JP2004269689A - 重合接着方法及び樹脂板 - Google Patents
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Abstract
【課題】接着層(部)に残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着方法を提供する。
【解決手段】メタクリル樹脂板をメタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤ならびに重合開始剤を用いて重合接着する方法において、重合開始剤として低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用することを特徴とするメタクリル樹脂板の重合接着方法。
【解決手段】メタクリル樹脂板をメタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤ならびに重合開始剤を用いて重合接着する方法において、重合開始剤として低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用することを特徴とするメタクリル樹脂板の重合接着方法。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、メタクリル樹脂板同士を接着する方法の一つとして、相対する被接着面の間に重合開始剤を分散させたメタクリル系モノマーまたはその部分重合体を充填し、これを重合硬化させて接着する方法が知られている。このような重合硬化型の接着方法で、水族館などに代表される大型の水槽用パネルの端面同士あるいは面同士を接着する場合において、重合硬化時に反応熱が蓄熱され、その接着部に発泡やヒケの発生などの不具合が生じることがあった。これらの問題を解決するための手段として、例えば、重合調整剤を使用することが特許文献1に提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−70518号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、メタクリル樹脂板をメタクリル系モノマーまたはその部分重合体に重合開始剤ならびに重合調整剤を用いて重合接着すると、重合調整剤を使用しない場合に比べて、重合硬化層(部分)中に残存するメタクリル系モノマー量が多くなり易く、曇価が高く透明性が劣るのみならず、構造材として必要な強度が低下する等の問題があった。
したがって、本発明は接着層(部)に残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明はメタクリル樹脂板を、メタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤ならびに重合開始剤を用いて重合接着する方法において、重合開始剤として低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用することを特徴とするメタクリル樹脂板の重合接着方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においてメタクリル樹脂板とは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルを主原料とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル(たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル)、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー等を共重合成分として用いることによって得られる重合体または共重合体を、押出成形法、カレンダー法、注型重合法等一般的な成形加工方法により板状に賦形したものである。なかでも、注型重合法によって作られた板が好ましい。
【0007】
本発明で重合接着に用いるメタクリル系モノマーとは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステルモノマー、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、これらの混合物であってもよい。
これらメタクリル系モノマーは、上記メタクリル樹脂板との屈折率が近くなるように、その種類および組み合わせを選択する。
また、上記メタクリル系モノマーには炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステルモノマー(たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル)、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー等を共重合成分として用いることができる。これら共重合成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用ないし組み合わせて用いることができる。
【0008】
本発明で用いるこれらのモノマーもしくはその混合物は、モノマーのみからなる必要はなく、モノマーの一部を予め重合させたポリマーとモノマーとからなるシラップや、ポリマーをモノマーに溶解させたシラップも使用できる。メタクリル樹脂板の重合接着に当り重合収縮を少なくするためには、シラップを用いることが望ましい。
メタクリル系モノマーまたはそのシラップには、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤など既知の添加剤を添加することもできる。
【0009】
本発明で使用する重合調整剤としては、1,4位に非共役二重結合を持つ環状化合物(例えば、γ−テルピネン、テルピノレン、1,4−ジシクロペンタジエン)が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上の混合物として用いてもよい。
重合調整剤の添加量は、メタクリル系モノマーまたはそのシラップ100質量部あたり、0.001〜0.05質量部が好ましく、0.002〜0.02質量部がより好ましい。重合調整剤量が少なすぎると重合接着時の発熱の抑制効果が不十分となり、重合調整剤量が多すぎると重合硬化時間が著しく長くなってしまう。
【0010】
