本発明は、流路内に充填された流体を、その流路方向に振動させるための流体駆動装置、及び、その流体駆動装置を用いた熱輸送システム、に関する。
周知のように、熱は、フーリエの法則に従い、温度勾配ΔTに比例して高温部から低温部へと伝導する。この際の比例定数は、熱伝導率と呼ばれ、熱が伝導される媒体によって変化する。しかしながら、熱伝導率は、気体、液体、固体を含めても、5桁程度しか変化しないため、熱を輸送しようとする場合には、熱の輸送量に制限を受けることになる。
このような問題を解決すべく、近年では、流体を振動させることによって、熱を輸送する方法が考えられている。この熱輸送方法は以下に説明する原理を利用したものである。尚、図22は、この熱輸送の原理を示した説明図である。
ここでは、原理を簡単に説明するため、円管内に流体があり、その円管内における流体の振動中心Cを基準として、その中心Cより左側のL点に低温部が存在し、中心Cより右側のH点に高温部が存在することにする。そして、振動がない場合において振動中心Cに存在する一部流体を要素Eとし、この要素Eが、H点に半周期滞在し、即座にL点に移動して、そこで半周期滞在し、その後に即座にH点に戻るという矩形波振動を考える。尚、図22(a)には、振動がない場合の要素Eの位置を示し、図22(b)には、高温部に要素Eが移動した際の熱の移動方向を矢印(実線)で示し、図22(c)には、低温部に要素Eが移動した際の熱の移動方向を矢印(実線)で示す。
このモデルでは、振動がない場合において中心Cに存在する要素EがH点に移動した際、H点における円管壁の温度が要素Eより高いので、要素Eは、円管壁から熱をもらう。そして、要素Eが振動によりH点からL点に移動すると、L点での円管壁の温度は要素Eより低いので、要素Eは円管壁に熱を吐き出す。
即ち、このモデルによると、H点の円管壁の熱は、振動する流体(要素E)を通じて、高速にL点の円管壁に輸送される。仮に振動がない場合、熱は、H点からL点へと少しずつ連続的に移動するため、その熱伝導率は、流体を振動させた場合と比較して大きく劣る。換言すると、上述のように流体を振動させることで、見かけ上の熱伝導率は大きく向上する。
この熱輸送方法を用いれば、例えば、マイクロプロセッサから生じる熱を高速に拡散させることができ、ノート型パーソナルコンピュータにおけるマイクロプロセッサの発熱問題などを解決することができる。
また、この熱輸送方法によれば、振幅、周期等を変更することで、見かけ上の熱伝導率を、自由に変更することができる。この機能を利用すれば、例えば、流体の振動をオン/オフすることで、熱輸送をオン/オフ可能な熱スイッチなる新規のデバイスを作成することができ、大変便利である。
ところで、この熱輸送方法を用いた熱輸送システムは開発初期段階にあり、本発明者らは、熱輸送システムに適した流体駆動装置を開発する必要に迫られている。尚、周知の流体駆動装置としては、人工心臓等に用いられるポンプ装置(リニア振動アクチュエータ等)が知られている(例えば非特許文献1)。
大石由紀子、他3名,「長ストローク化を考慮したリニア振動アクチュエータの設計」電気学会マグネティックス・リニアドライブ合同研究会資料、社団法人電気学会、1994年10月、MAG−94−118、LD−94−63、p.1−7
しかしながら、上述した原理の熱輸送システムでは、流体を振動させるといった従来にはない手法を用いるので、既存の流体駆動の手法を単に熱輸送システムに適用しただけでは様々な問題が生じる。
例えば、既存の手法を用いて流体を振動させる場合には、図23(a)に示すように、ポンプ装置80を流路の片側に接続して、その流路の一端から流体5を振動させることが考えられる。しかしながら、このような手法を採用すると、圧力損失が大きいため、ポンプ装置80から遠く離れた末端の流体5を駆動することが困難になる。特に、流体5をポンプ装置80側に引き込む際には、末端の流体5を適切にポンプ装置80側に引き込むことができないため、流路内にキャビテーション(気泡)が生じてしまう。また、末端の流路を閉塞することができないため、流路の末端を、下方に向けることができないなど流路の形状に関して制約が生じる。
一方、図23(b)に示すように、流路の両端部に、夫々ポンプ装置80を設けて、2台のポンプ装置80で流体5を駆動するように熱輸送システムを構成すると、上述のキャビテーションなどを生じさせることなく、流体5を振動させることができる。しかしながら、このようなシステムでは、2台のポンプ装置80を用いるため、コスト面での欠点が大きい。また、2台のポンプ装置80を同期動作させる必要があるため、ポンプ装置80の制御が煩雑になるといった問題がある。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、流路内に充填された流体を、その流路方向に振動させるのに好適な流体駆動装置を提供することを第一の目的とし、その流体駆動装置を用いて流体を振動させることにより熱を輸送する高性能な熱輸送システムを提供することを第二の目的とする。
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、流路内に充填された流体を、その流路方向に振動させるための流体駆動装置であって、可動子と、その可動子を収容する可動子収容部と、可動子を往復運動させるための駆動手段と、を備える。
可動子収容部は、流路の両端部に連通された空間を備えており、可動子を摺動自在に収容すると共に、流路内の流体を、可動子の摺動方向両端部と流路の各端部との間に介在する上記空間に収容する。駆動手段は、可動子を可動子収容部内で摺動方向に往復運動させることで、可動子両端部に隣接する上記空間に収容された流体を可動子に駆動させる。即ち、本発明の流体駆動装置は、駆動手段を用いて可動子を往復運動させることで、流路内に充填された流体を流路方向に振動させる。
このように構成された請求項1記載の流体駆動装置によれば、可動子の移動分だけ可動子収容部内の一端から流路に流体が吐き出され、他端から同量の流体が流路から吸引されるため、可動子を往復運動させても、流路内における流体の体積が変化せず、流路内にキャビテーションが生じない。従って、本発明の流体駆動装置によれば、キャビテーションを原因とする装置の振動、騒音等の発生を抑制することができ、流路内の流体を精度よく適切に振動させることができる。
また、本発明によれば、流体のポンプ機構を装置内に複数個設ける必要がなく、単一の可動子を可動子収容部内で往復運動させる程度で、適切に流路内の流体を振動させることができる。従って、本発明によれば、可動子を駆動するための駆動手段を複数個設ける必要がなく、複数のポンプ機構(図23(b)参照)が存在する場合に必要な駆動手段の同期等も必要ない。結果、本発明によれば、可動子の駆動制御を簡単に行うことができ、流体を振動させるのに好適な流体駆動装置を安価に提供することができる。
その他、本発明の流体駆動装置によれば、流路の両端が可動子収容部に連通されるため、流路及び可動子収容部によって密閉した空間を形成して、駆動対象の流体を、その密閉空間に収容することができ、流体の外部への流出を容易に防止することができる。
また、本発明によれば、可動子が往復運動しても、流体が存在する空間の体積が一定に保たれるため、上記密閉空間を形成しても、流路内の圧力が下がってキャビテーションが生じるなどといった現象が発生しない。従って、本発明の流体駆動装置は、流体を振動させて熱を輸送する熱輸送システムに好適な装置と言える。
尚、請求項1記載の流体駆動装置においては、例えば、可動子収容部を、筒状のシリンダで構成し、そのシリンダを流路の両端部に連通させればよい。このような構成にされた請求項2記載の流体駆動装置では、ピストンとして構成された可動子が、シリンダ内を、シリンダの軸線方向に沿って往復運動して、流路からシリンダ内に流入する流体を流路内へ送出する。この発明によれば、簡単な構成で請求項1記載の流体駆動装置を作成することができ、熱輸送システムに適した流体駆動装置を安価に提供することができる。
ところで、本発明の流体駆動装置においては、可動子に摺動材を設け、可動子収容部内壁と接する可動子の摺動面を、その摺動材で構成すると良い。このように構成された請求項3記載の流体駆動装置によれば、可動子収容部内壁に軸受を設けることなく、可動子をスムーズに駆動することができ、装置の低コスト化を図ることができる。また、装置の耐久性を向上させることができる。
尚、摺動材としては、テフロン(登録商標)、カーボン、或いはニッケルめっき材(
好ましくはニッケルリン(NiP)めっき材)等を用いることができる。特に熱輸送システムにおいては、熱輸送能力との関係から流体の種類に制限を受けるから、摺動能力の高い上記材料を用いると効果的である。
また、上記摺動材は、請求項4記載のように、可動子中央より摺動方向に沿って両側に対称的な位置の夫々に設けられると良い。請求項4記載の流体駆動装置のように、摺動材を可動子の中心より対称的な位置に一対設けて、その位置に可動子の摺動面を形成すれば、可動子の偏心を抑制することができる。従って、この流体駆動装置によれば、可動子を適切に摺動方向に往復運動させることができる。尚、摺動材は、可動子の両端部に設けられると一層好ましい。このようにすれば、偏心量を一層小さくすることができる。
また、本発明の流体駆動装置においては、請求項5記載のように、可動子に磁性体を設け、磁力によって可動子を往復運動させるように駆動手段を構成するとよい。このように構成された請求項5記載の流体駆動装置によれば、可動子収容部の外部に駆動手段を設けて、その駆動手段により可動子収容部内に磁界を形成し、可動子を往復運動させることができる。よって、本発明によれば、可動子収容部内において複雑な機構や電気的な構造を設けずに済み、短絡等を防止するためにシール材を多用する必要がなく、流体駆動装置を安価に製造することができる。
その他、この流体駆動装置には、請求項6記載のように、磁性体周囲に、摺動材を設けると良い。可動子の推力は、駆動手段により磁性体周囲に及ぼされることになるので、その磁性体周囲に摺動材を設けると、可動子をスムーズに駆動することができ、偏心量を小さくすることができる。
また、可動子には、上記磁性体として永久磁石を設けるのがよい。このように構成された請求項7記載の流体駆動装置によれば、高効率に可動子を駆動することができる。また、可動子に磁極を配置することで、可動子を所望の方向にスムーズに駆動することができる。
