JP2004285007A - 消臭成分を含む栄養組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】便性および便臭を改善した栄養組成物。
【解決手段】便性を改善できる成分としてオリゴ糖、乳酸菌を便臭を改善できる成分としてポリフェノール類、カテキン等が用いられる。全固体分中前者が1〜5重量%、後者が0.05〜1重量%用いられる。
その他の栄養組成物として、たん白質、脂肪、糖類、ビタミン類、ミネラル類等が用いられる。
食品素材に基づく臭気もなくなり、高齢者用流動食として好適である。
【選択図】 なし
【解決手段】便性を改善できる成分としてオリゴ糖、乳酸菌を便臭を改善できる成分としてポリフェノール類、カテキン等が用いられる。全固体分中前者が1〜5重量%、後者が0.05〜1重量%用いられる。
その他の栄養組成物として、たん白質、脂肪、糖類、ビタミン類、ミネラル類等が用いられる。
食品素材に基づく臭気もなくなり、高齢者用流動食として好適である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、便性および便臭の両者を改善し栄養組成物に関する。さらに、本発明は栄養組成物の配合素材に基づく特有の臭いを消臭した栄養組成物に関する。本発明の栄養組成物は、流動食として老人あるいは手術後の患者に投与することが望ましい。
【0002】
【従来の技術】
我国の人口は、2005年には60歳以上の老人が人口の30%を占めると予想され、日本はまさしく超高齢社会を迎えており、介護施設や在宅介護の充実が急がれている。また、要介護高齢者の発生率は加齢とともに急増し、特に寝たきり、痴呆および虚弱を併せた要介護高齢者の数は2025年で520万人に達すると見込まれている。また、家庭における介護の問題点についての調査結果によると、家庭介護者は心身両面での負担が大きく、とくに「食事や排泄、入浴などの世話の負担」が大きな問題点になっている。このような状況の中で、とくに要介護高齢者に対する食事、すなわち栄養管理は介護される者にとり、また介護者にとっても重要な関心事の一つとなっている。
【0003】
ところで、要介護高齢者はベッド上での生活が多いことから、腸管の動きや、年齢的にも代謝が益々緩慢となるため、腸内環境すなわち腸内細菌叢が悪化し、頑固な便秘や下痢、強い便臭などの排便問題が深刻になっている。
従来から、介護施設や在宅介護においては、排便障害などを伴った要介護高齢者においても栄養管理の一環として流動食もしくは経腸栄養剤などが投与されている。しかしながら、これら流動食などを投与しても便秘や下痢などの排便障害やこれに伴う強い便臭などを改善するには至っていないのが現状である。
【0004】
すなわち、要介護高齢者に用いられている流動食もしくは経腸栄養剤は、これまで、おおむね成人を対象として開発された製品が使用されており、たとえば消化管外科術後の患者のための消化管に負担をかけない組成物、あるいは消化管の機能障害を伴った患者のための消化吸収性に優れた組成物などが使用されている。これら疾患患者においては、従来の流動食もしくは経腸栄養剤は有用な栄養補給剤となってはいるものの、要介護高齢者にとって、先に示したように、便性や便臭の改善という点では最適な栄養補給剤とは言いがたい。したがって、特に要介護高齢者を対象とした流動食もしくは経腸栄養剤において、栄養状態を維持改善する作用、すなわち栄養管理が十分に行えることのみならず、排便障害や強い便臭をも改善する作用を有する栄養組成物の開発が望まれていた。
【0005】
さらに、組成上ω3系脂肪酸の比率を高くすることは栄養学的に重要な項目の一つであるが、その反面、ω3系脂肪酸の供給源となる魚油などを従来の食品に添加すると魚油臭等が問題となり、経口摂取する際に不快感や苦痛を伴うことがある。また、大豆蛋白質では強い大豆臭を伴うため、臭いと伴に、食品の持つおいしさを損なう原因となっている。
【0006】
その他、食品中に含有することによって臭い等の不快感を与える成分としては以下のものが列記できる。すなわち、白子のDNA及び酵母の酵母臭さ;昆布やカキエキスの磯臭さ;ニンジンやタマネギエキスの野菜臭さ;葉菜類やクロレラの青臭さ;グリセリン脂肪酸エステルやレシチンの乳化剤臭さ;胚芽や米由来の油の米ぬか臭さ等。
【0007】
ここに示したように、これらの臭みを除くことができれば、経口摂取する際に不快感などが除去でき、流動食もしくは経腸栄養剤、機能性食品を無理なく、かつおいしく経口摂取させることが期待できる。
【0008】
従来の技術として、ヒト便特有の悪臭を除去するために、完熟時の食用茸の乾燥粉末を主体に乳酸菌、オリゴ糖、ビタミンC、木炭末、マンナン、澱粉等を混合した便臭消去用健康食品は知られていた(特許文献1)。しかし、この食品は、摂取しようとする栄養組成物に混入してその組成物の悪臭を除去したりあるいはその組成物に基づく便性あるいは便臭を除去しようとするものではなかった。また、便臭を除去する成分として抹茶、茶殻粉末を用いているが、このような天然物自体を用いたものでは消臭除去効果を充分発揮することができなかった。
【0009】
特許文献1 (特開平9‐248154号)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような観点からなされたものであって、要介護高齢者や消化器外科手術患者などでみられる便秘や下痢などの排便傷害や便臭を改善することのできる栄養組成物を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、このような栄養組成物の配合素材に基づく特有の臭いを消臭した栄養組成物を提供することを課題とする。
