JP2004076202A - 高撥水性難燃布帛 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面が難燃剤とシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維を構成繊維とする布帛であって、80℃の熱水での撥水度が2級以上で、かつ限界酸素指数(LOI)が35以上であることを特徴とする高撥水性難燃布帛。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐熱性、難燃性および撥水性を合わせ有する布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナイロンやポリエステル繊維等の汎用熱可塑性合成繊維は約250℃前後で溶融するのに対して、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の耐熱性繊維は、実質的に融点を持たず、その分解温度が約500℃前後と高温である。また、前記非耐熱性の汎用繊維であるナイロンやポリエステル繊維の限界酸素指数は約20前後であり、空気中でよく燃焼するのに対して、上記のような耐熱性繊維の限界酸素指数は約25〜30程度であって、空気中では熱源である炎を近づけることによって燃焼するが、炎を遠ざけると燃焼を続けることができない。このように、耐熱性繊維は耐熱性および難燃性に優れた素材である。それゆえに、例えば耐熱性繊維である全芳香族ポリアミド繊維は炎や高熱に曝される危険の大きい場面での衣料製品、例えば消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、製鉄用作業服または溶接用作業服などに好んで用いられている。
【0003】
しかし、近年、このように優れた性質を有する耐熱性繊維に対しても、さらなる高機能化が求められている。その一つとして、撥水性の付与が挙げられる。とくに、消防服等のように、高温の状況下で水を用いる作業において使用される繊維製品については、耐熱性、難燃性とともに、撥水性を有することが切実に求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた耐熱性、難燃性および撥水性を合わせ有する布帛を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、布帛を構成する耐熱性繊維の表面を難燃剤とシロキサンポリマーで被覆することにより、該布帛に80℃の熱水での撥水度が2級以上という高撥水性と、限界酸素指数(LOI)が35以上という難燃性とを付与することができるという知見を得た。80℃の熱水での撥水度が2級程度以上であれば、例えば消防服等のような高温の状況下で水を用いる作業において使用される繊維製品に対して要求されている撥水性を十分に満たすことができる。また、限界酸素指数(LOI)が約35以上と布帛の構成繊維である耐熱性繊維が示すLOIよりも高ければ、前記繊維製品における難燃性がさらに向上し、より身体を保護する機能(防護性)の高い繊維製品を提供できる。
さらに本発明者らは検討を重ねて、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) 表面が難燃剤とシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維を構成繊維とする布帛であって、80℃の熱水での撥水度が2級以上で、かつ限界酸素指数(LOI)が35以上であることを特徴とする高撥水性難燃布帛、
(2) 耐熱性繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維およびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなる群から選ばれる1種以上の繊維であることを特徴とする前記(1)に記載の高撥水性難燃布帛、(3) 耐熱性繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である前記(1)に記載の高撥水性難燃布帛、
(4) 難燃剤が、リン系難燃剤であることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載の高撥水性難燃布帛、
に関する。
【0007】
また、本発明は、
(5) シロキサンポリマーを被覆するためのコーティング液に、下記式(1);
【化4】
(式中、nは2〜10の整数を表す、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、R2およびR4は繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい、)
で示される化合物および前記式(1)で示される化合物を硬化・固化させる作用を有する触媒が含まれていることを特徴とする前記(1)〜(4)に記載の高撥水性難燃布帛、
(6) 触媒が、加水分解可能な有機金属化合物であることを特徴とする前記(5)に記載の高撥水性難燃布帛、
に関する。
【0008】
また、本発明は、
(7) 下記式(1);
【化5】
(式中、nは2〜10の整数を表す、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、R2およびR4は繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい、)
で示される化合物、難燃剤および触媒を含むコーティング液を、耐熱性繊維を構成繊維とする布帛に塗布または含浸し、前記コーティング液が付与された布帛を150〜200℃の温度で処理することを特徴とする前記(5)に記載の高撥水性難燃布帛の製造方法、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(8) 耐熱性繊維を構成繊維とする布帛に難燃剤を塗布または含浸し乾燥した後、得られた布帛に、下記式(1);
【化6】