本発明では使用する重合開始剤は、低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用する。低温分解型重合開始剤とは10時間半減期温度が50℃未満のものを、高温分解型重合開始剤とは10時間半減期温度が50℃以上のものをいう。低温分解型重合開始剤の10時間半減期としては35℃以下のものが好ましく、高温分解型重合開始剤の10時間半減期としては60℃以上のものが好ましい。
【0011】
低温分解型重合開始剤としては、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度40.9℃)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)などが挙げられる。また、高温分解型重合開始剤としては、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度51℃)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(10時間半減期温度66℃)、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度73.6℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(10時間半減期温度53.2℃)などが挙げられる。
低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤の混合重量比率は1/10〜10/1が好ましく、1/5〜5/1の範囲がより好ましい。
本発明において、低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を合わせた重合開始剤の添加量は、メタクリル系モノマーまたはそのシラップ100質量部あたり、0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましく、0.02質量部以上0.3質量部以下がより好ましい。重合開始剤の添加量がこれより少なすぎると重合硬化時間が著しく長くなり、硬化が不十分となることがある。また、重合開始剤が多すぎると、重合硬化が早くなりすぎ、重合発熱により気泡の発生などの不具合が生じ易くなる。
【0012】
本発明のメタクリル樹脂板同士を接着する手段を示せば次の通りである。
(1)メタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤と低温分解型重合開始剤及び高温分解型重合開始剤を所定量配合した後、攪拌機などで十分混合して接着剤を得る。
(2)接着剤は、真空容器に入れ内部を減圧にして、接着剤中に含まれている空気を減らす。
(3)重合接着しようとするメタクリル樹脂板の相対する接着面を一定間隔に保ち、周辺を樹脂板細片からなるスペーサーまたはゴム、軟質樹脂からなるガスケットなどで重合接着しようとする周辺をシールして、セルを形成する。このとき、メタクリル樹脂板の接着面をサンディングするなどして、密着性を向上させることは有効な手段である。
(4)セルの中に、上記(2)で脱気(泡)した接着剤を充填し、これを重合硬化させて接着する。
(5)接着後、接着層(部)中の残存メタクリル系モノマー量を低減するため熱処理を行う。
【0013】
接着しようとする樹脂板の厚みにもよるが、接着層(部)の厚みは1〜10mm程度が好ましく、2〜5mmがより好ましい。接着層(部)の厚みが薄すぎると十分な接着強度が得られず、逆に厚すぎると重合時の発熱量が多くなるとともに、収縮量が多くなり気泡の発生などの不具合が生じ易くなる。
上記(4)の重合硬化接着時の雰囲気温度は10〜40℃の範囲が好ましく、20〜30℃がより好ましい。雰囲気温度が低すぎると重合硬化時間が著しく長くなり、硬化が不十分となることがある。雰囲気温度が高すぎると、重合硬化が早くなりすぎ、重合発熱により気泡発生などの不具合が生じ易くなる。雰囲気温度は、重合硬化開始から終了までできるだけ一定であることが好ましい。雰囲気温度の保持時間は、使用する重合開始剤の種類および温度によって異なるが、重合時のピーク温度を経過する数10分から30時間程度である。
【0014】
上記(5)の重合接着終了後の熱処理の温度は、80〜120℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎると接着層(部)中の残存メタクリル系モノマー量の低減効果が得られず、一方、熱処理温度が高すぎると基材であるメタクリル樹脂板が変形してしまう。また、熱処理時間は、製品が設定温度になってから、1〜8時間保持することが好ましい。製品が設定温度に到達する時間は、接着層(部)の全厚みによって決まり、目安として厚み1mmあたりおよそ3分である。たとえば、接着後の全板厚が50mmであれば、150分になる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例を挙げて説明する。
実施例における評価項目中の残存メタクリル酸メチルモノマーの測定は次のように行った。
接着層(部)を切り出し、細かく砕き、アセトンに浸漬して溶解させた。その後、内部標準液(メチルイソブチルケトン0.5質量%溶液)を1ミリリットル加えて攪拌したのち、試料溶液1マイクロリットルをガスクロマトグラフィに注入し、残存メタクリル酸メチルモノマーを定量した。
【0016】
[実施例1]
メタクリル酸メチルモノマーのシラップであるアクリシラップSY−116(商品名:三菱レイヨン(株)製;樹脂組成はポリメチルメタクリレート(以下、PMMA)、粘度は450〜750mPa・S)100質量部に、重合調整剤として1,4−ジシクロペンタジエンを0.01質量部、低温分解型重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度40.9℃)を0.05質量部、高温分解型重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度:51℃)を0.01質量部添加して、攪拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行ない接着剤を得た。
【0017】
