、各ピン15Bの先端をカプセル収容室9内のカプセルKに突き刺し、該カプセルKに径方向に貫通する4個の穴Hをあけるものである。
【0036】
次に、16は投薬器本体1を構成するカプセルホルダ6のキャップ8側に設けられた吸入開始弁で、該吸入開始弁16は、常時は空気取入れ口8Dを閉塞し、空気の吸入を開始した後に手動操作により空気取入れ口8Dを開口するものである。そして、吸入開始弁16は、後述の弁部材17、コイルばね18により構成されている。
【0037】
17はカプセルホルダ6のキャップ8を貫通して設けられた弁部材で、該弁部材17は、例えば可撓性を有する樹脂材料、ゴム材料等を用いて一体形成されている。また、弁部材17は、図3、図6に示す如く、カプセル保持部7の凹陥部7Hとキャップ8の蓋部8Bとの間に設けられ、空気取入れ口8Dを開閉する円板状の弁部17Aと、該弁部17Aの中央部から空気取入れ口8Dを通って外部に延びた軸部17Bと、蓋部8Bの外側に位置して該軸部17Bの先端側に設けられ、指先等により押動操作される円板状の開弁ボタン17Cと、該開弁ボタン17Cの外周側に位置して蓋部8B側に突出した複数個、例えば4個の突起17Dとにより構成されている。
【0038】
ここで、開弁ボタン17Cは、指先でキャップ8側に押動操作することにより、後述するコイルばね18の付勢力に抗して弁部17Aを開弁し、空気取入れ口8Dを開口するものである。
【0039】
また、各突起17Dは、キャップ8の空気取入れ口8Dよりも径方向の外側に配置されている。これにより、各突起17Dは、開弁ボタン17Cを押動したときにキャップ8の蓋部8Bに当接し、該蓋部8Bと開弁ボタン17Cとの間に空気が流通する隙間を確保することができる。
【0040】
18はカプセル保持部7の凹陥部7H底面と弁部材17の弁部17Aとの間に配設されたばね部材としてのコイルばねで、該コイルばね18は、弁部17Aを閉弁方向、即ちキャップ8の蓋部8Bに押付けるように付勢するものである。また、コイルばね18の付勢力は、吸入口5から息を吸込んだ場合でも弁部17Aが開弁せず、開弁ボタン17Cを指先で押動したときに弁部17Aの開弁を許すように設定されている。
【0041】
そして、吸入開始弁16は、図1、図3に示す如く、常時はコイルばね18の付勢力により弁部材17の弁部17Aをキャップ8の蓋部8Bに押付け、空気取入れ口8Dを閉塞している。一方、開弁ボタン17Cを指先で押動したときには、図6、図7に示す如く、コイルばね18に抗して弁部17Aを開弁させ、各開口7Gとキャップ8の空気取入れ口8Dとを連通し、外気の吸込みを許すものである。
【0042】
また、開弁ボタン17Cは、吸入口5をくわえて空気の吸入を開始し、通気路を構成するピン挿入穴10,11、流入側通路12、流出側通路13等が負圧状態となった後に押動操作することにより、この負圧を利用して大流量の空気を一気に流入させるものである。
【0043】
本実施の形態による吸入式投薬器は上述の如き構成を有するもので、次に、患者が薬粉を吸入するときの動作について説明する。
【0044】
まず、キャップ8を把持してカプセルホルダ6をホルダ収容部3から引出し、カプセル保持部7のカプセル嵌合凹部7BにカプセルKを嵌合させる。この状態で、カプセル保持部7をホルダ収容部3内に押込み、カプセル収容室9にカプセルKをセットする。次に、穴あけ具15の支持部15Aを穴あけ具ガイド2Bに沿って押込むことにより、各ピン15BによりカプセルKに4個の穴Hを形成する。
【0045】
このようにカプセル収容室9内のカプセルKに各穴Hをあけたら、患者は吸入口5の他側を口にくわえ、この状態で息を吸込む。このときには、吸入開始弁16を構成する弁部材17の弁部17Aがキャップ8の空気取入れ口8Dを閉塞しているから、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口8Dから流入するのを防止している。
【0046】
そして、空気の吸入を開始して所定時間経過し、通気路を構成するピン挿入穴10,11、流入側通路12、流出側通路13等が負圧状態になったら、図7に示すように吸入開始弁16の開弁ボタン17Cを手動操作により押動し、空気取入れ口8Dを開口させる。
【0047】
このときには、負圧の作用により空気取入れ口8Dから大流量の空気が一気に流入してカプセルK内に供給されるから、該カプセルK内の薬粉は十分に拡散した状態で吸入口5側に流出する。これにより、カプセルKに充填された薬粉を微粒化することができ、この薬粉を吸入口5、口腔内等に落下させることなく、患者の肺等に効率よく投与することができる。
【0048】
かくして、本実施の形態によれば、投薬器本体1のキャップ8側には、通常は空気取入れ口8Dを弁部17Aにより閉塞し、吸入口5から空気の吸入を開始した後に開弁ボタン17Cを手動操作して空気取入れ口8Dを開口する吸入開始弁16を設ける構成としている。
【0049】
従って、吸入開始弁16は、吸入開始直後の勢いの弱い空気流が空気取入れ口8Dから流入し、凝集したままの薬粉が吸入口5、口腔内等に落下するのを防止することができる。そして、吸入開始弁16は、各通路12,13等が負圧状態になったときに手動操作で開弁させることにより、このときの負圧を利用して空気取入れ口8Dから一気に大流量の空気を流入させ、薬粉を十分に拡散、微粒化することができる。この結果、カプセルK内に充填された薬粉の規定量を肺内に効率よく投与することができるから、薬粉の効能を高めることができ、吸入式投薬器に対する信頼性を向上することができる。
【0050】
また、吸入開始弁16は、コイルばね18に抗して弁部材17の開弁ボタン17Cを指先で押動し、弁部17Aを開弁させるという簡単な操作により空気取入れ口8Dを開口させることができるから、子供から高齢者まで容易に操作することができる。
【0051】
さらに、弁部17A、開弁ボタン17C等を一体形成して弁部材17を構成しているから、該弁部材17の構成を簡略化でき、カプセルホルダ6への組付け作業も容易に行なうことができる。
【0052】
