JP2004285163A - 新規剥離防止剤及び改質アスファルト - Google Patents
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Abstract
【課題】アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用を発揮することができる剥離防止剤、及び、アスファルトと骨材との付着性が改善された改質アスファルトを提供する。
【解決手段】酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなる剥離防止剤、及び、該剥離防止剤0.01〜10重量部とアスファルト系物質100重量部とを含んでなる改質アスファルト。
【選択図】 なし
【解決手段】酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなる剥離防止剤、及び、該剥離防止剤0.01〜10重量部とアスファルト系物質100重量部とを含んでなる改質アスファルト。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剥離防止剤及び改質アスファルトに関する。より詳しくは、アスファルトと骨材との剥離を防止する材料である剥離防止剤、及び、アスファルトと骨材との付着性が改善されたアスファルト組成物である改質アスファルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
アスファルトは、ナフテン、芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、アスファルテン等の混合物であり、骨材等と混練してアスファルト混合物とされて主に道路舗装材等に用いられている。このようなアスファルト混合物によるアスファルト舗装等においては、アスファルトと骨材との剥離を防止する材料として剥離防止剤が用いられている。なお、アスファルト舗装道路が近年における交通量の増加、特に重量車両の増加により過酷な使用状況となっていることから、剥離防止剤は道路舗装材等に必要不可欠なものとなっている。
【0003】
従来の剥離防止剤としては、消石灰、アミン類、アミド類、第4級アンモニウム塩が挙げられるが、これらは、アスファルトと骨材との剥離を防止する作用効果が充分なものではない。また、酸価50〜300のトール油脂肪酸及び/又はトール油誘導体よりなる舗装用バインダー組成物のための剥離防止剤(例えば、特許文献1参照。)、架橋基を導入したアクリル酸エステル系乳化共重合体エマルジョンを主成分とするカラー舗装材料(例えば、特許文献2参照。)、カチオン系脱色乳剤と熱可塑性樹脂接着剤エマルジョンとをバインダーとした自然砂舗装(例えば、特許文献3参照。)、通水性アスファルト舗装表面に、骨材と樹脂を混合した塗工材を塗工する道路の表面処理方法(例えば、特許文献4参照。)、アスファルト乳剤及びアクリル・スチレン共重合体樹脂と、セメント及び骨材微粉末とを含み、表層として供用するための表面処理材(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。しかしながら、アスファルトと骨材との剥離を防止する剥離防止剤として用いることができるようにしたうえで、アスファルトと骨材との付着性を向上するという優れた作用効果を奏するようにし、近年におけるアスファルト舗装等において充分な性能が発揮されるようにする工夫の余地があった。
【0004】
またアスファルトに添加することにより動的安定度を高めるための改質材(例えば、特許文献6参照。)、エラストマー及び(メタ)アクリル系樹脂を必須成分とするアスファルト改質材(例えば、特許文献7参照。)が開示されている。これらは、アスファルトを改質して、例えば、その力学強度、すなわちタフネス(把握力)等を高めることによりアスファルト舗装路面の変形を防止する等の作用効果を奏するものである。しかしながら、剥離防止剤としての作用効果をより充分に発揮することができるようにする点で工夫の余地があり、道路舗装材等においてより優れた剥離防止剤及び改質アスファルトが求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−349816号公報(第1、2頁)
【特許文献2】
特開昭59−8747号公報(第1、2頁)
【特許文献3】
特開平7−224402号公報(第1、2頁)
【特許文献4】
特開2000−104210号公報(第1、2頁)
【特許文献5】
特開2000−119529号公報(第1、2頁)
【特許文献6】
特開2001−31873号公報(第1、2頁)
【特許文献7】
特開2002−114910号公報(第1、2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用を発揮することができる剥離防止剤、及び、アスファルトと骨材との付着性が改善された改質アスファルトを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アスファルトと骨材との剥離を防止する種々の剥離防止剤等を検討するうち、(メタ)アクリル系樹脂がアスファルトに相溶し、剥離防止剤として用いることができることに着目し、(メタ)アクリル系樹脂の酸価を10mgKOH/g以上とすると、アスファルト質量に対して少ない添加量で、例えば、0.1質量%前後の添加量、すなわちアスファルト系物質100重量部に対して0.1重量部でアスファルトと骨材との密着性を向上させることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。なお、従来の剥離防止剤としては、消石灰、アミン類等が用いられており、アスファルト質量に対する添加量は、消石灰の場合は10〜20質量%であり、アミン類の場合は0.3〜0.5質量%であるが、効果は充分なものではないことから、本発明の剥離防止剤は少ない添加量でもアスファルトと骨材との密着性を向上させることができるという点において有利な効果を有するものである。