メタクリル樹脂板である板厚30mm、大きさ300mm×300mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン(株)製)2枚を接着層(部)の厚みが5mmになるように、幅5mm厚さ5mm長さ300mmのアクリル樹脂の角材をスペーサーにして接着剤で貼り合わせて、セルを作製した。
このセルに、上記接着剤を流し込み、雰囲気温度25℃の環境下に放置し、重合硬化させ樹脂板を一体化させた。このとき、接着層(部)の中央付近に熱電対を挿入し、硬化発熱のピーク温度及び同温度に達するまでの時間を測定した。
さらに、熱風循環炉にてセルを95℃で5時間熱処理を行った。
重合硬化接着したメタクリル樹脂板について接着層(部)中に残存しているメタクリル酸メチル量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0018】
[実施例2]
メタクリル酸メチルモノマー70質量部にPMMA粉末(商品名:ダイヤナールBR83 三菱レイヨン(株)製)30質量部を溶解させ、シラップを得た。このシラップ100質量部に、重合調整剤としてテルピノレンを0.005質量部、低温分解型重合開始剤として2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)を0.2質量部、高温分解型重合開始剤としてジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(10時間半減期温度:66℃)を0.1質量部添加して、攪拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行ない、接着剤を得た。
【0019】
メタクリル樹脂板である板厚30mm、大きさ300mm×300mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン(株)製)2枚を接着層(部)の厚みが3mmになるように幅5mm厚さ3mm長さ300mmのアクリル樹脂の角材をスペーサーにして接着剤にて貼り合わせて、セルを作製した。このとき、予めメタクリル樹脂板の接着しようとする面を#400のサンドペーパーでサンディングを施した。
このセルに、上記接着剤を流し込み、雰囲気温度28℃の環境下に放置し、重合硬化させ、一体化させた。このとき、接着層(部)の中央付近に熱電対を挿入し、実施例と同様にして硬化発熱を測定した。
さらに、熱風循環炉にてサンプルを80℃で5時間熱処理を行った。
重合硬化接着したメタクリル樹脂板について評価した。その結果を表1に示す。
【0020】
[比較例1]
重合開始剤を低温分解型重合開始剤である2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)のみ使用し、高温分解型重合開始剤を使用しなかった外は実施例2と同様にして重合硬化接着した。得られたメタクリル樹脂板について評価した。その結果を表1に示す。
【0021】
[比較例2]
重合開始剤を高温分解型重合開始剤であるジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)のみ使用し、低温分解型重合開始剤を使用しなかった外は実施例2と同様にして重合硬化接着した。得られたメタクリル樹脂板について評価した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、接着層(部)に残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着が可能となり、得られたメタクリル樹脂板は重合接着層(部)の雲価、透明性の低下が少ない。
【産業上の利用分野】
本発明は、残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、メタクリル樹脂板同士を接着する方法の一つとして、相対する被接着面の間に重合開始剤を分散させたメタクリル系モノマーまたはその部分重合体を充填し、これを重合硬化させて接着する方法が知られている。このような重合硬化型の接着方法で、水族館などに代表される大型の水槽用パネルの端面同士あるいは面同士を接着する場合において、重合硬化時に反応熱が蓄熱され、その接着部に発泡やヒケの発生などの不具合が生じることがあった。これらの問題を解決するための手段として、例えば、重合調整剤を使用することが特許文献1に提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−70518号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、メタクリル樹脂板をメタクリル系モノマーまたはその部分重合体に重合開始剤ならびに重合調整剤を用いて重合接着すると、重合調整剤を使用しない場合に比べて、重合硬化層(部分)中に残存するメタクリル系モノマー量が多くなり易く、曇価が高く透明性が劣るのみならず、構造材として必要な強度が低下する等の問題があった。
したがって、本発明は接着層(部)に残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明はメタクリル樹脂板を、メタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤ならびに重合開始剤を用いて重合接着する方法において、重合開始剤として低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用することを特徴とするメタクリル樹脂板の重合接着方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においてメタクリル樹脂板とは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルを主原料とし、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル(たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル)、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー等を共重合成分として用いることによって得られる重合体または共重合体を、押出成形法、カレンダー法、注型重合法等一般的な成形加工方法により板状に賦形したものである。なかでも、注型重合法によって作られた板が好ましい。
【0007】
