JP2019011427A - アクリル樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、弾性率が低下することなく高い耐衝撃性を有するアクリル樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】少なくとも2つのガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)と、(メタ)アクリル系重合体(2)とを含んでなるアクリル樹脂組成物であって、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)が有する最も高いガラス転移温度(Tg1)と最も低いガラス転移温度(Tg2)との差が80℃以上である、アクリル樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル樹脂組成物に関する。また、本発明は、前記アクリル樹脂組成物の製造方法、前記アクリル樹脂組成物から構成されるアクリル樹脂フィルムおよび前記アクリル樹脂フィルムを含む偏光板にも関する。
アクリル樹脂組成物は、透明性に優れていることから、例えば、偏光板を構成する透明保護フィルムなどの光学フィルムの材料として広く用いられている。以前より、このような用途に用いられるアクリル樹脂組成物に対しては耐衝撃性の向上が求められてきており、特定のアクリル系樹脂にゴム弾性体粒子を配合することにより、改善された耐衝撃性を有するアクリル樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、メタクリル酸メチルと、アクリル酸エチルまたはアクリル酸n−ブチルとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体およびゴム弾性体粒子を含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2には、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体およびゴム弾性体粒子を含むアクリル系樹脂組成物が記載されている。
特開昭63−077963号公報 特開2012−018383号公報
しかしながら、上記特許文献に記載されるようなアクリル系樹脂組成物においては、ゴム弾性体粒子を配合することにより、かかる樹脂組成物から得られるフィルムの耐衝撃性は向上させ得るものの、十分な耐衝撃性を得るために必要な量のゴム弾性体粒子を配合した場合にはかかる樹脂から形成されるフィルムの弾性率が低下してしまうという問題があった。
本発明は、弾性率が低下することなく高い耐衝撃性を有するアクリル樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]少なくとも2つのガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)と、(メタ)アクリル系重合体(2)とを含んでなるアクリル樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)が有する最も高いガラス転移温度(Tg1)と最も低いガラス転移温度(Tg2)との差が80℃以上である、アクリル樹脂組成物。
[2](メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)が、式(1a):
Figure 2019011427
〔式中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は末端基を表し、Xは式(1a−1):
Figure 2019011427
(式中、R13は水素原子またはメチル基であり、R14は炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、nは数平均値として30以上の数である)
で表される二価の基である〕
で表される構造単位と、式(1b):
Figure 2019011427
〔式中、R15は水素原子またはメチル基であり、R16は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分枝アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜18のアリール基である〕
で表される構造単位を含んでなり、
(メタ)アクリル系重合体(2)が、式(2a):
Figure 2019011427
〔式中、R21は水素原子またはメチル基であり、R22は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分枝アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜18のアリール基である〕
で表される構造単位を、(メタ)アクリル系重合体(2)に含まれる全構造単位に対して80質量%以上含んでなる(但し、(メタ)アクリル系重合体(2)に含まれる全構造単位に対して、前記式(1a)で表される構造単位は15質量%未満である)、前記[1]に記載のアクリル樹脂組成物。
[3]前記式(1a−1)中、R14は炭素数3〜5の直鎖アルキル基である、前記[2]に記載のアクリル樹脂組成物。
[4](メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)および(メタ)アクリル系重合体(2)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)を10〜30質量部および(メタ)アクリル系重合体(2)を70〜90質量部含む、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
[5](メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)を構成する全構造単位に対して、前記式(1a)で表される構造単位を15〜35質量%含む、前記[2]〜[4]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
[6]アクリル樹脂組成物100質量%に対して、前記式(1a)で表される構造単位に対応する単量体の含有量が7質量%未満である、前記[2]〜[5]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
[7](メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)の平均分岐度が0.5以上0.7以下である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
[8]厚み100μm以上のフィルム状にして、JIS K7136に準じて測定したヘーズが5%以下である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
[9]二軸押出機を用いて(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)と(メタ)アクリル系重合体(2)を溶融混練することを含む、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
[10]前記[1]〜[8]のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物から構成されるアクリル樹脂フィルム。
[11]少なくとも一方の面に表面処理層を備える、前記[10]に記載のアクリル樹脂フィルム。
[12]前記[10]または[11]に記載のアクリル樹脂フィルムを含む偏光板。