(式中、nは2〜10の整数を表す、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、R2およびR4は繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい、)
で示される化合物および触媒を含むシラン系コーティング液を塗布または含浸し、ついで150〜200℃の温度で処理することを特徴とする前記(5)に記載の高撥水性難燃布帛の製造方法、
(9) 触媒が、加水分解可能な有機金属化合物であることを特徴とする前記(7)または(8)に記載の高撥水性難燃布帛の製造方法、
に関する。
【0010】
また、本発明は、
(10) 布帛を構成する繊維の表面が、下記式(1);
【化7】
(式中、nは2〜10の整数を表す、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、R2およびR4は繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい、)
で示される化合物、触媒および難燃剤を含むコーティング液で処理され、かつ前記式(1)で示される化合物が触媒の作用により硬化・固化して、難燃剤を含んだ被覆層を形成していることを特徴とする前記(1)に記載の高撥水性難燃布帛、
(11) 触媒が、加水分解可能な有機金属化合物であることを特徴とする前記(10)に記載の高撥水性難燃布帛、
(12) 難燃剤が、リン系難燃剤であることを特徴とする前記(10)または(11)に記載の高撥水性難燃布帛、
に関する。
【0011】
また、本発明は、
(13) 布帛を構成する繊維の表面が、難燃剤と、下記式(1);
【化8】
(式中、nは2〜10の整数を表す、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、R2およびR4は繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい、)
で示される化合物および触媒を含むシラン系コーティング液とで処理され、かつ前記式(1)で示される化合物が触媒の作用により硬化・固化して、難燃剤とシロキサンポリマーとを含む被覆層を形成していることを特徴とする前記(1)に記載の高撥水性難燃布帛、
(14) 触媒が、加水分解可能な有機金属化合物であることを特徴とする前記(13)に記載の高撥水性難燃布帛、
(15) 難燃剤が、リン系難燃剤であることを特徴とする前記(13)または(14)に記載の高撥水性難燃布帛、
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる布帛は、80℃の熱水での撥水度が2級程度以上、好ましくは3級程度以上で、かつ限界酸素指数(LOI)が約35以上であることを特徴とする。なお、80℃の熱水での撥水度は、水の代わりに80℃の熱水を用いる以外は、JIS K 1092(スプレー試験)に記載の方法と同一の方法で測定する。また、限界酸素指数は、JIS K 7201:1999 酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に従って測定する。
【0013】
本発明における布帛としては、特に限定されず、公知の構造または形状を有していてよい。例えば、布帛としては、織物、編物、直交ネット、直交積層ネット、多軸積層ネットまたは不織布等が挙げられる。織物としては、例えば、平織、朱子織、綾織、横縞織、からみ織または斜こ織などが挙げられる。編物としては、例えば、平編み、ゴム編みもしくはパール編みなどの横編み、シングルデンビー編みもしくはシングルデンビー編みなどの縦編み、またはレース編み等が挙げられる。不織布としては、繊維の集合体であるウェブを織ったり編んだりしないで、ウェブの繊維同士を化学的、物理的もしくは熱によって接着または絡ませたシート状の構造体などが挙げられる。
【0014】
本発明にかかる布帛は、耐熱性繊維を構成繊維とする。ここで、耐熱性繊維としては、実質的に融点を持たず熱分解温度が約400℃以上の繊維が特に好ましい。なお、実質的に融点を持たないとは、示差走査熱量測定(DSC)において明確なピークを示さないものをいう。また、熱分解温度は、JIS K 7120:1987 プラスチックスの熱重量測定方法により測定することができる。
【0015】
本発明で用いる耐熱性繊維は、上記条件を満たせば特に限定されず、公知の繊維であってよい。例えば、耐熱性繊維としては、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下、PBO繊維という。)、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維などが挙げられる。全芳香族ポリアミド繊維には、メタ系全芳香族ポリアミド繊維とパラ系全芳香族ポリアミド繊維がある。メタ系全芳香族ポリアミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。パラ系全芳香族ポリアミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維などが挙げられる。
【0016】
本発明で用いる耐熱性繊維は、公知の方法により容易に製造することができ、また、市販品を適宜用いてもよい。例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維としては、東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー;コポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維としては、帝人株式会社製、商品名テクノーラ等が挙げられる。また、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維としては、例えば、デュポン社製、商品名ノーメックス;全芳香族ポリエステル繊維としては、例えば株式会社クラレ製、商品名ベクトラン;PBO繊維としては、例えば東洋紡績株式会社製、商品名ザイロン;ポリアミドイミド繊維としては、例えばローヌプーラン社製、商品名ケルメル等が挙げられる。
