JP2004276430A - 積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐水性、防湿性、透明性とともに、易引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有する積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(B)の少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層(F)が積層され、基材層(B)を形成するポリプロピレン系樹脂の融点(Tmb)が表面層(F)を形成するポリプロピレン系樹脂の融点(Tmf)より10℃以上低く、かつ、表面層(B)の厚みが全厚みの5〜60%である未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、下記式(1)を満足する熱処理温度(Ts)で熱処理することを特徴とする積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃) ・・・・(1)
【選択図】 なし
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(B)の少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層(F)が積層され、基材層(B)を形成するポリプロピレン系樹脂の融点(Tmb)が表面層(F)を形成するポリプロピレン系樹脂の融点(Tmf)より10℃以上低く、かつ、表面層(B)の厚みが全厚みの5〜60%である未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、下記式(1)を満足する熱処理温度(Ts)で熱処理することを特徴とする積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃) ・・・・(1)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法、特に、ポリプロピレン延伸フィルムの優れた特性である耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、引き裂き性とひねり固定性が良好な積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリプロピレンフィルムをベースフィルムとした包装用袋や粘着テープなどは、延伸されたポリプロピレンフィルムの強靱性、耐水性、透明性などの優れた特性の良さを評価して用いられているが、これらの優れた特性を有する反面、切断しにくく、包装用袋を開口するときに引き裂き難い欠点や、粘着テープとしたときに切りにくい欠点があり、また、ひねり固定性が劣るためにひねり包装用に用いることができない等の欠点があった。一方、引き裂き性とひねり固定性の優れたフィルムとしては、セロハンがよく知られている。セロハンは、その優れた透明性と引き裂き性、ひねりしわ固定性等の特性により各種包装材料、粘着テープ用として重用されているが、セロハンは吸湿性を有するため使用環境によりその特性が変動するという欠点があった。
【0003】
ところで、上記ポリプロピレンフィルムの欠点を解消するものとして、一軸方向に配向させたポリプロピレンフィルムや低分子量のポリプロピレン系樹脂を用いた引き裂き性フィルムが知られており、さらに、非相溶の複数のポリマーを含む組成物を押出し成形した引き裂き性フィルムが知られている。例えば、直鎖状低密度ポリエチレンと、特定の溶解度係数を有する熱可塑性樹脂とを99/1〜80/20(重量比)の割合で配合し、熱溶融押出して得た引き裂き性フィルム(特許文献1)、ナイロンなどの高融点樹脂とポリエチレンなどの低融点のオレフィン樹脂とを組み合わせて押出し成形した引き裂き性フィルム(特許文献2)などが知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−153733号公報
【特許文献2】
特開平4−19137号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の一軸方向に配向させて得た引き裂き性のフィルムは、その配向方向へは直線的に容易に切れるが配向方向以外には切れにくく、また、低分子量のポリプロピレン樹脂を用いて裂き性を有するフィルムを製造しようとしても、延伸工程でフィルムが破断するトラブルが発生しやすくなり、また、非相溶の複数のポリマーを含む組成物からなる引き裂き性のフィルムは、強度及び凝集力が小さく、取扱い性や加工性が低いものでいずれも実用的でないという問題点があった。
【0006】
これらのことから、本発明は耐水性、防湿性、透明性とともに、引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有する積層ポリプロピレン系フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層Bの少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層Fが積層され、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmbが表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmfより10℃以上低く、かつ、表面層Bの厚みが全厚みの5〜60%である未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、下記式(1)を満足する熱処理温度Tsで熱処理することを特徴とする積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃) ・・・・(1)
【0008】
ここで、表面層Fの厚みは、表面層Fが基材層Bの両面に積層されている場合は、その厚みを合計したものをいう。
【0009】
上記の構成からなる本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法によれば、耐水性、防湿性、透明性とともに、引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有するフィルムを製造することができる。
