JP2004285110A - 超高分子量ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】重合後の成型加工時の取り扱い性に優れ、かつ固有粘度が2.0以上の超高分子量ポリエステルを製造する方法を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸とグリコールを出発原料としてポリエステルを重合するに際し、まず、芳香族ジカルボン酸とグリコールを予備重合してポリエステルを得、当該予備重合ポリエステルを、ポリエステルに対して非溶解性の溶媒中で加熱処理し、その後に固相重合を行うことにより固有粘度が2.0以上の線状ポリエステルを得る超高分子量ポリエステルの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】芳香族ジカルボン酸とグリコールを出発原料としてポリエステルを重合するに際し、まず、芳香族ジカルボン酸とグリコールを予備重合してポリエステルを得、当該予備重合ポリエステルを、ポリエステルに対して非溶解性の溶媒中で加熱処理し、その後に固相重合を行うことにより固有粘度が2.0以上の線状ポリエステルを得る超高分子量ポリエステルの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超高分子量ポリエステルの製造方法に関する。より詳しくは、固有粘度が2.0以上で、しかも実質的に分岐鎖の無い(実質的に線状の)超高分子量ポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の高強度繊維として使用されている。代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとを主構成成分とするポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化もしくはエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて重縮合する重縮合法等により、工業的に製造されている。
【0003】
また、タイヤコード等の産業用資材においては、より高物性が必要であり、そのため、高分子量のポリエステルが用いられる。このような、より高い分子量のポリエステルは攪拌が困難になるため、通常溶融重縮合後のポリマーを更に不活性ガス気流中で、長時間固相重合するという方法が採用されている。しかしながら上記のような方法では、通常固有粘度が最高でも1.5程度のものしか得られない。
【0004】
一方、固有粘度が2.0を超える超高分子量ポリエステルの製造方法としては、例えば、ポリマーを微粉末に粉砕して固相重合する方法(例えば、非特許文献1参照)、或いは溶媒中で熱処理を行い重合する方法(非特許文献2参照)、溶媒でいったん溶解させた後、析出させた後固相重合を行う方法(特許文献1参照)などがある。しかしながら、ポリマーを微粉末に粉砕して固相重合する方法では分子量12万程度のポリエステルが得られると報告されているが、この場合、粘度測定溶媒に一部不溶であることが述べられており、明らかに架橋反応によって分子量が増大しているものと推定される。また、溶媒中で熱処理を行い重合する方法では、固有粘度は4.0程度まで上昇させられることが報告されている(非特許文献2参照)。しかしこの場合、ポリエステルは糸状に加工された後に処理されており、後の成型加工時に困難が生じる。また、溶媒でいったん溶解させた後、析出させた後固相重合を行う方法では溶媒に溶解させてしまうため析出させるポリマー形状のコントロールが困難でこの場合も成型加工時に取り扱いが困難であるなどの問題がある。
【0005】
【非特許文献1】
Cryogenic Properties of Polymers, 249, Dekker
【非特許文献2】
Polymer Vol. 36, No. 2, 1995
【特許文献1】
特開平3−152137号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような問題に鑑み、本発明は、重合後の成型加工時の取り扱い性に優れ、かつ固有粘度が2.0以上の超高分子量ポリエステルを製造する方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸とグリコールを出発原料としてポリエステルを重合するに際し、まず、芳香族ジカルボン酸とグリコールを予備重合してポリエステルを得、当該予備重合ポリエステルを、ポリエステルに対して非溶解性の溶媒中で加熱処理し、その後に固相重合を行うことにより固有粘度が2.0以上の線状ポリエステルを得ることを含んでなる超高分子量ポリエステルの製造方法により上記課題を解決する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルを構成する成分は、通常、芳香族ジカルボン酸としてのテレフタル酸またはそのアルキルエステルと、グリコールとしてのエチレングリコールとであるが、当該分野でよく知られているように、これら以外に下記の成分が少量(通常、芳香族ジカルボン酸成分またはグリコール成分の全量の50モル%未満)含まれていてもよい。