また、上記駆動手段は、請求項8記載のように、可動子収容部の可動子摺動方向に沿う側面を包囲する環状の励磁コイル、を備え、その励磁コイルを用いて可動子収容部内に磁束を形成し、可動子を磁力によって往復運動させる構成にすることができる。更に言えば、請求項8記載の流体駆動装置における駆動手段は、請求項9記載のように構成されると好ましい。
請求項9記載の流体駆動装置における駆動手段は、可動子収容部の可動子摺動方向に沿う側面を包囲する環状の励磁コイルと、その励磁コイル外周を包囲する磁路形成用のヨークと、により構成された電磁石を備える。ヨークは、励磁コイル外周に覆設されており、可動子収容部の側面に対向する磁極を形成する。駆動手段は、この電磁石により可動子収容部内において可動子摺動方向の磁束を発生させ、電磁石の磁極を周期的に反転させることにより、可動子を可動子収容部内で往復運動させる。
このように構成された請求項9記載の流体駆動装置によれば、可動子収容部内において複雑な機構や電気的な構造を設けずに済み、短絡等を防止するためにシール材を多用する必要がなく、流体駆動装置を安価に製造することができる。また、励磁コイルを用いるので、少ない部品点数で駆動手段を構成することができ、更には、可動子の駆動状態を自在に制御できる。
ところで、可動子に対し推力を効果的に作用させるためには、磁極が形成されるヨークと可動子の磁性体との間の距離を小さくするのが好ましく、薄肉材料を用いて可動子収容部を形成するのが好ましい。しかしながら薄肉材料を用いて可動子収容部を形成すると、ヨークの重量で可動子収容部に曲げ応力が働き、可動子収容部の耐久性が劣化する可能性がある。また可動子収容部内がヨークの重量によって変形すると、可動子の駆動に支障をきたす可能性がある。
従って、請求項9記載の流体駆動装置においては、ヨークを可動子収容部に対して非接触の状態で可動子収容部周囲に固定するヨーク接続材を、可動子収容部の両端部に固定するのが良い。このように構成された請求項10記載の流体駆動装置によれば、ヨークの重量を、可動子収容部(シリンダ)の両端で支えることができるので、ヨークの重量によって可動子収容部(シリンダ)に作用する曲げ応力を緩和することができる。その他、空隙を設けずに、可動子収容部と、電磁石のヨーク等を一体に成形することで、曲げ応力を抑制しても構わない。
また、請求項9,10記載の流体駆動装置における励磁コイルは、請求項11記載のように、可動子収容部の側面に対し空隙を有した状態で、ヨークに固定されるのが好ましい。発熱源となる励磁コイルを可動子収容部側面に接触させると、励磁コイルから発生した熱が内部の流体に伝導される。従って、その流体駆動装置の構成を、熱輸送システムに適用すると、熱輸送の性能が励磁コイルの発熱により影響される可能性がある。一方、請求項11記載のように、励磁コイルと可動子収容部との間に空隙を設ければ、励磁コイルから発生する熱が、可動子収容部に拡散しにくくなり、熱輸送システムの性能維持を図ることができる。
また、磁力によって可動子を往復運動させる手法を採用する場合には、可動子の振動中心においてエネルギー的に安定な点を形成することが難しいといった問題がある。特に、請求項9記載の流体駆動装置においては、励磁コイルが通電されていない状態であっても、可動子には、励磁コイルの軸線方向外側に存在する磁気的に安定な位置に移動しようとするディテント力が働く。
従って、本発明の流体駆動装置には、請求項12記載のように、可動子端部を付勢して、その可動子を、可動子収容部内の所定位置に摺動可能に配置するためのバネ材と、そのバネ材を、可動子収容部内において付勢力を有した状態で固定するためのバネ係止部と、を設けるのが好ましい。この流体駆動装置によれば、バネ材の付勢力により可動子を所定位置に安定して配置することができ、ディテント力を打ち消すことができる。尚、バネ材は、可動子の一端側に設けられていてもよいし、両端に設けられていてもよい。
その他、請求項5〜請求項12記載の流体駆動装置においては、可動子の摺動方向に沿う所定間隔離れた位置に、上記永久磁石を、同一種の磁極(N極若しくはS極)が対向するようにして、一対配置するのがよい。このように構成された請求項13記載の流体駆動装置によれば、可動子の摺動方向の両端側に同一種の磁極が配置されることになるから、可動子の一端側から他端側に流れる磁束を、駆動手段(例えば、請求項9記載の流体駆動装置が備える上記駆動手段)により形成すると、可動子の一端側で、反発力が働くと共に、可動子の他端側で吸引力が働く。従って、請求項13記載の流体駆動装置によれば、可動子を高効率で往復運動させることができる。
また、この可動子は、請求項14記載のように構成されると、組み立て性が良く、便利である。請求項14記載の流体駆動装置における可動子は、その可動子中央部を構成する可動子中央構成部材と、可動子端部を構成する可動子端部構成部材と、の間に永久磁石が介挿された状態で、螺子により、その可動子中央構成部材と、永久磁石と、可動子端部構成部材と、が連結されて構成される。このように可動子を構成すれば、永久磁石の位置決め、固定が簡単に行え、請求項13記載の可動子を簡単に作成することができる。従って、流体駆動装置を安価に製造することができる。
また、この流体駆動装置においては、可動子の中央より対称的な位置に一対の上記永久磁石を設けるのがよい。このように構成された請求項15記載の流体駆動装置によれば、偏心量を小さくすることができる。また、可動子の推力は永久磁石周囲において駆動手段により及ぼされることになるので、その永久磁石周囲に摺動材を設けると、可動子をスムーズに駆動することができる。
その他、請求項5〜7記載の流体駆動装置の駆動手段は、可動子収容部の可動子摺動方向に沿う側面を包囲する環状の励磁コイル、を一対備え、その一対の励磁コイルが可動子摺動方向に沿って並列配置され、上記一対の励磁コイルを用いて、可動子を磁力により往復運動させる構成にすることができる(請求項16)。また、この流体駆動装置は、請求項17記載のように構成することができる。
請求項17記載の流体駆動装置は、可動子が、可動子収容部内において、一方の励磁コイルにおける流路側の端部と、他方の励磁コイルにおける流路側の端部と、に包囲された領域内で、往復運動する構成にされている。このように流体駆動装置を構成すると、その装置を小型化することができ、更には、効率的に可動子を駆動することができる。
また、請求項1〜8,16,17記載の流体駆動装置においては、請求項18記載のように可動子を構成することができる。請求項18記載の流体駆動装置における可動子は、上記磁性体として、摺動方向の両端部に一時磁石を備え、その両端部に設けられた一時磁石の間に永久磁石を備える。このような構成の可動子は、特に請求項16,17記載の流体駆動装置に用いられるとよい。請求項18記載の可動子を、請求項16,17記載の流体装置に用いれば、精度よく可動子を往復運動させることができる。
その他、請求項16,17記載の流体駆動装置においては、可動子を請求項19記載のように構成するとよい。請求項19記載の流体駆動装置における可動子は、上記磁性体として、摺動方向の両端部に一時磁石を備え、その両端部に設けられた一時磁石の間に永久磁石を備えた構成にされている。また、この可動子における各一時磁石の可動子摺動方向の長さは、励磁コイルの可動子摺動方向の長さより短くされている。
このように構成された請求項19記載の流体駆動装置によれば、可動子の位置(摺動範囲内)に拘らず、可動子に対して概ね均一に推力を及ぼすことができ、可動子を精度よく規則的に往復運動させることができる。又、高い推力を均一に及ぼすことができることから、装置の小型化・省電力化を図ることができる。
尚、可動子に対して一層精度よく均一な推力を及ぼすためには、上記一時磁石の可動子摺動方向の長さを、励磁コイルの可動子摺動方向の長さの16%〜42%に設定すると好ましい。このように構成された請求項20記載の流体駆動装置によれば、可動子の位置に対する推力の分布を一層フラットにすることができ、可動子に対して、その可動子の位置に拘らず精度よく均一な推力を及ぼすことができる。
更に言えば、上記一時磁石の可動子摺動方向の長さは、励磁コイルの可動子摺動方向の長さの25%に設定すると良い。このように構成された請求項21記載の流体駆動装置によれば、可動子に対して一層均一な推力を及ぼすことができ、精度よく可動子を往復運動させることができる。
また、永久磁石については、他の部材より高い寸法精度を確保することが難しいので、請求項18〜21記載の流体駆動装置においては、可動子を請求項22記載のように構成すると良い。請求項22記載の流体駆動装置における可動子は、永久磁石が、可動子摺動方向に垂直な径方向について、上記一時磁石の最外面よりも可動子の中心側(内側)に設けられた構成にされている。
この流体駆動装置によれば、可動子に設けられた永久磁石が可動子収容部内壁に接触しないので、永久磁石の寸法誤差が、可動子の性能に直接的に影響を与えることはない。従って、この発明によれば、可動子の製造に用いる永久磁石の公差を大きくすることができる。
また、請求項18〜22記載の流体駆動装置においては、請求項23記載のように可動子を構成してもよい。請求項23記載の流体駆動装置における可動子は、永久磁石を収容するための筒状体を備え、その筒状体の内部に永久磁石が収容され、その永久磁石における可動子摺動方向の両端部に一対の一時磁石が対向配置された構成にされている。
請求項23記載の流体駆動装置によれば、筒状体の内部に永久磁石を収容するので、永久磁石の寸法誤差が大きくても、可動子の寸法を高い精度に保つことができる。つまり、永久磁石を、可動子表面に露出させた場合には、可動子の外形について、永久磁石の寸法精度に応じた個体差が生じるが、永久磁石を筒状体内に収容すれば、永久磁石が可動子の表面に露出されないので、可動子の外形を個体毎に均一にすることができ、流体駆動装置の性能を均一にすることができる。従って、この発明によれば、永久磁石の公差を大きくすることができる。また、永久磁石が可動子収容部内の流体と接触することで腐食が進むのを抑制することができる。よって、請求項23記載の流体駆動装置によれば、製品の歩留まり等を向上させることができ、耐久性が高く品質のよい製品を安価に提供することができる。
その他、可動子は、請求項24記載のように構成されてもよい。請求項24記載の流体駆動装置における可動子は、両端部の一時磁石と、その両端部の一時磁石を接続する接続体と、からなる可動子本体、を一体成型し、可動子本体の接続体を包囲するように永久磁石を設けてなるものである。接続体は、可動子摺動方向とは垂直な径方向の長さが一時磁石より小さくされている。