本発明で重合接着に用いるメタクリル系モノマーとは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステルモノマー、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、これらの混合物であってもよい。
これらメタクリル系モノマーは、上記メタクリル樹脂板との屈折率が近くなるように、その種類および組み合わせを選択する。
また、上記メタクリル系モノマーには炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステルモノマー(たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル)、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー等を共重合成分として用いることができる。これら共重合成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用ないし組み合わせて用いることができる。
【0008】
本発明で用いるこれらのモノマーもしくはその混合物は、モノマーのみからなる必要はなく、モノマーの一部を予め重合させたポリマーとモノマーとからなるシラップや、ポリマーをモノマーに溶解させたシラップも使用できる。メタクリル樹脂板の重合接着に当り重合収縮を少なくするためには、シラップを用いることが望ましい。
メタクリル系モノマーまたはそのシラップには、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤など既知の添加剤を添加することもできる。
【0009】
本発明で使用する重合調整剤としては、1,4位に非共役二重結合を持つ環状化合物(例えば、γ−テルピネン、テルピノレン、1,4−ジシクロペンタジエン)が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上の混合物として用いてもよい。
重合調整剤の添加量は、メタクリル系モノマーまたはそのシラップ100質量部あたり、0.001〜0.05質量部が好ましく、0.002〜0.02質量部がより好ましい。重合調整剤量が少なすぎると重合接着時の発熱の抑制効果が不十分となり、重合調整剤量が多すぎると重合硬化時間が著しく長くなってしまう。
【0010】
本発明では使用する重合開始剤は、低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用する。低温分解型重合開始剤とは10時間半減期温度が50℃未満のものを、高温分解型重合開始剤とは10時間半減期温度が50℃以上のものをいう。低温分解型重合開始剤の10時間半減期としては35℃以下のものが好ましく、高温分解型重合開始剤の10時間半減期としては60℃以上のものが好ましい。
【0011】
低温分解型重合開始剤としては、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度40.9℃)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)などが挙げられる。また、高温分解型重合開始剤としては、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度51℃)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(10時間半減期温度66℃)、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度73.6℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(10時間半減期温度53.2℃)などが挙げられる。
低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤の混合重量比率は1/10〜10/1が好ましく、1/5〜5/1の範囲がより好ましい。
本発明において、低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を合わせた重合開始剤の添加量は、メタクリル系モノマーまたはそのシラップ100質量部あたり、0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましく、0.02質量部以上0.3質量部以下がより好ましい。重合開始剤の添加量がこれより少なすぎると重合硬化時間が著しく長くなり、硬化が不十分となることがある。また、重合開始剤が多すぎると、重合硬化が早くなりすぎ、重合発熱により気泡の発生などの不具合が生じ易くなる。
【0012】
本発明のメタクリル樹脂板同士を接着する手段を示せば次の通りである。
(1)メタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤と低温分解型重合開始剤及び高温分解型重合開始剤を所定量配合した後、攪拌機などで十分混合して接着剤を得る。
(2)接着剤は、真空容器に入れ内部を減圧にして、接着剤中に含まれている空気を減らす。
(3)重合接着しようとするメタクリル樹脂板の相対する接着面を一定間隔に保ち、周辺を樹脂板細片からなるスペーサーまたはゴム、軟質樹脂からなるガスケットなどで重合接着しようとする周辺をシールして、セルを形成する。このとき、メタクリル樹脂板の接着面をサンディングするなどして、密着性を向上させることは有効な手段である。
(4)セルの中に、上記(2)で脱気(泡)した接着剤を充填し、これを重合硬化させて接着する。
(5)接着後、接着層(部)中の残存メタクリル系モノマー量を低減するため熱処理を行う。
【0013】
接着しようとする樹脂板の厚みにもよるが、接着層(部)の厚みは1〜10mm程度が好ましく、2〜5mmがより好ましい。接着層(部)の厚みが薄すぎると十分な接着強度が得られず、逆に厚すぎると重合時の発熱量が多くなるとともに、収縮量が多くなり気泡の発生などの不具合が生じ易くなる。
上記(4)の重合硬化接着時の雰囲気温度は10〜40℃の範囲が好ましく、20〜30℃がより好ましい。雰囲気温度が低すぎると重合硬化時間が著しく長くなり、硬化が不十分となることがある。雰囲気温度が高すぎると、重合硬化が早くなりすぎ、重合発熱により気泡発生などの不具合が生じ易くなる。雰囲気温度は、重合硬化開始から終了までできるだけ一定であることが好ましい。雰囲気温度の保持時間は、使用する重合開始剤の種類および温度によって異なるが、重合時のピーク温度を経過する数10分から30時間程度である。