【0010】
この場合、基材層Bの結晶化温度を90〜110℃、表面層Fの結晶化温度を基材層Bの結晶化温度より高い温度とすることができる。
【0011】
また、この場合、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIを8g/10分以上とし、かつ、表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIより大きく、その差を5g/10分以上とすることができる。
【0012】
また、この場合、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂を変成ポリプロピレン系樹脂とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層Bの少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層Fが積層されてなる未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、特定の熱処理温度Tsで熱処理するもので、この方法に用いるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主たるモノマー単位として含むものであり、ポリプロピレン、プロピレンと共重合可能なα−オレフィンモノマーを共重合したプロピレン共重合体、ポリプロピレン又はプロピレン共重合体に不飽和カルボン酸やその無水物又は芳香族単量体でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂又はこれらの1種若しくは2種以上の混合体などを挙げることができる。
【0015】
上記ポリプロピレン系樹脂は、より具体的には、ポリプロピレンのほかプロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体やプロピレンと他のα−オレフィンモノマーとの共重合体などのプロピレン共重合体、さらに、ポリプロピレン又はプロピレン共重合体とブテン系樹脂とをスチレン系化合物等でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂、低粘度ポリプロピレン系樹脂と非晶質エチレン共重合体とをスチレン系化合物等でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン又はプロピレン共重合体をアクリル酸、無水マレイン酸、スチレン等の不飽和カルボン酸やその誘導体又は芳香族単量体等でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂等を挙げることができる。
【0016】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法においては上記ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、フィルムの特性を害さない範囲で他の重合体、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリブテンー1、ブテン・エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、さらには、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の他の熱可塑性樹脂を一部に用いることができる。
【0017】
ここでいう未延伸積層フィルムは、複数の押出機等の中で、基材層B及び表面層Fを形成する重合体の融点以上の温度で別々に溶融し、ダイス出口から押出して成形した未延伸フィルム同士を加温状態でラミネートする方法、一方の未延伸フィルムの表面に、他方の溶融フィルムを溶融ラミネートする方法、共押出し法により溶融積層した状態でダイス出口より押出して未延伸フィルムを成形する方法等で得ることができる。
【0018】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法における表面層Fには、ポリプロピレン系樹脂を限定することなく用いることができるが、ポリプロピレンやエチレン、ブテン、ヘキセン等を共重合したプロピレン共重合体等を用いるのが好ましく、その融点Tmfは、160℃以上のポリプロピレン系樹脂であるのが好ましい。
【0019】
また、基材層Bには、表面層Fに用いるポリプロピレン系樹脂の融点Tmfより10℃以上低い融点Tmbを有するポリプロピレン系樹脂を用いるが、その差が好ましくは、10〜50℃さらに好ましくは、20〜50℃のポリプロピレン系樹脂を用いるのが望ましい。
【0020】
また、基材層Bに用いるポリプロピレン系樹脂は、上記融点Tmbを有するプロピレン共重合体又は変成ポリプロピレン系樹脂であるのが好ましい。
【0021】
本発明における積層ポリプロピレン系フィルムを製造する未延伸積層フィルムは、その表面層Bの厚み(表面層Fが基材層Bの両面に積層されている場合は、その厚みを合計したもの)は全厚みの5〜60%、好ましくは10〜40%である。表面層Bの厚みが全厚みの5%未満である場合は、積層ポリプロピレン系フィルムとして得られるフィルムの強度が低くなり、破れやすくなるなど実用上支障がでる。また、表面層Fの厚みが全厚みの60%を越えると目的とする引き裂き性とひねり固定性が低下する。また、基材層Bと表面層Fの積層は2層(F/B)または3層(F/B/F)の構成のいずれであってもよく、さらに、特性を失わない範囲で、さらに他の層が積層されていてもよい。また、本発明方法で得られる積層ポリプロピレン系フィルムの厚みは、その用途に応じて任意に設定し、例えば、包装用袋や粘着テープなどで使用する場合12〜30μmが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0022】
本発明における積層ポリプロピレン系フィルムを製造するのに用いる未延伸積層フィルムの基材層Bの結晶化温度は、好ましくは90〜110℃であり、表面層Fの結晶化温度は基材層Bの結晶化温度より高い温度、特に好ましくは、5〜10℃程度高い温度である。