なお、実施の形態では、ボディ2からカプセルホルダ6を出し入れしてカプセルKを着脱する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、特開平9−253210号公報のように、カプセル収容室に対しカプセルを直接的に出し入れする構成としてもよい。
【0053】
また、実施の形態では、吸入口5内に薬粉を拡散するメッシュ部材5Aを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、メッシュ部材5Aを廃止してもよい。また、特開平11−221280号公報、特開2000−202028号公報のように、カプセル収容室と吸入口との間に薬粉拡散室を設ける構成としてもよい。
【0054】
また、実施の形態では、カプセル収容室9内に薬粉が充填されたカプセルKを収容する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、投薬器本体に薬粉収容室を設け、該薬粉収容室に薬粉を直接的に充填し、この薬粉を吸入する構成としてもよい。
【0055】
一方、実施の形態では、吸入開始弁16は、弁部17A、開弁ボタン17C等を一体形成して弁部材17を構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば弁部と開弁ボタンとを別々に設け、接着、ねじ止め等の手段を用いて固着する構成としてもよい。
【0056】
また、実施の形態では、ばね部材としてコイルばね18を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば皿ばね、ゴムばね等の他のばね部材を用いてもよい。また、ゴムばねを用いる場合には、このゴムばねを弁部材17と一体に形成する構成としてもよい。
【0057】
さらに、上記実施の形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその構成及び効果を記載する。
【0058】
(イ)請求項3に記載の吸入式投薬器において、弁部材の開弁ボタンには、該開弁ボタンを開弁方向に操作したときに投薬器本体に当接して空気取入れ口との間に空気が流通する隙間を確保する突起を設けたことを特徴とする吸入式投薬器。
【0059】
上記構成によると、開弁ボタンを開弁方向に操作したときには、突起が投薬器本体に当接して隙間を確保するから、この隙間を介して空気取入れ口から確実に空気を取入れることが出きる。
【0060】
(ロ)請求項3に記載の吸入式投薬器において、弁部材は、可撓性を有する樹脂材料またはゴム材料により弁部と開弁ボタンとを一体形成する構成としたことを特徴とする吸入式投薬器。
【0061】
上記構成によると、弁部材の構成を簡略化でき、投薬器本体への組付け作業も容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る吸入式投薬器を示す縦断面図である。
【図2】カプセルホルダを取外した投薬器本体の右側面図である。
【図3】カプセルホルダと吸入開始弁とを拡大して示す拡大縦断面図である。
【図4】カプセルホルダを図3中の矢示IV−IV方向から示す横断面図である。
【図5】吸入開始弁の弁部材を示す外観斜視図である。
【図6】カプセルホルダと押動操作した吸入開始弁とを示す拡大縦断面図である。
【図7】吸入開始弁を開弁させて吸入口から薬粉を吸入している状態の吸入式投薬器を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 投薬器本体
2 ボディ
5 吸入口
6 カプセルホルダ
7 カプセル保持部
7A 引出し部
7G 開口(通気路)
7H 凹陥部
8 キャップ
8A 筒部
8B 蓋部
8D 空気取入れ口
9 カプセル収容室(薬粉収容室)
10,11 ピン挿入穴(通気路)
12 流入側通路(通気路)
13 流出側通路(通気路)
16 吸入開始弁
17 弁部材
17A 弁部
17B 軸部
17C 開弁ボタン
17D 突起
18 コイルばね(ばね部材)
Claims (3)
- 軸方向の一側が空気取入れ口となると共に他側が空気と一緒に薬粉を吸入する吸入口となり、途中に薬粉収容室が設けられた投薬器本体と、該投薬器本体の空気取入れ口と吸入口との間を連通し薬粉収容室内の薬粉を吸入口に供給する通気路とからなる吸入式投薬器において、
前記投薬器本体には、常時は空気取入れ口を閉塞し、空気の吸入を開始した後に手動操作により空気取入れ口を開口する吸入開始弁を設ける構成としたことを特徴とする吸入式投薬器。 - 前記吸入開始弁は、前記吸入口から空気の吸入を開始して前記通気路が負圧状態となった後に操作する構成としてなる請求項1に記載の吸入式投薬器。
- 前記吸入開始弁は、前記空気取入れ口を開閉する弁部と前記投薬器本体の外部に配置され該弁部を開弁方向に操作する開弁ボタンとからなる弁部材と、該弁部材を閉弁方向に付勢するばね部材とによって構成してなる請求項1または2に記載の吸入式投薬器。
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Cited By (3)
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JP2014502522A (ja) * | 2010-12-17 | 2014-02-03 | ▲陳▼▲慶▼堂 | 粉末薬物用のマウスピースおよび応用例 |
US9179691B2 (en) | 2007-12-14 | 2015-11-10 | Aerodesigns, Inc. | Delivering aerosolizable food products |
JP2017047130A (ja) * | 2015-09-04 | 2017-03-09 | 原田車両設計株式会社 | 薬剤吸入装置 |
-
2003
- 2003-03-27 JP JP2003088552A patent/JP2004290491A/ja active Pending
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A711 | Notification of change in applicant |
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