このように、本発明の剥離防止剤を用いると、アスファルトと骨材との密着性を充分に向上しつつ、アスファルトへの樹脂の添加量を少なくすることができることから、樹脂の添加量が少ないことに起因して低温特性が向上し、低温におけるワレの発生が抑制されたアスファルト混合物を得ることが可能となる。また、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量を10万以下とすること、シクロへキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有するようにすること、星型重合体とすること等により、本発明の作用効果がより優れたものとなることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなる剥離防止剤である。
本発明はまた、上記剥離防止剤0.01〜10重量部、及び、アスファルト系物質100重量部を含んでなる改質アスファルトでもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の剥離防止剤は、アスファルトと骨材との剥離を防止することを目的として用いられるものであり、酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなる。
上記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体成分により形成される重合体によって構成される樹脂であり、剥離防止剤としての作用効果が向上することから、アスファルトに相溶するものであることが好ましい。アスファルトに相溶するとは、アスファルトと混合したときに析出しないことを意味し、例えば、アスファルト100重量部に対して、樹脂0.5重量部を混合したときにアスファルトから析出しないことが好ましい。
【0010】
上記(メタ)アクリル系樹脂における酸価は、10mgKOH/g以上であるが、10mgKOH/g未満であると、アスファルトの骨材密着性を向上させる効果が充分とはならない。また、上記酸価は、500mgKOH/g以下であることが好ましい。500mgKOH/gを超えると、アスファルトに対する溶解性が低下するおそれがある。より好ましくは、40mgKOH/g以上、400mgKOH/g以下であり、更に好ましくは、100mgKOH/g以上、350mgKOH/g以下である。また、酸価を上記範囲内とし、骨材密着性を向上させるために、カルボキシル基を有することが好ましい。
【0011】
上記(メタ)アクリル系樹脂の分子量としては、重量平均分子量が10万以下であることが好ましい。10万を超えると、アスファルトに溶解しにくくなるおそれがある。また、1000未満であると、骨材密着性を向上させる効果が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、5000以上、5万以下である。本明細書中、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー、GPC)によって、標準ポリスチレン換算として求められるものを意味する。
【0012】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体は、単量体の1種又は2種以上を含有する単量体成分を重合することにより得ることができる。単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜30の(メタ)アクリレート類;テトラエチレンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル等の不飽和カルボン酸やそのエステル;(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0013】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、シクロへキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有することが好ましい。これにより、剥離防止剤をアスファルトに相溶しやすいものとすることができる。また、アルキルエステル基の炭素数は、30以下であることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系単量体を必須とし、シクロヘキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有する単量体を含有する単量体成分を重合することにより(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体を得ることができる。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び/又はステアリル(メタ)アクリレートを含有する単量体成分を重合することにより、本発明における(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体を得ることが好ましい。
【0014】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体においては、それを形成する単量体成分を100重量%とすると、(メタ)アクリル系単量体の含有量を60重量%以上、好ましくは90重量%以上とすることが好ましく、中でも、シクロヘキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有する単量体成分を30重量%以上含むことがより好ましい。更に好ましくは、40重量%以上含むことであり、特に好ましくは、50重量%以上含むことが、最もアスファルトに溶解しやすくなるため好ましい。