【0023】
積層ポリプロピレン系フィルムを形成するポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層B及び表面層Fの結晶化温度を前記特定の範囲にするための方法は特に制限されるものではなく、例えば、前記ポリプロピレン系樹脂を主成分とする重合体を適宜組み合わせることにより、所定の結晶化温度を得ることができる。
【0024】
また、積層ポリプロピレン系フィルムを製造するのに用いる未延伸積層フィルムの基材層B及び表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂はメルトインデックスMIが特定の関係にあるものを使用することが好ましい。即ち、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIを8g/10分以上、好ましくは8〜18g/10分とし、かつ、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIを表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIより5g/10分以上、特に5〜15.5g/10分大きいものを使用することが好ましい。基材層BのメルトインデックスMIが8g/10分より小さい場合、得られた積層ポリプロピレン系フィルムの引き裂き性とひねり固定性を十分発揮させることが困難なことがある。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、未延伸積層フィルムを形成する表面層F又は基材層Bの一方又は両方に滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤や通常ポリオレフィンフィルムに添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などや、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を配合することも可能である。
【0026】
無機質微細粒子としては、二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母、ゼオライトなどが挙げられ、これらの形状は、球状、楕円状、円錐状、不定形と種類を問うものではなく、その粒子径もフィルムの用途、使用法により所望のものを配合することができる。有機質微細粒子としては、アクリル系重合体、アクリル酸メチル系重合体、スチレン−ブタジエン系重合体などの架橋体粒子を使用することができ、形状、大きさに関しては無機質微細粒子と同様に様々なものを使用することが可能である。また、これら無機質あるいは有機質の微細粒子表面に各種の表面処理を施すことも可能であり、また、これらは単独で使用し得るほか、2種以上を併用することも可能である。
【0027】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法においては、前記未延伸積層フィルムを少なくとも一軸方向に延伸した後、熱処理を表面層Fに用いるポリプロピレン系樹脂の融点Tmfと基材層Bに用いるポリプロピレン系樹脂の融点Tmbとの関係が下記式を満足する熱処理温度Tsで行う。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃)
また、熱処理行うのに好ましい温度範囲は、下記式の範囲である。
Tmb≦Ts≦Tmf−10(℃)
【0028】
本発明は、融点の異なるポリプロピレン系樹脂からなる未延伸積層フィルムを延伸後の熱処理を上記式の範囲で行うことにより、基材層Bは延伸工程で形成された配向が崩れ、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムの有する耐熱性、透明性、耐水性といった特性を維持しつつ、セロハンの有する引き裂き性とひねり固定性の優れた特性を有し、かつ、表面層Fは配向を維持してポリプロピレンフィルム本来の耐熱性等の優れた特性を有するという、2種の異なる特性を有する積層フィルムを得ることができる。
【0029】
かかる本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法により、ポリプロピレンフィルム本来の優れた特性を有しつつ、良好な引き裂き性とひねり固定性を具備するという相反する特性を持った積層ポリプロピレン系フィルムを容易に得ることができる。
【0030】
次に、本発明フィルムの積層ポリプロピレン系製造方法の一例を説明する。熱風乾燥した基材層B及び表面層Fを形成する重合体をそれぞれ別の2台の押出機に供給し、それぞれの融点以上の温度で溶融押出しし、複合アダプターを通過させ、2層(F/B)又は3層(F/B/F)として口金より押出し冷却固化させて未延伸積層フィルムを成形する。
【0031】
延伸工程では、面積倍率で8〜50倍程度、好ましくは10〜40倍程度に延伸することができる。また、延伸方法は、1軸延伸、2軸延伸を問うものではなく、2軸延伸の場合も、同時2軸延伸法、逐次2軸延伸法、インフレーション法などで実施することができるが逐次2軸延伸法を用いるのが一般的である。
【0032】
逐次2軸延伸を行う場合の条件としては、まず縦方法に100〜150℃に加熱した周速差を有するロール間で3〜8倍程度延伸し、次いで幅方向にテンター延伸機を用いて140〜170℃程度の温度で4〜10倍程度延伸する。
【0033】
この延伸フィルムを、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmbより10℃低い温度以上であって表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmf未満の温度、好ましくは基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂の融点以上であって表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂の融点−10℃未満の温度で熱処理する。この熱処理では、必要に応じて弛緩処理を行ってもよいことは言うまでもない。