芳香族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルとしては、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などのベンゼン環もしくはナフタレン環に直接カルボキシル基を2つ有している芳香族ジカルボン酸、その他、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸、4,4’−ジカルボキシルジフェニール、4,4’−ジカルボキシルベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシルフェニール)エタンあるいはこれらのメチル、エチル、プロピルなどのアルキルエステルが挙げられ、アルキレングリコールとしては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール、その他、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0009】
本発明の初期のポリエステル、即ち固相重合に付されるポリエステル(「予備重合ポリエステル」ともいう)は常法により製造される。ただし、この初期状態でのポリエステルの固有粘度は、0.3以上1.2以下、好ましくは0.4以上1.1以下、さらに好ましくは0.5以上1.0以下である。初期のポリエステルの固有粘度が0.3未満であると、チップ状に成型できないため、超高分子量に固相重合した後のチップ形状を制御できず、重合後の成型加工性が劣ってしまう。これは本発明の意図に反する。常法で製造した場合、通常固有粘度は1.0程度であり、それ以上の固有粘度のポリエステルは熱分解による劣化、着色、分岐などが起こり、本発明に従った溶媒中での加熱工程を経た後もこれらは改善されることが無いため、好ましくない。
【0010】
また、初期のポリエステルは、溶媒中での加熱処理前に、200℃以上230℃以下、さらに好ましくは215℃以上225℃以下、例えば約220℃で結晶化処理に付すのが望ましい。上記範囲外の温度で結晶化処理を行う場合もしくは結晶化を行わない場合、溶媒処理時にポリエステル内の空隙率が低下してしまうため、次工程での固相重合時に水、グリコールの除去が円滑に行われなくなり重合速度が低下するおそれがある。
【0011】
結晶化処理時間は、初期のポリエステルチップの粒径にもよるが、通常1時間以上8時間以下、好ましくは2時間以上4時間以下である。1時間未満の場合、初期のポリエステルは実質的に結晶化されず、空隙率が低下してしまう。また、8時間を超えると該ポリエステルが劣化する可能性があり、また、結晶化処理の目的であるポリエステルチップの空隙に関しては8時間以下の場合と8時間を超えた場合で差が無く、8時間を超えて結晶化処理しても効果は変わらない。
該結晶化処理は、酸素、水分が除去されていれば、真空或いは窒素雰囲気中で行っても、或いは後の溶媒中での加熱処理工程で使用する溶媒中で行ってもよい。
【0012】
本発明において、ポリエステルを溶解させない溶媒とは、反応温度内で流体として扱うことができ、熱的に安定な有機化合物を意味し、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素および芳香族エーテルより選ばれた化合物などがあり、好ましくは溶解度パラメータが19以上21以下の溶媒である。溶解度パラメータが19未満ではポリエステルを膨潤させることが出来ず、ポリエステルチップに空孔が発生しないため、固相重合時に水、グリコールの除去が円滑に行われなくなり、重合速度が遅くなる。一方、溶解度パラメータが21を超えると、ポリエステルを溶解させやすくなり、溶媒処理時にチップ同士のブロッキング或いは溶媒処理後のポリエステル再沈による微粉末化が起こるため好ましくない。上記条件を満たす溶媒の具体例としては、トリエチルビフェニル、テトラエチルビフェニル、ジメチルビフェニル、トリメチルビフェニール、トリプロピルビフェニル、ジエチルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、水素化トリフェニル、水素化ビフェニル、水素化ターフェニルなどが挙げられる。なお、前記溶媒は公知の方法、蒸溜などにより精製して使用してもよい。
【0013】
本発明における溶媒中での加熱処理における温度は、230℃以上240℃以下が好ましい。230℃未満では、ポリエステルチップに空孔が発生しないため、固相重合時に水、グリコールの除去が円滑に行われなくなり、重合速度が遅くなる。一方、240℃を超える温度では、溶媒処理時にチップ同士のブロッキング或いは溶媒処理後のポリエステル再沈による微粉末化が起こるため本発明の目的が達成できない。
溶媒中での熱処理時間は4時間以上8時間以下が好ましい。熱処理時間が4時間未満の場合、溶媒による空隙の形成がポリエステルチップ内部まで進行せず、全体的な空隙率が低下してしまうため好ましくない。また、熱処理時間が8時間を越えると該ポリエステルの劣化による固有粘度の低下、或いは架橋反応の進行による分岐などがおこり好ましくない。
【0014】
