JP2004284180A - 缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金板の両面に、エチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位からなる共重合ポリエステル単独、もしくは該共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとの混合物からなる2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを被覆し、それぞれの樹脂フイルムのエチレンイソフタレート単位の含有量及びフイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面のX線回折強度比を所定の範囲に調整する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料缶等の易開缶性を有する缶蓋に用いられるポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、飲料用等の易開缶性を有する缶蓋には、樹脂被覆アルミニウム合金板が用いられている。この樹脂被覆アルミニウム合金に求められる具備品質としては、内容物に対するフレーバー性やバリア性、及び開缶性(フェザリング性)が要求される。
これらの諸特性を改善するため、被覆樹脂の結晶量を調整した樹脂被覆アルミニウム合金板が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−310417号公報
【0004】
一方、樹脂被覆アルミニウム合金板を缶蓋形状に成形後、缶蓋と缶胴とを巻締めする、いわゆる巻締工程において、巻締ロールと缶蓋との接触により缶蓋外面の被覆フイルムが摩耗し、被覆フイルムの摩耗粉が発生するという問題がある。摩耗粉が発生すると、巻締装置に摩耗粉が堆積して製造上問題となるばかりでなく、缶蓋に生じた摩耗痕が缶蓋の美観を損ねる場合もある。したがって、樹脂被覆アルミニウム合金板の缶蓋成形後に缶蓋外側となる面の被覆フイルムには、耐巻締摩耗性が要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
巻締加工時の摩耗粉の発生は、巻締ロールの回転抵抗を小さく調整することによっても改善できる。しかし、巻締ロールの回転抵抗を調整するには製造ラインのメンテナンスを頻繁に行う必要があり、定期的に製造ラインを停止させてトルク測定等を行って、管理データを採取する必要がある。このような対策は生産性を重視する立場からすれば到底採用することはできず、非現実的な対策である。本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、缶蓋外面側は耐巻締摩耗性に優れ、缶蓋内面側は内容物に対するフレーバー性を満足させる特性を兼ね備えた缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を低コストで提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルミニウム合金板の両面にエチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位からなる共重合ポリエステル単独、もしくは該共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとの混合物からなる2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムが被覆された缶蓋用アルミニウム合金板であって、缶蓋の外面となる側の前記ポリエステル樹脂フィルムの少なくともアルミニウム合金板に接しない最外層は、エチレンイソフタレート単位の総含有量が5mol%以下であり、かつ、フイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面のX線回折強度比が2.0倍以下であり、缶蓋の内面となる側の前記ポリエステル樹脂フィルムの少なくとも内容物と接する層は、エチレンイソフタレート単位の総含有量が3mol%以下であり、かつ、フイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面のX線回折強度比が10倍以上であるアルミニウム合金板とした。
このような構造のポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板とすることにより、缶蓋外面側は耐巻締摩耗性に優れ、缶蓋内面側は内容物に対するフレーバー性に優れた缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板とすることができる。