【0011】
【発明が解決するための手段】
本発明は、上記のように、これら要介護高齢者に対して、排便障害や便臭の改善効果をもたらす栄養組成物を提供するものである。本発明において栄養組成物に含有させる有効成分としては便性改善作用を有し、かつ腸内環境の改善、すなわち腸内細菌叢の正常化を伴って便臭の発生を抑制する作用を有する成分、および便臭の主成分を除去する作用を有する成分を組み合わせることを特徴とし、両成分をともに配合させることで便性・便臭改善効果が極めて高い栄養組成物を得ることができた。
【0012】
すなわち、本発明は次のとおりの栄養組成物に関する。
(1) 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分、および便臭を除去する成分の両成分を含有する便性および便臭改善効果のある栄養組成物。
(2) 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分がオリゴ糖および/または乳酸菌である前記(1)記載の栄養組成物。
(3) 便臭を除去する作用を有する成分が、カテキン、フラボノイド、ルチン、ケルセチン、プロアントシアニジン、ポリフェノール類、銅クロロフィルナトリウムおよび天然物抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分である前記(1)または(2)に記載の栄養組成物。
(4) 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分を全栄養成分の固形分あたり1〜5重量%、便臭を除去する作用を有する成分を全栄養成分の固形分あたり0.05〜1重量%及びたん白質、脂肪、糖質、ビタミン類、ミネラルなどの栄養成分を配合してなる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の栄養組成物。
(5) 前記(3)記載の成分を配合することにより、栄養組成物中に配合した素材特有の臭いを除去し、経口摂取しやすくしてなる栄養組成物。
(6) 流動食である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の栄養組成物。
(7) 高齢者用流動食である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の栄養組成物。
(8) 経腸栄養剤である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の栄養組成物。
が用いられる。
【0013】
本発明において、便性および腸内環境を改善する作用を有する上記のオリゴ糖としては、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖などを例示することができ、乳酸菌としては、L.casei、L.bulgaricus、L.lactisなどを用いることが望ましい。
特に、栄養組成物においては望ましくはこれらの成分の合計量が固形分あたり1〜5重量%を含む組成物が例示できる。
【0014】
また、便臭成分を除去できる作用を有する成分としては、臭い成分を吸着除去もしくは分解除去する作用を有し、具体的には緑茶もしくはウーロン茶由来のカテキン、柿由来のフラボノイド、韃靼そば由来のルチン、たまねぎやココア由来のケルセチン、赤ワインやブドウ種子由来のプロアントシアニジン、大豆由来のイソフラボンなどのポリフェノール類、さらにはハーブオイル、蓬エキス、びわエキス、ほうれん草エキス、ヒバエキス、ヒノキエキス、きのこエキス、アロエエキス、ヒレハリソウエキスなどの天然物からの抽出物、さらには工業製品である銅クロロフィルナトリウムを用いることができ、これら成分から選択される一もしくは二以上の成分が用いられる。特に、栄養組成物においては望ましくは本成分の合計量が固形分あたり0.05〜1重量%を含む組成物が例示できる。
【0015】
さらに、要介護高齢者が健康な生活を送るためには、とりわけ栄養が大切な問題であり、先に示した便臭の発生を抑える成分および便臭を除去する成分の両成分のみを配合した組成物では十分な栄養成分を供給し得ない。従って、栄養組成物においては前記両成分に加え、たん白質、脂質、糖質、ビタミン類、ミネラル類をバランス良く加えた組成物として供給するものである。これら栄養成分のうち、たん白質については大豆たん白質を一定の比率で配合することで、便性の改善に有効であることがこれまで見出されていることから、栄養組成物について大豆たん白質を3〜15重量%程度の一定比率で配合することが望ましい。また、同様に、脂質についても、ω3系脂肪酸であるα−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが、下痢の予防に有効であることが見出されていることから、これら脂肪酸を含む油脂、すなわち、シソ油、エゴマ油、アマニ油、キリ油、魚油を一定比率で配合することが望ましい。
【0016】
さらに、従来、食品に魚油を添加すれば魚油臭が、大豆を添加すれば大豆臭がし、臭みが強くなればなるほど、不快感を与え、経口摂取しづらくなる。しかしながら、ここに消臭成分である緑茶もしくはウーロン茶由来のカテキン、柿由来のフラボノイド、韃靼そば由来のルチン、たまねぎやココア由来のケルセチン、赤ワインやブドウ種子由来のプロアントシアニジン、大豆由来のイソフラボンなどのポリフェノール類、さらにはハーブオイル、蓬エキス、びわエキス、ほうれん草エキス、ヒバエキス、ヒノキエキス、きのこエキス、アロエエキス、ヒレハリソウエキスなどの天然物からの抽出物、さらには工業製品である銅クロロフィルナトリウムを1もしくは2以上成分を食品に配合することでこれら食品素材特有の臭みが除去でき、無理なくおいしく経口摂取できることを見出した。