【0015】
上記(メタ)アクリル系樹脂の立体構造としては特に限定されず、直鎖状、側鎖型、星型、グラフト体等のいずれの構造でもよい。これらの中でも、星型構造を有する星型重合体が、改質アスファルトの粘度が不必要に増加することがなく、作業性を良好に保ったまま物性を向上させることができるため好ましい。
【0016】
上記星型重合体の製造方法としては特に限定されず、例えば、3個以上のメルカプト基を有する多価メルカプタンの存在下に、メルカプト基を発端として、単量体成分のラジカル重合を行う方法等が挙げられる。
上記多価メルカプタンとしては、3〜6価のメルカプタンである、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来するものであることが好ましい。
【0017】
上記ラジカル重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の通常のラジカル重合方法により行うことができる。この場合、重合温度としては特に限定されず、例えば、30〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。また、ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスシクロヘキサンカーボニトリル等のアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル等の過酸化物系重合開始剤等の通常使用されるものを使用することができる。
【0018】
本発明の剥離防止剤の使用形態としては、固形;エマルジョン;オイル類との混合物;酢酸エチル溶液、トルエン溶液等の溶液が挙げられ、中でも、道路舗装材等のアスファルト混合物に用いる場合には、固形または、プロセスオイル等のオイル類との混合物が好適である。このような剥離防止剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必須成分である(メタ)アクリル系樹脂以外の成分を含んでいてもよいが、必須成分である(メタ)アクリル系樹脂の固形分が占める割合は、20重量%以上であることが好ましく、中でも50重量%以上であると剥離防止効果が大きくなるので好ましい。
【0019】
本発明の剥離防止剤は、アスファルト改質材と共に用いることが好ましい。アスファルト改質材とは、アスファルトの動的安定度等を向上するために用いるものであり、例えば、SBS、SBR、クロロプレンゴム等のエラストマー及び/又は(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。アスファルト改質材として(メタ)アクリル系樹脂を併用する場合、剥離防止剤とアスファルト改質材とにおける(メタ)アクリル系樹脂の酸価は、剥離防止剤を構成する(メタ)アクリル系樹脂の方が高くなるように設定することが好ましい。アスファルト改質材として併用される(メタ)アクリル系樹脂の酸価は、好ましくは10mgKOH/g未満であり、最も好ましくは0mgKOH/gである。これにより、剥離防止剤の作用効果が充分に発揮されると共に、アスファルト改質材を構成する(メタ)アクリル系樹脂の方がエラストマーに対する相溶性が高くなり、アスファルト改質材の作用効果も充分に発揮されることとなる。このような剥離防止剤とアスファルト改質材との質量割合としては、1/250〜50/1とすることが好ましい。より好ましくは、1/50〜10/1である。
【0020】
本発明の剥離防止剤においては、(メタ)アクリル系樹脂の酸価を10mgKOH/g以上に設定することにより、アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用効果を発揮することが可能となる。これにより、剥離防止剤及びアスファルト系物質を含む改質アスファルトに好適に用いることが可能となる。また、高度な耐久性が求められる各種の舗装、特に排水性舗装を形成する改質アスファルトに好適に用いることが可能となる。なお、改質アスファルトとは、アスファルトの付着性が改善されたアスファルト組成物を意味するものである。
【0021】
本発明はまた、上記剥離防止剤0.01〜10重量部、及び、アスファルト系物質100重量部を含む改質アスファルトでもある。
上記剥離防止剤の重量割合が、上記範囲未満であると、改質アスファルトの骨材密着性が低下し、上記範囲を超えると、アスファルトが硬くなりすぎて柔軟性に欠け、ヒビ割れ等の原因となるおそれがある。
上記剥離防止剤のアスファルト系物質への添加量としては、アスファルト系物質を100重量部に対して、0.02重量部以上、5重量部以下となることが好ましい。より好ましくは、0.05重量部以上、2重量部以下であり、本発明においては、0.1重量部前後とすることが可能である。このように、剥離防止剤のアスファルト系物質への添加量を少なくした形態は、本発明における好ましい実施形態の一つである。
上記アスファルト系物質としては、各種天然アスファルト及び各種石油アスファルト等が挙げられ、レイクアスファルト、ギルソナイト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト及び各種改質アスファルトからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