【0007】
本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板では、前記缶蓋の外面となる側のポリエステル樹脂フィルムと前記缶蓋の内面となる側のポリエステル樹脂フィルムとが、同質のポリエステル樹脂からなるフイルムを採用することができる。
このような構造のポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板とすることにより、樹脂フィルムの製造工程が単一化され、一層低コストで製造できるようになる。
【0008】
また、本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板では、前記外面となる側もしくは内面となる側の少なくとも一方のポリエステル樹脂フィルムを複層フイルムとすることができる。
すなわち、缶蓋の外面及び内面ともアルミニウム合金板に接する接着部分には溶着し易い材質とし、一方缶蓋の最外面には耐巻締摩耗性に富む材質を、また内容物と接触する最も内側となる面にはフレーバー性に優れた材質のフイルムを積層して使用するのが得策である。
【0009】
また、本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法は、アルミニウム合金板を予備加熱し、加熱された該アルミニウム合金板の缶蓋の外面となる面に外面用のポリエステル樹脂フィルムを加圧圧着した後、該ポリエステル樹脂の融点以上の温度に加熱して冷却し、その後片面にポリエステル樹脂が被覆されたアルミニウム合金板を再度予備加熱し、加熱された該アルミニウム合金板の缶蓋の内面となる面に内面用のポリエステル樹脂フィルムを加圧圧着した後、少なくとも内容物と接するポリエステル樹脂層の融点未満の温度に加熱して冷却する方法とした。
この方法によれば、缶蓋外面側は耐巻締摩耗性に優れ、缶蓋内面側は内容物に対するフレーバー性に優れた缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板をきわめて容易に、かつ安価に提供することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板に使用するアルミニウム合金としては、成形加工性、耐圧強度、開口性、耐ブローアップ性などを満たす特性が求められ、JIS 5000番系の硬質アルミニウム合金板が使用可能であり、例えばJIS 5182合金板を好んで用いることができる。アルミニウム合金板の表面には、ポリエステル樹脂フイルムとの密着性を向上させるため、表面にクロメート処理やアルマイト処理等の表面処理を施すことが望ましい。
【0011】
本発明者らの研究によれば、缶蓋外側に被覆する樹脂フイルムの耐巻締摩耗性及び缶蓋内側に被覆する樹脂フイルムのフレーバー性は、共にポリエステル樹脂フイルムの成分、それら成分の含有率及び被覆後の結晶化度が大きく影響していることが判明した。結晶化度が低く無配向に近い状態であっても、樹脂成分及びその含有率によっては巻締加工時に摩耗粉が発生することがある。
缶蓋外側に被覆する樹脂フイルムの好ましい樹脂成分は、エチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位からなる共重合体、あるいはこの共重合体とポリエチレンテレフタレート(PET)との混合物からなるものである。また、少なくともアルミニウム板に接しない最外面となる部分のエチレンイソフタレート成分の含有率は、5mol%以下が好ましい。
さらに結晶化度については、被覆後のフイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面とのX線回折強度比が2.0倍以下であることが好ましい。X線回折強度比は、回折角度2θ=26度近傍に現れる(100)結晶面の回折ピークと、2θ=22.5度近傍に現れる(−110)結晶面の回折ピークとのピーク強度の比をもって表わしたものである。
このような特性を具備したポリエステル樹脂フイルムであれば、耐巻締摩耗性に優れた樹脂被覆が得られる。
【0012】
また、缶蓋内側に被覆する樹脂フイルムの好ましい樹脂成分も、エチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位からなる共重合体、あるいはこの共重合体とPETとの混合物からなるものである。また、少なくとも内容物に接する最内面となる部分のエチレンイソフタレート成分の含有率は、3mol%以下が好ましい。さらに結晶化度については、被覆後のフイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面とによる、X線回折強度比が10倍以上であることが好ましい。