【0017】
本発明の栄養組成物は、前記組成の成分が混合され、均質になったものをいい、固形あるいは液体の形態で用いられる。その用途としては高齢者用液状流動食が望ましい。
その製造方法としては、いくつかの成分に分けてそれぞれの成分を水に溶解あるいは懸濁させ、それぞれの液状物を高圧で均質処理し、容器に充填し、滅菌することが一例として示される。本発明が用いる便性および腸内環境改善作用を有する成分及び便臭を除去する作用を有する成分以外の成分は、従来栄養組成物を調製するさいに使用されている公知の成分を従来知られている使用量で用いるとよい。
【0018】
【実施例】
次に、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、この実施例は本発明の一実施態様を単に例示するものであり、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
(液状流動食の製造1)
58Lの水に、300gの炭酸カリウムを溶解させ、70℃に加熱した。この液にカゼイン5.10kgを溶解させ、溶解後、糖質24.3kg、ガラクトシルラクトース1.38kg、及び表1に示す配合割合で配合したミネラルミックス883gを添加し溶解させた。この液をA液とした。
【0019】
一方、30Lの水に、茶カテキン300gを分散溶解させ、70℃に加熱した。この液に分離大豆タンパク2.10kgを添加分散させた。この液をB液とした。
【0020】
また、大豆油1.05kg、中鎖トリグリセリド1.03kg、エゴマ油270g、パーム油500g、グリセリン脂肪酸エステル110g、レシチン210gを混合し加熱溶解後、表2に示す配合割合で配合した脂溶性ビタミンミックス100gを添加し溶解させた。この液をC液とした。
【0021】
70〜75℃に保った状態にて、A液とB液を混合後攪拌し均一な液とし、これにC液を混合し、10分間攪拌を行った。さらに表3に示す配合割合で配合した水溶性ビタミンミックス132gを添加し、5分間攪拌した。
この調合液を1段目150kg/cm2、2段目及び3段目500kg/cm2の圧力で均質処理を行い、乳化液を得た。
この乳化液を水にて150Lにメスアップした後、200mlずつアルミパウチに充填密封し、F値12〜18の滅菌条件にてレトルト滅菌し、本発明の液状流動食を得た。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【試験例1】
(動物試験:ラットの盲腸内菌叢の改善効果と盲腸内容物の腐敗臭の低減効果)本試験で用いる栄養剤の組成を表4に示した。すなわち、便臭の発生を抑制する成分の一つであるガラクトシルラクトース、および便臭を除去する成分の一つである茶カテキンを共に含まない栄養剤を試験栄養剤A、両成分をともに含む栄養剤を本発明品B、本発明品Cとし、同様に両成分を共に多く含む栄養剤を試験栄養剤Dとした。動物は7週令SD系雄性ラットを使用し、先に示した、試験栄養剤および対照栄養剤を自由に摂取させ、2週間飼育した。
なお、試験栄養剤A及びDも本発明の実施1に準じて製造した。
【0026】
【表4】
【0027】
盲腸内細菌叢は飼育最終日に解剖し、盲腸より盲腸内容物を取り出し、直ちに内容物の重量の9倍の希釈液を加え10w/w %溶液を作製した。次いで、常法に従い、好気性菌は24時間、嫌気性菌は72時間を目安に各種寒天培地上で37℃培養し、嫌気性菌群、好気性菌群、Bifidobacterium、Lactobacillus、Clostridiumをそれぞれ分離し、集落形態、グラム染色、菌形態、芽胞の有無を観察して同定した後、菌数を測定した。
【0028】
アンモニア含量及び盲腸内腐敗代謝産物の測定は、盲腸内容物を取り出した後、内容物の重量の9倍の精製水を加えて10w/w %溶液を作成した。これを腐敗代謝産物用とアンモニア測定用として分注し、凍結保存して後日検査した。アンモニアの測定はアンモニアテストワコー(和光純薬)を用いて測定した。また、盲腸内腐敗代謝産物の測定は液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
【0029】
その結果、腸内総菌数では図1に示したように、本発明品BおよびCは試験栄養剤AおよびDに比べ、嫌気性および好気性ともに総菌数で増加していた。また、腸内細菌叢では図2に示したように、一般的に善玉菌とされるLactbacillusとBifidobacteriumはともに本発明品BおよびCは試験栄養剤AおよびDに比べ有意に増加していた。一方、一般的に悪玉菌とされているClostridiumでは本発明試品BおよびCが試験栄養剤AおよびDに比べ、有意に菌数の低下が認められた。以上の結果から、本発明品は腸内菌叢の改善、すなわち腸内環境の改善に有効であり、便臭の発生を抑制することが認められた。
【0030】
盲腸内容物の腐敗産物の含量を図3に示した。アンモニア、インドールおよびスカトールでは、本発明品BおよびCが試験栄養剤AおよびDに比べ、いずれの結果も著しく有意な低値を示した。以上の結果から、本発明品はこれら便臭成分の腸内含有量をいずれも抑え、便臭を除去することが認められた。
【0031】