【0017】
本発明にかかる布帛は、1種類の耐熱性繊維からなっていてもよいし、任意の2種以上の耐熱性繊維からなっていてもよい。また、本発明で用いる耐熱性繊維は、上記耐熱性繊維と、例えばポリエステル、ナイロンまたはポリビニルアルコール系繊維などの耐熱性繊維以外の他の公知の繊維との混繊、交撚などによる複合糸であってもよい。但しこの場合、耐熱性繊維の割合が50重量%以上、好ましくは70重量%以上であることが好適である。なかでも、本発明にかかる布帛は、耐熱性繊維のみからなることが好ましく、特にポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を含むことが好ましい。
【0018】
本発明にかかる布帛を構成する上記耐熱性繊維は、その表面が難燃剤とシロキサンポリマーとで被覆されている。
本発明で用いる難燃剤としては、特に限定されず、公知の難燃剤を用いてよい。例えば、本発明で用いる難燃剤としては、各種のホウ酸系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤、チッソ系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機系難燃剤またはコロイド系難燃剤等が挙げられる。なかでも、本発明で用いる難燃剤としては、リン系難燃剤を用いることが好ましい。なお、以下に示す難燃剤は、一種類を単独で用いてもよいし、または二種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ホウ酸系難燃剤としては、例えば、ホウ酸亜鉛水和物、メタホウ酸バリウム、ほう砂などのホウ酸を含有する化合物等が挙げられる。
リン系難燃剤としては、例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、赤燐、リン酸エステル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリアリルフォスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス−β−クロロプロピルホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレン・ジフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、トリス(2−クロロエチル)オルトリン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合有機リン酸エステル、エチレン・ビス・トリス(2−シアノエチル)ホスフォニウム・ブロミド、ポリリン酸アンモニウム、β−クロロエチルアッシドフォスフェート、ブチルピロフォスフェート、ブチルアッシドフォスフェート、ブトキシエチルアッシドフォスフェート、2−エチルヘキシルアッシドフォスフェート、メラミンリン酸塩、含ハロゲンフォスホネート、またはフェニル・フォスフォン酸等のリンを含有する化合物が挙げられる。
【0020】
無機系難燃剤としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンチモン、硫酸エステル、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸バリウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸金属化合物、硫酸アンモニウムなどのアンモン系難燃化合物、硝酸銅などの硝酸金属化合物、酸化チタンなどのチタンを含有する化合物、スルファミン酸グアニジンなどのグアニジン系化合物、その他、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、錫系化合物、炭酸カリウムなどの炭酸塩化合物、水酸化アルミニウム、または水酸化マグネシウム等の水酸化金属およびそれらの変性物が挙げられる。
【0021】
チッソ系難燃剤としては、例えば、トリアジン環を有するシアヌレート化合物等が挙げられる。
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス・ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス・テトラブロモフタルイミド、ジブロモエチル・ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、2,4,6−トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体、テトラブロモ・ビスフェノールS誘導体、テトラデカブロモ・ジフェノキシベンゼン、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)−イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、トリブロモスチレン、トリブロモフェニルマレイニド、トリブロモネオペンチル・アルコール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモフェノールエーテル、オクタジブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、マグネシウムヒドロキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン、臭化スチレン、またはジアリルクロレンデート等のハロゲンを含有する難燃化合物が挙げられる。
【0022】