【0034】
さらに本発明方法で得られたフィルムに対して、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、火炎処理などを行い、接着性を向上させることは、本発明に対して何ら支障なく、該処理はフィルム製造工程の中で行ういわゆるインライン処理で行ってもよいし、製造されたフィルムに後工程として処理するいわゆるオフライン処理で行ってもよい。
【0035】
上記の如く、本発明方法は、延伸後の熱処理により、基材層Bは延伸工程での分子配向が殆ど崩壊し、本発明の目的とする引き裂き性とひねり固定性が得られ、表面層Fは分子配向を維持しているためにこれらの特性をあわせ有する本発明のフィルムが得られると考えられる。
【0036】
このように、本発明方法は、特定の層構成を有する未延伸積層フィルムを製膜工程での特定条件による熱処理により基材層Bの分子配向が殆ど崩壊した、引き裂き性とひねり固定性を付与する層と、表面層Fの分子配向を維持したポリプロピレン本来の特性を有する層のバランスにより目的とするフィルム特性を自在に設定できる利点を有するとともに、分子配向を維持した層が存在するために製膜での破断トラブル等も防止できる利点を有する。
【0037】
(実施例)
以下実施例により本発明を説明する。本明細書における評価方法については下記の方法で行った。
【0038】
(a)融点、結晶化温度
基材層B及び表面層Fを形成するのと同一組成の単層フィルムをそれぞれ作成し、得られたフィルムを用いて、JIS−K−7121に準拠し、示差走査熱量測定法により、フィルムを加熱し、溶融ピーク温度を測定して融点とした後、10℃/minの速度で冷却しつつ結晶化のピーク温度を測定して結晶化温度とした。
【0039】
(b)メルトインデックスMI
JIS−K−7210に準拠し測定した。
【0040】
(c)引き裂き性(手切れ性)
官能テストで行った。幅15mm・長さ100mmのテープ状サンプルの両側を手で持ち、中央を机の角に当て衝撃を与えて手で切断したとき、容易に手で切断できるものものを○、容易に手で切断できないものを×とした。
【0041】
(d)ひねり固定性
官能テストで行った。幅30mm・長さ50mmのテープ状サンプルの両側を手で持ち、回転角180度に手でひねったとき、ひねった状態がほぼ残留し元に戻らないものを○、ひねった状態を維持できないものを×とした。
【0042】
(e)透明性
JIS−K−7105に準拠してヘイズを測定した。
【0043】
(実施例1)
基材層Bを形成する、融点が135℃のポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレン−ブテン共重合体、エチレン成分2%、ブテン成分20%)(メルトインデックスMI=10g/10分)と表面層Fを形成する、融点が163℃のポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン単独重合体)(メルトインデックスMI=2.5g/10分)をおのおの260℃の温度で別々の押出機により溶融し、この溶融重合体を複合アダプターで合流させた後にTダイより押出し、冷却ドラムで急冷して(F/B/F)構成の3層の未延伸積層フィルムを得た。基材層Bの結晶化温度は100℃、表面層Fの結晶化温度は110℃であった。
【0044】
該未延伸積層フィルムを、まず、縦方向に130℃で4.5倍、次いで横方向に155℃で8.5倍に延伸した後、3%の弛緩を行いつつ160℃の温度で熱処理を行い、厚み25μmのフィルムを得た。このフィルムのF/B/F各層の厚み比率はそれぞれ2/21/2の比率であった。
【0045】
このようにして得られた積層ポリプロピレン系フィルムは、爪をあてがう程度でいずれの方向にも容易に切断することができ、また、フィルムをひねると、そのままのひねった状態を維持できた。また、本フィルムは製膜及びスリット時にも破断等のトラブルはなく生産性も良好であった。
【0046】
(実施例2)
実施例1と同じ原料、方法を用い、F/B/F各層の厚み比率だけを4/17/4に変更して、厚み25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは実施例1よりも少し抵抗のある引き裂き性(手切れ性)を有し、ひねり固定性が良好な積層ポリプロピレン系フィルムであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1と同じ原料、方法を用い、F/B/F各層の厚み比率だけを10/5/10に変更して、厚み25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは引き裂き性はなく、また、フィルムをひねっても元に戻り、ひねり固定性はなかった。
【0048】
(比較例2)
基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂を、融点が155℃のポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレン共重合体、エチレン成分2%)(メルトインデックスMI=10g/10分)に変更した以外は全て実施例1と同じ方法、条件、厚み比率で25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは引き裂き性はなく、またフィルムをひねっても元に戻り、ひねり固定性はなかった。
【0049】
(比較例3)
実施例1と同じ原料、方法、厚み比率で延伸した後、3%の弛緩を行いつつ100℃の温度で熱処理を行って25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは引き裂き性はなく、また、フィルムをひねっても元に戻り、ひねり固定性はなかった。
【0050】
(比較例4)
実施例1と同じ原料、方法、厚み比率で延伸した後、3%の弛緩を行いつつ170℃の温度で熱処理を行ったところ全体が溶融し、フィルムは得られなかった。
【0051】