便臭の指標となるアンモニアはアミノ酸などの脱アミノ化により、腐敗代謝産物のインドール、スカトールはトリプトファンが脱アミノ化、脱炭酸反応により生じる。これらの反応は特定の腸管内の細菌によって行われることが知られている。Clostridiumはインドール産生菌の一つに認められており、腸内細菌叢の改善によりこれらの菌が減少したことにより盲腸内容物中のインドールなどの便臭濃度が減少したと考えられる。また、実施例に示すようにガラクトシルラクトースおよび茶カテキンを共存させた本発明品は、適量の範囲内でれば腸内細菌叢の改善に伴ってアンモニアとインドール、スカトールなどの便臭成分の発生を抑制し、かつこれら便臭成分を除去することで効率良く、便臭を軽減する作用を発揮することが示された。
【0032】
【実施例2】
(液状流動食の製造2)
実施例1に準じて、表5に示す組成表にて液状の栄養組成物を計4種(A〜D)作製した。
【0033】
【試験例2】
(経口摂取官能検査:茶カテキン及びブドウ種子エキスを配合した栄養組成物の官能検査試験)
年齢20歳〜30歳代の健常な人20名にて経口摂取にて官能評価を実施した。すなわち、実施例2で調製した栄養組成物A,B,C,Dは全てに脂肪源として魚油濃縮物を含み、また蛋白質として分離大豆蛋白質を含む組成とし、また茶カテキン及びブドウ種子エキス由来のポリフェノールの合計量が、栄養組成物100mLあたり0mg、100mg、600mgあるいは1000mgになるように配合した。また、官能評価項目としては、(1)魚油臭が感じられる、(2)大豆臭が感じられる、(3)ポリフェノール臭(苦味)が感じられる、の計3項目で評価した。
【0034】
官能評価結果を表6に示した。
【0035】
茶カテキンやブドウ種子エキスを配合していない栄養組成物Aは魚油臭や大豆臭を強く感じた評価者が多数であったが、両者のポリフェノールの合計量が100mgの栄養組成物Bでは魚油臭及び大豆臭が全く感じられないとした評価者が増加した。この傾向は、茶カテキンやブドウ種子エキスをさらに増やした栄養組成物C,Dでも認められた。しかしながら、両者のポリフェノール合計量が1000mgにまで増やした栄養組成物Dでは茶カテキンもしくはブドウ種子エキスの苦味が強く感じられたとする評価者が多く、両者を増量することにより苦味が強く発現することが明らかになった。
【0036】
以上の結果から、茶カテキン及びブドウ種子エキス由来のポリフェノール合計量が100mg以上で食品中の臭いなどの不快臭を取り除くことが可能であったが、両者の合計量が1000mg程度にまで増量した場合、逆に苦味が強く発現することが認められた。従って、両者由来のポリフェノール配合量の適性は合計で100〜600mg程度であると判断された。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【実施例3】
(製造例3)ゼリー栄養組成物の製造
下記の表7に示した配合量で後述のようにゼリー栄養組成物を調製した。すなわち、ココア、プロアントシアニジンに60℃から80℃に加温した牛乳を加え分散させた後、砂糖、ミネラル類、ビタミン類、フルクトシルラクトースを加えて溶解させる。これにゼラチンを加えて溶解させゼリー液を作製する。出来上がったゼリー液を器に入れ5℃以下で5時間程度冷却して、本発明のゼリー栄養組成物を得た。
【0040】
【表7】
【0041】
【試験例3】
ヒト臨床試験:健常人20名に2週間投与した場合の、便性及び便臭改善効果
製造例3にて調製したプロアントシアニジンならびにフルクトシルラクトースを含むゼリー栄養組成物を被検ゼリーとし、また両成分を全く含まない対照ゼリーを用い、20歳代〜50歳代の健康な人20名を選別し、これらを摂取させて便性および便臭試験を実施した。すなわち、対象者20名の性別は男性8名、女性12名であり、それぞれ男女均等になるように2群10名ずつに無作為に分け、ひとつの群には最初の一週間は被検ゼリーを一日一個摂取させ、次の一週間は対照ゼリーを摂取させた。一方、他群には最初の一週間、対照ゼリーを摂取させ、次の一週間は被検ゼリーを摂取させた。試験期間中は通常の食事も摂取させるとともに、ゼリーは目隠し法で摂取させた。また、それぞれの一週間の試験期間のそれぞれ最終日に排便時の便性および便臭を官能評価させ、これを試験結果とした。
【0042】
試験結果を表8に示した。
以上の結果から、便性および便臭とも、被検ゼリーを摂取したときの方が、対照ゼリーを摂取させたときに比べ、大きく改善することが認められた。以上の結果から、被検ゼリーである本発明品は便性、すなわち腸内環境の改善に優れ、かつ便臭をも軽減することが認められた。
【0043】
【表8】
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1によるラットの腸内細菌数を示す。
(A) 嫌気性菌の総菌数
(B) 好気性菌の総菌数
【図2】試験例1によるラットの腸内細菌叢中のLactobacillus属、Bifidobacterium属及びClostridium属の菌数を示す。
(A) Lactobacillus属の菌数
(B) Bifidobacterium属の菌数
(C) Clostridium属の菌数
【図3】試験例1によるラット盲腸内容物質の腐敗産物の含量を示す。
(A)アンモニア含量
(B)イシトール含量
(C)スカトール含量
【発明の属する技術分野】
本発明は、便性および便臭の両者を改善し栄養組成物に関する。さらに、本発明は栄養組成物の配合素材に基づく特有の臭いを消臭した栄養組成物に関する。本発明の栄養組成物は、流動食として老人あるいは手術後の患者に投与することが望ましい。
【0002】
【従来の技術】