有機系難燃剤としては、例えば、無水クロレンド酸、無水フタル酸、ビスフェノールAを含有する化合物、グリシジルエーテルなどのグリシジル化合物、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、変性カルバミド、シリコーンオイル、または二酸化ケイ素、低融点ガラス、オルガノシロキサン等のシリカ系化合物が挙げられる。
コロイド系難燃剤としては、例えば、従来から使用されている難燃性を持つ水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリンクレーなどの水和物、硝酸ナトリウムなどの硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、ドーソナイト、またはプロゴパイト等の難燃性化合物のコロイド等が挙げられる。
【0023】
本発明において、構成繊維表面を被覆しているシロキサンポリマーは、いわゆるゾル−ゲル法により形成されるシロキサンポリマーの被膜であることが好ましい。ゾル−ゲル法は、アルコキシシランをアルコールなどの溶剤に溶かし、ここに触媒および所望により反応水を加え、熟成した後、得られたコーティング液を布帛に塗布または含浸し、乾燥後、加温または加熱し、シロキサン結合のネットワークを生成させるという方法である。この場合、下記反応式1の(1)〜(3)に示した反応を経て、シロキサン結合(≡Si−O−Si≡)が生成する。かかる方法で用いるコーティング液は含浸性が高いので、実質的に全ての構成繊維の表面でシロキサンポリマーの被膜が形成される。
<反応式1>
(1)≡Si−OR + H2O → ≡Si−OH + ROH
(2)≡Si−OH + HO−Si≡ → ≡Si−O−Si≡ + H2O
(3)≡Si−OH + RO−Si≡ → ≡Si−O−Si≡ + ROH
【0024】
上記ゾル−ゲル法において使用する触媒は、一般に用いられている触媒が特別の制限なしに使用可能である。前記触媒としては、具体的には、例えば酸/アルカリが挙げられる。より具体的に、酸触媒としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ぎ酸または酢酸等を例示できる。塩基触媒としては、例えばアンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン等が例示できる。
【0025】
また、前記触媒としては、加水分解可能な有機金属化合物も挙げられる。下記するように、触媒としては加水分解可能な有機金属化合物を用いることがより好ましい。すなわち、加水分解可能な有機金属化合物をアルコキシシランと混合してコーティング液とし、これを布帛に塗布すると、布帛上の水分または/および空気中の水分(湿気)を吸い、有機金属化合物が自ら加水分解する。この時、アルコキシシランとネットワークを形成し、アルコキシシランの硬化・固化を促進する役目を担う。
【0026】
具体例を示すと、加水分解可能な有機金属化合物として、例えばテトラブトキシチタニウムを用いる場合は、コーティング液中に反応水が含まれなくとも、上記の反応式1が進行する。この場合の反応は、詳しくは下記反応式2における(4)および(5)のようになる。
<反応式2>
(4)≡Ti−OR + H2O → ≡Ti−OH + ROH
(5)≡Ti−OH + RO−Si≡ → ≡Ti−O−Si≡
上記のように、≡Ti−O結合が被覆された被膜内に導入されることにより、シロキサン結合のみの被覆に比べ、更に耐熱性および耐摩耗性などの機械的強度を向上させることができる。また、触媒として加水分解可能な有機金属化合物を使用すると、そのコーティング液中に反応水を共存させる必要が無いため、長期保存安定性が向上するという利点もある。
【0027】
ここでいう加水分解可能な有機金属化合物とは有機化学の分野で厳密に定義される有機金属化合物を指すのではなく、例えばチタン、ジルコン、アルミおよびスズから成る群から選ばれる一種以上の元素を含む有機金属化合物が好ましい。より具体的には、テトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテートまたはジブチルスズジラウレート等を例示できる。
【0028】
本発明では、上記ゾル−ゲル法において、アルコキシシランのなかで、下記式(1);
【化9】
(式中、nは2〜10の整数を表す。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なってもよく水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表し、また、R2およびR4は繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
で示される化合物を用いることが特に好ましい。
【0029】
上記化合物は、式(1)に示した通り、ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解不可能な置換基で置換されたものを繰り返し単位として含む。かかる化合物によって被覆すると、ケイ素原子の4個の置換基の全てが加水分解可能な置換基である化合物と比較して、隣接するケイ素原子との間で強固なシロキサン結合の数が1つ少なく、その分未反応な結合がいわば「宙ぶらりん」の形で残るため、コーティング膜の柔軟性を維持できる。また、式(1)中のR4は、式(1)の化合物がその後の加水分解・重縮合反応を受けても加水分解されないため、製造されるコーティング膜に有機性を与え、そして結果的にはコーティング膜に撥水性を与えることができる。
式(1)の化合物を得るための原料(単量体)は、安価であり、無機性が強いテトラアルコキシシランと同程度の安さで購入できる。したがって、式(1)の化合物を用いることにより、あえて高価ないわゆるシランカップリングを併用しなくとも、十分に有機性を持ち、かつ十分な強度を持ったコーティング膜を形成することができる。
【0030】
式(1)中のR1〜R4で示される置換基は、それぞれ同一または異なっても良く、水素または炭素数が1〜4のアルキル基である。ここで、炭素数が1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基またはsec−ブチル基などが挙げられる。
