JP2004273387A - 膜−電極接合体のガス拡散層の製造方法、膜−電極接合体、及び燃料電池 - Google Patents
膜−電極接合体のガス拡散層の製造方法、膜−電極接合体、及び燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】プロトン交換膜と電極触媒層とガス拡散層を積層してなる膜−電極接合体のガス拡散層を製造する方法において、粉体に親水化処理を施す工程と、前記親水化処理された粉体を高分子電解質と溶媒と共に混合してペーストとする工程と、前記ペーストを基材シート上に成膜する工程と、成膜されたペースト表面に撥水化処理を施す工程と、を含む膜−電極接合体のガス拡散層の製造方法、該ガス拡散層を有する膜−電極接合体、及び燃料電池。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロトン交換膜と電極触媒層とガス拡散層とを積層する膜−電極接合体のガス拡散層を製造する方法、膜−電極接合体、及びそれを用いた固体高分子型燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池には、用いられる電解質の種類により、固体高分子型、リン酸型、固体酸化物型、溶融炭酸塩型、アルカリ型などの種類がある。なかでも固体高分子型燃料電池は、他の燃料電池に比べて、運転温度が低温で起動時間が短く、高出力が得やすい、小型軽量化が見込める、振動に強いなどの特徴を有し移動体の電力供給源に適している。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、将来の新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。電解質として高分子からなるイオン交換膜を用いた固体高分子型燃料電池(PEFCまたはPEMFC)は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴から、自動車などの移動体および民生用携帯機器への適用が検討されている。特に、固体高分子型燃料電池を搭載した燃料電池自動車は究極のエコロジーカーとして社会的な関心が高まっている。
【0004】
固体高分子電解質は、高分子鎖中にスルホン酸基等の電解質基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有している。特に、パーフルオロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜は、化学的安定性が非常に高いことから、過酷な条件下で使用される燃料電池用イオン交換膜として賞用されている。
【0005】
例えば、改質ガス燃料電池は、プロトン伝導性のイオン交換膜の両面に一対の電極を設け、メタン、メタノール等、低分子の炭化水素を改質することにより得られる水素ガスを燃料ガスとして一方の電極(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として異なる電極(空気極)へ供給し、起電力を得るものである。
【0006】
燃料電池の場合、イオン交換膜と電極の界面に形成された電極触媒層において過酸化物が生成し、生成した過酸化物が拡散しながら過酸化物ラジカルとなって劣化反応を起こすので、耐酸化性に乏しい炭化水素系電解質膜を使用することができない。そのため、燃料電池や水電解においては、一般に、高いプロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸膜が用いられている。
【0007】
現在、固体高分子型燃料電池に使用されるイオン交換膜としては、デュポン社のナフィオン(登録商標)、旭硝子社のフレミオン(登録商標)、旭化成社のアシプレックス(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が用いられている
これらのイオン交換膜を固体高分子型燃料電池に適用するには、燃料の酸化能、酸化剤の還元能を有する電極触媒層を、前記イオン交換膜の両面にそれぞれ配置し、その外側にガス拡散層を配置した構造の膜−電極接合体を用いる。
【0008】
即ち、その構造は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜からなるイオン交換膜の両面に、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする電極触媒層を形成する。次に、電極触媒層の外面に、燃料ガスの通気性と電子伝導性を併せ持つ、ガス拡散層を形成する。一般的にガス拡散層には、カーボンペーパーまたはカーボンクロスの基材に、フッ素樹脂、シリコン、カーボン等の粉体を含むペーストが成膜されている。前述した電極触媒層とガス拡散層とを併せて電極と呼ぶ。