請求項24記載の流体駆動装置によれば、可動子本体の接続体部分に永久磁石を覆設する程度で、請求項18記載の可動子の構成を実現することができる。この際、永久磁石は、接続体によって位置決めされるから、簡単な組み立てで、精度よく永久磁石を所定の位置に配置することができる。即ち、可動子を請求項24記載のように構成すると、可動子の組み立て性が向上する。
また、この流体駆動装置においては、両端部の一時磁石の側面を結ぶ面と、接続体の側面と、の間に形成される空間に、永久磁石を収容することで、可動子を、永久磁石が可動子収容部内壁に接触しない構成とすることができる。従って、請求項24記載の流体駆動装置によれば、永久磁石の公差を大きくすることができ、高性能な流体駆動装置を安価に提供することができる。
その他、請求項18〜22記載の流体駆動装置における可動子は、請求項25記載のように構成されてもよい。請求項25記載の流体駆動装置における可動子は、永久磁石の両端に、一時磁石が回動可能に枢設された構成にされている。このように構成された流体駆動装置によれば、可動子を、可動子収容部の内壁に沿ってスムーズに往復運動させることができる。その他、永久磁石の公差を大きくすることができる。
また、請求項1〜8,16〜25記載の流体駆動装置は、請求項26記載のように構成されるとよい。請求項26記載の流体駆動装置は、可動子収容部の開口端に嵌合され、上記流路と可動子収容部とを連通するようにして、その流路の端部と可動子収容部とを接続する流路接続材と、流路接続材と可動子収容部の嵌合部位に介挿される弾性シール材と、を備える。この流体駆動装置において、流路接続材は、弾性シール材の弾性力によって可動子収容部に固定されている。
このように構成された請求項26記載の流体駆動装置によれば、流路接続材が可動子収容部に弾性シール材の弾性力によって固定されているので、流体が流路と可動子収容部との嵌合部位から流出するのを防止することができるばかりでなく、流路接続材に対して外力が加わった場合であっても、その外力を弾性シール材にて吸収して、外力が可動子収容部に及ぶのを抑制することができる。
従って、この発明によれば、可動子収容部の耐久性を向上させることができる。特に、可動子収容部が薄肉材料(薄肉配管等)で形成されている場合には、可動子収容部が破損しやすいから、そのような可動子収容部を持つ流体駆動装置に、本発明(請求項26)を適用すると、上述の効果が一層発揮される。
その他、請求項26記載の流体駆動装置は、請求項27記載のように構成されると良い。請求項27記載の流体駆動装置においては、流路接続材によって、励磁コイルが可動子収容部の側面に対し空隙を有した状態で固定されている。
このように構成された請求項27記載の流体駆動装置では、励磁コイルが、可動子収容部の側面と非接触の状態にされているので、励磁コイルから発生する熱が、可動子収容部に拡散しにくい。従って、請求項27記載の流体駆動装置によれば、請求項11記載の流体駆動装置と同様に、熱輸送システムの性能維持を図ることができる。また、励磁コイルの荷重が可動子収容部に直接的にかからないので可動子収容部の耐久性を向上させることができる。
また、請求項1〜8,16〜27記載の流体駆動装置においては、可動子収容部内に、可動子の往復運動によって発生する振動音を抑制するための振動音抑制部材を設けるとよい。このように構成された請求項28記載の流体駆動装置によれば、可動子が脱調した際に発生する振動音等を抑制することができる。尚、具体的には、可動子収容部の可動子摺動方向の両端部に、流路と可動子収容部とを連通する孔部を備えたゴム材・樹脂材などを嵌合すればよい。
その他、請求項1〜8,16〜27記載の流体駆動装置においては、可動子収容部内に、可動子の摺動範囲を規制するためのバネ材を設けるとよい。尚、バネ材は、通常時、可動子と接触しない構成にされてもよいし、常時、可動子と接触する構成にされてもよい。請求項29記載のように、バネ材を用いて可動子の摺動範囲を規制すれば、可動子が脱調するのを防止することができる。
また、磁力によって可動子を駆動する場合には、請求項6記載のように、磁力が作用する磁性体周囲に摺動材を設けると、上述したように、可動子をスムーズに駆動することができるが、その他の流体駆動装置についても同様のことが言える。
即ち、請求項3,8,9記載の流体駆動装置においては、摺動材を請求項30記載のように構成するとよい。請求項30記載の流体駆動装置における摺動材は、駆動手段の動作によって可動子に作用する力の作用点の周囲に設けられている。このように、力の作用点の周囲に摺動材を設けると、可動子をスムーズに駆動することができるので、装置の耐久性を向上させることができる。また、請求項6記載の流体駆動装置と同様に、偏心量を小さくすることができる。
また、請求項1〜30記載の流体駆動装置においては、可動子の表面に溝を形成すると良い。更に言えば、溝は、請求項31記載のように、可動子の摺動方向両端部から中央部に向けて形成すると良い。このように溝を、可動子の中央部から摺動方向の両端部に向けて形成すると、可動子(具体的には摺動材)の磨耗粉が、可動子周辺に滞留して可動子がロックされてしまう(止まってしまう)のを防止することができる。従って、この発明によれば、可動子の磨耗による装置の性能劣化を抑えることができて、耐久性が高く高性能な流体駆動装置を提供することができる。
また、更に具体的に言えば、上記可動子表面の溝は、可動子の摺動方向に沿う側面を周回する螺旋溝にされると良い。このように構成された請求項32記載の流体駆動装置によれば、溝が螺旋形状にされているので、可動子が、往復運動時に、摺動方向を軸にして回転する。従って、この流体駆動装置によれば、磨耗粉が可動子周辺に滞留するのを一層確実に防止することができて、可動子の運動が磨耗粉によって妨害されるのを一層抑えることができる。
その他、本発明の流体駆動装置においては、請求項33記載のように、可動子収容部における可動子の摺動方向に垂直な断面の面積を、流路の断面積より大きくするのが好ましい。このように可動子収容部を構成すれば、可動子の振幅に対して、流路内の流体の振幅を大きくすることができる。結果、この流体駆動装置を用いれば、熱輸送システムにおいて、熱輸送量を向上させることができる。
以上、流体駆動装置について説明したが、本発明の流体駆動装置を、熱輸送システムに用いれば、熱輸送の性能を効果的に向上させることができる。
請求項34記載の熱輸送システムは、請求項1〜請求項33のいずれかに記載の流体駆動装置と、その流体駆動装置の可動子収容部に連通する流路を備え、流体駆動装置の動作によって流路内で振動する流体と熱交換して、外部の熱源から流体に供給される熱を、低温部へと輸送する熱輸送体と、を備えるものである。
この熱輸送システムによれば、流体駆動装置を用いて、流路内の流体を効果的に振動させることができ、外部の熱源から流体に供給される熱を、効率的に低温部へと輸送することができる。従って、本発明の熱輸送システムによれば、熱輸送の性能を大幅に向上させることができる。
その他、請求項35記載のように熱輸送体を構成すれば、さらに熱輸送の効率を高めることができる。請求項35記載の熱輸送システムにおける熱輸送体は、隣接する流路で流体の移動方向が互いに逆方向となる構成にされており、流体駆動装置の動作によってその流路内で振動する流体と熱交換して、流体が有する熱を隣接する流路の流体に輸送し、外部の熱源から流体に供給される熱を、低温部へと輸送する。尚、隣接する流路は、一本の流路を蛇行させることで構成されてもよいし、複数本の流路を並列に配置することで構成されてもよい。
このように構成された請求項35記載の熱輸送システムによれば、隣接する流路で流体が互いに逆方向に振動するので、隣接する流路に介在する熱輸送体の壁面は、一方の面で、高温部から搬送されてきた要素に晒され、他方の面で低温部から搬送されてきた要素に晒されることになる(図24参照)。従って、その空間では、流路が隣接されていない場合に比べて、温度が急勾配となる。結果、隣接する流体の間では、効果的に熱が移動され、熱輸送の性能が向上するのである。尚、本発明の流体駆動装置は、熱輸送システムに活用されることを主目的として構成されたものであるが、この用途に限定されるものではない。
以下に本発明の実施例について、図面とともに説明する。
図1は、本発明が適用された第一実施例の熱輸送システム1の構成を表す説明図である。
図1に示す本実施例の熱輸送システム1は、発熱体3の冷却システムとして機能するものである。この熱輸送システム1は、本発明が適用された流体5を振動させるための流体駆動装置10と、その流体駆動装置10に繋がる流路23を備える熱輸送デバイス20と、から構成される。
熱輸送デバイス20は、熱輸送デバイス本体21と、その熱輸送デバイス本体21に形成された流路23の両端部23a,23bの夫々を流体駆動装置10に接続するための一対の接続管31と、から構成される。熱輸送デバイス本体21は、蛇行形状の流路23内に流体5が充填されたプレート状のものであり、その長手方向の一端に、放熱部25を備える。放熱部25は、流路23内に充填された流体5を冷却するものである。一方、熱輸送デバイス本体21の他端には、冷却対象の発熱体3(電子計算機に用いられるマイクロプロセッサ等の電子部品)が配置される。
この熱輸送デバイス本体21は、高い熱伝導率を示す銅やアルミニウム等の金属プレートの積層体として構成されている。各金属プレートには、エッチング処理により、上記蛇行形状の流路として機能する溝が形成され、これら金属プレートの積層によって、当該熱輸送デバイス本体21内には多層の流路23が形成される。尚、各金属プレートは、その厚み方向に積層され、ろう付け又は熱圧着されて結合される。
具体的に、当該熱輸送デバイス本体21内の流路23は、図2(a)に示すように4層の流路231,233,235,237で構成されている。尚、図2(a)は、熱輸送デバイス本体21における厚み方向の断面構成を表す図である。また、図2(b)は、熱輸送デバイス本体21のA−A'断面図、図2(c)は、熱輸送デバイス本体21のB−B'断面図である。その他、図3は、熱輸送デバイス本体21における最上層の流路231の構成を表す斜視図である。
