JP2004269831A - 耐熱性繊維とシロキサンポリマーとからなる複合体 - Google Patents

耐熱性繊維とシロキサンポリマーとからなる複合体 Download PDF

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Abstract

【課 題】本発明は、優れた耐熱性と靭性を有する繊維強化複合体および改質された表面構造をもつ耐熱性繊維を提供することを目的とする。
【解決手段】耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを含有することを特徴とする複合体。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを含有する複合体に関する。より詳しくは、本発明は、耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを構成成分として含有する繊維強化ガラス、および、有機無機ハイブリッドガラス質被膜により強固に被覆されたアラミド繊維に代表される耐熱性繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合体は、軽量でかつ機械的物性に優れているため、近年種々の用途に応用されている。用途の拡大に伴い、繊維強化複合体には、種々の物性が要求されてきており、その1つとして耐熱性の向上が挙げられる。
耐熱性の繊維強化複合体としては、マトリックス樹脂としてポリイミド樹脂を使用した複合体が知られている(特許文献1参照)。ポリイミド樹脂の耐熱温度は約300℃程度である。さらに耐熱性を向上させるために、セラミックスマトリックスを使用することも知られている(特許文献2参照)。セラミックスマトリックスの耐熱温度は約1000℃程度である。また、耐熱性に優れた繊維強化複合体として、炭素繊維強化複合体も挙げられる。炭素繊維強化複合体は、炭素繊維強化プラスチックを高温の不活性雰囲気中で焼成処理し、マトリックスとしてのプラスチックを炭化することにより得られる(特許文献3参照)。
【0003】
しかし、マトリックス樹脂としてポリイミド樹脂を使用する場合、ポリイミド樹脂の溶融温度が高いという問題がある。溶融温度が高いと、マトリックス樹脂の熱膨張性と繊維の熱膨張性とが相違していることに起因して、繊維とマトリックス樹脂の界面が密着しにくい。また、ポリイミド樹脂を硬化させるためには高い温度が必要であるという問題もある。マトリックス樹脂の硬化温度が高いと、繊維の酸化劣化が生じるおそれがあり、さらに耐熱性の装置が必要となり、かつ成形時のエネルギー効率も悪い。さらに、ポリイミド樹脂は非常に高価であるという問題もある。
セラミックスマトリックスを用いた繊維強化複合体および炭素繊維強化複合体は、耐熱性には優れているが、脆いという欠点を有している。また、炭素繊維強化複合体は、製造工程が複雑で製造に手間がかかるという問題も有している。
【0004】
一方、耐熱性の繊維強化複合体において、強化繊維としては、アラミド繊維に代表される耐熱性繊維が用いられる。しかしながら、アラミド繊維は他の有機高分子などとの接着性が必ずしも高くないという問題点を有している。その他、アラミド繊維は、繊維の平衡水分率が高いこと(例えばパラ系ホモポリマーからなるアラミド繊維の平衡水分率は約7%)、紫外線により劣化しやすいこと、そして、ある種のタイプではフィブリル化し易いこと等、使用目的によっては好ましくない性質も同時に持ち合わせている。
これら不利な性質を補うために種々の改質提案がなされてきている。例えば、エーテル系などの第3成分を共重合させてポリマー構造自体を改質する方法、紡糸時に改質物質を紡糸ドープに添加する方法、得られた繊維表面をエキシマレーザー等でエッチングする方法、イオンビームにより金属を注入する方法および超臨界流体を用いて改質物質を繊維内に導入する方法などがこれまで提案されてきた。
【0005】
しかしながら、ポリマー自体を共重合する方法では、ある程度の低平衡水分率化とフィブリル化防止は実現できるが、その他の機能の向上は期待できず、例えば耐熱寸法安定性が損なわれるといった問題があった。また、紡糸ドープに改質物質を添加する方法では、紡糸溶媒の特殊性ゆえ適用できる物質が極めて限られ、顔料による着色程度のことしか工業的には実現できないといった問題があった。エキシマレーザー等での繊維表面のエッチングによっても接着性の向上効果は不十分であり、超臨界流体による処理は未だ実験室レベルの域を出ておらずまた導入可能な物質の範囲も限られたものである。このように、いずれの方法もその効果は十分なものでなかったり、限られた目的に対する限定的手段であったりで、汎用的な機能向上に結びつく改質方法は知られていない。
【0006】
アラミド繊維以外の種々の耐熱性繊維も、上述したアラミド繊維の問題点と一部共通した問題点をそれぞれ有している。そして、これらの繊維においても、汎用的な機能向上に結びつく改質方法は知られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−9312号公報(第(2)頁第34〜39行など)
【特許文献2】
特開平9−100174号公報(請求項1など)
【特許文献3】
特開平6−191943号公報(請求項1など)
【特許文献4】
特開2002−61094号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた耐熱性と靭性を有する繊維強化複合体を提供することを目的とする。また、本発明は、比較的安価な材料を用いて、低温条件下、簡便に製造することができる繊維強化複合体を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、改質された表面構造をもつ耐熱性繊維を提供することであり、より具体的には、本発明の目的は、平衡水分率が小さく、他の有機高分子などとの接着性に優れ、耐切創性・耐摩耗性が向上した、改質された表面構造をもつアラミド繊維を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、耐熱性繊維をシロキサンポリマーで被覆することにより、耐熱性繊維の表面構造を改質することでき、その結果として、平衡水分率を小さくしたり、他の有機高分子などとの接着性を向上させたり、耐切創性・耐摩耗性を向上させたり、フィブリル化を防止したり、紫外線から繊維を保護したりすることができるという知見を得た。また、本発明者らは鋭意検討した結果、マトリックス樹脂としてシロキサンポリマーを用い、シロキサンポリマーを補強するための補強繊維として耐熱性繊維を用いることにより優れた耐熱性と靭性を有する繊維強化複合体を提供できることを知見した。
本発明者らは、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを含有することを特徴とする複合体、
(2) シロキサンポリマーが、下記式(1);
【化6】
Figure 2004269831
(式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
を主とするシロキサン化合物が縮重合して得られる架橋シロキサンポリマーであることを特徴とする前記(1)に記載の複合体、
(3) 耐熱性繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フッ素繊維、炭素繊維、ガラス繊維および石英繊維からなる群から選ばれる1種以上の繊維であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の複合体、
(4) 耐熱性繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の複合体、
【0011】
(5) 耐熱性繊維に、下記式(1);
【化7】
Figure 2004269831
(式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
で示される化合物、前記式(1)で示される化合物の硬化触媒、所望により反応水が含まれている溶液を塗布または含浸し、ついで前記式(1)で示される化合物を硬化させることを特徴とする耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを含有する複合体の製造方法、
【0012】
(6) 溶液が、さらに式(2);
【化8】
Figure 2004269831
(式中、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基またはC1−6アルコキシ−C1−4アルキル基を表し、Rは、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基、グリシジル基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアネート基により直接または介在基を介して置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)
で示される化合物、式(2)で示される化合物が2分子以上縮合されている縮合体(ただし、式(1)で示される化合物は除く。)、式(3);
【化9】
Figure 2004269831
(式中、R、R10、R11およびR12は、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表す。そのうちR10およびR12のいずれか一方または両方は、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基またはグリシジル基により直接または介在基を介して置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基であってもよい。)