このような特性を具備したポリエステル樹脂フイルムであれば、フレーバー性に優れた樹脂被覆が得られる。
【0013】
本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板においては、缶蓋の外側となる面に被覆する樹脂フイルムと、缶蓋の内側となる面に被覆する樹脂フイルムは、同質の樹脂フイルムとすることが好ましい。同質の樹脂フイルムとは同じ成分を同じ割合で含有する樹脂フイルムを指す。被覆樹脂フイルムの熱処理条件を調整して結晶化率を変えることによって、耐巻締摩耗性あるいはフレーバー性に優れた樹脂フイルムとすることができる。
内外面に同質の樹脂フイルムを使用することにより、樹脂フィルムの製造工程の単一化が可能となるので低コストで製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板においては、外面となる側もしくは内面となる側の少なくとも一方のポリエステル樹脂フィルムを複層フイルムとすることができる。
すなわち、缶蓋の外面及び内面ともアルミニウム合金板に接する接着部分は溶着し易い材質とし、一方缶蓋の最外面には耐巻締摩耗性に富む材質を、また内容物と接触する最も内側となる面にはフレーバー性に優れた材質のフイルムを積層して使用すれば、缶蓋内外で互いに異なる特性を具備したポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を得ることが可能となる。
【0015】
次に、本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
素材となるアルミニウム合金板は、通常はコイルの状態でフイルム被覆工程に供される。フィルムの接着を容易にするため、アルミニウム合金板は先ず予備加熱装置で予備加熱する。加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜利用できる。予備加熱温度は、缶蓋の外側面となる樹脂フィルムの、アルミニウム合金板と接する部分の樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上で、かつ缶蓋の外側面のアルミニウム合金板と接しない最外層の樹脂フイルムの融点未満の温度とするのが望ましい。具体的には、予備加熱温度は100℃〜150℃程度が好適である。
予備加熱温度が前記(Tg)未満ではアルミニウム合金板に樹脂フイルムを接着することができず、また前記融点以上の温度に予熱すると溶融した樹脂フィルムに加圧ロールの表面形状が転写されて外観が悪化し、商品価値の無いものとなる。
【0016】
次いで、缶蓋の外側面となる樹脂フイルムを被覆する。樹脂フィルムはコイル状にして加圧ロール近傍に配置されている。予備加熱されたアルミニウム合金板は樹脂フイルムと共に加圧ロールに送られ、先ず缶蓋の外側面となる面にのみ樹脂フイルムを片面加圧圧着する。
片面に樹脂フィルムを被覆したアルミニウム合金板は後加熱装置に送り、アルミニウム合金板に接しない最外層の樹脂フィルムの融点以上の温度に加熱した後、冷却する。この工程により最外層の樹脂フィルムの結晶状態が調整される。後加熱温度が最外層の樹脂フィルムの融点未満の温度では、樹脂フィルム製造工程で2軸延伸される際に生成した配向結晶が多く残存して、耐巻締摩耗性が低下する。耐巻締摩耗性の向上には、巻締工具と接する缶蓋最外層の配向結晶をなくすことが重要であり、これを達成するためには最外層の樹脂フイルムの融点以上の温度に加熱した後冷却することが必要である。
【0017】
加熱後の冷却速度は特に制限はないが、遅すぎると生産効率が低下するし、樹脂フイルム中に配向を持たない結晶が過度に成長して樹脂フイルムが脆化する場合があるので好ましくない。したがって、冷却速度はある程度以上とする必要がある。ただし、このような配向を持たない結晶は、過度に成長しない場合には耐巻締摩耗性を害せず、むしろ耐巻締摩耗性を向上させる場合もある。したがって、あえて急速に冷却する必要も無いが、このような配向を持たない結晶を有する樹脂フイルムの外観は若干白く変色する場合があり、このような着色を嫌う用途向けにはエアー冷却装置、ミスト冷却装置、水冷却装置等を使用して冷却速度を調整すると良い。
【0018】
冷却後の温度が高すぎる場合には、以降の工程でデフレクタロール、テンションロール、加圧ロール等のライン設備と接触する際に、それら設備の表面形状が転写されて外観が悪化し、商品価値の無いものとなる。この転写模様発生の原因は、配向結晶が失われることによりフイルム表面の高温強度が低下するためであり、冷却後の温度を130℃以下、好ましくは120℃以下とすることにより、転写模様の発生を効果的に防止することができる。