図2(b)及び図2(c)に示すように、各層の流路23は、一本の蛇行流路により構成されており、隣り合う流路23における流体5の移動方向が逆方向となるようにされている。また特に、冷却対象の発熱体3上部の流路23は、熱輸送デバイス本体21の底部21aに向けられている。
即ち、本実施例では、放熱部25側から発熱体3側に向けて当該熱輸送デバイス本体21の底面に対し平行に延びる流路23を、冷却対象の発熱体3が配置される熱輸送デバイス本体21の端部において、熱輸送デバイス本体21の底部21aに向け、発熱体3に隣接する流路を板状の発熱体3に対して垂直に配置すると共に、蛇行流路の折り返し部23cを発熱体3に面する部位に配置している。この構成により本実施例では、流路23内の流体5のうち発熱体3近傍に位置する流体5を、発熱体3に向けて衝突するかのごとく振動変位させる。
一方、流体5を振動させるための流体駆動装置10は、上記各層の流路の端部に繋がる一対の接続管31に接続されている。図4は、本実施例の流体駆動装置10の外観図であり、図4(a)は、流体駆動装置10の側部の構成を表す説明図、図4(b)は、矢印C方向から見た流体駆動装置10の端部の構成を表す説明図である。また、図5は、流体駆動装置10のD−D'断面図である。その他、図6は、D−D'断面の一部を拡大して表した流体駆動装置10の一部拡大断面図である。
図5に示すように、本実施例の流体駆動装置10は、接続管31を通じて熱輸送デバイス本体21の上記各層の流路231,233,235,237の両端部23a,23bに連通された筒状のシリンダ41を備える。即ち、一対の接続管31は、夫々、シリンダ41の端部と連通されるようにして、流体駆動装置10に接続されている。このシリンダ41は、シリンダ軸線方向に沿って摺動可能な単一のピストン43を自身内部に備えている。また、ピストン43の摺動方向に垂直なシリンダ41の断面積は、上記接続管31及び熱輸送デバイス21の流路23の断面積より大きくされている。
一方、ピストン43は、シリンダ41より短く構成されており、シリンダ41内においては、ピストン43の摺動方向両端部と接続管31の各端部との間に介在する空間45に接続管31から流れ込む流体5が充填される。
また、シリンダ41の軸線方向に沿うシリンダ側面の周囲には、そのシリンダ中央部においてシリンダ41の側面を包囲する中空円筒状の励磁用ソレノイドコイル47が設けられている。このソレノイドコイル47は、コイルボビン48に導線49が巻回されてなるものであり、コイルボビン48の内径は、シリンダ41の外径より若干大きくされている。このソレノイドコイル47は、コイルボビン48がシリンダ41側面に接触しないようにされて、ソレノイドコイル47の外周を包囲する磁路形成用のヨーク51に固定される。
ヨーク51は、一対のヨーク構成体51a,51bから構成されている。ヨーク構成体51a,51bは、一端が開口された有底筒状のものであって、底部中心にシリンダ41を挿通するための孔部51cを備えるものである。このヨーク構成体51a,51bの孔部51cは、シリンダ41の外径より若干大きくされている。
ヨーク51は、上記構成の一対のヨーク構成体51a,51bの開口端が連結されて構成され、その状態でソレノイドコイル47外周全体を包囲し、コイルボビン48に嵌合されてソレノイドコイル47を内部に固定する。尚、ヨーク構成体51bには、ソレノイドコイル47を構成する導線49の両端を、外部に引き出すための引出部51dが二つ設けられている。また、このソレノイドコイル47には、当該ソレノイドコイル47に交流電圧を印加して、ソレノイドコイル47を励磁するための駆動回路53が電気的に接続されている。そして、ヨーク51は、シリンダ41の側面と接触しないようにされて、シリンダ41の両端部に嵌合される一対のシリンダキャップ55に螺子止めされる。
シリンダキャップ55は、一端が開口された有底筒状のものであり、開口端にフランジ部55aを備えたものである。シリンダキャップ55の内径は、概ねシリンダ41の外径に等しくされており、底部の中央には、接続管31を挿通するための孔部55bが形成されている。この一対のシリンダキャップ55は、夫々、開口端側から、シリンダ41の端部に嵌合され、フランジ部55aに取り付けられた螺子57を介してヨーク51に固定される。
即ち、このシリンダキャップ55は、シリンダ41の端部に嵌合されて、そのシリンダ41の端部に固定され、ヨーク51を、シリンダ41に対して非接触の状態で、シリンダ41の側面周囲に固定する。従って、ヨーク51に固定されるソレノイドコイル47は、シリンダ41の側面との間に空隙を有した状態、即ち、シリンダ41に対し非接触の状態にて、そのシリンダ側面周囲に配置される。
尚、シリンダキャップ55の内壁には、Oリング59を収容するためのリング状の溝55cが設けられている。このOリング59は、シリンダ41の両端から漏れ出る流体5がソレノイドコイル側に浸入するのを防止するためのものである。
その他、シリンダ41内におけるピストン43両側の空間45には、シリンダキャップ55が取り付けられる前に、一対のコイルバネ61と、バネ係止材63と、が収容される。尚、バネ係止材63は、コイルバネ61をバネ力を発揮させた状態でシリンダ41内に固定するためのものである。
このコイルバネ61は、シリンダ41中央部に(具体的には、ソレノイドコイル47の中心とピストン43の中心が一致するように)ピストン43を摺動可能な状態で配置するためのものである。コイルバネ61は、シリンダキャップ55の底部で固定されるバネ係止材63とピストン43の端部との間に挟まれて、ピストン43の端部からその中心方向に付勢力を及ぼした状態で、シリンダ41内に固定される。尚、バネ係止材63は、シリンダ41内径と同径の円盤状であって、その中心部に接続管31と同程度の孔部63aを有したものである。
次に、ピストン43の構成について説明することにする。尚、図7は、ピストン43を構成する各部材を展開して表したピストン43の展開図である。本実施例の流体駆動装置10に用いられるピストン43は、当該ピストン43の中央部を構成するピストン中央構成体71と、ピストン43の端部を構成する一対のピストン端部構成体73と、そのピストン中央構成体71及びピストン端部構成体73の間に介挿される一対の永久磁石75及び摺動材(テフロン(登録商標)製)77と、から構成されている。尚、摺動材としては、その他にカーボン、或いはニッケルめっき材(ニッケルリンめっき材)を用いることができる。
永久磁石75は、軸線に沿って孔部75aを有する円柱形状ものであって、軸線に沿う両端部に磁極(N極/S極)を有するものである。この永久磁石75の外径は、ピストン43の径より小さくされている。
一方、ピストン端部構成体73には、この永久磁石75の孔部75aに挿通されて、ピストン中央構成体71の両端に設けられた螺子孔71aに螺合される螺子部73aが設けられている。また、ピストン端部構成体73のピストン中央構成体71側の端部には、摺動材77(具体的には、すべり軸受材)を嵌合するための小径部73bが形成されている。この小径部73bは、上記永久磁石75と同様にピストン43の径より小さくされている。尚、摺動材77を嵌合するための小径部71bは、ピストン中央構成体71の両端にも設けられている。
このピストン端部構成体73、ピストン中央構成体71、永久磁石75、及び、摺動材77は、ピストン端部構成体73の螺子部73aに永久磁石75が挿通され、更に摺動材77が小径部73bに嵌合された状態で、その螺子部73aがピストン中央構成体71の螺子孔71aに螺合されて、互いに連結される。
このように構成されるピストン43は、自身中央より摺動方向に沿って両側に対称的な位置に、一対の摺動材77を備え、そのピストン43側面に設けられた摺動材77の内側に永久磁石75を備える構成にされる。また、シリンダ41の内壁と接するピストン43の摺動面は、摺動材77にて構成される。そして、一対の永久磁石75は、ピストン43の中央より対称的な位置において、互いに同一種の磁極(S極)が対向されるように配置される。
以上、流体駆動装置10及び熱輸送デバイス20の構成について説明したが、以下には、それらの動作説明をする。
上述のようにソレノイドコイル47には交流電圧が印加されるため、駆動回路53により、ソレノイドコイル47を包囲するヨーク51の孔部51c内面(即ち、ヨーク51のシリンダ41に対向する面)には、磁極としてのN極及びS極が交互に周期的に生成される。この際、ソレノイドコイル47の一端側に位置するヨーク51の孔部51cにはN極が形成され、ソレノイドコイル47の他端側に位置する孔部51cにはそれとは反対のS極が形成される。
従って、シリンダ41の内部では、ピストン43の摺動方向(即ちシリンダ軸線方向)に沿って磁束が生成される。そして、ピストン43には、ヨーク51のN極からシリンダ端部方向の反発力が及ぼされ、それとは反対側に位置するヨーク51のS極からシリンダ中心方向の吸引力が及ぼされる。これによりピストン43は、ヨーク51のS極からN極側に摺動する。ピストン43は、この動作を、磁極の反転周期に合わせて繰り返す。
即ち、駆動回路53は、達成されるべきピストン43の振動周期に対応する周期の交流電圧をソレノイドコイル47に印加することにより、ソレノイドコイル47の中心を振動中心として、ピストン43をシリンダ41の軸線方向に沿って往復運動させる。
尚、ピストン43には、ソレノイドコイル47が通電されていない時においても、磁気的に安定な点を求めてソレノイドコイル47より軸線方向外側に移動しようとするディテント力が働くが、本実施例では、上述のコイルバネ61の付勢力が、そのディテント力を打ち消すようにピストン43に及ぼされるため、ピストン43は、ソレノイドコイル47の非通電時において、ソレノイドコイル47の中心に安定して配置される。
そして、ピストン43が往復運動すると、ピストン43の移動分だけシリンダ41の一端から流体5が吐き出されて、それが熱輸送デバイス本体21の流路23一端に流入し、流路23他端から同量の流体が吐き出される。このような原理により、熱輸送デバイス内の流体5は、ピストン43の往復運動に合わせて図2に示す矢印方向に振動する。尚、図2に示す矢印xは、流路端部23a側にピストン43が移動する場合の流体5の移動方向を示すものであり、矢印yは、流路端部23b側にピストン43が移動する場合の流体5の移動方向を示すものである。
熱輸送デバイス本体21は、この流体駆動装置10の動作によって自身内部の流路23内で振動する流体5と熱交換して、上述の原理(図10参照)により発熱体3から流体5に供給される熱を、高速に、低温部としての放熱部25へと輸送する。