本発明によれば、弾性率が低下することなく高い耐衝撃性を有するアクリル樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明のアクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)および(メタ)アクリル系重合体(2)を含む。
〔共重合体(1)〕
本発明のアクリル樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)(以下、単に「共重合体(1)」ともいう)は、少なくとも2つのガラス転移温度を有しており、共重合体(1)が有する最も高いガラス転移温度(Tg1)と最も低いガラス転移温度(Tg2)の差は80℃以上である。共重合体(1)が有する少なくとも2つのガラス転移温度のうち、Tg1とTg2の差が80℃未満であると、十分な耐衝撃性を得難くなる。本発明において、Tg1とTg2との差は90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。Tg1とTg2との差の上限は特に限定されるものではないが、通常、220℃以下である。
共重合体(1)が有する最も高いガラス転移温度(Tg1)は、80〜150℃であることが好ましく、90〜135℃であることがより好ましく、100〜125℃であることがさらに好ましい。Tg1が上記範囲内であると、成形加工性に優れ、また得られた成形体は高温においても高い弾性率を有する。
共重合体(1)が有する最も低いガラス転移温度(Tg2)は、−130〜20℃であることが好ましく、−100〜−10℃であることがより好ましく、−70〜−40℃であることがさらに好ましい。Tg2が上記範囲内であると、常温以上の温度において、高い耐衝撃性を有する成形体が得られる。
本発明において共重合体(1)は、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、その最も高いガラス転移温度(Tg1)と最も低いガラス転移温度(Tg2)との差が80℃以上である(メタ)アクリル系のグラフト共重合体である。共重合体(1)は、例えば前記式(1a)で示される構造単位(以下、「構造単位(1a)」ともいう)と、前記式(1b)で示される構造単位(以下、「構造単位(1b)」ともいう)とを含む共重合体であることが好ましい。
構造単位(1a)は、式(1a):
Figure 2019011427
で示される構造単位である。構造単位(1a)は、末端に重合可能な不飽和基を有する比較的高い分子量の単量体(以下、該単量体を「マクロモノマー」ともいう)に由来する構造単位である。
式(1a)中、R11は水素原子またはメチル基であり、アクリル樹脂組成物の耐熱性の観点から、好ましくはメチル基である。
式(1a)中の末端基R12は、構造単位(1a)に対応するマクロモノマーを合成する際に用いられる重合開始剤により決定するものであるため、特に限定されるものではなく、例えば、2−シアノ−2−プロピル基等であり得る。すなわち、例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いた場合には、R12は2−シアノ−2−プロピル基となる。
式(1a)中、Xは、式(1a−1):
Figure 2019011427
で示される二価の基である。
式(1a−1)中、R13は水素原子またはメチル基であり、アクリル樹脂組成物の耐熱性の観点から、好ましくはメチル基である。
式(1a−1)中、R14は、炭素数1〜20の直鎖アルキル基である。炭素数1〜20の直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−イコシル基などが挙げられる。弾性率の低下を抑えながら、高い耐衝撃性を確保することができ、対応するマクロモノマーの入手も容易であることから、R14は炭素数3〜5の直鎖アルキル基であることが好ましく、n−ブチル基であることがより好ましい。
式(1a−1)中のnは、数平均値として30以上の数である。nは、通常300以下である。
構造単位(1a)に対応するマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)は、通常、5000〜50000であり、好ましくは10000〜30000である。また、構造単位(1a)に対応するマクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、通常、3000〜20000であり、好ましくは5000〜15000である。なお、マクロモノマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めることができる。
構造単位(1a)に対応するマクロモノマーの分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1.1〜4.0であり、好ましくは1.4〜2.5である。
構造単位(1b)は、式(1b):
Figure 2019011427
で示される構造単位である。
式(1b)中、R15は水素原子またはメチル基であり、アクリル樹脂組成物の耐熱性の観点から、好ましくはメチル基である。
式(1b)中、R16は、炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分枝アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜18のアリール基である。炭素数1〜20の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−イコシル基などが挙げられる。炭素数3〜20の分枝アルキル基としては、例えばi−プロピル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。対応する単量体の入手が容易であることから、置換基R16は炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
共重合体(1)に含まれる構造単位(1a)の量は、共重合体(1)に含まれる全構造単位100質量%に対して15〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜30質量%であり、さらに好ましくは20〜30質量%である。共重合体(1)中の構造単位(1a)の量が上記下限値以上であると、かかるアクリル樹脂組成物から得られるフィルムの耐衝撃性を向上させることができる。また、構造単位(1a)の量が上記上限値以下であると、弾性率の低下を効果的に抑制することができ、重合による合成もし易くなる。なお、共重合体(1)中に構造単位(1a)としては、1種の構造単位が含まれていてもよく、異なる複数種の構造単位が含まれていてもよい。
共重合体(1)に含まれる構造単位(1b)の量は、共重合体(1)に含まれる全構造単位100質量%に対して65〜85質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜85質量%であり、さらに好ましくは70〜80質量%である。共重合体(1)中の構造単位(1b)の量が上記上限値以下であると、かかるアクリル樹脂組成物から得られるフィルムの耐衝撃性を向上させることができる。また、構造単位(1b)の量が上記下限値以上であると、弾性率の低下を効果的に抑制することができ、重合による合成もし易くなる。なお、共重合体(1)中に構造単位(1b)としては、1種の構造単位が含まれていてもよく、異なる複数種の構造単位が含まれていてもよい。