【0019】
後加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜組み合わせて利用できる。後加熱工程では最外層の被覆樹脂フイルムの融点以上の温度に加熱するため、樹脂フイルムが溶融軟化状態で加熱装置や支持ロール等の設備と接触すると、樹脂フイルムの表面にはそれら設備の表面形状の転写模様が発生する。したがって、樹脂フイルムがその融点以上の温度に加熱されてから130℃、好ましくは120℃の温度に冷却されるまでの間、樹脂フイルム表面が設備と接触しない状態に保つ必要があり、これを満足する装置が後加熱装置として適している。
【0020】
上述の手順に従って缶蓋の外側となる面に樹脂フイルムを被覆したアルミニウム合金板には、引き続き缶蓋の内側となる面に樹脂フイルムを被覆する。片面に樹脂フイルムを被覆したアルミニウム合金板は再び予備加熱装置に送り、缶蓋の内側となりアルミニウム合金板に接する部分の樹脂フイルムのガラス転移点(Tg)以上で、かつ130℃以下、好ましくは120℃以下の温度に予備加熱する。
予備加熱温度がTg以下では樹脂フイルムをアルミニウム合金板に接着することができず、また130℃以上に加熱すると前工程で貼り合わせた缶蓋外面用の樹脂フイルム表面に、加圧ロールの表面形状が転写されて外観が悪化し、商品価値の無いものとなる。
【0021】
予備加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜組み合わせて利用できる。ただし、前工程で被覆した缶蓋外面の樹脂フイルムは配向結晶が失われているので高温強度が低下しているため、加熱装置の部材に接触すると転写模様が発生する。したがって、予備加熱の間も缶蓋外面の樹脂フイルムが設備と接触しないような配慮が必要である。
【0022】
予備加熱をしたアルミニウム合金板は、コイル状にした缶蓋内側面用の樹脂フイルムと共に加圧ロールに送り、缶蓋の内側となるアルミニウム合金板の表面に樹脂フイルムを加圧圧着する。
缶蓋の内側となる面の樹脂フイルムの密着性は、予備加熱温度が130℃以下と低温であるため不十分である。このため缶蓋の内側となる面の樹脂フイルムの密着性を高めるために、再度後加熱工程に送る。
【0023】
後加熱工程では、缶蓋の内側となる面の樹脂フイルムの少なくともアルミニウム合金板に接触せず、内容物と接触する最内層部分の樹脂フイルムの融点未満の温度で加熱することにより行う。最内層部分の樹脂フイルムの融点以上の温度に加熱すると、2軸延伸工程で生じた配向結晶が失われて、フレーバー性が低下する。
【0024】
後加熱装置としては、加熱ロール、電気炉、ガスオーブン、誘導加熱装置、赤外線加熱装置などが適宜組み合わせて利用できる。ただし、前工程で被覆した缶蓋外面の樹脂フイルムは配向結晶が失われているので高温強度が低下しているため、加熱装置の部材に接触すると転写模様が発生する。したがって、後加熱の間も缶蓋外面の樹脂フイルムが設備と接触しないような配慮が必要である。
【0025】
上記のようにして得られた缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板は、缶蓋外面では耐巻締摩耗性に優れ、缶蓋内面ではフレーバー性に優れたものとなるので、飲料缶等の易開缶性を有する缶蓋用のアルミニウム合金板として好適であると同時に、低コストで提供することができるので経済的にも有用である。
【0026】
【実施例】
以下に本発明の実施例と比較例を挙げて説明する。
アルミニウム合金板の両面にそれぞれ2層構造からなるポリエステル樹脂被覆を施した缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を製造した。
母材となるアルミニウム合金板としては、厚さ0.28mmのJIS5182(Mn;0.3wt%、Mg;4.5wt%)硬質アルミニウム合金板を使用した。アルミニウム合金板の両側表面には、樹脂フイルムの接着を容易にしバリア性を高めるために、クロムの付着量が15mg/m2 となるように常法によりリン酸クロメート処理を施した。
【0027】
また、アルミニウム合金板に被覆する樹脂フイルムには、缶蓋内外面共いずれもエチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位との共重合体からなるポリエステル樹脂フィルムを使用し、アルミニウム合金板に接着する層とアルミニウム合金板に接着しない層との2層構造の樹脂フイルムを準備した。この2層ポリエステル樹脂フィルムは2種類の樹脂フィルムを共押出し成形後、2軸延伸して熱処理を施したものである。樹脂フイルムの厚さは、厚すぎると開缶が難しくなり、薄すぎるとバリア性が低下するので、アルミニウム合金板と接着する接着層の厚さは1.5μmとし、非接着層である最外層の厚さは8μmとした。