で示される化合物および式(3)で示される化合物が2分子以上縮合されている縮合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする前記(5)に記載の製造方法、
【0013】
(7) 耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを構成成分として含有することを特徴とする繊維強化ガラス、
(8) シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維、
(9) シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維が、テープ状糸条の形態を有していることを特徴とする前記(8)に記載の耐熱性繊維、
(10) 実質的に無水の有機溶剤に、式(1)で示される化合物と、加水分解可能でかつその加水分解物が前記化合物の硬化触媒となる金属を含む有機化合物とを溶解させたコート液を平衡水分率またはそれ以上の水分を含有するアラミド繊維に含浸または塗布し、ついで前記有機溶剤を除去するとともに、前記アラミド繊維中の前記水分を反応水として前記化合物を硬化させることを特徴とするシロキサンポリマーで被覆されたアラミド繊維、
【化10】
Figure 2004269831
(式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の複合体を構成する耐熱性繊維としては、シロキサンポリマーの硬化温度に耐え得る繊維であれば特に限定されないが、融点が200℃以上の繊維が好ましく、実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の繊維が特に好ましい。なお、実質的に融点を持たないとは、示差走査熱量測定(DSC)において明確なピークを示さないものをいう。また、融点および熱分解温度は、JIS K 7120:1987 プラスチックスの熱重量測定方法により測定することができる。
【0015】
本発明で用いる耐熱性繊維は、上記条件を満たせば特に限定されず、公知の繊維であってよい。例えば、耐熱性繊維としては、例えば、綿、ナイロンなどのポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維またはアクリル繊維などが挙げられる。実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の耐熱性繊維としては、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下、PBO繊維という。)、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、炭素繊維、フッ素繊維、ガラス繊維または石英繊維などが挙げられる。全芳香族ポリアミド繊維には、メタ系全芳香族ポリアミド繊維とパラ系全芳香族ポリアミド繊維がある。メタ系全芳香族ポリアミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。パラ系全芳香族ポリアミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維などが挙げられる。炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維などがあるが、高い強度が得られ易いPAN系炭素繊維が好ましい。ガラス繊維は、アルカリ含有率によって無アルカリタイプと含アルカリタイプに大別され、本発明においてはいずれを用いてよいが、含アルカリタイプのほうが耐薬品性を有するため好ましい。
【0016】
本発明で用いる耐熱性繊維は、公知の方法により容易に製造することができ、また、市販品を適宜用いてもよい。例えば、PAN系炭素繊維としては、東レ株式会社製、商品名トレカ等が挙げられる。例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維としては、東レ・デュポン株式会社製の商品名KEVLAR(登録商標)またはテイジン・トワロン社製の商品名Twaron(登録商標);コポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維としては、帝人株式会社製の商品名テクノーラ(登録商標)等が挙げられる。また、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維としては、例えば、デュポン社製の商品名NOMEX(登録商標)または帝人株式会社製の商品名コーネックス(登録商標)等が挙げられる。全芳香族ポリエステル繊維としては、例えば株式会社クラレ製の商品名ベクトラン(登録商標);PBO繊維としては、例えば東洋紡績株式会社製の商品名ザイロン(登録商標);ポリアミドイミド繊維としては、例えばローヌプーラン社製の商品名ケルメル(登録商標)等が挙げられる。石英繊維としては、例えば、Saint−Gobain Quartz S.A.S.製の商品名Quartzelなどのクオーツファイバーが好ましい。
【0017】
本発明においては、1種類の耐熱性繊維のみを用いてもよいし、任意の2種以上の耐熱性繊維を組み合わせて用いてもよい。2種以上の耐熱性繊維を組み合わせる場合、実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の耐熱性繊維を2種以上組み合わせるか、実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の耐熱性繊維とそれ以外の耐熱性繊維、例えばポリエステル、ナイロンまたはポリビニルアルコール系繊維などとを組み合わせることが好ましい。後者の場合、実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の耐熱性繊維の割合が約50重量%以上、好ましくは約70重量%以上、より好ましくは約90重量%以上であることが好適である。なかでも、本発明においては、実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の耐熱性繊維のみを使用することがより好ましく、特にポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を用いることが特に好ましい。
【0018】
本発明で用いる耐熱性繊維は、どのような形態を有していてもよい。例えば、本発明に係る耐熱性繊維は、ステープル糸であってもよいし、フィラメント糸であってもよい。フィラメント糸としては、モノフィラメントであってもよいし、複数本のモノフィラメントからなるマルチフィラメントであってもよい。これらの糸条には、撚り、編み、開繊または捲縮などの公知の処理が加えられていてもよい。また、本発明に係る耐熱性繊維は、複数本のステープル糸やフィラメント糸を引き揃えたり、撚ったり、編んだりして得られる複合糸であってもよい。さらに、本発明に係る耐熱性繊維は、布帛の形態をとっていてもよい。布帛としては、織物、編物、直交ネット、直交積層ネット、多軸積層ネットまたは不織布等が挙げられる。織物としては、例えば、平織、朱子織、綾織、横縞織、からみ織または斜こ織などにより得られる布帛が挙げられる。編物としては、例えば、平編み、ゴム編みもしくはパール編みなどの横編み、シングルデンビー編みもしくはシングルデンビー編みなどの縦編み、またはレース編み等により得られる布帛が挙げられる。不織布としては、繊維の集合体であるウェブを織ったり編んだりしないで、ウェブの繊維同士を化学的、物理的もしくは熱によって接着または絡ませたシート状の構造体などが挙げられ、いわゆるフェルトも含む。また、本発明に係る耐熱性繊維は、紙の形態をとっていてもよい。
【0019】
本発明の複合体を構成するシロキサンポリマーとしては、シロキサン結合(Si−O結合)を有しているポリマーであれば特に限定されないが、シロキサン結合が連鎖しているポリマーが好ましい。シロキサンポリマーにおいて、ケイ素原子の酸素原子と結合していない結合手には、水素原子が結合していてもよいし、有機基が結合していてもよい。有機基としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜7のシクロアルキル基;炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基;炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基;炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基;またはC1−6アルコキシ−C1−4アルキル基などが挙げられる。
【0020】
前記炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖または分枝状であってよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基、ヘプチル基、1−プロピルブチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル基、シクロヘキシル等が挙げられる。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、直鎖状または分枝状であってよく、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ブタジエニル基、2−メチルアリル基、ヘキサトリエニル基、3−オクテニル基等が挙げられる。