本発明における固相重合は常法により行われる。通常ポリエステルの固相重合は、真空中、或いは窒素雰囲気中で行われるが、いずれの方法を用いても差し支えない。固相重合温度は、好ましくは180℃以上240℃以下、より好ましくは190℃以上230℃以下である。重合温度が180℃未満であると、反応速度が遅く生産性が非常に悪くなる。一方、240℃を超えると、ポリエステルチップ同士の融着が起こるだけでなく、溶媒中での加熱処理で形成されたチップの空隙が消滅してしまい、重合速度が低下してしまう。固相重合温度は、上記範囲内で任意に設定可能であるが、一般的な傾向として、低い温度で重合した場合には、反応速度が低下して期待する固有粘度まで上昇させる時間が長くなるが、最高到達固有粘度は高くなる。逆に重合温度を高くした場合には、反応速度が上昇するが、同時に劣化反応も進行するため、最高到達固有粘度は低くなる。実際の工程では反応温度は該固相重合温度範囲で期待する固有粘度、反応時間を勘案し、設定すれば良い。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳しく述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の各測定値は次に述べる方法で測定されたものである。
固有粘度( IV )
p−クロロフェノール/テトラクロルエタン(3/1(容量比)混合溶液を用い、30℃の温度で測定した固有粘度[η]を次式によりフェノール/テトラクロルエタン=3/2の固有粘度(IV)に換算したものである。
【数1】
IV=0.8325×[η]+0.005
溶解度パラメータ
“Properties of Polymers”(Elsevier, Amsterdam(1976))に記載のVan Klevinの方法にしたがって算出する。
【0016】
実施例1
攪拌装置、不活性ガス導入口、ガス排出口及び下部抜き出し口を備えた、内容積500mlの反応器に、テレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化により得られたオリゴマー(重合触媒として、酸成分に対し0.05モル%の三酸化アンチモン(アンチモンとして計算)を含み、固有粘度は1.0である。)100g、及び溶媒として、水素化トリフェニル(新日鐵化学株式会社製「サームエス900」)400mlを入れ、窒素ガスを0.5l/minで吹き込みながら、220℃まで加熱撹拌した。温度が220℃に達してから同温度を保持したまま2時間撹拌し、結晶化処理を行い、次いで温度が237℃になるまで撹拌しながら加熱した。温度が237℃に達してから更に4時間、237℃で撹拌した。排出口より、廃ガス及び溶媒の一部、副生エチレングリコールを排出し、この間液面を一定に保つよう、新たな溶媒を添加した。4時間後、ポリエチレンテレフタレートを取り出し、アセトンでよく洗浄した後、乾燥した。
【0017】
次いで、得られたポリエチレンテレフタレートを真空乾燥機を用いて減圧下、220℃で30時間固相重合を行なった。乾燥機内の真空度は133Pa以下に保った。
固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は2.7であった。
【0018】
実施例2〜5
表1に記載の条件を採用する以外は実施例1と同様な方法で処理を行なった。固相重合後のポリマーの固有粘度は表1に記す。いずれも固有粘度は2.0を超えていた。
【0019】
【表1】
【0020】
比較例1
固有粘度が0.2のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様な方法で処理を行なった。水素化トリフェニルを加えて220℃まで撹拌しながら加熱したところ、ポリエチレンテレフタレートは完全に溶解した。
【0021】
比較例2
溶媒をポリジメチルシリコーンとし、表2に記載の条件で処理を行なった。固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は1.7であった。
【0022】
比較例3
溶媒をビフェニルとし、表2に記載の条件で処理を行なった。ビフェニルを加えて220℃まで撹拌しながら加熱したところ、ポリエチレンテレフタレートは完全に溶解した。
【0023】
比較例4
220℃での予備結晶化を行わず、表2に記載の条件で実施例1と同様な方法で処理を行なった。固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は1.8であった。
【0024】
比較例5
熱媒中での処理温度を220℃とし、表2に記載の条件で実施例1と同様な方法で処理を行なった。固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は1.5であった。
【表2】
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、重合後の成型加工時の取り扱い性に優れかつ固有粘度が2.0以上である超高分子量ポリエステルを容易に製造することが可能になり、物性改善が必要な繊維、フィルム、成型品などに、超高分子量ポリエステルを容易に提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は超高分子量ポリエステルの製造方法に関する。より詳しくは、固有粘度が2.0以上で、しかも実質的に分岐鎖の無い(実質的に線状の)超高分子量ポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の高強度繊維として使用されている。代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとを主構成成分とするポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化もしくはエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて重縮合する重縮合法等により、工業的に製造されている。