我国の人口は、2005年には60歳以上の老人が人口の30%を占めると予想され、日本はまさしく超高齢社会を迎えており、介護施設や在宅介護の充実が急がれている。また、要介護高齢者の発生率は加齢とともに急増し、特に寝たきり、痴呆および虚弱を併せた要介護高齢者の数は2025年で520万人に達すると見込まれている。また、家庭における介護の問題点についての調査結果によると、家庭介護者は心身両面での負担が大きく、とくに「食事や排泄、入浴などの世話の負担」が大きな問題点になっている。このような状況の中で、とくに要介護高齢者に対する食事、すなわち栄養管理は介護される者にとり、また介護者にとっても重要な関心事の一つとなっている。
【0003】
ところで、要介護高齢者はベッド上での生活が多いことから、腸管の動きや、年齢的にも代謝が益々緩慢となるため、腸内環境すなわち腸内細菌叢が悪化し、頑固な便秘や下痢、強い便臭などの排便問題が深刻になっている。
従来から、介護施設や在宅介護においては、排便障害などを伴った要介護高齢者においても栄養管理の一環として流動食もしくは経腸栄養剤などが投与されている。しかしながら、これら流動食などを投与しても便秘や下痢などの排便障害やこれに伴う強い便臭などを改善するには至っていないのが現状である。
【0004】
すなわち、要介護高齢者に用いられている流動食もしくは経腸栄養剤は、これまで、おおむね成人を対象として開発された製品が使用されており、たとえば消化管外科術後の患者のための消化管に負担をかけない組成物、あるいは消化管の機能障害を伴った患者のための消化吸収性に優れた組成物などが使用されている。これら疾患患者においては、従来の流動食もしくは経腸栄養剤は有用な栄養補給剤となってはいるものの、要介護高齢者にとって、先に示したように、便性や便臭の改善という点では最適な栄養補給剤とは言いがたい。したがって、特に要介護高齢者を対象とした流動食もしくは経腸栄養剤において、栄養状態を維持改善する作用、すなわち栄養管理が十分に行えることのみならず、排便障害や強い便臭をも改善する作用を有する栄養組成物の開発が望まれていた。
【0005】
さらに、組成上ω3系脂肪酸の比率を高くすることは栄養学的に重要な項目の一つであるが、その反面、ω3系脂肪酸の供給源となる魚油などを従来の食品に添加すると魚油臭等が問題となり、経口摂取する際に不快感や苦痛を伴うことがある。また、大豆蛋白質では強い大豆臭を伴うため、臭いと伴に、食品の持つおいしさを損なう原因となっている。
【0006】
その他、食品中に含有することによって臭い等の不快感を与える成分としては以下のものが列記できる。すなわち、白子のDNA及び酵母の酵母臭さ;昆布やカキエキスの磯臭さ;ニンジンやタマネギエキスの野菜臭さ;葉菜類やクロレラの青臭さ;グリセリン脂肪酸エステルやレシチンの乳化剤臭さ;胚芽や米由来の油の米ぬか臭さ等。
【0007】
ここに示したように、これらの臭みを除くことができれば、経口摂取する際に不快感などが除去でき、流動食もしくは経腸栄養剤、機能性食品を無理なく、かつおいしく経口摂取させることが期待できる。
【0008】
従来の技術として、ヒト便特有の悪臭を除去するために、完熟時の食用茸の乾燥粉末を主体に乳酸菌、オリゴ糖、ビタミンC、木炭末、マンナン、澱粉等を混合した便臭消去用健康食品は知られていた(特許文献1)。しかし、この食品は、摂取しようとする栄養組成物に混入してその組成物の悪臭を除去したりあるいはその組成物に基づく便性あるいは便臭を除去しようとするものではなかった。また、便臭を除去する成分として抹茶、茶殻粉末を用いているが、このような天然物自体を用いたものでは消臭除去効果を充分発揮することができなかった。
【0009】
特許文献1 (特開平9‐248154号)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような観点からなされたものであって、要介護高齢者や消化器外科手術患者などでみられる便秘や下痢などの排便傷害や便臭を改善することのできる栄養組成物を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、このような栄養組成物の配合素材に基づく特有の臭いを消臭した栄養組成物を提供することを課題とする。
【0011】
【発明が解決するための手段】
本発明は、上記のように、これら要介護高齢者に対して、排便障害や便臭の改善効果をもたらす栄養組成物を提供するものである。本発明において栄養組成物に含有させる有効成分としては便性改善作用を有し、かつ腸内環境の改善、すなわち腸内細菌叢の正常化を伴って便臭の発生を抑制する作用を有する成分、および便臭の主成分を除去する作用を有する成分を組み合わせることを特徴とし、両成分をともに配合させることで便性・便臭改善効果が極めて高い栄養組成物を得ることができた。
【0012】
すなわち、本発明は次のとおりの栄養組成物に関する。
(1) 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分、および便臭を除去する成分の両成分を含有する便性および便臭改善効果のある栄養組成物。
(2) 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分がオリゴ糖および/または乳酸菌である前記(1)記載の栄養組成物。
(3) 便臭を除去する作用を有する成分が、カテキン、フラボノイド、ルチン、ケルセチン、プロアントシアニジン、ポリフェノール類、銅クロロフィルナトリウムおよび天然物抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分である前記(1)または(2)に記載の栄養組成物。