【0009】
次に、供給する燃料ガスのリーク、及び二種類の燃料ガスの混合防止に、ガスシール材やガスケットを電極周囲にイオン交換膜を挟む形で配置する。このガスシール材やガスケットと、電極及びイオン交換膜と一体化して予め組み立て、膜−電極接合体(MEA:Membrane−Electrode−Assembly)と呼ぶ。
【0010】
MEAの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣接したMEAを互いに電気的に直列で接続するための導電性と気密性を有するセパレータを配置する。セパレータのMEAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給し、生成ガスや余剰ガスを運び去るためのガス流路を形成する。ガス流路はセパレータと別に設けることもできるが、セパレータの表面に溝を設けてガス流路とする方法が一般的である。この一対のセパレータでMEAを固定した構造を基本単位である単電池とする。
この単電池を直列に複数連結し、燃料ガスを供給する配管治具であるマニホールドを配置し、燃料電池が構成される。
【0011】
前記ガス拡散層には、カーボンペーパーまたはカーボンクロス等の基材に、フッ素樹脂、シリコン、カーボン等の粉体を用いるが、フッ素樹脂、シリコン、カーボン等の粉体は、本来、撥水性を有するものであり、このままでは、ペーストとして成膜することができない。そのため、これら粉体を水になじませ、均一なペーストにして、基材上に成膜するために、これら粉体を含むペーストを親水性にする必要がある。
【0012】
このため、ガス拡散層ペーストに、界面活性剤を添加することにより、フッ素樹脂、シリコン、カーボン等の粉体を親水化処理することが行われている。下記特許文献1には、ガス拡散層に界面活性剤をスプレーすることにより、ガス拡散層の表面を親水化することが開示されている。
【0013】
このような方法で、ペーストを親水化すると、ガス拡散層の撥水性が不足し、フラッデイング(水詰まり)現象により、燃料電池の性能を低下させることになる。つまり、ガス拡散層は、水素ガスや空気の通り道であるとともに、生成した水分子を効率良く逃がすための通り道である必要があり、残存する界面活性剤によって、ガス拡散層が親水性であることは好ましくない状態である。
【特許文献1】
特開平7−161359号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示された方法の場合、ガス拡散層ペーストに親水性を付与するため、界面活性剤を用いていた。このため、この界面活性剤を取り除く必要があった。例えば、加熱して分解させる方法があるが、完全に分解させることは困難である上に、長時間の加熱処理を要し、生産性を低下させることになる。
そこで、本発明は、ペーストとしては親水性であるが、成膜後は撥水性を示すガス拡散層を製造することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、界面活性剤を用いないガス拡散層の製造方法を見出し、本発明に至った。
即ち、第1に、本発明は、プロトン交換膜と電極触媒層とガス拡散層を積層してなる膜−電極接合体のガス拡散層を製造する方法において、粉体に親水化処理を施す工程と、前記親水化処理された粉体を高分子電解質と溶媒と共に混合してペーストとする工程と、前記ペーストを基材シート上に成膜する工程と、成膜されたペースト表面に撥水化処理を施す工程と、を含む膜−電極接合体のガス拡散層の製造方法である。
【0016】
粉体に対する親水化処理としては、プラズマ照射、過酸化水素水への浸漬、無機酸水溶液への浸漬などが挙げられる。この中で、プラズマ照射が作業性、及び効率の点で好ましい。
成膜されたペースト中の粉体に対する撥水化処理として、赤外線照射、特に遠赤外線照射が挙げられる。遠赤外線の中でも波長が約2μmのものが粉体に付着した水分子のH−OH結合を切るので好ましい。
本発明で用いられる粉体は、ガス拡散層の製造に用いられるものが用いられる。特に、フッ素樹脂、シリコン、カーボンのいずれか1つ、またはこれらの混合物から選択されるものの粉体が好ましい。
【0017】
第2に、本発明は、プロトン交換膜と電極触媒層とガス拡散層を積層してなる膜−電極接合体において、親水化処理を施された粉体と高分子電解質と溶媒とが混合されたペーストが基材シート上に成膜され、成膜されたペースト表面が撥水化処理を施されたものであるガス拡散層を含むことを特徴とする膜−電極接合体である。