【0003】
また、タイヤコード等の産業用資材においては、より高物性が必要であり、そのため、高分子量のポリエステルが用いられる。このような、より高い分子量のポリエステルは攪拌が困難になるため、通常溶融重縮合後のポリマーを更に不活性ガス気流中で、長時間固相重合するという方法が採用されている。しかしながら上記のような方法では、通常固有粘度が最高でも1.5程度のものしか得られない。
【0004】
一方、固有粘度が2.0を超える超高分子量ポリエステルの製造方法としては、例えば、ポリマーを微粉末に粉砕して固相重合する方法(例えば、非特許文献1参照)、或いは溶媒中で熱処理を行い重合する方法(非特許文献2参照)、溶媒でいったん溶解させた後、析出させた後固相重合を行う方法(特許文献1参照)などがある。しかしながら、ポリマーを微粉末に粉砕して固相重合する方法では分子量12万程度のポリエステルが得られると報告されているが、この場合、粘度測定溶媒に一部不溶であることが述べられており、明らかに架橋反応によって分子量が増大しているものと推定される。また、溶媒中で熱処理を行い重合する方法では、固有粘度は4.0程度まで上昇させられることが報告されている(非特許文献2参照)。しかしこの場合、ポリエステルは糸状に加工された後に処理されており、後の成型加工時に困難が生じる。また、溶媒でいったん溶解させた後、析出させた後固相重合を行う方法では溶媒に溶解させてしまうため析出させるポリマー形状のコントロールが困難でこの場合も成型加工時に取り扱いが困難であるなどの問題がある。
【0005】
【非特許文献1】
Cryogenic Properties of Polymers, 249, Dekker
【非特許文献2】
Polymer Vol. 36, No. 2, 1995
【特許文献1】
特開平3−152137号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような問題に鑑み、本発明は、重合後の成型加工時の取り扱い性に優れ、かつ固有粘度が2.0以上の超高分子量ポリエステルを製造する方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸とグリコールを出発原料としてポリエステルを重合するに際し、まず、芳香族ジカルボン酸とグリコールを予備重合してポリエステルを得、当該予備重合ポリエステルを、ポリエステルに対して非溶解性の溶媒中で加熱処理し、その後に固相重合を行うことにより固有粘度が2.0以上の線状ポリエステルを得ることを含んでなる超高分子量ポリエステルの製造方法により上記課題を解決する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルを構成する成分は、通常、芳香族ジカルボン酸としてのテレフタル酸またはそのアルキルエステルと、グリコールとしてのエチレングリコールとであるが、当該分野でよく知られているように、これら以外に下記の成分が少量(通常、芳香族ジカルボン酸成分またはグリコール成分の全量の50モル%未満)含まれていてもよい。
芳香族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルとしては、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などのベンゼン環もしくはナフタレン環に直接カルボキシル基を2つ有している芳香族ジカルボン酸、その他、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸、4,4’−ジカルボキシルジフェニール、4,4’−ジカルボキシルベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシルフェニール)エタンあるいはこれらのメチル、エチル、プロピルなどのアルキルエステルが挙げられ、アルキレングリコールとしては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール、その他、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0009】
本発明の初期のポリエステル、即ち固相重合に付されるポリエステル(「予備重合ポリエステル」ともいう)は常法により製造される。ただし、この初期状態でのポリエステルの固有粘度は、0.3以上1.2以下、好ましくは0.4以上1.1以下、さらに好ましくは0.5以上1.0以下である。初期のポリエステルの固有粘度が0.3未満であると、チップ状に成型できないため、超高分子量に固相重合した後のチップ形状を制御できず、重合後の成型加工性が劣ってしまう。これは本発明の意図に反する。常法で製造した場合、通常固有粘度は1.0程度であり、それ以上の固有粘度のポリエステルは熱分解による劣化、着色、分岐などが起こり、本発明に従った溶媒中での加熱工程を経た後もこれらは改善されることが無いため、好ましくない。