即ち、熱輸送デバイス本体21内では、隣り合う流路23を仕切る仕切部22を挟んで温度が高い流体5と温度が低い流体5とが周期的に対向することとなるため、上述のごとく、温度の高い流体5が有する熱は、隣接する流路の温度の低い流体5に輸送され、その熱は流体5の振動により「蛙飛び」のように移動する。そして、発熱体3の温熱は熱輸送デバイス本体21の上方向に伝導しながら低温部としての放熱部25へと移動するのである。
この時、発熱体3近傍に位置する流体5は、発熱体3に向けて衝突するかのごとく振動変位するので、流路23内のうち発熱体3に対応する部位にて流体5が乱流状態で振動し、発熱体3に対応する部位に温度の低い流体5が断続的に衝突して発熱体3と流体5との熱伝達率が増大する。従って、本実施例では、乱流がない場合に比べて発熱体3から短時間に多くの熱を回収することができ、高速に熱を輸送することができる。
以上、本実施例の熱輸送システム1及び流体駆動装置10について説明したが、本実施例の流体駆動装置10においては、熱輸送デバイス本体21が構成する流路23の両端部23a、23bに連通されたシリンダ41内のピストン43の往復運動により、流路23内に充填された流体5が流路方向(図2矢印x、y方向)に精度よく振動する。そして、この際、流体5が存在する領域の体積が変化しないため、流体23内においてキャビテーション(気泡)などは発生しない。従って、この流体駆動装置10においては、キャビテーションの発生を原因とする装置の振動、騒音などをなくすことができる。
また、本実施例の熱輸送システム1では、単一のピストン43を、単一のソレノイドコイル47にて駆動して流体5を振動させることができるため、複数のポンプ装置80(図23(b)参照)が存在する場合に必要な駆動手段の同期等が必要とされず、ピストン43の駆動制御を簡単に行うことができる。従って、本実施例によれば、熱輸送システム1に好適な流体駆動装置10を安価に製造することができ、安価に熱輸送システム1を構築することができる。
その他、本実施例の流体駆動装置10によれば、シリンダ41の外部にソレノイドコイル47を設け磁力によってピストン43を往復運動させているので、ソレノイドコイル47の周囲にOリング59を配置して、シリンダ41端部から流出する流体5がソレノイドコイル47側に浸入するのを防止する程度で、電子回路の短絡等を防止することができる。また、シリンダ41内を簡単に密閉することができるため、流体5の外部への流出を容易に防止することができる。
また特に、本実施例では、同一種の磁極(S極)が対向するように永久磁石75を配置し、ピストン43の一方から吸引力が働き、ピストン43の他方から反発力が働くようにしているので、ピストン43について高い推力を得ることができ、ピストン43を少ない電力で効率的に往復運動させることができる。
その他、本実施例では、ピストン43中央より軸線方向に沿って両側に対称的な位置(両端)に摺動材77を設けて、その摺動材77で、シリンダ41内壁と接するピストン43の摺動面を、ピストン43の両端に形成しているので、ピストン43をスムーズに駆動することができ、装置の耐久性を向上させることができる。また、シリンダ41内壁に軸受などを設ける必要がなく、部品点数を減らすことができるので、装置の低コスト化を図ることができる。
また特に、本実施例では、ピストン43中央より軸線方向に沿って両側に対称的な位置(両端)に永久磁石75を配置し、摺動材77を、ソレノイドコイル47により発生する磁場によってピストン43の推力(磁力)が作用する永久磁石75周囲に一対設けて、その位置に摺動面を形成しているので、偏心量を充分に小さくすることができる。よって、この流体駆動装置10によれば、ピストン43を適切にシリンダ軸線方向に往復運動させることができ、装置の耐久性を向上させることができる。
また、本実施例では、ピストン43を構成する各部品を螺子止めにより軸方向に連結する手法を採用しているので、ピストン43の組み立て性がよく、安価に流体駆動装置10を作成することができる。
その他、本実施例では、ヨーク51及びソレノイドコイル47からなる電磁石の磁極近傍であるヨーク51の孔部51c内面と、シリンダ41側面との間に空隙を設け、ヨーク51及びシリンダ41が互いに接触しないようにしているので、ヨーク51の孔部51c内面を支点としてシリンダ41に曲げ応力が働くのを抑制することができる。特に、本実施例では、シリンダキャップ55によりヨーク51を保持しているので、ヨーク51の重量によってシリンダ41に強い曲げ応力がかかるのを抑制することができ、流体駆動装置10の耐久性を効果的に向上させることができる。
また、本実施例では、ソレノイドコイル47のコイルボビン48とシリンダ41とを非接触の状態にして、コイルボビン48とシリンダ41との間に空隙を設けているから、ソレノイドコイル47から発生する熱が、シリンダ41に拡散するのを抑制することができ、ソレノイドコイル47が発熱源となって発熱体3の冷却性能が劣化するのを抑制することができる。
その他、本実施例では、流路23に対してシリンダ41の断面積を大きくしているので、ピストン43の振幅に対して、流路23内の流体5の振幅を大きくすることができ、結果として、熱輸送システム1における熱輸送の性能を効果的に向上させることができる。
尚、本発明のヨーク接続材は、本実施例のシリンダキャップ55に相当し、熱輸送体は、熱輸送デバイス20に相当する。また、駆動手段は、ソレノイドコイル47とヨーク51とにより構成される電磁石と、それを駆動する駆動回路53と、により構成される。
図8は、第二実施例の熱輸送システム101の構成を表す説明図である。図8に示す第二実施例の熱輸送システム101は、流体駆動装置110と、その流体駆動装置110に繋がる流路23を備える熱輸送デバイス120と、から構成されている。
熱輸送デバイス120は、第一実施例と同一構成の熱輸送デバイス本体21(図2参照)と、その熱輸送デバイス本体21に形成された流路23の両端部23a,23bの夫々を流体駆動装置110に接続するための一対の接続管131と、から構成されている。熱輸送デバイス本体21の放熱部25とは反対側の端部には、第一実施例と同様に、冷却対象の発熱体3が配置される。
流体駆動装置110は、熱輸送デバイス本体21の各層の流路端部に繋がる一対の上記接続管131に接続されている。図9は、この流体駆動装置110の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図である。また、図10は、流体駆動装置110端部の拡大断面図であり、図11は、流体駆動装置110における右中央部の拡大断面図である。
図9に示すように、流体駆動装置110は、接続管131を通じて熱輸送デバイス本体21の上記各層の流路231,233,235,237の両端部23a,23bに連通された筒状のシリンダ141を備える。このシリンダ141は、シリンダ軸線方向に沿って摺動可能なピストン143を内側に備える。
ピストン143は、シリンダ141より短く構成されており、ピストン143の摺動方向(即ち、シリンダ141の軸線方向)に垂直なシリンダ141の断面積は、上記接続管131及び熱輸送デバイス本体21の流路23の断面積より大きくされている。このような構成のピストン143を収容するシリンダ141内においては、ピストン143の摺動方向両端部と、シリンダ141に連通する接続管131の各端部との間に介在する空間に接続管131から流れ込む流体5が充填される。
また、シリンダ141の軸線方向に沿う側面の周囲には、そのシリンダ141の中心位置より両側に、シリンダ141の側面を包囲する中空円筒状の励磁用ソレノイドコイル147が一対設けられている。この一対のソレノイドコイル147は、シリンダ141の軸線方向に沿って密に並列配置されている。
ソレノイドコイル147は、コイルボビン148に導線が巻回されてなるものであり、コイルボビン148の内径は、シリンダ141の外径より若干大きくされている。このソレノイドコイル147は、コイルボビン148がシリンダ141側面に接触しないようにされて、流体駆動装置110の両端部に位置するシリンダキャップ155に固定されている。
尚、ソレノイドコイル147は、円筒形状のケース150によって外周を被覆されている。また、ソレノイドコイル147を構成する導線は、図示しない引出部を通じて、外部に引き出され、駆動回路153に接続されている。
シリンダキャップ155は、流体駆動装置110の各端部に設けられており、接続管131及びシリンダ141に接続されている。各シリンダキャップ155は、第一のキャップ構成材156と、第二のキャップ構成材157と、から構成されている。
第一のキャップ構成材156は、シリンダ141の外径より若干大径にされた孔部156aと、ソレノイドコイル147が嵌合される第一嵌合部156bと、第二のキャップ構成材157が嵌合される第二嵌合部156cと、を備える。この第一のキャップ構成材156は、シリンダ141の端部を孔部156aで収容した状態で、第一嵌合部156bにてソレノイドコイル147と連結される。
また、第二のキャップ構成材157が第一のキャップ構成材156の第二嵌合部156cに嵌合されると、第一のキャップ構成材156は、シリンダ141側面と非接触の状態にされて、位置決めされる。この際、第一のキャップ構成材156に固定されたソレノイドコイル147も同様に、シリンダ141側面と非接触の状態にされ、シリンダ141側面と、ソレノイドコイル147及び第一のキャップ構成材156との間には、所定の空隙が形成される。
第二のキャップ構成材157は、第一のキャップ構成材156と同径の本体部より突出された挿入部157aを備える。挿入部157aは、シリンダ141の開口端から、シリンダ141内部に挿入されてシリンダ141に嵌合され、そのシリンダ141内側に収容される。この挿入部157aは、シリンダ141の内径より若干小径にされており、シリンダ141との嵌合部位に、Oリング158を収容するための溝部157bを備える。
シリンダ141内壁と挿入部157a外壁との間に介挿されるOリング158は、シリンダ141に充填された流体5の外部への流出を防止する弾性シール材としての役割を果たすと共に、第二のキャップ構成材157を取り付ける際、第二のキャップ構成材157に働く外力(ねじれ力)がシリンダ141に及ぶのを抑制する。尚、本実施例の第二のキャップ構成材157は、Oリング158の弾性力によってシリンダ141内に固定される。