共重合体(1)は、構造単位(1a)と構造単位(1b)を必須の構造単位として含むものであり、構造単位(1a)と構造単位(1b)のみを構造単位として含むものであってもよく、または、構造単位(1a)と構造単位(1b)以外の構造単位(以下、「構造単位(1c)」ともいう)を含むものであってもよい。そのような構造単位(1c)は、構造単位(1a)に対応するマクロモノマーおよび構造単位(1b)に対応する単量体と共重合し得る単量体に由来するものであれば特に限定されるものではない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなシアン化アルケニル、スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレン系単量体などに由来する構造単位が挙げられる。
共重合体(1)が構造単位(1c)を含む場合、その量は共重合体(1)に含まれる全構造単位100質量%に対して、通常10質量%以下であり、0質量%であってもよい。
本発明の一実施態様において、共重合体(1)は構造単位(1c)を含まない。
共重合体(1)は、構造単位(1a)に対応するマクロモノマーおよび構造単位(1b)に対応する単量体、ならびに必要に応じて構造単位(1c)に対応する単量体を共重合させることにより製造することができる。共重合体(1)の製造方法としては特に制限されるものではなく、当該分野で公知の共重合方法を用いることができ、例えば、構造単位(1a)に対応するマクロモノマーおよび構造単位(1b)に対応する単量体、ならびに必要に応じて構造単位(1c)に対応する単量体を混合し、通常、重合開始剤を用いて重合することにより製造することができる。
共重合体(1)に含まれる構造単位(1a)に対応するマクロモノマーとしては、市販されているものを用いることができ、例えば、東亞合成(株)製の商品名AB−6(アクリル酸ブチル重合体の末端にメタクリロイルオキシ基が付加された化合物:数平均分子量8700)などが挙げられる。
共重合体(1)に含まれる構造単位(1b)に対応する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。
重合開始剤としては、前記各構造単位に対応する単量体の重合を開始する能力を有する限り特に制限されるものではなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明において、重合開始剤としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などの加熱により重合を開始させる熱重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共重合体(1)の製造において重合開始剤を使用する場合、その量は、用いる単量体の種類やその含有量等に応じて適宜決定し得るものであるが、例えば、共重合体(1)を構成するために用いる全単量体の合計100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは1質量部以下である。重合開始剤の量が多いほど、数平均分子量(Mn)の小さい共重合体(1)が得られる。
共重合体(1)の製造において、重合開始剤とともに連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート等のメルカプタン類等が好ましく用いられる。これらの連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の量は、用いる単量体の種類やその含有量等に応じて適宜決定し得るものである。連鎖移動剤を用いる場合、その使用量は、共重合体(1)を構成するために用いる全単量体の合計100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部であり、例えば0.01〜1質量部であることが好ましい。
重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等を採用することができるが、重合後、得られた共重合体(1)の精製や取り出しが容易である点で、水中に単量体を液滴として分散させながら重合させる懸濁重合法により行うことが好ましい。具体的には、構造単位(1a)に対応するマクロモノマーと構造単位(1b)に対応する単量体、および必要に応じて構造単位(1c)に対応する単量体との混合物に重合開始剤を加え、必要により連鎖移動剤を加えた後、前記混合物を水中に分散させ、撹拌しながら加熱すればよい。撹拌することにより、単量体が水中に液滴として分散し、加熱することにより液滴中で重合開始剤が単量体に作用して重合が開始される。重合後の反応混合物から固形分を取り出し、水洗し、乾燥することにより、ビーズ状の重合体(1)を得ることができる。重合条件(重合温度や重合時間等)は、用いる単量体の種類およびその量等に応じて適宜設定することができるが、重合温度は、通常、0〜120℃であり、例えば60〜100℃であることが好ましい。また、重合時間は、通常、0.5〜24時間であり、例えば2〜12時間であることが好ましい。
共重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、通常、5万〜200万であり、好ましくは10万〜150万である。共重合体(1)の重量平均分子量が前記範囲内にあると、例えば、アクリル樹脂組成物を加熱溶融させてフィルム等へ加工することが容易となる。
なお、重量平均分子量は、多角度レーザー光散乱検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる。
共重合体(1)の数平均分子量(Mn)は、通常、1万〜200万であり、好ましくは2万〜150万である。共重合体(1)の数平均分子量が前記範囲内にあると、例えば、アクリル樹脂組成物を加熱溶融させてフィルム等へ加工することが容易となる。
なお、数平均分子量は、多角度レーザー光散乱検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる。
共重合体(1)の分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1〜8であり、好ましくは2〜6である。共重合体(1)の分子量分布が前記範囲内にあると、例えば、アクリル樹脂組成物を加熱溶融させてフィルム等へ加工することが容易となる。
共重合体(1)は、通常、0.5以上0.7以下の平均分岐度を有することが好ましい。平均分岐度が0.5以上であると、(メタ)アクリル系共重合体との相溶性が良好であり、弾性率を維持したまま耐衝撃性を向上させることができる。平均分岐度が0.7以下であると、前記式(1a)で表される構造単位に対応する単量体(マクロモノマー)成分による応力緩和効果が大きく、耐衝撃性を向上させることができる。
なお、平均分岐度は、検出器として多角度レーザー光散乱検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより、共重合体(1)の平均二乗半径rと、共重合体(1)と同じ分子量のポリメタクリル酸メチルの平均二乗半径rとを求め、その比r/rとして算出される。
〔重合体(2)〕
本発明のアクリル樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体(2)(以下、単に「重合体(2)」ともいう)は、例えば、下記式(2a)で示される構造単位(以下、「構造単位(2a)」ともいう)を含む重合体である。
構造単位(2a)は、式(2a):
Figure 2019011427
で示される構造単位である。
式(2a)中、R21は水素原子またはメチル基であり、アクリル樹脂組成物の耐熱性の観点から、好ましくはメチル基である。