実施例、比較例の製膜条件及び得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法によれば、耐水性、防湿性、透明性とともに、引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有するフィルムを製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法、特に、ポリプロピレン延伸フィルムの優れた特性である耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、引き裂き性とひねり固定性が良好な積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリプロピレンフィルムをベースフィルムとした包装用袋や粘着テープなどは、延伸されたポリプロピレンフィルムの強靱性、耐水性、透明性などの優れた特性の良さを評価して用いられているが、これらの優れた特性を有する反面、切断しにくく、包装用袋を開口するときに引き裂き難い欠点や、粘着テープとしたときに切りにくい欠点があり、また、ひねり固定性が劣るためにひねり包装用に用いることができない等の欠点があった。一方、引き裂き性とひねり固定性の優れたフィルムとしては、セロハンがよく知られている。セロハンは、その優れた透明性と引き裂き性、ひねりしわ固定性等の特性により各種包装材料、粘着テープ用として重用されているが、セロハンは吸湿性を有するため使用環境によりその特性が変動するという欠点があった。
【0003】
ところで、上記ポリプロピレンフィルムの欠点を解消するものとして、一軸方向に配向させたポリプロピレンフィルムや低分子量のポリプロピレン系樹脂を用いた引き裂き性フィルムが知られており、さらに、非相溶の複数のポリマーを含む組成物を押出し成形した引き裂き性フィルムが知られている。例えば、直鎖状低密度ポリエチレンと、特定の溶解度係数を有する熱可塑性樹脂とを99/1〜80/20(重量比)の割合で配合し、熱溶融押出して得た引き裂き性フィルム(特許文献1)、ナイロンなどの高融点樹脂とポリエチレンなどの低融点のオレフィン樹脂とを組み合わせて押出し成形した引き裂き性フィルム(特許文献2)などが知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−153733号公報
【特許文献2】
特開平4−19137号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の一軸方向に配向させて得た引き裂き性のフィルムは、その配向方向へは直線的に容易に切れるが配向方向以外には切れにくく、また、低分子量のポリプロピレン樹脂を用いて裂き性を有するフィルムを製造しようとしても、延伸工程でフィルムが破断するトラブルが発生しやすくなり、また、非相溶の複数のポリマーを含む組成物からなる引き裂き性のフィルムは、強度及び凝集力が小さく、取扱い性や加工性が低いものでいずれも実用的でないという問題点があった。
【0006】
これらのことから、本発明は耐水性、防湿性、透明性とともに、引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有する積層ポリプロピレン系フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層Bの少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層Fが積層され、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmbが表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmfより10℃以上低く、かつ、表面層Bの厚みが全厚みの5〜60%である未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、下記式(1)を満足する熱処理温度Tsで熱処理することを特徴とする積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃) ・・・・(1)
【0008】
ここで、表面層Fの厚みは、表面層Fが基材層Bの両面に積層されている場合は、その厚みを合計したものをいう。
【0009】
上記の構成からなる本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法によれば、耐水性、防湿性、透明性とともに、引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有するフィルムを製造することができる。
【0010】
この場合、基材層Bの結晶化温度を90〜110℃、表面層Fの結晶化温度を基材層Bの結晶化温度より高い温度とすることができる。
【0011】
また、この場合、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIを8g/10分以上とし、かつ、表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIより大きく、その差を5g/10分以上とすることができる。
【0012】
また、この場合、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂を変成ポリプロピレン系樹脂とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層Bの少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層Fが積層されてなる未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、特定の熱処理温度Tsで熱処理するもので、この方法に用いるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主たるモノマー単位として含むものであり、ポリプロピレン、プロピレンと共重合可能なα−オレフィンモノマーを共重合したプロピレン共重合体、ポリプロピレン又はプロピレン共重合体に不飽和カルボン酸やその無水物又は芳香族単量体でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂又はこれらの1種若しくは2種以上の混合体などを挙げることができる。
【0015】
