JP2004277657A - 透明複合シート - Google Patents

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Abstract

【課題】高い表面平滑性を有し、低線膨張係数で透明性に優れた、光学シート、表示素子用プラスチック基板又はアクティブマトリックス表示素子用基板として好適に利用できる透明複合シートを提供する。
【解決手段】透明樹脂(a)と無機フィラー(b)からなる透明複合シートの製造方法において、球相当直径が5mm以下の微粒化した透明樹脂(a)の架橋物を未架橋の透明樹脂(a)に10〜80重量%混合したものを無機フィラー(b)と複合し、架橋、成型することを特徴とする表面粗さ(Ry)が1μm以下の透明複合シート。表示素子用基板として利用するには波長550nmにおける光線透過率が80%以上、30〜150℃の平均線膨張係数が40ppm以下であることが望ましい。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高い表面平滑性を有し、線膨張係数が小さく、透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、ガラスに代替可能な透明複合シートに関する。この透明複合体組成物は、例えば、液晶表示用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
一般に、液晶表示素子用基板、カラーフィルター基板、有機EL表示素子用基板、太陽電池用基板等としては、ガラス板が多く用いられている。しかし、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向き等の問題から、近年、ガラス板の代わりにプラスチック素材を用いる試みが数多く行われるようになってきた。例えば、特許文献1や特許文献2には、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤及び硬化触媒を含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化体からなる液晶表示素子用透明樹脂基板が記載されている。しかしながら、従来のガラス代替用プラスチック材料は、線膨張係数が大きいため、例えばアクティブマトリックス表示素子基板に用いるとその製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じ、適用が困難である。そこで、線膨張係数を低減するために樹脂と同等の屈折率を有するガラス繊維布等の無機フィラーを樹脂と複合化することがよく行われている。
表示装置に用いられるプラスチック基板には表面平滑性が求められる。特に表示装置に用いる場合は基板上に直接半導体素子を書き込むこともあり1μmレベルでの平滑性が求められているが、ガラス繊維布に樹脂を含侵あるいは塗布して乾燥、硬化させる際、樹脂の硬化収縮により硬化後の基板の表面は繊維布の凹凸を反映したものとなり、表面形状は粗いものとなる。そのため、従来技術では転写材を用いたラミネートやコーティング等、表面平滑性を向上させるための工程を追加しない限り、表示装置に利用できる平滑性を有する基板を製造することは困難であった。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−337408号公報
【特許文献2】
特開平7−210740号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い表面平滑性を有し、低線膨張係数で透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に用いられる透明複合シートを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、透明樹脂(a)と無機フィラー(b)からなる透明複合シートの製造方法において、球相当直径が0.5mm以下である微粒化した透明樹脂(a)の架橋物を未架橋の透明樹脂(a)100重量部に対し10〜400重量部混合したものを無機フィラー(b)と複合し、架橋、成型することにより、硬化時に生じる樹脂の収縮が低減され、硬化収縮起因で発生する表面の凹凸を減少させることが出来ることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
(1) 透明樹脂(a)と無機フィラー(b)からなる透明複合シートの製造方法において、球相当直径が0.5mm以下の微粒化した透明樹脂(a)の架橋物を未架橋の透明樹脂(a)に10〜80重量%混合したものを無機フィラー(b)と複合し、架橋、成型することを特徴とする表面粗さ(Ry)が1μm以下の透明複合シート、
(2) 波長550nmにおける光線透過率が80%以上であることを(1)の透明複合シート、
(3) 30〜150℃の平均線膨張係数が40ppm以下である(1)、(2)の透明複合シート、
(4) 前記無機フィラー(b)がガラス繊維布である(1)〜(3)の透明複合シート、