炭素数2〜10のアルキニル基としては、直鎖状または分枝状であってよく、例えば、プロパルギル、2−ブチン−1−イル、3−ブチン−2−イル等が挙げられる。
前記炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、1−または2−ナフチル基、ビフェニル基、1−,2−または9−アントリル基、1−,2−,3−,4−または9−フェナントリル基、アセナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基等が挙げられる。
前記C1−6アルコキシ−C1−4アルキル基としては、直鎖状または分枝状のC1−6アルコキシ基に直鎖状または分枝状C1−4アルキル基が結合したものが挙げられる。C1−6アルコキシ部位としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基が挙げられ、C1−4アルキル部位としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
前記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびC1−6アルコキシ−C1−4アルキル基は、化学的に許容される範囲で置換基を有していてもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、C1−6アルキルチオ基、C2−6アルケニルチオ基、C2−6アルキニルチオ基、C1−6ハロアルコキシ基、C2−6ハロアルケニルオキシ基、C1−6ハロアルキルチオ基、C2−6ハロアルケニルチオ基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、シアノ基、エポキシ基またはグリシジル基などが挙げられる。また、置換基の数も置換可能な数であれば特に限定されず、好ましくは1から6、より好ましくは1から3である。
【0021】
本発明の複合体を構成するシロキサンポリマーは、下記式(1);
【化11】
Figure 2004269831
(式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
を主とするシロキサン化合物が縮重合して得られる架橋シロキサンポリマーであることが好ましい。
ここで、炭素数が1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基またはsec−ブチル基などが挙げられる。
【0022】
本発明のシロキサンポリマーは、前記式(1)で示されるシロキサン化合物に加えて、さらに式(2);
【化12】
Figure 2004269831
(式中、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基またはC1−6アルコキシ−C1−4アルキル基を表し、Rは、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基、グリシジル基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアネート基により直接または介在基を介して置換されていてもよい、(a)炭素数1〜10のアルキル基、(b)炭素数2〜10のアルケニル基または(c)炭素数6〜20のアリール基を表す。)
で示されるシロキサン化合物、または前記式(2)の化合物が2分子以上縮合されている縮合体(ただし、式(1)で示される化合物は除く。)を含んでいてもよい。
【0023】
ここで、Rが炭素数6〜20のアリール基である場合は、フェニル基が特に好ましい。また、「介在基」としては、例えば、炭素数1〜6のアルキレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CONH−、−CSNH−、−SO−、−SO−、−OO−、−SS−などが挙げられる。エポキシ基としては、例えば、3,4エポキシシクロヘキシルなどが挙げられる。グリシジル基は、下記式;
【化13】
Figure 2004269831
で表される置換基である。メタクリル基は、次式;−CO−C(CH)=CHで表される置換基であり、アクリル基は、次式;−CO−CH=CHで表される置換基であり、ウレイド基は、次式;−NHCONHで表される置換基であり、イソシアネート基は、次式;−N=C=Oで表される置換基である。Rにおいて、好ましくは、炭素数6〜20のアリール基、より好ましくはフェニル基;炭素数2〜10のアルケニル基、より好ましくはビニル基;または、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基、グリシジル基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアネート基により直接または介在基を介して置換されている炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。前記炭素数1〜10のアルキル基の置換基としては、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基もしくはイソシアネート基、または介在基、特に−O−を介してアルキル基に置換されるグリシジル基、メタクリル基、アクリル基がより好ましい。置換基の数は、1〜3個が好ましく、1または2個がより好ましく、1個が特に好ましい。
【0024】
さらに、本発明のシロキサンポリマーは、前記式(1)で示されるシロキサン化合物に加えて、または前記式(1)で示されるシロキサン化合物および前記式(2)で示されるシロキサン化合物もしくはその縮合体に加えて、下記式(3);
【化14】
Figure 2004269831
(式中、R、R10、R11およびR12は、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表す。そのうちR10およびR12のいずれか一方または両方は、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基またはグリシジル基により直接または介在基を介して置換されていてもよい、(a)炭素数1〜10のアルキル基、(b)炭素数2〜10のアルケニル基または(c)炭素数6〜20のアリール基であってもよい。)
で示されるシロキサン化合物、または前記式(3)の化合物が2分子以上縮合されている縮合体を含んでいてもよい。
ここで、R10またはR12が炭素数6〜20のアリール基である場合は、フェニル基が特に好ましい。また、「介在基」は、上記と同様である。
【0025】
本発明の複合体は、本発明の目的に反しない限り、耐熱性繊維およびシロキサンポリマー以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば顔料、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、電磁波吸収体、難燃剤、抗菌剤、抗カビ剤または脱臭剤などが挙げられる。
【0026】
本発明の複合体は、耐熱性繊維とシロキサンポリマーの含有割合に応じて種々の形態をとりえる。耐熱性繊維に対してシロキサンポリマーの含有割合が少ない場合は、耐熱性繊維がシロキサンポリマーで被覆されている状態となる。その結果、本発明の複合体は、柔軟性に富み、例えば糸、布帛または紙などといった耐熱性繊維が有する形態と同一の形態を有する。一方、耐熱性繊維に対してシロキサンポリマーの含有割合が多い場合は、シロキサンポリマーがマトリックスとなり、耐熱性繊維はシロキサンポリマーを補強するための補強繊維として役割を果たす。その結果、本発明の複合体は、耐熱性繊維が有する柔軟性をもはや持ちえず、繊維よりも硬さをもった板状物や棒状物などの繊維強化ガラスとなる。
【0027】
本発明の複合体において、耐熱性繊維とシロキサンポリマーの含有割合は、使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の複合体を繊維、糸、布帛または紙などの繊維製品として使用する場合、シロキサンポリマーの付着量は、繊維全重量に対して約0.1〜20重量%程度、好ましくは約1〜10重量%程度である。特に、シロキサンポリマーによる被覆が繊維の表面改質を目的としている場合は、シロキサンポリマーの付着量は少なくてよく、繊維全重量に対して約0.1〜10重量%程度が好ましい。一方、シロキサンポリマーによる被覆が繊維の耐切創性や耐磨耗性の向上を目的としている場合は、シロキサンポリマーの付着量は繊維全重量に対して約1〜20重量%程度が好ましく、約3〜15重量%程度がより好ましい。一方、本発明の複合体を繊維強化ガラスとして使用する場合は、硬化後のVf(Fiber Volume vol%)が約39〜88vol%程度、より好ましくは約50〜70vol%程度である。なお、Vfは硬化後のシロキサンポリマーの繊維体積含有率を表す。
【0028】
本発明の複合体は、耐熱性繊維とシロキサンポリマーを組み合わせることにより製造することができる。具体的には、本発明の複合体は、ゾル−ゲル法を用いて製造することが特に好ましい。ゾル−ゲル法によれば、比較的低温で複合体を成形することができるため、繊維の酸化劣化が生じにくいという利点がある。また、新たに耐熱性の装置等を導入する必要がなく、成形時のエネルギー効率もよいという利点もある。