【0010】
また、初期のポリエステルは、溶媒中での加熱処理前に、200℃以上230℃以下、さらに好ましくは215℃以上225℃以下、例えば約220℃で結晶化処理に付すのが望ましい。上記範囲外の温度で結晶化処理を行う場合もしくは結晶化を行わない場合、溶媒処理時にポリエステル内の空隙率が低下してしまうため、次工程での固相重合時に水、グリコールの除去が円滑に行われなくなり重合速度が低下するおそれがある。
【0011】
結晶化処理時間は、初期のポリエステルチップの粒径にもよるが、通常1時間以上8時間以下、好ましくは2時間以上4時間以下である。1時間未満の場合、初期のポリエステルは実質的に結晶化されず、空隙率が低下してしまう。また、8時間を超えると該ポリエステルが劣化する可能性があり、また、結晶化処理の目的であるポリエステルチップの空隙に関しては8時間以下の場合と8時間を超えた場合で差が無く、8時間を超えて結晶化処理しても効果は変わらない。
該結晶化処理は、酸素、水分が除去されていれば、真空或いは窒素雰囲気中で行っても、或いは後の溶媒中での加熱処理工程で使用する溶媒中で行ってもよい。
【0012】
本発明において、ポリエステルを溶解させない溶媒とは、反応温度内で流体として扱うことができ、熱的に安定な有機化合物を意味し、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素および芳香族エーテルより選ばれた化合物などがあり、好ましくは溶解度パラメータが19以上21以下の溶媒である。溶解度パラメータが19未満ではポリエステルを膨潤させることが出来ず、ポリエステルチップに空孔が発生しないため、固相重合時に水、グリコールの除去が円滑に行われなくなり、重合速度が遅くなる。一方、溶解度パラメータが21を超えると、ポリエステルを溶解させやすくなり、溶媒処理時にチップ同士のブロッキング或いは溶媒処理後のポリエステル再沈による微粉末化が起こるため好ましくない。上記条件を満たす溶媒の具体例としては、トリエチルビフェニル、テトラエチルビフェニル、ジメチルビフェニル、トリメチルビフェニール、トリプロピルビフェニル、ジエチルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、水素化トリフェニル、水素化ビフェニル、水素化ターフェニルなどが挙げられる。なお、前記溶媒は公知の方法、蒸溜などにより精製して使用してもよい。
【0013】
本発明における溶媒中での加熱処理における温度は、230℃以上240℃以下が好ましい。230℃未満では、ポリエステルチップに空孔が発生しないため、固相重合時に水、グリコールの除去が円滑に行われなくなり、重合速度が遅くなる。一方、240℃を超える温度では、溶媒処理時にチップ同士のブロッキング或いは溶媒処理後のポリエステル再沈による微粉末化が起こるため本発明の目的が達成できない。
溶媒中での熱処理時間は4時間以上8時間以下が好ましい。熱処理時間が4時間未満の場合、溶媒による空隙の形成がポリエステルチップ内部まで進行せず、全体的な空隙率が低下してしまうため好ましくない。また、熱処理時間が8時間を越えると該ポリエステルの劣化による固有粘度の低下、或いは架橋反応の進行による分岐などがおこり好ましくない。
【0014】
本発明における固相重合は常法により行われる。通常ポリエステルの固相重合は、真空中、或いは窒素雰囲気中で行われるが、いずれの方法を用いても差し支えない。固相重合温度は、好ましくは180℃以上240℃以下、より好ましくは190℃以上230℃以下である。重合温度が180℃未満であると、反応速度が遅く生産性が非常に悪くなる。一方、240℃を超えると、ポリエステルチップ同士の融着が起こるだけでなく、溶媒中での加熱処理で形成されたチップの空隙が消滅してしまい、重合速度が低下してしまう。固相重合温度は、上記範囲内で任意に設定可能であるが、一般的な傾向として、低い温度で重合した場合には、反応速度が低下して期待する固有粘度まで上昇させる時間が長くなるが、最高到達固有粘度は高くなる。逆に重合温度を高くした場合には、反応速度が上昇するが、同時に劣化反応も進行するため、最高到達固有粘度は低くなる。実際の工程では反応温度は該固相重合温度範囲で期待する固有粘度、反応時間を勘案し、設定すれば良い。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳しく述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の各測定値は次に述べる方法で測定されたものである。
固有粘度( IV )
p−クロロフェノール/テトラクロルエタン(3/1(容量比)混合溶液を用い、30℃の温度で測定した固有粘度[η]を次式によりフェノール/テトラクロルエタン=3/2の固有粘度(IV)に換算したものである。
【数1】
IV=0.8325×[η]+0.005
溶解度パラメータ
“Properties of Polymers”(Elsevier, Amsterdam(1976))に記載のVan Klevinの方法にしたがって算出する。
【0016】
実施例1