(5) 透明複合シートが、光学シート、表示素子用プラスチック基板又はアクティブマトリックス表示素子用基板である(1)〜(4)の透明複合シート、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明中の透明樹脂(a)とは、可視光線の透過性を有する樹脂を示す。本発明の透明樹脂の透明性は、シートにした際の550nmでの光線透過率が80%以上のものが好ましく、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。表示素子用基板として用いる場合には、85%以上が好ましい。例としては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリレートなどの反応性モノマーを活性エネルギー線で架橋させた樹脂などがあげられ、耐溶剤性に優れていることからアクリレートやエポキシ樹脂などの反応性モノマーを活性エネルギー線および/または熱によって架橋させた樹脂が好ましい。反応性モノマーとしては、熱や活性エネルギー線で架橋させることができるものであれば特に制限されないが、透明性や耐熱性の面から2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートや2つ以上の官能基を有するエポキシ樹脂が好ましく、特に2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。これら樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0007】
本発明で用いる無機フィラー(b)としては、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラスなどがあげられ、中でも線膨張係数の低減効果が高いことから、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布が好ましく、ガラスクロスが最も好ましい。繊維の厚みは特に限定されるものではないが、30〜300μmであることが好ましい。ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラスなどがあげられ、中でもアルカリ金属が少ないEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。ガラスフィラー(b)の屈折率は特に制限されないが、透明樹脂(a)の架橋後の屈折率と近い値を示し、透明複合シートが優れた透明性を示す程度である必要がある。
無機フィラー(b)の含有量は、1〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。ガラスフィラーの含有量がこの範囲であれば、成形し易く、複合化による低線膨張化の効果が認められる。
本発明においては、無機フィラーと樹脂とが密着しているほど、本発明の複合体組成物の透明性が良くなるため、無機フィラー表面をシランカップリング剤などの公知の表面処理剤で処理することが好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノシランカップリング剤及びシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で用いても数種複合して用いてもよい。
【0008】
本発明において、微粒化した透明樹脂(a)の架橋物を作製する方法としては、架橋した樹脂を粉砕する方法、及び液状態にある未架橋の樹脂を噴霧などにより微粒化した後架橋する方法が挙げられる。粉砕に用いる装置としては、回転翼を用いた装置、ボールミルのように粉砕メディアを有するもの、グラインダー式の磨砕機、目的物を高速で固体に衝突させるもの等が挙げられ、いずれを用いてもよい。液状態にある未架橋の樹脂は加熱溶融するか、もしくは溶剤中に溶解させることによって得られ、これを微粒化する方法としてはスプレーを用いた噴霧等が挙げられる。微粒化した液状態の樹脂を架橋させる際には、微粒化直後に急冷して固化した後架橋させても、微粒化直後に活性エネルギー線および/または熱によって架橋させても良い。
微粒化した透明樹脂(a)の架橋物の球相当直径は0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下である。0.5mmより粒径が大きい場合表面平滑性が悪化するため好ましくない。微粒化した透明樹脂(a)の架橋物を未架橋の透明樹脂(a)に混合する割合としては10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜80重量%である。混合物は無溶剤で用いても、溶剤で希釈して用いてもよい。
複合透明シートの成形方法には制限がなく、例えば、エポキシ樹脂とガラスフィラーとを直接混合し、必要な型に注型したのち架橋させる方法、エポキシ樹脂を溶剤に溶解し、ガラスフィラーを分散させ、キャストした後、架橋させる方法、エポキシ樹脂をガラスクロスやガラス不織布に含浸させたのち架橋させる方法などが挙げられる。
【0009】
本発明における透明複合シートの表面粗さ(Ry)は1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。透明複合シートがこれより粗い場合は、シートに接触している液晶部分に厚みムラを生じ、表示不良の問題が起こりうる。
【0010】
本発明の複合透明シートを、透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等として用いる場合は、波長550nmの光線透過率が80%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、85%以上である。波長550nmの光線透過率が80%以下の場合は、光を利用する効率が低下するので、光効率が重要な用途には好ましくない。
【0011】