(4) 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分を全栄養成分の固形分あたり1〜5重量%、便臭を除去する作用を有する成分を全栄養成分の固形分あたり0.05〜1重量%及びたん白質、脂肪、糖質、ビタミン類、ミネラルなどの栄養成分を配合してなる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の栄養組成物。
(5) 前記(3)記載の成分を配合することにより、栄養組成物中に配合した素材特有の臭いを除去し、経口摂取しやすくしてなる栄養組成物。
(6) 流動食である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の栄養組成物。
(7) 高齢者用流動食である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の栄養組成物。
(8) 経腸栄養剤である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の栄養組成物。
が用いられる。
【0013】
本発明において、便性および腸内環境を改善する作用を有する上記のオリゴ糖としては、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖などを例示することができ、乳酸菌としては、L.casei、L.bulgaricus、L.lactisなどを用いることが望ましい。
特に、栄養組成物においては望ましくはこれらの成分の合計量が固形分あたり1〜5重量%を含む組成物が例示できる。
【0014】
また、便臭成分を除去できる作用を有する成分としては、臭い成分を吸着除去もしくは分解除去する作用を有し、具体的には緑茶もしくはウーロン茶由来のカテキン、柿由来のフラボノイド、韃靼そば由来のルチン、たまねぎやココア由来のケルセチン、赤ワインやブドウ種子由来のプロアントシアニジン、大豆由来のイソフラボンなどのポリフェノール類、さらにはハーブオイル、蓬エキス、びわエキス、ほうれん草エキス、ヒバエキス、ヒノキエキス、きのこエキス、アロエエキス、ヒレハリソウエキスなどの天然物からの抽出物、さらには工業製品である銅クロロフィルナトリウムを用いることができ、これら成分から選択される一もしくは二以上の成分が用いられる。特に、栄養組成物においては望ましくは本成分の合計量が固形分あたり0.05〜1重量%を含む組成物が例示できる。
【0015】
さらに、要介護高齢者が健康な生活を送るためには、とりわけ栄養が大切な問題であり、先に示した便臭の発生を抑える成分および便臭を除去する成分の両成分のみを配合した組成物では十分な栄養成分を供給し得ない。従って、栄養組成物においては前記両成分に加え、たん白質、脂質、糖質、ビタミン類、ミネラル類をバランス良く加えた組成物として供給するものである。これら栄養成分のうち、たん白質については大豆たん白質を一定の比率で配合することで、便性の改善に有効であることがこれまで見出されていることから、栄養組成物について大豆たん白質を3〜15重量%程度の一定比率で配合することが望ましい。また、同様に、脂質についても、ω3系脂肪酸であるα−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが、下痢の予防に有効であることが見出されていることから、これら脂肪酸を含む油脂、すなわち、シソ油、エゴマ油、アマニ油、キリ油、魚油を一定比率で配合することが望ましい。
【0016】
さらに、従来、食品に魚油を添加すれば魚油臭が、大豆を添加すれば大豆臭がし、臭みが強くなればなるほど、不快感を与え、経口摂取しづらくなる。しかしながら、ここに消臭成分である緑茶もしくはウーロン茶由来のカテキン、柿由来のフラボノイド、韃靼そば由来のルチン、たまねぎやココア由来のケルセチン、赤ワインやブドウ種子由来のプロアントシアニジン、大豆由来のイソフラボンなどのポリフェノール類、さらにはハーブオイル、蓬エキス、びわエキス、ほうれん草エキス、ヒバエキス、ヒノキエキス、きのこエキス、アロエエキス、ヒレハリソウエキスなどの天然物からの抽出物、さらには工業製品である銅クロロフィルナトリウムを1もしくは2以上成分を食品に配合することでこれら食品素材特有の臭みが除去でき、無理なくおいしく経口摂取できることを見出した。
【0017】
本発明の栄養組成物は、前記組成の成分が混合され、均質になったものをいい、固形あるいは液体の形態で用いられる。その用途としては高齢者用液状流動食が望ましい。
その製造方法としては、いくつかの成分に分けてそれぞれの成分を水に溶解あるいは懸濁させ、それぞれの液状物を高圧で均質処理し、容器に充填し、滅菌することが一例として示される。本発明が用いる便性および腸内環境改善作用を有する成分及び便臭を除去する作用を有する成分以外の成分は、従来栄養組成物を調製するさいに使用されている公知の成分を従来知られている使用量で用いるとよい。
【0018】
【実施例】
次に、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、この実施例は本発明の一実施態様を単に例示するものであり、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
(液状流動食の製造1)
58Lの水に、300gの炭酸カリウムを溶解させ、70℃に加熱した。この液にカゼイン5.10kgを溶解させ、溶解後、糖質24.3kg、ガラクトシルラクトース1.38kg、及び表1に示す配合割合で配合したミネラルミックス883gを添加し溶解させた。この液をA液とした。
【0019】