上記ポリプロピレン系樹脂は、より具体的には、ポリプロピレンのほかプロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体やプロピレンと他のα−オレフィンモノマーとの共重合体などのプロピレン共重合体、さらに、ポリプロピレン又はプロピレン共重合体とブテン系樹脂とをスチレン系化合物等でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂、低粘度ポリプロピレン系樹脂と非晶質エチレン共重合体とをスチレン系化合物等でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン又はプロピレン共重合体をアクリル酸、無水マレイン酸、スチレン等の不飽和カルボン酸やその誘導体又は芳香族単量体等でグラフト変性した変成ポリプロピレン系樹脂等を挙げることができる。
【0016】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法においては上記ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、フィルムの特性を害さない範囲で他の重合体、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、ポリブテンー1、ブテン・エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、さらには、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の他の熱可塑性樹脂を一部に用いることができる。
【0017】
ここでいう未延伸積層フィルムは、複数の押出機等の中で、基材層B及び表面層Fを形成する重合体の融点以上の温度で別々に溶融し、ダイス出口から押出して成形した未延伸フィルム同士を加温状態でラミネートする方法、一方の未延伸フィルムの表面に、他方の溶融フィルムを溶融ラミネートする方法、共押出し法により溶融積層した状態でダイス出口より押出して未延伸フィルムを成形する方法等で得ることができる。
【0018】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法における表面層Fには、ポリプロピレン系樹脂を限定することなく用いることができるが、ポリプロピレンやエチレン、ブテン、ヘキセン等を共重合したプロピレン共重合体等を用いるのが好ましく、その融点Tmfは、160℃以上のポリプロピレン系樹脂であるのが好ましい。
【0019】
また、基材層Bには、表面層Fに用いるポリプロピレン系樹脂の融点Tmfより10℃以上低い融点Tmbを有するポリプロピレン系樹脂を用いるが、その差が好ましくは、10〜50℃さらに好ましくは、20〜50℃のポリプロピレン系樹脂を用いるのが望ましい。
【0020】
また、基材層Bに用いるポリプロピレン系樹脂は、上記融点Tmbを有するプロピレン共重合体又は変成ポリプロピレン系樹脂であるのが好ましい。
【0021】
本発明における積層ポリプロピレン系フィルムを製造する未延伸積層フィルムは、その表面層Bの厚み(表面層Fが基材層Bの両面に積層されている場合は、その厚みを合計したもの)は全厚みの5〜60%、好ましくは10〜40%である。表面層Bの厚みが全厚みの5%未満である場合は、積層ポリプロピレン系フィルムとして得られるフィルムの強度が低くなり、破れやすくなるなど実用上支障がでる。また、表面層Fの厚みが全厚みの60%を越えると目的とする引き裂き性とひねり固定性が低下する。また、基材層Bと表面層Fの積層は2層(F/B)または3層(F/B/F)の構成のいずれであってもよく、さらに、特性を失わない範囲で、さらに他の層が積層されていてもよい。また、本発明方法で得られる積層ポリプロピレン系フィルムの厚みは、その用途に応じて任意に設定し、例えば、包装用袋や粘着テープなどで使用する場合12〜30μmが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0022】
本発明における積層ポリプロピレン系フィルムを製造するのに用いる未延伸積層フィルムの基材層Bの結晶化温度は、好ましくは90〜110℃であり、表面層Fの結晶化温度は基材層Bの結晶化温度より高い温度、特に好ましくは、5〜10℃程度高い温度である。
【0023】
積層ポリプロピレン系フィルムを形成するポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層B及び表面層Fの結晶化温度を前記特定の範囲にするための方法は特に制限されるものではなく、例えば、前記ポリプロピレン系樹脂を主成分とする重合体を適宜組み合わせることにより、所定の結晶化温度を得ることができる。
【0024】
また、積層ポリプロピレン系フィルムを製造するのに用いる未延伸積層フィルムの基材層B及び表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂はメルトインデックスMIが特定の関係にあるものを使用することが好ましい。即ち、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIを8g/10分以上、好ましくは8〜18g/10分とし、かつ、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIを表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスMIより5g/10分以上、特に5〜15.5g/10分大きいものを使用することが好ましい。基材層BのメルトインデックスMIが8g/10分より小さい場合、得られた積層ポリプロピレン系フィルムの引き裂き性とひねり固定性を十分発揮させることが困難なことがある。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、未延伸積層フィルムを形成する表面層F又は基材層Bの一方又は両方に滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤や通常ポリオレフィンフィルムに添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などや、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を配合することも可能である。