上記改質アスファルトの態様は固体でもよく、いわゆるアスファルト乳剤のような水分散体でもよく、いわゆるフォームドアスファルトのような発泡体でもよい。また、本発明の作用効果を奏する限り、上述の必須成分以外の成分を1種又は2種以上含んでもよい。このような必須成分以外の成分としては、プロセスオイル、石油樹脂、テルペン樹脂等が好適である。
【0023】
上記改質アスファルトにおける改質の指標としては、例えば、骨材密着性を用いることができる。骨材密着性は、例えば、石油学会規格、JPI−5S−27「アスファルト被膜のはく離試験方法」に準拠して剥離抵抗性試験を行うことにより、評価することができる。
【0024】
上記骨材密着性の指標の数値は目的とする舗装によって異なるが、特に排水性舗装に用いる場合には、骨材が飛散しにくくなるようにするため、剥離面積率を5%以下の範囲に設定することが可能であり、このように設定された改質アスファルトは、耐久性に優れた排水性舗装用として好適に用いることができる。このような改質の指標の好ましい数値範囲に設定された本発明の改質アスファルトは、本発明の好ましい実施形態である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0026】
実施例1
(メタ)アクリル系樹脂(1)の製造
[開始剤溶液(1)の調製]
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)6.00重量部、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABN−E)0.48重量部及び酢酸エチル20.00重量部を混合し、滴下ロートに仕込んで開始剤溶液(1)とした。
[ブースター(1)の調製]
PETG 6.00重量部、ABN−E 0.72重量部及び酢酸エチル20.00重量部を混合し、ブースター(1)とした。
【0027】
[重合]
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)108.00重量部、ステアリルアクリレート(STA)108.00重量部、アクリル酸(AA)24.00重量部、及び、酢酸エチル200.00重量部を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら90℃の湯浴で加熱した。内部の温度がほぼ一定になったところで、開始剤溶液(1)を滴下して重合を開始させた。重合開始30分後及び60分後にブ−スタ−(1)の2分の1ずつを滴下し、更に重合を進行させた。重合開始240分後に冷却し、重合を終了させ、重量平均分子量14400の(メタ)アクリル系樹脂▲1▼溶液を得た。
【0028】
[乾燥]
得られた(メタ)アクリル系樹脂▲1▼溶液を180℃の減圧乾燥機で完全に乾燥させ、冷却後に粉砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系樹脂▲1▼を得た。(メタ)アクリル系樹脂▲1▼の理論酸価を下記のごとく計算した。
[理論酸価の計算]
【0029】
改質アスファルト(1)の製造
容量500mLのガラス製釜に、コスモ石油社四日市製油所製のストレートアスファルト60−80を300重量部仕込み、窒素雰囲気下、180℃のオイルバスで加熱、攪拌しながら、(メタ)アクリル系樹脂▲1▼を0.3重量部添加して更に1時間混合し、改質アスファルト(1)を得た。
【0030】
改質アスファルトの物性評価
得られた改質アスファルト(1)について、下記のごとく、剥離面積率測定を行った。結果を表3に示す。
[剥離面積率の測定]
改質アスファルトの骨材密着性を評価するため、アスファルト被膜の骨材からの剥離面積率の測定を、石油学会規格、JPI−5S−27「アスファルト被膜のはく離試験方法」に準じて行った。ただし、この試験方法では目視で剥離面積率を判定するとされているが、評価の精度を高めるため、試験後の骨材の写真をコンピューターで読み込み、画像処理ソフトを用いて骨材全体及び剥離部分の面積をそれぞれ求めることによって算出した。また、骨材としては、最もアスファルトが剥離しやすいと言われている宝塚産石英斑岩を用いた。
【0031】
実施例2〜3
実施例1と同様にして、表1に示す配合割合で、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、ステアリルアクリレート(STA)、アクリル酸(AA)及び酢酸エチルを用いた重合並びに乾燥を行って、(メタ)アクリル系樹脂▲2▼、▲3▼を合成し、ストレートアスファルト60−80 300重量部に対して(メタ)アクリル系樹脂▲2▼又は▲3▼を0.3重量部添加混合して改質アスファルトを得た(実施例2:改質アスファルト(2)、実施例3:改質アスファルト(3))。得られた改質アスファルトについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0032】
比較例1
コスモ石油社四日市製油所製のストレートアスファルト60−80について、剥離面積率測定を行った。結果を表3に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
本発明の剥離防止剤は、上述のような構成よりなり、アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用を発揮することが可能であり、高度な耐久性が求められる各種の舗装を形成する改質アスファルトに好適に用いることができるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、剥離防止剤及び改質アスファルトに関する。より詳しくは、アスファルトと骨材との剥離を防止する材料である剥離防止剤、及び、アスファルトと骨材との付着性が改善されたアスファルト組成物である改質アスファルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