ゾル−ゲル法は、アルコキシシランをアルコールなどの溶剤に溶かし、ここに触媒および所望により反応水を加え、熟成した後、得られたシロキサンポリマー形成用溶液を耐熱性繊維に塗布または含浸し、乾燥後、加温または加熱し、シロキサン結合のネットワークを生成させるという方法である。この場合、下記反応式1の(1)〜(3)に示した反応を経て、シロキサン結合(≡Si−O−Si≡)が生成する。かかる方法で用いるシロキサンポリマー形成用溶液は含浸性が高いので、耐熱性繊維が布帛や紙の形態をとった場合でも実質的に全ての構成繊維の表面でシロキサンポリマーの被膜が形成される。
<反応式1>
(1)≡Si−OR + HO → ≡Si−OH + ROH
(2)≡Si−OH + HO−Si≡ → ≡Si−O−Si≡ + H
(3)≡Si−OH + RO−Si≡ → ≡Si−O−Si≡ + ROH
【0029】
以下に、前記シロキサンポリマー形成用溶液に含まれる各成分について詳細に述べる。
上記ゾル−ゲル法において使用する触媒は、一般に用いられている触媒が特別の制限なしに使用可能である。前記触媒としては、具体的には、例えば酸またはアルカリが挙げられる。より具体的に、酸触媒としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ぎ酸または酢酸等を例示できる。塩基触媒としては、例えばアンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン等が例示できる。
【0030】
また、前記触媒としては、加水分解可能な有機金属化合物も挙げられる。下記するように、触媒としては加水分解可能な有機金属化合物を用いることがより好ましい。すなわち、加水分解可能な有機金属化合物をアルコキシシランと混合してシロキサンポリマー形成用溶液とし、これを耐熱性繊維に塗布すると、繊維上の水分または/および空気中の水分(湿気)を吸い、有機金属化合物が自ら加水分解する。この時、アルコキシシランとネットワークを形成し、アルコキシシランの硬化・固化を促進する役目を担う。
【0031】
具体例を示すと、加水分解可能な有機金属化合物として、例えばテトラブトキシチタニウムを用いる場合は、シロキサンポリマー形成用溶液中に反応水が含まれなくとも、シロキサン結合のネットワークを生成する反応が進行する。この場合の反応は、詳しくは下記反応式2における(4)および(5)のようになる。<反応式2>
(4)≡Ti−OR + HO → ≡Ti−OH + ROH
(5)≡Ti−OH + RO−Si≡ → ≡Ti−O−Si≡ + ROH
上記のように、≡Ti−O結合が被膜内に導入されることにより、シロキサン結合のみの被膜に比べ、更に耐熱性および耐摩耗性などの機械的強度を向上させることができる。また、触媒として加水分解可能な有機金属化合物を使用すると、シロキサンポリマー形成用溶液中に反応水を共存させる必要が無いため、長期保存安定性が向上するという利点もある。
【0032】
ここでいう加水分解可能な有機金属化合物とは有機化学の分野で厳密に定義される有機金属化合物を指すのではなく、金属アルコラートや金属酸エステルをも含み、例えばチタン、ジルコン、アルミニウムおよびスズから成る群から選ばれる一種以上の元素を含む有機金属化合物が好適な例として挙げられる。具体的には、例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの金属酸エステルや有機スズ化合物などが挙げられ、より具体的には、テトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテートまたはジブチルスズジラウレート等を例示できる。
【0033】
本発明では、上記ゾル−ゲル法において、アルコキシシランとして、下記式(1);
【化15】
Figure 2004269831
(式中、n、R、R、RおよびRは、前記と同意義。)
で示される化合物を用いることが特に好ましい。
【0034】
上記化合物は、式(1)に示した通り、ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解不可能な置換基で置換されたものを繰り返し単位として含む。かかる化合物を用いれば、ケイ素原子の4個の置換基の全てが加水分解可能な置換基である化合物と比較して、隣接するケイ素原子との間で強固なシロキサン結合の数が1つ少なく、ケイ素原子の置換基のうち少なくとも1つが網目構造に組み込まれないで末端が途切れているため、シロキサンポリマーのコーティング膜に柔軟性を与えたり、シロキサンポリマーのマトリックスに靭性を与えたりすることができる。また、式(1)中のRは、式(1)の化合物がその後の加水分解・重縮合反応を受けても加水分解されないため、シロキサンポリマーのコーティング膜またはマトリックスに有機性を与え、そして結果的にはシロキサンポリマーのコーティング膜またはマトリックスに撥水性を与えることができる。
式(1)の化合物を得るための原料(単量体)は、安価であり、無機性が強いテトラアルコキシシランと同程度の安さで購入できる。したがって、式(1)の化合物を用いることにより、あえて高価ないわゆるシランカップリング剤を併用しなくとも、十分に有機性を持ち、かつ十分な強度を持ったシロキサンポリマーを形成することができる。
【0035】
式(1)で示される化合物は、単量体(例えば、メチルトリメトキシシラン)を縮合することにより得ることが出来る。主鎖の繰り返し単位がn=2〜10であるのは、n=1、すなわち単量体を用いると、ポリマー化に時間が掛かり、短時間で十分な強度を持ったシロキサンポリマーを形成することが困難となるからである。しかしながら、nが11以上になると、逆に繊維素材に塗布または含浸したときに、繊維素材上でのポリマー化のためのアルコキシ基等の数が不足して、十分な強度を持ったシロキサンポリマーを形成することが困難となる。したがって、本願発明において好ましいのは、n=2〜10程度、中でもn=2〜8程度の縮合体である。
なお、一般に単量体から式(1)のような縮合体を合成する場合、その重合度を正確に制御することは、技術的観点から事実上かなり困難である。したがって、本願発明でn=2〜10、好ましくはn=2〜8のものを含むとの意味は、重合度の分布から見て、nが2〜10程度、好ましくは2〜8程度のものが主として含まれているということであり、例えばnが11以上である化合物が含まれていたとしても差し支えない。
【0036】
式(1)で示される化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン等の縮合体を例示できる。なお、式(1)の化合物は、かかる単量体の1種類のみを縮合したものであっても、また上記例示した単量体の2種類以上を縮合したものであっても良い。
【0037】
なお、式(1)の化合物における加水分解不可能な置換基(R)の第一義的な役割は、シロキサンポリマーのコーティング膜に柔軟性を与えたり、シロキサンポリマーのマトリックスに靭性を与えたりすることにあるが、同時にシロキサンポリマーのコーティング膜またはマトリックスに撥水性を付与するのであれば、Rはアルキル基とするのが好ましい。一般に有機性置換基は、炭素数が増える程、有機性すなわち撥水性が増加するが、炭素数があまり大きくなると、立体障害によりコーティング膜またはマトリックス内に歪が生じてコーティング膜またはマトリックスの強度低下の原因となる。したがって、置換基Rの炭素数や式(1)の化合物を構成する各単量体の種類・量は、予備的な製造試験を行う等して決定することが好ましい。もっともコーティング膜またはマトリックスへの撥水性の付与は、後述する式(2)または式(3)の化合物を添加することによっても達成可能であるため、式(1)におけるRをアルキル基とすることが必須というわけではない。
【0038】
上記ゾル−ゲル法においては、アルコキシシランとして、上記式(1)で示される化合物に加えて、下記式(2);
【化16】
Figure 2004269831
(式中、R、R、RおよびRは、前記と同意義。)
で示される化合物、または/および前記式(2)で示される化合物が2分子以上縮合されている縮合体(ただし、式(1)で示される化合物は除く。)が含まれていてもよい。
【0039】
このように、式(1)の化合物に加え、式(2)で示される化合物または/およびその縮合体を含有させることにより、式(2)で示される化合物またはその縮合体が有する有機性等の性質を新たに付与したり、有機性等の性質を増加したりすることが可能である。かかる目的で加えられる式(2)で示される化合物は、ケイ素原子に結合する4個の置換基のうち、3個が加水分解可能な置換基であり、残りの1個が加水分解不可能な置換基から成り立つ化合物である。なお、本発明においては、式(2)で示される化合物を2種以上用いてもよい。また、縮合体としては、式(2)で示される単量体を2種以上組み合わせて縮合したものであっても良い。なお、前記縮合体は、式(2)で示される化合物を2〜10分子程度縮合させたものが好ましい。
【0040】
式(2)で示される化合物としては、具体的に、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。式(2)で示される化合物の縮合体としては、上記化合物を単量体とする2〜10分子程度の縮合体を例示できる。
【0041】
上記ゾル−ゲル法においては、アルコキシシランとして、上記式(1)で示される化合物に加えて、または式(1)の化合物および式(2)の化合物または/およびその縮合体に加えて、下記式(3);
【化17】
Figure 2004269831
(式中、R、R10、R11およびR12は、前記と同意義。)