【0026】
無機質微細粒子としては、二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母、ゼオライトなどが挙げられ、これらの形状は、球状、楕円状、円錐状、不定形と種類を問うものではなく、その粒子径もフィルムの用途、使用法により所望のものを配合することができる。有機質微細粒子としては、アクリル系重合体、アクリル酸メチル系重合体、スチレン−ブタジエン系重合体などの架橋体粒子を使用することができ、形状、大きさに関しては無機質微細粒子と同様に様々なものを使用することが可能である。また、これら無機質あるいは有機質の微細粒子表面に各種の表面処理を施すことも可能であり、また、これらは単独で使用し得るほか、2種以上を併用することも可能である。
【0027】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法においては、前記未延伸積層フィルムを少なくとも一軸方向に延伸した後、熱処理を表面層Fに用いるポリプロピレン系樹脂の融点Tmfと基材層Bに用いるポリプロピレン系樹脂の融点Tmbとの関係が下記式を満足する熱処理温度Tsで行う。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃)
また、熱処理行うのに好ましい温度範囲は、下記式の範囲である。
Tmb≦Ts≦Tmf−10(℃)
【0028】
本発明は、融点の異なるポリプロピレン系樹脂からなる未延伸積層フィルムを延伸後の熱処理を上記式の範囲で行うことにより、基材層Bは延伸工程で形成された配向が崩れ、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムの有する耐熱性、透明性、耐水性といった特性を維持しつつ、セロハンの有する引き裂き性とひねり固定性の優れた特性を有し、かつ、表面層Fは配向を維持してポリプロピレンフィルム本来の耐熱性等の優れた特性を有するという、2種の異なる特性を有する積層フィルムを得ることができる。
【0029】
かかる本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法により、ポリプロピレンフィルム本来の優れた特性を有しつつ、良好な引き裂き性とひねり固定性を具備するという相反する特性を持った積層ポリプロピレン系フィルムを容易に得ることができる。
【0030】
次に、本発明フィルムの積層ポリプロピレン系製造方法の一例を説明する。熱風乾燥した基材層B及び表面層Fを形成する重合体をそれぞれ別の2台の押出機に供給し、それぞれの融点以上の温度で溶融押出しし、複合アダプターを通過させ、2層(F/B)又は3層(F/B/F)として口金より押出し冷却固化させて未延伸積層フィルムを成形する。
【0031】
延伸工程では、面積倍率で8〜50倍程度、好ましくは10〜40倍程度に延伸することができる。また、延伸方法は、1軸延伸、2軸延伸を問うものではなく、2軸延伸の場合も、同時2軸延伸法、逐次2軸延伸法、インフレーション法などで実施することができるが逐次2軸延伸法を用いるのが一般的である。
【0032】
逐次2軸延伸を行う場合の条件としては、まず縦方法に100〜150℃に加熱した周速差を有するロール間で3〜8倍程度延伸し、次いで幅方向にテンター延伸機を用いて140〜170℃程度の温度で4〜10倍程度延伸する。
【0033】
この延伸フィルムを、基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmbより10℃低い温度以上であって表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmf未満の温度、好ましくは基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂の融点以上であって表面層Fを形成するポリプロピレン系樹脂の融点−10℃未満の温度で熱処理する。この熱処理では、必要に応じて弛緩処理を行ってもよいことは言うまでもない。
【0034】
さらに本発明方法で得られたフィルムに対して、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、火炎処理などを行い、接着性を向上させることは、本発明に対して何ら支障なく、該処理はフィルム製造工程の中で行ういわゆるインライン処理で行ってもよいし、製造されたフィルムに後工程として処理するいわゆるオフライン処理で行ってもよい。
【0035】
上記の如く、本発明方法は、延伸後の熱処理により、基材層Bは延伸工程での分子配向が殆ど崩壊し、本発明の目的とする引き裂き性とひねり固定性が得られ、表面層Fは分子配向を維持しているためにこれらの特性をあわせ有する本発明のフィルムが得られると考えられる。
【0036】
このように、本発明方法は、特定の層構成を有する未延伸積層フィルムを製膜工程での特定条件による熱処理により基材層Bの分子配向が殆ど崩壊した、引き裂き性とひねり固定性を付与する層と、表面層Fの分子配向を維持したポリプロピレン本来の特性を有する層のバランスにより目的とするフィルム特性を自在に設定できる利点を有するとともに、分子配向を維持した層が存在するために製膜での破断トラブル等も防止できる利点を有する。
【0037】
(実施例)
以下実施例により本発明を説明する。本明細書における評価方法については下記の方法で行った。
【0038】
(a)融点、結晶化温度
基材層B及び表面層Fを形成するのと同一組成の単層フィルムをそれぞれ作成し、得られたフィルムを用いて、JIS−K−7121に準拠し、示差走査熱量測定法により、フィルムを加熱し、溶融ピーク温度を測定して融点とした後、10℃/minの速度で冷却しつつ結晶化のピーク温度を測定して結晶化温度とした。
【0039】
(b)メルトインデックスMI
JIS−K−7210に準拠し測定した。
【0040】
(c)引き裂き性(手切れ性)
官能テストで行った。幅15mm・長さ100mmのテープ状サンプルの両側を手で持ち、中央を机の角に当て衝撃を与えて手で切断したとき、容易に手で切断できるものものを○、容易に手で切断できないものを×とした。