この他、第二のキャップ構成材157は、接続管131と接続される開口形状の接続部157cを有し、接続部157cから、挿入部157aのピストン143側の端部までの流路を形成する貫通孔157dを備える。この貫通孔157dにより、シリンダ141内の流体5が充填された空間及び接続管131並びに熱輸送デバイス本体21の流路23は、互いに連通される。
また、挿入部157aは、円筒形状のストッパ159と嵌合されるストッパ装着部157eを備える。ストッパ装着部157eは、挿入部157aの他の部位よりストッパ159の厚みに相当する程度、小径にされている。
ストッパ159は、ストッパ装着部157eに嵌合されて、第二のキャップ構成材157に固定される。このストッパ159は、ゴム材からなり、ピストン143の往復運動時に(特に、ピストン143が脱調した場合などに)シリンダ141内で発生する振動を吸収して、それにより発生する振動音等を抑制する。尚、ストッパ159は、ゴム材に限らず、樹脂材(例えば、テフロン(登録商標))を用いて構成されてもよいし、ゴム材と金属材とを用いて構成されてもよい。
次に、ピストン143の構成について説明する。図12は、シリンダ141内に設けられたピストン143の構成を表す説明図であり、図12(a)は、ピストン143の平面図、図12(b)は、ピストン143の長手方向に垂直な断面の構成を表す概略断面図、図12(c)は、ピストン143の長手方向に沿う断面の構成を表す概略断面図である。
ピストン143は、円柱形状の永久磁石171と、その永久磁石171を収容する筒状収容体173と、永久磁石171の軸線方向両側に対向配置される一対の端部形成体175と、から構成されている。筒状収容体173は、ステンレス鋼などの金属材からなり中空の筒状体として構成されている。この筒状収容体173は、シリンダ141内壁と接触する側面全体に摺動材としてのニッケルリンめっき層173aを備えており、外径がシリンダ141の内径と略同一にされている。即ち、このピストン143の摺動面は、ニッケルリンめっき層173aにより構成される。
この筒状収容体173の内側に収容される永久磁石171は、筒状収容体173の内径よりも小さくされており、その軸線方向の長さは、筒状収容体173の軸線方向の長さよりも若干短くされている。このような構成の永久磁石171は、筒状収容体173の開口部に磁極(N極及びS極)が配置されるようにされて、筒状収容体173の中央部に収容される。また、筒状収容体173の端部には、永久磁石171の端面に接触するようにされて、端部形成体175が嵌合される。
端部形成体175は、鉄などの磁性体(強磁性体)からなり、磁場の中では、その磁場の影響を受けて一時的に磁性を帯び、一時磁石として機能する。この端部形成体175は、概ね円柱形状にされており、筒状収容体173に嵌合される小径部175aを一端に備え、その他の部位の外径は、永久磁石171の外径より大きく、筒状収容体173の外径より若干小さくされている。
また、端部形成体175は、その軸線方向の長さL2が、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1より短くされている。具体的に、端部形成体175の軸線方向の長さL2は、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%にされている。
また、端部形成体175は、その側面に、小径部175aが形成された端部から他方の端部(ピストン143の端部)側に延びる螺旋形状の溝175bを備える。具体的に、溝175bは、端部形成体175の軸線方向に沿う側面を周回するように複数本形成されている。
このような構成の端部形成体175は、小径部175aにて、永久磁石171が収容された筒状収容体173に嵌合され、溝175bは、ピストン143が完成した状態において、筒状収容体173の端部から、当該ピストン143の端部に向けて螺旋状に配置される。
尚、筒状収容体173、永久磁石171、及び、端部形成体175は、エポキシ樹脂系の接着材などを用いて互いに接着され固定される。この際には、永久磁石171が、筒状収容体173内で確実に固定され、又、流体5に接触しないように、筒状収容体173内の隙間は、漏れなく接着材にて充填される。その他、筒状収容体173、及び、端部形成体175は、溶接等で接合し固定してもよい。
このように構成された流体駆動装置110においては、駆動回路153が、ソレノイドコイル147に交流電圧を印加して、シリンダ141内に、シリンダ141の軸線に沿った正方向・負方向の磁束を交互に周期的に生成する。これによって、シリンダ141の軸線方向の一端にN極を備え、他端にS極を備える永久磁石171が内蔵されたピストン143は、磁束方向に摺動し、一対のソレノイドコイル147の境界地点を振動中心として磁力により周期的に往復運動する。
この際、本実施例のピストン143は、一対のソレノイドコイル147に囲まれたシリンダ141内側の領域RR1で振動する。即ち、ピストン143は、シリンダ141の軸線方向において、一方のソレノイドコイル147のシリンダキャップ155側(流路23側)の端部と、他方のソレノイドコイル147のシリンダキャップ155側(流路23側)の端部と、に包囲された領域RR1内で摺動する。
そして、ピストン143が往復運動すると、ピストン143の移動分だけシリンダ141の一端から流体5が吐き出されて、それが熱輸送デバイス本体21の流路23一端に流入し、流路23他端から同量の流体が吐き出される。このような原理により、熱輸送デバイス120内の流体5は、ピストン143の往復運動に合わせて図2に示す矢印方向(流路23に平行な流路方向)に振動する。
図13は、端部形成体175の軸線方向の長さL2と、ソレノイドコイル147からピストン143に及ぶ推力との関係を示したグラフである。尚、このグラフには、ピストン143が静止している場合にソレノイドコイル147からピストン143に及ぶ静推力を計測した結果を表す。
また図14(a)、図14(b)及び図14(c)は、振動中心をゼロ点とし、その振動中心を基準としたピストンの位置を横軸に表し、その位置にピストンがある場合にピストンに及ぶ推力を縦軸に表したグラフである。特に、図14(a)は、端部形成体175の軸線方向の長さL2が適値より長い場合のグラフであり、図14(b)は、端部形成体175の軸線方向の長さL2が適値である場合(端部形成体175の軸線方向の長さL2がソレノイドコイル147の16%〜42%である場合)のグラフであり、図14(c)は、端部形成体175が適値より短い場合のグラフである。
図13に示すように、ピストン143に及ぶ推力は、各端部形成体175の軸線方向の長さL2がソレノイドコイル147の長さL1の25%である場合に、最大となる。推力が最大となるように各端部形成体175の軸線方向の長さL2を、ソレノイドコイル147の長さL1の25%に設定すると、ピストン143を効率よく小さい電力で駆動することができる。従って、各端部形成体175の軸線方向の長さL2をソレノイドコイル147の長さL1の25%とすると、流体駆動装置の小型化・省電力化を図ることができる。
但し、図13からも理解できるように、各端部形成体175の軸線方向の長さL2がソレノイドコイル147の長さL1の16%〜42%である場合に得られる推力は、略最大である。このため、各端部形成体175の軸線方向の長さL2を、ソレノイドコイル147の長さL1の16%〜42%に収めれば、概ね、本実施例と同様の効果を得ることができる。
また、各端部形成体175の軸線方向の長さL2が、長すぎたり短すぎたりすると、ピストン対して、その位置に依らず均一な推力を及ぼすことができなくなるが、各端部形成体175の軸線方向の長さを、ソレノイドコイル147の長さの16%〜42%に設定すると、図14(b)に示すように、ピストンの摺動範囲(グラフに示す横軸−A〜A)の全域で、概ね推力が、ピストンの位置に依らず一定に働く。従って、本実施例によれば、ピストン143を効率よく適切に駆動することができる。
尚、端部形成体175の軸線方向の長さL2を適値より長くすると、図14(a)に示すように、推力がピストンの位置によって大きく変化するのは、端部形成体175の長さが大きくなると、ピストンが往復運動する際に、一の端部形成体175が、自身を包囲するソレノイドコイル147とは、別のソレノイドコイル147からも強く磁場の影響を受けるためである。
また、端部形成体175が適値より短すぎると、図14(c)に示すように、折り返し地点(A点、−A点)付近で推力が大きく落ち込むのは、ソレノイドコイル147の中心と端部との間に生じる磁場分布のばらつきによる影響を、端部形成体175によって緩和できなくなるためである。
以上に、熱輸送システム101及び流体駆動装置110の構成について説明したが、本実施例においては、熱輸送デバイス本体21が構成する流路23の両端部23a、23bに連通されたシリンダ141内においてピストン143が往復運動することにより、流路23内に充填された流体5が流路方向(図2矢印x、y方向)に振動するため、流体5が存在する領域の体積が変化せず、流体23内においてキャビテーション(気泡)等が生じない。従って、この流体駆動装置110によれば、キャビテーションの発生を原因とする装置の振動、騒音等をなくすことができる。
また本実施例では、シリンダ141の外部にソレノイドコイル147を設け、磁力によってピストン143を駆動するようにしているので、シリンダ141内部を簡単に密閉することができ、流体5の外部への流出を容易に防止することができる。また、電子回路の短絡等を防止することができる。
その他、本実施例によれば、ヨークを用いずに、ソレノイドコイル147内に形成した磁場を用いてピストン143を駆動するようにしているので、ピストン143にはディテント力が働かず、ピストン143に精度よく均一に推力を及ぼすことができる。従って、本実施例の流体駆動装置110によれば、精度よく適切にピストン143を磁力によって駆動することができる。
また、本実施例では、ピストン143を構成する永久磁石171を筒状収容体173に収容することにより、永久磁石171の寸法誤差がピストン143の外形に影響を与えないようにし、永久磁石171の許容公差を大きくした。従って、本実施例によれば、製品を安価に製造することができる。