アスファルトは、ナフテン、芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、アスファルテン等の混合物であり、骨材等と混練してアスファルト混合物とされて主に道路舗装材等に用いられている。このようなアスファルト混合物によるアスファルト舗装等においては、アスファルトと骨材との剥離を防止する材料として剥離防止剤が用いられている。なお、アスファルト舗装道路が近年における交通量の増加、特に重量車両の増加により過酷な使用状況となっていることから、剥離防止剤は道路舗装材等に必要不可欠なものとなっている。
【0003】
従来の剥離防止剤としては、消石灰、アミン類、アミド類、第4級アンモニウム塩が挙げられるが、これらは、アスファルトと骨材との剥離を防止する作用効果が充分なものではない。また、酸価50〜300のトール油脂肪酸及び/又はトール油誘導体よりなる舗装用バインダー組成物のための剥離防止剤(例えば、特許文献1参照。)、架橋基を導入したアクリル酸エステル系乳化共重合体エマルジョンを主成分とするカラー舗装材料(例えば、特許文献2参照。)、カチオン系脱色乳剤と熱可塑性樹脂接着剤エマルジョンとをバインダーとした自然砂舗装(例えば、特許文献3参照。)、通水性アスファルト舗装表面に、骨材と樹脂を混合した塗工材を塗工する道路の表面処理方法(例えば、特許文献4参照。)、アスファルト乳剤及びアクリル・スチレン共重合体樹脂と、セメント及び骨材微粉末とを含み、表層として供用するための表面処理材(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。しかしながら、アスファルトと骨材との剥離を防止する剥離防止剤として用いることができるようにしたうえで、アスファルトと骨材との付着性を向上するという優れた作用効果を奏するようにし、近年におけるアスファルト舗装等において充分な性能が発揮されるようにする工夫の余地があった。
【0004】
またアスファルトに添加することにより動的安定度を高めるための改質材(例えば、特許文献6参照。)、エラストマー及び(メタ)アクリル系樹脂を必須成分とするアスファルト改質材(例えば、特許文献7参照。)が開示されている。これらは、アスファルトを改質して、例えば、その力学強度、すなわちタフネス(把握力)等を高めることによりアスファルト舗装路面の変形を防止する等の作用効果を奏するものである。しかしながら、剥離防止剤としての作用効果をより充分に発揮することができるようにする点で工夫の余地があり、道路舗装材等においてより優れた剥離防止剤及び改質アスファルトが求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−349816号公報(第1、2頁)
【特許文献2】
特開昭59−8747号公報(第1、2頁)
【特許文献3】
特開平7−224402号公報(第1、2頁)
【特許文献4】
特開2000−104210号公報(第1、2頁)
【特許文献5】
特開2000−119529号公報(第1、2頁)
【特許文献6】
特開2001−31873号公報(第1、2頁)
【特許文献7】
特開2002−114910号公報(第1、2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用を発揮することができる剥離防止剤、及び、アスファルトと骨材との付着性が改善された改質アスファルトを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アスファルトと骨材との剥離を防止する種々の剥離防止剤等を検討するうち、(メタ)アクリル系樹脂がアスファルトに相溶し、剥離防止剤として用いることができることに着目し、(メタ)アクリル系樹脂の酸価を10mgKOH/g以上とすると、アスファルト質量に対して少ない添加量で、例えば、0.1質量%前後の添加量、すなわちアスファルト系物質100重量部に対して0.1重量部でアスファルトと骨材との密着性を向上させることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。なお、従来の剥離防止剤としては、消石灰、アミン類等が用いられており、アスファルト質量に対する添加量は、消石灰の場合は10〜20質量%であり、アミン類の場合は0.3〜0.5質量%であるが、効果は充分なものではないことから、本発明の剥離防止剤は少ない添加量でもアスファルトと骨材との密着性を向上させることができるという点において有利な効果を有するものである。
このように、本発明の剥離防止剤を用いると、アスファルトと骨材との密着性を充分に向上しつつ、アスファルトへの樹脂の添加量を少なくすることができることから、樹脂の添加量が少ないことに起因して低温特性が向上し、低温におけるワレの発生が抑制されたアスファルト混合物を得ることが可能となる。また、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量を10万以下とすること、シクロへキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有するようにすること、星型重合体とすること等により、本発明の作用効果がより優れたものとなることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなる剥離防止剤である。
本発明はまた、上記剥離防止剤0.01〜10重量部、及び、アスファルト系物質100重量部を含んでなる改質アスファルトでもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の剥離防止剤は、アスファルトと骨材との剥離を防止することを目的として用いられるものであり、酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなる。