表1に最外層に使用した樹脂フィルムの組成と融点を一覧にして示した。表1中にIPAとあるのは共重合体中のエチレンイソフタレート成分を示し、数値はその含有率をモル百分率で示したものである。また比較例についても併記した。なお、比較例の中にはポリブチレンテレフタレート(PBT)単位を含む共重合体を使用した例も示した(比較例1,比較例2参照。)。接着層は充分な密着性が得られる材質のものを用いた。
【0028】
【表1】
【0029】
次に、アルミニウム合金板を予備加熱装置で予備加熱した後、先ず缶蓋外面となる面に所定の樹脂フイルムを加圧ロールを通して加圧圧着した。
次いで、後加熱装置を通して所定の温度で後加熱した。さらに、片面に樹脂フイルムを被覆したアルミニウム合金板再び予備加熱装置で予備加熱した後、缶蓋内面となる面に所定の樹脂フイルムを加圧ロールを通して加圧圧着し、次いで後加熱装置を通して所定の温度で後加熱した後、冷却した。これら予備加熱温度と後加熱温度を一覧表にまとめて表2に示した。
なお、比較例には缶蓋内外面の両面の樹脂フイルムを同時に接着する方法も試みた(比較例8,比較例9参照。)。
【0030】
【表2】
【0031】
このような工程により作製した缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板について、その特性を以下のようにして評価した。
(1) X線回折強度;
ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の缶蓋外面及び内面に対して、(100)結晶面と(−110)結晶面のX線回折強度を測定し、その回折強度比を求めた。X線回折条件は、CuのKα線を用いて、印加電圧:30kV、電流:10mA、2θのスキャン速度:2度/分とした。なお、測定毎のX線光学系の再現性を確認するため、標準試料による補正を行った。
2θ=26度近傍に出現する(100)結晶面のピーク強度及び2θ=22.5度近傍に出現する(−110)結晶面のピーク強度を測定し、それらの結果から強度比を算出した。結果を表3に示した。
【0032】
【表3】
【0033】
(2) フレーバー性
ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を缶蓋に成形加工した後、フレーバー疑似水(リモネン 50ppm、エタノール 10%の水溶液)を充填した缶胴部に巻締めして取り付け、缶蓋が下向きになるようにして37℃の恒温器中に入れて1ヶ月保管した。その後缶蓋と缶胴を切り離し、缶蓋内側面をジエチルエーテルに接触させて室温で3日間保持し、缶蓋内面側の樹脂フイルムに吸収着したリモネンを抽出した。抽出したリモネン量を面積100cm2 当たりの抽出量に換算して、フレーバー性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
(3) 耐巻締摩耗性
ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を缶蓋に成形加工した後、炭酸水を充填した缶胴と所定の条件で巻締加工を行った。その際、10枚連続で巻締加工を行い、加工後の巻締工具へのフィルムの摩耗粉の付着状況を観察した。また、巻締加工後の缶蓋の巻締部の表面を目視及び光学顕微鏡により観察した。
巻締粉の付着状況は、摩耗粉の付着の認められない場合は◎印を、摩耗粉が極僅かに付着している場合は○印を、摩耗粉が僅かに付着している場合は△印を、摩耗粉が大量に付着している場合は×印を付して評価した。また、巻締部の外観観察では、摩耗の認められない場合には◎印を付し、摩耗痕が僅かに認められる場合には○印を付し、局部的に大きな摩耗痕が認められる場合には△印を付し、カール部全周にわたって大きな摩耗痕が認められる場合には×印を付して評価した。これらの結果を表4に併記する。
【0036】
表1から表4の結果を見ると、本発明の実施例1から実施例4はいずれもフレーバー性を示すリモネンの吸収着量が19μg/100cm2 以下と少なく、フレーバーに優れていることを示している。また、摩耗粉の付着状況や巻締部外観も良好で、耐巻締摩耗性にも優れていることが判る。
これに対して比較例1及び比較例2は、被覆する樹脂フィルムとしてエチレンテレフタレート単位に替えてポリブチレンテレフタレートを使用した共重合体としたため、フレーバー性は良いものの耐巻締摩耗性が悪くなっている。