第1の発明と同様に、親水化処理としては、プラズマ照射が好ましく、撥水化処理としては、遠赤外線照射が好ましく、粉体としては、フッ素樹脂、シリコン、カーボンのいずれか1つ、またはこれらの混合物から選択されるものの粉体が好ましい。
本発明に用いられるプロトン交換膜としては、パーフルオロスルホン酸基を有するものが好ましい。
【0018】
第3に、本発明は、上記第2の発明の膜−電極接合体を用いた固体高分子型燃料電池である。
図1に、本発明のガス拡散層の粉体に対する親水化処理及び撥水化処理の模式図を示す。図1(a)は、ペースト化のための、粉体表面の親水化(濡れ性改善)を示す。水等の液体になじみ難い粉体表面に対し、酸素ガス等の雰囲気下でプラズマ処理を行う。このプラズマ処理により、粉体1表面に酸素分子2が付与される。図1(b)は、粉体1表面に付与された酸素分子2と親和性を有する水分子3がなじむ様子を示す。図1(c)は、粉体1から水分子3が除去される様子を示す。つまり、酸素分子2を介して粉体1になじんでいた水分子3のH−OH結合が、遠赤外線が照射されることで分解し、また遠赤外線が照射されることで粉体1と酸素分子2との結合も切れる。その結果、粉体1から酸素分子2と水分子3が除去される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるガス拡散層(電極基材)としては、燃料電池に一般に用いられるガス拡散層が特に限定されることなく用いられる。例えば、導電性物質を主たる構成材とする多孔質導電シートなどが挙げられる。この導電性物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。導電性物質の形態は繊維状あるいは粒子状など特に限定されないが、燃料電池などのように電極活物質に気体を用いる電気化学装置に用いる場合、ガス透過性の点から繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートとしては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。本発明における多孔質導電シートには、特に限定されないが、導電性向上のために補助剤としてカーボンブラックなどの導電性粒子や、炭素繊維などの導電性繊維を添加することも好ましい実施態様である。
【0020】
ガス拡散層には、上記のガス拡散層以外にも、実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向された炭素短繊維を高分子物質で結着してなる炭素繊維紙を含む。また、炭素短繊維を高分子物質で結着することにより、圧縮や引張りに強くなり、炭素繊維紙の強度、ハンドリング性を高め、炭素短繊維が炭素繊維紙から外れたり、炭素繊維紙の厚み方向を向くのを防止できる。
【0021】
固体高分子型燃料電池は、カソード(空気極、酸素極)において、電極反応生成物としての水や、電解質を透過した水が発生する。また、アノード(燃料極)においては、プロトン交換膜の乾燥防止のために燃料を加湿して供給する。これらの水の結露と滞留、水による高分子物質の膨潤が電極反応物を供給する際の妨げになるので、高分子物質の吸水率は低いほうがよい。
【0022】
ガス拡散層における高分子物質の含有率は、0.1〜50重量%の範囲にあるのが好ましい。炭素繊維紙の電気抵抗を低くするためには、高分子物質の含有率は少ないほうがよいが、0.1重量%未満ではハンドリングに耐える強度が不足し、炭素短繊維の脱落も多くなる。逆に、50重量%を超えると炭素繊維紙の電気抵抗が増えてくるという問題が生じる。より好ましくは、1〜30重量%の範囲である。
【0023】
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などが例示される。なかでも、PAN系炭素繊維が好ましい。
【0024】
本発明に用いられるガス拡散層は、柔軟性を有する導電粒子がシート状に配列されてなる多孔質導電シートを用いてなることも好ましい。これにより構成成分の脱落が少ない、あるいは、機械的力が作用しても壊れ難く、電気抵抗が低く、かつ、安価なガス拡散層を提供するという目的が可能となる。特に、柔軟性を有する導電粒子として、膨張黒鉛粒子を用いることで上記目的が達成可能である。ここで、膨張黒鉛粒子とは、黒鉛粒子が、硫酸、硝酸などにより層間化合物化された後、急速に加熱することにより膨張せしめられて得られる黒鉛粒子をいう。
【0025】