また、本実施例では、永久磁石171を筒状収容体173に収容することにより、永久磁石171が流体5に触れないようにし、永久磁石171が流体5によって腐食するのを防止するようにした。従って、本実施例によれば、流体駆動装置110の耐久性を向上させることができる。
その他、本実施例では、ピストン143表面における摺動材(ニッケルリンめっき層)が形成された領域からピストン143の軸線方向の両端部に向けて、螺旋形状の溝175bを設け、ピストン143の磨耗粉がピストン143の振動中心付近で滞留するのを抑制するようにした。従って、この流体駆動装置110によれば、磨耗粉の滞留が原因でピストン143がスムーズに摺動しなくなったり、ピストン143が動作しなくなってしまうのを防止することができる。
また、本実施例では、接続管131とシリンダ141とを接続する流路接続材としての第二のキャップ構成材157を、Oリング158の弾性力によってシリンダ141内に固定するようにした。従って、本実施例によれば、第二のキャップ構成材157を取り付ける際などに、シリンダ141に対し、強い外力(ねじれ力等)が働いて、シリンダ141が変形・破損してしまうのを防止することができる。
その他、本実施例によれば、ソレノイドコイル147を、シリンダ141の軸線方向に沿う側面から離して配置しているため、ソレノイドコイル147から発生する熱がシリンダ141に伝わることにより熱輸送システム101の性能が劣化するのを、十分に抑えることができる。
また、本実施例では、流路23に対してシリンダ141の断面積を大きくしているので、ピストン143の振幅に対して、流路23内の流体5の振幅を大きくすることができ、結果として、熱輸送システム101における熱輸送の性能を効果的に向上させることができる。また、本実施例では、熱輸送デバイス120を用いることにより、熱輸送システム101において、上述した第一実施例と同様の効果を得ることができる。
尚、本実施例において、熱輸送体は、熱輸送デバイス120に相当する。また、駆動手段は、一対のソレノイドコイル147と、それを駆動する駆動回路153と、により構成される。また、振動音抑制部材は、ストッパ159に相当する。
また、流体駆動装置110においては、上記構成のピストン143に代えて、他の構成のピストンを用いることができる。図15は、第一変形例のピストン180の構成を表す説明図である。図15(a)は、ピストン180の構成を表す平面図であり、図15(b)は、ピストン180の長手方向に垂直な断面の構成を表す概略断面図であり、図15(c)は、ピストン180の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図である。
この第一変形例のピストン180は、上述したピストン143と概ね同一構成にされているが、このピストン180には、端部形成体175に代えて、異なる形状の溝を備える端部形成体185が用いられている。即ち、ピストン180は、ピストン143と同一の構成の永久磁石171と、その永久磁石171を収容する筒状収容体173と、を備える共に、永久磁石171の両側に配置される一対の端部形成体185、を備える。
永久磁石171は、筒状収容体173の開口部に磁極(N極及びS極)が配置されるようにされて、筒状収容体173の中央部に収容され、筒状収容体173の端部には、永久磁石171の端面に接触するように、端部形成体185が嵌合される。
端部形成体185は、鉄などの磁性体(強磁性体)からなり、一時磁石として機能する。この端部形成体185は、概ね円柱形状にされており、筒状収容体173に嵌合される小径部185aを一端に備える。また、端部形成体185は、その軸線方向の長さL2が、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1より短くされている。具体的に、端部形成体185の軸線方向の長さL2は、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%にされている。
また、端部形成体185の側面には、ピストン180の軸線方向に対し平行に延びる複数本の溝185bが、小径部185aが形成された端部から他方の端部に向けて形成されている。この端部形成体185は、小径部185aにて、永久磁石171が収容された筒状収容体173に嵌合される。
従って、溝185bは、ピストン180が完成した状態において、筒状収容体173の端部から当該ピストン143の端部に向けて(換言するとピストン180の中央部からピストン180の端部に向けて)直線状に配置される。このような構成のピストン180では、ピストン143と比較して、溝185bの加工が容易であり、安価に製品を製造できるといったメリットがある。
また、図16は、第二変形例のピストン190の構成を表した説明図である。尚、図16(a)は、ピストン190の構成を表す平面図であり、図16(b)は、ピストン190の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図であり、図16(c)は、ピストン190の長手方向に垂直な断面の構成を表す概略断面図である。
第二変形例のピストン190は、ピストン190の両端部を構成する一対の端部形成体195と、端部形成体195間を接続する接続体194と、が一体に形成されたピストン本体193を備えると共に、軸線方向に垂直な断面が半円形状の永久磁石半割体191を、一対備える。
端部形成体195は、鉄などの磁性体(強磁性体)からなり、一時磁石として機能する。また、この端部形成体195は、概ね円柱形状にされており、円筒形状の摺動材192を収容するための小径部195aを、接続体194側に備える。
端部形成体195の外径は、シリンダ141の内径より若干小径にされており、各端部形成体195の軸線方向の長さL2は、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%にされている。また、小径部195aの軸線方向の長さは、摺動材192の軸線方向の長さと同程度にされている。その他、摺動材192の外径は、シリンダ141の内径と同程度にされている。即ち、当該ピストン190においては、ピストン190の中心より軸線方向両側に対称的な位置に設けられた摺動材192により摺動面が構成される。
また、この端部形成体195には、小径部195aから接続体194側とは反対側の端部(即ち、ピストン190の端部)に延びる螺旋形状の溝195bが形成されている。即ち、溝195bは、端部形成体195を周回するように形成されている。
一方、接続体194は、端部形成体195より小径にされている。具体的に、端部形成体195の半径は、接続体194の半径に、永久磁石半割体191の径方向の厚みを加えた長さよりも若干大きくされている。この接続体194には、その外周から上記一対の永久磁石半割体191が接着される。一対の永久磁石半割体191は、互いに重ね合わされると、内径が接続体194外径と同程度で、外径が端部形成体195の外径よりも若干小径の円筒形状の永久磁石を構成する。
上記構成のピストン本体193における接続体194周囲に永久磁石半割体191を覆設すると、ピストン190は完成する。完成後におけるピストン190において、永久磁石半割体191は、ピストン190の摺動方向(ピストン190の軸線方向)に垂直な径方向について、一対の端部形成体195の側面を結んだ面(端部形成体195の最外面)よりも、ピストン190の中心側に配置される。
このように構成されたピストン190によれば、組み立てが容易で、効率よく製品を製造できるばかりでなく、永久磁石半割体191がシリンダ141に接触しないので、永久磁石半割体191の許容公差を大きくすることができ、製品の信頼性を高めることができる。
尚、このピストン190においては、摺動材192を、端部形成体195から突出させるようにしたが、摺動材192に代えて、端部形成体195側面にニッケルリンめっきを施してもよい。図17は、変形例のピストン190’の構成を表した説明図である。特に、図17(a)は、ピストン190’の構成を表す平面図であり、図17(b)は、ピストン190’の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図であり、図17(c)は、ピストン190’の長手方向に垂直な断面の構成を表す概略断面図である。
変形例のピストン190’は、端部形成体195’に小径部195aを備えていないこと、摺動材192の代わりに、端部形成体195’の側面全体にニッケルリンめっき層196を備えていること、を除けば、概ね上述のピストン190と同一構成である。
このピストン190’では、めっき処理によって、端部形成体195’の側面全体に摺動材としてのニッケルリンめっき層196を形成しているので、その製造がピストン190と比較して簡単である。
その他、図18は、第三変形例のピストン200の構成を表した説明図である。尚、図18(a)は、ピストン200の構成を表す平面図であり、図18(b)は、ピストン200の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図である。
第三変形例のピストン200は、円柱形状の永久磁石201と、その永久磁石201の軸線方向両端部に枢設され、ピストン200の端部を構成する一対の端部形成体205と、を備える。
各端部形成体205は、鉄などの磁性体(強磁性体)からなり、一時磁石として機能する。また、この端部形成体205は、概ね円柱形状にされており、円筒形状の摺動材202を収容するための小径部205aを、永久磁石201側に備える。
この端部形成体205の外径は、シリンダ141の内径より若干小径にされており、各端部形成体205の軸線方向の長さL2は、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%にされている。また、小径部205aの軸線方向の長さは、摺動材202の軸線方向の長さと同程度にされている。また、摺動材202の外径は、シリンダ141の内径と同程度にされている。即ち、ピストン200においては、ピストン200の中心より軸線方向両側に対称的な位置に設けられた摺動材202により摺動面が構成される。
その他、この端部形成体205には、小径部205aからピストン200の端部に延びる螺旋形状の溝205bが形成されている。即ち、溝205bは、端部形成体205を周回するように形成されている。また、永久磁石201は、端部形成体205より小径にされており、軸線方向両側の端面で、端部形成体205に対し、軸線から所定角度の回動可能に接続されている。