式(2a)中、R22は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分枝アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜18のアリール基である。
炭素数1〜20の直鎖アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−イコシル基などが挙げられる。炭素数3〜20の分枝アルキル基としては、例えばi−プロピル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。入手が容易であることから、置換基R22は炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
重合体(2)に含まれる構造単位(2a)の量は、重合体(2)に含まれる全構造単位100質量%に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量5以上であることが特に好ましい。重合体(2)に含まれる構造単位(2a)の量の上限は特に限定されるものではなく、例えば100質量%であってよい。重合体(2)中の構造単位(2a)の量が前記範囲内にあると、アクリル樹脂組成物、特にそのアクリル樹脂組成物を含むフィルムの透明性が良好となる。なお、共重合体(2)中に構造単位(2a)としては、1種の構造単位が含まれていてもよく、異なる複数種の構造単位が含まれていてもよい。
重合体(2)には、前記構造単位(1a)が含まれていてもよい。ただし、弾性率が低下しやすくなるため、重合体(2)が構造単位(1a)を含む場合、その量は、重合体(2)に含まれる全構造単位100質量%に対して15質量%未満であり、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは5質量%未満であり、さらに好ましくは0.1質量%未満である。本発明の特に好適な実施態様において、重合体(2)は前記構造単位(1a)を含まない(すなわち、構造単位(1a)の量は0質量%であってよい)。
重合体(2)は、構造単位(2a)のみを構造単位として含むものであってもよく、構造単位(2a)と、重合体(2)に含まれる全構造単位100質量%に対して15質量%未満の構造単位(1a)を含むものであってもよい。さらに、重合体(2)は、構造単位(2a)および構造単位(1a)以外の構造単位(以下、「構造単位(2b)」ともいう)を含むものであってもよい。そのような構造単位は、構造単位(2a)に対応する単量体および構造単位(1a)に対応する単量体と共重合し得る単量体に由来するものであれば特に限定されるものではない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなシアン化アルケニル、スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレン系単量体などに由来する構造単位が挙げられる。
重合体(2)が構造単位(2b)を含む場合、その量は重合体(2)に含まれる全構造単位100質量%に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。本発明の一実施態様において、重合体(2)は構造単位(2b)を含まない(すなわち、構造単位(2b)の量は0質量%であってもよい)。
重合体(2)は、構造単位(2a)に対応する単量体、および必要に応じて構造単位(1a)および/または(2b)に対応する単量体を重合させることにより製造することができる。重合体(2)の製造方法としては特に制限されるものではなく、当該分野で公知の共重合方法を用いることができ、例えば、構造単位(2a)に対応する単量体、および必要に応じて構造単位(1a)および/または(2b)に対応する単量体を混合し、通常、重合開始剤を用いて重合することにより製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等を採用することができる。
重合体(2)に含まれる構造単位(2a)に対応する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどが挙げられる。
重合開始剤としては、前記各構造単位に対応する単量体の重合を開始する能力を有する限り特に制限されるものではなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。例えば、上述した共重合体(1)の重合において例示したような重合開始剤を用いることができる。
重合体(2)の重量平均分子量(Mw)は、通常、5万〜30万であり、より好ましくは8万〜25万である。重合体(2)の重量平均分子量が前記範囲内にあると、例えば、アクリル樹脂組成物を加熱溶融させてフィルム等へ加工することが容易となる。
なお、重量平均分子量は、多角度レーザー光散乱検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる。
重合体(2)の数平均分子量(Mn)は、通常、2万〜30万であり、より好ましくは4万〜25万である。重合体(2)の数平均分子量が前記範囲内にあると、例えば、アクリル樹脂組成物を加熱溶融させてフィルム等へ加工することが容易となる。
なお、数平均分子量は、多角度レーザー光散乱検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる。
重合体(2)の分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1〜3である。重合体(2)の分子量分布が前記範囲内にあると、例えば、アクリル樹脂組成物を加熱溶融させてフィルム等へ加工することが容易となる。
重合体(2)としては、市販されているアクリル樹脂を用いることもできる。市販品としては、例えば、住友化学(株)製「スミペックスMH」、「スミペックスMHF」などが挙げられる。
〔アクリル樹脂組成物〕
本発明のアクリル樹脂組成物は、前記共重合体(1)と重合体(2)を含む。
本発明のアクリル樹脂組成物は、共重合体(1)と重合体(2)の合計100質量部に対して共重合体(1)を10〜30質量部含むことが好ましく、より好ましくは15質量部以上含み、また、より好ましくは25質量部以下含む。本発明の一実施態様において、共重合体(1)と重合体(2)の合計100質量部に対する共重合体(1)の含有量は、例えば15〜30質量部であってよく、本発明の好適な一実施態様においては、15〜25質量部である。また、本発明のアクリル樹脂組成物は、重合体(2)を、共重合体(1)と重合体(2)の合計量100質量部に対して70〜90質量部含むことが好ましく、より好ましくは75質量部以上含み、より好ましくは85質量部以下含む。本発明の一実施態様において、共重合体(1)と重合体(2)の合計100質量部に対する重合体(2)の含有量は、例えば75〜90質量部であってよく、本発明の好適な一実施態様においては、75〜85質量部である。共重合体(1)および重合体(2)の含有量が前記範囲内であると、アクリル樹脂組成物の弾性率を低下させることなく高い耐衝撃性を確保することができる。
本発明のアクリル樹脂組成物において、前記式(1a)で表される構造単位に対応する単量体(マクロモノマー)の含有量が、アクリル樹脂組成物の総量100質量%に対して7質量%未満であることが好ましい。アクリル樹脂組成物100質量%に対して、式(1a)で表される構造単位に対応する単量体の含有量が7質量%未満であると、アクリル樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることができる。本発明において、式(1a)で表される構造単位に対応する単量体の含有量は、アクリル樹脂組成物100質量%に対して、より好ましくは6質量%以下である。耐衝撃性の有意性の観点から、その下限値は通常2質量%以上、好ましくは3質量%以上である。