【0031】
式(1)で示される化合物は、単量体を縮合することにより得ることが出来る。主鎖の繰り返しnは2〜10程度、好ましくは2〜8程度である。短時間で十分な強度を持ったコーティング膜を形成するためには、上記範囲が好ましい。なお、一般に単量体から式(1)のような縮合体を合成する場合、その重合度を正確に制御することは、技術的観点から事実上かなり困難である。したがって、本願発明でn=2〜10、好ましくはn=2〜8のものを含むとの意味は、重合度の分布から見て、nが2〜10程度、好ましくは2〜8程度のものが主として含まれているということであり、例えばnが11以上である化合物が含まれていたとしても、差し支えない。
【0032】
式(1)で示される化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン等の縮合体を例示できる。なお、式(1)の化合物は、かかる単量体の1種類のみを縮合したものであっても、また上記例示した単量体の2種類以上を縮合したものであっても良い。
【0033】
なお、式(1)の化合物における加水分解不可能な置換基(R4)の第一義的な役割は、コーティング膜に柔軟性を与えることにあるが、同時にコーティング膜に撥水性を付与することができる。一般に有機性置換基は、炭素数が増える程、有機性すなわち撥水性が増加するが、炭素数があまり大きくなると、立体障害によりコーティング膜内に歪が生じてコーティング膜の強度低下の原因となる。したがって、置換基R4の炭素数や式(1)の化合物を構成する各単量体の種類・量は、予備的な製造試験を行う等して決定することが好ましい。
【0034】
本発明にかかる布帛は、その形状や構造などに応じて公知の方法を適宜選択することにより、容易に製造することができる。しかし、本発明にかかる布帛の製造方法の好ましい態様としては、式(1)で示される化合物、難燃剤および触媒を含むコーティング液を、耐熱性繊維を構成繊維とする布帛に塗布または含浸し、前記コーティング液が付与された布帛を約150〜200℃程度の温度で処理することにより、前記コーティング液を硬化・固化させるという方法が挙げられる。前記コーティング液は含浸性が高いので、布帛を構成する実質的に全ての繊維が、式(1)で示される化合物が触媒の作用により硬化・固化することにより形成されるシロキサンポリマーと難燃剤とで被覆される。以下、かかる製造方法について詳細に説明する。
【0035】
本製造方法において用いられるコーティング液は、式(1)で示される化合物、難燃剤および触媒を含む。難燃剤としてはリン系難燃剤が好ましく、触媒としては加水分解可能な有機金属化合物が好ましい。また、所望により反応水を含有させてもよい。さらに、コーティング液には、式(1)の化合物、難燃剤、触媒、および所望により反応水を均一に混合させるため、有機溶剤を添加することが出来る。この目的で使用される有機溶剤としては、アルコール類を例示できる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはヘキサノール等を例示できる。また、その添加量を制御することによって、コーティング液の粘度や乾燥速度の調整も可能である。
【0036】
また、コーティング液の粘度や乾燥速度の調整の目的では、特に、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどのグリコール類;メトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノールまたはブトキシプロパノール等のセルソルブ類等の粘度や沸点の高い有機溶剤を単独または二種以上混合して使用することが好ましい。むろん、上記粘度や沸点の高い有機溶媒の1種以上と共に、上記アルコール類を同時に添加しても良い。なお、コーティング液の粘度や乾燥速度の調整を目的とする場合は、前記有機溶媒のみならず、界面活性剤をコーティング液に含有させることによっても同様の効果を達成することができる。
【0037】
特に、前記したグリコール類やセルソルブ類は、その分子内に水酸基を有しているため、式(1)の化合物の縮合反応によって形成されるシロキサン結合のネットワーク内に導入される事がある。グリコール類やセルソルブ類は有機性を有しているため、これが導入される事により、得られるコーティング膜の有機性が増すことになる。ゆえに、上記コーティング液の溶剤としては、グリコール類やセルソルブ類を用いることが特に好ましい。
【0038】
上記コーティング液には、下記式(2);
【化10】
(式中、R5、R6およびR7は、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、R8はその分子内にエポキシ基またはグリシジル基を含んでいても良い、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)
で示される化合物、または/および、下記式(2’);
【化11】
(式中、pは2以上の整数を表す。R5、R6、R7およびR8は、上記と同意義。また、R6およびR8は、繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
で示される化合物が含有されていてもよい。このように、式(1)の化合物に加え、式(2)または/および式(2’)の化合物を含有させることにより、式(2)または式(2’)の化合物が有する有機性等の性質を新たに付与したり、有機性等の性質を増加したりすることが可能となるという利点がある。なお、本発明においては、式(2)で示される化合物を2種以上用いてもよい。また、式(2’)の化合物として、式(2)で示される単量体を2種以上組み合わせて縮合したものであっても良い。
【0039】