上記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を含有する単量体成分により形成される重合体によって構成される樹脂であり、剥離防止剤としての作用効果が向上することから、アスファルトに相溶するものであることが好ましい。アスファルトに相溶するとは、アスファルトと混合したときに析出しないことを意味し、例えば、アスファルト100重量部に対して、樹脂0.5重量部を混合したときにアスファルトから析出しないことが好ましい。
【0010】
上記(メタ)アクリル系樹脂における酸価は、10mgKOH/g以上であるが、10mgKOH/g未満であると、アスファルトの骨材密着性を向上させる効果が充分とはならない。また、上記酸価は、500mgKOH/g以下であることが好ましい。500mgKOH/gを超えると、アスファルトに対する溶解性が低下するおそれがある。より好ましくは、40mgKOH/g以上、400mgKOH/g以下であり、更に好ましくは、100mgKOH/g以上、350mgKOH/g以下である。また、酸価を上記範囲内とし、骨材密着性を向上させるために、カルボキシル基を有することが好ましい。
【0011】
上記(メタ)アクリル系樹脂の分子量としては、重量平均分子量が10万以下であることが好ましい。10万を超えると、アスファルトに溶解しにくくなるおそれがある。また、1000未満であると、骨材密着性を向上させる効果が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、5000以上、5万以下である。本明細書中、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー、GPC)によって、標準ポリスチレン換算として求められるものを意味する。
【0012】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体は、単量体の1種又は2種以上を含有する単量体成分を重合することにより得ることができる。単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜30の(メタ)アクリレート類;テトラエチレンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル等の不飽和カルボン酸やそのエステル;(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0013】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、シクロへキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有することが好ましい。これにより、剥離防止剤をアスファルトに相溶しやすいものとすることができる。また、アルキルエステル基の炭素数は、30以下であることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系単量体を必須とし、シクロヘキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有する単量体を含有する単量体成分を重合することにより(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体を得ることができる。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び/又はステアリル(メタ)アクリレートを含有する単量体成分を重合することにより、本発明における(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体を得ることが好ましい。
【0014】
上記(メタ)アクリル系樹脂を構成する重合体においては、それを形成する単量体成分を100重量%とすると、(メタ)アクリル系単量体の含有量を60重量%以上、好ましくは90重量%以上とすることが好ましく、中でも、シクロヘキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有する単量体成分を30重量%以上含むことがより好ましい。更に好ましくは、40重量%以上含むことであり、特に好ましくは、50重量%以上含むことが、最もアスファルトに溶解しやすくなるため好ましい。
【0015】
上記(メタ)アクリル系樹脂の立体構造としては特に限定されず、直鎖状、側鎖型、星型、グラフト体等のいずれの構造でもよい。これらの中でも、星型構造を有する星型重合体が、改質アスファルトの粘度が不必要に増加することがなく、作業性を良好に保ったまま物性を向上させることができるため好ましい。
【0016】
上記星型重合体の製造方法としては特に限定されず、例えば、3個以上のメルカプト基を有する多価メルカプタンの存在下に、メルカプト基を発端として、単量体成分のラジカル重合を行う方法等が挙げられる。
上記多価メルカプタンとしては、3〜6価のメルカプタンである、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来するものであることが好ましい。
【0017】
上記ラジカル重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の通常のラジカル重合方法により行うことができる。この場合、重合温度としては特に限定されず、例えば、30〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。また、ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスシクロヘキサンカーボニトリル等のアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル等の過酸化物系重合開始剤等の通常使用されるものを使用することができる。