一方、30Lの水に、茶カテキン300gを分散溶解させ、70℃に加熱した。この液に分離大豆タンパク2.10kgを添加分散させた。この液をB液とした。
【0020】
また、大豆油1.05kg、中鎖トリグリセリド1.03kg、エゴマ油270g、パーム油500g、グリセリン脂肪酸エステル110g、レシチン210gを混合し加熱溶解後、表2に示す配合割合で配合した脂溶性ビタミンミックス100gを添加し溶解させた。この液をC液とした。
【0021】
70〜75℃に保った状態にて、A液とB液を混合後攪拌し均一な液とし、これにC液を混合し、10分間攪拌を行った。さらに表3に示す配合割合で配合した水溶性ビタミンミックス132gを添加し、5分間攪拌した。
この調合液を1段目150kg/cm2、2段目及び3段目500kg/cm2の圧力で均質処理を行い、乳化液を得た。
この乳化液を水にて150Lにメスアップした後、200mlずつアルミパウチに充填密封し、F値12〜18の滅菌条件にてレトルト滅菌し、本発明の液状流動食を得た。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【試験例1】
(動物試験:ラットの盲腸内菌叢の改善効果と盲腸内容物の腐敗臭の低減効果)本試験で用いる栄養剤の組成を表4に示した。すなわち、便臭の発生を抑制する成分の一つであるガラクトシルラクトース、および便臭を除去する成分の一つである茶カテキンを共に含まない栄養剤を試験栄養剤A、両成分をともに含む栄養剤を本発明品B、本発明品Cとし、同様に両成分を共に多く含む栄養剤を試験栄養剤Dとした。動物は7週令SD系雄性ラットを使用し、先に示した、試験栄養剤および対照栄養剤を自由に摂取させ、2週間飼育した。
なお、試験栄養剤A及びDも本発明の実施1に準じて製造した。
【0026】
【表4】
【0027】
盲腸内細菌叢は飼育最終日に解剖し、盲腸より盲腸内容物を取り出し、直ちに内容物の重量の9倍の希釈液を加え10w/w %溶液を作製した。次いで、常法に従い、好気性菌は24時間、嫌気性菌は72時間を目安に各種寒天培地上で37℃培養し、嫌気性菌群、好気性菌群、Bifidobacterium、Lactobacillus、Clostridiumをそれぞれ分離し、集落形態、グラム染色、菌形態、芽胞の有無を観察して同定した後、菌数を測定した。
【0028】
アンモニア含量及び盲腸内腐敗代謝産物の測定は、盲腸内容物を取り出した後、内容物の重量の9倍の精製水を加えて10w/w %溶液を作成した。これを腐敗代謝産物用とアンモニア測定用として分注し、凍結保存して後日検査した。アンモニアの測定はアンモニアテストワコー(和光純薬)を用いて測定した。また、盲腸内腐敗代謝産物の測定は液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
【0029】
その結果、腸内総菌数では図1に示したように、本発明品BおよびCは試験栄養剤AおよびDに比べ、嫌気性および好気性ともに総菌数で増加していた。また、腸内細菌叢では図2に示したように、一般的に善玉菌とされるLactbacillusとBifidobacteriumはともに本発明品BおよびCは試験栄養剤AおよびDに比べ有意に増加していた。一方、一般的に悪玉菌とされているClostridiumでは本発明試品BおよびCが試験栄養剤AおよびDに比べ、有意に菌数の低下が認められた。以上の結果から、本発明品は腸内菌叢の改善、すなわち腸内環境の改善に有効であり、便臭の発生を抑制することが認められた。
【0030】
盲腸内容物の腐敗産物の含量を図3に示した。アンモニア、インドールおよびスカトールでは、本発明品BおよびCが試験栄養剤AおよびDに比べ、いずれの結果も著しく有意な低値を示した。以上の結果から、本発明品はこれら便臭成分の腸内含有量をいずれも抑え、便臭を除去することが認められた。
【0031】
便臭の指標となるアンモニアはアミノ酸などの脱アミノ化により、腐敗代謝産物のインドール、スカトールはトリプトファンが脱アミノ化、脱炭酸反応により生じる。これらの反応は特定の腸管内の細菌によって行われることが知られている。Clostridiumはインドール産生菌の一つに認められており、腸内細菌叢の改善によりこれらの菌が減少したことにより盲腸内容物中のインドールなどの便臭濃度が減少したと考えられる。また、実施例に示すようにガラクトシルラクトースおよび茶カテキンを共存させた本発明品は、適量の範囲内でれば腸内細菌叢の改善に伴ってアンモニアとインドール、スカトールなどの便臭成分の発生を抑制し、かつこれら便臭成分を除去することで効率良く、便臭を軽減する作用を発揮することが示された。
【0032】
【実施例2】
(液状流動食の製造2)
実施例1に準じて、表5に示す組成表にて液状の栄養組成物を計4種(A〜D)作製した。
【0033】
【試験例2】
(経口摂取官能検査:茶カテキン及びブドウ種子エキスを配合した栄養組成物の官能検査試験)
年齢20歳〜30歳代の健常な人20名にて経口摂取にて官能評価を実施した。すなわち、実施例2で調製した栄養組成物A,B,C,Dは全てに脂肪源として魚油濃縮物を含み、また蛋白質として分離大豆蛋白質を含む組成とし、また茶カテキン及びブドウ種子エキス由来のポリフェノールの合計量が、栄養組成物100mLあたり0mg、100mg、600mgあるいは1000mgになるように配合した。また、官能評価項目としては、(1)魚油臭が感じられる、(2)大豆臭が感じられる、(3)ポリフェノール臭(苦味)が感じられる、の計3項目で評価した。
【0034】
官能評価結果を表6に示した。
【0035】