式(2)および式(2’)中のR5〜R7で示される置換基は、それぞれ同一または異なっても良く、水素若しくは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基である。ここで、「炭素数が1〜10のアルキル基」は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基、ヘプチル基、1−プロピルブチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。また、「炭素数2〜10のアルケニル基」は、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ブタジエニル基、2−メチルアリル基、ヘキサトリエニル基、3−オクテニル基等が挙げられる。
【0040】
式(2)および式(2’)中のR8で示される置換基は、その分子内にエポキシ基またはグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基である。ここで、「炭素数6〜20のアリール基」としては、フェニル基、1−または2−ナフチル基、ビフェニル基、1−,2−または9−アントリル基、1−,2−,3−,4−または9−フェナントリル基、アセナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基等が挙げられ、なかでもフェニル基が特に好ましい。
【0041】
式(2)で示される化合物としては、具体的に、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。式(2’)で示される化合物としては、上記化合物を単量体とする2〜10分子程度の縮合体を例示できる。
【0042】
さらに、上記コーティング液には、下記式(3);
【化12】
(式中、R9およびR11は、それぞれ同一または異なっていても良く、水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、R10およびR12はその分子内にエポキシ基またはグリシジル基を含んでいても良い、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を表す。)
で示される化合物、または/および、下記式(3’);
【化13】
(式中、qは2以上の整数を表す。R9、R10、R11およびR12は上記と同意義。また、R10およびR12は、繰り返し単位ごとに同一であっても異なってもよい。)
で示される化合物が、式(1)の化合物に加えて、または式(1)の化合物および式(2)または/および式(2’)の化合物に加えて含有されていてもよい。コーティング液に、更に式(3)または/および式(3’)の化合物を添加することによって、式(3)または/および式(3’)の化合物が有する有機性等の性質を新たに付与したり、または、有機性等の性質を増加することが可能である。なお、本発明においては、式(3)で示される化合物を2種以上用いてもよい。また、式(3’)の化合物として、式(3)で示される単量体を2種以上組み合わせて縮合したものであっても良い。
【0043】
式(3)および式(3’)中のR9およびR11で示される置換基は、それぞれ同一または異なっていても良く、水素若しくは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルケニル基である。また、式(3)および式(3’)中のR10およびR12で示される置換基は、その置換基内にエポキシ基またはグリシジル基を含んでいても良い、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基である。前記アリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0044】
式(3)で示される化合物としては、具体的に、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。また、式(3’)で示される化合物としては、上記化合物を単量体とする2〜10分子程度の縮合体を例示できる。
【0045】
上記したような式(2)または式(2’)の化合物および式(3)または式(3’)の化合物の両者をコーティング液に添加すれば、コーティング膜の有機性を更に向上させ、結果的にコーティング膜の撥水性等を更に向上できる。
式(2)の化合物、式(2’)の化合物、式(3)の化合物および式(3’)の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物は、コーティング液の主成分である前記式(1)で示される化合物に対し、一般的には総量が50%を超えない範囲にてコーティング液に添加することが、シロキサンコーティング膜の強度を十分に保つためには好ましい。実際に、式(2)の化合物、式(2’)の化合物、式(3)の化合物および式(3’)の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加する場合には、添加量に依存してコーティング膜の強度が低下することを想定し、予備的な製造試験を行う等し、目的を達成し得る添加量の範囲を明らかにしたうえで、添加を最小限に抑えるようにすることが好ましい。
【0046】
なお、式(2)の化合物、式(2’)の化合物、式(3)の化合物および式(3’)の化合物における加水分解不可能な置換基(R8、R10、R12)の第一義的な役割は、コーティング膜に柔軟性を与えることにあるが、これらはアルキル基等の有機性置換であるため、同時にコーティング膜に撥水性を付与する役割をも果たす。一般に有機性置換基は、炭素数が増える程、有機性すなわち撥水性が増加するが、炭素数があまり大きくなると、立体障害によりコーティング膜内に歪が生じてコーティング膜の強度低下の原因となる。したがって、加水分解不可能な置換基の炭素数や式(2’)または式(3’)の化合物を構成する各単量体の種類・量は、予備的な製造試験を行う等して決定することが好ましい。
しかし、その一方で、膜強度の向上が必要となる場合がある。このような場合は、次式;
Si(OR13)4
(式中、R13はそれぞれ同一または異なってもよく、水素またはアルキル基である。)