【0018】
本発明の剥離防止剤の使用形態としては、固形;エマルジョン;オイル類との混合物;酢酸エチル溶液、トルエン溶液等の溶液が挙げられ、中でも、道路舗装材等のアスファルト混合物に用いる場合には、固形または、プロセスオイル等のオイル類との混合物が好適である。このような剥離防止剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必須成分である(メタ)アクリル系樹脂以外の成分を含んでいてもよいが、必須成分である(メタ)アクリル系樹脂の固形分が占める割合は、20重量%以上であることが好ましく、中でも50重量%以上であると剥離防止効果が大きくなるので好ましい。
【0019】
本発明の剥離防止剤は、アスファルト改質材と共に用いることが好ましい。アスファルト改質材とは、アスファルトの動的安定度等を向上するために用いるものであり、例えば、SBS、SBR、クロロプレンゴム等のエラストマー及び/又は(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。アスファルト改質材として(メタ)アクリル系樹脂を併用する場合、剥離防止剤とアスファルト改質材とにおける(メタ)アクリル系樹脂の酸価は、剥離防止剤を構成する(メタ)アクリル系樹脂の方が高くなるように設定することが好ましい。アスファルト改質材として併用される(メタ)アクリル系樹脂の酸価は、好ましくは10mgKOH/g未満であり、最も好ましくは0mgKOH/gである。これにより、剥離防止剤の作用効果が充分に発揮されると共に、アスファルト改質材を構成する(メタ)アクリル系樹脂の方がエラストマーに対する相溶性が高くなり、アスファルト改質材の作用効果も充分に発揮されることとなる。このような剥離防止剤とアスファルト改質材との質量割合としては、1/250〜50/1とすることが好ましい。より好ましくは、1/50〜10/1である。
【0020】
本発明の剥離防止剤においては、(メタ)アクリル系樹脂の酸価を10mgKOH/g以上に設定することにより、アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用効果を発揮することが可能となる。これにより、剥離防止剤及びアスファルト系物質を含む改質アスファルトに好適に用いることが可能となる。また、高度な耐久性が求められる各種の舗装、特に排水性舗装を形成する改質アスファルトに好適に用いることが可能となる。なお、改質アスファルトとは、アスファルトの付着性が改善されたアスファルト組成物を意味するものである。
【0021】
本発明はまた、上記剥離防止剤0.01〜10重量部、及び、アスファルト系物質100重量部を含む改質アスファルトでもある。
上記剥離防止剤の重量割合が、上記範囲未満であると、改質アスファルトの骨材密着性が低下し、上記範囲を超えると、アスファルトが硬くなりすぎて柔軟性に欠け、ヒビ割れ等の原因となるおそれがある。
上記剥離防止剤のアスファルト系物質への添加量としては、アスファルト系物質を100重量部に対して、0.02重量部以上、5重量部以下となることが好ましい。より好ましくは、0.05重量部以上、2重量部以下であり、本発明においては、0.1重量部前後とすることが可能である。このように、剥離防止剤のアスファルト系物質への添加量を少なくした形態は、本発明における好ましい実施形態の一つである。
上記アスファルト系物質としては、各種天然アスファルト及び各種石油アスファルト等が挙げられ、レイクアスファルト、ギルソナイト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト及び各種改質アスファルトからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
上記改質アスファルトの態様は固体でもよく、いわゆるアスファルト乳剤のような水分散体でもよく、いわゆるフォームドアスファルトのような発泡体でもよい。また、本発明の作用効果を奏する限り、上述の必須成分以外の成分を1種又は2種以上含んでもよい。このような必須成分以外の成分としては、プロセスオイル、石油樹脂、テルペン樹脂等が好適である。
【0023】
上記改質アスファルトにおける改質の指標としては、例えば、骨材密着性を用いることができる。骨材密着性は、例えば、石油学会規格、JPI−5S−27「アスファルト被膜のはく離試験方法」に準拠して剥離抵抗性試験を行うことにより、評価することができる。
【0024】
上記骨材密着性の指標の数値は目的とする舗装によって異なるが、特に排水性舗装に用いる場合には、骨材が飛散しにくくなるようにするため、剥離面積率を5%以下の範囲に設定することが可能であり、このように設定された改質アスファルトは、耐久性に優れた排水性舗装用として好適に用いることができる。このような改質の指標の好ましい数値範囲に設定された本発明の改質アスファルトは、本発明の好ましい実施形態である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0026】
実施例1
(メタ)アクリル系樹脂(1)の製造
[開始剤溶液(1)の調製]
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)6.00重量部、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABN−E)0.48重量部及び酢酸エチル20.00重量部を混合し、滴下ロートに仕込んで開始剤溶液(1)とした。
[ブースター(1)の調製]