茶カテキンやブドウ種子エキスを配合していない栄養組成物Aは魚油臭や大豆臭を強く感じた評価者が多数であったが、両者のポリフェノールの合計量が100mgの栄養組成物Bでは魚油臭及び大豆臭が全く感じられないとした評価者が増加した。この傾向は、茶カテキンやブドウ種子エキスをさらに増やした栄養組成物C,Dでも認められた。しかしながら、両者のポリフェノール合計量が1000mgにまで増やした栄養組成物Dでは茶カテキンもしくはブドウ種子エキスの苦味が強く感じられたとする評価者が多く、両者を増量することにより苦味が強く発現することが明らかになった。
【0036】
以上の結果から、茶カテキン及びブドウ種子エキス由来のポリフェノール合計量が100mg以上で食品中の臭いなどの不快臭を取り除くことが可能であったが、両者の合計量が1000mg程度にまで増量した場合、逆に苦味が強く発現することが認められた。従って、両者由来のポリフェノール配合量の適性は合計で100〜600mg程度であると判断された。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【実施例3】
(製造例3)ゼリー栄養組成物の製造
下記の表7に示した配合量で後述のようにゼリー栄養組成物を調製した。すなわち、ココア、プロアントシアニジンに60℃から80℃に加温した牛乳を加え分散させた後、砂糖、ミネラル類、ビタミン類、フルクトシルラクトースを加えて溶解させる。これにゼラチンを加えて溶解させゼリー液を作製する。出来上がったゼリー液を器に入れ5℃以下で5時間程度冷却して、本発明のゼリー栄養組成物を得た。
【0040】
【表7】
【0041】
【試験例3】
ヒト臨床試験:健常人20名に2週間投与した場合の、便性及び便臭改善効果
製造例3にて調製したプロアントシアニジンならびにフルクトシルラクトースを含むゼリー栄養組成物を被検ゼリーとし、また両成分を全く含まない対照ゼリーを用い、20歳代〜50歳代の健康な人20名を選別し、これらを摂取させて便性および便臭試験を実施した。すなわち、対象者20名の性別は男性8名、女性12名であり、それぞれ男女均等になるように2群10名ずつに無作為に分け、ひとつの群には最初の一週間は被検ゼリーを一日一個摂取させ、次の一週間は対照ゼリーを摂取させた。一方、他群には最初の一週間、対照ゼリーを摂取させ、次の一週間は被検ゼリーを摂取させた。試験期間中は通常の食事も摂取させるとともに、ゼリーは目隠し法で摂取させた。また、それぞれの一週間の試験期間のそれぞれ最終日に排便時の便性および便臭を官能評価させ、これを試験結果とした。
【0042】
試験結果を表8に示した。
以上の結果から、便性および便臭とも、被検ゼリーを摂取したときの方が、対照ゼリーを摂取させたときに比べ、大きく改善することが認められた。以上の結果から、被検ゼリーである本発明品は便性、すなわち腸内環境の改善に優れ、かつ便臭をも軽減することが認められた。
【0043】
【表8】
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1によるラットの腸内細菌数を示す。
(A) 嫌気性菌の総菌数
(B) 好気性菌の総菌数
【図2】試験例1によるラットの腸内細菌叢中のLactobacillus属、Bifidobacterium属及びClostridium属の菌数を示す。
(A) Lactobacillus属の菌数
(B) Bifidobacterium属の菌数
(C) Clostridium属の菌数
【図3】試験例1によるラット盲腸内容物質の腐敗産物の含量を示す。
(A)アンモニア含量
(B)イシトール含量
(C)スカトール含量
Claims (8)
- 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分、および便臭を除去する成分の両成分を含有する便性および便臭改善効果のある栄養組成物。
- 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分がオリゴ糖および/または乳酸菌である請求項1記載の栄養組成物。
- 便臭を除去する作用を有する成分が、カテキン、フラボノイド、ルチン、ケルセチン、プロアントシアニジン、ポリフェノール類、銅クロロフィルナトリウムおよび天然物抽出物よりなる群から選択される少なくとも1種の成分である請求項1または2に記載の栄養組成物。
- 便性および腸内環境を改善する作用を有する成分を全栄養成分の固形分あたり1〜5重量%、便臭を除去する作用を有する成分を全栄養成分の固形分あたり0.05〜1重量%およびたん白質、脂肪、糖質、ビタミン類、ミネラルなどの栄養成分を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の栄養組成物。
- 請求項3記載の成分を配合することにより、栄養組成物中に配合した素材特有の臭いを除去し、経口摂取しやすくしてなる栄養組成物。
- 流動食である請求項1〜5のいずれかに記載の栄養組成物。
- 高齢者用流動食である請求項1〜6のいずれかに記載の栄養組成物。
- 経腸栄養剤である請求項1〜4のいずれかに記載の栄養組成物。
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WO2020149393A1 (ja) * | 2019-01-18 | 2020-07-23 | 富士フイルム株式会社 | 便臭を改善する物質を選択する方法、便臭を改善する組成物の製造方法、腎機能改善剤、および腎機能改善のための飲食品 |
-
2003
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