本発明のガス拡散層に用いられる多孔質導電シートは、柔軟性を有する導電性微粒子に加えて、他の導電性粒子や導電性繊維を含むことも好ましい実施態様であるが、この導電性繊維と導電性粒子の双方が、無機材料からなることにより、耐熱性、耐酸化性、耐溶出性に優れた電極基材が得られる。
【0026】
本発明に用いられるプロトン交換膜としては特に限定されるものではない。具体的には、プロトン交換基として、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などを有するものが例示され、この中で、スルホン酸基が燃料電池性能を発現する上で好ましく用いられる。
【0027】
プロトン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの炭化水素系プロトン交換膜、また、フルオロアルキルエーテル側鎖とパーフルオロアルキル主鎖を有するフルオロアルキル共重合体のパーフルオロ系プロトン交換膜が好ましく用いられる。これらは燃料電池が用いられる用途や環境に応じて適宜選択されるべきものであるが、パーフルオロ系が燃料電池寿命の点から好ましい。また、炭化水素系については、部分的にフッ素原子置換した部分フッ素膜も好ましく用いられる。パーフルオロ系プロトン交換膜では、デュポン社製ナフィオン、旭化成製アシプレックス、旭硝子製フレミオン、ジャパンゴアテックス社製ゴア−セレクト等が例示され、部分フッ素膜では、トリフルオロスチレンスルホン酸の重合体やポリフッ化ビニリデンにスルホン酸基を導入したものなどがある。
【0028】
プロトン交換膜は1種のポリマーばかりでなく、2種以上のポリマーの共重合体やブレンドポリマー、2種以上の膜を貼り合わせた複合膜、プロトン交換膜を不織布や多孔フィルムなどで補強した膜なども用いることができる。
【0029】
本発明における電極触媒層は、少なくとも触媒または触媒坦持媒体(例えば触媒坦持カーボンが好適、以下、触媒坦持カーボンを例に挙げて説明するが何らこれに限定されるものではない)を有してなる。特に限定されるものではないが、例えば、本発明における電極触媒層は、触媒担持カーボンと、触媒担持カーボン同士あるいは触媒担持カーボンと電極基材あるいは触媒担持カーボンとプロトン交換膜とを結着し、触媒層を形成するポリマからなるものである。
【0030】
触媒担持カーボンに含まれる触媒は特に限定されるものではないが、触媒反応における活性化過電圧が小さいことから、白金、金、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、これらの貴金属触媒の合金、混合物など、2種以上の元素が含まれていても構わない。
【0031】
触媒担持カーボンに含まれるカーボンは特に限定されるものではないが、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子伝導性と比表面積の大きさから好ましいものである。オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラックなどが挙げられる。
【0032】
電極触媒層に含まれるポリマーは特に限定されるものではないが、燃料電池内の酸化−還元雰囲気で劣化しないポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては、フッ素原子を含むポリマーが挙げられ、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)など、あるいはこれらの共重合体、これらモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマとの共重合体、さらには、ブレンドなども用いることができる。
【0033】
電極触媒層に含まれるポリマーは、電極触媒層内のプロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマーも好ましいものである。このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などがあるが特に限定されるものではない。また、このようなプロトン交換基を有するポリマも、特に限定されることなく選ばれるが、プロトン交換基の付いたフルオロアルキルエーテル側鎖を有するフルオロアルキル共重合体が好ましく用いられる。例えば、デュポン社製のナフィオン等も好ましいものである。また、プロトン交換基を有する上述のフッ素原子を含むポリマや、エチレンやスチレンなどの他のポリマ、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。