で示される化合物をコーティング液内に添加することにより成し遂げられる。このものは単量体で用いてもよいし、縮合体で用いてもよい。
【0047】
上記したコーティング液を、耐熱性繊維からなる布帛に塗布または含浸する。塗布または含浸の具体的な手法は特に限定されないが、上記したコーティング液に耐熱性繊維からなる布帛を浸漬し、余剰分を搾り取るという方法が挙げられる。また、スプレーなどの公知の器具を用いて、上記したコーティング液を耐熱性繊維からなる布帛に塗りつけたり、または吹き付けたりすることによっても行い得る。
【0048】
ついで、前記コーティング液が付与された耐熱性繊維からなる布帛を、約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理することにより、前記コーティング液を硬化・固化させる。かかる処理は、常圧下で行っても減圧下もしくは加圧下で行ってもよいが、常圧下で行うことが好ましい。このようにして本発明にかかる高撥水性難燃布帛を製造することができる。
【0049】
本発明にかかる布帛は、以下のようにしても製造することができる。すなわち、耐熱性繊維に、式(1)で示される化合物、難燃剤および触媒を含むコーティング液を被覆し、ついで前記コーティング液が被覆された耐熱性繊維を約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理し、ついで、得られた繊維を用いて布帛を製造するという方法が挙げられる。また、耐熱性繊維に、式(1)で示される化合物、難燃剤および触媒を含むコーティング液を被覆し、ついで前記コーティング液が被覆された耐熱性繊維を用いて布帛を製造し、得られた布帛を約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理するという方法も挙げられる。
【0050】
本態様において、耐熱性繊維を被覆するコーティング液は、上記態様のコーティング液と同一である。コーティング液を耐熱性繊維に被覆する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いてよい。例えば、コーティング液に耐熱性繊維を浸漬し、余剰分を搾り取ることによって、被覆することができる。また、スプレーなどの公知の器具を用いて、コーティング液を耐熱性繊維に塗りつけたり、または吹き付けたりすることによっても行い得る。さらに、いわゆる押出し被覆機を用いて、コーティング液を耐熱性繊維に被覆してもよい。
【0051】
布帛を製造する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いてよい。例えば、織物は、ジェット織機(エアージェット織機、ウォータージェット織機)、スルザー織機またはレピヤー織機などの公知の織機を用いて容易に製造することができる。また、編物も公知の編機を用いて容易に製造することができる。不織布も、例えば、湿式法、乾式法または直接法などの公知方法により製造することができる。
【0052】
前記コーティング液が付与された耐熱性繊維または布帛を、約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理することにより、前記コーティング液が硬化・固化される。かかる処理は、常圧下で行っても減圧下もしくは加圧下で行ってもよいが、常圧下で行うことが好ましい。
【0053】
本発明にかかる布帛の製造方法の他の好ましい態様としては、耐熱性繊維を構成繊維とする布帛に難燃剤を塗布または含浸し、ついで難燃剤が付与された布帛を乾燥した後、得られた布帛に、式(1)で示される化合物および触媒を含むシラン系コーティング液を塗布または含浸し、ついで150〜200℃の温度で処理することにより、前記シラン系コーティング液を硬化・固化させるという方法が挙げられる。前記難燃剤およびシラン系コーティング液は含浸性が高いので、布帛を構成する実質的に全ての繊維が、式(1)で示される化合物が触媒の作用により硬化・固化することにより形成されるシロキサンポリマーと難燃剤とで被覆される。以下、かかる製造方法について詳細に説明する。
【0054】
まず、耐熱性繊維からなる布帛に、難燃剤を塗布または含浸する。前記難燃剤は、上述したような公知の難燃剤を用いてよい。中でも、難燃剤としては、リン系難燃剤が好ましい。また、難燃剤の塗布または含浸方法も特に限定されず、上述のように、難燃剤に耐熱性繊維からなる布帛を浸漬し、余剰分を搾り取るという方法が挙げられる。また、スプレーなどの公知の器具を用いて、上記した難燃剤を耐熱性繊維からなる布帛に塗りつけたり、または吹き付けたりすることによっても行い得る。
ついで、難燃剤が付与された耐熱性繊維からなる布帛を乾燥する。乾燥方法は特に問わず、公知の方法を用いてよいが、約80〜120℃程度で乾燥することが好ましい。
【0055】
上記のように難燃剤が付与された布帛に、シラン系コーティング液を塗布または含浸する。ここで、シラン系コーティング液とは、上記製造方法で用いたコーティング液と、難燃剤が含まれていない点のみが異なるだけである。すなわち、シラン系コーティング液は、上記のような溶媒に式(1)で示される化合物および触媒が含まれており、所望により式(2)、式(2’)、式(3)および式(3’)で示される化合物、反応水、その他の添加物が含まれていてもよい。難燃剤が付与された布帛に、シラン系コーティング液を塗布または含浸する方法としては、上述のように公知の方法を用いてよい。
【0056】
前記シラン系コーティング液が付与された耐熱性繊維からなる布帛を、約150〜200℃程度、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理することにより、前記コーティング液を硬化・固化させる。かかる処理は、常圧下で行っても減圧下もしくは加圧下で行ってもよいが、常圧下で行うことが好ましい。このようにして本発明にかかる高撥水性難燃布帛を製造することができる。
【0057】