PETG 6.00重量部、ABN−E 0.72重量部及び酢酸エチル20.00重量部を混合し、ブースター(1)とした。
【0027】
[重合]
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)108.00重量部、ステアリルアクリレート(STA)108.00重量部、アクリル酸(AA)24.00重量部、及び、酢酸エチル200.00重量部を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら90℃の湯浴で加熱した。内部の温度がほぼ一定になったところで、開始剤溶液(1)を滴下して重合を開始させた。重合開始30分後及び60分後にブ−スタ−(1)の2分の1ずつを滴下し、更に重合を進行させた。重合開始240分後に冷却し、重合を終了させ、重量平均分子量14400の(メタ)アクリル系樹脂▲1▼溶液を得た。
【0028】
[乾燥]
得られた(メタ)アクリル系樹脂▲1▼溶液を180℃の減圧乾燥機で完全に乾燥させ、冷却後に粉砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系樹脂▲1▼を得た。(メタ)アクリル系樹脂▲1▼の理論酸価を下記のごとく計算した。
[理論酸価の計算]
【0029】
改質アスファルト(1)の製造
容量500mLのガラス製釜に、コスモ石油社四日市製油所製のストレートアスファルト60−80を300重量部仕込み、窒素雰囲気下、180℃のオイルバスで加熱、攪拌しながら、(メタ)アクリル系樹脂▲1▼を0.3重量部添加して更に1時間混合し、改質アスファルト(1)を得た。
【0030】
改質アスファルトの物性評価
得られた改質アスファルト(1)について、下記のごとく、剥離面積率測定を行った。結果を表3に示す。
[剥離面積率の測定]
改質アスファルトの骨材密着性を評価するため、アスファルト被膜の骨材からの剥離面積率の測定を、石油学会規格、JPI−5S−27「アスファルト被膜のはく離試験方法」に準じて行った。ただし、この試験方法では目視で剥離面積率を判定するとされているが、評価の精度を高めるため、試験後の骨材の写真をコンピューターで読み込み、画像処理ソフトを用いて骨材全体及び剥離部分の面積をそれぞれ求めることによって算出した。また、骨材としては、最もアスファルトが剥離しやすいと言われている宝塚産石英斑岩を用いた。
【0031】
実施例2〜3
実施例1と同様にして、表1に示す配合割合で、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、ステアリルアクリレート(STA)、アクリル酸(AA)及び酢酸エチルを用いた重合並びに乾燥を行って、(メタ)アクリル系樹脂▲2▼、▲3▼を合成し、ストレートアスファルト60−80 300重量部に対して(メタ)アクリル系樹脂▲2▼又は▲3▼を0.3重量部添加混合して改質アスファルトを得た(実施例2:改質アスファルト(2)、実施例3:改質アスファルト(3))。得られた改質アスファルトについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0032】
比較例1
コスモ石油社四日市製油所製のストレートアスファルト60−80について、剥離面積率測定を行った。結果を表3に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
本発明の剥離防止剤は、上述のような構成よりなり、アスファルトと骨材との剥離を防止して付着性を向上し、少ない添加量においても充分な作用を発揮することが可能であり、高度な耐久性が求められる各種の舗装を形成する改質アスファルトに好適に用いることができるものである。
Claims (4)
- 酸価が10mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系樹脂を必須としてなることを特徴とする剥離防止剤。
- 前記(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量が10万以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の剥離防止剤。 - 前記(メタ)アクリル系樹脂は、シクロへキシルエステル基及び/又は炭素数8以上のアルキルエステル基を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の新規剥離防止剤 - 請求項1〜3のいずれかに記載の剥離防止剤0.01〜10重量部、及び、アスファルト系物質100重量部を含んでなる
ことを特徴とする改質アスファルト。
Priority Applications (1)
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JP2003077682A JP2004285163A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | 新規剥離防止剤及び改質アスファルト |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2017119422A1 (ja) * | 2016-01-08 | 2018-09-20 | 富士フイルム株式会社 | 着色組成物、着色組成物の製造方法、カラーフィルタ、パターン形成方法、固体撮像素子、および、画像表示装置 |
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2003
- 2003-03-20 JP JP2003077682A patent/JP2004285163A/ja active Pending
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