【0014】
上記(5)の重合接着終了後の熱処理の温度は、80〜120℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎると接着層(部)中の残存メタクリル系モノマー量の低減効果が得られず、一方、熱処理温度が高すぎると基材であるメタクリル樹脂板が変形してしまう。また、熱処理時間は、製品が設定温度になってから、1〜8時間保持することが好ましい。製品が設定温度に到達する時間は、接着層(部)の全厚みによって決まり、目安として厚み1mmあたりおよそ3分である。たとえば、接着後の全板厚が50mmであれば、150分になる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例を挙げて説明する。
実施例における評価項目中の残存メタクリル酸メチルモノマーの測定は次のように行った。
接着層(部)を切り出し、細かく砕き、アセトンに浸漬して溶解させた。その後、内部標準液(メチルイソブチルケトン0.5質量%溶液)を1ミリリットル加えて攪拌したのち、試料溶液1マイクロリットルをガスクロマトグラフィに注入し、残存メタクリル酸メチルモノマーを定量した。
【0016】
[実施例1]
メタクリル酸メチルモノマーのシラップであるアクリシラップSY−116(商品名:三菱レイヨン(株)製;樹脂組成はポリメチルメタクリレート(以下、PMMA)、粘度は450〜750mPa・S)100質量部に、重合調整剤として1,4−ジシクロペンタジエンを0.01質量部、低温分解型重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(10時間半減期温度40.9℃)を0.05質量部、高温分解型重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度:51℃)を0.01質量部添加して、攪拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行ない接着剤を得た。
【0017】
メタクリル樹脂板である板厚30mm、大きさ300mm×300mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン(株)製)2枚を接着層(部)の厚みが5mmになるように、幅5mm厚さ5mm長さ300mmのアクリル樹脂の角材をスペーサーにして接着剤で貼り合わせて、セルを作製した。
このセルに、上記接着剤を流し込み、雰囲気温度25℃の環境下に放置し、重合硬化させ樹脂板を一体化させた。このとき、接着層(部)の中央付近に熱電対を挿入し、硬化発熱のピーク温度及び同温度に達するまでの時間を測定した。
さらに、熱風循環炉にてセルを95℃で5時間熱処理を行った。
重合硬化接着したメタクリル樹脂板について接着層(部)中に残存しているメタクリル酸メチル量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0018】
[実施例2]
メタクリル酸メチルモノマー70質量部にPMMA粉末(商品名:ダイヤナールBR83 三菱レイヨン(株)製)30質量部を溶解させ、シラップを得た。このシラップ100質量部に、重合調整剤としてテルピノレンを0.005質量部、低温分解型重合開始剤として2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度30℃)を0.2質量部、高温分解型重合開始剤としてジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(10時間半減期温度:66℃)を0.1質量部添加して、攪拌機にて混合した後、真空容器内で脱泡作業を行ない、接着剤を得た。
【0019】
メタクリル樹脂板である板厚30mm、大きさ300mm×300mmのアクリライトS(商品名:三菱レイヨン(株)製)2枚を接着層(部)の厚みが3mmになるように幅5mm厚さ3mm長さ300mmのアクリル樹脂の角材をスペーサーにして接着剤にて貼り合わせて、セルを作製した。このとき、予めメタクリル樹脂板の接着しようとする面を#400のサンドペーパーでサンディングを施した。
このセルに、上記接着剤を流し込み、雰囲気温度28℃の環境下に放置し、重合硬化させ、一体化させた。このとき、接着層(部)の中央付近に熱電対を挿入し、実施例と同様にして硬化発熱を測定した。
さらに、熱風循環炉にてサンプルを80℃で5時間熱処理を行った。
重合硬化接着したメタクリル樹脂板について評価した。その結果を表1に示す。
【0020】
[比較例1]
重合開始剤を低温分解型重合開始剤である2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)のみ使用し、高温分解型重合開始剤を使用しなかった外は実施例2と同様にして重合硬化接着した。得られたメタクリル樹脂板について評価した。その結果を表1に示す。
【0021】
[比較例2]
重合開始剤を高温分解型重合開始剤であるジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)のみ使用し、低温分解型重合開始剤を使用しなかった外は実施例2と同様にして重合硬化接着した。得られたメタクリル樹脂板について評価した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、接着層(部)に残存メタクリル系モノマーの少ないメタクリル樹脂板の重合接着が可能となり、得られたメタクリル樹脂板は重合接着層(部)の雲価、透明性の低下が少ない。
Claims (2)
- メタクリル樹脂板をメタクリル系モノマーまたはそのシラップに重合調整剤ならびに重合開始剤を用いて重合接着する方法において、重合開始剤として低温分解型重合開始剤と高温分解型重合開始剤を併用することを特徴とするメタクリル樹脂板の重合接着方法。
- 請求項1記載の方法により重合接着して得たメタクリル樹脂板。
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-
2003
- 2003-03-07 JP JP2003062390A patent/JP2004269689A/ja active Pending
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