で示される化合物、または/および前記式(3)で示される化合物が2分子以上縮合されている縮合体を用いてもよい。
【0042】
シロキサンポリマー形成用溶液に、更に式(3)または/およびその縮合体を添加することによって、式(3)または/およびその縮合体が有する有機性等の性質を新たに付与したり、または、有機性等の性質を増加することが可能である。式(3)で示される化合物は、ケイ素原子に結合する4個の置換基のうち、2個が加水分解可能な置換基であり、他の2個が加水分解不可能な置換基から成り立つ化合物である。なお、本発明においては、式(3)で示される化合物を2種以上用いてもよい。また、縮合体として、式(3)で示される単量体を2種以上組み合わせて縮合したものであっても良い。なお、前記縮合体は、式(3)で示される化合物を2〜10分子程度縮合させたものが好ましい。
【0043】
式(3)で示される化合物としては、具体的に、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。また、式(3)で示される化合物の縮合体としては、上記化合物を単量体とする2〜10分子程度の縮合体を例示できる。
【0044】
上記したような式(2)の化合物もしくはその縮合体または式(3)の化合物もしくはその縮合体をシロキサンポリマー形成用溶液に添加すれば、シロキサンポリマーの有機性を増加でき、結果的としてコーティング膜またはマトリックスの撥水性などを向上させると共に、コーティング膜またはマトリックスの表面に、他の有機化合物等との反応の足場を提供できる。
式(2)の化合物およびその縮合体、ならびに式(3)の化合物およびその縮合体は、一般的にはその総量がシロキサンポリマー形成用溶液の主成分である前記式(1)で示される化合物に対し50重量%を超えない範囲にてシロキサンポリマー形成用溶液に添加することが好ましい。両者の合計添加量がこの範囲を超えると、シロキサンポリマー形成用溶液を耐熱性繊維に塗布または含浸したときに、主成分である式(1)で示される化合物との間でうまく結合せず、コーティング膜またはマトリックスの強度が不十分となる可能性があるため、上記範囲が好ましい。
式(2)の化合物およびその縮合体、ならびに式(3)の化合物およびその縮合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加する場合には、添加量に依存してシロキサンポリマーのコーティング膜またはマトリックスの強度が低下することを想定し、予備的な製造試験を行う等し、目的を達成し得る添加量の範囲を明らかにしたうえで、添加を最小限に抑えるようにすることが好ましい。
【0045】
式(2)の化合物もしくは式(3)の化合物における加水分解不可能な置換基(R、R10、R12)の第一義的な役割は、シロキサンポリマーのコーティング膜に柔軟性と撥水性を与えたり、シロキサンポリマーのマトリックスに靭性と撥水性を与えたりすることに加え、他の有機化合物等との反応の足場をコーティング膜表面またはマトリックス表面に提供することである。さらには、従来ガラスの表面にコーティングを施すのに用いられてきた公知の有機あるいは無機のコーティング膜をオーバーコートするための足場としても利用できる。一般に有機性置換基は、炭素数が増える程、有機性すなわち撥水性が増加するが、炭素数があまり大きくなると、立体障害によりコーティング膜またはマトリックス内に歪が生じてコーティング膜またはマトリックスの強度低下の原因となる。したがって、加水分解不可能な置換基の炭素数や式(2)または式(3)の化合物の種類・量は、予備的な製造試験を行う等して決定することが好ましい。
【0046】
本発明において、シロキサンポリマーのコーティング膜またはマトリックスの強度の向上が必要となる場合がある。このような場合は、下記式(4);
Si(OR13(4)
(式中、R13は、置換基ごとにそれぞれ同一または異なってもよく、水素または炭素数1〜10のアルキル基である。)
で示される化合物をシロキサンポリマー形成用溶液に添加することにより成し遂げられる。このものは単量体で用いてもよいし、縮合体で用いてもよい。
【0047】
シロキサンポリマー形成用溶液には、反応水が含まれていてもよいが、反応水が含まれていない方が好ましい。この場合は、空気中の水分や繊維中の水分が、前記式(1)で示される化合物の硬化のための反応水として利用される。なかでも、繊維中の水分が反応水として利用されることがより好ましい。繊維中の平衡水分率を低下させることができるからである。
【0048】
シロキサンポリマー形成用溶液において用いる溶剤としては、組成物が安定である限り特に限定されず、アルコール類を例示できる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはヘキサノール等を例示できる。さらにまた、アセトンもしくはMEKなどのケトン類;ジオキサンもしくはテトラヒドロフランなどのエーテル類;またはトルエンなども用いることができる。これら溶剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。また、その添加量を制御することによって、シロキサンポリマー形成用溶液の粘度や乾燥速度の調整も可能である。
本発明において、シロキサンポリマー形成用溶液に反応水が含まれない場合は、溶剤も実質的に無水の有機溶剤を用いることが好ましい。本発明で言う、「実質的に無水」というのは、完全無水であれば申し分ないが、工業的グレードの試薬を用い、積極的に水を添加せずに取り扱う限りにおいては実質的に無水と言えるものである。
【0049】
また、シロキサンポリマー形成用溶液の粘度や乾燥速度の調整の目的では、特に、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどのグリコール類;または、メトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノールもしくはブトキシプロパノール等のセルソルブ類等の粘度や沸点の高い有機溶剤を単独または二種以上混合して使用することが好ましい。むろん、上記粘度や沸点の高い有機溶媒の1種以上と共に、上記アルコール類を同時に添加しても良い。なお、シロキサンポリマー形成用溶液の粘度や乾燥速度の調整を目的とする場合は、前記有機溶媒のみならず、界面活性剤をシロキサンポリマー形成用溶液に含有させてもよい。
【0050】
特に、前記したグリコール類やセルソルブ類は、その分子内に水酸基を有しているため、式(1)の化合物の縮合反応によって形成されるシロキサン結合のネットワーク内に導入されることがある。グリコール類やセルソルブ類は有機性を有しているため、これが導入されることにより、得られるシロキサンポリマーの有機性が増すことになる。ゆえに、より有機性の高いシロキサンポリマーを得たいときには、上記シロキサンポリマー形成用溶液の溶剤としては、グリコール類やセルソルブ類を用いることが好ましい。
【0051】
さらに、本発明で用いるシロキサンポリマー形成用溶液には、例えば顔料や紫外線吸収剤などの公知の機能性物質を含有させてもよい。これによって、例えば、従来耐熱性繊維の内部に入れることが極めて困難であった機能性物質をコーティング膜またはマトリックス中に溶解または分散させることができ、耐熱性繊維または繊維強化ガラスに更なる機能を付加できる。この際、機能性物質は繊維表面に局在化していることから、例えば紫外線吸収剤などの場合は、その効果が繊維内部に存在する場合に比して倍加しえる。前記機能性物質としては、本発明の目的を害しない限り、繊維分野で用いられている公知の機能性物質を特に限定なく用いることができるが、例えば、顔料、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、電磁波吸収体、難燃剤、抗菌剤、抗カビ剤または脱臭剤などが挙げられる。前記顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄もしくはカーボンブラック等の無機顔料またはフタロシアニンブルー等の有機顔料などが挙げられる。前記酸化防止剤としては、例えばフェノール系またはアミン系の酸化防止剤等が挙げられる。前記光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サルチレート系またはアクリロニトリル系紫外線吸収剤等が挙げられる。前記帯電防止剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系または非イオン系界面活性剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、各種のホウ酸系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤、チッソ系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機系難燃剤またはコロイド系難燃剤等が挙げられる。
【0052】
以上述べてきたシロキサンポリマー形成用溶液を耐熱性繊維と接触させて組み合わせ、ついでシロキサンポリマー形成用溶液に含まれるアルコキシシラン、好ましくは前記式(1)で示される化合物を硬化させることにより、本発明の複合体を製造することができる。シロキサンポリマー形成用溶液と耐熱性繊維との組み合わせ方は、本発明の複合体の形態に応じて適宜選択することができる。具体的に、本発明の複合体が(i)耐熱性繊維に対するシロキサンポリマーの含有割合が多く、シロキサンポリマーがマトリックスとなり、耐熱性繊維がシロキサンポリマーを補強するための補強繊維となっている繊維強化ガラス(以下、単に「繊維強化ガラス」という)の状態の場合と、(ii)耐熱性繊維に対してシロキサンポリマーの含有割合が少なく、耐熱性繊維がシロキサンポリマーで被覆されている状態(以下、単に「シロキサンポリマー被覆繊維」という)の場合に分けて説明する。