本発明のアクリル樹脂組成物のうち、共重合体(1)に含まれる全構造単位に対する構造単位(1a)の量が15〜35質量%であり、共重合体(1)および重合体(2)の合計100質量部に対して、共重合体(1)を10〜30質量部および重合体(2)を70〜90質量部含むアクリル樹脂組成物は、特に高い耐衝撃性を発現することができる。
本発明のアクリル樹脂組成物は、前記共重合体(1)と重合体(2)以外の他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸のような不飽和酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなシアン化アルケニル、スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレン系単量体等から構成される重合体などが挙げられる。本発明のアクリル樹脂組成物がこのような共重合体(1)と重合体(2)以外の他の重合体を含む場合、その含有量は共重合体(1)と重合体(2)の合計100質量部に対して、通常90質量部以下、好ましくは80質量部以下である。
本発明のアクリル樹脂組成物は、ゴム弾性体粒子を含有していてもよい。
本発明において、ゴム弾性体粒子を用いる場合は、ゴム弾性体粒子はゴム弾性を示す層(以下、「ゴム弾性体層」ともいう)のみからなる粒子であってもよく、ゴム弾性体層とともに他の層を有する多層構造の粒子であってもよい。
ゴム弾性体層はゴム弾性重合体を含む。ゴム弾性重合体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体などが挙げられる。中でも、本発明のアクリル樹脂組成物の耐光性および透明性の観点から、アクリル系弾性重合体であることが好ましい。
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする、すなわち、全モノマー量を基準にアクリル酸アルキル由来の構成単位を50質量%以上含む重合体であってよい。アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル由来の構成単位を50質量%以上と、50質量%以下の他の重合性モノマー由来の構成単位とを含む共重合体であってもよい。
アクリル系弾性重合体を構成するアクリル酸アルキルとしては通常、そのアルキル基の炭素数が4〜8のものが用いられる。上記他の重合性モノマーの例を挙げれば、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル;スチレン、アルキルスチレンのようなスチレン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル等の単官能モノマー、さらには、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;マレイン酸ジアリルのような二塩基酸のジアルケニルエステル;アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等の多官能モノマーである。
ゴム弾性体としてアクリル系弾性重合体を含むゴム粒子は、アクリル系弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であることが好ましい。具体的には、アクリル系弾性重合体および該アクリル系弾性重合体の層の外側または内側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する2層構造のものや、さらに該アクリル系弾性重合体の層の内側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する3層構造のものが挙げられる。
アクリル系弾性重合体の層の外側および/または内側に形成される硬質の重合体層を構成するメタクリル酸アルキルを主体とする重合体におけるモノマー組成の例は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の炭素数は通常1〜4程度の(メタ)アクリル酸アルキルを主体とする重合体のモノマー組成であり、特にメタクリル酸メチルを主体とするモノマー組成が好ましく用いられる。このような多層構造のアクリル系ゴム粒子は、例えば特公昭55−27576号公報に記載の方法によって製造することができる。
ゴム粒子は、その中に含まれるゴム弾性体層(アクリル系弾性重合体の層)の外側までの径(平均粒子径)が好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは280nm以下である。
ゴム粒子におけるゴム弾性体層(アクリル系弾性重合体の層)の外側までの径(平均粒子径)は、次のようにして測定される。すなわち、このようなゴム粒子をアクリル樹脂組成物に混合してフィルム化し、その断面を酸化ルテニウムの水溶液で染色すると、ゴム弾性体層だけが着色してほぼ円形状に観察され、母層のアクリル系樹脂は染色されない。そこで、このようにして染色されたフィルム断面から、ミクロトーム等を用いて薄片を調製し、これを電子顕微鏡で観察する。そして、無作為に100個の染色されたゴム粒子を抽出し、各々の粒子径(ゴム弾性体層の外側までの径)を測定した後、その数平均値を上記平均粒子径とする。このような方法で測定するため、得られる上記平均粒子径は数平均粒子径である。
ゴム粒子が、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、その中にゴム弾性体層(アクリル系弾性重合体の層)が包み込まれているゴム粒子である場合、このゴム粒子を母体のアクリル系樹脂に混合すると、ゴム粒子の最外層が母体のアクリル系樹脂と混和する。そのため、その断面を酸化ルテニウムで染色し、電子顕微鏡で観察すると、ゴム粒子は、最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である2層構造のゴム粒子である場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察される。また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である3層構造のゴム粒子の場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
本発明のアクリル樹脂組成物がゴム弾性体粒子を含有する場合、その含有量は、共重合体(1)および重合体(2)の合計100質量部に対して、通常1〜50質量部であり、10〜30質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。ゴム弾性体粒子を前記範囲の量で含む場合、ゴム弾性体粒子を配合しない場合と比較してより高い耐衝撃性を確保することができる。しかしながら、本発明のアクリル樹脂組成物では、ゴム弾性体粒子を含まなくても、アクリル樹脂組成物の高い耐衝撃性を確保することができるため、ゴム弾性体粒子の含有量は、共重合体(1)および重合体(2)の合計100質量部に対して1質量部以下であってよく、ゴム弾性体粒子を全く含まなくてもよい(すなわち、ゴム弾性体粒子の含有量は0質量%である)。ゴム弾性体粒子の含有量が少ないほど、弾性率の低下を抑えることができるため、フィルムにした時にその加熱収縮を抑えることができ、フィルムの耐熱性の低下を、ひいてはこのフィルムを用いた偏光板の耐熱性の低下を抑えることができる。