また、比較例3及び比較例4は缶蓋内側の内容物と接触する樹脂フイルム中のIPA成分が多すぎるので、フレーバー性を示すリモネンの吸収着量が22μg/100cm2 以上となり、フレーバー性に劣るものとなっている。
比較例5及び比較例6は缶蓋外側の最外層となる樹脂フイルム中のIPA成分が多すぎるので、フレーバー性は良いものの耐巻締摩耗性が悪くなっている。 比較例7及び比較例8は缶蓋の外側となる樹脂フイルムを圧着した後の後加熱の温度が低いため、配向性結晶が多く残留しているので、フレーバー性は良いものの耐巻締摩耗性が悪くなっている。
比較例9は缶蓋の内側と外側に同時に樹脂フイルムを圧着して後加熱を行ったため、内側と外側の樹脂フイルムに対して適切な後加熱ができず、フレーバー性を示すリモネンの吸収着量が62μg/100cm2 以上となり、フレーバー性に劣るものとなっている。
比較例10は内側のX線回折強度比が低く、フレーバー性が劣っている。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、缶蓋の外側には耐巻締摩耗性に優れた樹脂フイルム被覆を有し、缶蓋の内側にはフレーバー性優れた樹脂フイルム被覆を有しているので、巻締加工時にも樹脂フイルムの摩耗粉の発生を防止でき、しかも内容物に対するフレーバー性やバリア性に優れた缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を得ることができる。この缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を使用すれば、易開口性に優れた飲料用缶が得られる。
また、本発明の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法によれば、特性の優れた缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板を低コストで提供することが可能となる。
Claims (4)
- アルミニウム合金板の両面に、エチレンイソフタレート単位とエチレンテレフタレート単位からなる共重合ポリエステル単独、もしくは該共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとの混合物からなる2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムが被覆された缶蓋用アルミニウム合金板であって、缶蓋の外面となる側の前記ポリエステル樹脂フィルムの少なくともアルミニウム合金板に接しない最外層は、エチレンイソフタレート単位の総含有量が5mol%以下であり、かつ、フイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面のX線回折強度比が2.0倍以下であり、缶蓋の内面となる側の前記ポリエステル樹脂フィルムの少なくとも内容物と接する層は、エチレンイソフタレート単位の総含有量が3mol%以下であり、かつ、フイルム面に平行な(100)結晶面と(−110)結晶面のX線回折強度比が10倍以上であることを特徴とする缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 前記缶蓋の外面となる側のポリエステル樹脂フィルムと前記缶蓋の内面となる側のポリエステル樹脂フィルムとが、同質のポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 前記外面となる側もしくは内面となる側の少なくとも一方のポリエステル樹脂フィルムが複層フイルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 請求項1から請求項3に記載の缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法であって、アルミニウム合金板を予備加熱し、加熱された該アルミニウム合金板の缶蓋の外面となる面に外面用のポリエステル樹脂フィルムを加圧圧着した後、該ポリエステル樹脂の融点以上の温度に加熱して冷却し、その後片面にポリエステル樹脂が被覆されたアルミニウム合金板を再度予備加熱し、加熱された該アルミニウム合金板の缶蓋の内面となる面に内面用のポリエステル樹脂フィルムを加圧圧着した後、少なくとも内容物と接するポリエステル樹脂層の融点未満の温度に加熱して冷却することを特徴とする缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
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