【0053】
繊維強化ガラスにおいて、シロキサンポリマー形成用溶液を耐熱性繊維と接触させて組み合わせる方法は、繊維強化複合体の製造方法において用いられている公知の方法に従えばよい。具体的には、例えば、含浸法、加圧含浸炭化法、CVD法などが挙げられる。前記含浸法は耐熱性繊維からなる基材にシロキサンポリマー形成用溶液を含浸させる方法である。CVD法は高温に熱した耐熱性繊維からなる基材に減圧下でシロキサンポリマー形成用溶液を沈積させる方法である。本発明においては、含浸法を用いることが好ましい。含浸法としては、例えば、プリプレグ法、フィラメントワインド法または電着法などがあるが、プリプレグ法を用いることがより好ましい。
【0054】
プリプレグ法の場合、耐熱性繊維からなる基材にシロキサンポリマー形成用溶液を含浸し、プリプレグを得た後、該プリプレグを積層、巻き付けなどの賦型工程を経て、プレス成形、真空バック成形、オートクレーブ成形あるいはラッピング成形などの方法によって加熱成形することにより、本発明にかかる繊維強化ガラスを得ることができる。加熱成形時の温度は、約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度である。加熱成形は、常圧下で行っても減圧下もしくは加圧下で行ってもよいが、オートクレープ成形の様に減圧しながら加圧することが好ましい。加熱処理後は徐々に冷却することが好ましい。
上記製造方法において、耐熱性繊維からなる基材としては、耐熱性繊維から構成されていれば、どのような構造又は形態を有していてもよいが、例えば一方向材(短繊維糸、長繊維糸など)、ヤーン、織物(二軸織物、三軸織物など)、編物、不織布、ペーパーあるいはマットなどが挙げられる。
【0055】
シロキサンポリマー被覆繊維は、以上述べてきたシロキサンポリマー形成用溶液を、耐熱性繊維に含浸または塗布し、得られた耐熱性繊維において、アルコキシシラン、好ましくは式(1)で示される化合物を硬化させることにより得ることができる。シロキサンポリマー被覆繊維の製造方法の好ましい態様としては、実質的に無水の有機溶剤に、式(1)で示される化合物と、加水分解可能でかつその加水分解物が前記化合物の硬化触媒となる金属を含む有機化合物とを溶解させたコート液を平衡水分率またはそれ以上の水分を含有するアラミド繊維に含浸または塗布し、ついで前記有機溶剤を除去するとともに、前記アラミド繊維中の前記水分を反応水として前記化合物を硬化させるという方法が挙げられる。
シロキサンポリマー形成用溶液に反応水が含まれていない場合、繊維中の水分を反応水として利用するために、被覆される耐熱性繊維は、平衡水分率またはそれ以上の水分を含有する耐熱性繊維が好ましく、特に平衡水分率またはそれ以上の水分を含有するアラミド繊維がより好ましい。具体的に、耐熱性繊維中の水分率は、繊維重量に対して50重量%以下、より好ましくは20重量%以下に調節するとよい。あまり水分率が高すぎると、式(1)で表される化合物などの硬化反応が不均一になるので上記範囲が好ましい。一方、繊維が絶乾状態では硬化反応が遅くなるので、少なくとも平衡水分率またはそれ以上を含有することが好ましい。例えば、アラミド繊維の場合は、水分率が約7重量%程度であることが好ましい。
【0056】
上記シロキサンポリマー形成用溶液での含浸または塗布に先立ち、耐熱性繊維に付着している紡糸油剤、紡績油剤または糊剤などの付着物を精練などにより除去しておくことが強固なコーティング膜を形成するために好ましい。ただし、これらの油剤や仕上げ剤の除去は本発明実現の必須の要件ではなく、場合によってはその必要がないばかりか、これらの成分をコーティング膜中の高分子構造中に取り込むような組成のものを用いることが可能である。
【0057】
耐熱性繊維にシロキサンポリマー形成用溶液を含浸または塗布する工程は、(a)糸状の耐熱性繊維に前記シロキサンポリマー形成用溶液を含浸または塗布する場合と、(b)織物、編物、不織布または紙などのシート状の耐熱性繊維に前記シロキサンポリマー形成用溶液を含浸または塗布する場合とが挙げられる。
前記(a)の場合、糸の形状は、フィラメント糸、ステープル糸などいずれの形状であってもよいが、フィラメント糸であれば、本発明の改質手段、すなわち、耐熱性繊維の表面にシロキサンポリマーのコーティング膜を形成させる工程を繊維紡糸工程の紡糸直後に組み込むことができ、シロキサンポリマーのコーティング膜による繊維表面の改質を、繊維の紡糸に引き続き連続的に行うことができるため効率的になる。そのため、含浸または塗布の方法は公知の方法を用いてよいが、好ましい方法としては、紡糸直後の耐熱性繊維フィラメント糸をシロキサンポリマー形成用溶液に浸漬するという方法が挙げられる。より好ましくは、紡糸直後の耐熱性繊維フィラメント糸を平衡水分率またはそれ以上の水分を含む程度に乾燥させ、ついでシロキサンポリマー形成用溶液に浸漬するという方法が挙げられる。
【0058】
前記(b)の場合も、含浸または塗布の方法は公知の方法を用いてよい。例えば、シロキサンポリマー形成用溶液に耐熱性繊維からなるシート状物を浸漬し、余剰分を搾り取るという方法が挙げられる。また、スプレーなどの公知の器具を用いて、シロキサンポリマー形成用溶液を耐熱性繊維からなるシート状物に塗りつけたり、または吹き付けたりしてもよい。さらに、いわゆる押出し被覆機を用いて、シロキサンポリマー形成用溶液を耐熱性繊維からなるシート状物に被覆してもよい。具体的には、下記のような方法が挙げられる。耐熱性繊維からなるシート状物を作成し、ついでシート状物を構成する耐熱性繊維の含水率が平衡水分率またはそれ以上の濃度になるように調整する。また、含水率を上記のように調節した耐熱性繊維を用いてシート状物を作成してもよい。ついで、前記の方法を用いて得られたシート状物にシロキサンポリマー形成用溶液を含浸または塗布する。
【0059】
ついで、シロキサンポリマー形成用溶液を含浸または塗布させた耐熱性繊維において式(1)で示される化合物を硬化させる。具体的には、シロキサンポリマー形成用溶液の溶剤を除去し、反応水によって触媒の加水分解とシロキサンの硬化とを行う方法が挙げられる。より具体的には、約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理することにより、前記シロキサンポリマー形成用溶液が硬化・固化される。かかる処理は、常圧下で行っても減圧下もしくは加圧下で行ってもよいが、常圧下で行うことが好ましい。
【0060】
本発明においては、さらに前記耐熱性繊維に対して公知の処理を施してもよい。公知の処理としては、例えば、開繊処理や分繊処理が挙げられる。これらの処理について下記に詳述する。
シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維を開繊処理することにより、シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維からなるテープ状糸条が得られる。前記テープ状糸条の糸幅は、約5〜50mm程度であることが好ましい。
開繊処理を施すシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維は、複数本のモノフィラメントからなるマルチフィラメントの形態を有することが特に好ましい。前記マルチフィラメントは、複数本のモノフィラメントを引き揃えただけであってもよいし、さらに撚りが加えられていてもよい。加撚方法は公知の手段に従ってよく、撚り方向はS撚りでもZ撚りでもよい。また、マルチフィラメントは引き揃えた後、一旦巻き取られてもよく、撚りはこの巻き取りの際に生じる仮撚りであってもよい。前記マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの本数は特に限定されないが、約5〜10000本程度であることが好ましい。また、前記マルチフィラメントを構成するモノフィラメントは、製造工程の管理や取扱いの容易性などの観点から、直径が約0.1〜100μm程度であることが好ましい。
【0061】
本態様においては、シロキサンポリマーでの被覆工程と下記に詳述する開繊工程を連続的に行ってもよいし、シロキサンポリマーでの被覆工程の後、得られたシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維を一旦巻き取り、その後開繊工程を行ってもよい。しかし、被覆工程と開繊工程は連続的に行うことが好ましい。被覆工程と開繊工程を別々に行う場合は、下記のように行うことが好ましい。巻き取られている耐熱性繊維からなるマルチフィラメントを順次引き出し、上述のシロキサンポリマー形成用溶液が入った浴を通過させ、ついでシロキサンポリマー形成用溶液を含浸させたマルチフィラメントを上述のように加熱処理してシロキサンポリマーのコーティング膜を形成させ、ついでシロキサンポリマーで被覆されたマルチフィラメントを再度ワインダーで巻き直す。この巻き直し工程において、巻き取り速度は、始めにマルチフィラメントを巻き取った速度よりも遅い速度であることが好ましい。具体的には、約1〜100m/分程度の速度であることが好ましい。こうすることにより、先のマルチフィラメント巻き取り時にできた仮撚り、または所望により設けられた撚りが、部分的または全体的に解撚される。
【0062】