なお、本発明においては、ゴム粒子として、ゴム弾性を示す層とともに他の層を有する多層構造の粒子を用いた場合は、ゴム弾性を示すゴム弾性体層とその内側の層からなる部分の質量を、ゴム粒子の質量とする。例えば、上述の3層構造のゴム粒子を用いた場合は、中間層のアクリル系弾性重合体部分と最内層のメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体部分との合計質量を、ゴム粒子の質量とする。上述の3層構造のアクリル系ゴム粒子をアセトンに溶解させると、中間層のアクリル系弾性重合体部分と最内層のメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体部分は不溶分として残るので、3層構造のアクリル系ゴム粒子に占める中間層と最内層の合計の質量割合は、容易に求めることができる。
本発明のアクリル樹脂組成物は、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤などの添加剤を含んでいてもよい。
本発明のアクリル樹脂組成物は従来公知の方法により製造することができ、具体的には、例えば重合体(1)、重合体(2)、場合によりゴム弾性体粒子および添加剤を、二軸型の押出機を用いて溶融混練することを含む方法により製造することができる。本発明のアクリル樹脂組成物の形態は特に限定されるものではないが、取り扱いが容易である点でペレット状であることが好ましい。
本発明のアクリル樹脂組成物は透明性に優れていることから、厚み100μm以上のフィルム状にし、JIS K7136に準じて測定されるヘーズが5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
〔アクリル樹脂フィルムおよび偏光板〕
本発明のアクリル樹脂フィルムは、例えば、溶融押出成形法、プレス成形法などの公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば溶融押出成形法であれば、本発明のアクリル樹脂組成物を構成する各種材料を二軸押出機にて溶融混練して溶融状態の本発明のアクリル樹脂組成物を得、または本発明のアクリル樹脂組成物を二軸押出機にて溶融混練して溶融状態とした後、溶融状態の本発明のアクリル樹脂組成物をダイからフィルム状に押出すことで製造することができる。成形条件(押出条件)は特に限定されるものではなく、用いるアクリル樹脂組成物の組成、アクリル樹脂組成物の分子量・分子量分布等に応じて適宜調整すればよい。例えば、押出温度は、通常230〜300℃程度である。また、プレス成形法であれば、本発明のアクリル樹脂組成物をプレス成形用の一対の金型の間に配置し、両金型の間に挟みこんだ状態で加熱することにより、各種材料またはアクリル樹脂組成物を加熱し、溶融状態としてシート状に賦形することにより製造することができる。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、必要とされる弾性率を維持したまま、高い耐衝撃性を示すため、例えば、偏光板を構成する保護フィルムとして用いることができる。アクリル樹脂フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、前記用途に用いられる場合には、10〜300μmであることが好ましい。
本発明の偏光板は本発明のアクリル樹脂フィルムを含む。本発明の偏光板は、好ましくは偏光フィルムの一方または両方の面に本発明のアクリル樹脂フィルムを積層し、偏光板の保護フィルムとして本発明のアクリル樹脂フィルムを含む。この場合、アクリル樹脂フィルムは未延伸で用いてもよいし、延伸して用いてもよい。
本発明の偏光板に含まれる偏光フィルムとしては、従来公知の偏光板に用いられる偏光フィルムを用いることができる。本発明の偏光板における偏光フィルムは、例えばヨウ素または二色性染料などの二色性色素がポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向したフィルムであり、吸収軸に平行な振動面を有する偏光光を吸収し、吸収軸に直交する振動面を有する偏光光は透過する性質を持つ光学フィルムである。本発明のアクリル樹脂フィルムは偏光フィルムと、通常接着剤を介して積層される。例えばポリビニルアルコール樹脂水溶液を介して偏光フィルムとアクリル樹脂フィルムとを貼合したのち、乾燥させて形成されることで、または、紫外線硬化型接着剤を介して偏光フィルムとアクリル樹脂フィルムとを貼合したのち、紫外線を照射して硬化させることで本発明の偏光板を製造することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
1.実施例1
(1)共重合体(1)の調製
<合成例1>
72.6質量%のメタクリル酸メチル(MMA)、25.4質量%のマクロモノマー(AB−6:アクリル酸ブチル重合体の末端にメタクリロイルオキシ基が付加された構造、東亞合成(株)製)、および2.0質量%のアクリル酸メチル(MA)を混合して単量体成分を得た。この単量体成分に、単量体成分100質量部に対して0.2質量部のラウロイルパーオキサイド(重合開始剤)と、0.2質量部のn−オクチルカプタン(連鎖移動剤)を添加し、これらを溶解させて単量体混合物を得た。これとは別に、イオン交換水100質量部に対して、懸濁安定剤としてポリアクリル酸ナトリウムを0.05質量部、無水第一リン酸ナトリウムを0.24質量部、第二リン酸ナトリウム7水和物を0.28質量部添加し、これらを溶解させて懸濁重合水相を得た。次いで、前記単量体混合物に、懸濁重合水相を単量体混合物100質量部に対して200質量部添加し、懸濁重合を行った。得られたスラリー状の反応液を脱水機により脱水、洗浄した後、乾燥してビーズ状の共重合体(1−A)を得た。得られた共重合体(1−A)について、下記方法に従い、分子量および平均分岐度を測定した。
(2)共重合体(1)の物性/特性
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)>
得られた共重合体(1−A)を、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶解させ、測定試料を作製した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、測定試料の注入量を200μL、流量を1.0mL/分、測定温度を40℃として、溶出時間と強度とを測定した。GPC装置には、東ソー(株)製 HLC8220−GPC(カラムとして、東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H」2本を備え、RI検出器を内蔵している)を用いた。検出器としては、多角度レーザー光散乱検出器(Wyatt Technology製 DAWN HELEOS)を用いた。一方、この装置を用いて標準試料から検量線を作成した。標準試料はポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。上記で求めた共重合体(1−A)の溶出時間および強度から、前記検量線に基づいて測定試料の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求めた。さらに、これらの値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。共重合体(1−A)の重量平均分子量(Mw)は170000であり、数平均分子量(Mn)は38000であり、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
<ガラス転移温度>