【0034】
電極触媒層に含まれるポリマーは、上記のフッ素原子を含むポリマーやプロトン交換基を含むポリマーを共重合あるいはブレンドして用いることも好ましいものである。特にポリフッ化ビニリデン、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)共重合体などと、プロトン交換基にフルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖を有するナフィオン等のポリマーを、ブレンドすることは電極性能の点から好ましいものである。
【0035】
電極触媒層の主たる成分は、好適には触媒担持カーボンとポリマーであり、それらの比率は必要とされる電極特性に応じて適宜決められるべきもので特に限定されるものではないが、触媒担持カーボン/ポリマーの重量比率で5/95〜95/5が好ましく用いられる。特に固体高分子型燃料電池用電極触媒層として用いる場合には、触媒担持カーボン/ポリマー重量比率で40/60〜85/15が好ましいものである。
【0036】
電極触媒層には、触媒担持カーボンを担持している前述のカーボンのほか、電子伝導性向上のために種々の導電剤を添加することも好ましい。このような導電剤としては、前述の触媒担持カーボンに用いられるカーボンと同種のカーボンブラックに加えて、種々の黒鉛質や炭素質の炭素材、あるいは金属や半金属が挙げられるが特に限定されるものではない。このような炭素材としては、前述のカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などがある。これらの炭素材の形態としては、粒子状のほか繊維状も用いることができる。また、これら炭素材を後処理加工した炭素材も用いることが可能である。これら導電材の添加量としては、電極触媒層に対する重量比率として1〜80%が好ましく、5〜50%がさらに好ましい。
【0037】
本発明において、電極触媒層のガス拡散層またはプロトン交換膜への形成方法は特に限定されるものではない。触媒担持カーボンと電極触媒層に含まれるポリマとをペースト状に混練し、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、スクリーン印刷、スプレー塗布などの方法で、電極触媒層をガス拡散層またはプロトン交換膜に直接付加・形成してもよいし、他の基材(転写基材)上に電極触媒層をいったん形成した後、ガス拡散層またはプロトン交換膜に転写しても良い。この場合の転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、あるいは表面をフッ素やシリコーン系の離型剤処理したガラス板や金属板なども用いられる。
【0038】
本発明において、膜−電極接合体の接合時に加える圧力は、1〜10MPaであることが好ましく、2〜10MPaであることがより好ましい。加える圧力が1MPa以下であると、プロトン交換膜と電極触媒層または電極触媒層とガス拡散層とが十分に接合されず、プロトン交換膜と電極触媒層との界面のイオン抵抗が高くなるか、あるいは電極触媒層と電極基材との界面の電子抵抗が高くなって好ましくなく、また、加える圧力が10MPa以上であると、電極触媒層がつぶれ、反応ガスの電極触媒層中での拡散性が阻害されて好ましくない。
【0039】
また、加熱及び加圧する処理時間は、温度や圧力により種々変動し得る。概ね、温度が高い程、圧力が高い程、処理時間は短い。好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上である。
【0040】
本発明のプロトン交換膜、電極触媒層、ガス拡散層から構成される膜−電極接合体は、さまざまな電気化学装置に適応することができる。中でも、燃料電池が好ましく、さらに燃料電池の中でも、固体高分子型燃料電池に好適である。燃料電池には、水素を燃料とするものとメタノールなどの炭化水素を燃料とするものがあるが、特に限定されることなく用いることができる。
【0041】
本発明の膜−電極接合体を用いた燃料電池の用途としては、特に限定されることなく考えられるが、固体高分子型燃料電池において有用な用途である自動車の電力供給源が好ましいものである。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
粉体としてフッ素樹脂とカーボンブラックを用い、撹拌しながら、酸素雰囲気下で1〜2kW・sec、30〜60sec、プラズマを照射した。
上記のプラズマで親水化処理された粉体100gを、水400g中に入れ、撹拌羽を有する撹拌機で撹拌し、ペースト化した。