【0041】
(d)ひねり固定性
官能テストで行った。幅30mm・長さ50mmのテープ状サンプルの両側を手で持ち、回転角180度に手でひねったとき、ひねった状態がほぼ残留し元に戻らないものを○、ひねった状態を維持できないものを×とした。
【0042】
(e)透明性
JIS−K−7105に準拠してヘイズを測定した。
【0043】
(実施例1)
基材層Bを形成する、融点が135℃のポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレン−ブテン共重合体、エチレン成分2%、ブテン成分20%)(メルトインデックスMI=10g/10分)と表面層Fを形成する、融点が163℃のポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン単独重合体)(メルトインデックスMI=2.5g/10分)をおのおの260℃の温度で別々の押出機により溶融し、この溶融重合体を複合アダプターで合流させた後にTダイより押出し、冷却ドラムで急冷して(F/B/F)構成の3層の未延伸積層フィルムを得た。基材層Bの結晶化温度は100℃、表面層Fの結晶化温度は110℃であった。
【0044】
該未延伸積層フィルムを、まず、縦方向に130℃で4.5倍、次いで横方向に155℃で8.5倍に延伸した後、3%の弛緩を行いつつ160℃の温度で熱処理を行い、厚み25μmのフィルムを得た。このフィルムのF/B/F各層の厚み比率はそれぞれ2/21/2の比率であった。
【0045】
このようにして得られた積層ポリプロピレン系フィルムは、爪をあてがう程度でいずれの方向にも容易に切断することができ、また、フィルムをひねると、そのままのひねった状態を維持できた。また、本フィルムは製膜及びスリット時にも破断等のトラブルはなく生産性も良好であった。
【0046】
(実施例2)
実施例1と同じ原料、方法を用い、F/B/F各層の厚み比率だけを4/17/4に変更して、厚み25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは実施例1よりも少し抵抗のある引き裂き性(手切れ性)を有し、ひねり固定性が良好な積層ポリプロピレン系フィルムであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1と同じ原料、方法を用い、F/B/F各層の厚み比率だけを10/5/10に変更して、厚み25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは引き裂き性はなく、また、フィルムをひねっても元に戻り、ひねり固定性はなかった。
【0048】
(比較例2)
基材層Bを形成するポリプロピレン系樹脂を、融点が155℃のポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレン共重合体、エチレン成分2%)(メルトインデックスMI=10g/10分)に変更した以外は全て実施例1と同じ方法、条件、厚み比率で25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは引き裂き性はなく、またフィルムをひねっても元に戻り、ひねり固定性はなかった。
【0049】
(比較例3)
実施例1と同じ原料、方法、厚み比率で延伸した後、3%の弛緩を行いつつ100℃の温度で熱処理を行って25μmのフィルムを得た。かくして得られたフィルムは引き裂き性はなく、また、フィルムをひねっても元に戻り、ひねり固定性はなかった。
【0050】
(比較例4)
実施例1と同じ原料、方法、厚み比率で延伸した後、3%の弛緩を行いつつ170℃の温度で熱処理を行ったところ全体が溶融し、フィルムは得られなかった。
【0051】
実施例、比較例の製膜条件及び得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法によれば、耐水性、防湿性、透明性とともに、引き裂き性、ひねり固定性を合わせ有するフィルムを製造することができる。
Claims (4)
- ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(B)の少なくとも一方にポリプロピレン系樹脂を主成分とする表面層(F)が積層され、基材層(B)を形成するポリプロピレン系樹脂の融点(Tmb)が表面層(F)を形成するポリプロピレン系樹脂の融点(Tmf)より10℃以上低く、かつ、表面層(B)の厚みが全厚みの5〜60%である未延伸積層フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸した後、下記式(1)を満足する熱処理温度(Ts)で熱処理することを特徴とする積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
Tmb−10≦Ts≦Tmf(℃) ・・・・(1) - 基材層(B)の結晶化温度が90〜110℃であり、かつ、表面層(F)の結晶化温度が基材層(B)の結晶化温度より高いことを特徴とする請求項1記載の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
- 基材層(B)を形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックス(MI)が8g/10分以上であり、かつ、表面層(F)を形成するポリプロピレン系樹脂のメルトインデックス(MI)より大きく、その差が5g/10分以上あることを特徴とする請求項1又は2記載の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
- 基材層(B)を形成するポリプロピレン系樹脂が変成ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の積層ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
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2003
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