このように構成されたピストン200によれば、端部形成体205と永久磁石201とが、回動可能に接続されているので、端部形成体205は、シリンダ141内壁に沿ってスムーズに摺動する。従って、このピストン200を用いれば、高性能な流体駆動装置を製造することができる。また、永久磁石201は、端部形成体205より小径であればよく、その寸法誤差はある程度許容されるため、本実施例によれば、永久磁石201の公差を大きくすることができ、製品を安価に製造することができる。
尚、ピストン190と同様、このピストン200においては、摺動材202を用いる代わりに、端部形成体205側面に、ニッケルリンめっき層を形成してもよい。図19は、変形例のピストン200’の構成を表す説明図である。特に、図19(a)は、ピストン200’の構成を表す平面図であり、図19(b)は、ピストン200’の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図である。
変形例のピストン200’は、端部形成体205’に小径部205aを備えていないこと、摺動材202の代わりに、端部形成体205’の側面全体にニッケルリンめっき層206を備えていること、を除けば、概ね上述のピストン200と同一構成である。
このピストン200’では、ニッケルめっき処理によって、端部形成体205’の側面全体に摺動材としてのニッケルリンめっき層206を形成しているので、その製造がピストン200と比較して簡単である。
尚、上述したピストン180,190,190’,200,200’における端部形成体の軸線方向の長さL2は、ピストン143と同様の理由により、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%である必要はなく、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の16%〜42%に設定しても構わない。
図20は、第三実施例の流体駆動装置310の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図である。第三実施例の流体駆動装置310は、上述した熱輸送デバイス120と共に、熱輸送システムを構成する。この熱輸送システムは、図8に示す流体駆動装置110を、流体駆動装置310に置換した程度であるので、ここでは、流体駆動装置310を用いた熱輸送システムの構成を図示しないことにする。
第三実施例の流体駆動装置310は、第二実施例の流体駆動装置110に、フィルタ320を設けたものである。フィルタ320は、流体5を通過させるが、ピストン143の磨耗により生じる磨耗粉の通過を阻止する能力を備えるものであり、シリンダ141内に一対設けられている。
各フィルタ320は、ストッパ159よりピストン143側であって、ピストン143の摺動範囲よりシリンダ141両端側に外れた位置に設けられており、ピストン143から発生する磨耗粉がストッパ159の孔部を通じて流路5内に侵入するのを防止する。このフィルタ320を備える流体駆動装置310によれば、流路5内に磨耗粉が滞留しないので、熱輸送システムの耐久性を向上させることができる。即ち、第三実施例によれば、信頼性の高い製品を提供することができる。
尚、第三実施例の流体駆動装置310においても、ピストン143に代えて、第二実施例の流体駆動装置110の変形例として紹介したピストン180,190,190’,200,200’を用いることができる。また、端部形成体の軸線方向の長さL2は、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%である必要はなく、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の16%〜42%に設定しても構わない。
図21は、第四実施例の流体駆動装置410の長手方向に沿った断面の構成を表す概略断面図である。第四実施例の流体駆動装置410は、上述した熱輸送デバイス120と共に、熱輸送システムを構成する。この熱輸送システムは、図8に示す流体駆動装置110を、流体駆動装置410に置換した程度であるので、ここでは、流体駆動装置410を用いた熱輸送システムの構成を図示しないことにする。
第四実施例の流体駆動装置410は、第二実施例の流体駆動装置110が備えるストッパ159に代えて、コイルバネ420を一対設けたものである。ソレノイドコイル147を用いて磁力でピストン143を駆動する際には、なんらかの原因で、ピストン143を一時的に駆動制御できなくなり、ピストン143が本来の摺動範囲から外れて運動してしまう可能性がある。本実施例では、ピストン143が適切に往復運動するように、ピストン143の摺動範囲RR2よりシリンダ141端部側に、コイルバネ420を設けて、ピストン143が本来の摺動範囲RR2から外れそうになった場合に、コイルバネ420の弾性力で、その運動を修正するようにしている。
即ち、本実施例の流体駆動装置410においては、シリンダ141軸線方向に弾性力を発揮するコイルバネ420が、ピストン143の摺動範囲RR2に隣接して設けられているため、ピストン143の摺動は、コイルバネ420によって、一定度の範囲内に規制され、ピストン143は、一定度以上シリンダ141端部側に移動しないようにされる。
従って、第四実施例の流体駆動装置410によれば、ピストン143を常時適切に駆動できて、製品の性能アップを図ることができる。また、第四実施例の流体駆動装置410によれば、バネ材(コイルバネ420)を用いているので、脱調したときの振動・騒音等を防止することができる。
尚、第四実施例の流体駆動装置410においても、ピストン143に代えて、第二実施例の流体駆動装置110の変形例として紹介したピストン180,190,190’,200,200’を用いることができる。また、端部形成体の軸線方向の長さL2は、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の25%である必要はなく、ソレノイドコイル147の軸線方向の長さL1の16%〜42%に設定しても構わない。
以上に、第一実施例〜第四実施例の流体駆動装置10,110,310,410及びそれを用いた熱輸送システムの構成について説明したが、本発明の流体駆動装置及び熱輸送システムは、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例の流体駆動装置10,110,310,410は、熱輸送システムに活用されることを主目的として構成されたものであるが、この用途に限定されるものではない。また、第一実施例では、ヨーク51と、シリンダ41とを別体で構成し、それらの間に空隙を設けるようにしてシリンダ41に曲げ応力が及ばないようにしたが、空隙を設ける代わりに、シリンダ41とヨーク51とを一体に成形することで曲げ応力を抑制するようにしても構わない。
その他、ピストン43の側面周囲には、ラビリンスシールを設けて、流体5が、シリンダ41とピストン43との間に形成された隙間を通じて、一端から他端側に流れ出ないようにすると良い。このようにすれば、効果的に流体5を振動させることができる。
第一実施例の熱輸送システム1の構成を表す説明図である。
熱輸送デバイス本体21の構成を表す断面図である。
熱輸送デバイス本体21における最上層の流路231の構成を表す斜視図である。
流体駆動装置10の外観図である。
流体駆動装置10のD−D'断面図である。
D−D'断面の一部を拡大して表した流体駆動装置10の拡大断面図である。
ピストン43を構成する各部材を展開して表したピストン43の展開図である。
第二実施例の熱輸送システム101の構成を表す説明図である。
第二実施例の流体駆動装置110の長手方向に沿った断面の構成を表す図である。
流体駆動装置110端部の拡大断面図である。
流体駆動装置110右中央部の拡大断面図である。
シリンダ141内に設けられたピストン143の構成を表す説明図である。
端部形成体175の軸線方向の長さL2と、ソレノイドコイル147からピストンに及ぶ推力との関係を示したグラフである。
ピストンに及ぶ推力の特性を表したグラフである。
ピストン180の構成を表す説明図である。
ピストン190の構成を表す説明図である。
ピストン190’の構成を表す説明図である。
ピストン200の構成を表す説明図である。
ピストン200’の構成を表す説明図である。
第三実施例の流体駆動装置310の長手方向に沿った断面の構成を表す図である。
第四実施例の流体駆動装置410の長手方向に沿った断面の構成を表す図である。
熱輸送の原理に関する説明図である。
従来のポンプ装置80の使用態様を表す説明図である。
対向振動流型の熱輸送システムにおける熱輸送の原理を示した説明図である。
符号の説明
1,101…熱輸送システム、3…発熱体、5…流体、10,110,310,410…流体駆動装置、20,120…熱輸送デバイス、21…熱輸送デバイス本体、22…仕切部、23…流路、25…放熱部、31,131…接続管、41,141…シリンダ、43,143,180,190,190’,200,200’…ピストン、47,147…ソレノイドコイル、48,148…コイルボビン、49…導線、51…ヨーク、51a,51b…ヨーク構成体、51c,55b,63a,75a,156a…孔部、51d…引出部、53,153…駆動回路、55,155…シリンダキャップ、55a…フランジ部、55c,175b,185b,195b,205b…溝、57…螺子、59,158…Oリング、61,420…コイルバネ、63…バネ係止材、71…ピストン中央構成体、71a…螺子孔、71b,73b,175a,185a,195a,205a…小径部、73…ピストン端部構成体、73a…螺子部、75,171,201…永久磁石、77,192,202…摺動材、80…ポンプ装置、150…ケース、156,157…キャップ構成材、156b,156c…嵌合部、157a…挿入部、157b…溝部、157c…接続部、157d…貫通孔、157e…ストッパ装着部、159…ストッパ、173…筒状収容体、173a,196,206…ニッケルリンめっき層、175,185,195,195’,205,205’…端部形成体、191…半割体、193…ピストン本体、194…接続体、320…フィルタ