【0043】
このようにして得られたペーストをローラ上を連続して進むカーボンシート上に塗布した。ペーストが塗布されたカーボンペーストを波長2μmの遠赤外線が照射される乾燥装置中を連続的に通過させた。
得られたガス拡散層を用いて膜−電極接合体(MEA)を作製した。この膜−電極接合体(MEA)を用いた燃料電池は、ガス拡散層が十分な撥水性を有するため、運転中にフラッデイング(水詰まり)現象は発生せず、燃料電池の性能は低下しなかった。
【0044】
[比較例1]
比較のために、粉体にプラズマを照射して親水化処理は行ったが、遠赤外線による撥水化処理を行わない点を除いて、実施例1と同様にしてガス拡散層を作製した。このガス拡散層を用いて膜−電極接合体(MEA)を作製した。この膜−電極接合体(MEA)を用いた燃料電池は、ガス拡散層が撥水性を有しないため、運転中にフラッデイング(水詰まり)現象が発生し、燃料電池の性能が低下した。
【0045】
[比較例2]
粉体に約3%の界面活性剤を添加して親水化処理は行ってペーストを作成した。このペーストを基材に塗布した後、約30分間焼成してガス拡散層を作製した。このガス拡散層を用いて膜−電極接合体(MEA)を作製した。この膜−電極接合体(MEA)を用いた燃料電池は、ガス拡散層に界面活性剤が残留しているため、運転中にフラッデイング(水詰まり)現象が発生し、燃料電池の性能が低下した。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、親水化処理された粉体と、撥水処理されたガス拡散層を用いているので、このガス拡散層を用いて作製された膜−電極接合体(MEA)を用いた燃料電池は、ガス拡散層が十分な撥水性を有するため、運転中にフラッデイング(水詰まり)現象は発生せず、燃料電池の性能を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス拡散層の粉体に対する親水化処理及び撥水化処理の模式図を示す。図1(a)は、粉体に対するプラズマ処理を、図1(b)は、粉体に酸素分子を介して水分枝がなじむ様子を、図1(c)は、遠赤外線処理により、水分子が解離する様子を示す。
【符号の説明】
1:粉体、2:酸素分子、3:水分子。
Claims (10)
- プロトン交換膜と電極触媒層とガス拡散層を積層してなる膜−電極接合体のガス拡散層を製造する方法において、粉体に親水化処理を施す工程と、前記親水化処理された粉体を高分子電解質と溶媒と共に混合してペーストとする工程と、前記ペーストを基材シート上に成膜する工程と、成膜されたペースト表面に撥水化処理を施す工程と、を含む膜−電極接合体のガス拡散層の製造方法。
- 前記親水化処理が、プラズマ照射であることを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層の製造方法。
- 前記撥水化処理が、遠赤外線照射であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス拡散層の製造方法。
- 前記粉体が、フッ素樹脂、シリコン、カーボンのいずれか1つ、またはこれらの混合物から選択されるものの粉体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散層の製造方法。
- プロトン交換膜と電極触媒層とガス拡散層を積層してなる膜−電極接合体において、親水化処理を施された粉体と高分子電解質と溶媒とが混合されたペーストが基材シート上に成膜され、成膜されたペースト表面が撥水化処理を施されたものであるガス拡散層を含むことを特徴とする膜−電極接合体。
- 前記親水化処理が、プラズマ照射であることを特徴とする請求項5に記載の膜−電極接合体。
- 前記撥水化処理が、遠赤外線照射であることを特徴とする請求項5または6に記載の膜−電極接合体。
- 前記粉体が、フッ素樹脂、シリコン、カーボンのいずれか1つ、またはこれらの混合物から選択されるものの粉体であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の膜−電極接合体。
- 前記プロトン交換膜が、パーフルオロスルホン酸基を有するものであることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の膜−電極接合体。
- 請求項5〜9のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いた固体高分子型燃料電池。
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