本発明の透明複合シートを、透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等として用いる場合は、30〜150℃の平均線膨張係数が40ppm以下であることが好ましく、より好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。例えば、この複合体組成物をアクティブマトリックス表示素子基板に用いた場合、この上限値を越えると、その製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じる恐れがある。
本発明の透明複合シートは、平滑性を向上させるために両面に樹脂のコート層を設けても良い。コートする樹脂としては、優れた透明性、耐熱性、耐薬品性を有していることが好ましく、具体的には多官能アクリレートやエポキシ樹脂などをあげることができる。コートする樹脂の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜30μmがより好ましい。
本発明の透明複合シートは、必要に応じて水蒸気や酸素に対するガスバリア層や透明電極層を設けても良い。
また、本発明の透明複合シート中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。
(実施例1)
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)80重量部、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製エピクロンEXA1514)20重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を110℃で溶融混合し、200℃で2時間硬化させた後、カウンタージェットミル(ホソカワミクロン製)を用いて粉砕し、球相当平均直径10μmの微粒子を得た。この微粒子50重量部を上記の割合で配合した未架橋の樹脂100重量部、1,3ジオキソラン65重量部と混合してワニスとした。これを、厚さ80μmのNEガラス系ガラスクロス(日東紡績製NEA2319E)を焼きだしして有機物を除去した後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)で処理したものに含侵し、140℃で3分間乾燥した後離型処理したガラス板に挟み込み、真空プレス機を用いて30kg/cmの圧力でプレスしながら200℃で2時間硬化させ、厚さ0.1mmの透明複合シートを得た。
【0013】
(実施例2)
実施例1記載の硬化樹脂をマスコロイダーで粉砕し、球相当平均直径100μmの微粒子として使用した以外は実施例1と同様の方法で厚さ0.1mmの透明複合シートを得た。
【0014】
(比較例1)
微粒化した硬化樹脂を用いず、実施例1記載の割合で配合した未架橋の樹脂を110℃で加熱溶融し、実施例1記載の方法でガラスクロスに含侵、プレスして厚さ0.1mmの透明複合シートを得た。
【0015】
以上のようにして作製した透明複合シートについて、下記に示す評価方法により、各種特性を測定した。
a)表面粗さ(Ry)
zygo社製干渉計を用いて透明複合シートの表面粗さ(Ry)を測定した。
b)平均線膨張係数
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。測定は、独自に設計した石英引張チャック(材質:石英,線膨張係数0.5ppm)を用いた。一般に使われているインコネル製のチャックは、それ自体の線膨張が高いことやサンプルの支持形態に不具合があり、100μmを超える厚いシートに適用すると線膨張係数が圧縮モードで測定した結果よりも大きくなったり、測定ばらつきが大きくなる問題があった。したがって、石英引張チャックを独自に設計し、それを用いて線膨張係数を測定することにした。この引張チャックを用いることにより、圧縮モードで測定した場合とほぼ同様の値で測定できることを確認している。
c)光線透過率
分光光度計U3200(日立製作所製)で550nmの光線透過率を測定した。
【0016】
実施例1は、表面粗さ(Ry)が0.5μm、平均線膨張係数が15ppm、光線透過率が86%で、表示素子用基板として使用できるものであった。
実施例2は、表面粗さ(Ry)が0.8μm、平均線膨張係数が17ppm、光線透過率が84%で、表示素子用基板として使用できるものであった。
比較例1は、平均線膨張係数が14ppm、光線透過率が87%であったが、表面粗さ(Ry)が1.5μmと表示素子用基板として使用するには平滑性が不十分なものであった。
【発明の効果】
本発明により得られる表面平滑な複合複合シートは、光学シート、表示素子用プラスチック基板又はアクティブマトリックス表示素子用基板として好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 透明樹脂(a)と無機フィラー(b)からなる透明複合シートの製造方法において、球相当直径が0.5mm以下の微粒化した透明樹脂(a)の架橋物を未架橋の透明樹脂(a)に10〜80重量%混合したものを無機フィラー(b)と複合し、架橋、成形することを特徴とする表面粗さ(Ry)が1μm以下の透明複合シート。
  2. 波長550nmにおける光線透過率が80%以上である請求項1記載の透明複合シート。
  3. 30〜150℃の平均線膨張係数が40ppm以下である請求項1または2記載の透明複合シート。
  4. 前記無機フィラー(b)がガラス繊維布である請求項1〜3のいずれか1項記載の透明複合シート。
  5. 透明複合シートが、光学シート、表示素子用プラスチック基板又はアクティブマトリックス表示素子用基板である請求項1〜4いずれかの透明複合シート。
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