本発明にかかる布帛は、以下のようにしても製造することができる。すなわち、耐熱性繊維に難燃剤を塗布または含浸し、ついで難燃剤が付与されている耐熱性繊維を乾燥した後、得られた耐熱性繊維に、式(1)で示される化合物および触媒を含むシラン系コーティング液を塗布または含浸し、ついで150〜200℃、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理することにより、前記シラン系コーティング液を硬化・固化させ、得られた繊維を用いて布帛を製造するという方法が挙げられる。また、耐熱性繊維に難燃剤を塗布または含浸し、ついで難燃剤が付与されている耐熱性繊維を乾燥した後、得られた耐熱性繊維に、式(1)で示される化合物および触媒を含むシラン系コーティング液を塗布または含浸し、得られた繊維を用いて布帛を製造し、ついで150〜200℃、好ましくは約160〜180℃程度の温度で処理することにより、前記シラン系コーティング液を硬化・固化させるという方法が挙げられる。
【0058】
本態様において、耐熱性繊維を被覆するシラン系コーティング液は、上記態様のシラン系コーティング液と同一である。シラン系コーティング液を耐熱性繊維に被覆する方法としては、特に限定されず、上述のような公知の方法を用いてよい。また、布帛を製造する方法も、特に限定されず、上述のような公知の方法を用いてよい。さらに、その他の工程についても、上記製造方法と全く同様である。
【0059】
以上のようにして製造される本発明にかかる高撥水性難燃布帛は、種々の用途に応用することができ、特に撥水性、耐熱性および難燃性を要する用途に好適に用いられる。撥水性、耐熱性および難燃性を要する用途としては、例えば消防服や作業手袋などが挙げられる。
【0060】
【実施例】
〔実施例1〕
経糸、緯糸とも20番手双糸のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製 KEVLAR(登録商標))からなる織密度タテ58×ヨコ47本/吋、織物目付230g/m3の平織の織物を、30重量%の濃度となるように水で希釈した難燃剤(ビゴールNo−415 大京化学株式会社製)の液中に浸漬し、マングルで2kg/cm2の圧力で絞った。ウェットピックアップは63%であった。この織物をタバイ株式会社の乾燥機で100℃で3分間乾燥した後、さらに180℃で1分間熱処理して難燃加工織物を得た。次ぎに、イソプロピルアルコール785gにメトキシシランオリゴマー(重合度3〜4量体)200gを加え撹拌した後、チタンテトラブトキシド15gを加え十分に撹拌し、コーティング液を調合した。このシラン系コーティング液中に、前記難燃加工織物を浸漬し、マングルで2kg/cm2の圧力で絞った後風乾し、さらにタバイ株式会社の乾燥機で200℃で2分間熱処理して、本発明に係る高撥水性難燃布帛を得た。このとき、シロキサンポリマーの付着率は8.5%であった。
得られた本発明に係る高撥水性難燃布帛の80℃熱水での撥水性は2〜3級で、難燃性を示すLOI値は45.0であった。
【0061】
〔実施例2〕
実施例1で用いたKEVLAR(登録商標)の織物を、水で7倍に希釈した難燃剤(フレームガードジャパン株式会社 HCA PW)に、実施例1と全く同様に浸漬および絞りを行い、ウェットピックアップ58%の織物を得た。この織物を、タバイ株式会社の乾燥機で120℃で10分間乾燥し、さらに175℃で3分間熱処理して難燃加工織物を得た。次ぎに、イソプロピルアルコール735gにメトキシシランオリゴマー(重合度3〜4量体)200gとポリジメチルジメトキシシラン50gを加え撹拌した後、チタンテトラブトキシド15gを加え十分に撹拌し、コーティング液を調合した。このシラン系コーティング液中に、前記難燃加工織物を浸漬し、マングルで2kg/cm2の圧力で絞った後風乾し、さらにタバイ株式会社の乾燥機で200℃で2分間熱処理して、本発明に係る高撥水性難燃布帛を得た。このとき、シロキサンポリマーの付着率は9.3%であった。
得られた本発明に係る高撥水性難燃布帛の80℃熱水での撥水性は3級で、難燃性を示すLOI値は38.0であった。
【0062】
〔比較例1〕
実施例1で用いたKEVLAR(登録商標)の織物は、難燃剤およびシロキサンポリマーで加工する前の状態で、80℃熱水での撥水性が1級で、難燃性を示すLOI値が29.0であった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、従来公知の耐熱性繊維が有する難燃性よりも優れた難燃性を有し、さらに、優れた撥水性を有する布帛を提供できる。そして、本発明にかかる布帛を用いれば、例えば、消防服や作業手袋などにおいてより身体を保護する機能の高い繊維製品を提供できる。
Claims (9)
- 表面が難燃剤とシロキサンポリマーで被覆されている耐熱性繊維を構成繊維とする布帛であって、80℃の熱水での撥水度が2級以上で、かつ限界酸素指数(LOI)が35以上であることを特徴とする高撥水性難燃布帛。
- 耐熱性繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維およびポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維からなる群から選ばれる1種以上の繊維であることを特徴とする請求項1に記載の高撥水性難燃布帛。
- 耐熱性繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である請求項1に記載の高撥水性難燃布帛。
- 難燃剤が、リン系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜3に記載の高撥水性難燃布帛。
- 触媒が、加水分解可能な有機金属化合物であることを特徴とする請求項5に記載の高撥水性難燃布帛。
- 触媒が、加水分解可能な有機金属化合物であることを特徴とする請求項7または8に記載の高撥水性難燃布帛の製造方法。
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