開繊処理は、耐熱性繊維、特にマルチフィラメントの糸幅を広げるために行われる。該開繊処理は公知の方法に従って行われてよく、例えば水流による開繊、液体を媒体とした振動による開繊、ロールによる加圧での加工による開繊または空気流を用いた開繊等が挙げられる。本発明では中でも、空気流、特に吸引気流を用いた開繊が好ましく用いられる。
【0063】
本発明で行われる空気開繊で用いる装置を図1に示す。図1において、符号F1はマルチフィラメントを示している。このマルチフィラメントは、上述してきたようにシロキサンポリマーで被覆されたマルチフィラメントである。
図示しない給糸機から、好ましくは約1〜100m/分程度、例えば約5m/分の流送速度で線状に連続的に流送されてくるマルチフィラメントF1は、フィーダー手段を構成するフロントフィーダー1に引き取られ、バックフィーダー4方向へ調速制御されて約2cmのオーバーフィード量が生ずるように送り出される。このフロントフィーダー1とバックフィーダー4との間には、上流側に加熱手段2としての熱風送風器、下流側に風道手段3としての吸引風道管が配設されており、熱風送風器2はマルチフィラメントF1の上方から熱風を吹き付けて、上記マルチフィラメントF1を吸引風道管3に送り込む。この時、熱風の温度は、約80〜150℃程度が好ましい。図1中、加熱手段2は、熱風送風器であるが、例えば加熱用ホットロール、超音波発生器、高周波誘電加熱器またはセラミック遠赤外線ヒーター等を適宜選択して用いることができる。なかでも、加熱手段2としては熱風送風器を使用することがより好ましい。吸引風道管3には、気流コントロールバルブ3bとバキュームポンプ3cとが付帯されており、当該吸引風道管3の吸引口3aに吸引気流を連続的に発生させるようになっている。そして、マルチフィラメントF1はフロントフィーダー1とバックフィーダー4とで構成されるフィーダー手段によって、吸引風道管の吸引口3aの中に所望の撓み量が生ずるように調速制御されている。なお、図1中、吸引風道管3で示される空気流発生装置は、上述のような空気を吸引する装置の代わりに、空気を押出する装置でもよいが、空気吸引装置がより好ましい。
【0064】
本発明に係るシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維からなるマルチフィラメントを分繊することにより、繊度がより小さいマルチフィラメントを作製することができる。分繊の程度によっては、シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維のモノフィラメントを作製することもできる。
分繊処理を施すシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維からなるマルチフィラメントは、どのような形態を有していてもよいが、上述したテープ状糸条の形態を有していることが、分繊の容易性の観点から好ましい。
分繊処理は、公知方法に従って容易に行うことができる。例えば、一連式分繊機または二連式分繊機など公知の分繊機を用いて分繊処理が行える。また、分繊処理においては、公知の条件を採用してよい。
【0065】
以上のようにして製造される本発明の複合体は、その形態に応じて種々の用途に用いることができる。例えば、本発明の複合体が繊維強化ガラスの形態を有する場合は、耐熱性が要求される用途、具体的には、航空宇宙用部材、スポーツ用具、構造部材、プリント配線基板、ブレーキ、高温炉内装品などに用いられる。スポーツ用具としては、例えばゴルフシャフト、テニスラケット、釣竿等が挙げられる。航空宇宙用部材としては、人工衛星、ロケット、宇宙往還機、宇宙ステーション等の宇宙構造物に用いられる構造部材等が挙げられる。構造部材としては、民事用および軍事用車両、即ち戦車、自動車、飛行物体(例えばヘリコプターおよび航空機)、船舶および軌道車の外装部材(装甲)などが挙げられる。また、家屋や金庫などの外装部材なども挙げられる。
【0066】
また、本発明の複合体がシロキサンポリマー被覆繊維の形態を有する場合は、特に撥水性および耐熱性を要する用途に好適に用いられる。具体的に本発明にかかるシロキサンポリマー被覆繊維は、例えば消防服や作業手袋などの防護衣服などに応用されることが好ましい。また、複合材料を構成するための素材としても好適に用いられる。複合材料とは、2種類以上の素材を組み合わせることで、さまざまな特性(強度・剛性・靭性・化学的特性など)を発揮させることを目的として作られた材料のことである。ここでいう「素材の組み合わせ」とは、原子レベルより十分大きいサイズでの組み合わせを意味しており、μmのオーダーで組み合わせた材料を含む。
【0067】
特に本発明にかかる耐熱性繊維がテープ状糸条の形態を有している場合、1次元、2次元または3次元の強化相である複合材料の素材として好適に用いられる。例えば、前記テープ糸条を使用して織物を形成し、該織物にさらに樹脂を含浸させて複合材料を作製する。得られた複合材料は、例えば気球や飛行船などの航空分野で保護材料として好適に使用される。さらに、前記テープ糸条からなる布帛を既成の合成樹脂フィルム等に張りあわせて、強化フィルム膜材を形成してもよい。該膜材も、航空分野等において好適に用いられる。
【0068】
【実施例】
以下、実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、その技術思想が及ぶ範囲において、実施例に限定されるものではない。
【0069】
〔実施例1〕
(1)メチルトリメトキシシラン(以下「MTMS」という)縮合体の調製
500ml三つ口フラスコに、MTMS181g、メタノール50gおよび純水18gを加え十分に撹拌した。さらに61%硝酸2gを加え撹拌しながら3時間加熱・還流させ、反応終了後、加熱しながら反応容器内を減圧にしメタノールを除去した。このようにして得られたMTMS縮合体は、ガスクロマトグラフィー分析により3〜4量体が中心であった。
【0070】
(2)コート原液の調製
得られたMTMS縮合体140g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン50g、触媒として、ジブチルスズジアセテート8gを無水のイソプロピルアルコール198gに溶解してコート原液を調製した。
【0071】
(3)アラミド繊維へのコーティング膜形成
(a)アラミド繊維織物の物性向上の評価
ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製の「ケブラー(KEVLAR(R);デュポン社登録商標)」,品種K−29)20番手(292dtex)双糸の紡績糸(585dtex)を用いて密度タテ59本/インチ、ヨコ47本/インチで織物を製織し、ツイルで目付235g/mのアラミド織維織物を得た。
【0072】
この織物を上記コート原液を無水のイソプロピルアルコールで20倍に希釈したコート液に浸漬した後、京都マシンナリー(株)製のマングルを用い0.15MPaの圧力で絞り、1m/分の速度でディップ加工した。加工後の織物を30分間風乾後、(株)タバイ製のセーフティオーブンSHPS−222を用いて150℃で10分間キュアーリング処理を行い、付着率6.5重量%のコーティング膜が形成された織物を得た。得られた織物の特性を表1に示す。なお、第1表に示されている諸特性は、以下の方法により試験した。
【0073】
〔特性の試験方法〕
(1)平衡水分率:JIS−L1963(一般織物試験方法の6.9水分率試験法)に基づき測定した。
(2)引張強力:JIS−L1963(一般織物試験方法の6.12)に従って(株)島津製作所製のオートグラフを用い、試長200mm、引張速度200mm/分、試料幅30mmのストリップ法で織物のタテ方向を試験した。
(3)撥水性:JIS−L1092(繊維製品の防水性試験方法の5.2はっ水度(スプレー試験))に従って行った。
(4)耐切創性:ISO13997法に従い、刃物はAmerican Safety Razor Co.品番No.88−0121を使用した。
(5)フロスティング:大栄科学精機製作所製のフロスティング試験機を用い、750gの荷重下、共布で10分間摩耗した後、グレースケールで白化の状態を判定した。5級が最も優れ、1級が最も白化が激しい(悪い)状態を示す。
【0074】
【表1】
Figure 2004269831
【0075】
表1の結果より、本発明のコートされたアラミド繊維織物は、未処理のアラミド繊維織物に比べ、著しく平衡水分率が低下し、かつ、表面の撥水性が向上している。さらに、フロスティングテスト結果が示すとおり、耐摩耗性に優れており、また、アラミド繊維の特長である優れた耐切創性がさらに向上していることがわかる。
【0076】
(b)マイクロドロップレット法によるフィラメント糸の接着性向上の評価
単糸径12ミクロン、フィラメント数1000本からなるアラミド繊維(東レ・デュポン株式会社製の「ケブラー(KEVLAR(R);デュポン社登録商標)」,品種K−29)のマルチフィラメントをボビンより引き出し、ディップ浴に上記コート原液を無水のイソプロピルアルコールで20倍に希釈したコート液を入れたディッピングマシンに通した。そして、非接触乾燥ゾーンで150℃・60秒乾燥させて溶剤を除去した後、連続的に250℃の非接触熱処理ゾーンを60秒、続いて300℃の接触ロールに15秒通してキュアを完了させた。
【0077】
このようにして得たコーティングされたマルチフィラメントから単糸を1本取り出し、ゾル状のエポキシ樹脂を付着させ、さらにエポキシ樹脂のキュアを行い、単糸表面に付着させたエポキシ樹脂を硬化させ、単繊維引き抜き試験用試料を調製した。
【0078】
比較としてコート液による処理を行わない上記マルチフィラメントからも、同様にして単繊維引き抜き試験用試料を調製した。
【0079】