攪拌装置、不活性ガス導入口、ガス排出口及び下部抜き出し口を備えた、内容積500mlの反応器に、テレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化により得られたオリゴマー(重合触媒として、酸成分に対し0.05モル%の三酸化アンチモン(アンチモンとして計算)を含み、固有粘度は1.0である。)100g、及び溶媒として、水素化トリフェニル(新日鐵化学株式会社製「サームエス900」)400mlを入れ、窒素ガスを0.5l/minで吹き込みながら、220℃まで加熱撹拌した。温度が220℃に達してから同温度を保持したまま2時間撹拌し、結晶化処理を行い、次いで温度が237℃になるまで撹拌しながら加熱した。温度が237℃に達してから更に4時間、237℃で撹拌した。排出口より、廃ガス及び溶媒の一部、副生エチレングリコールを排出し、この間液面を一定に保つよう、新たな溶媒を添加した。4時間後、ポリエチレンテレフタレートを取り出し、アセトンでよく洗浄した後、乾燥した。
【0017】
次いで、得られたポリエチレンテレフタレートを真空乾燥機を用いて減圧下、220℃で30時間固相重合を行なった。乾燥機内の真空度は133Pa以下に保った。
固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は2.7であった。
【0018】
実施例2〜5
表1に記載の条件を採用する以外は実施例1と同様な方法で処理を行なった。固相重合後のポリマーの固有粘度は表1に記す。いずれも固有粘度は2.0を超えていた。
【0019】
【表1】
【0020】
比較例1
固有粘度が0.2のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様な方法で処理を行なった。水素化トリフェニルを加えて220℃まで撹拌しながら加熱したところ、ポリエチレンテレフタレートは完全に溶解した。
【0021】
比較例2
溶媒をポリジメチルシリコーンとし、表2に記載の条件で処理を行なった。固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は1.7であった。
【0022】
比較例3
溶媒をビフェニルとし、表2に記載の条件で処理を行なった。ビフェニルを加えて220℃まで撹拌しながら加熱したところ、ポリエチレンテレフタレートは完全に溶解した。
【0023】
比較例4
220℃での予備結晶化を行わず、表2に記載の条件で実施例1と同様な方法で処理を行なった。固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は1.8であった。
【0024】
比較例5
熱媒中での処理温度を220℃とし、表2に記載の条件で実施例1と同様な方法で処理を行なった。固相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度は1.5であった。
【表2】
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、重合後の成型加工時の取り扱い性に優れかつ固有粘度が2.0以上である超高分子量ポリエステルを容易に製造することが可能になり、物性改善が必要な繊維、フィルム、成型品などに、超高分子量ポリエステルを容易に提供することができる。
Claims (8)
- 芳香族ジカルボン酸とグリコールを出発原料としてポリエステルを重合するに際し、まず、芳香族ジカルボン酸とグリコールを予備重合してポリエステルを得、当該予備重合ポリエステルを、ポリエステルに対して非溶解性の溶媒中で加熱処理し、その後に固相重合を行うことにより固有粘度が2.0以上の線状ポリエステルを得ることを含んでなる超高分子量ポリエステルの製造方法。
- 溶媒中での加熱処理の前に、予備重合ポリエステルの固有粘度が0.3以上1.2以下となった時点で結晶化処理を開始することを特徴とする請求項1に記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
- 結晶化処理の温度が200℃以上230℃以下であり、且つ結晶処理時間が1時間以上8時間以下であることを特徴とする請求項2に記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
- 該溶媒中での加熱処理を200℃以上230℃以下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
- ポリエステルに対する溶媒の溶解度パラメータが19以上21以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
- 加熱処理に用いる溶媒が水素化トリフェニルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
- 加熱処理を230℃以上240℃以下の温度で4時間以上8時間以下行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
- 固相重合を180℃以上240℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の超高分子量ポリエステルの製造方法。
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