共重合体(1−A)のガラス転移温度を、エスアイアイ・ナノテクノロジー製「DSC6000」を用いて測定した。JIS K7121:1987に基づく示差走査熱量分析法に従い、窒素流量100ml/分において、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、5分間保持した後、降温速度10℃/分で−100℃まで降温して1分間保持し、次いで昇温速度10℃/分で−100℃から160℃まで昇温し、温度を横軸、熱量を縦軸としたグラフの変曲点から中間ガラス転移温度を求め、これをガラス転移温度とした。共重合体(1−A)のガラス転移温度は−52℃および111℃であり、最も高いガラス転移温度(Tg1)と最も低いガラス転移温度(Tg2)の差は163℃であった。
<平均分岐度>
前記の多角度レーザー光散乱検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより、共重合体(1−A)の平均二乗半径rと、同一の分子量における直鎖ポリメタクリル酸メチルの平均二乗半径rとを求め、r/rにより算出した。この数値が小さいほど、高分子鎖一本あたりに分岐構造が多く導入されていることを示す。得られた共重合体(1−A)の平均分岐度は0.6であった。
<マクロモノマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)>
マクロモノマーAB−6を、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に溶解させ、測定試料を作製した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、測定試料の注入量を20μL、流量を1.0mL/分、測定温度を40℃として、溶出時間と強度とを測定した。GPC装置には、東ソー(株)製 HLC8320−GPC(カラムとして、東ソー(株)製「TSKgel SuperMultipore HZ_M」2本と「TSKgel SuperHZ2500」1本を備える)を用いた。一方、この装置を用いて標準試料から検量線を作成した。上記で求めたマクロモノマーの溶出時間および強度から、前記検量線に基づいてマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求めた。なお、標準試料はポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。さらに、これらの値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。マクロモノマーAB−6の重量平均分子量(Mw)は15000であり、数平均分子量(Mn)は8700であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であり、数平均分子量(Mn)から求めたnは66であった。
(3)アクリル樹脂組成物およびアクリル樹脂フィルムの調製
共重合体(1)として、前記合成例1で調製した共重合体(1−A)を用い、重合体(2)として、メタクリル酸メチル由来の構造単位を90質量%以上含むメタクリル酸メチル系樹脂〔以下、「アクリル樹脂(2)」という:アクリル樹脂(2)中の構造単位(1a)の量は0質量%である〕を用いた。なお、アクリル樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は102600であり、数平均分子量(Mn)は54700であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
表1に示す組成に従い、共重合体(1−A)20質量部とアクリル樹脂(2)80質量部とを、総量が8gになるように計量し、二軸混練機を用いて溶融混練してペレット化した。二軸混練機はMinilab(Thermo Haake社製)を用い、窒素雰囲気下で、温度を240℃、スクリュー回転数を200rpmとして10分間混練した。その後、前記ペレットを圧縮成形機で成形し、80mm×80mm四方、厚さ130μmのプレスフィルムを作製した。プレス処理には、210℃のプレス機((株)神藤金属工業所製、NSF−100型単動圧縮成形機)を用いた。まず、予熱として5分間加熱し、次いで、約2MPaの圧力下で3分間保持した。その後、約13MPaの圧力下で1分間保持した。さらに、成形したフィルムを鉄板で挟んだ状態のままプレス機から取り出し、冷却盤上で5分間冷却してプレスフィルムを得た。
2.比較例1〜3
共重合体(1−A)の代わりに、下記の直鎖共重合体(1−B)〜(1−D)を用い、表1に示す組成に従い、直鎖共重合体(1−B)〜(1−D)とアクリル樹脂(2)とを実施例1と同様の方法でそれぞれ溶融混練し、ペレット状のアクリル樹脂組成物を調製した。次いで、実施例1と同様にして圧縮成形機で成形し、80mm×80mm四方、厚さ300μmのプレスフィルムを得た。
<直鎖共重合体>
比較例1〜3で用いた直鎖共重合体(1−B)〜(1−D)のモノマー組成比は、プロトン核磁気共鳴装置(H−NMR)を用いて測定した。直鎖共重合体を重クロロホルム溶媒に溶解させ、Varian,Inc.製のH−NMRを用いて、室温下にて、取り込み時間を3.5秒、パルス遅延時間を26.5秒、積算回数を128回とし、外部標準はテトラメチルシラン(TMS)を0.00ppmとして測定した。また、共重合体(1−B)〜(1−D)の各ガラス転移温度は共重合体(1−A)のガラス転移温度を求めた方法と同様の方法により測定した。
共重合体(1−B):メタブレンP−530A:三菱レイヨン株式会社製、組成比はMMA/ブチルアクリレート(BA)=80/20(重量比)、ガラス転移温度:−16℃および78℃
共重合体(1−C)メタブレンP−551A:三菱レイヨン株式会社製、組成比はMMA/BA=84/16(重量比)、ガラス転移温度:−18℃および66℃
共重合体(1−D)メタブレンP−570A:三菱レイヨン株式会社製、組成比はMMA/ブチルメタクリレート(BMA)=51/49(重量比)、ガラス転移温度:−18℃および63℃
3.比較例4
表1に示す組成に従い、アクリル樹脂(2)80質量部に対して下記ゴム弾性体粒子20質量部を混合し、二軸押出機を用いて溶融混練してペレット状のアクリル樹脂組成物を調製した。押出機としては、(株)プラスチック工学研究所製の二軸押出機(スクリュー径は32mm、L/Dは36、同回転方向)を用い、ニーディングゾーンのヒーター温度を240℃、スクリュー回転速度を200rpmとして10分間溶融混練した。その後、実施例1と同様にして圧縮成形機で成形し、80mm×80mm四方、厚さ200μmのプレスフィルムを作製した。
<ゴム弾性体粒子>
ゴム弾性体粒子として、最内層がメタクリル酸メチル93.8質量%、アクリル酸メチル6.0質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%とからなる単量体混合物の重合により得られた硬質重合体であり、中間層がアクリル酸ブチル81質量%、スチレン17質量%およびメタクリル酸アリル2質量%とからなる単量体混合物の重合により得られた弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチル94質量%およびアクリル酸メチル6質量%とからなる単量体混合物の重合により得られた硬質重合体であり、前記最内層/中間層/最外層の質量割合が35/45/20であり、中間層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.22μmである、乳化重合法によって得られた球形3層構造のゴム弾性体粒子を用いた。
ゴム弾性体粒子の平均粒子径は、ゴム弾性体粒子を前記アクリル樹脂組成物と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムにより弾性重合体(中間層)を染色し、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径から求めた。