これらの単繊維引き抜き試験用試料により、東栄産業(株)製複合材界面特性評価装置を用いた単繊維引き抜き試験法(マイクロドロップレット法)によって、アラミド繊維糸とエポキシ樹脂との密着性を評価した。得られた値は界面強度を表す界面剪断強度である。
【0080】
その結果、未処理のアラミド繊維糸から得られたサンプルの値が18.6±1.7MPaであったのに対し、コーティング処理されたアラミド繊維糸から得られたサンプルでは27.0±2.7MPaと約45%の界面剪断強力の向上が認められた。
【0081】
この結果は、アラミド繊維糸とエポキシ樹脂とが、繊維表面に強固に固着したコーティング膜を介して強力に密着していることを意味しており、本発明の処理をしたアラミド繊維糸を複合材料の補強繊維に使用すればマトリクス樹脂との接合強力を大幅に向上させ得ることを示すものである。
【0082】
〔実施例2〕
イソプロピルアルコール785gにメトキシシランオリゴマー(重合度3〜4量体)200gを加え撹拌した後、チタンテトラブトキシド15gを加え十分に撹拌し、マトリックス形成用溶液を調合した。このマトリックス形成用溶液を、110dtexのポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製 KEVLAR(登録商標)49)からなる、織密度18.5本/25mm、織物目付27g/m、織組織Basicの三軸織物に含浸し風乾後、マトリックス形成用溶液の体積含有率を測定したところGC約23.9wt%であった。なお、GCは硬化前のマトリックス形成用溶液の重量含有率を表す。その後、常圧下、120℃で3分間熱処理を行い、本発明に係るアラミド繊維強化ガラスを得た。このとき、シロキサンポリマーの繊維体積含有率はVf84%であった。
【0083】
〔実施例3〕
1K(66tex)の炭素繊維(東レ株式会社製 TORAYCA(登録商標)T300)からなる、織密度9.24本/25mm、織物目付74g/m、織組織Basicの三軸織物に、実施例2と同一のマトリックス形成用溶液を含浸し、得られた含浸物を離型フィルム上に載せ、徐々に風乾した。マトリックス形成用溶液の体積含有率を測定したところGC約42.3wt%であった。その後、オートクレープで、200℃、30分間熱処理を行い、その後徐々に冷却することにより、本発明に係る炭素繊維強化ガラスを得た。このとき、シロキサンポリマーの繊維体積含有率はVf65.5%であった。
【0084】
【発明の効果】
本発明の複合体は、その形態に応じて下記のような利点を有する。
本発明のシロキサンポリマー被覆繊維は、耐熱性合成繊維の表面が柔軟で、かつ強固なシロキサンポリマーのコーティング膜で被覆されるため、耐切創性・耐摩耗性を向上させることができる。式(1)で示される化合物を硬化させる際に繊維中の水分を使用した場合、耐熱性合成繊維の平衡水分率を低下させることができるという利点もある。さらに、式(2)もしくは式(3)で示された化合物またはそれらの縮合体の少なくとも1種を加えることで、耐熱性合成繊維を被覆するシロキサンポリマーのコーティング膜に加水分解不可能な有機性置換基を導入でき、いわゆるシランカップリング剤と同様な他の有機化合物との反応の足場を繊維表面に提供できる。したがって、耐熱性合成繊維を高機能化させると共に、高い平衡水分率、低い耐摩耗性または低い接着性などの問題から従来は利用できなかった様々な用途でも利用可能な耐熱性合成繊維を得ることができる。
【0085】
本発明の繊維強化ガラスは、優れた耐熱性と靭性を兼ね備えており、従来の繊維強化複合体が有していた問題を一挙に解決できるものである。そのため、本発明の繊維強化ガラスは、約1000℃以下、好ましくは約500℃以下、より好ましくは300〜500℃の高温状況に曝される可能性のある部材に好適に用いることができる。また、本発明の繊維強化ガラスにおいては、耐熱性繊維の繊維束へのシロキサンポリマーの含浸性が高いので、強度や弾性率などの機械的物性にも優れている。また、本発明の繊維強化ガラスにおいては、マトリックスであるシロキサンポリマーと耐熱性繊維との界面での密着性が従来の繊維強化複合体に比べて高いため、耐熱性繊維が有する強度や弾性などの機械的物性を十分に発揮できる。本発明の繊維強化ガラスは、比較的低温で成形することができるため、成形時の耐熱性繊維の酸化劣化を防ぐことができる。また、本発明の繊維強化ガラスは、比較的安価な材料を用いて簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の開繊処理を行う装置の模式図である。
【符号の説明】
1 フロントフィーダー
2 加熱手段
3 風道手段
3a 吸引口
3b 気流コントロールバルブ
3c バキュームポンプ
4 バックフィーダー
F1 マルチフィラメント
F2 開繊された高機能繊維テープ状糸条
h 帯熱柔軟領域

Claims (10)

  1. 耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを含有することを特徴とする複合体。
  2. シロキサンポリマーが、下記式(1);
    Figure 2004269831
    (式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
    を主とするシロキサン化合物が縮重合して得られる架橋シロキサンポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
  3. 耐熱性繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フッ素繊維、炭素繊維、ガラス繊維および石英繊維からなる群から選ばれる1種以上の繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合体。
  4. 耐熱性繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合体。
  5. 耐熱性繊維に、下記式(1);
    Figure 2004269831
    (式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
    で示される化合物、前記式(1)で示される化合物の硬化触媒、所望により反応水が含まれている溶液を塗布または含浸し、ついで前記式(1)で示される化合物を硬化させることを特徴とする耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを含有する複合体の製造方法。
  6. 溶液が、さらに式(2);
    Figure 2004269831
    (式中、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基またはC1−6アルコキシ−C1−4アルキル基を表し、Rは、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基、グリシジル基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアネート基により直接または介在基を介して置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)
    で示される化合物、式(2)で示される化合物が2分子以上縮合されている縮合体(ただし、式(1)で示される化合物は除く。)、式(3);
    Figure 2004269831
    (式中、R、R10、R11およびR12は、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表す。そのうちR10およびR12のいずれか一方または両方は、その1つまたはそれ以上の数の水素原子がエポキシ基またはグリシジル基により直接または介在基を介して置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基であってもよい。)
    で示される化合物および式(3)で示される化合物が2分子以上縮合されている縮合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  7. 耐熱性繊維とシロキサンポリマーとを構成成分として含有することを特徴とする繊維強化ガラス。
  8. シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維。
  9. シロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維が、テープ状糸条の形態を有していることを特徴とする請求項8に記載の耐熱性繊維。
  10. 実質的に無水の有機溶剤に、式(1)で示される化合物と、加水分解可能でかつその加水分解物が前記化合物の硬化触媒となる金属を含む有機化合物とを溶解させたコート液を平衡水分率またはそれ以上の水分を含有するアラミド繊維に含浸または塗布し、ついで前記有機溶剤を除去するとともに、前記アラミド繊維中の前記水分を反応水として前記化合物を硬化させることを特徴とするシロキサンポリマーで被覆されたアラミド繊維。
    Figure 2004269831
    (式中、nは2〜10の整数を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、RおよびRは繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
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