4.比較例5
表1に示す組成に従い、ペレット状のアクリル樹脂(2)から、実施例1と同様にして圧縮成形機で成形し、80mm×80mm四方、厚さ200μmのプレスフィルムを作製した。
5.プレスフィルムの評価
実施例1および比較例1〜5において調製したプレスフィルムのシャルピー衝撃強度、80℃弾性率、折り曲げ白化性、およびヘーズを下記方法に従い測定した。
<シャルピー衝撃試験>
JIS K7111−1に規定される方法に従い、実施例および比較例で得られた各プレスフィルムサンプルを、縦方向80mm、横方向10mmの長方形に切り出し、両短辺(10mm)を固定した状態でシャルピー衝撃強度を測定し、プレスフィルムの耐衝撃性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1における衝撃強度における値は、後述する比較例5(アクリル樹脂(2)のみで構成されたアクリル樹脂組成物)のプレスフィルムのシャルピー衝撃強度の値を100%とした場合の相対値(%)であり、「相対シャルピー衝撃強度(%)」と記した。この相対シャルピー衝撃強度(%)の値が100以上であれば、高い耐衝撃性を有すると判断した。
<80℃弾性率測定>
実施例および比較例で得られた各プレスフィルムを縦方向80mm、横方向25mmの長方形に切り出し、80℃で、チャック間距離を50mmとして縦方向に引張速度1mm/分で引張試験を行った。引張強度が1MPaから3MPaとなる領域での応力−歪み曲線の傾きから、80℃引張弾性率を算出した。結果を表1に示す。なお、表1における80℃弾性率における値は、比較例5(アクリル樹脂(2)のみで構成されたアクリル樹脂組成物)のプレスフィルムの80℃弾性率の値を100%とした場合の相対値(%)であり、「相対80℃弾性率(%)」と記した。この相対80℃弾性率(%)の値が97以上であれば、弾性率の低下がない/優れた弾性率を有すると判断した。
<折り曲げ白化性>
実施例および比較例で得られたプレスフィルムを縦方向80mm、横方向25mmの長方形に切り出し、指で折り曲げた際に白化したものを×、白化しなかったものを○と判定した。
<ヘーズ測定>
ヘーズメーター(HR−100、(株)村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7361−1に準拠して測定した。
Figure 2019011427

Claims (12)

  1. 少なくとも2つのガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)と、(メタ)アクリル系重合体(2)とを含んでなるアクリル樹脂組成物であって、
    前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)が有する最も高いガラス転移温度(Tg1)と最も低いガラス転移温度(Tg2)との差が80℃以上である、アクリル樹脂組成物。
  2. (メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)が、式(1a):
    Figure 2019011427
    〔式中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は末端基を表し、Xは式(1a−1):
    Figure 2019011427
    (式中、R13は水素原子またはメチル基であり、R14は炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、nは数平均値として30以上の数である)
    で表される二価の基である〕
    で表される構造単位と、式(1b):
    Figure 2019011427
    〔式中、R15は水素原子またはメチル基であり、R16は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分枝アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜18のアリール基である〕
    で表される構造単位を含んでなり、
    (メタ)アクリル系重合体(2)が、式(2a):
    Figure 2019011427
    〔式中、R21は水素原子またはメチル基であり、R22は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分枝アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜18のアリール基である〕
    で表される構造単位を、(メタ)アクリル系重合体(2)に含まれる全構造単位に対して80質量%以上含んでなる(但し、(メタ)アクリル系重合体(2)に含まれる全構造単位に対して、前記式(1a)で表される構造単位は15質量%未満である)、請求項1に記載のアクリル樹脂組成物。
  3. 前記式(1a−1)中、R14は炭素数3〜5の直鎖アルキル基である、請求項2に記載のアクリル樹脂組成物。
  4. (メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)および(メタ)アクリル系重合体(2)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)を10〜30質量部および(メタ)アクリル系重合体(2)を70〜90質量部含む、請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
  5. (メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)を構成する全構造単位に対して、前記式(1a)で表される構造単位を15〜35質量%含む、請求項2〜4のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
  6. アクリル樹脂組成物100質量%に対して、前記式(1a)で表される構造単位に対応する単量体の含有量が7質量%未満である、請求項2〜5のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
  7. (メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)の平均分岐度が0.5以上0.7以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
  8. 厚み100μm以上のフィルム状にして、JIS K7136に準じて測定したヘーズが5%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物。
  9. 二軸押出機を用いて(メタ)アクリル系グラフト共重合体(1)と(メタ)アクリル系重合体(2)を溶融混練することを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル樹脂組成物から構成されるアクリル樹脂フィルム。
  11. 少なくとも一方の面に表面処理層を備える、請求項10に記載のアクリル樹脂フィルム。
  12. 請求項10または11に記載のアクリル樹脂フィルムを含む偏光板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022114157A1 (ja) * 2020-11-30 2022-06-02 三菱ケミカル株式会社 樹脂組成物、成形体及びマクロモノマー共重合体

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